特許第6581908号(P6581908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581908
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】腱の治療及び修復用組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20190912BHJP
   C07K 14/78 20060101ALI20190912BHJP
   C07K 14/475 20060101ALI20190912BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20190912BHJP
   C07K 14/53 20060101ALI20190912BHJP
   C07K 14/575 20060101ALI20190912BHJP
   C07K 14/65 20060101ALI20190912BHJP
   C07K 14/52 20060101ALI20190912BHJP
   A61K 35/36 20150101ALI20190912BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20190912BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   C12N5/071
   C07K14/78
   C07K14/475
   C07K14/54
   C07K14/53
   C07K14/575
   C07K14/65
   C07K14/52
   A61K35/36
   A61K45/00
   A61P21/00
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-558113(P2015-558113)
(86)(22)【出願日】2014年2月12日
(65)【公表番号】特表2016-508374(P2016-508374A)
(43)【公表日】2016年3月22日
(86)【国際出願番号】US2014016109
(87)【国際公開番号】WO2014127047
(87)【国際公開日】20140821
【審査請求日】2017年2月10日
(31)【優先権主張番号】61/763,908
(32)【優先日】2013年2月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515221565
【氏名又は名称】レプリセル ライフ サイエンシーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】マケルウィー ケヴィン ジョン
【審査官】 山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/037486(WO,A1)
【文献】 J. Invest. Dermatol., 2004, Vol.123, p.34-40
【文献】 J. Invest. Dermatol., 2003, Vol.121, p.1267-1275
【文献】 gibco,'AmnioMAXTM C-100 AND AmnioMAX TM II Complete Media', [online], 2013年,[平成30年11 月27 日検索],インターネット,URL,https://www.thermofisher.com/document-connect/document-connect.html?url=https://assets.thermofisher.com/TFS-Assets/LSG/manuals/AmnioMAX_C100_AmnioMAX_Complete_PI.pdf&title=AMNIOMAX Product Information
【文献】 J. Dermatol. Sci., 2012, Vol.68, p.194-197
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00−28
C07K
C12P
A61K 35/00−45/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離非毛球真皮鞘(NBDS)細胞を含む、腱の損傷の治療又は予防のための医薬組成物であって、前記単離非毛球真皮鞘(NBDS)細胞が、以下の工程、
(a)バイタル髪を開裂させて、毛包を取出す工程、
(b)工程(a)の前記毛包から、毛包真皮鞘碗状部細胞及び毛髪乳頭細胞を分離することにより、非毛球真皮鞘(NBDS)組織を単離する工程、及び
(c)工程(b)で得られた、該単離された非毛球真皮鞘(NBDS)組織を培養して、単離された非毛球真皮鞘(NBDS)細胞を製造する工程、
を含む方法によって単離されたことを特徴とする医薬組成物
【請求項2】
ヒト、ウマ、イヌ及びネコからなる群から選択される哺乳動物を対象とする、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記腱の損傷が、腱断裂、完全な、部分的な又は微細な裂傷である、請求項記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記腱の損傷が、腱症、滑液鞘炎、及び裂離からなる群から選択される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記腱が、アキレス腱又は膝蓋腱である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記腱が、屈筋腱である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記腱が、伸筋腱である、請求項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引照]
本件特許出願は、2013年2月12日付で出願された米国仮特許出願第61/763,908号に関して、35 U.S.C. § 119(e)に基く利益を請求するものであり、該特許出願を、全体として言及によりここに組入れる。
【0002】
本発明は、腱を修復するための組成物及び方法に係り、またより詳しくは腱の治療及び修復において使用し、かつ腱の損傷を防止するための非毛球真皮鞘細胞を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
腱は、通常筋肉を骨に結合する繊維状結合組織で作られた強靭な帯状組織である。一般的な腱の例は、腓腹筋を踵骨に結合するアキレス腱及び膝蓋骨を脛骨に結合する膝蓋腱を含む。
腱は、例えば酷使、過労、疾患及び一般的な老化によるものを包含する多数の様式で損傷を受ける恐れがある。用語「腱障害(tendinopathy)」とは、炎症及び微細な裂傷(micro-tears)に起因するもの両者を含む、多数の損傷を言うのに使用することができる。腱は、また断裂され又は裂ける可能性があり、典型的には外科的な介入を必要とする。
腱の損傷を治療するのに利用し得る多数の外科的方法が存在するが、このような方法によってさえも、該腱の治癒は、そもそもこれらが治癒するとしても、数年かかる可能性がある。本発明は、腱の損傷を治療するための新規な組成物及び方法を開示し、また更にはその他の関連する利点を与える。
【発明の概要】
【0004】
手短に言えば、本発明は、非毛球真皮鞘(Non-Bulbar Dermal Sheath)(「NDBS」)細胞を由来とする毛包を利用する、腱の損傷を治療し又は予防するための組成物及び方法を提供する。本発明の一局面では、(a) バイタル(即ち、「生きている」)髪を製造し;及び(b) NBDS細胞集団を得ることができるように、該バイタル髪を培養する工程を含む方法が提供される。好ましい態様において、該NBDS細胞は単離される。
本発明の一局面においては、NBDS細胞を単離する方法が提供され、該方法は、(a) バイタル髪を調製する工程;(b) 該工程(a)において調製された髪を開裂させて、毛包球(これは真皮鞘碗状部(cup)及び真皮乳頭を含む)を取出す工程;(c) 非毛球真皮鞘組織を単離する工程;及び(d) 該単離された非毛球真皮鞘組織を培養して、NBDS細胞を製造する工程を含む。本発明の一態様において、該バイタル髪は、患者の後頭部頭皮から生検により得られる。もう一つの態様において、該髪は、マイクロマニピュレータ及び外科用メスを使用して開裂される。更に別の態様において、ここに与えられる方法は、更に、場合により例えばコラーゲン消化酵素、例えばコラーゲナーゼ、ディスパーゼ、及びロイペプチンを用いる、該単離された非毛球真皮鞘組織の酵素消化を行う工程をも含む。更なる態様において、該細胞は、多数回の継代に渡り継代培養される。
【0005】
本発明の他の局面においては、単離されたNBDS細胞が準備され、場合によっては上述の方法に従って調製され、ここで該細胞は、CD90、CD73及びCD49bの1種又はそれ以上に対して主として正であり、及び/又はCD34、CD45及びKRT14の1種又はそれ以上に対して主として負である(場合により、培養の前又はその後)。好ましい態様において、該単離されたNBDS細胞は、上述の正のマーカーの1種又はそれ以上に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%又は100%正であり、及び/又は上述の負のマーカーの1種に対して少なくとも80%、90%、95%、又は98%負である。
本発明の好ましい態様において、単離されたNBDS細胞は、上記細胞集団において15%、10%、5%、又は1%未満のケラチノサイト及び/又は該細胞集団において15%、10%、5%、又は1%未満のメラノサイトを含む。しかし、更なる態様において、該単離されたNBDS細胞集団は、真皮細胞集団から(好ましくは毛包から)誘導され、該真皮細胞集団は、例えば該細胞集団において少なくとも1、5、10、0.01%、0.1%、又は1%のケラチノサイト及び/又は少なくとも5、10、0.1%、0.1%のメラノサイトを包含する、幾分かの汚染細胞型を含む。本発明の更なる態様において、該単離されたNBDS細胞は、少なくとも95%純粋であり、また該細胞集団内に少なくとも1種の汚染細胞型(例えば、少なくとも1種のケラチノサイト)を含んでいる。
【0006】
これ等のNBDS細胞(又は単離されたNBDS細胞)は、他の成分、例えば血清中の血漿、フィブリン、及び/又はヒアルロン(hyaluronic)等と共に組成物内に含まれている可能性がある。他の態様において、該NBDS細胞(又は単離されたNBDS細胞)は、注入に適した組成物、例えば乳酸リンゲル液(Lactated Ringer’s solution)又は緩衝生理食塩水の形状で構成することができる。本発明の組成物を形成するのに使用し得る他の成分は、例えば細胞外マトリックス(例えば、グリコサミノグリカン(GAGs)、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラチン硫酸、ヒアルロン酸、アルブミン(例えば、ヒトアルブミン)、エラスチン、フィブロネクチン及びラミニン)、サイトカイン及びケモカイン(例えば、形質転換成長因子β(TGF-β)及びそのイソ型、インスリン様成長因子(IGF)及びそのイソ型、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、副甲状腺ホルモン関連タンパク質、肝細胞増殖因子/散乱因子(HGF/SF)、マクロファージ刺激タンパク質(MSP)、上皮増殖因子(EGF)、インターロイキン6(IL-6)、ストロマ細胞由来因子1(SDF-1)、血小板由来増殖因子(PDGF)及び線維芽細胞増殖因子(FGF)及び/又は様々な治療用薬剤(例えば、鎮痛薬、抗炎症薬及び免疫調節薬)を含む。しかし、他の態様において、NBDS細胞(及び単離されたNBDS細胞)は、上記成分(例えば、血清又は血漿を含む)の何れをも含まない組成物の状態で与えられる。
【0007】
本発明の更に別の態様においては、腱の損傷を治療し又は予防するための方法が提供され、該方法は、患者に、上記したNBDS細胞(及び好ましい態様においては、単離されたNBDS細胞)を含有する組成物を投与する工程を含む。一態様において、該患者は、ヒト、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット及びマウスからなる群から選択される哺乳動物である。
本発明の様々な態様において、上記腱の損傷は、腱の断裂又は裂傷、あるいは腱症(tendinosis)、滑液鞘炎(tenosynovitis)、及び裂離(avulsion)からなる群から選択されるその他の損傷である。更に別の態様において、該腱は、アキレス腱又は膝蓋腱である。他の態様において、該腱は、屈筋腱(flexor tendon)又は伸筋腱である。更に他の態様において、腱の損傷は、広範囲に及ぶ腱関連疾患(腱障害(tendinipathies、腱症(tendinoses)、腱炎(tendinitis)、滑液鞘炎(tenosynovitis)、パーテノニティス(partenonitis)、テニノシス(teninosis)を伴う腱傍組織腱炎(paratenonitis)、及び腱の微細な裂傷を含む)を含むものと理解すべきであり、これら腱の損傷も、ここに提供される組成物を用いて治療することができる。治療可能な代表的腱は、例えばa) アキレス腱(例えば、中央部アキレス腱障害、アキレス腱の腱傍組織腱障害(paratendinopathy)、挿入アキレス腱障害、踵骨皮下包炎、浅踵骨滑液包炎);b) 肩腱(例えば、上腕二頭筋腱障害、回旋筋腱板腱障害);c) 肘腱(例えば、内側及び横方向上顆炎又はテニス肘);d) 手及び手首(例えば、屈筋/伸筋腱障害、屈筋/伸筋滑液鞘炎、デケルバン(De Quervain’s)疾患、及びデュピュイトラン(Dupuytren’s)拘縮;e) 微細な裂傷を伴う又は伴わない膝窩腱及び膝蓋腱障害);及びf) 微細な裂傷を伴う又は伴わない足底筋膜炎を包含する。
上記1又はそれ以上の態様の詳細は、以下の説明において示される。その他の特徴、目的及び利点は、該説明、添付図、及び特許請求の範囲から明らかとなろう。加えて、ここにおいて言及される全ての特許及び特許出願の開示は、全体として言及によりここに組入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、ヒト毛包の解剖模型を示す。図1Aは、単離されたヒト毛包を示し、該毛包は、単離された真皮鞘を得るために、毛根の毛球部分の上方(即ち、真皮乳頭及び真皮鞘碗状部細胞の上方)であるが、皮脂腺管の基部下方で開裂し得る(図1B参照)。図1Bに描写された構造は、図1C及び1Dに示したように、少なくとも2つの別々の構成要素に分離することができる。図1Cは、主にケラチノサイトを含む、該毛髪繊維及び関連する内毛根鞘、及び外毛根鞘を描写するものであり、また図1Dは、NBDS細胞(同様に、時には結合-組織鞘とも言われる)を含有する該真皮鞘である。
図2】真皮乳頭(「DP」)細胞、真皮鞘碗状部(「DSC」)細胞、及び非毛球真皮鞘(「NBDS」)細胞の起源を描写している毛包の図解である。
図3図3は、培養物中のNBDS細胞の顕微鏡写真である。
図4A-B】図4は、コラーゲン産生について染色されたNBDS細胞を示す。より詳しくは、NBDS/血漿ゲル混合物は、5日後(図4A)及び12日後(図4B)に、穏やかな延伸に付された。図4Bにおける細胞は、図4Aにおける細胞よりも顕著により暗色であり、このことは、タイプIコラーゲン生産を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上述の通り、本発明は、哺乳動物における腱損傷の治療又は予防において使用するための、毛包由来の非毛球真皮鞘細胞を提供する。しかし、本発明を説明する前に、先ず以下において使用される幾つかの用語の定義を説明することが、本発明の理解にとって有益でありうる。
非毛球真皮鞘細胞、即ち「NBDS」細胞とは、真皮由来の細胞(又はより詳しくは、毛包由来の細胞)を言う。好ましい態様において、該鞘細胞は、毛根の毛球部分上方(即ち、真皮乳頭及び真皮鞘碗状部細胞の上方)であるが、皮脂腺管の基部下方の、毛包の外真皮鞘から得られる。NBDS細胞は、例えば調製及び培養法(以下において説明するような);形態学(例えば、図3を参照のこと);並びに細胞特異的マーカー(例えば、NBDS細胞は、培養前又はその後の何れかにおいて、CD 90、CD73及びCD49bに対して主として正であり、及び/又はCD34、CD45及びKRT14に対して主として負である)による方法を包含する、多数の方法によって容易に同定することができる。しかし、何れにしても、該細胞は真皮起源及びより詳しくは毛泡起源のものである必要がある。
拡大された非毛球真皮鞘細胞、即ち「eNBDS細胞」は、培養物内で数回の継代に渡り拡大されているが、コラーゲン(例えば、タイプIコラーゲン)並びに様々なサイトカイン及びケモカインの生産能力を保持しているNBDS細胞を言う。上記の如く、意外なことに、該NBDS細胞は、また免疫調節性でもあり得る。好ましい態様において、該細胞は、培養物中で、1、2、3、4、5、10、20回又はそれ以上の継代に渡り拡大することができる。
【0010】
「単離された」NBDS細胞とは、70%、80%、90%、95%、98%又は100%を超えるNBDS細胞の細胞集団を言う。NBDS細胞は、コラーゲン(例えば、タイプIコラーゲン)並びに様々なサイトカイン及びケモカインを生産する能力を有している。意外なことに、該NBDS細胞は、また免疫調節性でもあり得る。このことは、該細胞を、(例えば、あらゆる炎症性応答の抑制を促進することにより)腱損傷の治療にとって特に適したものとしている。
本発明の幾つかの態様において、微小スケールで細胞を可視化するために使用し得るソフトウエア又はその他の可視化技術が、視野内の大量の細胞の大きさ、形状、生育力及び粒度(granularity)を評価し、またNBDS細胞数を確認する(ケラチノサイト、メラノサイトDSCs、及び形態学を異にするその他の細胞型ではなくて、何れが図3に示すように繊維芽細胞-様であるか)ために使用し得る。従って、本発明の一態様においては、NBDS細胞を単離する方法が提供され、該方法は、NBDS細胞の単離された集団が生成されるように、毛包から少なくとも1、2、3、4、5、6、10、又は20回の継代に渡り細胞を培養する工程を含む。好ましい態様においては、該細胞を、該NBDS細胞の付着を可能とする皿又はフラスコに配置し、また各継代に関して、非接着細胞を除去し、また残留する接着細胞を解放させ(例えば、トリプシン処理により)、次いで新たな培地を添加する。このような態様においては、非NBDS細胞に対するNBDS細胞数を算定するために、単離されたNBDS細胞の十分な集団が、該細胞培養物中の細胞を可視化することによって得られる時期を決定することができる。可視化技術は、直接的な顕微鏡式可視化、細胞をマーカーについて染色(あるいはその欠乏、例えばケラチンの欠乏)、及び異なる細胞型に関する回折パターンを検査するための光/レーザー解析を含むが、これらに限定されない(例えば、一般的には「レーザー走査型顕微鏡法及び神経組織の定量的画像解析(Laser Scanning Microscopy and Quantitative Image Analysis of Neuronal Tissue)」, Lidia Bakota & Roland Brandt編, ヒューマナプレス(Humana Press), 2014を参照のこと;同様に「生細胞の画像化及び分光分析:光学的及び分光学的技術(Imaging and Spectroscopic Analysis of Living Cells: Optical and Spectroscopic Techniques)」, Conn編, アカデミックプレス(Academic Press), 2012を参照のこと)。
【0011】
他の態様において、細胞特異的マーカー(例えば、NBDS細胞はCD 90、CD73及びCD49bに対して主として正であり、及び/又はCD34、CD45及びKRT14に対して主として負である(場合により、培養の前又はその後))は、汚染細胞型に対するNBDS細胞の程度を評価するのに利用し得る。「幹細胞研究及び組織再生におけるフローサイトメトリーの応用(Applications of Flow Cytometry in Stem Cell Research and Tissue Regeneration)」, Krishan, Krishnamurthy & Totey編, ウイリーブラックウエル(Wiley-Blackwell), 2010。例えば、単離されたNBDS細胞は、a) 1種又はそれ以上のバイタル髪の毛包を得;b) 該毛包から細胞を解放させ(例えば、酵素の使用を通して、あるいは該毛包からの成長細胞を培養することにより);及びc) 細胞を選別して(例えば、フローサイトメトリーにより、又は磁気ビーズの使用を通して)、単離されたNBDS細胞の集団を得ることにより調製することができる。本発明の幾つかの態様において、上記方法の任意の段階における細胞は、場合により上で説明した如く培養することができる(例えば、細胞は、上述の如く少なくとも1、2、3、4、5、6、10又は20回の継代に渡って細胞を培養することができ、またこれらの得られた細胞を、更に例えばフローサイトメトリー又は磁気ビーズにより単離することができる)。
好ましい態様において、上記の単離されたNBDS細胞は、1種又はそれ以上の上記の正のマーカーに対して、少なくとも70%、80%、90%、95%、98%又は100%正であり、及び/又は上述の負のマーカーの1つに対して、少なくとも80%、90%、95%、又は98%負である。
【0012】
本発明の好ましい態様において(及びここに記載された技術の何れかを利用して)、単離されたNBDS細胞は、上記細胞集団内に15%、10%、5%、又は1%未満のケラチノサイトを含み、及び/又は該細胞集団内に15%、10%、5%、又は1%未満のメラノサイトを含んでいる。しかし、更なる態様において、該単離されたNBDS細胞集団は、幾つかの汚染細胞型を含む、真皮細胞の集団を由来(好ましくは毛包由来の)とし、これは例えば該細胞集団内に少なくとも1、5、10、0.01%、0.1%、又は1%のケラチノサイト、及び/又は少なくとも5、10、0.1%、0.1%のメラノサイトを含んでいる。
本明細書において使用する如き「腱損傷」とは、結果として腱(及び腱に関連する構造、例えば骨及び筋肉)の十分な利用を困難にする、あるいは最終的に困難なものとする可能性のある、広範囲に及ぶ様々な腱に関連する状態をいうものと理解すべきである。腱損傷は、外傷性の損傷(例えば、スポーツ損傷、酷使、又は医療又は外科的介入による)、遺伝的な起源の損傷、及び疾患(上記の何れかに起因する可能性があるもの)を含み得る。代表的な腱損傷は、腱障害(tendinopathies)、腱症(tendinoses)、腱炎(tendinitis)、滑液鞘炎(tenosynovitis)、パーテノニティス(partenonitis)、テニノシス(teninosis)を伴う腱傍組織腱炎(paratenonitis)、及び腱の微細な裂傷を含むが、これらに限定されない。治療可能な代表的腱は、例えばa) アキレス腱(例えば、中央部アキレス腱障害、アキレス腱の腱傍組織腱障害(paratendinopathy)、挿入アキレス腱障害、踵骨皮下包炎、浅踵骨滑液包炎);b) 肩腱(例えば、上腕二頭筋腱障害、回旋筋腱板腱障害);c) 肘腱(例えば、内側及び横方向上顆炎又はテニス肘);d) 手及び手首(例えば、屈筋/伸筋腱障害、屈筋/伸筋滑液鞘炎、デケルバン(De Quervain’s)疾患、及びデュピュイトラン(Dupuytren’s)拘縮;e) 微細な裂傷を伴う又は伴わない膝窩腱及び膝蓋腱障害;及びf) 微細な裂傷を伴う又は伴わない足底筋膜炎を包含する。
【0013】
NBDSの製造
上記の如く、本発明は、NBDS細胞の単離法を提供する。本発明の一局面において、このような方法は、(a) バイタル髪を調製する工程;及び(b) 該バイタル髪を、NBDS細胞の集団を得ることができるように培養する工程を含む。工程(a)に関連して、広範囲に渡る方法が、バイタル髪を得るために利用することができ、そのような方法は、例えば様々な毛包を(皮膚と共に)取出す外科的方法、又は患者から直接1種又はそれ以上の毛包を毟り取ることによる方法を包含する。
一旦上記バイタル髪が得られたら、これを、NBDS細胞の成長を可能とし、及び選択的に該成長を促進する条件の下で培養することができる。好ましい態様において、この培養は、線維芽細胞-様の細胞が増殖できる条件下で行われる。好ましい態様において、該培養工程は、血清を含まない培地を用いて行われる。数回の継代(例えば、少なくとも2、3、4、5、10回又はそれ以上の継代)の後、該培養細胞を、上記の如く分析して、十分な量のNBDS細胞が存在するか否か、及び該細胞が、汚染細胞から十分に分離されているか否かを確認する。
本発明の他の局面においては、以下の諸工程を含む方法が提供される:(a) バイタル髪を調製する工程;(b) 該工程(a)において調製された髪を開裂させて、毛包球(これが、真皮鞘碗状部及び真皮乳頭を含む)を取出す工程;(c) 非毛球真皮鞘組織を単離する工程;及び(d) 該単離された非毛球真皮鞘組織を培養して、NBDS細胞を製造する工程。
【0014】
バイタル(又は「生きた」)髪を調製するために、サンプルは、典型的に与えられた患者(例えば、ヒト、ウマ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、モルモット、ラット又はマウス等の哺乳動物)から得られる。該サンプルは、様々な部位(例えば、ヒトについては、頭皮の後頭部領域、胸又は大腿部から;及びウマについては、タテガミ又は尾から)得ることができる。該サンプルは、生検により、あるいは他の適当な手段(例えば、「剥ぎ取り」、又は切離により)得ることができる。好ましくは、発育の成長期における毛包が選択されるが、他の成長期(例えば、中間期)も利用することができる。
一旦上記サンプルが上記患者から得られたら、次に該サンプルを、典型的にはマイクロマニピュレータ及び外科用メスを利用して、上記毛包を単離するために分離するが、他の器具、例えば針を使用することも可能である。幾つかの態様において、図1Aに示したような該単離された毛包は、更に毛根の毛球部分上方(即ち、真皮乳頭及び真皮鞘碗状部細胞の上方)であるが、皮脂腺管の基部下方で開裂して、単離された真皮鞘を得ることができる(図1B参照)。図1Bに描写した構造は、図1C及び1Dに示したように、少なくとも2つの別々の構成要素に分離することができる。図1Cは、主にケラチノサイトを含む、該毛髪繊維及び関連する内毛根鞘、及び外毛根鞘を描写するものであり、また図1Dは、NBDS細胞(同様に、時には結合-組織鞘とも言われる)を含有する該真皮鞘である。
【0015】
上記真皮鞘(図1D)は、幾つかの態様において、例えば一方の側に沿って縦に切開することにより、あるいは酵素消化(例えば、コラーゲナーゼ、ディスパーゼ及びロイペプチン等のコラーゲン消化酵素を用いて)等の技術を利用することにより、更に分離することができる。
次いで、上記真皮鞘含有NBDS細胞、又は上記分離されたNBDS細胞を、細胞増殖を促進する培地(血清を含む又はこれを含まない何れかの)で培養することができる。適切な培地は、例えば繊維芽細胞増殖因子(FGF)、牛胎児/牛血清及び抗生物質を補充したDMEM/Hams F12を含む。あるいはまた、細胞は、血清を含まない方法において複製することもでき、該方法においては、血清を含まない培地と補充物質との様々な組合せが使用される。該血清を含まない培地の例は、血清補充物質及び/又はヒト由来の血小板抽出物を含有する、X-VivoTM 及びTheraPEAKTM FGM-CDTMを含む。3〜5日後に、典型的には、新鮮な増殖培地を、該培地に添加する。その後、該培地を2〜4日毎に変えることができる。該培養物が、約80〜90%密集状態に至った際に、該細胞を、トリプシン処理を通して該培養フラスコから分離し、かつより大きな組織培養フラスコに播種する。この段階は、例えば数回の継代に渡り(例えば、2、4、又は6回)、約5×106〜1×108個の細胞が得られるまで繰返される。
一旦所望数の細胞が得られたら、該細胞を数回洗浄し、トリプシン処理し、及び細胞輸送培地(CTM)に再懸濁する。該培地は、乳酸リンゲル液、10%ヒト血清アルブミン(HAS)及び5%ジメチルスルホキシド(DMSO)で構成されている。細胞を計数し、また最終濃度2×107細胞/mLを与えるように調節し、及び液体窒素中で保存する。
【0016】
NBDS細胞を含む組成物の製造
上述の如く、NBDS細胞(及び単離されたNBDS細胞)を、例えば血清、血漿、血小板に富む血漿、アルブミン(例えば、ヒトアルブミン)、フィブリン、及び/又はヒアルロン酸等の他の成分と共に、組成物内に含めることができる。他の市販品として入手し得る製品も、適当な組成物を製造するために使用することができ、これらは、例えばティッシール(TISSEEL)及びコシール(COSEAL)(バクスター(Baxter)から入手し得る)、ティッスコル(TISSUCOL)、ベリプラスト(BERIPLAST)、キクシル(QUIXIL)、タコシル(TACHOSIL)、及びエビセル(EVICEL)を含む。その他のポリマーを主成分とする組成物も利用することができ、これらは、例えばポリエチレングリコール、ポリ乳酸、及びポリカプロラクトンを包含する。好ましい態様において、該組成物は、自由に流動し、かつ注入可能な、1又は2つの部分(例えば、成分を混合するダブルバレルシリンジの状態で)与えられる。
また、その他の成分もこれらの組成物に含めることができ、該他の成分は、例えば細胞外マトリックスの成分(例えば、グリコサミノグリカン(GAGs)、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラチン硫酸、ヒアルロン酸、エラスチン、フィブロネクチン及びラミニン)、サイトカイン及びケモカイン(例えば、形質転換成長因子β(TGF-β)及びそのイソ型、インスリン様成長因子(IGF)及びそのイソ型、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、副甲状腺ホルモン関連タンパク質、肝細胞増殖因子/散乱因子(HGF/SF)、マクロファージ刺激タンパク質(MSP)、上皮増殖因子(EGF)、インターロイキン6(IL-6)、ストロマ細胞由来因子1(SDF-1)、血小板由来増殖因子(PDGF)及び線維芽細胞増殖因子(FGF)及び/又は様々な治療用薬剤(例えば、鎮痛薬、抗炎症薬及び免疫調節薬)を包含する。
【0017】
NBDS細胞を用いる腱損傷の治療方法
腱損傷を治療し又は予防するための方法も提供され、該方法は、NBDS細胞を含む組成物(上記の如き単離されたNBDS細胞を含む組成物を包含する)を、患者に投与する工程を含む。典型的には、細胞は注入によって投与されるが、様々な態様においては、外科的方法が使用されるのであれば、該細胞は開放創に直接与えることができる。適当な注入法の代表的な例は、標準的な注入器、並びに専用のデバイス、例えば米国特許出願第12/153,248号及びPCT公開第WO/2013/113121号に記載されているものを含む。これら特許文献両者を、全体として言及することによりここに組入れる。
広範囲に及ぶ腱損傷を、上記NBDS細胞(及び単離されたNBDS細胞)及びここに与られた方法を利用して、治療し又は予防することができる。例えば、事故又は傷害、外科的な損傷又は修復に起因する腱断裂又は裂傷は、治療することができる。更に、他の慢性の傷害も治療することができ、このような傷害は、例えば腱炎又は腱症などの腱障害、滑液鞘炎及び裂離等を含む。
【0018】
広範囲に及ぶ腱を、上記NBDS細胞(及び単離されたNBDS細胞)及びここに与られた組成物を使用して、治療することができる。例えば、一態様において、疾患及び/又は外傷(例えば、医学的又は外科的外傷又はその他の傷害)により損傷された腱が治療される。腱は断裂される可能性があり、及び/又は完全に又は部分的に裂けている(又は微細な裂傷)可能性がある。腱関連損傷の例は、腱障害(tendinopathies)、腱症(tendinoses)、腱炎(tendinitis)、滑液鞘炎(tenosynovitis)、パーテノニティス(partenonitis)、テニノシス(teninosis)を伴う腱傍組織腱炎(paratenonitis)、及び腱の微細な裂傷を含む。治療し得る代表的な腱は、例えばa) アキレス腱(例えば、中央部アキレス腱障害、アキレス腱の腱傍組織腱障害(paratendinopathy)、挿入アキレス腱障害、踵骨皮下包炎、浅踵骨滑液包炎);b) 肩腱(例えば、上腕二頭筋腱障害、回旋筋腱板腱障害);c) 肘腱(例えば、内側及び横方向上顆炎又はテニス肘);d) 手及び手首(例えば、屈筋/伸筋腱障害、屈筋/伸筋滑液鞘炎、デケルバン(De Quervain’s)疾患、及びデュピュイトラン(Dupuytren’s)拘縮);e) 微細な裂傷を伴う又は伴わない膝窩腱及び膝蓋腱障害;及びf) 微細な裂傷を伴う又は伴わない足底筋膜炎を包含する。
多数の種を、NBDS細胞(及び単離されたNBDS細胞)及びここに与えられる組成物で治療することができ、該種は、例えばヒト、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット又はマウス等の哺乳動物を包含する。
【実施例】
【0019】
以下の実施例は、本発明を例証するものであり、また本発明の範囲を限定するものとして理解すべきではない。
実施例1:組織のサンプリング
頭皮後頭部領域からの皮膚生検材料は、以下のように患者から得られる。要するに、一旦該頭皮の適切領域が選択されたら、これをバリカンで剃り、幾分かの短く刈られた頭髪が残っていることを確認する。次いで、該生検材料の領域を、十分に消毒し、かつ麻酔する。一旦麻酔が効果を示したら、4-10mmのディープパンチ生検材料を、該生検部位から穏やかに取出し、またその切り口を縫合糸で閉じるが、該縫合糸は12-14日後に除去することができる。次いで、該皮膚生検材料は、無菌条件下で、生検材料搬送培地を含む予めラベル表示した生検材料チューブ内に詰める。該培地は、抗生物質と共にDMEM/Hams F12で構成されている。
【0020】
実施例2:NBDS細胞の単離及び培養
無菌テストを、上記生検材料が移されている上記培地について実施して、該サンプルが汚染されていないことを確認し、あるいはまた該サンプルが汚染されている場合には、抗生物質を含む培地が後に使用されることを確認する。次に、該生検材料を数回洗浄して、該生検材料搬送培地及びあらゆるデブリを除去して、該組織を後の処理のために準備する。滅菌外科用メスを用いて上記皮膚の上皮を切取り、かつ滅菌ピンセットを用いて、周辺の真皮組織から毛包単位全体を「摘み取り」又は切り裂くことにより、Hams F12内で毛包を処理する。該毛包を、該皮膚表面にできるだけ近接して、ピンセットで把持し、また該毛包単位中の毛髪を引張り上げることにより、該毛包を露出させる。成長期(可視性の外毛根鞘及び毛球のDSCによって存在が示される、毛髪成長サイクルの成長期)における毛包を、更なる処理のために選択する。
NBDSの単離は、先ず、鋭い無菌小型外科用メス又は針を用いて、上記毛包の残りから毛包の真皮鞘碗状部細胞及び毛髪乳頭を分離し、かつこれらを捨てることによって、Hams F12内で実施される。NBDS細胞を含む該真皮鞘を除去し、またその組織を培養のために調製する。
【0021】
6〜10個の真皮鞘組織を、3%ヒアルロン酸ゲル内に静かに配置し、かつ細胞増殖促進培地、例えばFGF、10%FCS及び抗生物質を補充したDMEM/Hams F12等で覆う。3〜5日後、新鮮な増殖培地を該培養物に添加する。その後、該培地を2〜4日毎に交換する。該培養物が密集度約80〜90%に達した場合、トリプシン処理を通して該細胞を該培養フラスコから分離し、より大きな組織培養フラスコに播種する。この段階を4回の継代に渡って繰返して、約1×108個の細胞を得る。
一旦約1×108個の細胞が得られたら、該細胞をPBSで洗浄し、トリプシン処理し、かつ細胞形質転換培地(Cell Transportation Medium)(CTM:10%のヒト血清アルブミン及び5%のジメチルスルホキシドを含む乳酸リンゲル液)中に再懸濁する。該細胞を遠心分離処理によって沈降させ、かつ一緒に貯留する。その上澄みを吸引し、また該細胞ペレットをCTM内に再懸濁させる。2つの細胞サンプル/アリコートを、品質管理及び細胞計数のために該細胞-CTM混合物から取出す。該細胞を計数した後、該細胞を、遠心分離処理によってもう一度沈降させ、また得られる該ペレットを、最終濃度2×107細胞/mLを与えるように、CTMに再懸濁する。この最終的な細胞生成物は、出荷まで、液体窒素中で-130℃以下にて保存される。
【0022】
実施例3:NBDS細胞の調製及び腱への該細胞の投与
細胞を、2-チャンバー式注入器で使用するために調製する。その第一のチャンバーは、全体積1mL中に懸濁された約2×107個の細胞を含む。その第2のチャンバーは、1.5mLの患者由来の自己血漿(この手順に先立って別途調製された)を含む。
修復すべき腱の多数の位置に、該細胞を注入する(超音波ガイドの下で)ために、上記2-チャンバー式注入器が使用された。
【0023】
実施例4:腱延伸研究におけるタイプIコラーゲンの合成
手短に言えば、1.5mLの凍結NBDS細胞(全体で3×106個の細胞)を、0.15mLのCaCl2(500mMの原液)と混合することにより解凍する。1.5mLの血漿を添加し、またこの懸濁液を長円形鋳型に移す。約1時間後に、ゲルが形成されるが、該ゲルは、該鋳型から取出すことができる。次に、このリングを、該成形されたリング構造体を時間の経過と共に引延ばすことのできる機械に据付ける。測定は、経時で適用された延伸力について行うことができる。
上記成形リングは、また取外し、パラホルムアルデヒド中で固定化し、また1種又はそれ以上のタンパク質(例えば、コラーゲンタイプI、コラーゲンタイプIII、ビグリカン、テネイシンC、エラスチン、テノモジュリン(Tenomoduline)及びデコリン(Decorine))の存在に対して免疫組織化学的に染色することもできる。
図4に示したように、上記NBDS/血漿ゲル混合物は、5日後(図4A)及び12日後(図4B)に穏やかな延伸処理に付された。サンプルは、タイプIコラーゲン産生につき免疫染色された(ホースラディッシュペルオキシダーゼを用いて)。図4B図4Aよりも顕著により暗色(褐色)であり、このことは、該細胞が、コラーゲン産生について正であることを示しており、これは機械的な遠心処理後に増大した。これら研究の結果は、NBDS細胞が、コラーゲンを生成することができ、かつインビトロにて腱-様の構造を形成し得ることを明確に立証している。特に、上記成形ゲル内の細胞は、上記延伸方向に従って配向している(正常な腱における細胞と同様に)。
【0024】
上述の様々な態様は、更なる態様を提供すべく組合せることができる。本明細書において言及され及び/又はアプリケーションデータシートに掲載された上記全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び特許以外の刊行物は、これらの全体として、言及によりここに組入れられる。該態様の局面は、更に別の態様を提供するために、必要ならば様々な上記特許、出願及び刊行物の概念を利用して変更することができる。
これらの及びその他の変更は、上記の詳細な説明に照らして、上記態様に対して行うことができる。一般的に、添付した特許請求の範囲において、使用されている用語は、特許請求の範囲を、本明細書及び特許請求の範囲において開示された特定の態様に限定するものと解釈すべきではなく、該特許請求の範囲が権利を持つ等価物の全範囲と共に、可能なすべての態様を含むものと解釈すべきである。従って、添付した特許請求の範囲は、本開示により限定されない。
図1A-1C】
図1D
図2
図3
図4A-B】