特許第6581917号(P6581917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581917
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20190912BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20190912BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20190912BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20190912BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   B01J35/04 301G
   F01N3/28 301P
   B01J23/46 311A
   B01J35/04 301E
   B01D53/94 280
   B01D53/94 222
   B01D53/94 245
   F01N3/20 DZAB
【請求項の数】13
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-29501(P2016-29501)
(22)【出願日】2016年2月19日
(65)【公開番号】特開2017-144405(P2017-144405A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】高橋 道夫
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−154647(JP,A)
【文献】 特開2013−212493(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/054651(WO,A1)
【文献】 特開2010−131589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 53/86
B01D 53/94
F01N 3/20
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入端面から流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造部を備え、
前記ハニカム構造部は、前記セルの延びる方向に直交する断面において、中央部、境界部、及び外周部を含み、
前記中央部は、前記断面の中央部分に存在する前記セルを含む部位であり、
前記境界部は、前記中央部の外周を囲繞するように存在する前記セルを含む部位であり、
前記外周部は、前記境界部の更に外側に存在する前記セルを含む部位であり、
前記境界部に形成された前記セルは、前記流入端面側の端部と前記流出端面側の端部に、当該セルの開口部を封止する目封止部が配設された両端封止セルを含み、
前記中央部に存在する全ての前記セルが、前記流入端面側の端部と前記流出端面側の端部に前記目封止部が配設されていない両端開口セルである、ハニカム構造体。
【請求項2】
前記外周部の最外周に形成された前記セルは、当該セルの周囲を区画する前記隔壁の一部が欠落した不完全セルを含み、
前記ハニカム構造部は、前記外周部を覆うように配置された外周コート層を有する、請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記外周部の最外周に形成された前記セルは、前記流入端面側の端部と前記流出端面側の端部に、当該セルの開口部を封止する目封止部が配設された最外周両端封止セルを含む、請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記外周部は、
前記境界部の外周を囲繞するように存在する前記セルを含む第一の外周部と、
前記第一の外周部の外周を更に囲繞するように存在する前記セルを含む外周部内境界部と、
前記外周部内境界部の更に外側に存在する前記セルを含む第二の外周部と、を含み、
前記外周部内境界部に形成された前記セルは、前記流入端面側の端部と前記流出端面側の端部に、当該セルの開口部を封止する目封止部が配設された外周部両端封止セルを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記ハニカム構造部の前記隔壁の平均細孔径が、5μm以上、200μm以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記ハニカム構造部の前記隔壁の気孔率が、25%以上、70%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記ハニカム構造部の前記隔壁の厚さが、0.038mm以上、0.500mm以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記ハニカム構造部のセル密度が、15個/cm以上、233個/cm以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項9】
前記ハニカム構造部は、前記中央部のセル密度と、前記外周部のセル密度とが異なる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項10】
前記ハニカム構造部は、前記中央部のセル密度が、前記外周部のセル密度よりも大である、請求項9に記載のハニカム構造体。
【請求項11】
前記ハニカム構造部の前記隔壁が、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートの群より選択される少なくとも一種のセラミックスを含む材料によって構成されたものである、請求項1〜10のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項12】
内燃機関の排ガス浄化用に用いられる、請求項1〜11のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項13】
前記ハニカム構造部の前記隔壁の表面及び前記隔壁の細孔のうちの少なくとも一方に、排ガス浄化用の触媒が担持されている、請求項1〜12のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。更に詳しくは、排ガス浄化用の触媒を担持するための触媒担体として用いた際に、触媒を早期に活性化させることが可能なハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、社会全体で環境問題に対する意識が高まっており、燃料を燃焼して動力を生成する技術分野では、燃料の燃焼時に発生する排ガスから、窒素酸化物等の有害成分を除去する様々な技術が開発されている。
【0003】
従来、自動車等のエンジンから排出される排ガス中に含まれるHC、CO、NOx等の有害物質の浄化処理のため、ハニカム構造体に触媒を担持したものが使用されている。このように、ハニカム構造体に担持した触媒によって排ガスを処理する場合、触媒をその活性温度まで昇温する必要があるが、エンジン始動時には、触媒が活性温度に達していないため、排ガスが十分に浄化されないという問題があった。
【0004】
上述したように、エンジン等の内燃機関を始動した直後に排ガスを浄化するには、早期にハニカム構造体に担持された触媒を活性化させる必要があり、種々の検討がなされている。例えば、触媒担体とケーシングとの間隙に介装される保持材の主要原料である無機繊維に、ベンガラ、酸化チタン、酸化亜鉛、または炭化珪素を配合するという技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。上記のような原料によって構成された保持材は、保持性能やシール性能はそのままで、優れた断熱効果が得られるとされている。
【0005】
また、セル構造部の最外周セル及びそれから内部方向に位置する所定数のセルが、その少なくとも一方の中心軸方向の端部及び/又は中間部で外壁の内周面によって封止されて、遮蔽セルを構成しているハニカム構造体が開示されている(例えば、特許文献2参照)。このようなハニカム構造体は、ハニカム構造体の外壁を形成すると同時に、セルの端面の封止を行うため、セルの端面を封止する工程を別途行う必要がない。このため、このようなハニカム構造体は、生産性に優れている。また、このようなハニカム構造体は、セル構造部を加熱した時に、外壁への熱の逃げを抑制できるため、エンジン始動時からのセル構造部の温度上昇時間が短くなり、短時間で触媒活性を高くすることができる。
【0006】
また、排ガス浄化装置用の保持シール材として、無機繊維からなるマット状の保持シール材であって、保持シール材を構成するマットのいずれかの主面に、ヒータが配設されたものが開示されている(例えば、特許文献3参照)。保持シール材が巻き付けられた排ガス処理体をケーシングに収容して排ガス浄化装置として使用する際には、保持シール材がヒータを備えているため、任意のタイミングで排ガス処理体を過熱することができる。したがって、エンジン等の内燃機関を始動した直後の排ガス処理体の昇温を迅速に行い、触媒機能を発揮できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−293753号公報
【特許文献2】特開2003−284923号公報
【特許文献3】特開2014−190191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された保持材によれば、断熱効果を高めることができるとされている。しかしながら、このような保持材は、触媒担体とケーシングとの間隙に圧縮された状態で使用されるため、保持材自体が薄くなり、必ずしも断熱効果が高くなるものではなく、実際の使用時において、十分の断熱効果が発現しないことがあるという問題があった。
【0009】
特許文献2に記載されたハニカム構造体は、外壁を形成する際にセルの端面を封止したものである。このようなハニカム構造体は、セルを封止する領域が、セル構造部の外周に限定されてしまうため、必ずしも断熱効果が高くなるものではなく、十分の断熱効果が発現しないことがあるという問題があった。
【0010】
特許文献3に記載された技術では、排ガス処理体に、ヒータを備えた保持シール材を巻き付けて、ヒータを加熱することにより、排ガス処理体の急昇温を行うものである。このような技術においては、ヒータを加熱するために、保持シール材に対して電気を供給する必要があり、自動車等のエンジンから排出される排ガスの処理を行うためには、燃費への悪影響が避けられないという問題があった。また、特許文献3に記載された保持シール材は、ヒータを制御するための機構が必要となり、その製造コストが増加するという問題もあった。
【0011】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされてものである。本発明は、排ガス浄化用の触媒を担持するための触媒担体として用いた際に、触媒を早期に活性化させることが可能なハニカム構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、以下に示すハニカム構造体が提供される。
【0013】
[1] 流入端面から流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造部を備え、前記ハニカム構造部は、前記セルの延びる方向に直交する断面において、中央部、境界部、及び外周部を含み、前記中央部は、前記断面の中央部分に存在する前記セルを含む部位であり、前記境界部は、前記中央部の外周を囲繞するように存在する前記セルを含む部位であり、前記外周部は、前記境界部の更に外側に存在する前記セルを含む部位であり、前記境界部に形成された前記セルは、前記流入端面側の端部と前記流出端面側の端部に、当該セルの開口部を封止する目封止部が配設された両端封止セルを含み、前記中央部に存在する全ての前記セルが、前記流入端面側の端部と前記流出端面側の端部に前記目封止部が配設されていない両端開口セルである、ハニカム構造体。
【0014】
[2] 前記外周部の最外周に形成された前記セルは、当該セルの周囲を区画する前記隔壁の一部が欠落した不完全セルを含み、前記ハニカム構造部は、前記外周部を覆うように配置された外周コート層を有する、前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0015】
[3] 前記外周部の最外周に形成された前記セルは、前記流入端面側の端部と前記流出端面側の端部に、当該セルの開口部を封止する目封止部が配設された最外周両端封止セルを含む、前記[1]又は[2]に記載のハニカム構造体。
【0016】
[4] 前記外周部は、前記境界部の外周を囲繞するように存在する前記セルを含む第一の外周部と、前記第一の外周部の外周を更に囲繞するように存在する前記セルを含む外周部内境界部と、前記外周部内境界部の更に外側に存在する前記セルを含む第二の外周部と、を含み、前記外周部内境界部に形成された前記セルは、前記流入端面側の端部と前記流出端面側の端部に、当該セルの開口部を封止する目封止部が配設された外周部両端封止セルを含む、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0017】
[5] 前記ハニカム構造部の前記隔壁の平均細孔径が、5μm以上、200μm以下である、前記[1]〜[4]のいずれかにに記載のハニカム構造体。
【0018】
[6] 前記ハニカム構造部の前記隔壁の気孔率が、25%以上、70%以下である、前記[1]〜[5]のいずれかにに記載のハニカム構造体。
【0019】
[7] 前記ハニカム構造部の前記隔壁の厚さが、0.038mm以上、0.500mm以下である、前記[1]〜[6]のいずれかにに記載のハニカム構造体。
【0020】
[8] 前記ハニカム構造部のセル密度が、15個/cm以上、233個/cm以下である、前記[1]〜[7]のいずれかにに記載のハニカム構造体。
【0021】
[9] 前記ハニカム構造部は、前記中央部のセル密度と、前記外周部のセル密度とが異なる、前記[1]〜[8]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0022】
[10] 前記ハニカム構造部は、前記中央部のセル密度が、前記外周部のセル密度よりも大である、前記[9]に記載のハニカム構造体。
【0023】
[11] 前記ハニカム構造部の前記隔壁が、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートの群より選択される少なくとも一種のセラミックスを含む材料によって構成されたものである、前記[1]〜[10]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0024】
[12] 内燃機関の排ガス浄化用に用いられる、前記[1]〜[11]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0025】
[13] 前記ハニカム構造部の前記隔壁の表面及び前記隔壁の細孔のうちの少なくとも一方に、排ガス浄化用の触媒が担持されている、前記[1]〜[12]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0026】
本発明のハニカム構造体は、柱状のハニカム構造部を備え、このハニカム構造部が、セルの延びる方向に直交する断面において、中央部、境界部、及び外周部を含んでいる。そして、境界部に形成されたセルが、流入端面側の端部と流出端面側の端部に、当該セルの開口部を封止する目封止部が配設された両端封止セルを含んでいるため、この両端封止セルが、中央部に対する断熱層となる。このため、本発明のハニカム構造体は、排ガス浄化用の触媒を担持するための触媒担体として用いた際に、触媒を早期に活性化させることができる。即ち、本発明のハニカム構造体は、エンジン冷間始動時のライトオフ性能(Light−off Performance)に優れたものである。
【0027】
また、本発明のハニカム構造体は、更に、外周部の最外周に形成されたセルが、流入端面側の端部と流出端面側の端部に、当該セルの開口部を封止する目封止部が配設された最外周両端封止セルを含んでいてもよい。このようなハニカム構造体は、最外周両端封止セルが、ハニカム構造部全体の断熱層となり、エンジン冷間始動時のライトオフ性能により優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2A図1に示すハニカム構造体の流入端面を模式的に示す平面図である。
図2B図1に示すハニカム構造体の流出端面を模式的に示す平面図である。
図3図2AのX−X’断面を模式的に示す、断面図である。
図4】本発明のハニカム構造体の他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。
図5】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。
図6】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。
図7】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。
図8】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。
図9】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。
図10】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。
図11】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。
図12】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。
図13】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。
図14】実施例の熱サイクル試験における、ハニカム構造体を缶体に挿入した状態を示す模式図である。
図15】実施例のHC浄化試験において用いられる装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。
【0030】
(1)ハニカム構造体:
図1図3に示すように、本発明のハニカム構造体の一の実施形態は、多孔質の隔壁1を有するハニカム構造部4を備えたハニカム構造体100である。多孔質の隔壁1は、流入端面11から流出端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を区画形成するものである。ハニカム構造部4は、流入端面11及び流出端面12を両端面とする柱状を呈している。
【0031】
図1図3に示すハニカム構造部4は、セル2を区画形成する隔壁1を囲繞するように配設された外周壁3を有している。ここで、図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。図2Aは、図1に示すハニカム構造体の流入端面を模式的に示す平面図である。図2Bは、図1に示すハニカム構造体の流出端面を模式的に示す平面図である。図3Aは、図2のX−X’断面を模式的に示す、断面図である。
【0032】
ハニカム構造体100を構成するハニカム構造部4は、セル2の延びる方向に直交する断面において、中央部21、境界部22、及び外周部23を含む。ここで、中央部21は、上記断面の中央部分に存在するセル2aを少なくとも1つ以上含む部位である。境界部22は、中央部21の外周を囲繞するように存在するセル2bを含む部位である。外周部23は、境界部22の更に外側に存在するセル2cを含む部位である。そして、境界部22に形成されたセル2bは、流入端面11側の端部と流出端面12側の端部に、当該セル2の開口部を封止する目封止部5が配設された両端封止セル32bを含む。なお、以下、特に断りのない限り、「ハニカム構造体の断面」という場合は、ハニカム構造部の、セル2の延びる方向に直交する断面のことを意味することとする。
【0033】
本実施形態のハニカム構造体100においては、中央部21の外周を囲繞するように両端封止セル32bが存在するため、この両端封止セル32bが、中央部21に対する断熱層となる。このため、本実施形態のハニカム構造体100は、排ガス浄化用の触媒を担持するための触媒担体として用いた際に、触媒を早期に活性化させることができる。即ち、本実施形態のハニカム構造体100は、エンジン冷間始動時のライトオフ性能に優れたものである。なお、ライトオフ性能とは、ハニカム構造体100に担持した触媒の浄化性能が発現する温度特性のことを意味する。
【0034】
中央部21に存在するセル2aは、その全てのセル2aが、流入端面11側の端部と流出端面12側の端部に目封止部5が配設されていない、両端が開口した両端開口セル32aとなっている。
【0035】
中央部21は、上記断面の中央部分に存在するセル2を少なくとも1つ以上含む部位であり、ハニカム構造部4の断面積に対して、5〜80%に相当する範囲であることが好ましく、10〜55%に相当する範囲であることが更に好ましい。このように構成することによって、ハニカム構造部4の中央部21におけるライトオフ性能がより良好なものとなる。
【0036】
境界部22は、中央部21の外周を囲繞するように存在するセル2bを含む部位である。図1図3に示すハニカム構造体100においては、この境界部22に存在するセル2bが、全て両端封止セル32bとなっている。「中央部21の外周を囲繞するように存在するセル2b」は、中央部21に存在するセル2aと隣接するセル2を少なくとも全て含み、且つ、当該隣接するセル2と更に隣接する他のセル2を含んでもよい。
【0037】
境界部22に存在するセル2bは、中央部21に存在するセル2aと隣接するセル2bの総数のうち、10%以上の個数のセル2bが、両端封止セル32bであることが好ましい。例えば、図4に示すハニカム構造体101においては、ハニカム構造部4の中央部21の外周を囲繞する境界部22に存在するセル2bが、両端封止セル32bと両端開口セル32eとを含んでいる。ここで、境界部22の両端開口セル32eは、流入端面11側の端部と流出端面(図示せず)側の端部に目封止部5が配設されていない、両端が開口したセル2bのことをいう。また、図5に示すハニカム構造体102においては、ハニカム構造部4の中央部21の外周を囲繞する境界部22に存在するセル2bが、両端封止セル32bと両端開口セル32eとを含んでいる。そして、図5に示すハニカム構造体102においては、境界部22において、両端封止セル32bと両端開口セル32eとが交互に配列するようにして、中央部21の外周を囲繞するように存在している。
【0038】
ここで、図4は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図であり、図5は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。図4及び図5において、図1図3に示すハニカム構造体100と同様の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0039】
ここで、ハニカム構造部の流入端面及び流出端面において、セルの開口部の形状が多角形である場合、複数のセルのそれぞれは、多角形の頂点同士が対向するように隣接する場合と、多角形の一辺を共有するように隣接する場合との、2通りの隣接方法がある。以下、本明細書において、2つのセルが、多角形の頂点同士が対向するように隣接することを、2つのセルが「点で隣接する」ということがある。また、2つのセルが、多角形の一辺を共有するように隣接することを、2つのセルが「辺で隣接する」ということがある。
【0040】
境界部22に存在するセル2bは、点で隣接するセルの集合体であってもよし、辺で隣接するセルの集合体であってもよいし、或いは、点で隣接するセルと辺で隣接するセルとが混在した集合体であってもよい。
【0041】
境界部に存在する両端封止セルは、2つの両端封止セル同士が点又は辺で隣接するものであってもよいし、図4及び図5に示すような、両端開口セル32eを挟んで存在するものであってもよい。2つの両端封止セル同士が辺で隣接するものであると、中央部の断熱効果がより高くなる。2つの両端封止セル同士が点で隣接する場合には、幾何学的に、辺で隣接する場合よりも両端封止セルの個数が少なくなるため、ハニカム構造体100の圧力損失が小さくなり易い。例えば、図6に示すハニカム構造体103は、境界部22の一部において、両端封止セル32bが辺で隣接しており、境界部22の他の部において、両端封止セル32bが点で隣接している。一方で、図7に示すハニカム構造体104は、境界部22の全てにおいて、両端封止セル32bが辺で隣接している。図6に示すハニカム構造体103と、図7に示すハニカム構造体104とを比較すると、図7に示すハニカム構造体104の方が、境界部22の両端封止セル32bの個数が多くなる。なお、図6及び図7において、ハニカム構造部4に形成されたセル2の個数は同じであり、中央部21の大きさも同じである。
【0042】
ここで、図6及び図7は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。図6及び図7において、図1図3に示すハニカム構造体100と同様の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0043】
境界部は、中央部の外周を囲繞するように存在するセルを含む部位によって構成された、環状の領域である。ハニカム構造部の断面における、境界部の幅は、当該断面の外径の長さの、0.5〜20%であることが好ましく、0.9〜18%であることが更に好ましい。「断面の外径」とは、ハニカム構造部の断面の外周上の一の点から、その断面の中心を通り、断面の外周上の他の点までの長さのことである。例えば、ハニカム構造部の断面形状が円の場合には、「断面の外径」は、円の直径となる。境界部の幅が、断面の外径の長さの、0.5%未満であると、中央部の断熱効果が十分に発現しないことがある。ここで、0.5%未満とは、例えば、1つのセルの開口部の一部分のみに目封止部が配設され、そのセルの開口部が完全には目封止されていない場合を含むことを意図している。一方、境界部の幅が、断面の外径の長さの、20%を超えると、ハニカム構造体の圧力損失が増大することがある。
【0044】
ハニカム構造部の断面における、境界部の形状については特に制限はない。図1図3に示すハニカム構造体100においては、境界部22の形状が、ハニカム構造部4の外周形状の相似形状に近い、円形状の環状となっている。なお、境界部22は、隔壁1によって区画された多角形状のセル2を含む領域であるため、図2A及び図2bに示すように、円形状の環状が、厳密な円形状を呈していないことがある。以下に説明する境界部の形状についても、その境界部の形状が、説明する形状を厳密に呈していることを要せず、当該形状に類似する形状を全て含むものとする。
【0045】
以下、本実施形態のハニカム構造体における、境界部の形状の他の例について説明する。図8に示すハニカム構造体105は、境界部22の形状が、楕円形状の環状となっている。図9に示すハニカム構造体106は、境界部22の形状が、四角形状の環状となっている。図10に示すハニカム構造体107は、境界部22の形状が、長方形状の環状となっている。図11に示すハニカム構造体108は、境界部22の形状が、三角形状の環状となっている。図12に示すハニカム構造体109は、境界部22の形状が、五角形状の環状となっている。このように、本実施形態のハニカム構造体における境界部の形状は、種々の形状をとることができる。また、図8図12においては、境界部22に存在するセル2bが、全て両端封止セル32bである場合の例を示しているが、境界部22に存在するセル2bの一部が、図4及び図5に示すような両端開口セル32eを含んでいてもよい。また、図8図12における両端封止セル32bの隣接方法については、図示した例示に限定されることはなく、例えば、図示において、点で隣接している部分を、辺で隣接するように変更してもよいし、その逆の変更も可能である。
【0046】
ここで、図8図12は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。図8図12において、図1図3に示すハニカム構造体100と同様の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0047】
両端封止セルにおける、目封止部の流入端面及び流出端面からの長さについては特に制限はない。例えば、両端封止セルの流入端面から流出端面までの長さに対する、各端面からの目封止部の長さの比率が、1〜30%であることが好ましく、2〜20%であることが更に好ましく、5〜10%であることが特に好ましい。各端面からの目封止部の長さの比率が、1%未満であると、目封止部が両端封止セルから脱落し易くなることがある。一方、各端面からの目封止部の長さの比率が、30%を超えると、目封止部の熱膨張に伴い、ハニカム構造部が破損し易くなることがある。また、両端封止セル内の目封止部の容積が増大し、両端封止セルの熱容量が大きくなることで、加熱された中央部の熱が両端封止セルに奪われてしまうことがある。したがって、両端封止セルは、その両端の目封止部以外の部分が中空となっていることが好ましい。
【0048】
図1図3に示すように、外周部23は、境界部22の更に外側に存在するセル2cを含む部位である。本実施形態のハニカム構造体100においては、外周部23の最外周に形成されたセル2cは、流入端面11側の端部と流出端面12側の端部に、セル2cの開口部を封止する目封止部5が配設された最外周両端封止セル32dを含むことが好ましい。そして、図1図3に示すハニカム構造体100においては、外周部23に存在するセル2cのうち、最外周両端封止セル32d以外のセル2cは、その両端が開口した両端開口セル32cとなっている。
【0049】
本実施形態のハニカム構造体100は、中央部21における断熱効果が最も高くなっており、中央部21のエンジン冷間始動時のライトオフ性能に特に優れている。排ガス浄化用の触媒を担持するための触媒担体として使用した際に、中央部21は排ガスの流速が高く、この中央部21のライトオフ性能をより向上させることにより、触媒の浄化性能を有効に発揮させることができる。また、本実施形態のハニカム構造体100において、外周部23の最外周に最外周両端封止セル32dが存在する場合には、最外周両端封止セル32dが、ハニカム構造部4全体の断熱層となる。このため、外周部23の最外周に最外周両端封止セル32dが存在するハニカム構造体100は、中央部21には劣るものの、外周部23についても、エンジン冷間始動時のライトオフ性能を有効に向上させることができる。
【0050】
外周部23においては、外周部23の最外周に形成されたセル2cの総数のうち、10%以上の個数のセル2cが、最外周両端封止セル32dであることが好ましい。ここで、外周部23の最外周に形成されたセル2cとは、セル2cの周囲が、ハニカム構造部4の外周壁3によって区画されている不完全なセルを含む。また、最外周両端封止セル32dは、外周部23の最外周に形成されたセル2cだけでなく、最外周に形成されたセル2cと辺で隣接する他のセル2cによって構成されていてもよい。例えば、最外周両端封止セル32dとなり得るセル2cは、最外周に形成されたセル2c、及び最外周に形成されたセル2cからハニカム構造部の中心に向かって3個以内の辺で隣接するセル2cであることが好ましい。このように構成することによって、ハニカム構造部4の断熱効果を高め、エンジン冷間始動時のライトオフ性能を向上させることができる。
【0051】
図1図3に示すハニカム構造部4は、セル2を区画形成する隔壁1を囲繞するように配設された外周壁3を有している。このように構成されたハニカム構造部4は、例えば、成形原料を押出成形等によって成形した成形体を、乾燥し、焼成することによって作製することができる。即ち、図1図3に示すハニカム構造部4は、多孔質の隔壁1と外周壁3とに境界がなく、一体的に構成された1つの構造体となっている。
【0052】
本実施形態のハニカム構造体においては、図示は省略するが、ハニカム構造部が、その外周を覆うように配設された外周コート層を有するものであってもよい。例えば、図1図3に示すようなハニカム構造部4の外周壁3を、研削加工等によって一旦取り除いた後、外周壁を取り除いたハニカム構造部の外周に、外周コート材を塗工し、ハニカム構造部の外周を覆うような外周コート層を配設してもよい。
【0053】
上述したように、ハニカム構造部の外周壁を、研削加工等により取り除いた場合には、ハニカム構造部の最外周には、セルの周囲を区画する隔壁の一部が欠落した不完全セルが含まれることとなる。したがって、上記した不完全セルを有するハニカム構造部に外周コート層が配設された場合には、不完全セル内の少なくとも一部に、外周コート層が侵入することがある。このようなハニカム構造部においては、外周コート層が侵入した不完全セルを、ハニカム構造部の断熱層として利用することができる。更に、外周コート層が侵入した不完全セルに加え、ハニカム構造部の外周部の最外周に最外周両端封止セルを更に存在させることもできる。この場合には、外周コート層が侵入した不完全セルよりも1つ内側に存在するセルを、ハニカム構造部の最外周のセルとしてもよい。ハニカム構造部の外周部に最外周両端封止セルが存在することにより、ハニカム構造部全体の断熱効果を更に向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態のハニカム構造体は、図13に示すハニカム構造体110のように構成されたものであってもよい。図13に示すハニカム構造体110においては、外周部23が、第一の外周部123と、外周部内境界部223と、第二の外周部323と、を含んでいる。ここで、図13は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。
【0055】
第一の外周部123は、境界部22の外周を囲繞するように存在するセル2cを含む部位である。第一の外周部123では、その全てセル2cが、両端開口セル32cとなっている。
【0056】
外周部内境界部223は、第一の外周部123の外周を更に囲繞するように存在するセル2cを含む部位である。外周部内境界部223に形成されたセル2cは、流入端面11側の端部と流出端面(図示せず)側の端部に、セル2cの開口部を封止する目封止部5が配設された外周部両端封止セル32fを含んでいる。なお、外周部内境界部223は、外周部両端封止セル32fのみによって構成されていてもよいし、外周部両端封止セル32f以外に、両端開口セル(図示せず)を含んでいてもよい。
【0057】
第二の外周部323は、外周部内境界部223の更に外側に存在するセル2cを含む部位である。ハニカム構造体110においては、第二の外周部323には、その両端が開口している両端開口セル32cと、最外周両端封止セル32dとが存在している。
【0058】
図13に示すハニカム構造体110においては、両端封止セル32bを含む境界部22と、外周部両端封止セル32fを含む外周部内境界部223と、最外周両端封止セル32dを含む外周部23の最外周と、の三重の断熱構造となっている。
【0059】
外周部内境界部223は、これまでに説明した、ハニカム構造部4における境界部22(例えば、図2A参照)と同様の構成を採用することができる。なお、図13に示すハニカム構造体110においても、ハニカム構造部4は、大きく、中央部21、境界部22、及び外周部23に分類することができる。したがって、外周部内境界部223は、外周部23内において、境界部22と同質の作用効果を発現するための断熱層となっている。外周部内境界部223は、これまでに説明した境界部22(例えば、図2A参照)と同様の構成を採用することができる。例えば、外周部内境界部223は、外周部両端封止セル32fのみによって構成されていてもよいし、外周部両端封止セル32f以外に、両端開口セル(図示せず)を含んでいてもよい。外周部内境界部223の幅等についても、これまでに説明した境界部22と同様の構成を採用することができる。
【0060】
また、図示は省略するが、例えば、第二の外周部の外側に、更に、外周部両端封止セルを含む第二の外周部内境界部を有し、この第二の外周部内境界部の更に外側に、第三の外周部を有していてもよい。このように、外周部内に、2つ以上の外周部内境界部を有することで、四重以上の断熱構造となっていてもよい。
【0061】
ハニカム構造部の隔壁の平均細孔径が、5μm以上、200μm以下であることが好ましく、10μm以上、100μm以下であることが更に好ましい。隔壁の平均細孔径が5μm未満であると、触媒中の触媒成分のライトオフ性能が低下することがある。隔壁の平均細孔径が200μmを超えると、隔壁の強度が低下することがある。
【0062】
ハニカム構造部の隔壁の気孔率が、25%以上、70%以下であることが好ましく、35%以上、65%以下であることが更に好ましい。気孔率が25%未満であると、ハニカム構造部の隔壁自体が緻密体となるため、ハニカム構造部の隔壁の表面に触媒を担持し難くなる点で好ましくない。また、気孔率が70%を超えると、ハニカム構造部の強度が低下する点で好ましくない。隔壁の平均細孔径及び気孔率は、水銀ポロシメータ(Mercury porosimeter)によって計測された値とする。水銀ポロシメータとしては、例えば、Micromeritics社製のAutopore 9500(商品名)を挙げることができる。
【0063】
ハニカム構造部の隔壁の厚さが、0.038mm以上、0.500mm以下であることが好ましく、0.050mm以上、0.300mm以下であることが更に好ましい。本実施形態のハニカム構造体においては、上記のような隔壁の厚さとすることにより、ハニカム構造体の破損抑制と圧力損失抑制の点で好ましい。例えば、隔壁の厚さが0.038mm未満であると、隔壁が破損し易くなることがある。隔壁の厚さが0.500mmを超えると、ハニカム構造体の圧力損失が増大することがある。隔壁の厚さは、ハニカム構造体の断面の形状を、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)によって観測することにより測定した値である。
【0064】
ハニカム構造部のセル密度が、15個/cm以上、233個/cm以下であることが好ましく、30個/cm以上、186個/cm以下であることが更に好ましい。セル密度が、15個/cm未満であると、ハニカム構造体として強度は不足することがある。233個/cmを超えると、ハニカム構造体の圧力損失が増大することや、触媒を担持した場合に、担持した触媒によってセルの目詰まりが発生することがある。
【0065】
また、ハニカム構造部は、中央部のセル密度と、外周部のセル密度とが異なるものであってもよい。また、ハニカム構造部は、中央部のセル密度が、外周部のセル密度よりも大であることが好ましい。なお、ハニカム構造部は、中央部のセル密度が、外周部のセル密度よりも小であってもよい。
【0066】
ハニカム構造部の隔壁は、セラミックスを含む材料からなるものであることが好ましい。更に、隔壁を構成する材料は、下記、「材料群」から選択される少なくとも一種のセラミックスを含むものであることが好ましい。「材料群」とは、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートを含む群である。
【0067】
セルの延びる方向に直交する断面におけるセルの形状は、特に限定されない。例えば、「三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等の多角形」、円形、楕円形等を挙げることができる。また、これらの形状の複数を組み合わせた態様も、好ましい態様である。また、四角形の中では、正方形又は長方形が好ましい。また、セルの形状は、ハニカム構造部の中央部と外周部とで異なっていてもよい。また、境界部のセルの形状は、中央部又は外周部のセルの形状と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0068】
ハニカム構造体の全体形状については特に制限はない。例えば、ハニカム構造体の全体形状は、流入端面及び流出端面の形状が、円形、楕円形、多角形等の柱状であってもよい。また、流入端面及び流出端面の形状が不定形の柱状であってもよい。また、ハニカム構造体の大きさは、特に限定されないが、流入端面から流出端面までの長さが、25〜350mmであることが好ましい。また、ハニカム構造体の全体形状が円柱状の場合、それぞれの端面の直径が、30〜500mmであることが好ましい。
【0069】
目封止部は、セラミックスを含む材料からなるものであることが好ましい。目封止部を構成する材料は、上述した隔壁を構成する材料の好適な「材料群」から選択される少なくとも一種のセラミックスを含むものであることが好ましい。
【0070】
本実施形態のハニカム構造体は、内燃機関の排ガス浄化用の部材として好適に用いることができる。特に、排ガス浄化用の触媒を担持するための触媒担体として好適に利用することができる。本実施形態のハニカム構造体は、ハニカム構造部の隔壁の表面及び隔壁の細孔のうちの少なくとも一方に、排ガス浄化用の触媒が担持されたものであってもよい。
【0071】
触媒の担持量は、10〜400g/リットルであることが好ましく、50〜200g/リットルであることが更に好ましい。触媒の担持量が、10g/リットルより少ないと、排ガス浄化性能が低くなることがある。触媒の担持量が、400g/リットルより多いと、圧力損失が大きくなることがある。ここで、触媒担持量(g/リットル)は、隔壁の表面及び細孔に担持された触媒の総質量を、ハニカム構造体の体積で除した値である。なお、ハニカム構造体の体積とは、隔壁、目封止部、及びセルの空間、の合計体積のことを意味する。即ち、ハニカム構造体の全体形状が円柱状の場合には、この円柱状の体積が、ハニカム構造体の体積である。
【0072】
触媒としては、従来公知の自動車排ガス用の触媒を挙げることができる。例えば、「Pt、Pd、Rh等の貴金属を基体とした三元触媒」、酸化触媒、脱臭触媒、「Mn、Fe、Cu等の卑金属触媒」等を挙げることができる。
【0073】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
次に、本発明のハニカム構造体の製造方法について説明する。
【0074】
本発明のハニカム構造体を製造する際には、まず、ハニカム成形体を成形するための成形原料を調製する。成形原料は、セラミックス原料を含有するものであることが好ましい。
【0075】
成形原料に含有されるセラミックス原料としては、例えば、以下の「原料群」から選択される少なくとも一種のセラミックスが好ましい。「原料群」とは、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト化原料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートを含む群である。これらの原料を用いることにより、強度及び耐熱性に優れたハニカム構造体を得ることができる。なお、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミックス原料である。そして、コージェライト化原料は、焼成されてコージェライトになるものである。シリカ源となる原料成分としては、石英、溶融シリカ等を挙げることができる。アルミナ源となる原料成分としては、不純物が少ないため、酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムのうちの少なくとも一方を用いることが好ましい。マグネシア源となる原料成分としては、タルク、マグネサイト等を挙げることができる。マグネシア源としてのタルクは、平均粒子径が10〜30μmであることが好ましい。また、マグネシア源成分は、不純物として、Fe、CaO、NaO、KO等を含有してもよい。
【0076】
成形原料は、上記セラミックス原料に、造孔材、バインダ、分散剤、界面活性剤、分散媒等を混合して調製することが好ましい。
【0077】
造孔材としては、グラファイト、小麦粉、澱粉、発泡樹脂、吸水性ポリマー等を挙げることができる。また、造孔材としては、フェノール樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂を挙げることができる。これらの合成樹脂は、中空の粒子であってもよいし、中空部分のない中身の詰まった粒子であってもよい。造孔材の添加量は、セラミックス原料を100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましい。
【0078】
バインダとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。バインダの添加量は、セラミックス原料を100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましい。
【0079】
分散剤としては、デキストリン、ポリアルコール等を挙げることができる。
【0080】
界面活性剤としては、エチレングリコール、脂肪酸石鹸等を挙げることができる。界面活性剤の添加量は、セラミックス原料を100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましい。
【0081】
分散媒としては、水が好ましい。分散媒の量は、セラミックス原料を100質量部に対して、30〜150質量部であることが好ましい。
【0082】
成形原料を用いてハニカム成形体を形成する際には、まず、成形原料を混練して坏土とし、得られた坏土をハニカム形状に成形することが好ましい。
【0083】
成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダ、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0084】
坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては特に制限はなく、押出成形法、射出成形法、プレス成形法等の成形方法を用いることができる。連続成形が容易であり、例えば、コージェライト結晶を配向させることができることから、押出成形法を採用することが好ましい。押出成形法は、真空土練機、ラム式押出成形機、2軸スクリュー連続押出成形機等の装置を用いて行うことができる。また、押出成形に用いる装置に、所望の隔壁厚さ、セルピッチ、セル形状等のハニカム成形体となるような口金を装着して、押出成形を行うことが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い、ステンレス鋼、超硬合金等が好ましい。
【0085】
ハニカム成形体を成形した後に、得られたハニカム成形体を乾燥することが好ましい。乾燥方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。これらのなかでも、ハニカム成形体全体を、迅速且つ均一に乾燥することができることから、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。また、乾燥条件は、乾燥方法によって適宜決定することができる。
【0086】
目封止部は、ハニカム成形体と同様に、耐熱性、耐食性に優れるセラミックスによって形成することが好ましい。目封止部を形成するためのセラミックスとしては、断熱性、熱膨張を考慮すると、コージェライトを好適例として挙げることができる。所定のセルの開口部に目封止部を形成する方法については、従来公知のハニカム構造体を用いたハニカムフィルタの製造方法に準じて行うことができる。ただし、本発明のハニカム構造体を製造する際には、ハニカム構造部の境界部となるセルについて、その両方の端部に目封止部を形成する。
【0087】
目封止部を形成する方法の一例として、以下の方法を挙げることができる。まず、乾燥したハニカム成形体の一方の端面に、フィルムを貼り付ける。次に、貼り付けたフィルムの、形成しようとする目封止部の形状に合った大きさ及び位置に、例えば、レーザで孔を開ける。次に、フィルムを貼り付けたままの状態で、目封止部となる材料をスラリー化した目封止用スラリーに、ハニカム成形体の端面を浸漬する。このようにすることで、フィルムに開けた孔を通じて、目封止しようとするセル内に目封止用スラリーを充填する。ハニカム成形体の他方の端面については、上記した方法と同様して、目封止しようとするセル内に目封止用スラリーを充填する。目封止用スラリーの充填が終了した後、ハニカム成形体を再度乾燥してもよい。
【0088】
次に、ハニカム成形体を本焼成して、ハニカム構造体を作製する。「本焼成」とは、ハニカム成形体を構成する成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するための操作を意味する。
【0089】
なお、ハニカム成形体を本焼成する前には、ハニカム成形体を仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものであり、その方法については特に制限はなく、ハニカム成形体中の、バインダ、分散剤、造孔材等の有機物を除去することができればよい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度である。造孔材の燃焼温度は、種類によって異なるが、200〜1000℃程度である。そのため、仮焼の条件としては、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度で、3〜100時間程度加熱することが好ましい。
【0090】
本焼成における焼成条件については、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。ここで、焼成条件とは、焼成温度、焼成時間、焼成雰囲気等の焼成を行う際の諸条件である。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成最高温度は、1410〜1440℃が好ましい。また、焼成時の最高温度の保持時間は、3〜15時間が好ましい。
【0091】
以上のようにして、本発明のハニカム構造体を製造することができる。なお、製造したハニカム構造体に、触媒を担持してもよい。
【0092】
触媒の担持方法については、特に制限はない。例えば、従来公知のハニカム構造体の製造方法において用いられる方法に準じて、ハニカム構造体に触媒を担持することができる。一例として、自動車排ガス用触媒として、Pt、Pd、Rh等の貴金属を担持する場合は、以下のようにして担持することができる。まず、「塩化白金酸水溶液等の貴金属触媒成分」及び「CeO2等の希土類酸化物」を含むγ−アルミナのスラリーに、酸処理及び熱処理を実施したハニカム構造体を浸漬する。一定時間経過した後、ハニカム構造体をスラリーから取り出す。ハニカム構造体を取り出した後、ハニカム構造体に過剰に付着した余剰のスラリーを、エアー等で除去してもよい。そして、スラリーから取り出したハニカム構造体を乾燥することで、触媒が担持されたハニカム構造体を得ることができる。なお、スラリーから取り出したハニカム構造体を、500〜600℃の温度で焼付けを行うことで、ハニカム構造体を得てもよい。
【0093】
ハニカム構造体に担持する触媒としては、「Pt、Pd、Rh等の貴金属を基体とした三元触媒」、酸化触媒、脱臭触媒、「Mn、Fe、Cu等の卑金属触媒」等を挙げることができる。また、触媒を担持する方法の他の例として、酸処理後の高比表面積状態のコージェライトによって構成されたハニカム構造体の隔壁の表面に、触媒を担持し、次いで、600〜1000℃で熱処理を行う方法を挙げることができる。
【実施例】
【0094】
(実施例1)
タルク、カオリン、アルミナ、シリカ、及び水酸化アルミニウムを用意し、これらを混合してコージェライト化原料を得た。コージェライト化原料は、その化学組成が、SiOが42〜56質量%、Alが30〜45質量%、及びMgOが12〜16質量%となるように、タルク、カオリン、アルミナ、シリカ、及び水酸化アルミニウムを、所定の割合で調合したものである。
【0095】
次に、得られたコージェライト化原料に、造孔材、バインダとしてのメチルセルロース、及び分散媒としての水を添加し、これらを混合して成形原料を得た。造孔材は、コージェライト化原料100質量部に対して、10質量部添加した。バインダは、コージェライト化原料100質量部に対して、30質量部添加した。分散媒は、コージェライト化原料100質量部に対して、50質量部添加した。なお、造孔材としては、平均粒子径の異なる2種類のグラファイトを所定の割合で混合したものを用いた。グラファイトとしては、平均粒子径10μmのグラファイトと、平均粒子径50μmのグラファイトを用いた。
【0096】
次に、得られた成形原料を混練して、ハニカム成形体を成形するための坏土を得た。
【0097】
次に、得られた坏土を、所定の口金を用いて押出成形し、複数のセルを区画形成する隔壁を有するハニカム構造部と、ハニカム構造部の外周を囲繞するように配設された外周壁と、を備えたハニカム成形体を得た。ハニカム成形体の全体形状は、円柱状であった。ハニカム成形体に形成されたセルの形状は、正方形であった。セルの形状とは、セルの延びる方向に直交する断面におけるセルの形状のことである。
【0098】
次に、成形原料に用いたものと同様に調合されたコージェライト化原料を用いて、目封止用スラリーを調製した。次に、ハニカム成形体の一方の端面にフィルムを貼り付けた後、そのフィルムの、形成しようとする目封止部の形状に合った大きさ及び位置に、レーザで孔を開けた。レーザで孔を開けた位置に存在するセルが、目封止を行うセルとなる。目封止を行うセルとしては、ハニカム成形体の中央部を囲うように存在し、各セルが環状に隣接しているセル、を選択した。なお、中央部を囲うように存在するセルとしては、ハニカム成形体の端面の中心に位置するセルから、各半径方向に、10個目に存在するセルとし、これらのセルの集合が、環状を呈していることとなる。
【0099】
次に、フィルムを貼り付けたハニカム成形体の一方の端面を、目封止用スラリーに浸漬し、フィルムに開けた孔を通じて、目封止しようとするセル内に目封止用スラリーを充填した。
【0100】
次に、ハニカム成形体の他方の端面についても、一方の端面と同様にして目封止しようとするセル内に目封止用スラリーを充填した。
【0101】
次に、セル内に目封止用スラリーを充填したハニカム成形体を、120℃で熱風乾燥させ、その後、1400〜1430℃の温度で、10時間焼成して、実施例1のハニカム構造体を作製した。
【0102】
実施例1のハニカム構造体は、端面の直径が143.8mm、セルの延びる方向の長さが100mmの円柱形状であった。ハニカム構造体のセル密度は、62個/cmであり、隔壁の厚さは、0.11mmであった。隔壁の厚さは、ハニカム構造体の断面の形状を、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)によって観測することにより測定した。
【0103】
また、実施例1のハニカム構造体は、隔壁の嵩密度0.3g/cmであり、隔壁の気孔率が35%であった。隔壁の嵩密度気孔率は、Micromeritics社製の水銀ポロシメータ(Autopore 9500(商品名))を用いて測定した。
【0104】
実施例1のハニカム構造体は、ハニカム構造部の境界部に形成されたセルは、その両側端面に目封止部が配設されたものであった。このように構成されたハニカム構造体について、表1の「目封止部の配設箇所」の欄において、「両側端面」と記す。
【0105】
また、実施例1においては、上述したように、端面の中心に位置するセルから、各半径方向に、10個目に存在するセルに目封止部を形成しているため、境界部の形状は、環状の範囲となっていた。このように構成されたハニカム構造体について、表1の「目封止部の配置形状」の欄において、「リング状」と記す。また、端面の中心から、境界部の両端封止セルまでの距離を測定したところ、端面の中心からの距離は、36mmであった。表1の「端面における目封止部の配置距離」の欄に、端面の中心から目封止部が配設されたセルまでの距離を示す。
【0106】
実施例1のハニカム構造体において、境界部の両端封止セルは、辺で隣接するものであった。このように構成されたハニカム構造体について、表1の「目封止部の配列」の欄において、「辺で隣接」と記す。なお、境界部の両端封止セルが、点で隣接するものである場合には、表1の「目封止部の配列」の欄において、「点で隣接」と記す。また、境界部の両端封止セルが、点で隣接するものと、辺で隣接するものとが混在するものである場合には、表1の「目封止部の配列」の欄において、「点と辺の混在」と記す。
【0107】
実施例1のハニカム構造体は、境界部の両端封止セルは、全ての両端封止セルが、辺で隣接するものであった。このように構成されたハニカム構造体について、表1の「目封止部のつながり」の欄において、「100%」と記す。なお、表1の「目封止部のつながり」の欄においては、境界部の両端封止セルの総数に対する、辺又は点で隣接している両端封止セルの個数の比率を示す。例えば、表1の「目封止部のつながり」の欄において、50%と記載されている場合には、境界部の全ての両端封止セルのうちの、50%に相当する個数の両端封止セルが、辺又は点で隣接しているということである。
【0108】
また、表1の「直径に対する境界部の幅の比」の欄に、ハニカム構造部の端面の直径に対する、境界部の幅の比の百分率の値を示す。実施例1においては、0.9%であった。
【0109】
また、ハニカム構造部の中央部と外周部のそれぞれのセル密度を、表2に示す。なお、上述したように、実施例1においては、ハニカム構造体のセル密度は、中央部及び外周部ともに、62個/cmであった。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
また、実施例1においては、得られたハニカム構造体に、触媒成分及び高比表面積材料を含む触媒を担持した。触媒成分としては、パラジウム、白金及びロジウムを用いた。高比表面積材料としては、γ−アルミナを用いた。以下に、触媒の担持方法についての詳細を説明する。
【0113】
まず、パラジウム、白金、ロジウム、γ−アルミナ及び水を混合して触媒スラリーを得た。パラジウム、白金及びロジウムの質量比は、15:1:1(パラジウム:白金:ロジウム=15:1:1)であった。また、触媒スラリー中のγ−アルミナの量は、「パラジウム、白金及びロジウムの合計質量」の20倍の質量であった。
【0114】
得られた触媒スラリーを容器内に入れ、実施例1のハニカム構造体を、容器内の触媒スラリーに浸漬した。その後、ハニカム構造体を触媒スラリーから取り出し、エアーで余分な触媒スラリーを除去し、120℃で乾燥した。エアーとしては、空気を用いた。所定量の触媒がハニカム構造体に担持されるまで、触媒スラリーへの浸漬と、乾燥とを繰り返し行った。所定量の触媒がハニカム構造体に担持された後、窒素雰囲気下、550℃でハニカム構造体を焼成した。このようにして、触媒が担持されたハニカム構造体を得た。ここで、「所定量の触媒」とは、触媒成分であるパラジウム、白金及びロジウムの総質量と、高比表面積材料であるγ−アルミナの質量との合計質量から求められる、ハニカム構造体の触媒担持量のことであり、本実施例における「所定量の触媒」とは、触媒担持量が30g/リットルとなる量のことである。
【0115】
また、実施例1のハニカム構造体について、以下のような方法で、「熱サイクル試験」及び「HC浄化試験」を行った。結果を表2に示す。
【0116】
(熱サイクル試験)
図14に示すように、ハニカム構造体100をステンレス鋼製の試験用缶体400内に装着した。そして、ガスバーナー試験機(図示せず)を用いて、燃焼ガスを1.0Nm/分の流量でハニカム構造体100に流した。この時、燃料としてはプロパンを使用した。そして、ハニカム構造体100を、240秒間で1100℃まで昇温し、1100℃で240秒間保持した後に、25℃のガスを0.9Nm/分で5分間流した。そして、「燃焼ガスを流し始めてから、25℃のガスを流し終わるまで」を1サイクルとしたときに、当該サイクルを5サイクル繰り返した。その後、ハニカム構造体100を試験用缶体400から取り出し、顕微鏡を用いて、ハニカム構造体100の端面を観察し、クラックの有無を確認した。ハニカム構造体100の端面を観察にて、クラックが確認された場合には、表2の「熱サイクル試験」の欄に、「クラック有り」と記す。一方で、ハニカム構造体100の端面を観察にて、クラックが確認されなかった場合には、表2の「熱サイクル試験」の欄に、「クラック無し」と記す。図14は、実施例の熱サイクル試験における、ハニカム構造体を缶体に挿入した状態を示す模式図である。また、図14において、符号401に示す矢印は、燃焼ガス及び25℃のガスの流れ方向を示している。
【0117】
(HC浄化試験)
HC浄化試験とは、排ガス中のハイドロカーボン(Hydrocarbon;HC)の浄化性能を評価する試験である。具体的には、まず、図15に示すような、排気システム(Manifold System)を作製した。図15に示す排気システム500は、上流からガソリンエンジン501、及び、評価サンプルであるハニカム構造体(図示せず)を装着した触媒コンバーター502を備えたものである。ガソリンエンジン501としては、排気量2000ccのガソリンエンジンを用い、ダイナモメータで動力を吸収した。このような排気システム500を用いて、HC浄化試験を行った。ここで、図15は、実施例のHC浄化試験において用いられる装置を示す模式図である。以下、HC浄化試験の試験方法について更に詳しく説明する。
【0118】
HC浄化試験においては、まず、ガソリンエンジン501を始動し、10分間、3000回転/分の条件で運転した後、ガソリンエンジン501を停止した。その後、排気システム500である試験装置全体を、20℃で10時間放置した。この放置により、試験装置全体を、いわゆるコールド状態とした。コールド(Cold)状態とは、ガソリンエンジン本体、冷却水、排気管等が、室温である20℃と同程度の温度になった状態のことをいう。
【0119】
次に、HC浄化試験においては、このコールド状態から、再度、ガソリンエンジンを始動する。始動後アイドリングで10秒間運転した後、ガソリンエンジン501を2000回転/分の運転状態として、130秒間以上の間運転する。この時に、ガソリンエンジン501の始動後140秒経過までの間に、触媒コンバーター502から排出されたガス中のハイドロカーボンの量を測定する。表2の「HC浄化試験」の欄に、「HC比」を示す。表2に示す「HC比」は、以下の方法で求めることができる。まず、排気システム500の触媒コンバーター502内に、触媒を担持したハニカム構造体を装着せずに、これまでに説明したHC浄化試験を行い、ハイドロカーボンの量を測定する。次に、排気システム500の触媒コンバーター502内に、触媒を担持したハニカム構造体を装着し、同様のHC浄化試験を行い、ハイドロカーボンの量を測定する。ハニカム構造体を装着せずに行った際のハイドロカーボンの量に対する、ハニカム構造体を装着して行った際のハイドロカーボンの量の比の値が、表2に示す「HC比」である。「HC比」が小さいほど、ハニカム構造体は、触媒の着火性能であるライトオフ性能に優れているといえる。
【0120】
(実施例2〜17)
ハニカム構造体の構成、及び目封止部の構成を、表1及び表2に示すように変更して、実施例2〜17のハニカム構造体を製造した。実施例2においては、実施例1のハニカム構造体に対して、境界部の両端封止セルが点で隣接するように変更を行った。実施例3においては、実施例1のハニカム構造体に対して、境界部の両端封止セルが、点で隣接するものと、辺で隣接するものとが混在するものとなるように変更した。
【0121】
実施例4〜7においては、実施例1のハニカム構造体に対して、直径に対する境界部の幅の比を、表1に示すように変更した。実施例8〜12においては、実施例1のハニカム構造体に対して、目封止部のつながりを、表1に示すように変更した。
【0122】
実施例13においては、中央部のセル密度が93個/cmとなるように、ハニカム構造部の中央部におけるセル構造を変更した。実施例14においては、外周部のセル密度が93個/cmとなるように、ハニカム構造部の外周部のセル構造を変更した。
【0123】
実施例15においては、目封止部を形成する際に、目封止を行うセルとして、ハニカム成形体の中央部を囲うように存在し、各セルが環状に隣接しているセルと、ハニカム成形体の最外周に存在するセルと、を選択した。実施例15のハニカム構造体は、ハニカム構造部の境界部に形成されたセルと、ハニカム構造部の外周部の最外周に形成されたセルとは、その両側端面に目封止部が配設されたものであった。表1の「端面における目封止部の配置距離」において、「端面の中心から36mm」で示される距離は、境界部における目封止部の配置距離を示す。一方、表1の「端面における目封止部の配置距離」において、「端面の中心から72mm」で示される距離は、外周部の最外周における目封止部の配置距離を示す。
【0124】
実施例16においては、境界部の形状を、三角形状の環状とした。このように構成されたハニカム構造体について、表1の「目封止部の配置形状」の欄において、「三角形状」と記す。また、実施例17においては、境界部の形状を、四角形状の環状とした。このように構成されたハニカム構造体について、表1の「目封止部の配置形状」の欄において、「四角形状」と記す。
【0125】
(比較例1〜6)
ハニカム構造体の構成、及び目封止部の構成を、表1及び表2に示すように変更して、比較例1〜6のハニカム構造体を製造した。比較例1のハニカム構造体は、全てのセルについて目封止部を配設しないものとした。また、比較例2〜4のハニカム構造体については、ハニカム構造体の片側の端面のみに目封止部を配設したものとした。
【0126】
比較例5のハニカム構造体については、ハニカム構造部の境界部には目封止部を配設せずに、ハニカム構造部の外周部の最外周のセルのみに目封止部を配設したものとした。なお、比較例5では、外周部の最外周のセルについて、ハニカム構造体の両側端面に目封止部を配設した。
【0127】
比較例6のハニカム構造体については、ハニカム構造部の境界部には目封止部を配設しないものとした。なお、比較例6では、ハニカム構造部の外周部の外側に配設された外周壁を研削加工によって取り除いた後、ハニカム構造部の外周に外周コート材を塗工し、ハニカム構造部の最外周に外周コート層を形成した。表1の「目封止部の配設箇所」の欄において、比較例6のハニカム構造体について、「目封止部無し(外周コート層のみ)」と記す。
【0128】
実施例2〜17及び比較例1〜6のハニカム構造体についても、実施例1と同様の方法で、「熱サイクル試験」及び「HC浄化試験」を行った。結果を表2に示す。
【0129】
(結果)
表2に示すように、実施例1〜17のハニカム構造体は、HC浄化試験の結果である「HC比」が、比較例1〜6のハニカム構造体と比較して低くなっている。即ち、実施例1〜17のハニカム構造体は、触媒を早期に活性化させることが可能であり、エンジン冷間始動時のライトオフ性能に優れたものであった。また、表1に示すような、「目封止部の配置形状」、「目封止部の配列」、「目封止部のつながり」、及び「直径に対する境界部の幅の比」を変更することにより、HC浄化試験の結果である「HC比」に変動はみられるものの、比較例1〜6のハニカム構造体と比較した場合には、全て、ライトオフ性能について良好な結果を得ることができた。また、比較例5のように、両側端面に目封止部されたセルを、ハニカム構造部の最外周のみに存在させたとしても、HC浄化試験の結果である「HC比」を低くすることはできなかった。更に、比較例6のように、ハニカム構造部の外周部を研削加工し、ハニカム構造部の最外周に外周コート層を配設したとしても、HC浄化試験の結果である「HC比」を低くすることはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明のハニカム構造体は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等から排出される排ガスを浄化するための触媒を担持する触媒担体として利用することができる。
【符号の説明】
【0131】
1:隔壁、2:セル、2a:セル(中央部分に存在するセル)、2b:セル(境界部に存在するセル)、2c:セル(外周部に存在するセル)、3:外周壁、4:ハニカム構造部、5:目封止部、11:流入端面、12:流出端面、21:中央部、22:境界部、23:外周部、32a:両端開口セル、32b:両端封止セル、32c:両端開口セル、32d:最外周両端封止セル、32e:両端開口セル、32f:外周部両端封止セル、100,101,102,103,104,105,106,107,108,109,110:ハニカム構造体、123:第一の外周部、223:外周部内境界部、323:第二の外周部、400:試験用缶体、401:ガスの流れ方向、500:排気システム、501:ガソリンエンジン、502:触媒コンバーター。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15