(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した推定方法では、通常、通信を発生させるアプリケーション(サービスアプリ)と通信量を監視するアプリケーション(監視アプリ)とが別々のアプリケーションとされる。ここで、例えば、サービスアプリが、容量の小さな画像を大量に読み込む場合などにおいては、本来の通信量(アプリケーションの実行に係る通信量)が小さいにもかかわらずプロトコルのオーバーヘッドが大きくなるため、監視アプリにおけるスループットの推定が不正確になるおそれがある。すなわち、上述した推定方法では、通信の詳細がわからずスループットの推定が不正確になるという課題がある。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、スループットを正確に推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る通信端末は、通信を発生させるサービスアプリケーションと、該通信を監視することによりスループットを推定する監視アプリケーションと、を備える通信端末であって、サービスアプリケーション及び監視アプリケーションの少なくともいずれか一方は、サービスアプリケーションにおいて発生する通信に係る通信量及び通信種別の少なくともいずれか一方が、所定の条件を満たすか否かを判定する通信判定部を有し、監視アプリケーションは、通信判定部によって所定の条件を満たすと判定された場合に、通信のスループット計測を開始するスループット推定部を有する。
【0007】
この通信端末では、通信に係る通信量及び通信種別の少なくともいずれか一方が所定の条件を満たす場合に限り、監視アプリケーションによりスループット計測が開始される。これにより、例えば容量が大きいデータをダウンロードする場合や、ストリーミング通信を行う場合等に限定して、通信のスループットを推定することが可能となる。すなわち、通信がスループット推定に適した所定の通信である場合に限りスループット推定を行うことが可能となる。これにより、通信のスループットを正確に推定することができる。
【0008】
また、サービスアプリケーションは、通信判定部を有すると共に、通信判定部によって所定の条件を満たすと判定された場合に、計測開始指示を通知する通知部を更に有し、スループット推定部は、計測開始指示の受信を契機として、通信のスループット計測を開始していてもよい。これにより、スループット推定が必要な場合に限り監視アプリケーションを起動する構成とすることができ、通信端末における処理をより簡易化することができる。
【0009】
また、スループット推定部は、スループット計測を開始してから所定時間が経過するか、或いは、スループット計測を開始した後に通信に係る通信量が所定値以下になった場合に、通信のスループット計測を終了してもよい。時間の経過、或いは、通信量の減少をスループット計測終了のタイミングとすることにより、適切なタイミングでスループット計測を終了させることができる。これによって、通信のスループットをより正確に推定することができる。また、スループット計測の終了タイミングを、監視アプリケーション側の処理のみによって決定することにより、サービスアプリケーションの処理負担を軽減することができる。
【0010】
また、通信判定部は、通信のスループット計測が開始された後において、通信に係る通信量が所定値以下になったか否かを判定し、通知部は、通信判定部によって通信に係る通信量が所定値以下になったと判定された場合に、監視アプリケーションに対して計測終了指示を通知し、スループット推定部は、計測終了指示を受信すると、通信のスループット計測を終了してもよい。通信を発生させるサービスアプリケーション側での通信量の減少タイミングを、スループット計測終了のタイミングとすることによって、より適切なタイミングでスループット計測を終了させることができ、通信のスループットをより正確に推定することができる。
【0011】
また、監視アプリケーションは、所定の条件を規定した判定基準を記憶する判定基準記憶部を更に有し、通信判定部は、判定基準記憶部に記憶されている判定基準を取得し、該判定基準に基づいて、通信に係る通信量及び通信種別の少なくともいずれか一方が、所定の条件を満たすか否かを判定してもよい。このように、スループットを推定する監視アプリケーション側で、所定の条件を規定した判定基準を記憶することによって、複数のサービスアプリケーションに係るスループット推定の基準を一元的に管理することができ、例えば、複数のサービスアプリケーションに係るスループット推定の基準を共通化することができる。
【0012】
また、監視アプリケーションは、通信を実現するためのネットワークの品質情報を収集する収集部を更に有し、スループット推定部は、収集部によって収集された品質情報を考慮して、通信のスループットを評価してもよい。これにより、推定したスループットが、ネットワーク品質に依拠するものであるのか否かを特定することが可能になる。このことで、スループットを用いて、ネットワーク品質を高精度に評価することができる。
【0013】
また、通知部は、通信判定部によって所定の条件を満たすと判定された場合に、計測開始指示と共に、通信種別を示す識別子を、監視アプリケーションに通知し、スループット推定部は、通知部によって通知された識別子を考慮して、通信のスループットを評価してもよい。これにより、推定したスループットが、どのような通信種別の通信に係るものであるかを特定することができる。このことで、推定したスループットを、スループット毎の適した用途で用いることができる。
【0014】
本発明の一態様に係るプログラムは、通信を発生させるサービスアプリケーションと、該通信を監視することによりスループットを推定する監視アプリケーションと、を備えるコンピュータを、サービスアプリケーションにおいて発生する通信に係る通信量及び通信種別の少なくともいずれか一方が、所定の条件を満たすか否かを判定する通信判定部、及び、通信判定部によって所定の条件を満たすと判定された場合に、通信のスループット計測を開始するスループット推定部、として機能させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、通信のスループットを正確に推定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る通信システムの機能構成を示す図である。
図1に示されるように、通信システム1は、通信端末10と、サービスサーバ50とを備えている。通信システム1は、通信端末10及びサービスサーバ50間において通信を行うことにより、通信端末10に実装されたアプリケーション(サービス)を実行するシステムである。また、通信システム1は、通信端末10においてアプリケーションが実行される際の通信端末10のスループットを推定する。サービスサーバ50は、通信端末10と通信を行うことにより、通信端末10に実装されたアプリケーションを実行するサーバである。
【0019】
通信端末10は、サービスサーバ50と通信を行うことにより、実装されたアプリケーションを実行する装置である。通信端末10は、例えばユーザに所持(携帯)されて用いられる、スマートフォン等の携帯電話機、又は、タブレット端末等である。
図1に示されるように、通信端末10は、アプリケーションとして、サービスアプリ20(サービスアプリケーション)と、監視アプリ30(監視アプリケーション)とを備えている。通信端末10は、これらのアプリケーションを連携させることにより、通信量から正確なスループットを推定する。
【0020】
図2は、
図1に示した通信システム1に含まれる通信端末10のハードウェア構成を示す図である。通信端末10は、物理的には、
図2に示すように、1又は複数のCPU101、主記憶装置であるRAM102及びROM103、入力デバイスであるキーボード及びマウス等の入力装置104、ディスプレイ等の出力装置105、ネットワークカード等のデータ送受信デバイスである通信モジュール106、半導体メモリ等の補助記憶装置107等を含むコンピュータとして構成されている。
【0021】
通信端末10の各機能は、
図2に示すCPU101、RAM102等のハードウェア上に1又は複数の所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU101の制御のもとで入力装置104、出力装置105、通信モジュール106を動作させるとともに、RAM102や補助記憶装置107におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0022】
図1に戻り、サービスアプリ20は、通信端末10とサービスサーバ50との間で通信が行われることにより実行されるアプリケーションであり、通信端末10とサービスサーバ50との間の通信を発生させるアプリケーションである。通信端末10は、複数のサービスアプリ20を実装している。サービスアプリ20は、例えば動画閲覧アプリケーション又はブラウザなどである。例えば、サービスアプリ20が動画閲覧アプリケーションである場合には、サービスアプリ20とサービスサーバ50との間では、オフライン閲覧用に動画をダウンロードする通信(以下、ファイルダウンロード通信と記載)、オンライン閲覧用にストリーミングする通信(以下、ストリーミング通信と記載)、及び、その他小容量のデータを細かく受け渡す通信が発生する。
【0023】
監視アプリ30は、通信端末10とサービスサーバ50との間の通信を監視することにより、該通信に係るスループットを推定するアプリケーションである。監視アプリ30は、サービスアプリ20が実行されることによって発生する、サービスアプリ20とサービスサーバ50との間における通信を監視し、スループットを推定する。監視アプリ30は、典型的には、通信端末10に具備されたネットワークインタフェースカード(NIC)の通信量を監視することにより、サービスアプリ20とサービスサーバ50との通信を把握する。スループットとは、単位時間あたりの処理能力である。監視アプリ30は、サービスアプリ20とサービスサーバ50との間の通信量を計測し、単位時間あたりの通信量を導出することにより、該通信のスループットを推定する。
【0024】
サービスアプリ20及び監視アプリ30の詳細な機能について説明する。
【0025】
サービスアプリ20は、通信部21と、通信判定部22と、連携部23(通知部)と、を有する。通信部21は、サービスサーバ50と通信を行う機能である。連携部23は、通信判定部22によって、通信が所定の条件を満たすと判定された場合に限り、監視アプリ30に対して計側開始指示を通知する(詳細は後述)。また、連携部23は、例えばサービスサーバ50との通信を開始するタイミングで、上記所定の条件を規定した判定基準の取得要求を、監視アプリ30に対して送信する(詳細は後述)。連携部23は、当該取得要求に応じて監視アプリ30から送信された判定基準を、通信判定部22に出力する。
【0026】
通信判定部22は、サービスサーバ50との通信に係る通信量及び通信種別の少なくともいずれか一方が、所定の条件を満たすか否かを判定することにより、該通信がスループット推定に適しているか否かを判定する機能である。通信量が所定の条件を満たしているとは、例えば、通信量が、予め定められた閾値よりも多いことをいう。また、通信種別が所定の条件を満たしているとは、例えば、通信が、予め定められた特定の通信であることをいう。当該特定の通信とは、比較的通信量が多くなる通信であり、例えば、ファイルダウンロード通信又はストリーミング通信である。
【0027】
通信判定部22は、通信量(想定される通信量)及び通信種別を、例えばアプリケーションの設計情報や、サービスサーバ50とのコンテンツの送受信に用いられるHTTP(Hypertext Transfer Protocol)に応じて特定可能に構成されている。
【0028】
通信判定部22は、連携部23を介して監視アプリ30から取得した判定基準に基づいて、サービスサーバ50との通信に係る通信量及び通信種別の少なくともいずれか一方が、所定の条件を満たすか否かを判定する。判定基準は、上述した所定の条件を規定している。すなわち、判定基準は、通信量の閾値、及び、通信量が多くなる特定の通信の少なくともいずれか一方を規定するものである。通信判定部22は、通信量が、判定基準に規定された通信量の閾値よりも大きい場合には、当該通信がスループット推定に適していると判定する。また、通信判定部22は、通信種別が、判定基準に規定された特定の通信である場合には、当該通信がスループット推定に適していると判定する。通信判定部22による当該判定後、サービスアプリ20とサービスサーバ50との通信が開始される。
【0029】
監視アプリ30は、連携部31と、スループット推定部32と、判定基準記憶部33とを有する。連携部31は、サービスアプリ20と連携する機能である。連携部31は、サービスアプリ20(詳細には連携部23)から送信された、判定基準の取得要求に応じて、判定基準記憶部33に記憶された判定基準(詳細は後述)を連携部23に送信する。また、連携部31は、連携部23から通知された計測開始指示を受けると、通信端末10の位置情報を取得する。位置情報は、例えば基地局測位やGPS(Global Positioning System)測位により取得される。連携部31は、取得した位置情報及び計測開始指示を、スループット推定部32に出力する。なお、連携部31は、位置情報に加えて、計測開始時間、ネットワーク種別(WiFi、3G網、LTE網など)、接続している通信キャリア、通信端末10にかかる端末種別、OS情報等の関連情報を取得し、該関連情報についてもスループット推定部32に出力することとしてもよい。
【0030】
スループット推定部32は、計測開始指示の受信を契機として、通信のスループット計測を開始する機能である。スループット推定部32は、サービスアプリ20とサービスサーバ50との間の通信量を計測し、単位時間あたりの通信量を導出することにより、該通信のスループットを推定する。また、スループット推定部32は、スループット計測を開始してから所定時間が経過するか、或いは、スループット計測を開始した後に通信に係る通信量が所定値以下になった場合に、通信のスループット計測を終了する。スループット推定部32は、スループット計測を開始してから終了するまでの間、継続的に通信量を計測しスループットを推定する。スループット推定部32により推定されたスループットは、位置情報と対応付けられて監視アプリ30内で記憶され、所定の間隔で、通信事業者の外部サーバ(図示せず)に送信されてもよい。
【0031】
判定基準記憶部33は、通信量及び通信種別に関する上記所定の条件を規定した判定基準を記憶するデータベースである。判定基準記憶部33は、サービスアプリ20が複数ある場合には、各サービスアプリ20とサービスサーバ50との組み合わせ毎に、判定基準を記憶している。なお、判定基準記憶部33は、複数のサービスアプリ20に関する判定基準を全て同一の基準としてもよいし、異なる基準としてもよい。判定基準記憶部33は、例えば、判定基準として、スループット推定に適している通信量の閾値(下限値)と、スループット推定に適している通信種別とを記憶している。
【0032】
次に、
図3を参照して、通信システム1のスループット推定処理を説明する。
図3は、第1実施形態に係る通信システム1のスループット推定処理を示すシーケンス図である。
【0033】
通信システム1のスループット推定処理では、最初に、サービスアプリ20の連携部23により、判定基準が取得される(ステップS1)。具体的には、連携部23から監視アプリ30に対して判定基準の取得要求が送信され、該取得要求に応じて監視アプリ30から送信された判定基準が連携部23において受信される。そして、連携部23は、当該判定基準を通信判定部22に出力する。
【0034】
つづいて、通信判定部22により、通信判定が行われる(ステップS2)。具体的には、通信判定部22により、判定基準に基づき、サービスサーバ50との通信に係る通信量及び通信種別の少なくともいずれか一方が、所定の条件を満たすか否かが判定される。ステップS2において所定の条件を満たすと判定された場合には、連携部23により、監視アプリ30に計測開始指示が通知される(ステップS3)。
【0035】
つづいて、計測開始指示を受信した連携部31により、通信端末10の位置情報が取得される(ステップS4)。位置情報の取得後、スループット推定部32により、スループット計測が開始される(ステップS5)。具体的には、スループット推定部32により、サービスアプリ20とサービスサーバ50との間の通信量が計測され、単位時間あたりの通信量が導出されることにより、該通信のスループットが推定される。
【0036】
スループット計測が開始されると、サービスアプリ20とサービスサーバ50との間で大容量通信が開始される(ステップS6)。当該大容量通信中においては、スループット推定部32により計測終了判定が行われる(ステップS7)。具体的には、スループット推定部32により、スループット計測を開始してから所定時間が経過したか、或いは、スループット計測を開始した後に通信に係る通信量が所定値以下になったかが判定される。そして、ステップS7において、所定時間が経過したか或いは通信量が所定値以下になったと判定された場合には、スループット計測が終了する(ステップS8)。上述したステップS5のスループット計測開始タイミングから、ステップS8のスループット計測終了タイミングまでが、スループット推定期間である。
【0037】
その後も、サービスアプリ20とサービスサーバ50との新たな通信が開始される場合には、ステップS2と同様に、通信判定部22により通信判定が行われる(ステップS9)。通信判定において、通信に係る通信量及び通信種別のいずれもが所定の条件を満たさない場合(通信が小容量通信である場合)には、監視アプリ30によるスループット推定は行わずに、サービスアプリ20とサービスサーバ50との間で小容量通信が開始される(ステップS10)。以上が、通信システム1におけるスループット推定処理の説明である。
【0038】
次に、
図4を参照して、通信端末10におけるスループット推定処理の詳細について説明する。
図4は、第1実施形態に係る通信端末10のスループット推定処理を示すフローチャートである。
【0039】
最初に、サービスアプリ20が起動される(ステップFS1)。そして、サービスアプリ20の連携部23により、監視アプリ30から判定基準が取得される(ステップFS2)。
【0040】
つづいて、通信判定部22により、判定基準に基づき、サービスサーバ50との通信に係る通信量及び通信種別の少なくともいずれか一方が、所定の条件を満たすか否かが判定される(ステップFS3)。ステップFS3において所定の条件を満たさないと判定された場合には、監視アプリ30に対して計測開始指示が通知されず、サービスアプリ20とサービスサーバ50との通信が開始される(ステップFS4)。そして、通信が終了した後(ステップFS5)、サービスアプリ20の実行が終了する(ステップFS6)。
【0041】
一方で、ステップFS3において所定条件を満たすと判定された場合には、連携部23により、監視アプリ30に計測開始指示が通知される(ステップFS7,ステップFS8)。なお、連携部23により計測開始指示が通知された後に、サービスアプリ20とサービスサーバ50との通信が開始され、上述したステップFS4〜FS6の処理が行われる。
【0042】
監視アプリ30では、位置情報が取得された後に、スループット推定部32により、通信量取得(スループット計測)が開始される(ステップFS9)。そして、スループット推定部32により、終了基準を満たすか、すなわち、スループット計測を開始してから所定時間が経過したか、或いは、スループット計測を開始した後に通信に係る通信量が所定値以下になったかが判定される(ステップFS10)。
【0043】
ステップFS10において、終了基準を満たさないと判定された場合には、再度ステップFS9及びステップFS10の処理が行われる。一方で、ステップFS10において、終了基準を満たすと判定された場合には、通信量取得(スループット計測)が終了し(ステップFS11)、監視アプリ30の実行が終了する(ステップFS12)。
【0044】
上述した通信端末10におけるスループット推定処理は、サービスアプリ20と監視アプリ30とを備える通信端末10(コンピュータ)を、上述した通信判定部22及びスループット推定部32として機能させるプログラムにより実現されていてもよい。
【0045】
次に、第1実施形態に係る通信端末10の作用効果について説明する。
【0046】
通信端末10は、通信を発生させるサービスアプリ20と、該通信を監視することによりスループットを推定する監視アプリ30と、を備える通信端末であって、サービスアプリ20は、通信に係る通信量及び通信種別の少なくともいずれか一方が、所定の条件を満たすか否かを判定する通信判定部22と、通信判定部22によって所定の条件を満たすと判定された場合に、監視アプリ30に対して計測開始指示を通知する連携部23と、を有し、監視アプリ30は、計測開始指示の受信を契機として、通信のスループット計測を開始するスループット推定部32を有する。
【0047】
この通信端末10では、通信に係る通信量及び通信種別の少なくともいずれか一方が所定の条件を満たす場合に限り、サービスアプリ20から監視アプリ30に対して計測開始指示が通知される。そして、該計測開始指示が受信されたことを契機として、監視アプリ30によりスループット計測が開始される。これにより、例えば容量が大きいデータをダウンロードする場合や、ストリーミング通信を行う場合等に限定して、通信のスループットを推定することが可能となる。すなわち、通信がスループット推定に適した所定の通信である場合に限りスループット推定を行うことが可能となる。これにより、通信のスループットを正確に推定することができる。なお、通信端末10では、通信開始情報(計測開始指示)をサービスアプリ20から監視アプリ30に対して引き渡すことにより、スループット推定専用の通信が発生することを回避している。
【0048】
このような通信端末10の作用効果について、
図5を参照し、比較例に係る通信端末と対比して説明する。
図5は、比較例に係る通信システムのスループット推定処理を示すシーケンス図である。
図5に示されるように、当該比較例に係る通信システムでは、通信端末がサービスアプリ120及び監視アプリ130を備えている。そして、サービスアプリ120とサービスサーバ150との間で通信が開始される場合には、監視アプリ130において位置情報が取得され(ステップS101)、スループット計測が開始される(ステップS102)。その後、サービスアプリ120とサービスサーバ150との間で行われる通信が大容量通信(ステップS103)であるか小容量通信(ステップS104)であるかにかかわらず、所定のスループット計測終了タイミングまで(ステップS105)、監視アプリ130によるスループット計測が継続される。ここで、例えばサービスアプリ120が容量の小さな画像を大量に読み込む場合などにおいては、本来の通信量は小さいにもかかわらずプロトコルのオーバーヘッドが大きくなるため、監視アプリ130におけるスループットの推定が不正確になるおそれがある。すなわち、小容量通信がスループット計測の対象とされることにより、スループットを高精度に推定できないおそれがある。
【0049】
この点、本実施形態に係る通信端末10では、上述したように、通信量及び通信種別の少なくともいずれか一方が所定の条件を満たす場合に限り、スループット計測が開始されるので、通信がスループット推定に適した所定の通信である場合に限りスループット推定を行うことが可能となる。これにより、通信のスループットを正確に推定することができる。
【0050】
なお、上述した通信端末10は、従来から利用されているサービスアプリ及び監視アプリを組み合わせたスループット推定の手法を最大限利用しながら、通信判定部22、連携部23、及びスループット推定部32等について最小限の改修を加えて、正確なスループット推定を実現するものである。すなわち、通信端末10は、簡易な手法によって、従来と比較して格別にスループット推定精度を向上させるものである。
【0051】
また、本実施形態に係る通信端末10では、スループット推定部32が、スループット計測を開始してから所定時間が経過するか、或いは、スループット計測を開始した後に通信に係る通信量が所定値以下になった場合に、通信のスループット計測を終了している。このように、時間の経過、或いは、通信量の減少をスループット計測終了のタイミングとすることにより、適切なタイミングでスループット計測を終了させることができる。これによって、通信のスループットをより正確に推定することができる。また、スループット計測の終了タイミングを、監視アプリ30側の処理のみによって決定することにより、サービスアプリ20の処理負担を軽減することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る通信端末10では、監視アプリ30が、所定の条件を規定した判定基準を記憶する判定基準記憶部33を更に有し、通信判定部22が、判定基準記憶部33に記憶されている判定基準を取得し、該判定基準に基づいて、通信に係る通信量及び通信種別の少なくともいずれか一方が、所定の条件を満たすか否かを判定している。このように、スループットを推定する監視アプリ30側で、所定の条件を規定した判定基準を記憶することによって、複数のサービスアプリ20に係るスループット推定の基準を一元的に管理することができ、例えば、複数のサービスアプリ20に係るスループット推定の基準を共通化することができる。
【0053】
[第2実施形態]
次に、
図6を参照して、第2実施形態に係る通信システム1Aに含まれる通信端末10Aについて説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0054】
スループットは、例えば、ネットワーク品質を評価する一つの指標として用いられる。しかしながら、スループットがネットワーク品質以外の要因で変動している場合には、該スループットからネットワーク品質を正確に評価することができない。ネットワーク品質以外の要因としては、例えばアプリケーションの通信処理方法、サーバの処理方法、サーバの性能、及びサーバの地理的な配置場所等がある。
【0055】
この点に鑑みて、通信端末10Aは、通信を監視する監視アプリ30A側において、通信量を監視する際に、スループットの変動に因果関係が強いネットワークの品質情報を取得する。通信端末10Aでは、ネットワークの品質情報が考慮され、スループットが、ネットワークの品質評価の指標として用いることができるものか否かが判断される。
【0056】
図6に示されるように、通信システム1Aは、通信端末10Aと、サービスサーバ50とを備える。通信端末10Aは、サービスアプリ20と、監視アプリ30Aとを有する。サービスサーバ50及びサービスアプリ20については、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0057】
監視アプリ30Aは、連携部31、スループット推定部32、及び判定基準記憶部33に加えて、収集部34を有している。収集部34は、通信を実現するためのネットワークの品質情報を収集する機能である。当該品質情報とは、例えば、RTT(Round Trip Time)、RSRP(Reference SignalReceived Power)、RSRQ(Reference Signal Received Quality)、RSSI(Receive Strength Signal Indicator)等であるが、ネットワークの品質を示す情報であればこれらに限定されない。収集部34は、収集した品質情報をスループット推定部32に出力する。
【0058】
スループット推定部32は、収集部34によって収集された品質情報を考慮して、通信のスループットを評価する。スループット推定部32は、例えば、品質情報が良好であってスループットが低い場合には、スループット低下の原因がネットワーク品質以外の要因(例えば、サービスサーバ50の処理能力など)にあると評価し、監視したスループットは信頼できない(ネットワーク品質を正確に評価するものではない)と判断する。一方で、スループット推定部32は、例えば、品質情報が良好であってスループットが高い場合には、監視したスループットは信頼できる(ネットワーク品質を正確に評価するものである)と判断する。
【0059】
このように、例えば、ネットワーク品質に依拠するスループットを把握したい場合において、ネットワークの品質情報をスループットの信頼性評価に用いることで、ネットワーク品質以外の要因でスループットが劣化している事例を排除することができる。すなわち、推定したスループットがネットワークの品質に依拠するものであるか否かを特定することが可能になり、スループットを用いて、ネットワーク品質を高精度に評価することができる。
【0060】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る通信端末10について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態及び第2実施形態と異なる点について主に説明する。
【0061】
第3実施形態に係る通信端末10では、通信判定部22によって所定の条件を満たすと判定された場合に、サービスアプリ20の連携部23が、計測開始指示と共に、通信種別を示す識別子を、監視アプリ30に通知する。通信種別とは、通信の処理毎の区分であり、例えば、ファイルダウンロード通信又はストリーミング通信などである。なお、必ずしも、同一の通信の処理毎に通信種別が割り当てられる必要はなく、例えば類似の通信の処理毎に通信種別が割り当てられてもよい。連携部23は、ファイルダウンロード通信に対して識別子X、ストリーミング通信に対して識別子Y、のように、通信種別毎に識別子を付与する。
【0062】
そして、監視アプリ30のスループット推定部32は、連携部23によって通知された識別子を考慮して、通信のスループットを評価する。例えば、上述したファイルダウンロード通信は、通常、通信回線が許容する最大限のスループット(トップスピード)で行われる。これに対して、ストリーミング通信は、通常、サービスサーバ50又はサービスアプリ20側の制御により、一定のスループットに制限される。このような特徴を考慮すると、スループット推定部32は、識別子Xで示されるファイルダウンロード通信のスループットが、トップスピードを把握することに関して信頼性が高いと判断できる。また、スループット推定部32は、識別子Yで示されるストリーミング通信のスループットが、識別子Yで示される同種別の通信の中での相対的なスループットの把握に関して信頼性が高いと判断できる。
【0063】
このように、通信種別を示す識別子を考慮することにより、推定したスループットが、どのような通信種別の通信に係るものであるかを特定することができる。このことで、推定したスループットを、スループット毎の適した用途で用いることができる。具体的には、ファイルダウンロード通信のスループットをトップスピードの把握に用い、ストリーミング通信のスループットを同一識別子内での相対的なスループットの把握に用いることができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0065】
例えば、監視アプリ30のスループット推定部32によって、スループット計測終了のタイミングが決定されるとして説明したがこれに限定されない。すなわち、サービスアプリ20の通信判定部22が、通信のスループット計測が開始された後において通信に係る通信量が所定値以下になったか否かを判定し、所定値以下になった場合に、連携部23が監視アプリ30に対して計側終了指示を通知するものであってもよい。この場合の処理について、
図7を参照して説明する。
【0066】
図7に示される、ステップS11〜S16の処理及びS19,20の処理は、上述した
図3のステップS1〜S6の処理及びS9,10の処理と同じであるので、説明を省略する。本変形例の処理では、大容量通信(ステップS16)が開始された後に、サービスアプリ20から監視アプリ30に対して計側終了指示を通知している(ステップS17)。具体的には、通信判定部22が、通信のスループット計測が開始された後において通信に係る通信量が所定値以下になったか否かを判定し、所定値以下になった場合に、連携部23が監視アプリ30に対して計側終了指示を通知している。そして、該計測終了指示を受信した監視アプリ30のスループット推定部32は、通信のスループット計測を終了する(ステップS18)。
【0067】
このように、通信を発生させるサービスアプリ20側での通信量の減少タイミングを、スループット計測終了のタイミングとすることによって、より適切なタイミングでスループット計測を終了させることができ、通信のスループットをより正確に推定することができる。
【0068】
また、通信端末10がサービスアプリ20と監視アプリ30とを備えているとして説明したが、当該サービスアプリ20及び監視アプリ30の機能は、1つのアプリケーションにより実現されるものであってもよい。
【0069】
また、通信端末10では、通信開始のタイミングにおいてサービスアプリ20が監視アプリ30から判定基準を取得するとして説明したが、これに限定されず、当該判定基準はサービスアプリ20に組み込まれているものであってもよい。
【0070】
また、サービスアプリ20において、通信に係る通信量及び通信種別の少なくともいずれか一方が所定の条件を満たすか否かが判定される(スループット推定に適切な通信か否かが判定される)として説明したがこれに限定されず、監視アプリ30において当該判定が行われてもよい。この場合には、サービスアプリ20から監視アプリ30に対して、想定される通信量が常に通知される。そして、監視アプリ30において、当該想定される通信量から、スループット推定に適切な通信か否かが判定される。