(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581941
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】シューズ用アッパーおよびそれを用いたシューズ
(51)【国際特許分類】
A43B 23/02 20060101AFI20190912BHJP
A43B 5/00 20060101ALI20190912BHJP
A43C 13/00 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
A43B23/02 101Z
A43B5/00 302
A43C13/00
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-88365(P2016-88365)
(22)【出願日】2016年4月26日
(65)【公開番号】特開2017-196052(P2017-196052A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2018年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幸司
(72)【発明者】
【氏名】平井 森
(72)【発明者】
【氏名】家田 敢
【審査官】
片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0074374(US,A1)
【文献】
特開2011−087916(JP,A)
【文献】
特開2001−017206(JP,A)
【文献】
特開2008−284113(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/181928(WO,A1)
【文献】
登録実用新案第3047622(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/00〜23/30
A43C 1/00〜19/00
A43D 1/00〜999/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の足の爪先側から踵側までを覆うアッパー本体と、
前記アッパー本体の外面に部分的に設けられ、前記アッパー本体の材料と異なりかつ耐摩耗性を有する樹脂材からなる保護部と、を備えるシューズ用アッパーであって、
前記保護部は、
前記アッパー本体の爪先領域に対応する位置に設けられ、前記樹脂材により形成された爪先保護部と、
前記アッパー本体の内甲側において前記爪先保護部の後端から中足部に亘る領域に設けられ、前記爪先保護部よりも変形しやすい変形許容部と、該変形許容部を複数の領域に区画する複数の補強リブとからなる内甲側保護部と、を有し、
前記変形許容部および前記複数の補強リブは、前記樹脂材により形成されており、
前記各補強リブは、前記アッパー本体の下側に向かって着用者の足の踵側に向かうように傾斜して延びており、
前記複数の補強リブにより区画された前記変形許容部は、少なくとも、前記アッパー本体において着用者の足の第1基節骨の後端に対応する位置から第1中足骨に対応する位置まで延びる領域を含むように構成されている、シューズ用アッパー。
【請求項2】
請求項1に記載のシューズ用アッパーにおいて、
前記変形許容部は、前記樹脂材により形成された複数の網部が互いに交差した網目構造を有する、シューズ用アッパー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシューズ用アッパーにおいて、
前記変形許容部の厚みが前記爪先保護部の厚みよりも薄い、シューズ用アッパー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のシューズ用アッパーにおいて、
前記保護部は、熱硬化性ポリウレタンからなる、シューズ用アッパー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のシューズ用アッパーにおいて、
前記保護部の外面は、該保護部が設けられていない部分における前記アッパー本体の外面と面一である、シューズ用アッパー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のシューズ用アッパーにおいて、
前記爪先保護部は、着用者の足の中足趾節関節よりも前方に設けられている、シューズ用アッパー。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のシューズ用アッパーを備えるシューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シューズ用アッパーおよびそれを用いたシューズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な野球用シューズを着用した使用者が野球で投球および送球動作を行う場合において、その終わりに後側へ延びた軸足の爪先部分および内甲側における爪先後端から中足部に亘る範囲が地面に摺るようになり、このことでシューズのアッパーの爪先部分および内甲側における爪先後端から中足部に亘る範囲に摩擦が生じ、その結果、当該範囲が摩耗により劣化しやすくなるのは避けられない。
【0003】
従来、野球用シューズなどにおけるアッパーの爪先部分を保護する構成を備えたものとして、例えば特許文献1のようなシューズ用つま先カバーが知られている。この特許文献1には、靴の甲被の少なくとも一部前方を覆う甲被部と、靴の最前方に位置し、本体および底部からなる保護部とを有するスポーツシューズ用つま先カバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−284113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような摩耗によるアッパーの劣化を防ぐために特許文献1などに示されるシューズ用つま先カバーは、いわゆるP革と呼ばれており、野球選手などは、P革をシューズのアッパーにおける外面に別途取り付けて、シューズの寿命を向上させる工夫を行っているのが現状である。
【0006】
しかしながら、このような対処方法では、シューズとは別にP革を新たに購入して、シューズにP革を別途取り付けなければならず、その手間が極めて面倒となる。また、このP革は、所定の厚みで一様に形成された保護部をシューズのアッパーの爪先部分のみに取り付けるようになっていることから、必然的に従来のP革では内甲側の中足部を適切に保護することができなかった。このように、特許文献1に示されたP革では、足の内甲側における爪先後端から中足部に亘る範囲を保護しかつ該範囲でのアッパーの摩耗を適切に防ぐことが現実的に困難であった。
【0007】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、例えば野球などの競技中に生じるシューズ用アッパーの摩耗を防止して、アッパーの爪先部分ないし内甲側の爪先後端から中足部に亘る範囲を長期間に亘って適切に保護しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の形態はシューズ用アッパーに係り、このシューズ用アッパーは、着用者の足の爪先側から踵側までを覆うアッパー本体と、アッパー本体の外面に部分的に設けられ、
アッパー本体の材料と異なりかつ耐摩耗性を有す
る樹脂材からなる保護部と、を備えている。そして、この保護部は、アッパー本体の爪先領域に対応する位置に設けられ
、樹脂材により形成された爪先保護部と、アッパー本体の内甲側において爪先保護部の後端から中足部に亘る領域に設けられ、爪先保護部よりも変形しやすい変形許容部と、該変形許容部を複数の領域に区画する複数の補強リブとからなる内甲側保護部と、を有する
。変形許容部および複数の補強リブは、樹脂材により形成されている。各補強リブは、アッパー本体の下側に向かって着用者の足の踵側に向かうように傾斜して延びている。そして、複数の補強リブにより区画された変形許容部は、少なくとも、アッパー本体において着用者の足の第1基節骨の後端に対応する位置から第1中足骨に対応する位置まで延びる領域を含むように構成されていることを特徴とする。
【0009】
この第1の形態では、例えば野球の投球および送球動作において、軸足の爪先部分が地面に摺ることで内甲側から外甲側に亘るアッパー本体の爪先部分および内甲側における爪先後端から中足部に亘る範囲に生じる摩耗は、爪先保護部および内甲側保護部の各補強リブにより抑制される。その一方で、疾走およびステップ時などには、足指(特に親指)の各関節の屈曲に内甲側保護部の変形許容部が追従して足が地面に踏み込みやすくなる。このように、爪先保護部および内甲側保護部からなる保護部により摩耗によるアッパー本体の破損などが抑制される一方、内甲側保護部の変形許容部により足の内甲側における爪先後端から中足部に亘る範囲の足指の関節が曲げやすくなる。その結果、アッパー本体の爪先部分ないし内甲側の爪先後端から中足部に亘る範囲を長期間に亘って適切に保護することができる。さらに、別途にP革を購入してシューズに別途取り付ける作業や手間が全く不要となる。
【0010】
さらに、第1の形態において、各補強リブは、アッパー本体の下側に向かって足の踵側に向かうように傾斜して延びていることを特徴とする。
これにより、各補強リブにより耐摩耗性および剛性を維持しつつ、内甲側に位置する足指(特に親指)の各関節を各補強リブの傾斜方向に合わせて容易に曲げることができる。
【0011】
第
2の形態は、第
1の形態において、変形許容部は、耐摩耗性の樹脂材により形成された複数の網部が互いに交差した網目構造を有することを特徴とする。
【0012】
この第
2の形態では、耐摩耗性の樹脂材により形成された網目構造の変形許容部によって、その変形許容部の耐摩耗性を維持しつつ、変形許容部を爪先保護部よりも変形しやすくすることができる。また、網目構造によりアッパー本体における通気性を損なわないようにすることもできる。
【0013】
第
3の形態は、第1
または第2の形態において、変形許容部の厚みが爪先保護部の厚みよりも薄いことを特徴とする。
【0014】
この第
3の形態では、変形許容部を爪先保護部よりも薄肉状に形成することにより、耐摩耗性を維持しつつ、簡単な構成で変形許容部を爪先保護部よりも変形しやすくすることができる。
【0015】
第
4の形態は、第1〜第
3のいずれか1つの形態において、保護部は、熱硬化性ポリウレタンからなることを特徴とする。
【0016】
この第
4の形態では、熱硬化性ポリウレタンの特性により、保護部の耐摩耗性を向上させることができる。
【0017】
第
5の形態は、第1〜第
4のいずれか1つに形態において、保護部の外面は、該保護部が設けられていない部分におけるアッパー本体の外面と面一であることを特徴とする。
【0018】
この第
5の形態では、保護部と該保護部が設けられていない部分におけるアッパー本体とが面一であるので、両者の接合箇所において保護部の剥がれの起点となる部分を無くすことができ、その結果、保護部がアッパー本体から剥がれにくくなる。
【0019】
第
6の形態は、第1〜第
5のいずれか1つに形態において、爪先保護部は、着用者の足の中足趾節関節よりも前方に設けられていることを特徴とする。
【0020】
この第
6の形態では、爪先保護部がシューズの着用者による中足趾節関節での関節可動を阻害しないようにしつつ、爪先保護部によりアッパー本体の爪先部分を適切に保護することができる。
【0021】
第
7の形態は、第1〜第
6のいずれか1つのシューズ用アッパーを備えるシューズであることを特徴とする。
【0022】
この第
7の形態では、第1〜
第6の形態のいずれか1つの形態と同様の効果を奏するシューズを提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明のシューズ用アッパーによると、爪先保護部および内甲側保護部からなる保護部により摩耗によるアッパー本体の破れが抑制される一方、内甲側保護部の変形許容部により足の内甲側における爪先後端から中足部に亘る範囲の足指の関節が曲げやすくなる。その結果、アッパー本体の爪先部分ないし内甲側の爪先後端から中足部に亘る範囲を長期間に亘って適切に保護することができる。さらに、P革を購入してシューズに別途取り付ける作業の不要化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るシューズを内甲側上方から見て示す斜視図である。
【
図3】
図3は、シューズを外甲側上方から見て示す斜視図である。
【
図4】
図4は、人体の足の構造に保護部を重ねて示す概略図である。
【
図7】
図7は、
参考の実施形態に係るシューズを示す
図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の各実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0026】
[第1実施形態]
図1〜
図6は、本発明の第1実施形態に係るシューズSを示し、このシューズSは、野球用およびソフトボール用のシューズとして使用される。ここで、シューズSは、右足用のシューズのみを例示している。左足用のシューズは、右足用シューズSと左右対称になるように構成されているので、以下の説明では右足用シューズSのみについて説明し、左足用シューズの説明は省略する。また、以下の説明において、上方(上側)および下方(下側)とはシューズSの上下方向の位置関係を表し、前方(前側)および後方(後側)とはシューズSの前後方向の位置関係を表し、左側および右側とはシューズSの左右方向の位置関係を表すものとする。
【0027】
図1〜
図3に示すように、シューズSは、地面に接する接地面を下面に有するソール1を備えている。ソール1は、例えば軟質弾性部材からなり、具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂やその発泡体、ポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂やその発泡体、またはブタジエンラバーやクロロプレンラバー等のラバー素材やその発泡体により構成されている。
【0028】
また、シューズSのソール1上方にはアッパー2が設けられている。このアッパー2は、前足部Fの爪先側から後足部Hの踵側(
図4参照)まで覆うアッパー本体3,4を備えている。アッパー本体3,4は、第1アッパー部3と第2アッパー部4とから構成されている。第1および第2アッパー部3,4は、例えば合成皮革からなり、着用者の足の形状に適合しかつ足を適切に保持するように構成されている。
【0029】
ここで、第2アッパー部4は、前足部Fにおける内甲側から外甲側までの爪先部分、および内甲側における前足部Fから中足部Mに亘る範囲に配置されている。すなわち、第2アッパー部4は後述する保護部10に対応する位置に配置される一方、第1アッパー部3は保護部10が設けられていない部分に配置されている。また、第1および第2アッパー部3,4は、互いに周縁部が重ね合わされた状態で縫製糸18,18により互いに結合されており(
図6参照)、下部周縁がソール1の周縁全体に接着剤などで一体的に固着されている。
【0030】
第1および第2アッパー部3,4の後部上面には、履き口部5が開口している。この履き口部5は、着用者の足首周囲に沿うように平面視で前後方向を長径とする略楕円形状に形成されている。一方、第1および第2アッパー部3,4の前部には足挿入用開口部6が設けられており、この足挿入用開口部6は、履き口部5の前端部に連続しかつ履き口部5の前端部から前方向に延びるように開口している。この足挿入用開口部6は、着用者の足の甲部に位置するように形成されており、かつ、その前端部が着用者の前足部Fにおける前後略中央(例えば中足骨の遠位骨頭付近)に対応する位置まで延びている。
【0031】
そして、本発明の特徴として、
図1〜
図4に示すように、アッパー2は、第2アッパー部4の外面に部分的に設けられた保護部10を備えている。この保護部10は、耐摩耗性を有する同一種類の樹脂材を構成材料として射出成形されたものであり、第2アッパー部4の外面上に接着されている(
図6参照)。具体的に、保護部10の構成材料としては、例えば熱硬化性ポリウレタンまたはラバー材が挙げられるが、耐摩耗性観点から熱硬化性ポリウレタンがより好ましい。
【0032】
保護部10は、第2アッパー部4の爪先領域に対応する位置に設けられた爪先保護部11を有している。
図4に示すように、爪先保護部11は、足の中足趾節関節MPよりも前方に設けられている。具体的には、爪先保護部11は、足の親指ないし小指における基節骨P1〜P5、中節骨M2〜M5、および末節骨D1〜D5を含む領域に配置されており、前足部Fの爪先全体を覆うように構成されている。また、爪先保護部11は、耐摩耗性および高剛性を維持するために、例えば約1.5mm〜3.5mmの厚さで一様に形成されている。
【0033】
また、保護部10は、第2アッパー部4の内甲側において爪先保護部11の後端から中足部Mに亘る領域に設けられた内甲側保護部12を有している。具体的には、
図4に示すように、内甲側保護部12は、前足部Fの第1基節骨P1および第2基節骨P2の後端から第1中足骨MT1および第2中足骨MT2を含む領域に配置されている。
【0034】
内甲側保護部12におけるソール1および第1アッパー部3に隣接する部分には、爪先保護部11と同じ厚みでかつ爪先保護部11の外面と面一になるように連続している周縁部13,13,…が設けられている。
【0035】
ここで、
図6に示すように、内甲側保護部12の周縁部13には、内甲側保護部12の外面から厚み方向に向かって部分的に切り欠かれた段差部14が形成されており、この段差部14上に第1アッパー部3の周縁部が載せられている。そして、内甲側保護部12は、第1アッパー部3の周縁部と第2アッパー部4の周縁部との間に挟まれた状態で縫製糸18,18により第1および第2アッパー部3,4に接合されている。このような接合状態において、内甲側保護部12の外面は、第1アッパー部3の外面と面一になっている。なお、爪先保護部11についても、内甲側保護部12と同様の態様により第1および第2アッパー部3,4に接合されていることから、その詳細な説明を省略する。
【0036】
内甲側保護部12は、爪先保護部11よりも変形しやすい変形許容部15と、この変形許容部15に配置され、内甲側保護部12の剛性を向上させるための複数の補強リブ16,16,…とを有している。変形許容部15および各補強リブ16は、いずれも爪先保護部11と同じ耐摩耗性を有する樹脂材(例えば熱硬化性ポリウレタン)により形成されており、爪先保護部11の後端と内甲側保護部12の各周縁部13とで囲われた領域内に配置されている。
【0037】
図1および
図5に示すように、各補強リブ16は、第1アッパー部3に隣接する内甲側保護部12の周縁部13からソール1に隣接する内甲側保護部12の周縁部13に亘って架け渡されており、第2アッパー部4の下側(すなわち内甲側保護部12における下側の周縁部13)に向かって後足部Hの踵側に向かうように傾斜して延びている。そして、複数の補強リブ16,16,…は、変形許容部15を複数の領域に区画するように前後方向に所定の間隔をあけて並べられている。また、各変形許容部15は、複数の網部17,17,…が互いに交差して略三角形状の網目を形成する網目構造を有しており、各網部17が爪先保護部11の後端ないし周縁部13に連続している。
【0038】
なお、各補強リブ16は、第2アッパー部4の法線方向外側に向かう厚みが爪先保護部11よりも厚く形成されているが、例えば爪先保護部11と略同じ厚みになるように形成されていてもよい。
【0039】
したがって、以上のように、本実施形態に係るシューズSのアッパー2によると、例えば野球の投球および送球動作の終わりにおいて、軸足の爪先部分が地面に摺ることで内甲側から外甲側に亘る第2アッパー部4の爪先部分および内甲側における爪先後端から中足部に亘る範囲に生じる摩耗が生じようとしても、その摩耗は爪先保護部11および内甲側保護部12の各補強リブ16により抑制される。その一方で、疾走およびステップ時などには、足指(特に親指)の各関節の屈曲に内甲側保護部12の変形許容部15,15,…が追従して足が地面に踏み込みやすくなる。このように、爪先保護部11および内甲側保護部12からなる保護部10により摩耗によるアッパー2(第2アッパー部4)の破れが抑制される一方、内甲側保護部12の変形許容部15により足の内甲側における爪先後端から中足部Mに亘る範囲の足指の関節が曲げやすくなる。その結果、アッパー2(第2アッパー部4)の爪先部分ないし内甲側の爪先後端から中足部Mに亘る範囲を長期間に亘って適切に保護することができる。さらに、P革を購入してシューズに別途取り付ける作業が不要となる。
【0040】
また、各補強リブ16は、第2アッパー部4の下側に向かって足の踵側に向かうように傾斜して延びていることから、各補強リブ16により耐摩耗性および剛性を維持しつつ、内甲側に位置する足指(特に親指)の各関節を各補強リブ16の傾斜方向に合わせて容易に曲げることができる。
【0041】
また、変形許容部15は耐摩耗性の樹脂材により形成された複数の網部17,17,…が互いに交差した網目構造を有することから、変形許容部15においても耐摩耗性を維持しつつ、変形許容部15を爪先保護部11よりも変形しやすくすることができる。また、このような網目構造により、第2アッパー部4(アッパー本体)における通気性が損なわれず、その維持を図ることもできる。
【0042】
また、爪先保護部11および内甲側保護部12の外面が第1アッパー部3の外面と面一であることから、爪先保護部11および内甲側保護部12と第1アッパー部3との接合箇所において各保護部の剥がれの起点となる部分を無くすことができ、その結果、爪先保護部11および内甲側保護部12が第1および第2アッパー部3,4から剥がれにくくなる。
【0043】
また、爪先保護部11が足の中足趾節関節MPよりも前方に設けられていることから、シューズSの着用者による中足趾節関節MPでの関節可動を阻害しないようにしつつ、爪先保護部11により第2アッパー部4の爪先部分を適切に保護することができる。
【0044】
[
参考の実施形態]
図7は、
参考の実施形態に係るシューズSを示す。この実施形態は、各補強リブ16の傾斜方向を第1実施形態と異なる方向に変えたものである。なお、この実施形態に係るシューズSの他の構成は、第1実施形態に係るシューズSの構成と同様である。以下の説明では、
図1〜
図6と同じ部分について同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0045】
図7に示すように、各補強リブ16は、第2アッパー部4の下側(すなわち内甲側保護部12における下側の周縁部13)に向かって前足部Fの爪先側に向かうように傾斜して延びている。そして、第1実施形態と同様に、各補強リブ16は、変形許容部15を複数の領域に区画するように前後方向に所定の間隔をあけて並べられている。
【0046】
このように、各補強リブ16が第2アッパー部4の下側に向かって前足部Fの爪先側に向かうように傾斜して延びる構成であっても、第1実施形態と同様に、各補強リブ16により耐摩耗性および剛性を維持しつつ、内甲側に位置する足指(特に親指)の各関節を各補強リブ16の傾斜方向に合わせて容易に曲げることができる。
【0047】
[その他の実施形態]
上記
第1実施形態では、変形許容部15を、耐摩耗性の樹脂材により形成された複数の網部17,17,…が互いに交差した網目構造を有するものとしたが、この形態に限られない。例えば、変形許容部15は、その厚みが爪先保護部11の厚みよりも薄い薄肉状に形成されていてもよい。このような形態であっても、上記各実施形態と同様に、耐摩耗性を維持しつつ、簡単な構成で変形許容部15を爪先保護部11よりも変形しやすくすることができる。
【0048】
以上、本発明についての実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されず、発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば野球用のシューズとして産業上の利用が可能である。
【符号の説明】
【0050】
S:シューズ
1:ソール
2:アッパー
3:第1アッパー部(アッパー本体)
4:第2アッパー部(アッパー本体)
10:保護部
11:爪先保護部
12:内甲側保護部
13:周縁部
14:段差部
15:変形許容部
16:補強リブ
17:網部
18:縫製糸