(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、右のハンド部用の1本のワイヤと、左のハンド部用の1本のワイヤとが備えられている。これに対して、さらに重い荷物にも対応できるように、1つのハンド部に対して複数のワイヤを備えることが考えられている。
【0006】
前述のように、1つのハンド部に対して複数のワイヤを備えると、アーム部の回転体に複数本のワイヤが巻き掛けられて下方に延出された状態で、昇降装置により複数のワイヤの巻き取り及び繰り出しが行われる。
この場合、ワイヤの本数に対応した溝部を、回転体の外周部に回転体の円周方向に沿って形成して、複数のワイヤの巻き取り及び繰り出しの際に、回転体の各々の溝部にワイヤが1本ずつ入り込みながら、回転体が回転するように構成することが考えられる。
【0007】
前述のような複数のワイヤを備えると、ハンド部の姿勢等によって、複数のワイヤの回転体から下方の部分が、互いに交差したり絡まったりすることが考えられる。
この状態において、昇降装置により複数のワイヤの巻き取りが行われると、複数のワイヤの交差したり絡まったりした部分が、上昇して回転体に達する。これにより、回転体において、回転体の各々の溝部にワイヤが1本ずつ入り込むことができず、複数のワイヤの巻き取り不良が発生して、回転体での複数のワイヤの詰まりに発展する可能性が考えられる。
【0008】
本発明は、アシスト器具において、1つのハンド部に対して複数本のワイヤを備えた場合、ワイヤの巻き取り不良を防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、アシスト器具において以下のように構成することにある。
作業者の背中部に取り付けられる本体部と、前記本体部から上方に延出されたアーム部と、前記本体部に設けられて複数のワイヤを巻き取り及び繰り出す昇降装置と、
前記アーム部に回転自在に支持されて、前記昇降装置から延出された複数の前記ワイヤが巻き掛けられて、複数の前記ワイヤを下方に延出する回転体と、
複数の前記ワイヤの延出端に接続されて、荷物を保持するハンド部と、が備えられて、
前記昇降装置が複数の前記ワイヤを巻き取ることにより前記ハンド部を上昇させ、前記昇降装置が複数の前記ワイヤを繰り出すことにより前記ハンド部を下降させ、
複数の前記ワイヤのうちの1本が入り込む溝部が、前記回転体の外周部に前記回転体の円周方向に沿って形成され、
複数の前記溝部が、前記回転体の回転軸芯の方向に沿って並ぶように設けられて、
複数の前記ワイヤが1本ずつ通る複数の案内部を複数の前記溝部の各々に対向するように、前記回転軸芯の方向に沿って並べて設けたガイド部が備えられている。
【0010】
本発明によると、回転体において1つの溝部に入り込んだ1本のワイヤが、この溝部に対向する1つの案内部を通って下方に延出されるのであり、ガイド部の1つの案内部に複数のワイヤが通ることはなく、複数のワイヤはガイド部の案内部により1本ずつに分離された状態となって下方に延出される。
【0011】
これにより例えば、複数のワイヤの回転体から下方の部分が互いに交差したり絡まったりした状態において、昇降装置により複数のワイヤの巻き取りが行われた場合、本発明によると、複数のワイヤの交差したり絡まったりした部分が、上昇してガイド部に達する。
【0012】
次にガイド部において、複数のワイヤの交差したり絡まったりした部分がほぐされ、複数のワイヤがガイド部の案内部により1本ずつに分離されるのであり、分離された1本のワイヤが、ガイド部の内部から、この案内部に対向する1つの溝部に入り込みながら回転体が回転して、昇降装置に巻き取られる。
【0013】
以上のように、本発明によると、複数のワイヤの回転体から下方の部分が互いに交差したり絡まったりした状態で、昇降装置により複数のワイヤの巻き取りが行われても、複数のワイヤの交差したり絡まったりした部分が、ほぐされながら回転体に達するようにすることができて、回転体での複数のワイヤの詰まりを防止しながら、複数のワイヤの円滑な巻き取りが可能となり、アシスト器具の作動の信頼性を向上させることができる。
【0014】
本発明において、
前記案内部が、前記回転体の円周方向に沿った長孔であると好適である。
【0015】
例えばアシスト器具を装着した作業者が前かがみの姿勢になったり、荷物を保持したハンド部が前後方向に揺れたりすると、アーム部と複数のワイヤとの間の角度が変化する。
【0016】
本発明によると、ガイド部の案内部が回転体の円周方向に沿った長孔であるので、前述のように、アーム部と複数のワイヤとの間の角度が変化しても、複数のワイヤがガイド部の案内部に沿って移動する状態となるだけで、複数のワイヤがガイド部の案内部に無理に接触するという状態は生じない。これにより、アーム部と複数のワイヤとの間の角度が変化しても、ガイド部の案内部の機能が低下することはない。
【0017】
本発明において、
前記ガイド部が、前記回転体の外周部に沿う円弧状であると好適である。
【0018】
本発明によると、ガイド部を回転体の外周部に沿うようにコンパクトに配置することができる。
【0019】
本発明において、
前記回転体の上側を覆うカバーが前記アーム部に備えられ、
前記ガイド部が前記カバーの下側部分に取り付けられていると好適である。
【0020】
本発明によると、回転体の上側を覆うカバーがアーム部に備えられ、ガイド部がカバーの下側部分に取り付けられるので、カバー及びガイド部により回転体が覆われて、ゴミ等の回転体への巻き付きの防止という面で有利なものとなる。
前述の状態において、本発明によると、ガイド部が回転体を覆うカバーの一部に兼用することができるので、構造の簡素化の面で有利なものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、以下のように記載している。作業者がアシスト器具を装着した状態において、作業者から視て前側が「前」であり、後側が「後」であり、右側が「右」であり、左側が「左」である。
【0023】
(アシスト器具の全体構成及び本体部)
図1及び
図2に示すように、アシスト器具には、作業者の背中部に取り付けられる本体部1、本体部1の上部から上方に延出された右及び左のアーム部2、本体部1の下部に設けられた右及び左の脚作用部3が備えられており、右及び左のハンド部20、ワイヤ18,19、作業者への装着用の取付ベルト4、右及び左の肩ベルト5が備えられている。
【0024】
図1及び
図2に示すように、本体部1は、右及び左の縦フレーム6、右及び左の縦フレーム6に亘って連結された支持板7等を備えて、枠状となっている。脚作用部3に取付ベルト4が取り付けられて、支持板7の前面の上部に肩ベルト5が取り付けられている。支持板7の後面の上部に昇降装置17が連結され、支持板7の後面の上下中間部に制御装置8が連結されており、支持板7の後面の下部にバッテリー9が取り付けられている。
【0025】
図1及び
図2に示すように、肩ベルト5に作業者の腕部(肩部)を入れ、取付ベルト4を作業者の腰部に巻き付けて固定することにより、作業者の背中部に本体部1が取り付けられる。
【0026】
図1及び
図2に示すように、アシスト器具及び荷物の重量が取付ベルト4を介して主に作業者の腰部に掛かることになるのであり、アシスト器具及び荷物の重量が作業者の腰部により安定して支持される。右及び左の肩ベルト5は、主に本体部1が作業者の背中部から後方に離れようとする状態を止める機能を発揮する。
【0027】
(脚作用部)
図1及び
図2に示すように、右及び左の脚作用部3は、基部10、伝動ケース11、操作アーム12及び脚ベルト13等を備えている。支持板7の下部に左右方向にスライド自在に基部10が支持されており、基部10の外端部に伝動ケース11が前向きに連結されている。
【0028】
図1及び
図2に示すように、伝動ケース11の前部の左右方向の横軸芯P1周りに、操作アーム12が揺動自在に支持されており、幅広のベルト状の脚ベルト13が操作アーム12の端部に連結されている。複数の平ギヤにより構成された伝動部(図示せず)が伝動ケース11の内部に備えられ、電動モータ(図示せず)が基部10に内装されており、電動モータにより伝動部を介して操作アーム12が横軸芯P1周りに揺動駆動される。
【0029】
前述のように、作業者の背中部に本体部1を取り付ける場合において、作業者が取付ベルト4を腰部に巻き付けて固定する際、取付ベルト4と一緒に、右及び左の脚作用部3(基部10)が支持板7に沿って左右方向に移動可能である。
これにより、取付ベルト4の腰部への巻き付け具合により、作業者の体格に合わせるように右及び左の脚作用部3の間隔が決まるのであり、取付ベルト4により右及び左の脚作用部3の位置が決められた状態となる。
【0030】
この後、
図1及び
図2に示すように、作業者は脚ベルト13を太腿部に巻き付けて、面ファスナ(図示せず)(登録商標:マジックテープ)により、脚ベルト13を太腿部に取り付ける。
作業者がアシスト器具を装着した状態において、作業者の腰部の右側に右の脚作用部3(伝動ケース11)が位置し、作業者の腰部の左側に左の脚作用部3(伝動ケース11)が位置する。
【0031】
(昇降装置の全体構成、昇降装置における電動モータ及び伝動機構)
図3及び
図5に示すように、昇降装置17は、左右方向の回転軸芯P2周りに回転自在に左右方向に配置された4個の幅広のプーリー25,26,27,28と、プーリー25〜28の下側に左右方向に配置された電動モータ29と、電動モータ29の出力軸29a側の端部とプーリー25〜28の左の端部とに亘って上下方向に配置された伝動機構30とを備えている。これに加えて、昇降装置17は、後述するアウター受け部21、右及び左の支持部材15を備えている。
【0032】
図3及び
図5に示すように、伝動機構30は、伝動ケース31と蓋部32とを備えており、伝動ケース31に備えられた脚部31aが支持板7にボルト連結されている。電動モータ29の出力軸29a側の端部が伝動ケース31の下部に連結されており、電動モータ29の脚部29cか支持板7にボルト連結されている。
【0033】
図3に示すように、伝動機構30において、伝動ケース31と蓋部32の中間部に、大径の第1ギヤ41及び小径の第2ギヤ42が、一体で回転するように支持されており、電動モータ29の出力軸29aに連結された出力ギヤ29bが、第1ギヤ41と咬合している。伝動ケース31と蓋部32の上部に、伝動軸34が回転自在に支持されており、伝動軸34に連結された第3ギヤ43が、第2ギヤ42と咬合している。
【0034】
(昇降装置におけるプーリーの支持構造)
図3,4,5に示すように、昇降装置17には、半円筒状の支持ケース36が備えられている。支持ケース36の右及び左の端部に脚部36aが備えられ、脚部36aが支持板7にボルト連結されて、支持ケース36の左部が伝動ケース31に接続されている。
【0035】
図3及び
図5に示すように、支持ケース36の右及び左の脚部36aの位置に、ベアリング37,38が取り付けられている。駆動軸39が、ベアリング37,38により左右方向の横軸芯P2周りに回転自在に支持ケース36に支持されており、駆動軸39と伝動軸34とが連結されている。
【0036】
図4及び
図5に示すように、駆動軸39は断面四角状に形成されている。プーリー25〜28は合成樹脂により円柱状に形成されて、中央部に断面四角状の取付孔が開口されており、取付孔に駆動軸39が挿入されることによって、プーリー25〜28が駆動軸39に一体的に回転するように取り付けられている。
【0037】
図3及び
図5に示すように、支持ケース36の右の端部が右方に延出されて、受け部36dが形成されている。支持ケース36の受け部36dに、プーリー25〜28の回転角度を検出する角度センサー35(ロータリエンコーダ)が取り付けられて、角度センサー35が駆動軸39の右の端部に接続されている。
【0038】
図3,4,5に示すように、昇降装置17には、透明の合成樹脂製で半円筒状のカバー部材45が備えられており、カバー部材45が、支持ケース36の右及び左の脚部36aにボルト連結されている。支持ケース36及びカバー部材45により、プーリー25〜28及び角度センサー35、ベアリング37,38が覆われている。
【0039】
以上の構造により、
図3に示すように、電動モータ29の動力が伝動機構30(第1,2,3ギヤ41,42,43)を介して、駆動軸39に伝達されて、プーリー25〜28が巻き取り側及び繰り出し側に回転駆動される。
電動モータ29に電磁ブレーキ(図示せず)が備えられている。電動モータ29の作動時に電磁ブレーキは自動的に解除状態となり、電動モータ29の停止時及び非通電時に電磁ブレーキは自動的に制動状態となる。
【0040】
(ワイヤの昇降装置側の支持構造)
図3及び
図4に示すように、支持板7の上部に、後方に向く横辺部7aが備えられており、アウター受け部21が、当て板14を間に挟んで支持板7の横辺部7aにボルト連結されている。
【0041】
図4及び
図5に示すように、アウター受け部21は、上面部21a、縦面部21b及び下面部21cを備えて、側面視でクランク状に成形されており、アウター受け部21の下面部21cが支持板7の横辺部7aにボルト連結されている。
【0042】
図3,4,5に示すように、ワイヤ18,19のアウター18b,19bの端部18c,19cが、アウター受け部21の上面部21aに連結されている。4個のプーリー25〜28に対向するように、4個の開口部36cが支持ケース36に備えられている。
【0043】
図3,4,5に示すように、左のワイヤ18のインナー18aが、支持ケース36のプーリー25に対向する開口部36cを通っており、左のワイヤ18のインナー18aの端部が、プーリー25に接続されている。
左のワイヤ19のインナー19aが、支持ケース36のプーリー26に対向する開口部36cを通っており、左のワイヤ19のインナー19aの端部が、プーリー26に接続されている。
【0044】
図3,4,5に示すように、右のワイヤ18のインナー18aが、支持ケース36のプーリー28に対向する開口部36cを通っており、右のワイヤ18のインナー18aの端部が、プーリー28に接続されている。
右のワイヤ19のインナー19aが、支持ケース36のプーリー27に対向する開口部36cを通っており、右のワイヤ19のインナー19aの端部が、プーリー27に接続されている。
【0045】
図3,4,5に示すように、アウター受け部21の上面部21a及び縦面部21bの右の縁部に、右の支持部材15が連結されており、アウター受け部21の上面部21a及び縦面部21bの左の縁部に、左の支持部材15が連結されている。
【0046】
図4及び
図5に示すように、支持ケース36の右及び左の脚部36aの上部に受け部36bが形成されており、右及び左の支持部材15が下方に延出されて、右及び左の支持部材15の下端部が支持ケース36の右及び左の受け部36bに当て付けられている。
【0047】
以上の構造によって、
図3,4,5に示すように、右及び左の支持部材15が、ワイヤ18,19のインナー18a,19aにおけるプーリー25〜28とアウター受け部21の上面部21aとの間の部分に沿って、支持ケース36に向けて延出された状態となっている。
右及び左の支持部材15が、ワイヤ18,19のインナー18a,19aにおけるプーリー25〜28とアウター受け部21の上面部21aとの間の部分を間に挟んで、対向するように配置された状態となっている。
【0048】
(アーム部)
図1及び
図2に示すように、右及び左の縦フレーム6の上部が、作業者の右及び左の肩部を越えて斜め前方の斜め上方に延出されて、右及び左のアーム部2となっており、右及び左のアーム部2の上端部に、右及び左のプーリー支持部材16が取り付けられている。
【0049】
図6,7,8に示すように、プーリー支持部材16は、下側部分が開放された側面視で半円状の支持部16a(カバーに相当)、円柱状の取付部16b、アウター受け部16c及び開口部16dを備えて、一体的に成形されており、プーリー支持部材16の取付部16bが、アーム部2の上端部に取り付けられている。
【0050】
図6,7,8に示すように、プーリー支持部材16の支持部16aに、支持軸22が横向きに支持されて、支持軸22の回転軸芯P3周りに、プーリー33(回転体に相当)が自由回転自在に支持されている。プーリー33は幅広に成形されており、2個の溝部33a,33bがプーリー33の外周部に円周方向に沿って形成され、溝部33a,33bが回転軸芯P3の方向に沿って並ぶように形成されている(
図8参照)。
【0051】
図7に示すように、右のワイヤ18,19が右のアーム部2に沿って延出されており、右のワイヤ18,19のアウター18b,19bの端部18d,19dが、プーリー支持部材16のアウター受け部16cに連結されている。
【0052】
図7及び
図8に示すように、右のワイヤ18,19のインナー18a,19aが、プーリー支持部材16の開口部16dを通って、プーリー支持部材16の支持部16aの内部に入り込んでいる。右のワイヤ18のインナー18aがプーリー33の溝部33aに入り込み、右のワイヤ19のインナー19aがプーリー33の溝部33bに入り込んでおり、右のワイヤ18,19のインナー18a,19aが、プーリー33に巻き掛けられて下側に延出されている。
右のワイヤ18,19と同様に、左のワイヤ18,19も、左のアーム部2、プーリー支持部材16及びプーリー33に取り付けられて、下側に延出されている。
【0053】
(ハンド部)
図1及び
図2に示すように、右のワイヤ18,19のインナー18a,19aの延出端に、右のハンド部20が接続され、左のワイヤ18,19のインナー18a,19aの延出端に、左のハンド部20が接続されている。
【0054】
図1及び
図2に示すように、右及び左のハンド部20は、板材が折り曲げられてフック状に成形されており、左右対称の形状となっている。右のハンド部20に上昇操作スイッチ23が備えられ、左のハンド部20に下降操作スイッチ24が備えられており、上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24が、ハーネス(図示せず)を介して制御装置8に接続されている。
【0055】
図1及び
図2に示すように、作業者がアシスト器具を装着した状態において、作業者が右手で右のハンド部20を握るようにして持ち、左手で左のハンド部20を握るようにして持つ。この状態で、作業者は右手及び左手の親指により上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24を押し操作する。
【0056】
図1及び
図2に示すように、上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24は復帰型に構成されている。作業者が上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24を押し操作していると、上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24から操作信号が出力され、作業者が上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24の押し操作を止めると、上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24の操作信号が停止する。
【0057】
以上の構造により、
図1,2,3に示すように、昇降装置17において、電動モータ29によりプーリー25〜28が巻き取り側に回転駆動されると、ワイヤ18,19のインナー18a,19aがプーリー25〜28に巻き取られて、ハンド部20が上昇する。
電動モータ29によりプーリー25〜28が繰り出し側に回転駆動されると、ワイヤ18,19のインナー18a,19aがプーリー25〜28から繰り出されて、ハンド部20が下降する。
【0058】
(プーリー支持部材に取り付けられるガイド部)
図1及び
図2に示すように、右及び左のプーリー支持部材16の支持部16aの下側部分に、右及び左のガイド部40が取り付けられている。プーリー支持部材16の支持部16aによりプーリー33の上側が覆われ、ガイド部40によりプーリー33の下側が覆われて、プーリー支持部材16の支持部16a及びガイド部40により、プーリー33の全体が覆われた状態となっている。
【0059】
図6,7,8に示すように、ガイド部40は、プーリー支持部材16の支持部16aの下側部分及びプーリー33の外周部に沿うように、側面視で円弧状に成形されている。ガイド部40には、2個の長孔40a,40b(案内部に相当)が開口されている。
【0060】
図6,7,8に示すように、プーリー支持部材16の支持部16aの下側部分にガイド部40が取り付けられた状態において、プーリー33の溝部33aの下側に対向してガイド部40の長孔40aが位置し、プーリー33の溝部33bの下側に対向してガイド部40の長孔40bが位置している。
【0061】
図8に示すように、ガイド部40の長孔40a,40bが、回転軸芯P3の方向に沿って並ぶようにガイド部40に設けられており、
図7に示すように、プーリー33の円周方向(プーリー33の溝部33a,33b)に沿って配置された状態となっている。
【0062】
これにより、
図7及び
図8に示すように、右及び左のガイド部40において、ワイヤ18のインナー18aが、ガイド部40の長孔40aを通っており、ワイヤ19のインナー19aが、ガイド部40の長孔40bを通っている。
【0063】
(アシスト器具の作業形態)
例えば、床に置かれた荷物を高い棚やトラックの荷台に置くような場合、作業者がしゃがんで床の荷物を手で持ち、次に手を下に延ばした状態で荷物を持ちながら立ち上がり、次に手で荷物を持ち上げて、荷物を高い棚やトラックの荷台に置くような状態が想定される。前述の状態において上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24の押し操作に基づいて、制御装置8により脚作用部3、昇降装置17が作動する状態について説明する。
【0064】
図1及び
図2に示すように、作業者がアシスト器具を装着した状態において、作業者が上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24の両方を押し操作していないと、昇降装置17の電動モータ29は停止して、脚作用部3の電動モータは停止状態(自由回転状態)となる。
作業者が歩行する場合や、作業者が膝部を曲げて腰部を落とす場合(しゃがむ場合)、作業者の太腿部に追従するように操作アーム12が揺動するのであり、作業者の動作が妨げられることはない。
【0065】
次に作業者がしゃがんで床の荷物を手で持つ場合、作業者が下降操作スイッチ24を押し操作すると、昇降装置17において、電動モータ29が繰り出し側に作動し、ワイヤ18,19のインナー18a,19aが繰り出されて、ハンド部20が下降する。下降操作スイッチ24の押し操作を止めると、電動モータ29が停止して、ハンド部20が停止する。これにより、ハンド部20により、荷物を保持する。
【0066】
前述のように、電動モータ29の作動時に電磁ブレーキは自動的に解除状態となり、電動モータ29の停止時及び非通電時に電磁ブレーキは自動的に制動状態となる。これにより、電動モータ29が停止した状態において、昇降装置17からワイヤ18,19のインナー18a,19aが繰り出されることはなく、後述するようにハンド部20に荷物の重量が掛かっても、ハンド部20が下降することはない。
【0067】
次に作業者は、ハンド部20により荷物を保持した状態で、立ち上がることにより荷物を床から持ち上げる。この状態において、作業者が上昇操作スイッチ23を押し操作すると、脚作用部3において、操作アーム12が下側に駆動され、作業者の太腿部が下側に操作されて、作業者の立ち上がりが補助される。このように、作業者が立ち上がる際において、前述の電動モータ29のブレーキ機能により、ハンド部20が下降することはない。
【0068】
前述のように、作業者が上昇操作スイッチ23を押し操作した状態で立ち上がった後、脚作用部3において、操作アーム12が略真下に向く位置に達したことが検出されると、作業者が完全に立ち上がったと判断されて、脚作用部3の電動モータは停止状態(自由回転状態)となる。
【0069】
次に昇降装置17において、電動モータ29が巻き取り側に作動し、ワイヤ18,19のインナー18a,19aが巻き取られて、ハンド部20が上昇する。所望の位置までハンド部20が上昇すると、上昇操作スイッチ23の押し操作を止めることにより、電動モータ29が停止してハンド部20が停止する。
【0070】
この場合、
図7及び
図8に示すように、ワイヤ18のインナー18aが、ガイド部40の長孔40aを通りながら、プーリー33の溝部33aに入り込み、ワイヤ19のインナー19aが、ガイド部40の長孔40bを通りながら、プーリー33の溝部33bに入り込んで、プーリー33が巻き取り側に回転する。
【0071】
次に作業者は荷物を置くべき高い棚やトラックの荷台等へ歩いて移動する。作業者が高い棚やトラックの荷台等に到着して、作業者が下降操作スイッチ24を押し操作すると、昇降装置17において、電動モータ29が繰り出し側に作動し、ワイヤ18,19のインナー18a,19aが繰り出されて、ハンド部20が下降する。
【0072】
この場合、
図7及び
図8に示すように、ワイヤ18のインナー18aが、プーリー33の溝部33aから出て、ガイド部40の長孔40aを通り、ワイヤ19のインナー19aが、プーリー33の溝部33bから出て、ガイド部40の長孔40bを通りながら、プーリー33が繰り出し側に回転する。
【0073】
これにより、荷物を高い棚やトラックの荷台等に置いて、ハンド部20を荷物から取り外す。以上のようにして、荷物を高い棚やトラックの荷台等に置くと、最初の状態に戻るのであり、次の荷物に対して同様な操作を行う。
【0074】
(アシスト器具の作業時における昇降装置側でのワイヤの状態)
前項の(アシスト器具の作業形態)で説明した状態において、ハンド部20により荷物を保持した状態で、しゃがんでいた作業者が立ち上がる場合、並びに、ハンド部20を上昇させる場合、ハンド部20に荷物の負荷が掛かるので、
図7に示すように、アーム部2では、ワイヤ18,19のアウター18b,19bの端部18d,19dからインナー18a,19aが引き出されようとする。
【0075】
前述の状態において本体部1では、
図3,4,5に示すように、ワイヤ18,19のインナー18a,19aをアウター18b,19bの端部18c,19cに引き込もうとする大きな力、つまり、プーリー25〜28をアウター受け部21に接近させようとする大きな力が発生する。
【0076】
このことについて言い換えると、
図3,4,5に示すように、プーリー25〜28をアウター受け部21に接近させようとする大きな力の反力として、ワイヤ18,19のアウター18b,19bの端部18c,19cをプーリー25〜28に接近させようとする大きな力、つまり、アウター受け部21をプーリー25〜28に接近させようとする大きな力が発生する。
【0077】
図3,4,5に示すように、本体部1において、プーリー25〜28をアウター受け部21に接近させようとする大きな力と、アウター受け部21をプーリー25〜28に接近させようとする大きな力は、互いに正反対の向きであり、互いに相殺するような状態となる。
【0078】
このことについて言い換えると、
図3,4,5に示すように、アウター受け部21をプーリー25〜28に接近させようとする大きな力が、アウター受け部21から右及び左の支持部材15を介して無駄なく支持ケース36に伝達されて、支持ケース36により無理なく直接に受け止められて支持される状態となる。
これにより、アウター受け部21をプーリー25〜28に接近させようとする大きな力が、昇降装置17の範囲で支持される状態となり、本体部1や支持板7の横辺部7aに掛かることは少ない。
【0079】
図3,4,5に示すように、右及び左の支持部材15の下端部が、支持ケース36の脚部36aの受け部36bに当て付けられており、アウター受け部21をプーリー25〜28に接近させようとする大きな力が、支持ケース36の脚部36aに支持される。
この場合、支持ケース36の脚部36aは充分な強度を備えて構成されるので、アウター受け部21をプーリー25〜28に接近させようとする大きな力が、支持ケース36の脚部36aにより無理なく受け止められて支持される。
【0080】
(アシスト器具の作業時におけるアーム部側でのワイヤの状態)
図1及び
図2に示す状態において、ハンド部20が左右に回転したりすると、ワイヤ18,19のインナー18a,19aにおけるプーリー33から下方の部分が、互いに交差したり絡まったりすることが考えられる。
【0081】
前述の状態において前項の(アシスト器具の作業形態)に記載のように、電動モータ29によりプーリー25〜28が巻き取り側に回転駆動されてハンド部20が上昇すると、
図7及び
図8に示すように、ワイヤ18,19のインナー18a,19aの交差したり絡まったりした部分が上昇して、ガイド部40に達する。
【0082】
図7及び
図8に示すように、ワイヤ18,19のインナー18a,19aの交差したり絡まったりした部分がガイド部40に達した状態で、さらにプーリー25〜28が巻き取り側に回転駆動されると、ワイヤ18,19のインナー18a,19aの交差したり絡まったりした部分が、ガイド部40によってほぐされて、ワイヤ18のインナー18aがガイド部40の長孔40aに案内され、ワイヤ19のインナー19aがガイド部40の長孔40bに案内される。
【0083】
これにより、
図7及び
図8に示すように、ワイヤ18,19のインナー18a,19aの交差したり絡まったりした部分が、ガイド部40の長孔40a,40bにより、ワイヤ18,19のインナー18a,19aの1本ずつに分離される。ワイヤ18のインナー18aが、ガイド部40の長孔40aを通りながらプーリー33の溝部33aに入り込み、ワイヤ19のインナー19aが、ガイド部40の長孔40bを通りながらプーリー33の溝部33bに入り込んで、プーリー33が巻き取り側に回転する。
【0084】
図7に示すように、ガイド部40の長孔40a,40bがプーリー33の円周方向に沿っている。これにより、例えばアシスト器具を装着した作業者が前かがみの姿勢になったり、荷物を保持したハンド部20が前後方向に揺れたりして、アーム部2とワイヤ18,19のインナー18a,19aとの間の角度が変化しても、ワイヤ18,19のインナー18a,19aが、ガイド部40の長孔40a,40bに沿って移動する状態となる。
【0085】
図7に示すように、ガイド部40が側面視でプーリー33の外周部に沿う円弧状となっている。これにより、プーリー33の溝部33a,33bとガイド部40の長孔40a,40bとの間隔が、ガイド部40の長孔40a,40bのどの部分でも一定に近い間隔となっている。
【0086】
以上のように、ガイド部40の長孔40a,40bがプーリー33の円周方向に沿っている点、及び、ガイド部40が側面視でプーリー33の外周部に沿う円弧状となっている点によって、ワイヤ18,19のインナー18a,19aの交差したり絡まったりした部分が、ガイド部40により安定してほぐされ、ワイヤ18,19のインナー18a,19aがプーリー33の溝部33a,33bに安定して案内される。
【0087】
(発明の実施の第1別形態)
図6,7,8に示す構造に代えて、以下のように構成してもよい。
図9に示すように、支持軸22の回転軸芯P3周りに、2個のプーリー46,47(回転体に相当)が、互いに独立に回転自在に支持されている。プーリー46に1個の溝部46aが、プーリー46の外周部に円周方向に沿って形成され、プーリー47に1個の溝部47aが、プーリー47の外周部に円周方向に沿って形成されている。
【0088】
これにより、
図9に示すように、プーリー46,47の溝部46a,47aが、回転軸芯P3の方向に沿って並ぶように設けられた状態となっている。
図6,7,8と同じガイド部40が、プーリー支持部材16の支持部16aの下側部分に取り付けられている。
【0089】
図9に示すように、ワイヤ18のインナー18aが、プーリー支持部材16の開口部16dを通って、プーリー46の溝部46aに入り込み、ガイド部40の長孔40aを通って下方に延出されている。
ワイヤ19のインナー19aが、プーリー支持部材16の開口部16dを通って、プーリー47の溝部47aに入り込み、ガイド部40の長孔40bを通って下方に延出されている。
【0090】
(発明の実施の第2別形態)
ガイド部40において、長孔40a,40bに代えて、円形の孔部を案内部として備えてもよい。
この構造によると、ガイド部40を、プーリー支持部材16の支持部16aの下側部分に沿って移動するように、支持軸22の回転軸芯P3周りに揺動自在に支持すればよい。これにより前述のように、アーム部2とワイヤ18,19のインナー18a,19aとの間の角度が変化しても、ワイヤ18,19のインナー18a,19aに追従するように、ガイド部40が回転軸芯P3周りに揺動する状態となる。
1個のガイド部40に複数個の案内部を備えるのではなく、1個の案内部を備えたガイド部40を複数個備えるようにしてもよい。
【0091】
(発明の実施の第3別形態)
右及び左のアーム部2を廃止して、1本のアーム部2を備えてもよい。
この構造によると、1本のアーム部2から2本のワイヤ18を延出して、2本のワイヤ18の一方に右のハンド部20を備え、2本のワイヤ18の他方に左のハンド部20を備える。又は、1本のアーム部2から1本のワイヤ18を延出し、1本のワイヤ18の端部を二股状に分岐させて、分岐部分の一方に右のハンド部20を備え、分岐部分の他方に左のハンド部20を備える。
【0092】
1個のハンド部20に対して、2本のワイヤ18,19を備えるのではなく、1個のハンド部20に対して、3本以上のワイヤ及び3個以上の溝部(回転体)を備えてもよい。
アシスト器具において、右及び左の脚作用部3を備えないように構成してもよい。