特許第6581985号(P6581985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6581985gpA33及びCD3に結合二重特異性1価ダイアボディ、並びにその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581985
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】gpA33及びCD3に結合二重特異性1価ダイアボディ、並びにその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20190912BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20190912BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190912BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20190912BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20190912BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20190912BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20190912BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20190912BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20190912BHJP
【FI】
   C07K16/46ZNA
   A61K39/395 N
   A61P35/00
   !C07K19/00
   !C07K16/18
   !C07K16/28
   !C12P21/08
   !C12N15/13
   !C12N15/62 Z
【請求項の数】15
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2016-536401(P2016-536401)
(86)(22)【出願日】2014年8月20日
(65)【公表番号】特表2017-504578(P2017-504578A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(86)【国際出願番号】US2014051793
(87)【国際公開番号】WO2015026894
(87)【国際公開日】20150226
【審査請求日】2017年8月18日
(31)【優先権主張番号】13198859.4
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/907,691
(32)【優先日】2013年11月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/869,528
(32)【優先日】2013年8月23日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504438727
【氏名又は名称】マクロジェニクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100123858
【弁理士】
【氏名又は名称】磯田 志郎
(72)【発明者】
【氏名】ムーア ポール エー.
(72)【発明者】
【氏名】リー ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】チェン フランシーヌ ジーフェン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン レスリー エス.
(72)【発明者】
【氏名】シャー カルパナ
(72)【発明者】
【氏名】ボンビニ エツィオ
【審査官】 竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/162067(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/162068(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/018687(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K 16/00−19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
gpA33のエピトープ及びCD3のエピトープに特異的に結合できる、二重特異性1価ダイアボディであって、前記二重特異性1価ダイアボディは、互いに共有結合した第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖を含み、
A.第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端の方向に、
i.ドメイン1であって、CD3に結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(VLCD3)(配列番号5)を含むサブドメイン(1A)、及びgpA33に結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン(VHgpA33)(配列番号27)を含むサブドメイン(1B)を含み、前記サブドメイン(1A)及び(1B)はペプチドリンカー(配列番号1)によって互いから分離されている、ドメイン1と、
ii.ドメイン2であって、前記ドメイン2はKコイルドメイン(配列番号4)又はEコイルドメイン(配列番号3)であり、また前記ドメイン2はペプチドリンカー(配列番号2)によって前記ドメイン1から分離されている、ドメイン2と
を含み、
B.第2のポリペプチド鎖は、N末端からC末端の方向に、
i.ドメイン1であって、gpA33に結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(VLgpA33)(配列番号26)を含むサブドメイン(1A)、及びCD3に結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン(VHCD3)(配列番号25)を含むサブドメイン(1B)を含み、前記サブドメイン(1A)及び(1B)はペプチドリンカー(配列番号1)によって互いから分離されている、ドメイン1と、
ii.ドメイン2であって、前記ドメイン2はEコイルドメイン(配列番号3)又はKコイルドメイン(配列番号4)であり、また前記ドメイン2はペプチドリンカー(配列番号2)によって前記ドメイン1から分離されており、かつ前記第1のポリペプチド鎖の前記ドメイン2及び前記第2のポリペプチド鎖の前記ドメイン2は、両方がEコイルドメインではなく、又は両方がKコイルドメインではない、ドメイン2と
を含み、
(a)前記第1のポリペプチド鎖の前記VLドメイン及び前記第2のポリペプチド鎖の前記VHドメインは、CD3のエピトープに特異的に結合できる抗原結合ドメインを形成し、
(b)前記第2のポリペプチド鎖の前記VLドメイン及び前記第1のポリペプチド鎖の前記VHドメインは、gpA33のエピトープに特異的に結合できる抗原結合ドメインを形成する、ダイアボディ。
【請求項2】
前記第1のポリペプチド鎖は、アルブミン結合ドメイン(配列番号34)を含み、前記アルブミン結合ドメインが、前記ドメイン2のC末端に配置され、リンカー3(配列番号32)によって前記ドメイン2から分離されている、請求項1に記載のダイアボディ。
【請求項3】
gpA33のエピトープ及びCD3のエピトープに特異的に結合でき、IgGのFcドメインを保有する、二重特異性1価Fcダイアボディに関し、前記二重特異性1価Fcダイアボディは、第1のポリペプチド鎖、第2のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖を含み、前記第1及び第2のポリペプチド鎖は互いに共有結合され、前記第1及び第3のポリペプチド鎖は互いに共有結合され、
A.第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端の方向に、
i.ドメイン1であって、gpA33に結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(VLgpA33)(配列番号26)を含むサブドメイン(1A)、及びCD3に結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン(VHCD3)(配列番号25)を含むサブドメイン(1B)を含み、前記サブドメイン(1A)及び(1B)はペプチドリンカー(配列番号1)によって互いから分離されている、ドメイン1と、
ii.ドメイン2であって、前記ドメイン2はEコイルドメイン(配列番号3)又はKコイルドメイン(配列番号4)であり、また前記ドメイン2はペプチドリンカー(配列番号2)によって前記ドメイン1から分離されている、ドメイン2と、
iii.ドメイン3であって、システイン含有ペプチド(ペプチド1)(配列番号39)を含むサブドメイン(3A)、及びIgG免疫グロブリンFcドメインのCH2ドメイン及びCH3ドメインを有する、IgGのFcドメインのポリペプチド部分を含むサブドメイン(3B)を含み、前記ドメイン3及び前記ドメイン2はGGGという配列を有するスペーサペプチド(リンカー5)によって互いから分離されている、ドメイン3と
を含み、
B.第2のポリペプチド鎖は、N末端からC末端の方向に、
i.ドメイン1であって、CD3に結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(VLCD3)(配列番号5)を含むサブドメイン(1A)、及びgpA33に結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン(VHgpA33)(配列番号27)を含むサブドメイン(1B)を含み、前記サブドメイン(1A)及び(1B)はペプチドリンカー(配列番号1)によって互いから分離されている、ドメイン1と、
ii.ドメイン2であって、前記ドメイン2はKコイルドメイン(配列番号4)又はEコイルドメイン(配列番号3)であり、また前記ドメイン2はペプチドリンカー(配列番号2)によって前記ドメイン1から分離されており、かつ前記第1のポリペプチド鎖の前記ドメイン2及び前記第2のポリペプチド鎖の前記ドメイン2は、両方がEコイルドメインではなく、又は両方がKコイルドメインではない、ドメイン2と
を含み、
C.第3のポリペプチド鎖は、N末端からC末端方向へ向かって、ドメイン3を含み、ドメイン3は、
(1)システイン含有ペプチド(ペプチド1)(配列番号39)を含むサブドメイン(3A)、及び
(2)IgG免疫グロブリンFcドメインのCH2ドメイン及びCH3ドメインを有する、IgGのFcドメインのポリペプチド部分を含むサブドメイン(3B)を含み、
かつ、
(a)前記第1及び第3のポリペプチド鎖のIgGのFcドメインの前記ポリペプチド部分は、IgGのFcドメインを形成し、
(b)前記第1のポリペプチド鎖の前記VLドメイン及び前記第2のポリペプチド鎖の前記VHドメインは、gpA33のエピトープに特異的に結合できる抗原結合ドメインを形成し、
(c)前記第2のポリペプチド鎖の前記VLドメイン及び前記第1のポリペプチド鎖の前記VHドメインは、CD3のエピトープに特異的に結合できる抗原結合ドメインを形成する、ダイアボディ。
【請求項4】
gpA33のエピトープ及びCD3のエピトープに特異的に結合でき、IgGのFcドメインを保有する、二重特異性1価Fcダイアボディに関し、前記二重特異性1価Fcダイアボディは、第1のポリペプチド鎖、第2のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖を含み、前記第1及び第2のポリペプチド鎖は互いに共有結合され、前記第1及び第3のポリペプチド鎖は互いに共有結合され、
A.第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端の方向に、
i.ドメイン3であって、システイン含有ペプチド(ペプチド1)(配列番号39)を含むサブドメイン(3A)、及びIgG免疫グロブリンFcドメインのCH2ドメイン及びCH3ドメインを有する、IgGのFcドメインのポリペプチド部分を含むサブドメイン(3B)を含む、ドメイン3と
ii.ドメイン1であって、gpA33に結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(VLgpA33)(配列番号26)を含むサブドメイン(1A)、及びCD3に結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン(VHCD3)(配列番号25)を含むサブドメイン(1B)を含み、前記サブドメイン(1A)及び(1B)はペプチドリンカー(配列番号1)によって互いから分離されており、前記ドメイン1及び前記ドメイン3はスペーサペプチド(リンカー4)(配列番号38)によって互いから分離されている、ドメイン1と、
iii.ドメイン2であって、前記ドメイン2はEコイルドメイン(配列番号3)又はKコイルドメイン(配列番号4)であり、また前記ドメイン2はペプチドリンカー(配列番号2)によって前記ドメイン1から分離されている、ドメイン2と、
を含み、
B.第2のポリペプチド鎖は、N末端からC末端の方向に、
i.ドメイン1であって、CD3に結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(VLCD3)(配列番号5)を含むサブドメイン(1A)、及びgpA33に結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン(VHgpA33)(配列番号27)を含むサブドメイン(1B)を含み、前記サブドメイン(1A)及び(1B)はペプチドリンカー(配列番号1)によって互いから分離されている、ドメイン1と、
ii.ドメイン2であって、前記ドメイン2はKコイルドメイン(配列番号4)又はEコイルドメイン(配列番号3)であり、また前記ドメイン2はペプチドリンカー(配列番号2)によって前記ドメイン1から分離されており、かつ前記第1のポリペプチド鎖の前記ドメイン2及び前記第2のポリペプチド鎖の前記ドメイン2は、両方がEコイルドメインではなく、又は両方がKコイルドメインではない、ドメイン2と
を含み、
C.第3のポリペプチド鎖は、N末端からC末端方向へ向かって、ドメイン3を含み、ドメイン3は、
(1)システイン含有ペプチド(ペプチド1)(配列番号39)を含むサブドメイン(3A)、及び
(2)IgG免疫グロブリンFcドメインのCH2ドメイン及びCH3ドメインを有する、IgGのFcドメインのポリペプチド部分を含むサブドメイン(3B)を含み、
かつ、
(a)前記第1及び第3のポリペプチド鎖のIgGのFcドメインの前記ポリペプチド部分は、IgGのFcドメインを形成し、
(b)前記第1のポリペプチド鎖の前記VLドメイン及び前記第2のポリペプチド鎖の前記VHドメインは、gpA33のエピトープに特異的に結合できる抗原結合ドメインを形成し、
(c)前記第2のポリペプチド鎖の前記VLドメイン及び前記第1のポリペプチド鎖の前記VHドメインは、CD3のエピトープに特異的に結合できる抗原結合ドメインを形成する、ダイアボディ。
【請求項5】
前記第1のポリペプチド鎖の前記サブドメイン(3B)が、前記第3のポリペプチド鎖の前記サブドメイン(3B)の配列とは異なる配列を含む、請求項3又は4に記載のダイアボディ。
【請求項6】
前記第1のポリペプチド鎖の前記サブドメイン(3B)が配列番号40のアミノ酸配列を有し、前記第3のポリペプチド鎖の前記サブドメイン(3B)が配列番号41のアミノ酸配列を有する、請求項5に記載のダイアボディ。
【請求項7】
前記第1のポリペプチド鎖の前記サブドメイン(3B)が配列番号41のアミノ酸配列を有し、前記第3のポリペプチド鎖の前記サブドメイン(3B)が配列番号40のアミノ酸配列を有する、請求項5に記載のダイアボディ。
【請求項8】
前記第1のポリペプチド鎖の前記ドメイン3及び/又は前記第3のポリペプチド鎖の前記ドメイン3が、Fcγ受容体に対する結合の変化を示す改変体CH2−CH3の配列を含む、請求項3又は4に記載のダイアボディ。
【請求項9】
前記第1のポリペプチド鎖の前記ドメイン2がEコイルドメイン(配列番号3)を含み、前記第2のポリペプチド鎖の前記ドメイン2がKコイルドメイン(配列番号4)を含む、請求項1乃至8の何れか1項に記載のダイアボディ。
【請求項10】
前記第1のポリペプチド鎖の前記ドメイン2がKコイルドメイン(配列番号4)を含み、前記第2のポリペプチド鎖の前記ドメイン2がEコイルドメイン(配列番号3)を含む、請求項1乃至8の何れか1項に記載のダイアボディ。
【請求項11】
CD3のエピトープ及びgpA33のエピトープに特異的に結合できる二重特異性1価ダイアボディに関し、前記二重特異性1価ダイアボディは、
(1)配列番号28のアミノ酸配列を有する第1のポリペプチド鎖、及び配列番号30のアミノ酸配列を有する第2のポリペプチド鎖、又は
(2)配列番号35のアミノ酸配列を有する第1のポリペプチド鎖、及び配列番号30のアミノ酸配列を有する第2のポリペプチド鎖
を含み、前記第1及び第2のポリペプチド鎖は、ジスルフィド結合によって互いに共有結合する、ダイアボディ。
【請求項12】
CD3のエピトープ及びgpA33のエピトープに特異的に結合できる二重特異性1価Fcダイアボディに関し、前記二重特異性1価Fcダイアボディは、
(1)配列番号42のアミノ酸配列を有する第1のポリペプチド鎖、配列番号44のアミノ酸配列を有する第2のポリペプチド鎖、及び配列番号46のアミノ酸配列を有する第3のポリペプチド鎖、又は
(2)配列番号48のアミノ酸配列を有する第1のポリペプチド鎖、配列番号28のアミノ酸配列を有する第2のポリペプチド鎖、及び配列番号46のアミノ酸配列を有する第3のポリペプチド鎖
を含み、前記第1及び第2のポリペプチド鎖は、第1のジスルフィド結合によって互いに共有結合し、前記第1及び第3のポリペプチド鎖は、第2のジスルフィド結合によって互いに共有結合する、ダイアボディ。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか1項に記載のダイアボディ及び生理学的に許容可能なキャリアを含む、医薬組成物。
【請求項14】
gpA33の発現を特徴とする癌を治療するための薬剤の製造における、請求項1乃至12の何れか1項に記載のダイアボディ又は請求項13に記載の医薬組成物の使用。
【請求項15】
前記癌は、大腸癌、結腸癌、胃癌又は膵臓癌である、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国特許出願第61/869,528号(2013年8月23日出願;係属中)、米国特許出願第61/907,691号(2013年11月22日出願;係属中)、並びに欧州特許出願第13198859号(2013年12月20日出願)に対する優先権を主張するものであり、上述の特許出願はそれぞれ、参照によりその全体が本出願に援用される。
【0002】
[配列表の参照]
本出願は、連邦規則法典第37巻第1.821節以下による1つ又は複数の配列表を含み、これらの配列表は、書類及びコンピュータ可読媒体の両方において開示されており、上記書類及びコンピュータ可読型開示は、参照によりその全体が本出願に援用される。
【0003】
本発明は、2本のポリペプチド鎖を含み、gpA33のエピトープに特異的な1つの結合部位とCD3のエピトープに特異的な1つの結合部位を保有する二重特異性1価ダイアボディ(すなわち、「gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ」)を対象とする。また、本発明は、免疫グロブリンFcドメインを含む二重特異性の一価のダイアボディ(「二重特異性の一価のFcダイアボディ」)であって、3つのポリペプチド鎖から構成され、かつgpA33のエピトープに特異的な1つの結合部位とCD3のエピトープに特異的な1つの結合部位を保有するダイアボディ(すなわち、「gpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディ」)も対象とする。本発明の二重特異性1価ダイアボディ及び二重特異性1価FcダイアボディはgpA33及びCD3に同時に結合できる。本発明は、上記二重特異性一価ダイアボディまたは上記二重特異性一価Fcダイアボディを含有する医薬組成物を対象とする。本発明はさらに、癌及び他の疾患及び状態の治療における上記二重特異性抗体を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
I.gpA33
結腸直腸癌は、西欧諸国の最も一般的な悪性腫瘍であり、癌による死亡の主な原因である(非特許文献1)。大腸癌に対する潜在的に有用なターゲットは、43kDの膜貫通糖タンパク質A33である(gpA33)(非特許文献2、3)。gpA33は、最初のヒト膵臓癌由来細胞株ASPC1に対するモノクローナルマウス抗体の培養を通じて発見された。ある抗体(MAb A33)は、43kDaの表面細胞タンパク質と反応することが発見されたため、「gpA33」と命名された(非特許文献4)。
【0005】
gpA33は、接合部接着分子ファミリーの膜貫通タンパク質である(非特許文献5〜7)。A33抗原の機能的意義はまだ解明されていないが、大腸炎の動物モデルにおいて結腸粘膜修復を媒介することが示されており、全大腸癌の>95%で均一に発現される。A33発現は、病期及び組織学的分化度の両方にわたって不変であり、この抗原は、血流に検出可能に分泌または流れていない(非特許文献7、8)。逆に、非胃腸A33抗原発現のわずか数例が同定されている(非特許文献9)。
【0006】
A33抗原の非常に限定された発現を踏まえ、研究者らは、抗体を用いたA33関連癌の治療の可能性を探求してきた(非特許文献8、10〜19)。同様に、このような抗体のフラグメントも、それらの潜在的な治療的役割のために評価されてきた(非特許文献20)。
【0007】
II.CD3
CD3は、4つの別個の鎖で構成されたT細胞補助受容体である(非特許文献21、22)。
【0008】
哺乳類において、このCD3複合体はCD3γ鎖、CD3δ鎖及び2つのCD3ε鎖を含有する。これらの鎖は、T細胞受容体(TCR)として公知である分子と連動して、Tリンパ球の活性化信号を生成する。CD3が存在しない場合、TCRは適切に集合せず、劣化する(非特許文献23)。CD3は、全ての成熟T細胞の膜に結合し、実質的に他の細胞タイプには結合しないことが知られている(非特許文献24、25、26)。
【0009】
III.二重特異性ダイアボディ
完全な未修飾抗体(例えばIgG)の、抗原のエピトープに結合する能力は、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖上の可変ドメイン(即ちそれぞれVL及びVHドメイン)の存在に左右される。ダイアボディの設計は、単鎖Fv構造(scFv)に基づく(例えば非特許文献27、特許文献1、2、非特許文献28、29、特許文献3、非特許文献30〜34参照)。
【0010】
抗体軽鎖と抗体重鎖との相互作用、特にそのVLドメインとVHドメインとの相互作用は、抗体のエピトープ結合部位のうちの1つを形成する。対照的に、scFv構造は、単一ポリペプチド鎖が含有する抗体のVL及びVHドメインを備え、これらのドメインは、2つのドメインの機能性エピトープ結合部位への自己集合を可能とするのに十分な長さのフレキシブルリンカーによって隔てられる。VL及びVHドメインの自己集合が、不十分な長さ(約12個未満のアミノ酸残基)のリンカーによって不可能となる場合、scFv構造のうちの2つが互いに相互作用して、2価分子を形成し、この2価分子において一方の鎖のVLが他方の鎖のVHと関連する(非特許文献35において概説されている)。
【0011】
天然の抗体は、1つのエピトープ種のみと結合できる(即ち単一特異性)が、これらはその種の複数の複製に結合できる(即ち2価性又は多価性を呈する)。本技術分野は、2つ以上の異なるエピトープ種と結合できる(即ち2価性又は多価性に加えて二重特異性又は多重特異性を呈することができる)という点でこのような天然抗体とは異なるダイアボディを産生できる可能性に注目している(例えば非特許文献27、特許文献1、2、非特許文献28、29、特許文献3、非特許文献36、非特許文献31〜34参照)。
【0012】
非単一特異性ダイアボディの提供は、異なるエピトープを発現する複数の細胞を共連結(co‐ligate)して共存させることができる能力という有意な利点を提供する。従って二価のダイアボディは、療法及び免疫診断を含む広範な用途を有する。二価性は、様々な用途におけるダイアボディの設計及び加工の大幅な柔軟性を可能とし、これにより、多量体抗原に対するアビディティーの上昇、異なる複数の抗原の架橋、及び両標的抗原の存在に基づく特定の細胞タイプに対する指向性標的化を提供する。当該技術分野において公知のダイアボディ分子は、(〜50kDa以下の小さいサイズのダイアボディに関して)その高い結合価、低い解離率及び循環からの迅速な排除により、腫瘍撮像の分野での特定の使用も示している(非特許文献37)。特に重要なのは、異なる細胞の共連結、例えば細胞毒性T細胞と腫瘍細胞との架橋である(非特許文献38、非特許文献39)。
【0013】
ダイアボディエピトープ結合ドメインは、CD3、CD16、CD32又はCD64等のいずれの免疫エフェクタ細胞の表面決定基も指向してよく、これらはTリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞又は他の単核細胞上に発現する。多くの研究において、エフェクタ細胞決定基(例えばFcγ受容体(FcγR))に対するダイアボディ結合は、エフェクタ細胞を活性化させることも発見された(非特許文献39、40、特許文献4〜8)。通常、エフェクタ細胞の活性化は、抗原に結合した抗体がFc‐FcγR相互作用によってエフェクタ細胞に結合することによってトリガされる。従って、これに関して、本発明のダイアボディ分子は、(例えば、当該技術分野において公知の、又は本出願において例示されるいずれのエフェクタ機能アッセイ(例えばADCCアッセイ)において分析されるように)Fcドメインを備えるかどうかとは独立して、Igのような機能性を呈し得る。腫瘍とエフェクタ細胞とを架橋することによって、ダイアボディはエフェクタ細胞を腫瘍細胞近傍にもたらすだけでなく、効果的な腫瘍の殺滅をもたらす(例えば非特許文献41参照)。
【0014】
しかしながら、上述の利点は顕著なコストにつながる。このような非単一特異性ダイアボディの形成は、2つ以上の別個の異なるポリペプチドの良好な集合を必要とする(即ち上記形成は、ダイアボディが、異なるポリペプチド鎖種のヘテロ二量体形成によって形成されることを必要とする)。この事実は、同一のポリペプチド鎖のホモ二量体形成によって形成される単一特異性ダイアボディとは対照的である。非単一特異性ダイアボディを形成するために少なくとも2つの異なるポリペプチドを提供しなければならないため、及びこのようなポリペプチドのホモ二量体形成は不活性分子をもたらす(非特許文献33)ため、このようなポリペプチドの産生は、同一種のポリペプチド間での共有結合を防止するような(即ちホモ二量体形成を防止するような)方法で達成しなければならない(非特許文献33)。従って本技術分野は、このようなポリペプチドの非共有結合的関連を教示している(例えば非特許文献30、32、33、29参照)。
【0015】
しかしながら、本技術分野は、非共有結合的に関連したポリペプチドで構成される二重特異性1価ダイアボディが不安定であり、非機能性モノマーへと容易に分解することを認識している(例えば非特許文献29参照)。
【0016】
この課題に直面して、本技術分野は、安定した共有結合ヘテロ二量体性非単一特異性ダイアボディの開発に成功した(例えば特許文献4〜8、非特許文献42〜44、特許文献9、10参照)。このようなアプローチは、1つ又は複数のシステイン残基を、採用したポリペプチド種それぞれの中へと加工するステップを伴う。例えば、このような構造のC末端へのシステイン残基の追加は、ポリペプチド鎖間のジスルフィド結合を可能とすることが分かっており、これは、2価分子の結合特性に干渉することなく、得られるヘテロ二量体を安定化させる。
【0017】
ダイアボディ及び他の免疫グロブリンにおいて、gpA33及びCD3のいずれかまたは両方に対する特異性を有すると称する報告がある(例えば特許文献11〜20参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0058400号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0220388号明細書
【特許文献3】国際公開第02/02781号
【特許文献4】国際公開第2006/113665号
【特許文献5】国際公開第2008/157379号
【特許文献6】国際公開第2010/080538号
【特許文献7】国際公開第2012/018687号
【特許文献8】国際公開第2012/162068号
【特許文献9】米国特許出願公開第2012/0294796号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2013/0149236号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2012/0014957号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2012/0034160号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2012/0087858号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2012/0189541号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2012/0195900号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第2012/0201746号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2012/0237442号明細書
【特許文献18】米国特許出願公開第2012/0263722号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開第2012/0258108号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2012/0276608号明細書
【非特許文献】
【0019】
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
このような成功にもかかわらず、安定した機能性ヘテロ二量体の非単一特異性ダイアボディは、採用したポリペプチド鎖のドメインに関する注意深い考察及びその配置によって、更に改善できる。従って本発明は、gpA33及びCD3と同時に結合できる、共有結合を介したヘテロ二量体ダイアボディ及びヘテロ二量体Fcダイアボディを形成するために特別に設計された特異的ポリペプチドの提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディに関する。特定の実施形態では、本発明のダイアボディは更に、免疫グロブリンFcドメイン(すなわち「Fcドメイン」)を有するダイアボディ(「gpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディ」)又はアルブミン結合ドメイン(ABD)を有するダイアボディ(「ABD含gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ」)であり、これによりインビボでの半減期が延長される。本発明のgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ及び本発明のgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディは、2つの異なるポリペプチド鎖を含み、これらはヘテロ二量体として互いに関連して、gpA33のエピトープに対して特異的な1つの結合部位、及びCD3のエピトープに対して特異的な1つの結合部位を形成する。従って、本発明のgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ及び本発明のgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディは、gpA33のエピトープの1つのみの複製及びCD3のエピトープの1つのみの複製に結合できるという点で1価であるが、単一のダイアボディがgpA33のエピトープ及びCD3のエピトープに対して同時に結合できるという点で二重特異性である。
【0022】
本発明のgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディは、2つのポリペプチド鎖(「第1」及び「第2」のポリペプチド鎖)からなり、例えば各ポリペプチド鎖内に位置するシステイン残基のジスルフィド結合によって互いに共有結合する。本発明のgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディは、3つのポリペプチド鎖(「第1」、「第2」及び「第3」のポリペプチド鎖)からなり、第1及び第2のポリペプチド鎖は互いに共有結合し、第1及び第3のポリペプチド鎖は互いに共有結合する。本発明の二重特異性1価ダイアボディ及び二重特異性1価Fcダイアボディは、gpA33及びCD3と同時に結合できる。本発明は、上記gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ及びgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディ、及び上記gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ又はgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディを含む医薬組成物に関する。本発明はさらに、癌及び他の疾患及び状態の治療における上記ダイアボディを使用する方法に関する。
【0023】
詳細には、本発明は、gpA33のエピトープ及びCD3のエピトープに特異的に結合できる、二重特異性1価ダイアボディを提供し、この二重特異性1価ダイアボディは、互いに共有結合した第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖を含み、
A.第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端の方向に、
i.ドメイン1であって、CD3に結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(VLCD3)(配列番号5)を含むサブドメイン(1A)、及びgpA33に結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン(VHgpA33)(配列番号27)を含むサブドメイン(1B)を含み、サブドメイン(1A)及び(1B)はペプチドリンカー(配列番号1)によって互いから分離されている、ドメイン1と、
ii.ドメイン2であって、ドメイン2はKコイルドメイン(配列番号4)又はEコイルドメイン(配列番号3)であり、またドメイン2はペプチドリンカー(配列番号2)によってドメイン1から分離されている、ドメイン2と
を含み、
B.第2のポリペプチド鎖は、N末端からC末端の方向に、
i.ドメイン1であって、gpA33に結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(VLgpA33)(配列番号26)を含むサブドメイン(1A)、及びCD3に結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン(VHCD3)(配列番号25)を含むサブドメイン(1B)を含み、サブドメイン(1A)及び(1B)はペプチドリンカー(配列番号1)によって互いから分離されている、ドメイン1と、
ii.ドメイン2であって、ドメイン2はEコイルドメイン(配列番号3)又はKコイルドメイン(配列番号4)であり、またドメイン2はペプチドリンカー(配列番号2)によってドメイン1から分離されており、かつ第1のポリペプチド鎖のドメイン2及び第2のポリペプチド鎖のドメイン2は、両方がEコイルドメインではなく、又は両方がKコイルドメインではない、ドメイン2と
を含み、
(a)第1のポリペプチド鎖のVLドメイン及び第2のポリペプチド鎖のVHドメインは、CD3のエピトープに特異的に結合できる抗原結合ドメインを形成し、
(b)第2のポリペプチド鎖のVLドメイン及び第1のポリペプチド鎖のVHドメインは、gpA33のエピトープに特異的に結合できる抗原結合ドメインを形成する。
【0024】
本発明は更に、上述の二重特異性1価ダイアボディの実施形態に関し、第1のポリペプチド鎖又は第2のポリペプチド鎖が更に、リンカー3(配列番号32)を介して、C末端においてドメイン2に、又はN末端においてドメイン1に連結した、アルブミン結合ドメイン(配列番号34)を含む。
【0025】
さらに、本発明は、gpA33のエピトープ及びCD3のエピトープに特異的に結合でき、IgGのFcドメインを保有する、二重特異性1価Fcダイアボディに関し、この二重特異性1価Fcダイアボディは、第1のポリペプチド鎖、第2のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖を含み、第1及び第2のポリペプチド鎖は互いに共有結合され、第1及び第3のポリペプチド鎖は互いに共有結合され、
A.第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端の方向に、
i.ドメイン1であって、gpA33に結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(VLgpA33)(配列番号26)を含むサブドメイン(1A)、及びCD3に結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン(VHCD3)(配列番号25)を含むサブドメイン(1B)を含み、サブドメイン(1A)及び(1B)はペプチドリンカー(配列番号1)によって互いから分離されている、ドメイン1と、
ii.ドメイン2であって、ドメイン2はEコイルドメイン(配列番号3)又はKコイルドメイン(配列番号4)であり、またドメイン2はペプチドリンカー(配列番号2)によってドメイン1から分離されている、ドメイン2と、
iii.ドメイン3であって、システイン含有ペプチド(ペプチド1)(配列番号39)を含むサブドメイン(3A)、及びIgG免疫グロブリンFcドメインのCH2ドメイン及びCH3ドメインを有する、IgGのFcドメインのポリペプチド部分を含むサブドメイン(3B)を含み、ドメイン3及びドメイン2はスペーサペプチド(リンカー5)(GGG)によって互いから分離されている、ドメイン3と
を含み、
B.第2のポリペプチド鎖は、N末端からC末端の方向に、
i.ドメイン1であって、CD3に結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(VLCD3)(配列番号5)を含むサブドメイン(1A)、及びgpA33に結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン(VHgpA33)(配列番号27)を含むサブドメイン(1B)を含み、サブドメイン(1A)及び(1B)はペプチドリンカー(配列番号1)によって互いから分離されている、ドメイン1と、
ii.ドメイン2であって、ドメイン2はKコイルドメイン(配列番号4)又はEコイルドメイン(配列番号3)であり、またドメイン2はペプチドリンカー(配列番号2)によってドメイン1から分離されており、かつ第1のポリペプチド鎖のドメイン2及び第2のポリペプチド鎖のドメイン2は、両方がEコイルドメインではなく、又は両方がKコイルドメインではない、ドメイン2と
を含み、
C.第3のポリペプチド鎖は、N末端からC末端方向へ向かって、ドメイン3を含み、ドメイン3は、
(1)システイン含有ペプチド(ペプチド1)(配列番号39)を含むサブドメイン(3A)、及び
(2)IgG免疫グロブリンFcドメインのCH2ドメイン及びCH3ドメインを有する、IgGのFcドメインのポリペプチド部分を含むサブドメイン(3B)を含み、
かつ、
(a)第1及び第3のポリペプチド鎖のIgGのFcドメインのポリペプチド部分は、IgGのFcドメインを形成し、
(b)第1のポリペプチド鎖のVLドメイン及び第2のポリペプチド鎖のVHドメインは、gpA33のエピトープに特異的に結合できる抗原結合ドメインを形成し、
(c)第2のポリペプチド鎖のVLドメイン及び第1のポリペプチド鎖のVHドメインは、CD3のエピトープに特異的に結合できる抗原結合ドメインを形成する。
【0026】
さらに、本発明は、gpA33のエピトープ及びCD3のエピトープに特異的に結合でき、IgGのFcドメインを保有する、二重特異性1価Fcダイアボディに関し、この二重特異性1価Fcダイアボディは、第1のポリペプチド鎖、第2のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖を含み、第1及び第2のポリペプチド鎖は互いに共有結合され、第1及び第3のポリペプチド鎖は互いに共有結合され、
A.第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端の方向に、
i.ドメイン3であって、システイン含有ペプチド(ペプチド1)(配列番号39)を含むサブドメイン(3A)、及びIgG免疫グロブリンFcドメインのCH2ドメイン及びCH3ドメインを有する、IgGのFcドメインのポリペプチド部分を含むサブドメイン(3B)を含む、ドメイン3と
ii.ドメイン1であって、gpA33に結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(VLgpA33)(配列番号26)を含むサブドメイン(1A)、及びCD3に結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン(VHCD3)(配列番号25)を含むサブドメイン(1B)を含み、サブドメイン(1A)及び(1B)はペプチドリンカー(配列番号1)によって互いから分離されており、ドメイン1及びドメイン3はスペーサペプチド(リンカー4)(配列番号38)によって互いから分離されている、ドメイン1と、
iii.ドメイン2であって、ドメイン2はEコイルドメイン(配列番号3)又はKコイルドメイン(配列番号4)であり、またドメイン2はペプチドリンカー(配列番号2)によってドメイン1から分離されている、ドメイン2と、
を含み、
B.第2のポリペプチド鎖は、N末端からC末端の方向に、
i.ドメイン1であって、CD3に結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(VLCD3)(配列番号5)を含むサブドメイン(1A)、及びgpA33に結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン(VHgpA33)(配列番号27)を含むサブドメイン(1B)を含み、サブドメイン(1A)及び(1B)はペプチドリンカー(配列番号1)によって互いから分離されている、ドメイン1と、
ii.ドメイン2であって、ドメイン2はKコイルドメイン(配列番号4)又はEコイルドメイン(配列番号3)であり、またドメイン2はペプチドリンカー(配列番号2)によってドメイン1から分離されており、かつ第1のポリペプチド鎖のドメイン2及び第2のポリペプチド鎖のドメイン2は、両方がEコイルドメインではなく、又は両方がKコイルドメインではない、ドメイン2と
を含み、
C.第3のポリペプチド鎖は、N末端からC末端方向へ向かって、ドメイン3を含み、ドメイン3は、
(1)システイン含有ペプチド(ペプチド1)(配列番号39)を含むサブドメイン(3A)、及び
(2)IgG免疫グロブリンFcドメインのCH2ドメイン及びCH3ドメインを有する、IgGのFcドメインのポリペプチド部分を含むサブドメイン(3B)を含み、
かつ、
(a)第1及び第3のポリペプチド鎖のIgGのFcドメインのポリペプチド部分は、IgGのFcドメインを形成し、
(b)第1のポリペプチド鎖のVLドメイン及び第2のポリペプチド鎖のVHドメインは、gpA33のエピトープに特異的に結合できる抗原結合ドメインを形成し、
(c)第2のポリペプチド鎖のVLドメイン及び第1のポリペプチド鎖のVHドメインは、CD3のエピトープに特異的に結合できる抗原結合ドメインを形成する。
【0027】
本発明は更に、上述した二重特異性1価Fcダイアボディのいずれかの実施形態に関し、第1のポリペプチド鎖のサブドメイン(3B)が、第3のポリペプチド鎖のサブドメイン(3B)の配列とは異なる配列を含む。
【0028】
本発明は更に、上述した二重特異性1価Fcダイアボディの実施形態に関し、第1のポリペプチド鎖のサブドメイン(3B)が配列番号40のアミノ酸配列を有し、第3のポリペプチド鎖のサブドメイン(3B)が配列番号41のアミノ酸配列を有する。
【0029】
本発明は更に、上述した二重特異性1価Fcダイアボディの実施形態に関し、第1のポリペプチド鎖のサブドメイン(3B)が配列番号41のアミノ酸配列を有し、第3のポリペプチド鎖のサブドメイン(3B)が配列番号40のアミノ酸配列を有する。
【0030】
本発明は更に、上述した二重特異性1価Fcダイアボディの実施形態に関し、第1のポリペプチド鎖のドメイン3及び/又は第3のポリペプチド鎖のドメイン3が、Fcγ受容体に対する結合の変化を示す改変体CH2−CH3の配列を含む。
【0031】
本発明は更に、上述した二重特異性1価ダイアボディのいずれか又は上述した二重特異性1価Fcダイアボディのいずれかの実施形態に関し、第1のポリペプチド鎖のドメイン2がEコイルドメイン(配列番号3)を含み、第2のポリペプチド鎖のドメイン2がKコイルドメイン(配列番号4)を含む。
【0032】
本発明は更に、上述した二重特異性1価ダイアボディのいずれか又は上述した二重特異性1価Fcダイアボディのいずれかの実施形態に関し、第1のポリペプチド鎖のドメイン2がKコイルドメイン(配列番号4)を含み、第2のポリペプチド鎖のドメイン2がEコイルドメイン(配列番号3)を含む。
【0033】
本発明は更に、CD3のエピトープ及びgpA33のエピトープに特異的に結合できる二重特異性1価ダイアボディに関し、この二重特異性1価ダイアボディは、
(1)配列番号28のアミノ酸配列を有する第1のポリペプチド鎖、及び配列番号30のアミノ酸配列を有する第2のポリペプチド鎖、又は
(2)配列番号35のアミノ酸配列を有する第1のポリペプチド鎖、及び配列番号30のアミノ酸配列を有する第2のポリペプチド鎖
を含み、第1及び第2のポリペプチド鎖は、ジスルフィド結合によって互いに共有結合する。
【0034】
本発明は更に、CD3のエピトープ及びgpA33のエピトープに特異的に結合できる二重特異性1価Fcダイアボディに関し、この二重特異性1価Fcダイアボディは、
(1)配列番号42のアミノ酸配列を有する第1のポリペプチド鎖、配列番号44のアミノ酸配列を有する第2のポリペプチド鎖、及び配列番号46のアミノ酸配列を有する第2のポリペプチド鎖、又は
(2)配列番号48のアミノ酸配列を有する第1のポリペプチド鎖、配列番号28のアミノ酸配列を有する第2のポリペプチド鎖、及び配列番号46のアミノ酸配列を有する第2のポリペプチド鎖
を含み、第1及び第2のポリペプチド鎖は、第1のジスルフィド結合によって互いに共有結合し、第1及び第3のポリペプチド鎖は、第2のジスルフィド結合によって互いに共有結合する。
【0035】
本発明は更に、上述した二重特異性1価ダイアボディのいずれか又は上述した二重特異性1価Fcダイアボディのいずれか、及び生理学的に許容可能なキャリアを含む、医薬組成物に関する。
【0036】
本発明は更に、gpA33の発現を特徴とする癌の治療における、上述の医薬組成物の使用に関し、特に、大腸癌、結腸癌、胃癌又は膵臓癌の治療における使用に関する。
【0037】
本発明は更に、上述した二重特異性1価ダイアボディのいずれか又は上述した二重特異性1価Fcダイアボディのいずれかのポリペプチド鎖を発現する細胞に関し、同様に、そのような発現したポリペプチドをエンコードするポリヌクレオチドに関する。
【0038】
本発明は更に、抗体又はポリペプチド部分又はそのフラグメントを発現する細胞に関し、抗体はgpA33と結合し、抗体又はポリペプチド部分又はそのフラグメントは、
(1)抗ヒトgpA33抗体の軽鎖のCDR1(配列番号14)、CDR2(配列番号15)及びCDR3(配列番号16)、
(2)抗ヒトgpA33抗体の重鎖のCDR1(配列番号18)、CDR2(配列番号19)及びCDR3(配列番号20)、又は
(3)(1)及び(2)の両方
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本発明の2鎖gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディの第1及び第2のポリペプチド鎖の構造を示す。
図2図2A及び2Bは、本発明の3鎖gpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディの第1、第2及び第3のポリペプチド鎖の各バージョンの構造を示す(バージョン1が図2A、バージョン2が図2B)。
図3図3は、本発明のダイアボディがCD3及びgpA33に同時に結合できることを示す。
図4図4は、本発明のダイアボディの癌を治療する能力を示す。大腸癌又は膵臓癌細胞をgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(DART−1)及びヒトPBMC(E:T=25:1)又は活性化したヒトT細胞(E:T=10:1)のいずれかの存在下でインキュベートし、細胞毒性を測定した(図4A(結腸CSCL大腸細胞)、図4B(Colo205大腸細胞)、及び図4C(ASPC−1膵臓癌細胞))。
図5図5A〜5Fは、癌細胞の存在下におけるCD3二重特異性1価ダイアボディ(DART−1)の存在によって発生したCD8T細胞の活性を示す。図5A〜C:CD8T細胞+colo205細胞(図5A)、CD8T細胞+ASPC−1細胞(図5B)、CD8T細胞単独(図5C)、図5D〜F:CD4T細胞+colo205細胞(図5D)、CD4T細胞+ASPC−1細胞(図5E)、CD4T細胞単独(図5F)。
図6図6A〜6Dは、gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(DART−1およびDART−2)が、SW948結腸直腸腺癌細胞(図6A)、colo205細胞(図6B)、Colo205−Luc細胞(図6C)について同等の細胞毒性を媒介したこと、及びgpA33陰性癌細胞株HCT116(図6D)について、いずれのダイアボディも細胞毒性を媒介しなかったことを実証する。
図7図7A〜Dは、gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(DART−2)、アルブミン結合ドメインを有するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(ABD含DART−2、「w/ABD」)及び免疫グロブリンFcドメインを有するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(Fc含DART−2、「w/Fc」)がヒト又はカニクイザルPBMCの存在下における癌細胞の細胞毒性を促進する能力を実証する。
図8図8は、gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(DART−1)のマウスのcolo205結腸癌モデルにおける腫瘍体積を減少するインビボ能力を実証する。
図9図9A〜Dは、Colo205細胞を埋入したNOD SCIDガンマ(NSG)マウスのビヒクルを受容した後2日目(図9A)、gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(DART−1)を受容した後2日目(図9B)、ビヒクルを受容した後12日目(図9C)、DART−1を受容した後12日目(図9B)の腫瘍画像データを示す。
図10図10は、gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(DART−1)のマウスのASPC−1膵臓癌モデルにおける腫瘍体積を減少するインビボ能力を実証する。。
図11図11は、免疫グロブリンFcドメインを有するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(DART−2w/Fcバージョン1)のインビボ結腸癌モデルにおける劇的な減少を媒介する能力を示す。
図12図12は、免疫グロブリンFcドメインを有するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(DART−2w/Fcバージョン1)の極微量の用量でインビボ結腸癌モデルにおける減少を媒介する能力を示す。
図13図13は、カニクイザルにおけるgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(DART−2)、及び免疫グロブリンFcドメインを有するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(DART−2w/Fcバージョン1)の薬物動態を示す。
図14図14A〜14Bは、固定化されたヒト及びカニクイザルCD3へのDART−2w/Fcバージョン1の結合のSPR分析を示す。黒破線は、DART−2w/Fcバージョン1濃度0、6.25、12.5、25、50又は100nMにおいて得られた、結合曲線の1:1ラングミュアモデルに対するグローバルフィットを表す。データは、3つの独立した実験の代表例である。
図15図15A〜15Bは、捕捉されたヒト及びカニクイザルgpA33へのDART−2w/Fcバージョン1の結合のSPR分析を示す。黒破線は、DART−2w/Fccバージョン1の濃度0、6.25、12.5、25、50又は100nMにおいて得られた、結合曲線の1:1ラングミュアモデルに対するグローバルフィットを表す。データは、3つの独立した実験の代表例である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、2つのポリペプチド鎖を含み、gpA33のエピトープに特異的な1つの結合部位及びCD3のエピトープに特異的な1つの結合部位を保有する二重特異性1価ダイアボディ(すなわち、「gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ」)に関する。また、本発明は、免疫グロブリンFcドメインを含む二重特異性1価ダイアボディ(「二重特異性1価Fcダイアボディ」)であって、3つのポリペプチド鎖からなり、gpA33のエピトープに特異的な1つの結合部位及びCD3のエピトープに特異的な1つの結合部位を保有する二重特異性1価ダイアボディ(すなわち、「gpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディ」)に関する。本発明の二重特異性1価ダイアボディ及び二重特異性1価FcダイアボディはgpA33及びCD3と同時に結合できる。本発明は、上記二重特異性一価ダイアボディまたは上記二重特異性一価Fcダイアボディを含有する医薬組成物を対象とする。本発明はさらに、癌及び他の疾患及び状態の治療における上記二重特異性抗体を使用する方法に関する。
【0041】
本発明のgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディは、2つのポリペプチド鎖からなり、これらは互いに関連して、gpA33のエピトープに対して特異的な1つの結合部位、及びCD3のエピトープに対して特異的な1つの結合部位を形成する。このダイアボディの個々のポリペプチド鎖は、例えば各ポリペプチド鎖内に位置するシステイン残基のジスルフィド結合によって互いに共有結合する。各ポリペプチド鎖は、軽鎖可変ドメインの抗原結合ドメイン、重鎖可変ドメインの抗原結合ドメイン、及びヘテロ二量体化ドメインを含有する。介在リンカーペプチド(リンカー1)は、軽鎖可変ドメインの抗原結合ドメインを、重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインから分離する。第1のポリペプチド鎖の軽鎖可変ドメインの抗原結合ドメインは、第2のポリペプチド鎖の重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインと相互作用して、第1の抗原(即ちgpA33又はCD3)に対して特異的な第1の機能性抗原結合部位を形成する。同様に、第2のポリペプチド鎖の軽鎖可変ドメインの抗原結合ドメインは、第1のポリペプチド鎖の重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインと相互作用して、第2の抗原(即ち第1の抗原の種別に応じてgpA33又はCD3)に対して特異的な第2の機能性抗原結合部位を形成する。このように、第1及び第2のポリペプチド鎖の軽鎖可変ドメインの抗原結合ドメイン及び重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインの選択は、2つのポリペプチド鎖が全体として、gpA33及びCD3に結合できる軽鎖及び重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインを含むように、整合される。
【0042】
本発明のgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディは、第1のポリペプチド鎖、第2のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖からなる。第1及び第2のポリペプチド鎖は互いに関連して、gpA33のエピトープに対して特異的な1つの結合部位、及びCD3のエピトープに対して特異的な1つの結合部位を形成する。第1のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖は互いに関連して、免疫グロブリンFcドメインを形成する。二重特異性1価Fcダイアボディの第1及び第2のポリペプチド鎖は、例えば各ポリペプチド鎖内に位置するシステイン残基のジスルフィド結合によって互いに共有結合する。第1及び第3のポリペプチド鎖は、例えば各ポリペプチド鎖内に位置するシステイン残基のジスルフィド結合によって互いに共有結合する。第1及び第2のポリペプチド鎖はそれぞれ、軽鎖可変ドメインの抗原結合ドメイン、重鎖可変ドメインの抗原結合ドメイン、及びヘテロ二量体化ドメインを含有する。介在リンカーペプチド(リンカー1)は、軽鎖可変ドメインの抗原結合ドメインを、重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインから分離する。第1のポリペプチド鎖の軽鎖可変ドメインの抗原結合ドメインは、第2のポリペプチド鎖の重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインと相互作用して、第1の抗原(即ちgpA33又はCD3)に対して特異的な第1の機能性抗原結合部位を形成する。同様に、第2のポリペプチド鎖の軽鎖可変ドメインの抗原結合ドメインは、第1のポリペプチド鎖の重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインと相互作用して、第2の抗原(即ち第1の抗原の種別に応じてCD3又はgpA33)に対して特異的な第2の機能性抗原結合部位を形成する。このように、第1及び第2のポリペプチド鎖の軽鎖可変ドメインの抗原結合ドメイン及び重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインの選択は、2つのポリペプチド鎖が全体として、gpA33及びCD3に結合できる軽鎖及び重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインを含むように、整合される。第1及び第3のポリペプチド鎖はそれぞれ、システイン含有ペプチド(ペプチド1)配列番号39、及び完全な免疫グロブリンFcドメインのCH2ドメインの一部若しくは全体及び/又はCH3ドメインの一部若しくは全体、並びにシステイン含有ペプチドを含有する。CH2ドメインの一部若しくは全体及び/又はCH3ドメインの一部若しくは全体は、関連して、本発明の二重特異性1価Fcダイアボディの免疫グロブリンFcドメインを形成する。本発明の二重特異性1価Fcダイアボディの第1及び第3のポリペプチド鎖は、例えばポリペプチド鎖のシステイン含有ペプチド内に位置するシステイン残基のジスルフィド結合によって互いに共有結合する。
【0043】
二重特異性1価ダイアボディ又は二重特異性1価Fcダイアボディの第1及び第2のポリペプチド鎖のヘテロ二量体の形成は、ヘテロ二量体化ドメインによって開始させることができる。このようなドメインは、一方のポリペプチド鎖上にGVEPKSC(配列番号54)(又はVEPKSC;配列番号55)、及び他方のポリペプチド鎖上にGFNRGEC(配列番号56)(又はFNRGEC;配列番号57)を含む(米国特許第2007/0004909号)。あるいはこのようなドメインは、反対の電荷のコイルを含有するように加工できる。ポリペプチド鎖のうちの一方のヘテロ二量体化ドメインは、少なくとも6個、少なくとも7個又は少なくとも8個の正荷電アミノ酸の配列を含み、他方のポリペプチド鎖のヘテロ二量体化ドメインは、少なくとも6個、少なくとも7個又は少なくとも8個の負荷電アミノ酸の配列を含む。例えば第1又は第2のヘテロ二量体化ドメインは好ましくは、8個の正荷電アミノ酸の配列を含んでもよく、他方のヘテロ二量体化ドメインは好ましくは、8個の負荷電アミノ酸の配列を含んでもよい。正荷電アミノ酸は、リジン、アルギニン、ヒスチジン等であってよく、及び/又は負荷電アミノ酸は、グルタミン酸、アスパラギン酸等であってよい。正荷電アミノ酸は好ましくはリジンであり、及び/又は負荷電アミノ酸は好ましくはグルタミン酸である。
【0044】
本発明の二重特異性1価ダイアボディ及び二重特異性1価Fcダイアボディは、上述のような第1及び第2のポリペプチド鎖が、その長さに沿ってシステイン残基を介して互いに共有結合するように、加工される。このようなシステイン残基は、ポリペプチドのVL及びVHドメインを分離する介在リンカーに導入してよい。あるいは更に好ましくは、第2のペプチド(リンカー2)を各ポリペプチド鎖に、例えばポリペプチド鎖のアミノ末端に、又はヘテロ二量体化ドメインと軽鎖可変ドメイン又は重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインとの間の位置に導入する。
【0045】
上述したとおり、gpA33は大腸細胞において発現される。gpA33に免疫特異的に結合できる抗体は、そのような細胞に結合できる。CD3はT細胞上に発現される。従って、gpA33及びCD3の両方に免疫特異的に結合できる抗体は、T細胞を大腸癌及び他のgpA33が発現する癌細胞(例えば、結腸癌細胞、膵臓癌細胞等)にターゲッティングさせることができ、それ故に、それらの癌について改善した療法を提供できる。
【0046】
I.好ましい本発明のgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ
A.gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ
本発明のgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディの一実施形態は、第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖からなり、そられの配列は、gpA33及びCD3の両方と同時に結合できる共有結合性複合体を形成するために互いに共有結合することが可能である。
【0047】
好ましいgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディの第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端の方向に、N末端、CD3又はgpA33のいずれかに結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(すなわち、VLCD3又はVLgpA33のいずれか)、第1の介在スペーサペプチド(リンカー1)、gpA33(当該第1のポリペプチド鎖がVLCD3を含む場合)又はCD3(当該第1のポリペプチド鎖がVLgpA33を含む場合)のいずれかに結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン、システイン含有第2の介在スペーサペプチド(リンカー2)、ヘテロ二量体促進性ドメイン及びC末端を含む(図1)。
【0048】
好ましいgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディの第2のポリペプチド鎖は、N末端からC末端の方向に、N末端、CD3又はgpA33のいずれかに結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(すなわち、ダイアボディの第1のポリペプチド鎖について選択されたVLドメインにより決まるVLgpA33又はVLCD3のいずれか)、介在スペーサペプチド(リンカー1)、CD3(当該第2のポリペプチド鎖がVLgpA33を含む場合)又はgpA33(当該第2のポリペプチド鎖がVLCD3を含む場合)のいずれかに結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン、システイン含有スペーサペプチド(リンカー2)、ヘテロ二量体促進性ドメイン及びC末端を含む(図1)。
【0049】
好ましいgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディの第1のポリペプチド鎖のVLドメインは、好ましいgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディの第2のポリペプチド鎖のVHドメインと相互作用して、第1の抗原に特異的である第1の機能的な抗原結合部位(すなわち、CD3又はgpA33のいずれか)を形成する。同様に、第2のポリペプチド鎖のVLドメインは、第1のポリペプチド鎖のVHドメインと相互作用して、第2の抗原に特異的である第2の機能的な抗原結合部位(すなわち、第1の抗原が特定されることにより決まるgpA33又はCD3のいずれか)を形成する。従って、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖のVLドメインおよびVHドメインの選択は、好ましいgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディの2つのポリペプチド鎖が共同でgpA33及びCD3に結合し得るVLドメインおよびVHドメインを含むように調整される(すなわち、それらは、VLCD3/VHCD3およびVLgpA33/VHgpA33を含む)。
【0050】
最も好ましくは、介在するリンカーペプチド(VLドメインおよびVHドメインを隔てるリンカー1)の長さは、ポリペプチド鎖のVLドメインおよびVHドメインが互いに結合することを実質的にまたは完全に妨げるように選択される。従って、第一のポリペプチド鎖のVLドメインおよびVHドメインは、お互いに対して実質的にまたは完全に結合できない。同様に第二のポリペプチド鎖のVLドメインおよびVHドメインは、お互いに対して実質的にまたは完全に結合できない。好ましい介在スペーサペプチド(リンカー1)はGGGSGGGGという配列(配列番号1)を有する。
【0051】
システイン含有第2の介在スペーサペプチド(リンカー2)は、1、2、3またはそれ以上のシステイン残基を含む。好ましいシステイン含有介在スペーサペプチド(リンカー2)は配列番号2:GGCGGGの配列を有する。
【0052】
互いに異なる第一のポリペプチド及び第二のポリペプチドのヘテロ二量体促進性ドメインは、お互いと会合するように設計され、それによって、第一のポリペプチド鎖および第二のポリペプチド鎖の会合を促進する。従って、好ましい実施形態では、これらのポリペプチド鎖のうちの1つは、残基がpH7では負の荷電を形成するヘテロ二量体促進性「Eコイル」ドメイン(配列番号3):
EVAALEKEVAALEKEVAALEKEVAALEK
を含むように設計され、2つのポリペプチド鎖のうちの他方は、残基がpH7では正の荷電を形成するヘテロ二量体促進性「Kコイル」ドメイン(配列番号4):
KVAALKEKVAALKEKVAALKEKVAALKE
を含むように設計される。このような荷電されたドメインの存在は、第一のポリペプチドと第二のポリペプチドとの間の会合を促進し、これによってヘテロ二量体化が助長される。第一および第二のポリペプチド鎖で使用されるコイルが異なっており、これによってこれらのポリペプチド鎖の間のヘテロ二量体化が助長される限りは、どちらのコイルがどちらの鎖に提供されるかは重要ではない。
【0053】
1.gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ「DART−1」
「DART−1」と称する、好ましいgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディの第1及び第2のポリペプチド鎖は、以下の配列を有するポリペプチドドメインを含む。
【0054】
CD3に結合する抗体のVLドメイン(VLCD3)(配列番号5):
QAVVTQEPSLTVSPGGTVTLTCRSSTGAVTTSNYANWVQQKPGQAPRGLIGGTNK
RAPWTPARFSGSLLGGKAALTITGAQAEDEADYYCALWYSNLWVFGGGTKLTVLG
【0055】
VLCD3の抗原結合ドメインは、RSSTGAVTTSNYANという配列(配列番号6)を有するCDR1、GTNKRAPという配列(配列番号7)を有するCDR2、及びALWYSNLWVという配列(配列番号8)を有するCDR3を含む。
【0056】
CD3に結合する抗体のVHドメイン(VHCD3)(配列番号9):
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFNTYAMNWVRQAPGKGLEWVARIRSKY
NNYATYYADSVKDRFTISRDDSKNSLYLQMNSLKTEDTAVYYCVRHGNFGNSYVS
WFAYWGQGTLVTVSS
【0057】
VHCD3の抗原結合ドメインは、TYAMNという配列(配列番号10)を有するCDR1、RIRSKYNNYATYYADSVKDという配列(配列番号11)を有するCDR2、及びHGNFGNSYVSWFAYという配列(配列番号12)を有するCDR3を含む。
【0058】
gpA33に結合するマウス抗体のVLドメイン(VLgpA33)(配列番号13):
QIVLTQSPAIMSASPGERVTMTCSARSSISFMYWYQQKPGSSPRLLIYDTSNLAS
GVPVRFSGSGSGTSYSLTISRMEAEDAATYYCQQWSSYPLTFGSGTKLELK
【0059】
VLgpA33の抗原結合ドメインは、SARSSISFMYという配列(配列番号14)を有するCDR1、DTSNLASという配列(配列番号15)を有するCDR2、及びQQWSSYPLTという配列(配列番号16)を有するCDR3を含む。
【0060】
gpA33に結合するマウス抗体のVHドメイン(VHgpA33)(配列番号17):
QVQLQQSGPELVKPGASVKISCKASGYTFSGSWMNWVKQRPGQGLEWIGRIYPGD
GETNYNGKFKDKATLTADKSSTTAYMELSSLTSVDSAVYFCARIYGNNVYFDVWG
AGTTVTVSS
【0061】
VHgpA33の抗原結合ドメインは、GSWMNという配列(配列番号18)を有するCDR1、RIYPGDGETNYNGKFKDという配列(配列番号19)を有するCDR2、及びIYGNNVYFDVという配列(配列番号20)を有するCDR3を含む。
【0062】
第1の介在スペーサペプチド(リンカー1)はGGGSGGGGという配列(配列番号1)を有する。システイン含有スペーサペプチド(リンカー2)はGGCGGGという配列(配列番号2)を有する。
【0063】
第1のポリペプチド鎖のヘテロ二量体促進性ドメインは「Eコイル」ドメイン(配列番号3)である。第2のポリペプチド鎖のヘテロ二量体促進性ドメインは「Kコイル」ドメイン(配列番号4)である。
【0064】
従って、DART−1の第1のポリペプチド鎖は次の配列(配列番号21)を有する。
QAVVTQEPSLTVSPGGTVTLTCRSSTGAVTTSNYANWVQQKPGQAPRGLIGGTNK
RAPWTPARFSGSLLGGKAALTITGAQAEDEADYYCALWYSNLWVFGGGTKLTVLG
GGGSGGGGQVQLQQSGPELVKPGASVKISCKASGYTFSGSWMNWVKQRPGQGLEW
IGRIYPGDGETNYNGKFKDKATLTADKSSTTAYMELSSLTSVDSAVYFCARIYGN
NVYFDVWGAGTTVTVSSGGCGGGEVAALEKEVAALEKEVAALEKEVAALEK
【0065】
上記の内容からわかるように、配列番号21の残基1〜110は、CD3に結合する抗体のVLドメイン(VLCD3)(配列番号5)であり、配列番号21の残基111〜118は、第1の介在スペーサペプチド(リンカー1)(配列番号1)であり、配列番号21の残基119〜237は、gpA33に結合するマウス抗体のVHドメイン(VHgpA33)(配列番号17)であり、配列番号21の残基238〜243は、システイン含有スペーサペプチド(リンカー2)(配列番号2)であり、及び配列番号21の残基244〜271は、ヘテロ二量体促進性「Eコイル」ドメイン(配列番号3)である。
【0066】
DART−1の第1のポリペプチド鎖をエンコードする好ましいポリヌクレオチドは次の配列(配列番号22)を有する。
caggctgtggtgactcaggagccttcactgaccgtgtccccaggcggaactgtga
ccctgacatgcagatccagcacaggcgcagtgaccacatctaactacgccaattg
ggtgcagcagaagccaggacaggcaccaaggggcctgatcgggggtacaaacaaa
agggctccctggacccctgcacggttttctggaagtctgctgggcggaaaggccg
ctctgactattaccggggcacaggccgaggacgaagccgattactattgtgctct
gtggtatagcaatctgtgggtgttcgggggtggcacaaaactgactgtgctggga
ggtggtggatccggcggaggtggacaggtccagctgcagcagtctggacctgagc
tggtgaagcctggggcctcagtgaagatttcctgcaaagcttcaggctacacatt
cagtggctcttggatgaactgggtgaagcagaggcctggacagggtcttgagtgg
attggacggatctaccctggagatggagaaactaactacaatgggaagtttaagg
acaaggccacactgactgcagacaaatcatccaccacagcctacatggagctcag
cagcctgacctctgtggactctgcggtctatttctgtgcaagaatctatggtaat
aacgtttacttcgatgtctggggcgcagggaccacggtcaccgtgtcttccggag
gatgtggcggtggagaagtggccgcactggagaaagaggttgctgctttggagaa
ggaggtcgctgcacttgaaaaggaggtcgcagccctggagaaa
【0067】
DART−1の第2のポリペプチド鎖は次の配列(配列番号23)を有する。
QIVLTQSPAIMSASPGERVTMTCSARSSISFMYWYQQKPGSSPRLLIYDTSNLAS
GVPVRFSGSGSGTSYSLTISRMEAEDAATYYCQQWSSYPLTFGSGTKLELKRGGG
SGGGGEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFNTYAMNWVRQAPGKGLEWVAR
IRSKYNNYATYYADSVKDRFTISRDDSKNSLYLQMNSLKTEDTAVYYCVRHGNFG
NSYVSWFAYWGQGTLVTVSSGGCGGGKVAALKEKVAALKEKVAALKEKVAALKE
【0068】
上記の内容からわかるように、配列番号23の残基1〜107は、gpA33に結合するマウス抗体のVLドメイン(VLgpA33)(配列番号13)であり、配列番号23の残基108〜115は、第1の介在スペーサペプチド(リンカー1)(配列番号1)であり、配列番号23の残基116〜240は、CD3に結合する抗体のVHドメイン(VHCD3)(配列番号9)であり、配列番号23の残基241〜246は、システイン含有スペーサペプチド(リンカー2)(配列番号2)であり、及び配列番号23の残基247〜274は、ヘテロ二量体促進性「Kコイル」ドメイン(配列番号4)である。
【0069】
DART−1の第2のポリペプチド鎖をエンコードする好ましいポリヌクレオチドは次の配列(配列番号22)を有する。
caaattgttctcacccagtctccagcaatcatgtctgcatctccaggggagaggg
tcaccatgacctgcagtgccaggtcaagtataagtttcatgtactggtaccagca
gaagccaggatcctcccccagactcctgatttatgacacatccaacctggcttct
ggagtccctgttcgcttcagtggcagtgggtctgggacctcttattctctcacaa
tcagccgaatggaggctgaagatgctgccacttattactgccagcagtggagtag
ttacccactcacgttcggttctgggaccaagctggagctgaaacggggtggagga
tccggcggaggcggagaggtgcagctggtggagtctgggggaggcttggtccagc
ctggagggtccctgagactctcctgtgcagcctctggattcaccttcaacacata
cgctatgaattgggtccgccaggctccagggaaggggctggagtgggttgcaagg
atcaggtccaagtacaacaattatgcaacctactatgccgactctgtgaaggata
gattcaccatctcaagagatgattcaaagaactcactgtatctgcaaatgaacag
cctgaaaaccgaggacacggccgtgtattactgtgtgagacacggtaacttcggc
aattcttacgtgtcttggtttgcttattggggacaggggacactggtgactgtgt
cttccggaggatgtggcggtggaaaagtggccgcactgaaggagaaagttgctgc
tttgaaagagaaggtcgccgcacttaaggaaaaggtcgcagccctgaaagag
【0070】
2.gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ「DART−2」
「DART−2」と称する、第2の好ましいgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディの第1及び第2のポリペプチド鎖は、以下の配列を有するポリペプドドメインを含む。
【0071】
CD3に結合する抗体のVLドメイン(VLCD3)(配列番号5):
QAVVTQEPSLTVSPGGTVTLTCRSSTGAVTTSNYANWVQQKPGQAPRGLIGGTNK
RAPWTPARFSGSLLGGKAALTITGAQAEDEADYYCALWYSNLWVFGGGTKLTVLG
【0072】
VLCD3の抗原結合ドメインは、RSSTGAVTTSNYANという配列(配列番号6)を有するCDR1、GTNKRAPという配列(配列番号7)を有するCDR2、及びALWYSNLWVという配列(配列番号8)を有するCDR3を含む。
【0073】
CD3に結合する抗体のVHドメイン(VHCD3)(配列番号25):
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYAMNWVRQAPGKGLEWVGRIRSKY
NNYATYYADSVKDRFTISRDDSKNSLYLQMNSLKTEDTAVYYCVRHGNFGNSYVS
WFAYWGQGTLVTVSS
【0074】
VHCD3の抗原結合ドメインは、TYAMNという配列(配列番号10)を有するCDR1、RIRSKYNNYATYYADSVKDという配列(配列番号11)を有するCDR2、及びHGNFGNSYVSWFAYという配列(配列番号12)を有するCDR3を含む。
【0075】
上述したヒトgpA33に結合するマウス抗体は、好ましいダイアボディDART−2のVLおよびVHドメインを提供するためにヒト化される。これらのヒト化ドメインは次のとおりである。
【0076】
gpA33に結合するヒト化抗体のVLドメイン(VLgpA33)(配列番号26):
DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITCSARSSISFMYWYQQKPGKAPKLLIYDTSNLAS
GVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLEAEDAATYYCQQWSSYPLTFGQGTKLEIK
【0077】
VLgpA33の抗原結合ドメインは、SARSSISFMYという配列(配列番号14)を有するCDR1、DTSNLASという配列(配列番号15)を有するCDR2、及びQQWSSYPLTという配列(配列番号16)を有するCDR3を含む。
【0078】
gpA33に結合するヒト化抗体のVHドメイン(VHgpA33)(配列番号27):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGSWMNWVRQAPGQGLEWIGRIYPGD
GETNYNGKFKDRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARIYGNNVYFDVWG
QGTTVTVSS
【0079】
VHgpA33の抗原結合ドメインは、GSWMNという配列(配列番号18)を有するCDR1、RIYPGDGETNYNGKFKDという配列(配列番号19)を有するCDR2、及びIYGNNVYFDVという配列(配列番号20)を有するCDR3を含む。
【0080】
第1の介在スペーサペプチド(リンカー1)はGGGSGGGGという配列(配列番号1)を有する。システイン含有スペーサペプチド(リンカー2)はGGCGGGという配列(配列番号2)を有する。
【0081】
第1のポリペプチド鎖のヘテロ二量体促進性ドメインは「Eコイル」ドメイン(配列番号3)である。第2のポリペプチド鎖のヘテロ二量体促進性ドメインは「Kコイル」ドメイン(配列番号4)である。
【0082】
従って、DART−2の第1のポリペプチド鎖は次の配列(配列番号28)を有する。
QAVVTQEPSLTVSPGGTVTLTCRSSTGAVTTSNYANWVQQKPGQAPRGLIGGTNK
RAPWTPARFSGSLLGGKAALTITGAQAEDEADYYCALWYSNLWVFGGGTKLTVLG
GGGSGGGGQVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGSWMNWVRQAPGQGLEW
IGRIYPGDGETNYNGKFKDRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARIYGN
NVYFDVWGQGTTVTVSSGGCGGGEVAALEKEVAALEKEVAALEKEVAALEK
【0083】
上記の内容からわかるように、配列番号28の残基1〜110は、CD3に結合する抗体のVLドメイン(VLCD3)(配列番号5)であり、配列番号28の残基111〜118は、第1の介在スペーサペプチド(リンカー1)(配列番号1)であり、配列番号28の残基119〜237は、gpA33に結合する抗体のVHドメイン(VHgpA33)(配列番号27)であり、配列番号28の残基238〜243は、システイン含有スペーサペプチド(リンカー2)(配列番号2)であり、及び配列番号28の残基244〜271は、ヘテロ二量体促進性「Eコイル」ドメイン(配列番号3)である。
【0084】
DART−2の第1のポリペプチド鎖をエンコードする好ましいポリヌクレオチドは次の配列(配列番号29)を有する。
caggctgtggtgactcaggagccttcactgaccgtgtccccaggcggaactgtga
ccctgacatgcagatccagcacaggcgcagtgaccacatctaactacgccaattg
ggtgcagcagaagccaggacaggcaccaaggggcctgatcgggggtacaaacaaa
agggctccctggacccctgcacggttttctggaagtctgctgggcggaaaggccg
ctctgactattaccggggcacaggccgaggacgaagccgattactattgtgctct
gtggtatagcaatctgtgggtgttcgggggtggcacaaaactgactgtgctggga
ggtggtggatccggcggaggtggacaggtccagctggtccagagcggggccgaag
tcaaaaaacccggagcaagcgtgaaggtctcctgcaaagcatcaggctatacatt
tacaggcagctggatgaactgggtgaggcaggctccaggacagggactggagtgg
atcgggcgcatctaccctggagacggcgaaactaactataatggaaagttcaaag
accgagtgaccatcacagccgataagtctactagtaccgcctacatggagctgag
ctccctgcggtctgaagataccgccgtctactattgcgctagaatttacggaaac
aatgtctattttgacgtgtgggggcagggaacaactgtgactgtctcctccggag
gatgtggcggtggagaagtggccgcactggagaaagaggttgctgctttggagaa
ggaggtcgctgcacttgaaaaggaggtcgcagccctggagaaa
【0085】
DART−2の第2のポリペプチド鎖は次の配列(配列番号30)を有する。
DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITCSARSSISFMYWYQQKPGKAPKLLIYDTSNLAS
GVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLEAEDAATYYCQQWSSYPLTFGQGTKLEIKGGGS
GGGGEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYAMNWVRQAPGKGLEWVGRI
RSKYNNYATYYADSVKDRFTISRDDSKNSLYLQMNSLKTEDTAVYYCVRHGNFGN
SYVSWFAYWGQGTLVTVSSGGCGGGKVAALKEKVAALKEKVAALKEKVAALKE
【0086】
上記の内容からわかるように、配列番号30の残基1〜106は、gpA33に結合する抗体のVLドメイン(VLgpA33)(配列番号26)であり、配列番号30の残基107〜114は、第1の介在スペーサペプチド(リンカー1)(配列番号1)であり、配列番号30の残基115〜239は、CD3に結合する抗体のVHドメイン(VHCD3)(配列番号25)であり、配列番号30の残基240〜245は、システイン含有スペーサペプチド(リンカー2)(配列番号2)であり、及び配列番号30の残基246〜273は、ヘテロ二量体促進性「Kコイル」ドメイン(配列番号4)である。
【0087】
DART−2の第2のポリペプチド鎖をエンコードする好ましいポリヌクレオチドは次の配列(配列番号31)を有する。
gacattcagctgactcagtccccctcttttctgtccgcatccgtcggagatcgag
tgactattacttgctctgctaggtcctcaatcagcttcatgtactggtatcagca
gaagcccggcaaagcacctaagctgctgatctacgacacaagcaacctggcctcc
ggggtgccatctcggttctctggcagtgggtcaggaactgagtttaccctgacaa
ttagctccctggaggctgaagatgccgctacctactattgccagcagtggagcag
ctatcctctgaccttcggacaggggactaaactggaaatcaagggtggaggatcc
ggcggcggaggcgaggtgcagctggtggagtctgggggaggcttggtccagcctg
gagggtccctgagactctcctgtgcagcctctggattcaccttcagcacatacgc
tatgaattgggtccgccaggctccagggaaggggctggagtgggttggaaggatc
aggtccaagtacaacaattatgcaacctactatgccgactctgtgaaggatagat
tcaccatctcaagagatgattcaaagaactcactgtatctgcaaatgaacagcct
gaaaaccgaggacacggccgtgtattactgtgtgagacacggtaacttcggcaat
tcttacgtgtcttggtttgcttattggggacaggggacactggtgactgtgtctt
ccggaggatgtggcggtggaaaagtggccgcactgaaggagaaagttgctgcttt
gaaagagaaggtcgccgcacttaaggaaaaggtcgcagccctgaaagag
【0088】
3.アルブミン結合ドメイン(ABD)を有するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(「DART−2w/ABD」)
本発明の他の実施形態において、gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディはアルブミン結合ドメイン(ABD)を含むことができる(ABD含有gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ)。
【0089】
国際公開第2012/018687号に開示されているように、ダイアボディ分子のインビボ薬物動態特性を改善するために、ダイアボディ分子を、ダイアボディ分子の末端のうちの1つ又は複数に血清結合タンパク質のポリペプチド部分を含有するように修飾してよい。最も好ましくは、このような血清結合タンパク質のポリペプチド部分は、ダイアボディ分子のC末端に配置されることになる。この目的のために特に好ましい血清結合タンパク質のポリペプチド部分は、連鎖球菌タンパク質Gからのアルブミン結合ドメイン(ABD)である。連鎖球菌株G148のタンパク質Gのアルブミン結合ドメイン3(ABD3)が特に好ましい。
【0090】
連鎖球菌株G148のタンパク質Gのアルブミン結合ドメイン3(ABD3)は、安定した3重螺旋束を形成する46個のアミノ酸残基からなり、広範なアルブミン結合特異性を有する(Johansson, M.U. et al. (2002) “Structure, Specificity, And Mode Of Interaction For Bacterial Albumin-Binding Modules,” J. Biol. Chem. 277(10):8114‐8120)。アルブミンは、血漿中に最も豊富なタンパク質であり、ヒトにおいて19日の半減期を有する。アルブミンは複数の小さな分子結合部位を有し、これによりアルブミンは他のタンパク質に非共有結合して血清半減期を延長できる。
【0091】
従って、アルブミン結合ドメインを有するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディの第1のポリペプチド鎖又は第2のポリペプチド鎖は、第3のリンカー(リンカー3)を含有し、これは上記ポリペプチド鎖のEコイル(又はKコイル)をアルブミン結合ドメインから分離する。このようなリンカー3に関する好ましい配列は、GGGS(配列番号32)又はGGGNS(配列番号33)である。好ましいアルブミン結合ドメイン(ABD)は、以下の配列(配列番号34)を有する。
LAQAKEAAIRELDKYGVSDYYKNLIDNAKSAEGVKALIDEILAALP
【0092】
このような本発明の形態を例示するために、上述のDART−2の第1のポリペプチド鎖を、アルブミン結合ドメインを含有するように修飾し、「DART−2w/ABD」と称する、アルブミン結合ドメインを有するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディとした。
【0093】
DART−2w/ABDの第1のポリペプチド鎖は次のアミノ酸配列(配列番号35)を有する。
QAVVTQEPSLTVSPGGTVTLTCRSSTGAVTTSNYANWVQQKPGQAPRGLIGGTNK
RAPWTPARFSGSLLGGKAALTITGAQAEDEADYYCALWYSNLWVFGGGTKLTVLG
GGGSGGGGQVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGSWMNWVRQAPGQGLEW
IGRIYPGDGETNYNGKFKDRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARIYGN
NVYFDVWGQGTTVTVSSGGCGGGEVAALEKEVAALEKEVAALEKEVAALEKGGGS
LAQAKEAAIRELDKYGVSDYYKNLIDNAKSAEGVKALIDEILAALP
【0094】
上記の内容からわかるように、配列番号35の残基1〜271は、DART−2の残基1〜271と同一であり、従って、N末端からC末端方向へ向かって、CD3に結合する抗体のVLドメイン(VLCD3)(配列番号5)、第1の介在スペーサペプチド(リンカー1)(配列番号1)、gpA33に結合する抗体のVHドメイン(VHgpA33)(配列番号27)、システイン含有スペーサペプチド(リンカー2)(配列番号2)、ヘテロ二量体促進性「Eコイル」ドメイン(配列番号3)及びC末端を備える。残基272〜275はリンカー3(配列番号32)であり、及び残基276〜321はアルブミン結合ドメイン(配列番号34)である。
【0095】
DART−2w/ABDの第1のポリペプチド鎖をエンコードする好ましいポリヌクレオチドは次の配列(配列番号36)を有する。
caggctgtggtgactcaggagccttcactgaccgtgtccccaggcggaactgtga
ccctgacatgcagatccagcacaggcgcagtgaccacatctaactacgccaattg
ggtgcagcagaagccaggacaggcaccaaggggcctgatcgggggtacaaacaaa
agggctccctggacccctgcacggttttctggaagtctgctgggcggaaaggccg
ctctgactattaccggggcacaggccgaggacgaagccgattactattgtgctct
gtggtatagcaatctgtgggtgttcgggggtggcacaaaactgactgtgctggga
gggggtggatccggcggaggtggacaggtccagctggtccagagcggggccgaag
tcaaaaaacccggagcaagcgtgaaggtctcctgcaaagcatcaggctatacatt
tacaggcagctggatgaactgggtgaggcaggctccaggacagggactggagtgg
atcgggcgcatctaccctggagacggcgaaactaactataatggaaagttcaaag
accgagtgaccatcacagccgataagtctactagtaccgcctacatggagctgag
ctccctgcggtctgaagataccgccgtctactattgcgctagaatttacggaaac
aatgtctattttgacgtgtgggggcagggaacaactgtgactgtctcctccggag
gatgtggcggtggagaagtggccgcactggagaaagaggttgctgctttggagaa
ggaggtcgctgcacttgaaaaggaggtcgcagccctggagaaaggcggcgggtct
ctggcccaggcaaaagaggcagccatccgcgaactggataaatatggcgtgagcg
attattataagaacctgattgacaacgcaaaatccgcggaaggcgtgaaagcact
gattgatgaaattctggccgccctgcct
【0096】
DART−2w/ABDの第2のポリペプチド鎖は上述したDART−2の第2のポリペプチド鎖と同じである(配列番号30)。
【0097】
B.IgG Fcドメインを有するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(「DART−2w/Fc」)
さらに他の実施形態において、本発明は、IgG Fcドメインを有するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディを提供する。このようなダイアボディは、「gpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディ」と引用することもある。本発明のFcダイアボディのFcドメインは、完全なFc領域(例えば、完全なIgGのFc領域)であっても、または完全なFc領域のフラグメントのみであってもよい。本発明の二重特異性の一価のFcダイアボディのFcドメインは、1つ以上のFc受容体(例えば、FcγR(単数または複数))に結合する能力を保有し得、さらに好ましくはこのようなFcドメインは、FcγRIA(CD64)、FcγRIIA(CD32A)、FcγRIIB(CD32B)、FcγRIIIA(CD16a)またはFcγRIIIB(CD16b)に対する結合の低下(野性型Fc領域によって示される結合に対して)を生じるか、またはこのようなFcドメインがこのような受容体(単数または複数)に結合する能力を実質的に取り除く。本発明の二重特異性の一価のFcダイアボディのFcドメインは、完全なFc領域のいくつかのもしくは全てのCH2ドメインおよび/またはいくつかのもしくは全てのCH3ドメインを含んでもよいし、あるいは改変体CH2および/または改変体CH3の配列(これは、例えば、完全なFc領域のCH2もしくはCH3ドメインに対して、1つ以上の挿入および/または1つ以上の欠失を含んでもよい)を含んでもよい。本発明の二重特異性の一価のFcダイアボディのFcドメインは、非−Fcポリペプチド部分を含んでもよく、または天然ではない完全なFc領域の一部を含んでもよく、またはCH2および/もしくはCH3ドメインの天然には存在しない方向性を含んでもよい(例えば、2つのCH2ドメインもしくは2つのCH3ドメイン、またはN末端からC末端方向へ向かって、CH2ドメインに連結されたCH3ドメインなど)。
【0098】
バージョン1と表記され、図2Aに示された第1の実施形態において、例示的なgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディの第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端の方向に、N末端、gpA33又はCD3のいずれかに結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(すなわち、VLgpA33又はVLCD3のいずれか)、介在スペーサペプチド(リンカー1)、gpA33(当該第1のポリペプチド鎖がVLCD3を含む場合)又はCD3(当該第1のポリペプチド鎖がVLgpA33を含む場合)のいずれかに結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン、システイン含有第2の介在スペーサペプチド(リンカー2)、ヘテロ二量体促進性ドメイン、スペーサペプチド(リンカー5)、システイン含有ペプチド(ペプチド1)、IgG Fcドメイン(好ましくは、抗体のFc領域のCH2ドメイン及びCH3ドメインの全部又は一部)、及びC末端を含むことができる。
【0099】
バージョン2と表記され、図2Bに示された第2の実施形態において、例示的なgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディの第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端の方向に、N末端、システイン含有ペプチド(ペプチド1)、IgG Fcドメイン(好ましくは、抗体のFc領域のCH2ドメイン及びCH3ドメインの全部又は一部)、介在スペーサペプチド(リンカー4)、gpA33又はCD3のいずれかに結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(すなわち、VLgpA33又はVLCD3のいずれか)、介在スペーサペプチド(リンカー1)、gpA33(当該第1のポリペプチド鎖がVLCD3を含む場合)又はCD3(当該第1のポリペプチド鎖がVLgpA33を含む場合)のいずれかに結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン、システイン含有第2の介在スペーサペプチド(リンカー2)、ヘテロ二量体促進性ドメイン、及びC末端を含むことができる。
【0100】
好ましくは、いずれかの実施形態において、第1のポリペプチド鎖のFcドメインは、FcγRIA(CD64)、FcγRIIA(CD32A)、FcγRIIB(CD32B)、FcγRIIIA(CD16a)またはFcγRIIIB(CD16b)に対する結合の低下(野性型Fc領域によって示される結合に対して)を生じるか、またはこのようなFcドメインがこのような受容体(単数または複数)に結合する能力を実質的に取り除く。
そのような変更された結合を媒介できるFc変異及び突然変異型は、当該分野で周知であり、位置234および235のアミノ酸置換、位置265のアミノ酸置換、または位置297のアミノ酸置換を含む(例えば、参照によって本明細書に援用される、米国特許第5,624,821号を参照)。好ましい実施形態では、CH2ドメインおよびCH3ドメインは、位置234でアラニンによる置換、および位置235でアラニンによる置換を含む。
【0101】
例示的なgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディ(バージョン1及びバージョン2)の第2のポリペプチド鎖は、N末端からC末端の方向に、N末端、CD3又はgpA33のいずれかに結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(すなわち、ダイアボディの第1のポリペプチド鎖について選択されたVLドメインにより決まるVLgpA33又はVLCD3のいずれか)、介在スペーサペプチド(リンカー1)、CD3(当該第2のポリペプチド鎖がVLgpA33を含む場合)又はgpA33(当該第2のポリペプチド鎖がVLCD3を含む場合)のいずれかに結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン、システイン含有スペーサペプチド(リンカー2)、ヘテロ二量体促進性ドメイン(好ましくは、Kコイルドメイン)及びC末端を含むことができる。
【0102】
例示的なgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディ(バージョン1及びバージョン2)は、さらに第3のポリペプチド鎖を含むことができ、第3のポリペプチド鎖は、N末端からC末端の方向に、N末端、システイン含有ペプチド(ペプチド1)、第1のポリペプチド鎖のFcドメインのものと同じアイソタイプを有するIgGのFcドメイン(好ましくは、抗体のFc領域のCH2ドメイン及びCH3ドメインの全部又は一部)、及びC末端を含む。好ましくは、第3のポリペプチド鎖のFcドメインは、例示的なgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディの第1のポリペプチド鎖において上述したように、FcγRIA(CD64)、FcγRIIA(CD32A)、FcγRIIB(CD32B)、FcγRIIIA(CD16a)またはFcγRIIIB(CD16b)に対する結合の低下(野性型のFc領域によって示される結合に対して)を生じるか、またはこのようなFcドメインが、このような受容体(単数または複数)に結合する能力を実質的に取り除く。
【0103】
任意に存在する介在スペーサペプチド(リンカー4)は、APSSSというアミノ酸配列(配列番号37)を含むことが好ましく、APSSSPMEというアミノ酸配列(配列番号38)を含むことがさらに好ましい。
【0104】
第1及び第3のポリペプチド鎖のシステイン含有ペプチド(ペプチド1)は、同じアミノ酸配列から構成されても、または異なるアミノ酸配列から構成されてもよく、1、2、3またはそれ以上のシステイン残基を含む。特に好ましいペプチド1は、DKTHTCPPCPというアミノ酸配列(配列番号39)を有する。
【0105】
介在スペーサペプチド(リンカー1)は、上記のとおり配列番号1の配列を有することが好ましい。システイン含有第2の介在スペーサペプチド(リンカー2)は、上記のとおり、配列番号2の配列を有することが好ましい。
【0106】
gpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディの第一及び第二のポリペプチドのヘテロ二量体促進性ドメインは、上述したEコイルドメイン(配列番号3)及びKコイルドメイン(配列番号4)であり、上述したとおり、一方のポリペプチド鎖にEコイルドメインが選択されると、他方がKコイルドメインを保有する。
【0107】
好ましいスペーサペプチド(リンカー5)はGGGという配列を有する。
【0108】
第1及び第3のポリペプチドのCH2及び/又はCH3ドメインは同一である必要はなく、有利には2つのポリペプチド鎖間の錯体形成を促進するために修飾される。例えば、CH2又はCH3ドメインにアミノ酸置換(好ましくは「ノブ(knob)」を形成する嵩高な側鎖基、例えばトリプトファンを含むアミノ酸による置換)を導入して、立体障害により、同様に変異させたドメインとの相互作用を防止し、上記変化させたドメインを、相補的な又は適応した変異(例えばグリシンによる置換)を施されたドメイン、即ち「ホール(hole)」とペアにすることができる。このような一連の変化は、二重特異性1価Fcダイアボディ分子を構成するポリペプチドのいずれのペアに施すことができ、また更に、上記ペアのポリペプチド鎖のいずれの部分に施すことができる。ホモ二量体化を抑えてヘテロ二量体化を促進するためのタンパク質加工の方法は、特に免疫グロブリン様分子の加工に関して当該技術分野で公知であり、本明細書に包含される(例えば、Ridgway et al. (1996) “‘Knobs-Into-Holes’ Engineering Of Antibody CH3 Domains For Heavy Chain Heterodimerization,” Protein Engr. 9:617-621, Atwell et al. (1997) “Stable Heterodimers From Remodeling The Domain Interface Of A Homodimer Using A Phage Display Library,” J. Mol. Biol. 270: 26-35, and Xie et al. (2005) “A New Format Of Bispecific Antibody: Highly Efficient Heterodimerization, Expression And Tumor Cell Lysis,” J. Immunol. Methods 296:95-101を参照(これらはそれぞれ参照によりその全体が本明細書に援用される))。好ましくは、「ノブ」は第1のポリペプチド鎖のCH2‐CH3ドメインに加工され、「ホール」は第3のポリペプチド鎖のCH2‐CH3ドメインに加工される。従って「ノブ」は、第1のポリペプチド鎖がそのCH2及び/又はCH3ドメインを介してホモ二量体化するのを防止する役割を果たすことになる。第3のポリペプチド鎖は好ましくは「ホール」置換基を含有するため、第1のポリペプチド鎖とヘテロ二量体化し、かつそれ自体とホモ二量体化する。好ましいノブは、天然IgGのFc領域のFcドメインを修飾して修飾基T366Wを含有させることによって生成される。好ましいホールは、天然IgGのFc領域のFcドメインを修飾して修飾基T366S、L368A及びY407Vを含有させることによって生成される。第3のポリペプチド鎖ホモ二量体を、第1、第2及び第3のポリペプチド鎖を含む最終的な二重特異性1価Fcダイアボディから精製するのを補助するために、好ましくは、第3のポリペプチド鎖のCH2及びCH3ドメインのタンパク質A結合部位を、位置435(H435R)におけるアミノ酸置換によって変異させる。第1、第2および第3のポリペプチド鎖を含んでいる最終の二重特異性1価Fcダイアボディから第3のポリペプチド鎖ホモ二量体を精製することを補助するために、第3のポリペプチド鎖のCH2及びCH3ドメインのプロテインA結合部位を、好ましくは、アミノ酸置換によって変異する。このようにして、第3のポリペプチド鎖ホモ二量体はタンパク質Aに結合せず、その一方で二重特異性1価Fcダイアボディは、第1のポリペプチド鎖のタンパク質A結合部位を介してタンパク質Aに結合する能力を有したままとなる。
【0109】
第1のポリペプチド鎖中に存在する抗体FcドメインのCH2及びCH3ドメインに関する好ましい配列は、以下の配列番号40である。
APEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVH
NAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAK
GQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTP
PVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0110】
第3のポリペプチド鎖中に存在する抗体FcドメインのCH2及びCH3ドメインに関する好ましい配列は、以下の配列番号41である。
APEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVH
NAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAK
GQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTP
PVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNRYTQKSLSLSPGK
【0111】
1.DART−2w/Fcバージョン1
「DART−2w/Fcバージョン1」と称する、gpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディの第1、第2及び第3のポリペプチド鎖は、以下の配列を有するポリペプチドドメインを含む。
【0112】
DART−2w/Fcバージョン1の第1のポリペプチド鎖は次のアミノ酸配列(配列番号42)を有する。
DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITCSARSSISFMYWYQQKPGKAPKLLIYDTSNLAS
GVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLEAEDAATYYCQQWSSYPLTFGQGTKLEIKGGGS
GGGGEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYAMNWVRQAPGKGLEWVGRI
RSKYNNYATYYADSVKDRFTISRDDSKNSLYLQMNSLKTEDTAVYYCVRHGNFGN
SYVSWFAYWGQGTLVTVSSGGCGGGEVAALEKEVAALEKEVAALEKEVAALEKGG
GDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVK
FNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALP
APIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESN
GQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQK
SLSLSPGK
【0113】
上記の内容からわかるように、配列番号42の残基1〜106は、gpA33に結合する抗体のVLドメイン(VLgpA33)(配列番号26)であり、配列番号42の残基107〜114は、第1の介在スペーサペプチド(リンカー1)(配列番号1)であり、配列番号42の残基115〜239は、CD3に結合する抗体のVHドメイン(VHCD3)(配列番号25)であり、配列番号42の残基240〜245は、システイン含有スペーサペプチド(リンカー2)(配列番号2)であり、配列番号42の残基246〜273は、ヘテロ二量体促進性「Eコイル」ドメイン(配列番号3)であり、配列番号42の残基274〜276は、スペーサペプチドGGG(リンカー5)であり、配列番号42の残基277〜286は、ペプチド1(配列番号39)であり、配列番号42の残基287〜503は、抗体のFcドメインのCH2及びCH3ドメインについての配列(配列番号40)である。
【0114】
DART−2w/Fcバージョン1の第1のポリペプチド鎖をエンコードする好ましいポリヌクレオチドは次の配列(配列番号43)を有する。
gacattcagctgactcagtccccctcttttctgtccgcatccgtcggagatcgag
tgactattacttgctctgctaggtcctcaatcagcttcatgtactggtatcagca
gaagcccggcaaagcacctaagctgctgatctacgacacaagcaacctggcctcc
ggggtgccatctcggttctctggcagtgggtcaggaactgagtttaccctgacaa
ttagctccctggaggctgaagatgccgctacctactattgccagcagtggagcag
ctatcctctgaccttcggacaggggactaaactggaaatcaagggtggaggatcc
ggcggcggaggcgaggtgcagctggtggagtctgggggaggcttggtccagcctg
gagggtccctgagactctcctgtgcagcctctggattcaccttcagcacatacgc
tatgaattgggtccgccaggctccagggaaggggctggagtgggttggaaggatc
aggtccaagtacaacaattatgcaacctactatgccgactctgtgaaggatagat
tcaccatctcaagagatgattcaaagaactcactgtatctgcaaatgaacagcct
gaaaaccgaggacacggccgtgtattactgtgtgagacacggtaacttcggcaat
tcttacgtgtcttggtttgcttattggggacaggggacactggtgactgtgtctt
ccggaggatgtggcggtggagaagtggccgcactggagaaagaggttgctgcttt
ggagaaggaggtcgctgcacttgaaaaggaggtcgcagccctggagaaaggcggc
ggggacaaaactcacacatgcccaccgtgcccagcacctgaagccgcggggggac
cgtcagtcttcctcttccccccaaaacccaaggacaccctcatgatctcccggac
ccctgaggtcacatgcgtggtggtggacgtgagccacgaagaccctgaggtcaag
ttcaactggtacgtggacggcgtggaggtgcataatgccaagacaaagccgcggg
aggagcagtacaacagcacgtaccgtgtggtcagcgtcctcaccgtcctgcacca
ggactggctgaatggcaaggagtacaagtgcaaggtctccaacaaagccctccca
gcccccatcgagaaaaccatctccaaagccaaagggcagccccgagaaccacagg
tgtacaccctgcccccatcccgggaggagatgaccaagaaccaggtcagcctgtg
gtgcctggtcaaaggcttctatcccagcgacatcgccgtggagtgggagagcaat
gggcagccggagaacaactacaagaccacgcctcccgtgctggactccgacggct
ccttcttcctctacagcaagctcaccgtggacaagagcaggtggcagcaggggaa
cgtcttctcatgctccgtgatgcatgaggctctgcacaaccactacacgcagaag
agcctctccctgtctccgggtaaa
【0115】
DART−2w/Fcバージョン1の第2のポリペプチド鎖は次のアミノ酸配列(配列番号44)を有する。
QAVVTQEPSLTVSPGGTVTLTCRSSTGAVTTSNYANWVQQKPGQAPRGLIGGTNK
RAPWTPARFSGSLLGGKAALTITGAQAEDEADYYCALWYSNLWVFGGGTKLTVLG
GGGSGGGGQVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGSWMNWVRQAPGQGLEW
IGRIYPGDGETNYNGKFKDRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARIYGN
NVYFDVWGQGTTVTVSSGGCGGGKVAALKEKVAALKEKVAALKEKVAALKE
【0116】
上記の内容からわかるように、配列番号44の残基1〜110は、CD3に結合する抗体のVLドメイン(VLCD3)(配列番号5)であり、配列番号44の残基111〜118は、第1の介在スペーサペプチド(リンカー1)(配列番号1)であり、配列番号44の残基119〜237は、gpA33に結合する抗体のVHドメイン(VHgpA33)(配列番号27)であり、配列番号44の残基238〜243は、システイン含有スペーサペプチド(リンカー2)(配列番号2)であり、及び配列番号44の残基244〜271は、ヘテロ二量体促進性「Kコイル」ドメイン(配列番号4)である。
【0117】
DART−2w/Fcバージョン1の第2のポリペプチド鎖をエンコードする好ましいポリヌクレオチドは次の配列(配列番号45)を有する。
caggctgtggtgactcaggagccttcactgaccgtgtccccaggcggaactgtga
ccctgacatgcagatccagcacaggcgcagtgaccacatctaactacgccaattg
ggtgcagcagaagccaggacaggcaccaaggggcctgatcgggggtacaaacaaa
agggctccctggacccctgcacggttttctggaagtctgctgggcggaaaggccg
ctctgactattaccggggcacaggccgaggacgaagccgattactattgtgctct
gtggtatagcaatctgtgggtgttcgggggtggcacaaaactgactgtgctggga
gggggtggatccggcggaggtggacaggtccagctggtccagagcggggccgaag
tcaaaaaacccggagcaagcgtgaaggtctcctgcaaagcatcaggctatacatt
tacaggcagctggatgaactgggtgaggcaggctccaggacagggactggagtgg
atcgggcgcatctaccctggagacggcgaaactaactataatggaaagttcaaag
accgagtgaccatcacagccgataagtctactagtaccgcctacatggagctgag
ctccctgcggtctgaagataccgccgtctactattgcgctagaatttacggaaac
aatgtctattttgacgtgtgggggcagggaacaactgtgactgtctcctccggag
gatgtggcggtggaaaagtggccgcactgaaggagaaagttgctgctttgaaaga
gaaggtcgccgcacttaaggaaaaggtcgcagccctgaaagag
【0118】
DART−2w/Fcバージョン1の第3のポリペプチド鎖は次のアミノ酸配列(配列番号46)を有する。
DKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKF
NWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPA
PIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNG
QPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNRYTQKS
LSLSPGK
【0119】
上記の内容からわかるように、配列番号46の残基1〜10は、ペプチド1(配列番号39)であり、配列番号46の残基11〜227は、抗体のFcドメインのCH2及びCH3ドメイン(配列番号41)である。
【0120】
DART−2w/Fcバージョン1の第3のポリペプチド鎖をエンコードする好ましいポリヌクレオチドは次の配列(配列番号47)を有する。
gacaaaactcacacatgcccaccgtgcccagcacctgaagccgcggggggaccgt
cagtcttcctcttccccccaaaacccaaggacaccctcatgatctcccggacccc
tgaggtcacatgcgtggtggtggacgtgagccacgaagaccctgaggtcaagttc
aactggtacgtggacggcgtggaggtgcataatgccaagacaaagccgcgggagg
agcagtacaacagcacgtaccgtgtggtcagcgtcctcaccgtcctgcaccagga
ctggctgaatggcaaggagtacaagtgcaaggtctccaacaaagccctcccagcc
cccatcgagaaaaccatctccaaagccaaagggcagccccgagaaccacaggtgt
acaccctgcccccatcccgggaggagatgaccaagaaccaggtcagcctgagttg
cgcagtcaaaggcttctatcccagcgacatcgccgtggagtgggagagcaatggg
cagccggagaacaactacaagaccacgcctcccgtgctggactccgacggctcct
tcttcctcgtcagcaagctcaccgtggacaagagcaggtggcagcaggggaacgt
cttctcatgctccgtgatgcatgaggctctgcacaaccgctacacgcagaagagc
ctctccctgtctccgggtaaa
【0121】
2.DART−2w/Fcバージョン2
「DART−2w/Fcバージョン2」と称する、gpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディの第1、第2及び第3のポリペプチド鎖は、以下の配列を有するポリペプチドドメインを含む。その他の違いとしては、DART−2w/Fcバージョン1は、ポリペプチド鎖のCH2およびCH3の配列の位置がDART−2w/Fcバージョン2と異なり、これらの配列がDART−2w/Fcバージョン1ではVL及びVH配列のC末端側に配置されているのに対し、DART−2w/Fcバージョン2ではVL及びVH配列のN末端側に配置されている。
【0122】
そのようなDART−2w/Fcバージョン2の第1のポリペプチド鎖は次のアミノ酸配列(配列番号48)を有する。
DKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKF
NWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPA
PIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNG
QPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKS
LSLSPGKAPSSSPMEDIQLTQSPSFLSASVGDRVTITCSARSSISFMYWYQQKPG
KAPKLLIYDTSNLASGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLEAEDAATYYCQQWSSYPL
TFGQGTKLEIKGGGSGGGGEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYAMNW
VRQAPGKGLEWVGRIRSKYNNYATYYADSVKDRFTISRDDSKNSLYLQMNSLKTE
DTAVYYCVRHGNFGNSYVSWFAYWGQGTLVTVSSGGCGGGKVAALKEKVAALKEK
VAALKEKVAALKE
【0123】
上記の内容からわかるように、配列番号48の残基1〜10は、ペプチド1(配列番号39)であり、配列番号48の残基11〜227は、抗体のFcドメインのCH2及びCH3ドメインについての配列(配列番号40)である。配列番号48の残基228〜235は、介在スペーサペプチド(リンカー4)(配列番号38)であり、配列番号48の残基236〜341は、gpA33に結合する抗体のVLドメイン(VLgpA33)(配列番号26)であり、配列番号48の残基342〜349は、第1の介在スペーサペプチド(リンカー1)(配列番号1)であり、配列番号48の残基350〜474は、CD3に結合する抗体のVHドメイン(VHCD3)(配列番号25)であり、配列番号48の残基475〜480は、システイン含有スペーサペプチド(リンカー2)(配列番号2)であり、配列番号48の残基481〜508は、ヘテロ二量体促進性「Kコイル」ドメイン(配列番号4)である。
【0124】
DART−2w/Fcバージョン2の第2のポリペプチド鎖は、DART−2の第1のポリペプチド鎖のアミノ酸配列(すなわち、配列番号28(既出))を有する。
【0125】
DART−2w/Fcバージョン2の第3のポリペプチド鎖は、配列番号46(既出)のアミノ酸配列を有する。
【0126】
[医薬組成物]
本発明の組成物は、医薬組成物の製造に使用できるバルク薬剤組成物(例えば不純又は非滅菌組成物)、及び単位剤形の調製に使用できる医薬組成物(即ち被験体又は患者への投与に好適な組成物)を含む。これらの組成物は、予防的又は治療的有効量の上記のgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ又はgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディ及び追加の治療剤、又はこのような作用剤と薬学的に許容可能なキャリアとの組み合わせを含む。好ましくは、本発明の組成物は、予防的又は治療的有効量の本発明の1つ又は複数の分子と、薬学的に許容可能なキャリアとを含む。
【0127】
本発明はまた、上記のgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ又はgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディ、及び特定の癌に関連した抗原に対して特異的である第2の治療用抗体(例えば癌抗原特異性モノクローナル抗体)、及び薬学的に許容可能なキャリアを含む、医薬組成物も包含する。
【0128】
ある具体的実施形態では、用語「薬学的に許容可能な(pharmaceutically acceptable)」は、動物、より詳細にはヒトにおける使用に関して、連邦規制当局若しくは州政府によって承認されている、又は米国薬局方若しくは他の一般に認められた薬局方に記載されていることを意味する。用語「キャリア(carrier)」は、希釈剤、アジュバント(例えばフロイントアジュバント(完全及び不完全))、賦形剤、又は治療薬の投与に用いられるビヒクルを指す。これらの薬学的キャリアは、水及び石油、動物油、植物油若しくは合成油を含む油(例えば落花生油、大豆油、鉱物油、胡麻油等)等の、無菌液体とすることができる。医薬組成物を静脈投与する場合、水が好ましいキャリアである。特に注射用溶液のための液体キャリアとして、食塩水、並びに水性デキストロース及びグリセロール溶液も採用できる。好適な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。必要な場合は、上記組成物は、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含有することもできる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳液、錠剤、ピル、カプセル、粉体、徐放性製剤等の形態を取ることができる。
【0129】
一般に、本発明の組成物の成分は、例えば活性作用剤の量を示すアンプル又はサシェ等の気密性コンテナ中の凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として、別個に、又は単位剤形にまとめて混合された状態で供給される。組成物を点滴によって投与する場合、組成物は、滅菌された薬学的グレードの水又は食塩水を内包する点滴ボトルを用いて吐出できる。組成物を注射によって投与する場合、投与前に成分を混合できるように、注射用無菌水又は食塩水のアンプルを提供できる。
【0130】
本発明の組成物は、中性又は塩形態として処方できる。薬学的に許容可能な塩としては:塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等由来の陰イオンを有して形成されるもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2‐メチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等由来の陽イオンを有して形成されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
本発明はまた、上述の薬学的に許容可能なキャリアと併せて、上記のgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ又はgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディ(単独又は追加の治療剤と共に)で充填された1つ又は複数のコンテナを備える、医薬パック又はキットも提供する。更に、疾患の治療に有用な1つ又は複数の他の予防剤又は治療剤も、上記医薬パック又はキットに含めることができる。本発明はまた、本発明の医薬組成物の成分のうちの1つ又は複数で充填された1つ又は複数のコンテナを備える、医薬パック又はキットも提供する。任意に、このような1つ又は複数のコンテナは、医薬製品又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形式の通知と関連するものとすることができ、上記通知は、ヒトへの投与のための製造、使用又は販売の機関による承認を反映したものである。
【0132】
本発明は、上述の方法において使用できるキットを提供する。一実施形態において、キットは、1つ又は複数の本発明の分子を含む。他の実施形態において、キットは更に、癌の治療に有用な1つ又は複数の他の予防剤又は治療剤を、1つ又は複数のコンテナ内に含む。さらに他の実施形態において、キットは更に、癌に関連する1つ又は複数の抗原に結合する1つ又は複数の抗体を含むことができる。特定の実施形態では、他の予防剤又は治療剤は、化学療法剤である。他の実施形態では、予防剤又は治療剤は生物学的治療剤又はホルモン療法剤である。
【0133】
[本発明の組成物の使用]
本発明のgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ又はgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディは、gpA33の発現に関連する又はgpA33の発現を特徴とするいずれの疾患又は状態を治療する能力を有する。従って、このような分子を含む医薬組成物は、限定するものではないが、結腸癌、大腸癌、及び膵臓癌の診断又は治療において採用してよい。
【0134】
[投与方法]
本発明の組成物は、有効量の医薬組成物を被験体に投与することによる、疾患、障害又は感染症に関連する1つ又は複数の症状の治療、予防及び改善のために提供できる。好ましい態様では、上記組成物は実質的に精製される(即ち上記組成物の効果を制限する、又は望ましくない副作用を生成する物質を実質的に含まない)。ある具体的実施形態では、被験体は動物、好ましくは非霊長類(例えばウシ属、ウマ科、ネコ科、イヌ科、齧歯類等)又は霊長類(例えばカニクイザル等のサル、ヒト等)といった哺乳類である。ある好ましい実施形態では、被験体はヒトである。
【0135】
例えば抗体又は融合タンパク質を発現できるリポソーム、微粒子マイクロカプセル、組み換え細胞内へのカプセル化;受容体媒介性エンドサイトーシス(例えば、Wu et al. (1987) “Receptor-Mediated In Vitro Gene Transformation By A Soluble DNA Carrier System,” J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照);レトロウイルス又は他のベクターの一部としての核酸の構築等、様々な送達系が公知であり、本発明の組成物の投与に使用できる。
【0136】
本発明のgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ又はgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディを投与する方法としては:非経口投与(例えば皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内及び皮下);硬膜外;並びに粘膜(例えば鼻腔内及び経口経路)が挙げられるがこれらに限定されない。ある具体的実施形態では、本発明の分子は、筋肉内、静脈内又は皮下投与される。組成物は、いずれの便利な経路によって、例えば点滴又はボーラス注射によって、上皮又は粘膜皮膚層(例えば口腔粘膜、直腸及び腸粘膜等)を通した吸収によって投与してよく、他の生物学的活性作用剤と共に投与してよい。投与は全身性又は局所性とすることができる。更に、例えば吸入器又は噴霧器の使用及びエアロゾル化剤を用いた処方により、肺投与を採用することもできる。例えば米国特許第6,019,968号;5,985,320号;5,985,309号;5,934,272号;5,874,064号;5,855,913号;5,290,540号;4,880,078号;国際公開第92/19244号;97/32572号;97/44013号;98/31346号;99/66903を参照(これらはそれぞれ、参照により本明細書に援用される)。
【0137】
本発明はまた、本発明のgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ又はgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディを、この分子の量を示すアンプル又はサシェ等の気密性コンテナ内に包装することも提供する。一実施形態では、本発明のgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ又はgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディは、気密性コンテナ内の滅菌凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として供給され、例えば水又は食塩水を用いて、被験体への投与に適切な濃度へと再構成できる。好ましくは、本発明のgpA33×CD3ダイアボディ又はgpA33×CD3Fcダイアボディは、少なくとも5μg、より好ましくは少なくとも10μg、少なくとも15μg、少なくとも25μg、少なくとも50μg、少なくとも100μg又は少なくとも200μgの単位剤形で、気密性コンテナ内の滅菌凍結乾燥粉末として供給される。
【0138】
凍結乾燥された本発明のgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ又はgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディは、その元々のコンテナ内において2〜8℃で保管するべきであり、またこの分子は、再構成後12時間以内、好ましくは6時間以内、5時間以内、3時間以内又は1時間以内に投与するべきである。ある代替実施形態では、本発明のgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ又はgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディは、この分子、融合タンパク質又はコンジュゲート分子の量及び濃度を示す気密性コンテナ内に、液体形態で供給される。好ましくは、このような二重特異性1価ダイアボディ又は二重特異性1価Fcダイアボディの液体形態は、少なくとも1μg/ml、より好ましくは少なくとも2.5μg/ml、少なくとも5μg/ml、少なくとも10μg/ml、少なくとも50μg/ml又は少なくとも100μg/mlの濃度でこの分子が存在する気密性コンテナ内に供給される。
【0139】
障害に関連する1つ又は複数の症状の治療、予防及び改善に効果的な本発明のgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ又はgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディの量は、標準的な臨床技術によって決定できる。処方において採用するべき正確な用量は、投与経路及び状態の重篤度にも左右され、施術者の判断及び各患者の状況に従って決定するべきである。効果的な用量は、インビトロ又は動物モデル試験系から得られた用量‐応答曲線から外挿できる。
【0140】
本発明が包含するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ又はgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディに関して、患者に投与される投薬量は、典型的には、被験者の体重に対して、少なくとも約0.01μg/kg、少なくとも約0.05μg/kg、少なくとも約0.1μg/kg、少なくとも約0.2μg/kg、少なくとも約0.5μg/kg、少なくとも約1μg/kg、少なくとも約2μg/kg、少なくとも約3μg/kg、少なくとも約5μg/kg、少なくとも約10μg/kg、少なくとも約20μg/kg、少なくとも約30μg/kg、少なくとも約50μg/kg、少なくとも約0.1mg/kg、少なくとも約0.15mg/kg又はそれ以上である。
【0141】
本発明の二重特異性1価ダイアボディ又は二重特異性1価Fcダイアボディ配列の投与の投薬量及び頻度は、例えば脂質化等の修飾によって、上記二重特異性Fcダイアボディの取り込み及び組織貫通を増進することにより、低減又は変更してよい。
【0142】
一実施形態において、患者に投与される本発明のgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ又はgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディの用量は、単一作用剤療法としての使用に関して計算してよい。他の実施形態において、本発明の二重特異性1価ダイアボディ又は二重特異性1価Fcダイアボディは、他の治療用組成物と併用され、患者に投与される用量は、上記二重特異性1価ダイアボディ又は二重特異性1価Fcダイアボディを単一作用剤療法として使用する場合よりも低い。
【0143】
ある特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、治療が必要な領域に局所的に投与することが望ましく、これは、以下に限定されるものではないが、例えば局所的点滴によって、注射によって、又はインプラントを用いて達成してよく、上記インプラントは多孔性、非多孔性又はゼラチン材料性であり、シラスティック膜(sialastic)等の膜又は繊維を含む。好ましくは、本発明の分子を投与する際、この分子が吸収されない材料を使用するよう注意しなければならない。
【0144】
他の実施形態において、組成物は、小嚢、特にリポソーム中で送達できる(Langer (1990) “New Methods Of Drug Delivery,” Science 249:1527-1533); Treat et al., in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-Berestein and Fidler (eds.), Liss, New York, pp. 353- 365 (1989); Lopez-Berestein, ibid., pp. 3 17-327参照)。
【0145】
さらに他の実施形態において、組成物は、放出制御系又は徐放系中で送達できる。1つ又は複数の本発明の分子を含む徐放性処方を製造するために、当業者に公知のいずれの技術を使用できる。例えば、米国特許第4,526,938号、国際公開第91/05548号、国際公開第96/20698号、Ning et al. (1996) “Intratumoral Radioimmunotheraphy Of A Human Colon Cancer Xenograft Using A Sustained-Release Gel,” Radiotherapy & Oncology39:179-189, Song et al. (1995) “Antibody Mediated Lung Targeting Of Long-Circulating Emulsions,” PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 50:372-397、Cleek et al. (1997) “Biodegradable Polymeric Carriers For A bFGF Antibody For Cardiovascular Application,” Pro. Int’l. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater. 24:853-854、及びLam et al. (1997) “Microencapsulation Of Recombinant Humanized Monoclonal Antibody For Local Delivery,” Proc. Int’l. Symp. Control Rel. Bioact. Mater. 24:759-760を参照(これらはそれぞれ参照によりその全体が本明細書に援用される)。一実施形態では、放出制御系においてポンプを使用してよい(Langer, supra; Sefton, (1987) “Implantable Pumps,” CRC Crit. Rev. Biomed. Eng. 14:201-240、Buchwald et al. (1980) “Long-Term, Continuous Intravenous Heparin Administration By An Implantable Infusion Pump In Ambulatory Patients With Recurrent Venous Thrombosis,” Surgery 88:507-516、及びSaudek et al. (1989) “A Preliminary Trial Of The Programmable Implantable Medication System For Insulin Delivery,” N. Engl. J. Med.321:574-579参照)。別の実施形態では、抗体の放出制御を達成するためにポリマー材料を使用できる(例えば、Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), CRC Pres., Boca Raton, Florida (1974)、Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen and Ball (eds.), Wiley, New York (1984)、Levy et al. (1985) “Inhibition Of Calcification Of Bioprosthetic Heart Valves By Local Controlled-Release Diphosphonate,” Science 228:190-192、During et al. (1989) “Controlled Release Of Dopamine From A Polymeric Brain Implant: In Vivo Characterization,”Ann. Neurol. 25:351-356、Howard et al. (1989) “Intracerebral Drug Delivery In Rats With Lesion-Induced Memory Deficits,” J. Neurosurg. 7(1):105-112)、米国特許第5,679,377号、米国特許第5,916,597号、米国特許第5,912,015号、米国特許第5,989,463号、米国特許第5,128,326号、国際公開第99/15154号、及び国際公開第99/20253号参照)。徐放性処方において使用されるポリマーの例としては、ポリ(2‐ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン‐コ‐酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ無水物類、ポリ(N‐ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド類(PLA)、ポリ(ラクチド‐コ‐グリコリド)類(PLGA)及びポリオルトエステル類が挙げられるが、これらに限定されない。さらに他の実施形態において、放出制御系は、治療標的(例えば、肺)の近傍に配置でき、従って全身用量の一部しか必要としない(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2, pp. 115-138 (1984)参照)。他の実施形態において、放出制御インプラントとして有用なポリマー組成物は、ダン他(米国特許第5,945,155号参照)に従って使用する。この特定の方法は、ポリマー系からの生物活性材料のインサイチュ放出制御の治療効果に基づく。埋入は一般に、治療的処置を必要とする患者の身体内のいずれの部位において実施できる。非ポリマー徐放系を使用でき、この場合、被験体の身体内の非ポリマーインプラントを、薬剤送達系として使用する。身体内への埋入後、インプラントの有機溶媒が組成物から周辺の組織液中へと放散、分散又は浸出し、非ポリマー材料は徐々に凝集又は沈殿して、固体の微小細孔性マトリクスを形成する(米国特許第5,888,533号参照)。
【0146】
放出制御系については、Langer (1990, “New Methods Of Drug Delivery,” Science249:1527-1533)による報告中で議論されている。1つ又は複数の本発明の治療剤を含む徐放性処方を製造するために、当業者に公知のいずれの技術を使用できる。例えば:米国特許第4,526,938号;国際公開第91/05548号及び第96/20698号、Ning et al. (1996) “Intratumoral Radioimmunotheraphy Of A Human Colon Cancer Xenograft Using A Sustained-Release Gel,” Radiotherapy & Oncology 39:179-189、Song et al. (1995) “Antibody Mediated Lung Targeting Of Long-Circulating Emulsions,”PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 50:372-397、Cleek et al. (1997) “Biodegradable Polymeric Carriers For A bFGF Antibody For Cardiovascular Application,” Pro. Int’l. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater. 24:853-854、及びLam et al. (1997) “Microencapsulation Of Recombinant Humanized Monoclonal Antibody For Local Delivery,” Proc. Int’l. Symp. Control Rel. Bioact. Mater. 24:759-760参照(これらはそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に援用される)。
【0147】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物が、本発明の二重特異性1価ダイアボディ又は二重特異性1価Fcダイアボディをエンコードする核酸である場合、この核酸は、この核酸がエンコードする二重特異性1価ダイアボディ又は二重特異性1価Fcダイアボディの発現を促進するために、この核酸を適切な核酸発現ベクターの一部として構築して、例えばレトロウイルスベクターの使用によって(米国特許第4,980,286号参照)、又は直接注射によって、又は微粒子衝撃(例えば、遺伝子銃;Biolistic, Dupont)の使用によって、又は脂質若しくは細胞表面受容体若しくは遺伝子導入剤を用いてコーティングすることによって、又は細胞核に入ることが知られているホメオボックス様ペプチドと連鎖させて上記核酸を投与すること(例えば、Joliot et al. (1991) “Antennapedia Homeobox Peptide Regulates Neural Morphogenesis,” Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 88:1864-1868を参照)等によって、上記核酸を投与することにより、インビボ投与できる。あるいは核酸を細胞内に導入して、相同遺伝子組み換えによる発現のためのホスト細胞DNA内に組み込むことができる。
【0148】
治療的又は予防的有効量の本発明のgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ又はgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディを用いた被験体の治療は、単回治療を含むことができ、又は好ましくは一連の複数回の治療を含むことができる。ある好ましい例では、被験体は、本発明の分子を用いて、約1〜10週間、好ましくは2〜8週間、より好ましくは約3〜7週間、更に好ましくは約4、5又は6週間に亘って週1回処置される。他の実施形態において、本発明の医薬組成物は、1日1回、1日2回又は1日3回投与する。他の実施形態において、この医薬組成物は、1週間に1回、1週間に2回、2週間に1回、1ヶ月に1回、6週間に1回、2ヶ月に1回、1年に2回又は1年に1回投与する。治療に使用される上記分子の有効な用量設定は、特定の治療の期間に亘って増減させてよいことも理解されるだろう。
【0149】
ここまで本発明を概説してきたが、以下の実施例を参照することにより、本発明は更に容易に理解されるだろう。これらの実施例は例示として提供されており、そうでないことが明記されていない限り本発明を制限することを意図したものではない。
【実施例】
【0150】
実施例1 抗ヒトgpA33モノクローナル抗体
ヒトgpA33に特異的に結合できるマウスモノクローナル抗体をキメラ化およびヒト化した。元のマウス抗体のVL及びVH鎖は、それぞれ配列番号13及び17の配列を有する。ヒト化抗体のVL及びVH鎖は、それぞれ配列番号の配列26及び27を有する。
【0151】
VLgpA33の抗原結合ドメインは、SARSSISFMYという配列(配列番号14)を有するCDR1、DTSNLASという配列(配列番号15)を有するCDR2、及びQQWSSYPLTという配列(配列番号16)を有するCDR3を含む。
【0152】
VHgpA33の抗原結合ドメインは、GSWMNという配列(配列番号18)を有するCDR1、RIYPGDGETNYNGKFKDという配列(配列番号19)を有するCDR2、及びIYGNNVYFDVという配列(配列番号20)を有するCDR3を含む。
【0153】
表1は、上記変化による結合の反応速度論的な影響を示す。
【0154】
【表1】
【0155】
データは、抗体のVL及びVHドメインのヒト化に至る修飾が、実質的にgpA33結合反応速度に影響を与えなかったことを示している。
【0156】
実施例2 gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ及びFcダイアボディ並びに対照ダイアボディの構築
表2は、発現及び精製後の好ましいgpA33×CD3ダイアボディ及びgpA33×CD3Fcダイアボディのポリペプチド鎖の配列のリストを含む。例示的なgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ、DART−1及びDART−2、並びに例示的なgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディ(DART‐2w/Fc)による同時結合の検出結果から判断して、ダイアボディは、gpA33及びCD3に同時に結合できることが分かった。さらに、対照二重特異性1価ダイアボディ(「対照DART」)を産生した。対照DARTは、CD3及びFITCに対して二重特異性1価であり、CD3及びFITCに同時に結合できることが分かった。
【0157】
【表2】
【0158】
gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディは2つのポリペプチド鎖(挙げられている各配列の鎖)からなるヘテロ二量体であり、gpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディは3つのポリペプチド鎖(挙げられている各アミノ酸配列の鎖)からなるヘテロ二量体である。二重特異性1価ダイアボディを形成するための方法は、国際公開第2006/113665号、国際公開第2008/157379号、国際公開第2010/080538号、国際公開第2012/018687号、国際公開第2012/162068号、国際公開第2012/162067号において提供される。
【0159】
対照CD3×FITC二重特異性1価ダイアボディは、CD3及びFITCに同時に結合できることが分かった。上述したgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ及びgpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディは、gpA33及びCD3に同時に結合できることが分かった。このような同時結合を実証するため、gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディDART−1を固体支持体に固定された可溶性CD3フラグメントの存在下でインキュベートした。結合の検出は、固体化抗体のgpA33追加結合能力によって評価した。結果から、上述したgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ及びgpA33×CD3二重特異性1価FcダイアボディがgpA33及びCD3との同時結合を媒介する能力が確認された(図3)。
【0160】
実施例3 癌細胞に対するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディの細胞毒性
本発明のgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディの癌を治療する能力は、大腸癌又は膵臓癌細胞をgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディDART−1及びヒトPBMC(E:T=25:1)又は活性化したヒトT細胞(E:T=10:1)のいずれかの存在下でインキュベートすることによって示される。gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディDART−1は、50%の最大活性(EC50)を達成するために必要なサブng/mLから1ng/mLの範囲の濃度を用いて、潜在的な再指向殺滅能力を呈した。対照的に、gpA33陰性癌細胞株(例えば、HCT116)を採用した時は、細胞毒性は観察されなかった。調査の結果を図4A(大腸癌幹様細胞(結腸CSCL細胞))、図4B(Colo205大腸細胞)、及び図4C(ASPC−1膵臓癌細胞)に示す。結果を表3にまとめる。
【0161】
【表3】
【0162】
実施例4 gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディの存在下におけるT細胞活性化
本発明のダイアボディの癌を治療する能力をさらに実証するために、癌細胞(colo205又はASPC−1)の存在下又は不存在下で、gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディDART‐1と共に休止ヒトT細胞をインキュベートした。gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(DART‐1)媒介性再指向殺滅プロセス中のT細胞活性化を特性決定するために、再指向殺滅アッセイからのT細胞を、T細胞活性化マーカCD25に関して染色し、FACSで分析した。CD25は、CD8(図5A〜5B)及びCD4(図5D〜5E)T細胞中において用量依存的に発現増加され、これはgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディが、再配向殺滅のプロセスにおいてT細胞活性化を誘発することを示している。対照的に、標的細胞の不在時、CD8(図5C)及びCD4(図5F)T細胞の活性化は発生せず(図5パネルC)、これは、gpA33×CD3ダイアボディが、標的細胞の不在時にT細胞を活性化させないことを示している。同様に、CD8又はCD4T細胞は、標的細胞及び対照二重特異性1価ダイアボディ(対照DART)を用いてインキュベートした場合に活性化されず(それぞれ、図5A〜5B及び図5D〜5F)、これは、gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディを用いてT細胞及び標的細胞を架橋する必要があることを示している。
【0163】
実施例5 マウス抗ヒトgpA33可変ドメイン配列を有するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(DART−1)とヒト化抗ヒトgpA33可変ドメイン配列を有するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(DART−2)の同等性
上述したとおり、gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディDART−1は、マウスモノクローナル抗体のVLgpA33及びVHgpA33ドメインを含むが、gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディDART−2は、同一のマウス抗体のヒト化VLgpA33及びヒト化VHgpA33ドメインを含む。
ヒト化VLgpA33及びVHgpA33ドメインのT細胞をgpA33発現癌細胞へのターゲッティングを促進する能力を実証するため、休止T細胞(LDHアッセイ;E:T=10:1)が存在し、DART−1、DART−2又は対照二重特異性1価ダイアボディ(対照DART)のいずれかの存在下でgpA33を発現する癌細胞をインキュベートした。この分析の結果(図6A〜6Dに示す)は、DART−1及びDART−2が、SW948結腸直腸腺癌細胞(図6A)及びcolo205細胞(図6B)について同等の細胞毒性を媒介したことを実証している。DART−1及びDART−2は、ホタルルシフェラーゼ遺伝子(luc2)が安定に導入されたルシフェラーゼ発現Colo205細胞株(Colo205−Luc)について、発光の減少が測定されたことから、両方とも細胞毒性を媒介した(図6C)。DART−1及びDART−2は、gpA33陰性癌細胞株HCT116について、いずれも細胞毒性を媒介しなかった(図6D)。表4に示すように、DART−1及びDART−2は、複数の腫瘍細胞株に対して類似の同等な生物活性を呈した。
【0164】
【表4】
【0165】
実施例6 gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ、アルブミン結合ドメインを有するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ及びIgG Fcドメインを有するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディと、カニクイザルPBMCとの交差反応性
上述したとおり、gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディDART−2のヒト化VLgpA33及びヒト化VHgpA33ドメインは、ヒトT細胞の存在下において、gpA33発現癌細胞の細胞毒性を媒介する。本発明のgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディのVLgpA33及びVHgpA33ドメインは、予想外にもカニクイザルT細胞のCD3とも結合する能力があり、それらの細胞をgpA33発現細胞の殺滅に再指向することが分かった。
【0166】
図7A〜7Dに示すように、gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディDART−2、アルブミン結合ドメインを有するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(DART−2w/ABD) 及びIgG Fcドメインを有するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(DART−2w/Fc)は全て、ヒト又はカニクイザルPBMCの存在下における癌細胞の細胞毒性を促進できることが分かった。図7A〜7Bは、LDHアッセイ(図7A)又はルシフェラーゼ(図7B)の測定により、上記3つのダイアボディが、ヒトPBMCと共にインキュベートされたColo205−Luc細胞の細胞毒性を媒介する能力を示す。図7C〜7Dは、LDHアッセイ(図7C)又はルシフェラーゼ(図7D)の測定により、上記3つのダイアボディが、ヒトPBMCと共にインキュベートされたColo205−Luc細胞の細胞毒性を媒介する同様の能力を示す。
【0167】
表5に示すように、gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディDART−2及びアルブミン結合ドメインを有するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(DART−2w/ABD)は、同等なCTL活性を示した。二重特異性1価ダイアボディは、ヒトおよびカニクイザル(cyno)のPBMCエフェクタ細胞の両方で一貫して活性を呈した。
【0168】
【表5】
【0169】
実施例7 マウス結腸癌モデルにおけるgpA33×CD3ダイアボディのインビボ反応性
本発明のgpA33×CD3ダイアボディの癌の治療を提供するインビボ能力を実証するため、活性化T細胞と共にcolo205細胞が免疫不全NSG(NOD SCIDガンマ)マウスに共埋入(co-implanted)された(Agliano, A. et al. (2008) “Human Acute Leukemia Cells Injected In NOD/Ltsz-Scid/IL-2Rgamma Null Mice Generate A Faster And More Efficient Disease Compared To Other NOD/Scid-Related Strains,” Int. J. Cancer 123(9):2222-2227、Sanchez, P.V. et al. (2009) “A Robust Xenotransplantation Model For Acute Myeloid Leukemia,” Leukemia 23(11):2109-2117、Racki, W.J. et al. (2010) “NOD-Scid IL2rgamma(Null) Mouse Model Of Human Skin Transplantation And Allograft Rejection,” Transplantation 89(5):527-536、Choi, B. et al. (2011) “Human B Cell Development And Antibody Production In Humanized NOD/SCID/IL-2Rγ(Null) (NSG) Mice Conditioned By Busulfan,” J. Clin. Immunol. 31(2):253-264、Sartelet, H. et al. (2012) “Description Of A New Xenograft Model Of Metastatic Neuroblastoma Using NOD/SCID/Il2rg Null (NSG) Mice,” In Vivo 26(1):19-29、Spranger, S. et al. (2012) “NOD/scid IL-2Rg(null) Mice: A Preclinical Model System To Evaluate Human Dendritic Cell-Based Vaccine Strategies in vivo,” J. Transl. Med. 10:30、von Bonin, M. et al. (2013) “in vivo Expansion Of Co-Transplanted T Cells Impacts On Tumor Re-Initiating Activity Of Human Acute Myeloid Leukemia In NSG Mice,” PLoS One. 8(4):e60680)。
【0170】
gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディDART−1は、マウスに、1日1回、埋入時から開始して4日間(QDx4)静脈投与された。colo205腫瘍体積は、ビヒクル対照を受容したマウスにおいて増加することが見出された(図8)。しかし、DART−1を受容した動物は、colo205腫瘍体積がより少ない又は存在しないことが示されている
図8)。
【0171】
Colo205細胞を埋入したNSGマウスの画像は、処理2日目では、ビヒクル(図9A)又はgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディDART−1(図9B)を受容したマウスが有意な腫瘍を有することを示した。しかし、処理12日目では、gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディDART−1を受容したマウスは劇的に少ない腫瘍体積であった(図9D)。処理12日目では、ビヒクルを受容したマウスは増大した腫瘍体積を示した(図9C)。
【0172】
本発明のgpA33×CD3ダイアボディの癌の治療を提供するインビボ能力をさらに証明するため、ASPC−1膵臓腫瘍細胞及び活性化ヒトT細胞(E:T=1:1)を用いて上述した腫瘍モデルを実施した。gpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディDART−1、対照二重特異性1価ダイアボディ(対照DART)、又はビヒクルを1日1回、埋入時から開始して9日間(QDx9)静脈投与した。ASPC−1腫瘍体積は、ビヒクル対照を受容したマウスにおいて増加することが見出された(図10)。しかし、DART−1を受容した動物は、用量依存的に、より少ない腫瘍体積を呈することが見出された(図10)。
【0173】
実施例8 IgG Fcドメインを有するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディのバージョン1(DART−2w/Fcバージョン1)の効能判定
IgG Fcドメインを有するgpA33×CD3ダイアボディのバージョン1(DART−2w/Fcバージョン1)の効能を実証するため、マウスは、様々な投薬量レベルで上述のDART−2w/Fcバージョン1を7日間(浸透圧ポンプを使用して)注入された。ポンプ注入から48時間後(すなわち、定常状態となったDART−2w/Fcバージョン1の循環濃度の存在下)、Colo205腫瘍細胞及びT細胞の混合物をマウスに皮下埋入し、腫瘍成長の程度を監視した。表6は、研究の設計をまとめたものであり、各グループは8匹のメスのマウスが含まれる。
【0174】
【表6】
【0175】
研究の結果は図11に示され、IgG Fcドメインを有するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(DART−2w/Fcバージョン1)の投与が、全ての試験した投薬量において、腫瘍体積の劇的な低下を媒介したことを示している。
【0176】
上記研究で得られた腫瘍体積の劇的な低下を踏まえ、より低用量での効能を評価する追加研究を実施した。表7は、追加研究の設計をまとめたものであり、各グループは8匹のメスのマウスが含まれる。
【0177】
【表7】
【0178】
この追加研究の結果は図12に示されている。図12において、各記号は、上述したIgG Fcドメインを有するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(DART−2w/Fcバージョン1)またはビヒクルの指示用量を受容した動物を意味している。
【0179】
実施例9 カニクイザルにおけるgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(DART−2)及びIgG Fcドメインを有するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(DART−2w/Fc)の薬物動態プロファイル
カニクイザルのCD3に結合する本発明のダイアボディのVLCD3 及びVHCD3ドメインの能力は、本発明のダイアボディのインビボ薬物動態を測定するために、このような動物の使用を可能にする。
【0180】
このような薬物動態を測定するために、上述したgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(DART−2)又はIgG Fcドメインを有するgpA33×CD3二重特異性1価ダイアボディ(DART−2w/Fcバージョン1)をカニクイザルに(10μg/kg/日)注入し、循環中に残っている上記分子の濃度を監視した。図13は、本研究の結果を示すものであり、DART−2及びDART−2w/Fcバージョン1が1次の脱離速度を呈することを示している。
【0181】
実施例10 gpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディ(DART−1w/Fcバージョン1)のヒト及びカニクイザルのCD3及びpA33への結合のSPR分析
ヒト及びカニクイザルのCD3受容体の可溶性バージョンに結合するgpA33×CD3二重特異性Fcダイアボディ(DART−2w/Fcバージョン1)が、BIAcore3000バイオセンサ(GE, Healthcare )でSPR分析された。受容体は、製造元が推奨した手順に従って、CM5センサーチップ上に固定化した。要約すると、センサーチップ表面上のカルボキシル基は、0.2MのN‐エチル‐N‐(3ジエチルアミノ‐プロピル)カルボジイミド、及び0.05MのN‐ヒドロキシ‐スクシンイミドを含有する溶液の注射によって活性化された。可溶性CD3受容体(1μg/ml)を、10mMの酢酸ナトリウム(pH5.0、流量5μL/分)中で、活性化されたCM5表面全体に亘って注射し、続いて不活性化のために1Mエタノールアミンを注射した。
【0182】
かかる分析に採用されたカニクイザル及びヒトのCD3の可溶性バージョンは、CD3ε/CD3δヘテロ二量体などの哺乳動物細胞で発現させ、C末端の逆帯電したヘテロ促進Eコイル及びKコイル配列ににより安定化される。可溶性カニクイザルCD3εは、V35対立遺伝子(FN18+)であるカニクイザルCD3εの最初の118アミノ酸残基と、そのカルボキシ末端に続く上述したEコイルドメイン(配列番号3)を含む。カニクイザルCD3εのV35対立遺伝子(FN18+)のアミノ酸配列は、配列番号49である。
MQSGTRWRVL GLCLLSIGVW GQDGNEEMGS ITQTPYQVSI SGTTVILTCS
QHLGSEAQWQ HNGKNKEDSG DRLFLPEFSE MEQSGYYVCY PRGSNPEDAS
HHLYLKARVC ENCMEMDVMA VATIVIVDIC ITLGLLLLVY YWSKNRKAKA
KPVTRGAGAG GRQRGQNKER PPPVPNPDYE PIRKGQQDLY SGLNQRRI
【0183】
可溶性カニクイザルCD3δは、カニクイザルCD3δの最初の101アミノ酸残基と、そのカルボキシ末端に続く上述したKコイルドメイン(配列番号4)を含む。カニクイザルCD3δのアミノ酸配列は配列番号50である。
MEHSTFLSGL VLATLLSQVS PFKIPVEELE DRVFVKCNTS VTWVEGTVGT
LLTNNTRLDL GKRILDPRGI YRCNGTDIYK DKESAVQVHY RMCQNCVELD
PATLAGIIVT DVIATLLLAL GVFCFAGHET GRLSGAADTQ ALLRNDQVYQ
PLRDRDDAQY SRLGGNWARN K
【0184】
2つのタンパク質は、哺乳動物のCHO−S細胞中で共発現(co-expressed)し、SEPHAROSE(登録商標)に結合した抗E/KコイルmAbを使用して精製した。
【0185】
可溶性ヒトCD3εは、C119S及びC122Sを備えたヒトCD3εの1〜127残基と、そのカルボキシ末端に続く上述したEコイルドメイン(配列番号3)を含む。ヒトCD3εのアミノ酸配列は配列番号51である。
MQSGTHWRVL GLCLLSVGVW GQDGNEEMGG ITQTPYKVSI SGTTVILTCP
QYPGSEILWQ HNDKNIGGDE DDKNIGSDED HLSLKEFSEL EQSGYYVCYP
RGSKPEDANF YLYLRARVCE NCMEMDVMSV ATIVIVDICI TGGLLLLVYY
WSKNRKAKAK PVTRGAGAGG RQRGQNKERP PPVPNPDYEP IRKGQRDLYS
GLNQRRI
【0186】
可溶性ヒトCD3δは、ヒトCD3δの1〜101残基と、そのカルボキシ末端に続く上述したKコイルドメイン(配列番号4)を含む。2つのタンパク質は、哺乳動物のCHO−S細胞中で共発現(co-expressed)し、抗E/Kコイルアフィニティカラムを使用して精製した。ヒトCD3δのアミノ酸配列は配列番号52である。
FKIPIEELE DRVFVNCNTS ITWVEGTVGT LLSDITRLDL GKRILDPRGI
YRCNGTDIYK DKESTVQVHY RMCQSCVELD PATVAGIIVT DVIATLLLAL
GVFCFAGHET GRLSGAADTQ ALLRNDQVYQ PLRDRDDAQY SHLGGNWARN
K
【0187】
可溶性ヒトgpA33は、カルボキシ末端に配列番号53のHHHHHH(「6His」)反復を備えたヒトgpA33の1〜235残基を含む。可溶性カニクイザルgpA33は、カルボキシ末端に6His反復を備えたカニクイザルgpA33の1〜314残基(Met1〜Gln314)を含む。タンパク質は哺乳動物のCHO−S細胞中で共発現し、Ni SEPHAROSE(登録商標)を使用して精製した。
【0188】
10mMのHEPES、pH7.4,150mMのNaCl、3mMのEDTA及び0.005%のP20界面活性剤を含有するHBS−EP緩衝液中で結合実験を実施した。0、6.25、12.5、25、50および100nMの濃度、30μL/分の流量で120秒間注射時のDART−2w/Fcバージョン1の結合を(二重に)分析した。
【0189】
固定化された受容体表面の再生成を、10mMグリシン、pH1.5のパルス注射によって実施した。基準曲線は、DART−2w/Fcの各希釈物をタンパク質が固定化されていない処理表面全体に亘って注射することによって得た。ゼロ濃度での結合曲線は、ブランクとして差し引いた。KD値は、ラングミュア1:1結合モデル(BIAevaluation(商標)ソフトウェアv4.1)に対する結合曲線のグローバルフィットによって決定した。
【0190】
gpA33×CD3二重特異性1価Fcダイアボディ(DART−2w/Fcバージョン1)のヒト及びカニクイザルのCD3及びpA33への結合のSPR分析は、2つの異なる種からの分子についてかなり類似することを実証した(図14A〜14B、図15A〜15B)。表8は、DART−2w/Fc相互作用に関する1:1ラングミュアモデルのアフィニティ及び速度定数に対するグローバルフィットにより算出した平衡解離定数(KDs)を提供する。ヒト及びカニクイザルCD3に関するDART−2w/Fcバージョン1のKD値は、2つの抗原間における最大結合応答の違いにもかかわらず、それぞれ23及び26nMと略同一である。表面上に直接固定化された異なるアミノ酸配列を有する抗原のランダム配向は、表面上の利用可能な結合部位の密度を異ならせる原因となる。DART−2w/Fcバージョン1のヒト及びサルgpA33との相互作用に関するKD値は、それぞれ2.2nM及び12nMである(表8)。アフィニティの差は、DART−2w/Fcバージョン1のカニクイザルgpA33との相互作用に関して、相対的に、会合速度定数がわずかに小さく、解離速度定数が大きいためである(表8)。データは、それぞれ二重に実施された3回の独立した実験の平均である(SD=標準偏差、hはヒト、cynoはカニクイザル)。
【0191】
【表8】
【0192】
本明細書において言及されている全ての公刊物及び特許は、個々の公刊物又は特許出願それぞれの全体が参照により本明細書に援用されていることが具体的かつ独立に指示されている場合と同程度に、参照により本明細書に援用されている。本発明をその具体的実施形態に関して説明したが、更なる修正形態が可能であり、本出願は、本発明が属する分野の公知の方法又は慣例の範囲内であるような、及びこれまでに挙げた必須の特徴に適用できるような、本開示からの逸脱を含む、本発明の原理に概ね従う本発明のいずれの変形、使用又は改変を包含することを意図していることを理解されたい。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8
図9-1】
図9-2】
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]