特許第6582016号(P6582016)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6582016-電気接続箱 図000002
  • 特許6582016-電気接続箱 図000003
  • 特許6582016-電気接続箱 図000004
  • 特許6582016-電気接続箱 図000005
  • 特許6582016-電気接続箱 図000006
  • 特許6582016-電気接続箱 図000007
  • 特許6582016-電気接続箱 図000008
  • 特許6582016-電気接続箱 図000009
  • 特許6582016-電気接続箱 図000010
  • 特許6582016-電気接続箱 図000011
  • 特許6582016-電気接続箱 図000012
  • 特許6582016-電気接続箱 図000013
  • 特許6582016-電気接続箱 図000014
  • 特許6582016-電気接続箱 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6582016
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/14 20060101AFI20190912BHJP
   H02G 3/16 20060101ALI20190912BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20190912BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   H02G3/14
   H02G3/16
   B60R16/02 610B
   H05K5/02 L
   H05K5/02 T
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-102026(P2017-102026)
(22)【出願日】2017年5月23日
(65)【公開番号】特開2018-198486(P2018-198486A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2018年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】清田 浩孝
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−82858(JP,A)
【文献】 特開2016−174515(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/013375(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/14
H02G 3/16
B60R 16/02
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の内側壁部と、前記内側壁部を囲む筒状の外側壁部とを有し、前記内側壁部の内方に電子部品を収容するフレームと、
前記外側壁部の下端を閉塞するロアカバーと、
前記ロアカバーよりも内側に配置され、前記内側壁部の下端を閉塞するインナカバーと、
を備え
前記フレームは、前記内側壁部および前記外側壁部と一体に形成され、かつ前記外側壁部から外側に向けて突出した半筒形状の第一半筒部を有し、
前記インナカバーは、前記内側壁部の下端を閉塞する本体と、前記本体から外側に向けて突出した半筒形状の第二半筒部を有し、
前記本体が前記内側壁部の下端を閉塞した状態で前記第一半筒部と前記第二半筒部とによって筒部が形成され、
前記電子部品に接続された電線が前記筒部に挿通される
ことを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記インナカバーの外側面が前記ロアカバーの内側面から離間している
請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記インナカバーの外側面と前記ロアカバーの内側面との隙間の大きさは、前記ロアカバーの底壁部へ向かうに従って大きくなる
請求項2に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記本体の外側面には、前記内側壁部の下端に当接する線状のリブが形成されており、
前記リブは、前記第二半筒部とつながっている
請求項1から3の何れか1項に記載の電気接続箱。
【請求項5】
前記ロアカバーの側壁部が前記外側壁部と前記内側壁部との間に挿入される
請求項1からの何れか1項に記載の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防水のための構造を有する電気接続箱がある。特許文献1には、蓋体と内部回路の間に内部回路を覆う内蓋を配設する一方、内蓋に設けられた係合部に対して、蓋体の係止部を離脱可能に係止することにより、蓋体がケースに対して着脱可能に固定されるようにした電気接続箱の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−82858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気接続箱における防水性を向上させることについて、なお改良の余地がある。例えば、電気接続箱の下部から水が浸入した場合に、浸入した水から電子部品を保護できることが望ましい。
【0005】
本発明の目的は、下部から浸入する水に対して電子部品を保護することができる電気接続箱を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気接続箱は、筒状の内側壁部と、前記内側壁部を囲む筒状の外側壁部とを有し、前記内側壁部の内方に電子部品を収容するフレームと、前記外側壁部の下端を閉塞するロアカバーと、前記ロアカバーよりも内側に配置され、前記内側壁部の下端を閉塞するインナカバーと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電気接続箱は、筒状の内側壁部と、内側壁部を囲む筒状の外側壁部とを有し、内側壁部の内方に電子部品を収容するフレームと、外側壁部の下端を閉塞するロアカバーと、ロアカバーよりも内側に配置され、内側壁部の下端を閉塞するインナカバーと、を備える。本発明に係る電気接続箱によれば、内側壁部の下端がインナフレームによって閉塞される。よって、本発明に係る電気接続箱は、下部から浸入する水に対して電子部品を保護することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る電気接続箱の斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る電気接続箱の正面図である。
図3図3は、車両における電気接続箱の搭載位置の一例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る電気接続箱の分解斜視図である。
図5図5は、実施形態に係るフレームの平面図である。
図6図6は、実施形態に係るインナカバーの平面図である。
図7図7は、実施形態に係るインナカバーの側面図である。
図8図8は、実施形態に係るロアカバーの平面図である。
図9図9は、実施形態に係る電気接続箱の断面図である。
図10図10は、実施形態に係る電気接続箱の他の断面図である。
図11図11は、実施形態にかかる電気接続箱の断面斜視図である。
図12図12は、電子部品が収容された電気接続箱の断面図である。
図13図13は、水に浸かった電気接続箱の断面図である。
図14図14は、浸入する水の経路を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係る電気接続箱につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
図1から図14を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、電気接続箱に関する。図1は、実施形態に係る電気接続箱の斜視図、図2は、実施形態に係る電気接続箱の正面図、図3は、車両における電気接続箱の搭載位置の一例を示す図、図4は、実施形態に係る電気接続箱の分解斜視図、図5は、実施形態に係るフレームの平面図、図6は、実施形態に係るインナカバーの平面図、図7は、実施形態に係るインナカバーの側面図、図8は、実施形態に係るロアカバーの平面図である。
【0011】
図1および図2に示すように、本実施形態の電気接続箱1は、アッパカバー2、フレーム3、インナカバー4、およびロアカバー5を有する。電気接続箱1の各部材は、例えば、絶縁性の合成樹脂によって成型される。電気接続箱1は、電線Wと共にワイヤハーネスWHを構成する。ワイヤハーネスWHは、自動車等の車両に搭載され、車両に搭載される各装置間を接続する。ワイヤハーネスWHは、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線Wを有する。各電線Wの一端は、電気接続箱1内に収納されている電子部品と接続される。各電線Wの他端は、コネクタ等を介してバッテリや電装部品等の各装置(外部機器)と接続される。
【0012】
電気接続箱1は、収容する電子部品の種類に応じてジャンクションボックス、ヒューズボックス、リレーボックスなどとも呼ばれる場合があるが、本実施形態ではこれらを総称して「電気接続箱」と呼ぶ。
【0013】
本実施形態の電気接続箱1は、例えば、図3に示すように車両100に搭載される。電気接続箱1は、例えば、車両100の前部のエンジンコンパートメントに配置される。電気接続箱1には、例えば、図12等に示すように複数のリレー7が収容される。本実施形態の電気接続箱1は、バッテリ等の電源と電装部品との間に介在している。電気接続箱1は、電源から電装部品に対する電力の供給を制御する。
【0014】
本実施形態の電気接続箱1の形状は、直方体形状である。図1および図2に示すように、電気接続箱1は、外側に向けて突出する筒部8を有する。筒部8は、電気接続箱1の内部空間と外部空間とを連通している。筒部8には、複数の電線Wが挿通される。電線Wの一端は、電気接続箱1の内部に収容されたリレー7に対して電気的に接続される。電線Wの他端は、電源や電装部品に対して電気的に接続される。電線Wは、芯線が絶縁被覆によって覆われた被覆電線である。
【0015】
フレーム3は、図4および図5に示すように、筒状の内側壁部31、筒状の外側壁部32、および第一半筒部33を有する。内側壁部31、外側壁部32、および第一半筒部33は、絶縁性の合成樹脂等によって一体に成型されている。内側壁部31および外側壁部32は、それぞれ軸方向Zの両端が開放した筒形状の構成部である。本実施形態の内側壁部31および外側壁部32の断面形状は、矩形である。すなわち、本実施形態の内側壁部31および外側壁部32は、角筒形状の構成部である。
【0016】
外側壁部32は、内側壁部31を囲んでおり、内側壁部31と共に二重壁を構成している。外側壁部32は、内側壁部31の外側面との間に間隔をあけて設けられている。つまり、外側壁部32の内側面と内側壁部31の外側面とは隙間をあけて互いに対向している。内側壁部31の上端および外側壁部32の上端は、同じ高さ位置にある。内側壁部31の下端31eは、外側壁部32の下端32eよりも下方に向けて突出している。ただし、外側壁部32の突出部32dは、内側壁部31の下端31eと同じ高さ位置まで突出している。
【0017】
第一半筒部33は、半円筒形状の構成部である。第一半筒部33は、内側壁部31および外側壁部32の両方とつながっている。第一半筒部33の基端は、内側壁部31につながっている。第一半筒部33の先端は、外側壁部32から外側に向けて突出している。第一半筒部33は、先端へ向かうに従って下方に向かうように傾斜している。
【0018】
外側壁部32は、前壁32a、後壁32b、および一対の側壁32c,32cを有する。前壁32aと後壁32bとは互いに対向している。一対の側壁32c,32cは互いに対向している。本明細書では、側壁32c,32cが対向する方向を「幅方向X」と称し、前壁32aと後壁32bとが対向する方向を「奥行き方向Y」と称する。幅方向Xと奥行き方向Yとは直交している。また、幅方向Xおよび奥行き方向Yは、フレーム3の軸方向Zと直交している。一対の側壁32c,32cは、それぞれ前壁32aの端部と後壁32bの端部とを奥行き方向Yにつないでいる。本実施形態の電気接続箱1は、例えば、前壁32aと後壁32bとが車両前後方向において対向するように車両100に搭載される。また、電気接続箱1は、例えば、前壁32aが車両前側を向くように車両100に搭載される。
【0019】
前壁32aは、下側に向けて突出する突出部32dを有する。第一半筒部33の外周面は、突出部32dにつながっている。突出部32dの形状は、フレーム3の軸方向Zに沿って下側へ向かうに従って幅方向Xの長さが小さくなる先細形状である。
【0020】
外側壁部32の下部には、複数の第一係止部34が設けられている。第一係止部34は、ロアカバー5の被係止部54を係止する。第一係止部34は、被係止部54が挿通される挿通部と、被係止部54の突起部を係止する係止面とを有する。第一係止部34は、外側壁部32の各壁32a,32b,32c,32cにそれぞれ設けられている。前壁32aには、突出部32dの両側に一つずつ第一係止部34が配置されている。
【0021】
外側壁部32の上部には、複数の第二係止部35が設けられている。第二係止部35は、アッパカバー2の被係止部21を係止する。第二係止部35は、被係止部21が挿入される挿入部と、被係止部21の突起部を係止する係止面とを有する。第二係止部35は、側壁32c,32cに一つずつ配置されている。
【0022】
内側壁部31は、前壁31a、後壁31b、および一対の側壁31c,31cを有する。前壁31aと後壁31bとは奥行き方向Yにおいて互いに対向している。一対の側壁31c,31cは、幅方向Xにおいて互いに対向している。一対の側壁31c,31cは、それぞれ前壁31aの端部と後壁31bの端部とを奥行き方向Yにつないでいる。前壁31aは、外側壁部32の前壁32aと対向している。後壁31bは、外側壁部32の後壁32bと対向している。側壁31c,31cは、外側壁部32の側壁32c,32cと対向している。
【0023】
内側壁部31の下部には、複数の第三係止部36が設けられている。第三係止部36は、インナカバー4の被係止部46を係止する。第三係止部36は、被係止部46が挿通される挿通部と、被係止部46の突起部を係止する係止面とを有する。第三係止部36は、側壁31c,31cに一つずつ配置されている。
【0024】
アッパカバー2は、フレーム3の上端を閉塞する蓋状の部材である。アッパカバー2には、複数の被係止部21が設けられている。被係止部21は、フレーム3の第二係止部35によって係止されることにより、アッパカバー2をフレーム3に固定する。
【0025】
インナカバー4は、内側壁部31の下端31eを閉塞するカバー部材である。図4図6、および図7に示すように、インナカバー4は、本体41および第二半筒部42を有する。本体41と第二半筒部42とは絶縁性の合成樹脂等によって一体に成型されている。本体41は、インナカバー4の主体部分であり、内側壁部31の下端31eを閉塞する。本体41は、底壁部43、斜壁部44、および縦壁部45を有する。
【0026】
底壁部43は、フレーム3の下側の開口部と対向する壁部である。底壁部43は、例えば、軸方向Zと直交する。斜壁部44は、断面形状が矩形の筒状の構成部である。斜壁部44の断面形状は、フレーム3の軸方向Zに沿って変化する。斜壁部44は、前壁44a、後壁44b、および一対の側壁44c,44cを有する。一対の側壁44c,44cは、それぞれ前壁44aの端部と後壁44bの端部とを奥行き方向Yにつないでいる。本実施形態の斜壁部44では、それぞれの壁44a,44b,44cが軸方向Zに対して傾斜している。斜壁部44の断面積は、フレーム3の軸方向Zに沿って底壁部43側へ向かうに従って小さくなる。つまり、斜壁部44の断面積は、車両上下方向の下側へ向かうに従って小さくなる。斜壁部44の下端は、底壁部43によって閉塞されている。底壁部43には、貫通孔43aが設けられている。貫通孔43aは、底壁部43における幅方向Xの中央部で、かつ後壁44bの近傍に形成されている。底壁部43に溜まった水は、貫通孔43から排出される。
【0027】
縦壁部45は、斜壁部44の上端から上側に向けて突出している。縦壁部45は、フレーム3の軸方向Zと平行な壁部である。縦壁部45は、断面形状が矩形の筒状の構成部である。縦壁部45は、前壁45a、後壁45b、および一対の側壁45c,45cを有する。前壁44aおよび後壁44bは、内側壁部31の前壁31aおよび後壁31bに対応する。側壁45c,45cは、内側壁部31の側壁31c,31cに対応する。一対の側壁45c,45cは、それぞれ前壁45aの端部と後壁45bの端部とを奥行き方向Yにつないでいる。
【0028】
縦壁部45の外側面には、リブ48が形成されている。本実施形態のリブ48は、線状の突起部である。リブ48は、縦壁部45を取り巻くように、縦壁部45の略全周にわたって延在している。リブ48の両端は、それぞれ第二半筒部42につながっている。より詳しくは、リブ48の一端48aは、第二半筒部42における幅方向Xの一端につながっている。リブ48の他端48bは、第二半筒部42における幅方向Xの他端につながっている。リブ48の一端48aおよび他端48bは、それぞれ第二半筒部42の上端につながっている。リブ48は、一端48aから前壁45a、一方の側壁45c、後壁45b、および他方の側壁45cを経由し、他端48bまで連続している。
【0029】
縦壁部45には、複数の被係止部46が設けられている。被係止部46は、リブ48の先端面につながっており、リブ48から上側に向けて突出している。被係止部46は、側壁45c,45cに一つずつ配置されている。被係止部46は、フレーム3の第三係止部36によって係止されることにより、インナカバー4をフレーム3に固定する。
【0030】
第二半筒部42は、半円筒形状の構成部である。第二半筒部42は、縦壁部45の前壁45aおよび斜壁部44の前壁44aにつながっている。第二半筒部42は、前壁44a,45aの外側面から外側に向けて突出している。第二半筒部42は、先端へ向かうに従って下方に向かうように傾斜している。第二半筒部42には、板部47が設けられている。板部47は、第二半筒部42の外周面から下側に向けて突出している。板部47は、平板状の構成部であり、下側へ向かうに従って幅方向Xの長さが小さくなる先細形状である。板部47は、フレーム3の突出部32dの下端に当接する位置に配置されている。
【0031】
ロアカバー5は、有底の筒状の部材である。図4および図8に示すように、ロアカバー5は、底壁部51および側壁部52を有する。側壁部52は、筒状の構成部である。本実施形態の側壁部52の断面形状は、矩形である。側壁部52は、前壁52a、後壁52b、および一対の側壁52c,52cを有する。前壁52aと後壁52bとは奥行き方向Yにおいて互いに対向している。一対の側壁52c,52cは幅方向Xにおいて互いに対向している。一対の側壁52c,52cは、それぞれ前壁52aの端部と後壁52bの端部とを奥行き方向Yにつないでいる。前壁52aは、外側壁部32の前壁32aと対応する壁部である。後壁52bは、外側壁部32の後壁32bと対応する壁部である。側壁52c,52cは、外側壁部32の側壁32c,32cと対応する壁部である。
【0032】
前壁52aは、切欠き部53を有する。切欠き部53は、前壁52aの上部でかつ幅方向Xの中央部に位置している。切欠き部53は、下側切欠き部53aおよび上側切欠き部53bを有する。下側切欠き部53aは、インナカバー4の第二半筒部42に対応する。下側切欠き部53aの形状は、半円形である。上側切欠き部53bは、フレーム3の突出部32dに対応する。上側切欠き部53bの形状は、台形である。上側切欠き部53bの幅方向Xの長さは、下側へ向かうに従って小さくなる。
【0033】
側壁部52の外側面には、フレーム3の軸方向Zと直交する方向に向けて突出するリブ55が形成されている。リブ55は、側壁部52の外側面の全周にわたって形成されている。すなわち、リブ55は、前壁52a、一方の側壁52c、後壁52b、および他方の側壁52cのそれぞれを横断しており、側壁部52の外側面を取り巻いている。リブ55は、後壁52bおよび一対の側壁52c,52cでは直線状に延在している。
【0034】
リブ55は、前壁52aにおいては切欠き53の形状に応じて屈曲している。より詳しくは、前壁52aに形成されたリブ55は、一対の第一傾斜部55a,55a、第一段部55b、一対の第二傾斜部55c,55c、および第二段部55dを有する。第一傾斜部55aおよび第二傾斜部55cは、それぞれフレーム3の軸方向Zに対して傾斜している。一対の傾斜部55a,55aおよび一対の傾斜部55c,55cは、下側へ向かうに従って互いに近づくように傾斜している。第一段部55bは、第一傾斜部55aの下端と第二傾斜部55cの上端とをつないでいる。第二段部55dは、一対の第二傾斜部55c,55cの下端同士をつないでいる。
【0035】
第一傾斜部55aおよび第一段部55bの形状は、フレーム3の突出部32dの形状に対応している。第一傾斜部55aおよび第一段部55bは、突出部32dを下方から支持することができる。第二傾斜部55cおよび第二段部55dの形状は、インナカバー4の板部47の形状に対応している。第二傾斜部55cおよび第二段部55dは、板部47を下方から支持することができる。
【0036】
側壁部52の上部には、複数の被係止部54が設けられている。被係止部54は、各壁52a,52b,52c,52cに配置されている。前壁52aには、切欠き部53の両側に一つずつ被係止部54が配置されている。被係止部54は、フレーム3の第一係止部34によって係止されることにより、ロアカバー5をフレーム3に固定する。
【0037】
底壁部51は、側壁部52の下側の端部を閉塞している。底壁部51には、貫通孔51aが設けられている。貫通孔51aは、底壁部51における幅方向Xの中央部で、かつ後壁52bの近傍に形成されている。ロアカバー5の内側に浸入した水は、貫通孔51aから排出される。
【0038】
図9は、図2のIX-IX断面図である。図9に示すように、ロアカバー5の側壁部52は、フレーム3の外側壁部32と内側壁部31との間に挿入される。例えば、側壁部52の前壁52aは、外側壁部32の前壁32aと内側壁部31の前壁31aとの間に挿入される。側壁部52の後壁52bは、外側壁部32の後壁32bと内側壁部31の後壁31bとの間に挿入される。ロアカバー5のリブ55は、外側壁部32の下端32eに当接する。すなわち、ロアカバー5は、リブ55、側壁部52、および底壁部51によって外側壁部32の下端32eを閉塞する。内側壁部31および外側壁部32によって構成される二重壁の間に側壁部52が挿入されることで、フレーム3とロアカバー5との隙間からの浸水が抑制される。また、リブ55が外側壁部32の下端32eに当接することで、フレーム3とロアカバー5との間に隙間が発生しにくくなっている。
【0039】
インナカバー4の縦壁部45は、内側壁部31に挿入され、内側壁部31と嵌合する。リブ48は、内側壁部31の下端31eに当接する。すなわち、インナカバー4は、リブ48、縦壁部45、斜壁部44、および底壁部43によって内側壁部31の下端31eを閉塞する。
【0040】
図9に示すように、筒部8は、第一半筒部33と第二半筒部42とによって形成される。インナカバー4の本体41が内側壁部31の下端31eを閉塞すると、第二半筒部42が第一半筒部33に当接する。第一半筒部33と第二半筒部42とが互いに当接することにより、円筒形状の筒部8が構成される。
【0041】
図10は、図2のX-X断面図であり、図11は、当該断面の斜視図である。図10および図11に示すように、筒部8は、内側壁部31よりも内方の空間と電気接続箱1の外部空間とを連通している。インナカバー4の板部47は、ロアカバー5の第二段部55dによって支持される。また、板部47は、ロアカバー5の前壁52aと対向している。板部47と前壁52aとの隙間は十分に狭く、外部からの浸水を抑制することが可能である。
【0042】
図12に示すように、フレーム3の内部には、電子部品が収容される。本実施形態のフレーム3は、電子部品としてリレー7を収容する。リレー7は、内側壁部31よりも内側の収容空間37に収容される。なお、リレー7の一部は、収容空間37からアッパカバー2側に突出していてもよい。リレー7は、例えば、ブロック6によって保持される。ブロック6は、絶縁性の合成樹脂によって成型された部材であり、フレーム3によって保持される。リレー7は、例えば、上方からブロック6に対して挿入されてブロック6と係合している。
【0043】
リレー7の端子部には、電線Wが電気的に接続されている。電線Wは、ブロック6から下方に向けて引き出される。複数の電線Wは、電線束BWに束ねられ、筒部8に挿通される。電線束BWは、コルゲートチューブ等の外装部材によって覆われてもよい。電線束BWと筒部8の内周面との隙間は、例えば、シール材によって充填される。電線束BWが外装部材によって覆われる場合には、外装部材と筒部8との隙間がシール材によって充填される。充填されたシール材は、筒部8を通って電気接続箱1の内部へ水が浸入することを規制する。
【0044】
本実施形態の電気接続箱1は、以下に説明するように、電気接続箱1の下部から内部に浸水したとしても電子部品が浸水の影響を受けにくいように構成されている。電気接続箱1の内部に水が浸入する場面としては、例えば、車両100が渡河する場合が挙げられる。図3に示すように車両100が水に進入する場合、図13に示すように電気接続箱1が一時的に水に浸かることがある。その結果、電気接続箱1の内部に水が浸入してしまう可能性がある。例えば、フレーム3とロアカバー5との隙間から水が浸入することが想定される。
【0045】
本実施形態の電気接続箱1は、図14に矢印Y1で示すように、内部に浸入する水を貯水部56に導く。貯水部56は、インナカバー4とロアカバー5との間の空間部である。より詳しくは、貯水部56は、ロアカバー5の側壁部52および底壁部51と、インナカバー4の斜壁部44および底壁部43との間の空間部である。本実施形態の電気接続箱1では、インナカバー4の外側面4a,4bがロアカバー5の内側面5a,5bから離間している。なお、外側面4aは、斜壁部44の外側の面であり、外側面4bは、底壁部43の外側の面である。また、内側面5aは、側壁部52の内側の面であり、内側面5bは、底壁部51の内側の面である。インナカバー4およびロアカバー5がフレーム3に対して組み付けられた状態において、外側面4aは、内側面5a,5bから離間しており、かつ外側面4bは、内側面5bから離間している。これにより、インナカバー4とロアカバー5との間には、浸入した水を貯留可能な貯水部56が形成される。
【0046】
ロアカバー5の側壁部52とフレーム3の外側壁部32との隙間から水が浸入してくると、その水は側壁部52と内側壁部31との隙間を通って貯水部56に導かれる。水は、側壁部52の内側面5aに沿って貯水部56に流れ込む。本実施形態の電気接続箱1では、内側壁部31が外側壁部32よりも下方まで延在している。言い換えると、フレーム3の軸方向Zにおいて、内側壁部31と側壁部52とが対向している範囲が長い。よって、浸入する水の勢いが弱くなり、飛沫等が発生しにくい。
【0047】
また、本実施形態の電気接続箱1では、インナカバー4が内側壁部31の下端31eを閉塞している。インナカバー4は、電子部品が収容される収容空間37と貯水部56とを仕切っている。インナカバー4は、貯水部56の水が内側壁部31よりも内側の収容空間37に浸入することを規制する。車両100の振動等によって貯水部56の水から飛沫が発生したとしても、インナカバー4が飛沫をブロックする。よって、電子部品に水が掛かることが抑制される。インナカバー4の縦壁部45は、内側壁部31に挿入されて内側壁部31に嵌合している。従って、内側壁部31と側壁部52との隙間から浸入してくる水がインナカバー4と内側壁部31との隙間に入り込みにくくなっている。
【0048】
また、本実施形態の電気接続箱1では、インナカバー4の外側面4aとロアカバー5の内側面5aとの隙間の大きさは、ロアカバー5の底壁部51へ向かうに従って大きくなる。本実施形態のインナカバー4は、斜壁部44を有する。斜壁部44の外側面4aと側壁部52の内側面5aとの隙間の大きさは、フレーム3の軸方向Zに沿って底壁部51へ向かうに従って大きくなる。よって、本実施形態の電気接続箱1では、貯水部56の容量を十分に確保し、電子部品を収容する収容空間37への浸水を抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態の電気接続箱1では、インナカバー4のリブ48が内側壁部31の下端31eに当接する。貯水部56の水位がインナカバー4の外側面4a,4bまで上昇すると、インナカバー4に浮力が作用する。浮力によってリブ48が内側壁部31の下端31eに向けて押し付けられ、下端31eに密着する。よって、内側壁部31の内方への浸水が抑制される。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の電気接続箱1は、フレーム3と、ロアカバー5と、インナカバー4とを有する。フレーム3は、筒状の内側壁部31と、内側壁部31を囲む筒状の外側壁部32とを有し、内側壁部31の内方に電子部品を収容する。ロアカバー5は、外側壁部32の下端32eを閉塞する。インナカバー4は、ロアカバー5よりも内側に配置され、内側壁部31の下端31eを閉塞する。本実施形態の電気接続箱1は、内側壁部31の下端31eを閉塞するインナカバー4を有することにより、電気接続箱1の下部から浸入した水に対して電子部品を保護できる。
【0051】
また、本実施形態の電気接続箱1では、インナカバー4の外側面4a,4bがロアカバー5の内側面5a,5bから離間している。従って、インナカバー4とロアカバー5との間に貯水部56が形成される。電気接続箱1の内部に侵入した水を貯水部56に留めることで電子部品を水から保護することができる。
【0052】
また、本実施形態の電気接続箱1では、インナカバー4の外側面4aとロアカバー5の内側面5aとの隙間の大きさは、ロアカバー5の底壁部51へ向かうに従って大きくなる。よって、本実施形態の電気接続箱1は、十分な容量の貯水部56を確保することができる。
【0053】
本実施形態のフレーム3は、半筒形状の第一半筒部33を有する。第一半筒部33は、内側壁部31および外側壁部32と一体に形成され、かつ外側壁部32から外側に向けて突出している。インナカバー4は、本体41および半筒形状の第二半筒部42を有する。本体41は、内側壁部31の下端31eを閉塞する。第二半筒部42は、本体41から外側に向けて突出している。本体41が内側壁部31の下端31eを閉塞した状態で第一半筒部33と第二半筒部42とによって筒部8が形成される。電子部品に接続された電線Wは、筒部8に挿通される。筒部8がフレーム3の第一半筒部33とインナカバー4の第二半筒部42とによって形成されることで、ロアカバー5は筒部8とは別の部材となる。よって、筒部8の近傍から電気接続箱1の内部に浸入する水を貯水部56に導きやすくなる。電線Wと筒部8との隙間をシール材によって閉塞すれば、電子部品を収容する収容空間37への浸水が好適に抑制される。
【0054】
本実施形態の電気接続箱1では、インナカバー4の本体41の外側面には、リブ48が形成されている。リブ48は、内側壁部31の下端31eに当接する線状の突起である。リブ48は、第二半筒部42とつながっている。よって、インナカバー4は、リブ48によって内側壁部31の下端31eを閉塞しつつ筒部8を構成することができる。
【0055】
また、本実施形態の電気接続箱1では、ロアカバー5の側壁部52がフレーム3の外側壁部32と内側壁部31との間に挿入される。側壁部52が外側壁部32と内側壁部31との間に挿入されることで、ロアカバー5とフレーム3との見切り位置が高くなる。見切り位置が高くなることで、電気接続箱1の外部の水位が同じ水位であっても、電気接続箱1の内部に水が浸入しにくい。
【0056】
[実施形態の変形例]
実施形態の変形例について説明する。フレーム3、インナカバー4、およびロアカバー5の形状は、例示したものには限定されない。例えば、インナカバー4において、内側壁部31の下端31eを閉塞する部分の形状や閉塞の仕方は、例示したものには限定されない。ロアカバー5において、外側壁部32の下端32eを閉塞する部分の形状や閉塞の仕方は、例示したものには限定されない。
【0057】
収容空間37に収容される電子部品は、リレー7には限定されない。電子部品は、ヒューズ等の他の電子部品であってもよい。また、収容空間37には、複数の種類の電子部品が収容されてもよい。
【0058】
車両100に搭載されるときの電気接続箱1の向きは、例示したものには限定されない。電気接続箱1は、例えば、前壁32aが車両後方を向くように搭載されても、前壁32aが車両側方を向くように搭載されても、前壁32aがその他の方向を向くように搭載されてもよい。
【0059】
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行されてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 電気接続箱
2 アッパカバー
3 フレーム
4 インナカバー
5 ロアカバー
6 ブロック
7 リレー
8 筒部
21 被係止部
31 内側壁部
32 外側壁部
31a,32a 前壁
31b,32b 後壁
31c,32c 側壁
32d 突出部
31e,32e 下端
33 第一半筒部
34 第一係止部
35 第二係止部
36 第三係止部
37 収容空間
41 本体
42 第二半筒部
43 底壁部
43a 貫通孔
44 斜壁部
45 縦壁部
44a,45a 前壁
44b,45b 後壁
44c,45c 側壁
46 被係止部
47 板部
48 リブ
51 底壁部
52 側壁部
52a 前壁
52b 後壁
52c 側壁
53 切欠き部
53a 下側切欠き部
53b 上側切欠き部
54 被係止部
55 リブ
55a 第一傾斜部
55b 第一段部
55c 第二傾斜部
55d 第二段部
56 貯水部
W 電線
BW 電線束
X 幅方向
Y 奥行き方向
Z 軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14