(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6582034
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】スピーカ装置
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20190912BHJP
H04R 5/02 20060101ALI20190912BHJP
H04R 5/033 20060101ALI20190912BHJP
H04R 1/28 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
H04R1/00 318D
H04R5/02 Z
H04R5/033 Z
H04R1/28 310E
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-200809(P2017-200809)
(22)【出願日】2017年10月17日
(65)【公開番号】特開2019-75708(P2019-75708A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2019年4月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517078460
【氏名又は名称】自在設計合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】八田 敦司
【審査官】
篠田 享佑
(56)【参考文献】
【文献】
特許第6205668(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00
H04R 1/28
H04R 5/02
H04R 5/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
U字状に湾曲する支持体と、前記支持体の両側にそれぞれ設けられたハウジングと、前記ハウジングに取り付けられたスピーカユニットとを備えるスピーカ装置であって、
前記支持体は、中空状に形成されて、少なくとも一部にドロンコーンが設けられており、
前記ドロンコーンは、弾性材料からなる保持部材と、前記保持部材に保持された振動部材とを備え、内部を介して両側の前記ハウジング同士を連通するように、全体として筒状に構成され、
前記保持部材は、可撓性の管体からなり、
前記振動部材は、中空円板状の部材であり、
前記振動部材の中空部に前記保持部材が挿通されているスピーカ装置。
【請求項2】
前記振動部材は、筒状の長手方向に間隔をあけて複数配置されている請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記ドロンコーンを覆う筒状のカバーを更に備える請求項1または2に記載のスピーカ装置。
【請求項4】
前記ドロンコーンは、首掛け時に使用者の後頚部のあたりに配置されるように、前記支持体の中央部に設けられている請求項1から3のいずれかに記載のスピーカ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ装置に関し、より詳しくは、使用者が首に掛けて使用することができるスピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音響再生装置で再生された音声や音楽を聞くための装置として、ヘッドホンやイヤホンが従来から広く用いられている。ヘッドホンやイヤホンは、携帯型プレーヤーと共に持ち運びが容易なため、移動時や外出時等にも使用することができるが、両耳に装着すると外部の音がほとんど遮断されてしまうため、歩行中や自転車走行中などに事故の危険性が高まるおそれがある。
【0003】
このため、耳には直接装着せずに、使用者が首に掛けた状態で両耳の近傍にスピーカが配置される首掛け用のスピーカが知られている。例えば、特許文献1には、スピーカを備えるケースを首掛け部の両側に取り付けて、ケースの放音口からの音響で形成される音像を、使用者の前面側に定位させるように構成されたネックスピーカ装置が開示されている。ケースの側面にはバスレフ孔が形成されており、低音再生の向上が図られている。
【0004】
上記特許文献1に開示された装置は、ケースからの低音再生がヘルムホルツ共鳴を利用して行われる。ヘルムホルツの共振周波数は、ケースの内容積や、バスレフ孔の形状・大きさ等に基づき求めることができるが、良好な低音再生を行うためにはケースの大きさが過大になるため、実用性の面で問題があった。 更に、音の再生が専ら2つのケースから行われて音像定位されるため、音の立体感に乏しく、自然な臨場感やサラウンド感が得られ難いという問題もあった。
【0005】
また、特許文献2には、左右のスピーカが可撓性のダクトにより連結され、ダクトの中央部にドロンコーン(パッシブラジエータ)が設けられたウエアラブルスピーカ装置が開示されている。
【0006】
ところが、特許文献2に開示されたウエアラブルスピーカ装置のドロンコーンは、平面的形状の振動板をその周囲に設けられたエッジで支持する一般的な構成であり、良好な低音再生を得るためには、振動板が大きくなるため、これを収容するハウジングも大型化する必要がある。このため、ウエアラブルスピーカ装置を首に掛けるとハウジングのエッジ等が首の後頚部等に当たって装用感が悪くなるため、首掛け用に適するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−178384号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/0126760(
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、首に掛けたときの装用感を良好に維持しつつ、臨場感に優れる音響再生を行うことができるスピーカ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の前記目的は、U字状に湾曲する支持体と、前記支持体の両側にそれぞれ設けられたハウジングと、前記ハウジングに取り付けられたスピーカユニットとを備えるスピーカ装置であって、前記支持体は、中空状に形成されて、少なくとも一部にドロンコーンが設けられており、前記ドロンコーンは、弾性材料からなる保持部材と、前記保持部材に保持された振動部材とを備え、内部を介して両側の前記ハウジング同士を連通するように、全体として筒状に構成され
、前記保持部材は、可撓性の管体からなり、前記振動部材は、中空円板状の部材であり、前記振動部材の中空部に前記保持部材が挿通されているスピーカ装置により達成される。
【0010】
このスピーカ装置において、前記振動部材は、筒状の長手方向に間隔をあけて複数配置されていることが好ましい
。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスピーカ装置の正面図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係るスピーカ装置の要部を示す正面図である。
【
図6】本発明の更に他の実施形態に係るスピーカ装置の要部を示す正面図である。
【
図7】本発明の更に他の実施形態に係るスピーカ装置の要部を示す正面図である。
【
図8】本発明の更に他の実施形態に係るスピーカ装置の要部を示す断面図である。
【
図9】本発明の更に他の実施形態に係るスピーカ装置の要部を示す断面図である。
【
図10】本発明の更に他の実施形態に係るスピーカ装置の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るスピーカ装置の正面図であり、
図2は、
図1に示すスピーカ装置の縦断面図である。
図1および
図2に示すように、スピーカ装置1は、支持体10と、支持体10の両側にそれぞれ設けられた密閉可能なハウジング20,20と、ハウジング20,20に取り付けられたスピーカユニット30,30とを備えている。
【0015】
支持体10は、中空状に形成されて両側をU字状に湾曲させた形状を有しており、一対の連結筒11,11と、これら連結筒11,11の間に配置されたドロンコーン13とを備えている。各連結筒11は、例えば合成樹脂等から形成することができ、一端側がハウジング20の内部と連通するように連結され、他端側に先細の装着部12が設けられている。支持体10は、使用者の首に掛けたときに安定する形状であることが好ましいが、実際の使用時には必ずしも首に掛ける必要はなく、例えば、襟にピン、ボタン、フック等で留めて使用することもできる。支持体10は、表面が滑らかに形成されていることが好ましい。
【0016】
ドロンコーン13は、保持部材14と、保持部材14に保持された振動部材15とを備え、保持部材14および振動部材15によって振動系が構成されている。保持部材14は、ゴムや樹脂等の弾性材料により形成されて円弧状に湾曲する可撓性の管体であり、両端が各装着部12に装着されている。保持部材14は、予め湾曲状に形成されていてもよく、あるいは、使用時に弾性変形して湾曲するものであってもよい。
【0017】
図3は、
図1のA−A断面図である。
図3に示すように、振動部材15は、高密度の金属材料等からなる中空円板状の部材であり、振動部材15の中空部に保持部材14が挿通されている。振動部材15は、保持部材14の長手方向に間隔をあけて複数配置されており、それぞれ保持部材14の軸線に対して直交するように、保持部材14の外周面に固定されている。振動部材15の大きさは特に限定されるものではないが、例えば、直径2cm以内である。
【0018】
このように、ドロンコーン13は、全体として筒状に形成されており、両側のハウジング20,20は、一対の連結筒11,11およびドロンコーン13の内部を介して、互いに連通されている。
【0019】
スピーカユニット30は、有線または無線で入力されたオーディオ信号に基づき振動板を振動させて音響を発生させる公知の構成であり、ハウジング20の前面側に取り付けられて、ハウジング20の前方および内部のそれぞれに、互いに逆位相の音波を出力する。
【0020】
上記の構成を備えるスピーカ装置1は、使用者が支持体10を首に掛けると、スピーカユニット30,30が前方斜め上方を向いた状態で、ハウジング20,20が使用者の鎖骨付近に配置され、スピーカユニット30,30を駆動してオーディオ信号を入力すると、スピーカユニット30,30の前面からステレオ方式の音響が出力される。
【0021】
スピーカユニット30,30の背面から出力される音響は、一対の連結筒11,11の内部を介して、筒状のドロンコーン13の内部に伝達される。ドロンコーン13は、この音響に共振周波数の周波数成分が含まれていると共振し、固有の共振周波数の音波を外部に出力する。こうして、使用者の後頭部付近に、ドロンコーン13の共振周波数に応じた低音が出力される。
【0022】
ドロンコーン13の共振周波数は、振動系の等価質量の逆数に比例し、更に、振動系のスティフネスに比例する。したがって、共振周波数を低くするためには、例えば、一定の設置面積内において振動部材15の合計質量を大きくする必要がある。本実施形態においては、筒状のドロンコーン13の長手方向に間隔をあけて複数の振動部材15が配置されているので、両側のハウジング20,20間を連通する支持体10の連通路を利用して、連通路断面の直径を大きくすることなく長手方向に必要な数の振動部材15を容易に配置することができ、所望の低音を得ることができる。
【0023】
本実施形態のスピーカ装置1によれば、従来の首掛け用スピーカと同様に、スピーカユニット30,30の前面から出力される音響によって、使用者の両耳近傍から前方側に音像定位されると共に、ドロンコーン13から出力される低音が、使用者の頭の後方から出力されて、スピーカユニット30,30の前面側への音響出力を補うことができる。したがって、簡易で省電力な構成にも拘わらず、臨場感に優れる音響再生を行うことができ、例えば、映画鑑賞や音楽鑑賞等に好適に使用することができる。
【0024】
また、ドロンコーン13は、弾性材料からなる保持部材14と、保持部材14に保持された振動部材15とを備え、内部を介して両側のハウジング20,20同士を連通するように全体として筒状に構成されているので、首掛け時にドロンコーン13が邪魔にならないコンパクトな構成にしつつ、任意の低音共振周波数を容易に得ることができる。更に、支持部材10は、従来の構成のようにハウジングのエッジ等がない滑らかな表面を保つことができるので、装用感を良好にすることができる。また、ウーハーのようなアクティブ素子が不要であるため、低コスト化を図ることができる。
【0025】
また、従来の首掛け用スピーカと同様に、スピーカユニット30,30が使用者の前方に配置されることで、スピーカ装置1の重心位置も使用者の前方に位置するため、安定した使用感が得られると共に、両耳を塞がないために歩行時や自転車走行時にも安全に使用することができる。
【0026】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、本実施形態においては、筒状に構成されたドロンコーン13の長手方向に沿って、複数の振動部材15を配置しているが、
図4および
図5に示すように、可撓性の管体からなる保持部材14の外周面に、線材からなる振動部材15を保持部材14の長手方向に延びるように配置し、この振動部材15を保持部材14の周方向に間隔をあけて複数配置することにより、ドロンコーン13を構成することもできる。なお、
図5は、
図4のB−B断面図である。
【0027】
図4および
図5に示すドロンコーン13は、容易に湾曲させることができると共に、筒状に構成されたドロンコーン13の周方向に沿って所望の数を配置することができるため、
図1に示すドロンコーン13と同様に、コンパクトな構成としつつ、所望の低音を容易に得ることができる。
【0028】
また、
図6に示すように、可撓性の管体からなる保持部材14に対して、小片状の複数の振動部材15を保持部材14の長手方向および周方向の双方に沿うように配置して、各振動部材15が長手方向および周方向にそれぞれ独立して自由に振動できるようにドロンコーン13を構成してもよい。
【0029】
また、上記各実施形態の保持部材14は、可撓性の管体によって構成することでドロンコーン13の製造および振動部材15の保持を容易にしているが、振動部材15を確実に保持可能であれば、必ずしも管体である必要はない。例えば、
図7に示すように、中空円板状に形成された複数の振動部材15のそれぞれを、振動部材15よりも小径である筒状の複数の保持部材14により連結することで、ドロンコーン13を全体として蛇腹筒状に構成してもよい。あるいは、
図8に断面図で示すように、線材からなる複数の振動部材15を円周上に間隔をあけて配置し、それぞれを帯状の複数の保持部材14により互いに連結することで、ドロンコーン13を全体として筒状となるように構成してもよい。
【0030】
図7および
図8に示すドロンコーン13の構成によれば、各振動部材15の振動時の制約が少なくなるため、大きな振動を得ることができる。また、振動系のスティフネスも小さくなるため、各振動部材15の質量を小さく、あるいは、ドロンコーン13の面積を小さくすることができ、軽量化・小型化を図ることができる。
【0031】
ドロンコーン13の位置は、本実施形態においては支持体10の中央部として、首掛け時に使用者の後頚部のあたりに配置される構成としているが、必ずしも中央部である必要はなく、支持体10の左右にずれた位置に配置することも可能である。また、ドロンコーン13は、支持体10の一部に設ける代わりに、支持体10の全体がドロンコーン13であってもよい。
【0032】
ドロンコーン13は、必ずしも単一である必要はなく、長手方向に沿って複数を連結してもよい。この場合、各ドロンコーン13の固有の共振周波数を互いに相違するものとしてもよく、これによって、支持体10から出力される音響の低音帯域を拡げて、臨場感をより高めることができる。
【0033】
ドロンコーン13における振動部材15の配置は、ドロンコーン13が全体として筒状に構成されていれば、上記各実施形態に限定されるものではなく、複数を任意の配置にすることが可能である。更に、可撓性の管体からなる保持部材14の外周面に振動部材15を螺旋状に巻回する等、振動部材15は、必ずしも複数である必要はなく、単一であってもよい。
【0034】
また、
図9に示すように、ドロンコーン13を覆う筒状のカバー16を設けることも可能である。この構成によれば、ドロンコーン13が使用者の首などに直接触れないため、ドロンコーン13の保護が図れると共に、装用感をより向上させることができる。カバー16は、ドロンコーン13で発生した低音が使用者に効果的に伝達されるように、肉厚を薄くすることが好ましく、あるいは、一または複数の放音口を形成してもよい。
【0035】
また、上記各実施形態のドロンコーン13は、振動部材15が外部に露出するように構成されているが、管体からなる保持部材14の内部に振動部材15を設けた構成であってもよく、例えば、複数の振動部材15を、それぞれの間にスペーサ等を介して配置することが可能である。
【0036】
上記各実施形態において、振動部材15の断面形状は特に限定されるものではなく、円形状以外に、矩形状等であってもよい。
【0037】
また、
図10に示すように、管体からなる保持部材14の肉厚部分に、振動部材15を周方向に沿って間隔をあけて複数埋設することで、ドロンコーン13を構成することもできる。
【0038】
上記各実施形態のスピーカ装置1は、首掛け用として使用できる他、据置用のスピーカ装置として使用することもできる。
【符号の説明】
【0039】
1 スピーカ装置
10 支持体
13 ドロンコーン
14 保持部材
15 振動部材
16 カバー
20 ハウジング
30 スピーカユニット