(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材層と、前記基材層の一方の面に設けられた表面ゴム層と、前記基材層の前記表面ゴム層と反対側の他方の面に設けられた金属層とを備え、前記金属層は、少なくとも前記基材層と反対側の面に不動態層を備え、
前記不動態層の厚さが5nm以上である印刷用ゴムブランケット。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。図面は模式的なものであり、正確な縮尺ではない。なお、以下の説明において
図1の配置に従って各層の上方の面を「上面」下方の面を「下面」と記載する。
【0012】
図1は、実施形態の印刷用ゴムブランケット示す模式図である。印刷用ゴムブランケット1は、基材層2、表面ゴム層3及び金属層4を備える。表面ゴム層3は、基材層2の上面に設けられている。金属層4は、基材層2の下面に設けられている。金属層4は、その下面8に不動態層9を備える。以下に、各構成について詳細に説明する。
【0013】
基材層2は、表面ゴム層3を支持する層である。基材層2は、例えば、基布層5、圧縮ゴム層6及び補強布7を備える。
【0014】
基布層5は、例えば、3枚の基布5a、5b及び5cを備える。基布5a及び基布5bは、ゴム層5dで互いに接着されている。基布5b及び基布5cはゴム層5eで互いに接着されている。この例では基布層5は、基布を3枚備えるが、基布は、1枚又は2枚であってもよいし、4枚以上用いられてもよい。
【0015】
基布5a、5b、5cは、印刷用ゴムブランケットに一般的に使用される基布を用いることができる。基布は、例えば、織布、不織布、またはこれらの何れかの組み合わせ等である。織布、不織布は、例えば、綿、毛、麻、絹、レーヨン、キュプラ、アセテート、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、アクリル、アクリレート、ポリイミド、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、又はこれらの何れかの組み合わせ等の繊維から作ることができる。基布の織り方は、特に限定されないが平織、綾織又は朱子織等が挙げられる。
【0016】
ゴム層5d、5eは、印刷用ゴムブランケットに一般的に使用されるゴム材料を用いることができる。ゴム材料は、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、ポリウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、又はこれらの何れかの組み合わせなどである。
【0017】
圧縮ゴム層6は、基布層5の上面に設けられているクッション性を有する層である。圧縮ゴム層6は、印刷用ブランケットに一般的に使用される圧縮ゴム層を用いることができる。圧縮ゴム層6は、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、ポリウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、又はこれらの何れかの組み合わせなどからなるスポンジゴムなどである。圧縮ゴム層6の厚さは、例えば、0.1mm以上2.0mm以下であることが好ましい。
【0018】
補強布7は、圧縮ゴム層6の上面に設けられている基材層2を補強するための布である。補強布7は、例えば、上記の何れかの基布を用いてもよい。
【0019】
基材層2は、以上に説明した構成の他に更なる材料からなる層を含んでもよい。そのような層は、例えば、補強層、更なる接着層、更なる圧縮ゴム層、更なる布からなる層などである。
【0020】
基材層2の全体の厚さは、例えば、500〜3000μmであることが好ましい。
【0021】
表面ゴム層3は、基材層2の面(
図1の例においては、補強布7の上面)に設けられている。表面ゴム層3の材料は、印刷用ブランケットに一般的に使用される材料を用いることができる。例えば、表面ゴム層3の材料は、特に限定されないが、ニトリルゴム、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレン、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、シリコーンゴム又はフッ素ゴム、或いはこれらの何れかの組み合わせなどである。表面ゴム層3の厚さは、例えば、0.2〜0.5mmであることが好ましい。例えば、表面ゴム層3は、補強布7に、上記の何れかのゴム材料などによって接着されていてもよい。
【0022】
基材層2及び表面ゴム層3は、上記の構成に限定されるものではなく、一般的な印刷用ゴムブランケットに用いられる基材層及び表面ゴム層の構成であってもよい。
【0023】
金属層4は、基材層2の下面に設けられている薄い板状の金属である。金属層は、以下、金属箔とも称する。金属層4の材料は、例えば、不動態層9を形成することができる金属である。例えば、金属層4の材料として、鉄、ニッケル、アルミニウム、クロム、チタンなど、或いはこれらの何れかを含む合金などを用いることができる。例えば、合金は、ステンレス鋼である。特に、コスト面及び強度の高さから、ステンレス鋼、例えば、Steel Special Use Stainless(SUS)を用いることが好ましい。
【0024】
金属層4の厚さは、例えば、0.10〜0.30mmであることが好ましい。
【0025】
金属層4は、少なくともその下面8に不動態層9を備える。不動態層9は、例えば、金属層4の材料に含まれる金属の酸化物からなる。例えば、不動態層9は、金属層4の材料の酸化皮膜と同様の組成を有する。例えば、金属層4がSUSで構成される場合、不動態層9は、水和オキシ水酸化クロム(CrO
x(OH)
2−x・nH
2O)などを主成分とするクロムの酸化物から構成される。
【0026】
不動態層9の厚さは、金属層4に自然に形成される不動態酸化皮膜よりも厚い。例えば、不動態層9の厚さは、5nm〜2μmである。より好ましくは、10〜100nmである。
不動態層9の厚さが5nm以上であれば、金属層4とブランケット胴とが腐食反応を起こすことを防止することができる。また、製造におけるコストを考慮すると、不動態層9の厚さは2μm以内であることが好ましい。
【0027】
金属層4は、更に上面にも不動態層を備えてもよい。そのような例を
図2に示す。この例において、金属層4は、下面8a及び上面8bにそれぞれ、第1の不動態層9a及び第2の不動態層9bを備える。金属層4が上面8bに第2の不動態層9bを備えることによって、金属層4と基材層2との接着強度が向上する。それによって、印刷用ゴムブランケット1の使用時に金属層4が基材層2から剥離することを防止することができる。更に、金属層4の側面に不動態層9が設けられていてもよい。
【0028】
金属層4の上面は、例えば、接着剤により基材層2の下面と接着している。接着剤は、例えば、熱硬化性接着剤、又は熱可塑性接着剤などを用いることができる。金属層4は、基材層2及び表面ゴム層3より長く構成され、印刷用ゴムブランケット1の端部が金属層4だけで構成されていてもよい。金属層4のみで構成された端部は、例えば、ブランケット胴に印刷用ゴムブランケット1を装着する際にブランケット胴に固定される装着部であってもよい。
【0029】
印刷用ゴムブランケット1は、用途に応じて所望の大きさを有する。例えば、幅は、100〜1200mm、長さは、100〜1200mm、厚さは、0.8〜4.0mmなどとすることが好ましいが、この大きさに限定されない。
【0030】
以上に説明した実施形態の印刷用ゴムブランケットは、金属層4の下面8に不動態層9を有する。不動態層9は、金属層4に自然に形成される不動態酸化皮膜よりも厚い。このような不動態層9は、印刷用ゴムブランケットの使用時に、洗浄剤に含まれる電解質として働く化学物質と、金属層4と、ブランケット胴とが併存する条件において破壊されることがない。そのため、金属層4とブランケット胴とが腐食反応を起こすことを防止できる。その結果、印刷用ゴムブランケットの耐用期間中、腐食(例えば、錆び)を防止して印刷を行うことができる。また、不動態層9が剥離することはないため、耐用期間中、ブランケットの厚みを一定に保持できる。加えて、不動態層9の存在により金属層4の摩耗が防止できる。したがって、実施形態の印刷用ブランケットによれば良好な印刷を安定して行うことが可能である。
【0031】
更なる実施形態について、
図3を用いて説明する。この例の印刷用ゴムブランケット1は、金属層4の不動態層9の下面にポリマー層10を備える。
【0032】
ポリマー層10の材料は、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、又はこれらの何れかの組み合わせなどが好ましい。又は、ポリマー層10としてメラミン樹脂、フェノール樹脂などが用いられてもよい。或いは、ポリマー層10の材料は、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリオレフィン、フェノール化合物、ナイロンポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル若しくはポリ酢酸ビニルを含む共重合体又はエチレン−アクリル酸、エチレン−メタクリル酸共重合体などであってもよい。ポリマー層10の材料は、更にアイオノマー、酸変性ポリマー又は無水物変性ポリマーなどであってもよい。
【0033】
ポリマー層10の厚さは、5〜250μmであることが好ましい。より好ましくは、5〜20μmである。ポリマー層10がこのような厚さを有することにより、印刷用ブランケット1が全体として好適な厚みを有し、かつポリマー層10が十分な耐久性を持つことが可能である。また、加工コストや、万が一脱落した際のリスクを考慮すると、ポリマー層10の厚さは、好ましくは5〜20μm程度である。
【0034】
金属層4の下面8に不動態層9が設けられていることより、ポリマー層10と金属層4との接着強度が向上する。そのため、ポリマー層10が金属層4から剥離することが防止される。またポリマー層10を備えることにより、金属層4が保護され、金属層4及びブランケット胴の腐食(錆び)及び摩耗を更に防止することができる。
【0035】
次に、印刷用ゴムブランケット1の製造方法について説明する。
【0036】
図4は、実施形態の印刷用ゴムブランケットの製造方法の一例を示す概略フローである。印刷用ゴムブランケット1の製造方法は、次の工程(S1)〜(S3)を含む。金属箔の少なくとも一方の面を化成処理し、不動態層を形成する工程(S1)。基材層及び表面ゴム層を備えるゴムブランケット片を用意する工程(S2)。金属箔の不動態層と反対側の面と、ゴムブランケット片の基材層側の面とを接着する工程(S3)。
【0037】
以下に各工程について詳細に説明する。
【0038】
(S1)において、金属箔に不動態層を形成する。金属箔として、上記の何れかの金属層、又は金属箔を用いることができる。不動態層は、金属箔の一方の面を化成処理することにより形成される。化成処理は、例えば、パシベート処理、クロメート処理、リン酸塩処理、ガンブルーによる処理、他の化成処理などである。例えば、金属層がSUSである場合、パシベート処理、クロメート処理又はジルコニウム系化成処理により不動態層の形成を行うことが好ましい。
【0039】
上記化成処理は、例えば、金属の化成処理に用いられる一般的な方法で行うことができる。化成処理は、例えば、化成処理すべき金属箔の面を、化成処理を行うための薬剤(以下、化成処理剤と称する)を含む溶液に浸漬するか、化成処理剤を含む溶液中で電気分解するか、金属箔の所望の面に化成処理剤を塗布することなどによって行われる。例えば、金属層がSUSで構成される場合、SUS板の所望の面を重クロム酸カリウム溶液、硫酸ナトリウム溶液、又は濃硝酸などに浸漬する、或いは、上記の溶液を金属箔の所望の面に塗布し、乾燥することなどにより不動態層を形成することができる。
【0040】
不動態層の厚さは、金属層に自然に形成される不動態酸化皮膜よりも厚く形成する。例えば、不動態層の厚さは、5nm〜2μmに形成することが好ましい。より好ましくは、10〜100nmである。例えば、金属箔を化成処理剤に接触させている時間を調節することによって不動態層を所望の厚さに形成することができる。不動態層の厚さは、例えば、エリプソメーターなどにより計測することができる。
【0041】
不動態層は、金属箔の下面のみに形成してもよいし、上面に更に第2の不動態層を形成してもよい。更に、金属箔の側面に不動態層を形成してもよい。
【0042】
更に、金属箔の不動態層を形成した面にポリマー層を設ける場合、金属箔に不動態層を形成した後、金属箔の下面に、何れかの公知のポリマーコーティング方法によりポリマー層を形成すればよい。例えば、ポリマーコーティング方法は、ブレードコーティング、スプレーコート、ディッピング、静電塗装法、ロールコートなどを用いることができる。
【0043】
工程(S2)において、基材層及び表面ゴム層を備えるゴムブランケット片を用意する。ここで、表面ゴム層は、基材層の上に設けられている。ゴムブランケット片として、上記の何れかの基材層及び表面ゴム層を用いることができる。工程(S1)及び(S2)は、どちらを先に行ってもよい。
【0044】
工程(S3)において、金属層の不動態層と反対側の面とブランケット片の基材層側の面とを接着させる。接着は、例えば、熱硬化性接着剤、又は熱可塑性接着剤などを用いて行われる。
【0045】
以上の工程を行うことにより、実施形態の印刷用ゴムブランケットを製造することができる。印刷用ゴムブランケットの製造方法の一例は、以上に説明した工程(S1)〜(S3)のみからなる。
【0046】
実施形態の印刷用ゴムブランケットは、ブランケット胴に装着されて用いられる。以下に、印刷用ゴムブランケットの使用方法の一例について説明する。
【0047】
図5は、印刷用ゴムブランケット1を装着した状態のブランケット胴20の一例を示す断面図である。
図5(a)及び(b)は、ブランケット胴20をその長手方向に対して垂直に切断した断面図である。
図5(a)は、ブランケット胴20に印刷用ゴムブランケット1を装着するときの様子を示す。
図5(b)は、
図5(a)の状態を経て印刷用ゴムブランケット1が固定された状態を示す。
図5(c)は、
図5(b)の囲いCを拡大した拡大図である。
【0048】
ブランケット胴20は、円柱形状の胴本体21及び胴本体21を回転する軸である軸部22を備える。胴本体21の表面にはギャップ23が形成されている。ギャップ23は胴本体21表面から胴本体21内部に向けて開口している。胴本体21内部には、ブランケット固定機構24が配置されている。ブランケット固定機構24は、2本の固定軸(第1の固定軸25a,第2の固定軸25b)を備える。第1の固定軸25aは、印刷用ゴムブランケット1の一方の端(咥え側端部)を固定するための第1の固定部26aを備える。第2の固定軸25bは、印刷用ゴムブランケット1の他方の端(咥え尻側端部)を固定するための第2の固定部26bを備える。
【0049】
印刷用ゴムブランケット1の胴本体21への固定は次の通りに行う。まず印刷用ゴムブランケット1の咥え側端部の金属層4を、表面ゴム層3のある面が上側となるようにギャップ23内に差し入れて第1の固定部26aにセットする。その後、印刷用ゴムブランケット1の咥え尻側端部の金属層4を胴本体21の周面上を渡してギャップ23内に差し入れ、第2の固定部26bにセットする(
図5(a))。
【0050】
次に、第2の固定軸25bを回転させて第2の固定部26bの先端を第1の固定部26aの側面に押さえ付ける(
図5(b))。それにより、印刷用ゴムブランケット1は胴本体21に固定される。
【0051】
図5(c)に示すように、基材層2及び表面ゴム層3の端から、金属層4の折れ曲がり部27をつなぐようにシール部28が設けられてもよい。シール部28により、印刷用ゴムブランケット1の使用時、基材層2及び表面ゴム層3が金属層4からはがれることが防止される。
【0052】
印刷用ブランケット1の使用方法は、上記の方法に限定されるものではない。例えば、印刷用ブランケット1はオフセット印刷に一般的に用いられる何れかのブランケット胴に装着されて使用することができる。
[例]
実施形態のブランケットの剥離の有無、金属箔の腐食の有無、ブランケット胴の腐食の有無、印刷適性を調査した例を以下に示す。
【0053】
・印刷用ゴムブランケットの作製
4枚の基布を含む基材層、圧縮ゴム層、補強布及び表面ゴム層(厚さ0.5mm)をこの順番で接着したゴムブランケット片を作成した。上記ゴムブランケット片を用いて以下の実施例1〜3、比較例1〜6の9種類の印刷用ゴムブランケットを作製した。
【0054】
(実施例1:不動態層のみ)
厚さ200μmのSUSの金属箔の片面に、パシベート処理して5nmの不動態層を形成した。不動態層の厚さは、可視分光エリプソメーターSmart SE(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。金属箔の不動態層と反対側の面をゴムブランケット片の基材層側の面と接着し、印刷用ゴムブランケットを作製した。
【0055】
(実施例2:不動態層+エポキシ樹脂)
実施例1と同様の印刷用ゴムブランケットの金属箔の不動態層表面に厚さ10μmのエポキシ樹脂をコーティングした。
【0056】
(実施例3:不動態層+アクリル樹脂)
実施例1と同様の印刷用ゴムブランケットの金属箔の不動態層表面に厚さ10μmのアクリル樹脂をコーティングした。
【0057】
(比較例1:不動態層無し+ポリエステルフィルム)
厚さ0.125mmのポリエステルフィルムの片面に、接着剤を0.035mm塗工した。このポリエステルフィルムを厚さ1.75mmの化成処理していないSUS金属箔の片面に熱接着により貼り合わせた。金属箔のフィルム側と反対側の面を、ゴムブランケット片の基材層側の面と接着した。
【0058】
(比較例2:不動態層無し+ポリイミドフィルム)
厚さ0.125mmのポリイミドフィルムの片面に、接着剤を0.035mm塗工した。このポリイミドフィルムを厚さ1.75mmの化成処理していないSUS金属箔の片面に熱接着により貼り合わせた。金属箔のフィルム側と反対側の面を、ゴムブランケット片の基材層側の面と接着した。
【0059】
(比較例3:不動態層無し+ポリアミドフィルム)
厚さ0.125mmのポリアミドフィルムの片面に、接着剤を0.035mm塗工した。このポリアミドフィルムを厚さ1.75mmの化成処理していないSUS金属箔の片面に熱接着により貼り合わせた。金属箔のフィルム側と反対側の面を、ゴムブランケット片の基材層側の面と接着した。
【0060】
(比較例4:不動態層無し)
厚さ1.75mmの化成処理していないSUSの金属箔の片面を、ゴムブランケット片の基材層側の面と接着した。
【0061】
(比較例5:不動態層無し+エポキシ樹脂)
厚さ1.75mmの化成処理していないSUS金属箔の片面に厚さ10μmのエポキシ樹脂をコーティングした。金属箔の樹脂側と反対側の面を、ゴムブランケット片の基材層側の面と接着した。
【0062】
(比較例6:不動態層無し+アクリル樹脂)
厚さ1.75mmの化成処理していないSUS金属箔の片面に厚さ10μmのアクリル樹脂をコーティングした。金属箔の樹脂側と反対側の面を、ゴムブランケット片の基材層側の面と接着した。
【0063】
・剥離の有無、金属箔の腐食の有無、ブランケット胴の腐食の有無の評価
以上に説明した実施例1〜3及び比較例1〜6のブランケットをブランケット胴に装着し、0.2mmの印圧下で1000rpmで1000万回回転させた。50万回転に1度の頻度で洗浄液をブランケット表面及びブランケットとブランケット胴との間に流し、通常の使用における洗浄及び洗浄液の滞留の状況を再現した。
【0064】
その後、剥離の有無、金属箔の腐食の有無、ブランケット胴の腐食の有無について評価した。
【0065】
・各印刷用ゴムブランケットの印刷適性の評価
実施例1〜3及び比較例1〜6のブランケットを用いて実機により印刷を行い、印刷適性を評価した。実機による印刷の条件は、押し込み量:0.2mm、スピード:6万部/h、印刷部数:5000部であった。印刷に抜け、かすれ等の印刷品質の悪化が見られた場合、印刷適性を「不良」、印刷品質の悪化が見られなかった場合「良」とした。
【0066】
全ての実施例、比較例における各評価の結果を表1、2にまとめる。
【0069】
実施例1〜3においては、樹脂の剥離、腐食が生じることはなかった。また、印刷適性に関しても良好であった。一方、比較例1〜3は、金属箔に腐食は生じなかったが、フィルムに剥離が生じた。それにより、印刷適性が不良となった。比較例4は、印刷適性は良好であったが、金属箔に腐食が生じた。比較例5、6では、印刷適性は良好であったが、樹脂の剥離が生じ、金属箔に腐食が生じた。
【0070】
以上の結果から、実施形態の印刷用ゴムブランケットによれば、金属箔及びブランケット胴の腐食及び摩耗を防止できることが明らかとなった。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
基材層と、前記基材層の一方の面に設けられた表面ゴム層と、前記基材層の前記表面ゴム層と反対側の他方の面に設けられた金属層とを備え、前記金属層は、少なくとも前記基材層と反対側の面に不動態層を備える印刷用ゴムブランケット。
[2]
前記不動態層の厚さが5nm〜2μmである[1]に記載のブランケット。
[3]
前記金属層がステンレス鋼である[1]又は[2]に記載のブランケット。
[4]
前記金属層が前記不動態層の表面にポリマー層を更に備える[1]〜[3]の何れか1つに記載のブランケット。
[5]
前記金属層が、前記基材層側の面に第2の不動態層を更に備える[1]〜[4]の何れか1つに記載のブランケット。
[6]
金属箔の少なくとも一方の面を化成処理し、不動態層を形成する工程、
基材層及び表面ゴム層を備えるゴムブランケット片を用意する工程、及び
前記金属箔の前記不動態層と反対側の面と、前記ゴムブランケット片の前記基材層側の面とを接着する工程
を含む印刷用ゴムブランケットの製造方法。
[7]
前記不動態層の厚さは、5nm〜2μmである[6]に記載の方法。
[8]
前記金属箔はステンレス鋼である[6」又は[7]に記載の方法。
[9]
前記金属箔の前記不動態層の表面にポリマー層を形成する工程を更に含む[6」〜[8]の何れか1つに記載の方法。
[10]
前記金属箔の前記基材層と接着する面に第2の不動態層を形成する工程を更に含む[6]〜[9]の何れか1つに記載の方法。