特許第6582097号(P6582097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6582097電気化学セル用金属部材、セルスタック及びセルスタック装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6582097
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】電気化学セル用金属部材、セルスタック及びセルスタック装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0247 20160101AFI20190912BHJP
   H01M 8/0208 20160101ALI20190912BHJP
   H01M 8/2484 20160101ALI20190912BHJP
   C25B 9/04 20060101ALI20190912BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20190912BHJP
【FI】
   H01M8/0247
   H01M8/0208
   H01M8/2484
   C25B9/04
   !H01M8/12 101
   !H01M8/12 102C
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-111670(P2018-111670)
(22)【出願日】2018年6月12日
【審査請求日】2019年1月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕己
(72)【発明者】
【氏名】松野 雄多
(72)【発明者】
【氏名】野引 浩介
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【審査官】 小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−291412(JP,A)
【文献】 特開2009−004251(JP,A)
【文献】 特許第6329683(JP,B1)
【文献】 特開2018−092919(JP,A)
【文献】 特開2010−140895(JP,A)
【文献】 特開2016−085922(JP,A)
【文献】 特開2012−015034(JP,A)
【文献】 特開2012−151052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0247
C25B 9/04
H01M 8/0208
H01M 8/2484
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロムを含有する合金材料によって構成される基材と、
前記基材を被覆する被覆膜と、
を備え、
前記基材は、前記基材の表面に垂直な断面において、基材本体部と、前記基材本体部に連なり、前記被覆膜によって被覆される第1幕状とを有し、
前記第1幕状は、前記断面において、前記基材本体部の表面と対向
前記第1幕状部は、シート状又は薄板状に形成されている、
電気化学セル用金属部材。
【請求項2】
前記第1幕状部の少なくとも一部は、前記断面において前記基材本体部の表面から離れている、
請求項1に記載の電気化学セル用金属部材。
【請求項3】
前記基材は、前記断面において、前記基材本体部に連なり、前記被覆膜によって被覆される第2幕状部を有し
前記第2幕状部は、前記断面において、前記第1幕状部の表面と対向する
請求項1又は2に記載の電気化学セル用金属部材。
【請求項4】
前記基材は、前記第1幕状部を含む複数の幕状部を有し、
前記複数の幕状部それぞれは、前記基材本体部に連なり、前記断面において前記基材本体部の表面と対向しており、
前記複数の幕状部は、前記基材本体部の表面の平面視において所定方向に並んでいる、
請求項1乃至3のいずれかに記載の電気化学セル用金属部材。
【請求項5】
2つの電気化学セルと、
請求項1乃至4のいずれかに記載の電気化学セル用金属部材と、
を備え、
前記電気化学セル用金属部材は、前記2つの電気化学セルを電気的に接続する集電部材である、
セルスタック。
【請求項6】
電気化学セルと、
請求項1乃至のいずれかに記載の電気化学セル用金属部材と、
を備え、
前記電気化学セル用金属部材は、前記電気化学セルの基端部を支持するマニホールドである、
セルスタック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セル用金属部材、セルスタック及びセルスタック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の燃料電池セルが集電部材によって電気的に接続されたセルスタックと、各燃料電池セルを支持するマニホールドとを備えたセルスタック装置が知られている(特許文献1及び2参照)。集電部材及びマニホールドには、金属部材が用いられる。
【0003】
特許文献1では、ステンレス鋼によって構成される基材からCr(クロム)が揮発することを抑制するために、基材の表面を覆う被覆膜を有する金属部材が集電部材として用いられている。
【0004】
特許文献2では、ステンレス鋼によって構成される基材からCrが揮発することを抑制するために、基材の表面を覆う被覆膜を有する金属部材がマニホールドとして用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/172451号
【特許文献2】特開2015−035418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に記載の金属部材では、セルスタック装置の作動/非作動が繰り返されると、被覆膜に応力がかかって基材から剥離するおそれがある。
【0007】
本発明は、上述の状況に鑑みてなされたものであり、被覆膜の剥離を抑制可能な電気化学セル用金属部材、セルスタック及びセルスタック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電気化学セル用金属部材は、クロムを含有する合金材料によって構成される基材と、基材を被覆する被覆膜とを備える。基材は、第1表面を有する基材本体部と、基材本体部に連なる第1幕状体とを有する。第1幕状体は、第1表面に垂直な断面において、第1表面と対向する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被覆膜の剥離を抑制可能な電気化学セル用金属部材、セルスタック及びセルスタック装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】セルスタック装置の斜視図。
図2】セルスタック装置の断面図。
図3】燃料マニホールドの斜視図。
図4】燃料電池セルの斜視図。
図5】燃料電池セルの断面図。
図6図2の部分拡大図。
図7】集電部材の斜視図。
図8図7のA−A断面図。
図9図8の領域R1の拡大図。
図10図9の矢印X方向から見た平面図。
図11図10のA−A断面図。
図12図10のB−B断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る集電部材を用いたセルスタック装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、セルスタック装置100の斜視図である。図2は、セルスタック装置100の断面図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、セルスタック装置100は、燃料マニホールド200と、複数の燃料電池セル300(「電気化学セル」の一例)とを備える。
【0013】
[燃料マニホールド]
図3は、燃料マニホールド200の斜視図である。
【0014】
図3に示すように、燃料マニホールド200は、燃料ガス(例えば、水素など)を各燃料電池セル300に分配するように構成されている。燃料マニホールド200は、中空状であり、内部空間を有している。燃料マニホールド200の内部空間には、導入管201を介して燃料ガスが供給される。燃料マニホールド200は、互いに間隔をあけて並ぶ複数の挿入孔202を有している。各挿入孔202は、燃料マニホールド200の天板203に形成されている。各挿入孔202は、燃料マニホールド200の内部空間と外部に連通する。
【0015】
[燃料電池セル]
図2に示すように、各燃料電池セル300は、燃料マニホールド200から延びている。詳細には、各燃料電池セル300は、燃料マニホールド200の天板203から上方(x軸方向)に延びている。すなわち、各燃料電池セル300の長手方向(x軸方向)は、上方に延びている。各燃料電池セル300の長手方向(x軸方向)の長さは、100〜300mm程度とすることができる。
【0016】
各燃料電池セル300の基端部は、燃料マニホールド200の挿入孔202に挿入されている。各燃料電池セル300は、接合材101によって挿入孔202に固定されている。燃料電池セル300は、挿入孔202に挿入された状態で、接合材101によって燃料マニホールド200に固定されている。接合材101は、燃料電池セル300と挿入孔202の隙間に充填される。接合材101としては、例えば、結晶化ガラス、非晶質ガラス、ろう材、及びセラミックスなどが挙げられる。結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスである。このような結晶化ガラスとしては、例えば、SiO−B系、SiO−CaO系、又はSiO−MgO系が挙げられる。
【0017】
各燃料電池セル300は、長手方向(x軸方向)及び幅方向(y軸方向)に広がる板状に形成されている。各燃料電池セル300は、配列方向(z軸方向)に間隔をあけて配列されている。隣り合う2つの燃料電池セル300の間隔は特に制限されないが、1〜5mm程度とすることができる。隣り合う2つの燃料電池セル300は、集電部材301によって電気的に接続されている。複数の燃料電池セル300が集電部材301で接続されることによってセルスタックが形成されている。集電部材301の構成については後述する。
【0018】
燃料電池セル300は、複数の発電素子部10と、支持基板20とを備える。
【0019】
[支持基板]
図4は、燃料電池セル300の斜視図である。図5は、燃料電池セル300の断面図である。
【0020】
図4に示すように、支持基板20は、支持基板20の長手方向(x軸方向)に沿って延びる複数のガス流路21を内部に有している。各ガス流路21は、支持基板20の基端側から先端側に向かって延びている。各ガス流路21は、互いに実質的に平行に延びている。なお、基端側とは、ガス流路のガス供給側を意味する。具体的には、燃料マニホールド200に燃料電池セル300を取り付けた場合において、その燃料マニホールド200に近い側を意味する。また、先端側とは、ガス流路のガス供給側とは反対側を意味する。具体的には、燃料電池セル300を燃料マニホールド200に取り付けた場合において、その燃料マニホールド200から遠い側を意味する。例えば、図2に示す例では、下側が基端側であり、上側が先端側となる。
【0021】
図5に示すように、支持基板20は、複数の第1凹部22を有する。本実施形態において、各第1凹部22は、支持基板20の両主面に形成されているが、一方の主面にだけ形成されていてもよい。各第1凹部22は支持基板20の長手方向において互いに間隔をあけて配置されている。
【0022】
支持基板20は、電子伝導性を有さない多孔質の材料によって構成される。支持基板20は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、支持基板20は、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板20の気孔率は、例えば、20〜60%程度である。
【0023】
[発電素子部]
各発電素子部10は、支持基板20に支持されている。本実施形態において、各発電素子部10は、支持基板20の両主面に形成されているが、一方の主面にだけ形成されていてもよい。各発電素子部10は、支持基板20の長手方向において、互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、本実施形態に係る燃料電池セル300は、いわゆる横縞型の燃料電池である。長手方向に隣り合う発電素子部10は、インターコネクタ31によって互いに電気的に接続されている。
【0024】
発電素子部10は、燃料極4、電解質5、及び空気極6を有している。また、発電素子部10は、反応防止膜7をさらに有している。
【0025】
[燃料極]
燃料極4は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極4は、燃料極集電部41と燃料極活性部42とを有する。
【0026】
燃料極集電部41は、第1凹部22内に配置されている。詳細には、燃料極集電部41は、第1凹部22内に充填されており、第1凹部22と同様の外形を有する。燃料極集電部41は、第2凹部411及び第3凹部412を有している。第2凹部411内には、燃料極活性部42が配置されている。また、第3凹部412には、インターコネクタ31が配置されている。
【0027】
燃料極集電部41は、電子伝導性を有する。燃料極集電部41は、燃料極活性部42よりも高い電子伝導性を有していることが好ましい。燃料極集電部41は、酸素イオン伝導性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0028】
燃料極集電部41は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極集電部41は、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極集電部41の厚さ、及び第1凹部22の深さは、50〜500μm程度である。
【0029】
燃料極活性部42は、酸素イオン伝導性を有するとともに、電子伝導性を有する。燃料極活性部42は、燃料極集電部41よりも酸素イオン伝導性を有する物質の含有率が大きい。詳細には、燃料極活性部42における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合は、燃料極集電部41における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合よりも大きい。
【0030】
燃料極活性部42は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極活性部42は、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部42の厚さは、5〜30μmである。
【0031】
[電解質]
電解質5は、燃料極4上を覆うように配置されている。詳細には、電解質5は、あるインターコネクタ31から隣のインターコネクタ31まで長手方向に延びている。すなわち、支持基板20の長手方向(x軸方向)において、電解質5とインターコネクタ31とが交互に連続して配置されている。電解質5は、支持基板20の第1主面23a及び第2主面23bを覆うように構成されている。
【0032】
電解質5は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質5は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、電解質5は、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質5の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0033】
[反応防止膜]
反応防止膜7は、緻密な材料から構成される焼成体である。反応防止膜7は、電解質5と空気極活性部61との間に配置されている。反応防止膜7は、電解質5内のYSZと空気極6内のSrとが反応して電解質5と空気極6との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。
【0034】
反応防止膜7は、希土類元素を含むセリアを含んだ材料から構成されている。反応防止膜7は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜7の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0035】
[空気極]
空気極6は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極6は、電解質5を基準にして、燃料極4と反対側に配置されている。空気極6は、空気極活性部61と空気極集電部62とを有している。
【0036】
空気極活性部61は、反応防止膜7上に配置されている。空気極活性部61は、酸素イオン伝導性を有するとともに、電子伝導性を有する。空気極活性部61は、空気極集電部62よりも酸素イオン伝導性を有する物質の含有率が大きい。詳細には、空気極活性部61おける、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合は、空気極集電部62における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合よりも大きい。
【0037】
空気極活性部61は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極活性部61は、LSF=(La,Sr)FeO(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O(ランタンニッケルフェライト)、又は、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。空気極活性部61は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極活性部61の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0038】
空気極集電部62は、空気極活性部61上に配置されている。また、空気極集電部62は、空気極活性部61から、隣の発電素子部に向かって延びている。燃料極集電部41と空気極集電部62とは、発電領域から互いに反対側に延びている。発電領域とは、燃料極活性部42と電解質5と空気極活性部61とが重複する領域である。
【0039】
空気極集電部62は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極集電部62は、空気極活性部61よりも高い電子伝導性を有していることが好ましい。空気極集電部62は、酸素イオン伝導性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0040】
空気極集電部62は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極集電部62は、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、空気極集電部62は、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電部62の厚さは、例えば、50〜500μm程度である。
【0041】
[インターコネクタ]
インターコネクタ31は、支持基板20の長手方向(x軸方向)に隣り合う発電素子部10を電気的に接続するように構成されている。詳細には、一方の発電素子部10の空気極集電部62は、他方の発電素子部10に向かって延びている。また、他方の発電素子部10の燃料極集電部41は、一方の発電素子部10に向かって延びている。そして、インターコネクタ31は、一方の発電素子部10の空気極集電部62と、他方の発電素子部10の燃料極集電部41とを電気的に接続している。インターコネクタ31は、燃料極集電部41の第3凹部412内に配置されている。詳細には、インターコネクタ31は、第3凹部412内に埋設されている。
【0042】
インターコネクタ31は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ31は、例えば、LaCrO(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、インターコネクタ31は、(Sr,La)TiO(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ31の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0043】
[集電部材]
図6は、図2の部分拡大図である。図6では、セルスタック装置100のうち各燃料電池セル300の基端部付近が図示されている。
【0044】
図6に示すように、隣接する2つの燃料電池セル300(第1燃料電池セル300a及び第2燃料電池セル300b)は、集電部材301によって電気的に接続される。集電部材301は、電気化学セル用金属部材の一例である。
【0045】
集電部材301は、第1燃料電池セル300aと第2燃料電池セル300bの間に配置される。集電部材301は、支持基板20の両主面に配置された複数の発電素子部10のうち、最も基端側に配置された基端側発電素子部10aよりも基端側に配置されている。
【0046】
集電部材301は、第1燃料電池セル300a及び第2燃料電池セル300bそれぞれの基端側に接合される。詳細には、集電部材301は、導電性接合材102を介して、第1燃料電池セル300aの基端側発電素子部10aから延びる電気的接続部110と、第2燃料電池セル300bの基端側発電素子部10aから延びる空気極集電部62とに接合される。
【0047】
導電性接合材102としては、周知の導電性セラミックス等を用いることができる。例えば、導電性接合材102は、(Mn,Co)、(La,Sr)MnO、及び(La,Sr)(Co,Fe)Oなどから選ばれる少なくとも1種によって構成することができる。
【0048】
ここで、図7は、集電部材301の斜視図であり、図8は、図7のA−A断面図である。図7では、集電部材301が第1燃料電池セル300aに接合された状態が示されている。図7では、第2燃料電池セル300bが省略されているが、実際には第1燃料電池セル300aと対向するように第2燃料電池セル300bが配置されている。
【0049】
集電部材301は、第1接合部a1、第2接合部a2、第1連結部b1、及び第2連結部b2を有する。
【0050】
第1接合部a1は、第1燃料電池セル300aに接合される。詳細には、第1接合部a1は、導電性接合材102によって、第1燃料電池セル300aの基端側発電素子部10a(図6参照)から延びる電気的接続部110に接合される。なお、電気的接続部110は、第1接続部111と第2接続部112を有している。第1接続部111は、上述したインターコネクタ31と同様の構成及び材質とすることができる。また、第2接続部112は、上述した空気極集電部62と同様の材料から構成することができる。第2接続部112は、第1接続部111と電気的に接続されており、下方へと延びている。図8に示すように、第1接合部a1は、第1燃料電池セル300aの外表面Taと対向する主面Saを有する。
【0051】
第1接合部a1は、平板状に形成される。z軸方向における第1接合部a1の厚みは特に制限されないが、例えば0.1〜2.0mmとすることができる。本実施形態において、第1接合部a1は、幅方向に延びる矩形に形成されているが、第1接合部a1の形状に特に制限はなく、三角以上の多角形、円形、楕円形、或いは、これら以外の複雑形状であってもよい。
【0052】
第1接合部a1には、複数の第1貫通孔c1が形成される。図8に示すように、各第1貫通孔c1は、主面Saに連なる内壁面Scを有する。各第1貫通孔c1には、導電性接合材102が充填されている。これによって、第1燃料電池セル300aに対する第1接合部a1の接合力を向上させることができる。導電性接合材102は、各第1貫通孔c1から外側に突出していてもよく、さらに第1接合部a1の外表面上に広がっていてもよい。
【0053】
本実施形態において、各第1貫通孔c1は、幅方向に沿って延びる矩形状に形成されているが、各第1貫通孔c1の形状に特に制限はなく、円形、楕円形、三角以上の多角形、又は、これら以外の複雑形状であってもよい。また、本実施形態では、3個の第1貫通孔c1が設けられているが、第1貫通孔c1の個数及び位置は適宜変更可能である。
【0054】
第2接合部a2は、第1接合部a1と電気的に接続される。第2接合部a2は、第2燃料電池セル300bに接合される。詳細には、第2接合部a2は、導電性接合材102によって、第2燃料電池セル300bの基端側発電素子部10a(図6参照)から延びる空気極集電部62に接合される。第2接合部a2は、配列方向において第1接合部a1と対向する。
【0055】
第2接合部a2は、平板状に形成される。z軸方向における第2接合部a2の厚みは特に制限されないが、例えば0.1〜2.0mmとすることができる。本実施形態において、第2接合部a2は、第1接合部a1と同様の形状を有しているが、第1接合部a1と異なる形状であってもよい。第2接合部a2の形状に特に制限はなく、三角以上の多角形、円形、楕円形、或いは、これら以外の複雑形状であってもよい。
【0056】
第2接合部a2には、複数の第2貫通孔c2が形成される。各第2貫通孔c2には、導電性接合材102が充填されている。これによって、第2燃料電池セル300bに対する第2接合部a2の接合力を向上させることができる。導電性接合材102は、各第2貫通孔c2から外側に突出していてもよく、さらに第2接合部a2の外表面上に広がっていてもよい。
【0057】
本実施形態において、各第2貫通孔c2は、幅方向に沿って延びる矩形状に形成されているが、各第2貫通孔c2の形状に特に制限はなく、円形、楕円形、三角以上の多角形、又は、これら以外の複雑形状であってもよい。また、本実施形態では、3個の第2貫通孔c2が設けられているが、第2貫通孔c2の個数及び位置は適宜変更可能である。
【0058】
第1及び第2連結部b1,b2は、それぞれ第1接合部a1と第2接合部a2とに連結される。本実施形態において、第1及び第2連結部b1,b2は、それぞれ湾曲しているが、これに限られない。第1及び第2連結部b1,b2は、それぞれ平板状であってもよいし、少なくとも1箇所で屈曲する形状であってもよい。
【0059】
また、本実施形態では、第1及び第2連結部b1,b2が、集電部材301の両端部に配置されているが、第1及び第2連結部b1,b2の位置は特に制限されない。
【0060】
[集電部材の内部構成]
次に、集電部材301の詳細な構成について、図面を参照しながら説明する。図9は、図8の領域R1の拡大図である。
【0061】
集電部材301は、基材302と、酸化クロム膜303と、被覆膜304とを有する。
【0062】
基材302は、Cr(クロム)を含有する合金材料によって構成される。このような金属材料としては、Fe−Cr系合金鋼(ステンレス鋼など)及びNi−Cr系合金鋼などを用いることができる。基材302におけるCrの含有率は特に制限されないが、4〜30質量%とすることができる。
【0063】
基材302は、Ti(チタン)やAl(アルミニウム)を含有していてもよい。基材302におけるTiの含有率は特に制限されないが、0.01〜1.0at.%とすることができる。基材302におけるAlの含有率は特に制限されないが、0.01〜0.4at.%とすることができる。基材302は、TiをTiO(チタニア)として含有していてもよいし、AlをAl(アルミナ)として含有していてもよい。
【0064】
酸化クロム膜303は、基材302上に形成される。酸化クロム膜303は、基材302を被覆する。酸化クロム膜303は、基材302の一部を被覆していてもよいし、基材302の全体を被覆していてもよい。
【0065】
酸化クロム膜303は、酸化クロムによって構成される。酸化クロム膜303の厚みは特に制限されないが、例えば0.5〜10μmとすることができる。
【0066】
被覆膜304は、酸化クロム膜303上に形成される。被覆膜304は、基材302を被覆する。具体的には、被覆膜304は、基材302上に形成された酸化クロム膜303を被覆している。被覆膜304は、基材302の一部を被覆していてもよいし、基材302の全体を被覆していてもよい。被覆膜304は、基材302のうちセルスタック装置100の作動中に酸化剤ガスと接触する領域を被覆していることが好ましい。
【0067】
被覆膜304は、基材302からのCrの揮発を抑えることによって、各燃料電池セル300の空気極6におけるCr被毒を抑制する。被覆膜304を構成する材料としては、セラミックス材料を用いることができる。セラミックス材料の具体的な種類は、適用箇所に応じて適宜選択することができる。本実施形態では、集電部材301に導電性が求められるため、セラミックス材料としては、LaおよびSrを含有するペロブスカイト形複合酸化物、Mn,Co,Ni,Fe,Cu等の遷移金属から構成されるスピネル型複合酸化物などを用いることができる。ただし、被覆膜304は、Crの揮発を抑制できればよく、その構成材料はセラミックス材料に限られない。被覆膜304の厚みは特に制限されないが、例えば1〜200μmとすることができる。
【0068】
[基材の構成]
次に、集電部材301のうち基材302の構成について、図面を参照しながら説明する。図10は、集電部材301を図9に示す矢印Xの方向から見た図であり、第1貫通孔c1の内壁面Scの平面図に相当する。ただし、図10では、酸化クロム膜303と被覆膜304とが省略されている。図11は、図10のA−A断面図である。図12は、図10のB−B断面図である。
【0069】
基材302は、基材本体部302aと、第1幕状部302bと、第2幕状部302cと、第3幕状部302dと、第4幕状部302eとを有する。第1乃至第4幕状部302b〜302eは、「複数の幕状部」の一例である。
【0070】
基材本体部302aは、基材302の大部分を占める本体である。基材本体部302aは、第1表面S1を有する。第1表面S1は、基材本体部302aの外表面である。
【0071】
第1幕状部302bは、基材本体部302aに接続される。第1幕状部302bは、基材本体部302aに連なる。第1幕状部302bは、基材本体部302aと一体的に形成される。
【0072】
第1幕状部302bは、図10に示すように、第1表面S1の平面視において、第1表面S1と重なる。従って、第1幕状部302bは、図11に示すように、第1表面S1に垂直な断面において、基材本体部302aの第1表面S1と対向する。すなわち、第1幕状部302bは、基材本体部302aの第1表面S1上に寝かされている。
【0073】
このように、基材本体部302aに連なる第1幕状部302bが基材本体部302aと重なっているため、セルスタック装置100の作動/非作動が繰り返されて被覆膜304に応力がかかると、それに応じて第1幕状部302bは被覆膜304とともに微小に動くことができる。これによって、被覆膜304にかかる応力を緩和できるため、被覆膜304が基材302から剥離してしまうことを抑制できる。
【0074】
図11に示すように、第1幕状部302bの少なくとも一部は、第1表面S1から離れていることが好ましい。すなわち、基材本体部302aと第1幕状部302bとの間には隙間が存在することが好ましい。これによって、第1幕状部302bの可動性を向上させることができるため、被覆膜304の剥離をより抑制できる。図11では、基材本体部302aと第1幕状部302bとの隙間に被覆膜304が入り込んでいるが、酸化クロム膜303が充填されていてもよいし、空隙になっていてもよい。ただし、基材本体部302aと第1幕状部302bとの間には隙間が存在しなくてもよい。
【0075】
図12に示すように、本実施形態に係る第1幕状部302bは、幕部分x1と、第1側部分x2と、第2側部分x3とを有する。
【0076】
幕部分x1は、幕状に形成される。幕状とは、シート状あるいは薄板状という意味である。本実施形態では、図10に示すように、幕部分x1が平面視において矩形に形成されているが、幕部分x1の平面形状は特に制限されない。図11に示すように、幕部分x1の基端部は基材本体部302aに接続されており、幕部分x1の先端部は基材本体部302aから離れている。幕部分x1は、可撓性を有していてもよい。幕部分x1には、皺(しわ)あるいは襞(ひだ)が形成されていてもよい。
【0077】
幕部分x1の最大幅W1は特に制限されないが、例えば3〜300μmとすることができる。幕部分x1の全長L1は特に制限されないが、例えば5〜100μmとすることができる。幕部分x1の最大厚みT1は特に制限されないが、例えば1〜20μmとすることができる。幕部分x1の最大幅W1とは、平面視における第1側部分x2と第2側部分x3との最大間隔である。幕部分x1の全長L1とは、図11に示すように、基材本体部302aと幕部分x1との境界をx軸方向に平行な仮想線X1によって規定した場合において、x軸方向に平行な方向における幕部分x1の中点を連ねた線の長さである。幕部分x1の最大厚みT1とは、基材本体部302aと幕部分x1との境界をx軸方向に平行な仮想線X1によって規定した場合において、x軸方向に平行な方向における幕部分x1の最大厚みである。
【0078】
幕部分x1の全長L1は、幕部分x1の最大厚みT1よりも大きいことが好ましい。これによって、幕部分x1の可動性をより向上させることができる。幕部分x1の全長L1は、幕部分x1の最大厚みT1の2倍以上が特に好ましい。
【0079】
第1側部分x2及び第2側部分x3は、幕部分x1の両側に配置される。第1側部分x2及び第2側部分x3それぞれは、幕部分x1から基材本体部302aに向かって延びる。第1側部分x2及び第2側部分x3それぞれは、基材本体部302aと幕部分x1とに接続される。なお、第1側部分x2及び第2側部分x3は、それぞれ幕部分x1の一部にのみ接続されていてもよい。また、第1幕状部302bは、幕部分x1を有していればよく、第1側部分x2及び第2側部分x3の少なくとも一方を有していなくてもよい。
【0080】
このような第1幕状部302bは、例えばプレス加工や切削加工によって、基材本体部302aの第1表面S1を削ぐように、斜めに傷を入れることによって形成できる。
【0081】
第2幕状部302cは、基材本体部302aに接続される。第2幕状部302cは、基材本体部302aに連なる。第2幕状部302cは、基材本体部302aと一体的に形成される。
【0082】
第2幕状部302cは、図10に示すように、第1表面S1の平面視において、第1幕状部302bの第2表面S2と重なる。従って、第2幕状部302cは、図11に示すように、第1表面S1に垂直な断面において、第1幕状部302bの第2表面S2と対向する。すなわち、第2幕状部302cは、第1幕状部302bの第2表面S2上に寝かされている。第1幕状部302bの第2表面S2とは、第1幕状部302bのうち基材本体部302aと反対側の外表面である。
【0083】
このように、基材本体部302aに連なる第2幕状部302cが第1幕状部302bと重なっているため、被覆膜304に応力がかかった場合に、第1幕状部302bだけでなく第2幕状部302cも被覆膜304とともに動くことができる。これによって、被覆膜304にかかる応力を更に緩和できるため、被覆膜304が基材302から剥離してしまうことを更に抑制できる。
【0084】
図11に示すように、第2幕状部302cの少なくとも一部は、第1幕状部302bの第2表面S2から離れていることが好ましい。すなわち、第1幕状部302bと第2幕状部302cとの間には隙間が存在することが好ましい。これによって、第2幕状部302cの可動性を向上させることができるため、被覆膜304の剥離をより抑制できる。図11では、第1幕状部302bと第2幕状部302cとの隙間に被覆膜304が入り込んでいるが、酸化クロム膜303が充填されていてもよいし、空隙になっていてもよい。ただし、第1幕状部302bと第2幕状部302cとの間には隙間が存在しなくてもよい。
【0085】
図12に示すように、本実施形態に係る第2幕状部302cは、幕部分y1と、第1側部分y2と、第2側部分y3とを有する。
【0086】
幕部分y1は、幕状に形成される。図10に示すように、幕部分y1は、平面視において矩形に形成されているが、幕部分y1の平面形状は特に制限されない。図11に示すように、幕部分y1の基端部は基材本体部302aに接続されており、幕部分y1の先端部は基材本体部302a及び第1幕状部302bのそれぞれから離れている。幕部分y1は、幕状に形成される。幕部分y1は、可撓性を有していてもよい。幕部分y1には、皺あるいは襞が形成されていてもよい。幕部分y1のサイズについては、上述した幕部分x1のサイズと同様に設定することができる。
【0087】
第1側部分y2及び第2側部分y3は、幕部分y1の両側に配置される。第1側部分y2は、幕部分y1から第1幕状部302bに向かって延びる。第1側部分y2は、第1幕状部302bと幕部分y1とに接続される。第2側部分y3は、幕部分y1から基材本体部302aに向かって延びる。第2側部分y3は、基材本体部302aと幕部分y1とに接続される。なお、第1側部分y2及び第2側部分y3は、それぞれ幕部分y1の一部にのみ接続されていてもよい。また、第2幕状部302cは、幕部分y1を有していればよく、第1側部分y2及び第2側部分y3の少なくとも一方を有していなくてもよい。
【0088】
このような第2幕状部302cは、例えばプレス加工や切削加工によって、基材本体部302aの第1表面S1と第1幕状部302bの第2表面S2とを同時に削ぐように、斜めに傷を入れることによって形成できる。
【0089】
第3幕状部302d及び第4幕状部302eは、それぞれ上述した第1幕状部302bと同様の構成を有する。第3幕状部302d及び第4幕状部302eは、第1幕状部302bと同様、被覆膜304にかかる応力を緩和するように作用する。
【0090】
本実施形態において、第1乃至第4幕状部302b〜302eは、図10に示すように、基材本体部302aの第1表面S1の平面視において、y軸方向に並んでいる。そのため、被覆膜304にy軸方向の応力がかかりやすい場合に、当該応力を第1乃至第4幕状部302b〜302eによって効果的に緩和させることができるので、被覆膜304の剥離を特に抑制することができる。
【0091】
(実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0092】
[変形例1]
上記実施形態では、本発明に係る電気化学セル用金属部材を横縞型の燃料電池セルの集電部材301に適用した場合について説明したが、いわゆる縦縞型の燃料電池セルの集電部材にも適用することができる。縦縞型の燃料電池セルは、導電性の支持基板と、支持基板の一主面上に配置される発電部(燃料極、固体電解質層及び空気極)と、支持基板の他主面上に配置されるインターコネクタとを備える。また、本発明に係る電気化学セル用金属部材は、燃料電池のほか、固体酸化物型の電解セルを含む固体酸化物型の電気化学セルにも適用可能である。
【0093】
[変形例2]
上記実施形態では、本発明に係る電気化学セル用金属部材を集電部材301に適用した場合について説明したが、燃料マニホールド200にも適用することができる。ただし、燃料マニホールド200には絶縁性が求められるため、被覆膜304を構成するセラミックス材料としては、例えばアルミナ、シリカ、ジルコニア、及び結晶化ガラスなどを用いることができる。また、本発明に係る電気化学セル用金属部材は、セルスタック装置100の周辺部材(例えば、燃料配管、空気配管、空気マニホールドなど)にも適用することができる。
【0094】
[変形例3]
上記実施形態では、本発明に係る電気化学セル用金属部材を集電部材301に適用することとしたが、集電部材301の具体的な構成は適宜変更可能である。例えば、集電部材301は、3以上の接合部を有していてもよいし、接合部には貫通孔が形成されていなくてもよい。
【0095】
[変形例4]
上記実施形態では、基材本体部302aの第1表面S1のうち第1貫通孔c1を向いた領域に第1乃至第4幕状部302b〜302eが形成されることとしたが、これに限られない。例えば、第1乃至第4幕状部302b〜302eは、基材本体部302aの第1表面S1のうち燃料電池セル300を向いた領域に形成されていてもよい。また、基材302は、少なくとも1つの幕状部を有していればよく、幕状部の個数は特に制限されない。
【0096】
[変形例5]
上記実施形態において、第1乃至第4幕状部302b〜302eは、図10に示すように、基材本体部302aの第1表面S1の平面視において、y軸方向に並ぶこととしたが、これに限られない。第1乃至第4幕状部302b〜302eは、側面S3の平面視において、z軸方向に沿って並んでいてもよい。これにより、被覆膜304にz軸方向の応力がかかりやすい場合に、当該応力を第1乃至第4幕状部302b〜302eによって効果的に緩和させることができるので、被覆膜304の剥離を特に抑制することができる。なお、第1乃至第4幕状部302b〜302eは、y軸方向及びz軸方向に限らず、例えばy軸方向に対して傾斜した方向に並んでいてもよい。
【0097】
[変形例6]
集電部材301は、基材302及び酸化クロム膜303によって構成される本体部を有する。本体部は、第1燃料電池セル300a側を向く第1主面と、第1主面と反対側の第2主面と、第1主面及び第2主面に連なる側面とを有する。側面は、第1燃料電池セル300a側の第1領域と、第1燃料電池セル300aと反対側の第2領域とを含む。第1領域は、側面のうち10〜90%程度の範囲を占める。第2領域は、側面のうち10〜90%程度の範囲を占める。
【0098】
ここで、第2領域における表面粗さは、第1領域における表面粗さよりも大きくすることができる。この構成によれば、集電部材301の側面のうち、第1領域よりも第2領域の方に重点的に被覆膜304が形成されやすくなる。この結果、第2領域は確実に被覆膜304によって覆われるため、第1燃料電池セル300aの外側面に酸化剤ガスが供給されても、第2領域における酸化を抑制することができる。
【0099】
本変形例において、第2領域における被覆膜304の厚さは、第1領域における被覆膜304の厚さよりも厚いことが好ましい。このように構成することで、酸化剤ガスに晒され易い領域で、さらに酸化を抑制することができる。また、第1領域における被覆膜304の厚さは、第2領域における被覆膜304の厚さよりも厚いことが好ましい。このように構成することで、基材本体部302aがクロムを含む金属の場合に、第1燃料電池セル300aに近い側の領域において本体部からのクロムの揮発をより抑制することによって、第1燃料電池セル300aにおけるクロム被毒をより抑制することができる。また、第2領域における表面粗さは、第1及び第2主面における表面粗さよりも大きいことが好ましい。
【0100】
[変形例7]
集電部材301は、基材302及び酸化クロム膜303によって構成される本体部を有する。本体部は、第1燃料電池セル300a側を向く第1主面と、第1主面と反対側の第2主面と、第1主面及び第2主面に連なる側面とを有する。側面は、第1燃料電池セル300a側の第1領域と、第1燃料電池セル300aと反対側の第2領域とを含む。第1領域は、側面のうち10〜90%程度の範囲を占める。第2領域は、側面のうち10〜90%程度の範囲を占める。
【0101】
ここで、第1領域における表面粗さは、第2領域における表面粗さよりも大きくすることができる。この構成によれば、集電部材301の側面のうち、第1領域における表面粗さが第2領域における表面粗さよりも大きいため、第1領域において被覆膜304の剥離を抑制することができる。また、第2領域の表面粗さが第1領域の表面粗さよりも小さいため、第1燃料電池セル300aの外側面に酸化剤ガスを流したときに酸化され易い第2領域の表面積を小さくして酸化を抑制できる。
【0102】
本変形例において、第1領域における被覆膜304の厚さは、第2領域における被覆膜304の厚さよりも厚いことが好ましい。このように構成することで、基材本体部302aがクロムを含む金属の場合に、本体部からのクロムの揮発をより抑制することによって、第1燃料電池セル300aにおけるクロム被毒をより抑制することができる。また、第2領域における被覆膜304の厚さは、第1領域における被覆膜304の厚さよりも厚いことが好ましい。このように構成することで、酸化剤ガスに晒され易い領域で、さらに酸化を抑制することができる。また、第1領域における表面粗さは、第1及び第2主面における表面粗さよりも大きいことが好ましい。
【0103】
[変形例8]
集電部材301は、基材302及び酸化クロム膜303によって構成される本体部を有する。本体部は、第1燃料電池セル300a側を向く第1主面と、第1主面と反対側の第2主面と、第1主面及び第2主面に連なる一対の側面とを有する。
【0104】
ここで、第2主面の面積は、第1主面の面積よりも小さくすることができる。この構成によれば、集電部材301の一対の主面のうち、酸化剤ガスに晒される側にある第2主面は、第1主面よりも面積が小さくなっている。このため、従来のように第1主面と同じ面積の第2主面を有する集電部材301に比べて、第2主面をより確実に被覆膜304で覆うことができる。また、第1主面は第2主面よりも面積を大きいため、集電部材301と第1燃料電池セル300aとの接合面積が大きくなり、電気抵抗を小さくすることができる。
【0105】
本変形例において、第1主面に垂直な断面において、一対の側面は、第2主面に向かって互いに近付くように傾斜することが好ましい。この構成によれば、一対の側面は、傾斜していない場合に比べて被覆膜304との接合面積が大きくなるため、被覆膜304との接合強度を向上させることができる。また、第2主面と少なくとも一方の側面とがなす角度は、鈍角であることが好ましい。第2主面と側面との境界部である角部は、第1燃料電池セル300aの外側面に流れる酸化剤ガスに露出され易い位置に配置される。この第2主面と側面との角部の角度を鈍角とすることによって、この角部への被覆膜304の形成を容易にし、より確実に被覆膜304を形成することができる。
【0106】
[変形例9]
集電部材301は、基材302及び酸化クロム膜303によって構成される本体部を有する。本体部は、第1燃料電池セル300a側を向く第1主面と、第1主面と反対側の第2主面と、第1主面及び第2主面に連なる側面とを有する。
【0107】
ここで、本体部は、第1主面と側面とがなす角部から第1主面が向く方向に突出する突起部と、第2主面と側面とを連結する湾曲面とをさらに有していてもよい。この構成によれば、本体部は第1燃料電池セル300a側に突出する突起部を有しているため、本体部と被覆膜304との密着性を向上させることができる。この結果、被覆膜304が剥離することを抑制することができる。また、突起部とは反対側の角部は、湾曲面によって形成されているため、被覆膜304の形成が容易となり、被覆膜304をより確実に形成することができる。
【0108】
[変形例10]
集電部材301は、基材302及び酸化クロム膜303によって構成される本体部を有する。本体部は、第1燃料電池セル300a側を向く第1主面と、第1主面と反対側の第2主面と、第1主面及び第2主面に連なる側面とを有する。
【0109】
ここで、本体部は、第2主面と側面とがなす角部から第2主面が向く方向に突出する突起部と、第1主面と側面とを連結する湾曲面とをさらに有していてもよい。この構成によれば、第1燃料電池セル300a側において、湾曲面によって第1主面と側面とを連結しているため、第1主面と側面とが直接連結されて角部を構成する従来の本体部に比べて、電流が集中することを抑制することができる。この結果、この部分における酸化を抑制することができる。また、第2主面と側面とがなす角部から第2主面が向く方向に突起部が突出しているため、この突起部が優先的に酸化されて他の部分の酸化を抑制することができる。
【0110】
[変形例11]
集電部材301は、基材302及び酸化クロム膜303によって構成される本体部を有する。本体部は、第1燃料電池セル300a側を向く第1主面と、第1主面と反対側の第2主面と、第1主面及び第2主面に連なる側面とを有する。側面は、第1燃料電池セル300a側の第1領域と、第1燃料電池セル300aと反対側の第2領域とを含む。第1領域は、側面のうち10〜90%程度の範囲を占める。第2領域は、側面のうち10〜90%程度の範囲を占める。
【0111】
ここで、側面は、第1領域と第2領域との間に形成される段差部を有していてもよい。この構成によれば、段差部が被覆膜304との密着性を向上させることができるため、本体部からの被覆膜304の剥離を抑制することができる。
【0112】
本変形例において、段差部は、第2主面が向く方向を向いていることが好ましい。この場合、第1主面に垂直な断面において、本体部の一対の側面は、第2主面に向かって互いに近付くように傾斜することが好ましい。段差部が向く方向と第2主面が向く方向とがなす角度が45度以内であれば、段差部は第2主面が向く方向を向いていると言える。また、段差部は、第1主面が向く方向を向いている。この場合、第1主面に垂直な断面において、本体部の一対の側面は、第1主面に向かって互いに近付くように傾斜することが好ましい。段差部が向く方向と第1主面が向く方向とがなす角度が45度以内であれば、段差部は第1主面が向く方向を向いていると言える。
【0113】
本変形例において、側面と直交する方向に沿って側面を見た場合において、第1領域の第2主面側の端部と、第2領域の第1主面側の端部とが互いに重複するように段差部が構成されることが好ましい。この構成によれば、段差部と被覆膜304との密着性がより向上するため、本体部からの被覆膜304の剥離をより確実に抑制することができる。
【符号の説明】
【0114】
100 セルスタック
102 導電性接合材
200 燃料マニホールド
300 燃料電池セル
300a 第1燃料電池セル
300b 第2燃料電池セル
301 集電部材
302 基材
302a 基材本体部
S1 第1表面
302b 第1幕状部
S2 第2表面
302c 第2幕状部
302d 第3幕状部
302e 第4幕状部
303 酸化クロム膜
304 被覆膜
【要約】
【課題】被覆膜の剥離を抑制可能な電気化学セル用金属部材、セルスタック及びセルスタック装置を提供する。
【解決手段】集電部材301は、クロムを含有する合金材料によって構成される基材302と、基材302を被覆する被覆膜304とを備える。基材302は、第1表面S1を有する基材本体部302aと、基材本体部302aに連なる第1幕状部302bとを有する。第1幕状部302bは、第1表面S1に垂直な断面において、第1表面S1と対向する。
【選択図】図10
図1
図2
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図9
図10
図11
図12