(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記X線マーカーは、所定長さの板状片乃至棒状体からなり、それらはX線半吸収材乃至X線全吸収材で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のX線撮影補助具。
【背景技術】
【0002】
現在、人の胃のX線撮影は、通常、NPO法人日本消化器がん検診精度管理評価機構が推奨する基準撮影法、或いは日本がん検診学会が発表しているガイドラインによる新撮影法などによって行われている。
これらの撮影は、通常、検査台に腹臥させた被検者の鳩尾(季助部)へ押し当てて腹部を圧迫し胃部位を伸展させて描出範囲を広げる腹臥位腹部圧迫体(以下、腹部圧迫体と略称する)、例えば圧迫マクラや圧迫フトンなどを使用して行われている。
これらの圧迫マクラ及び圧迫フトンのうち、圧迫マクラは、通常、バスタオルからなり、このバスタオルは、被検者の体型、例えば痩せや肥満などの体型に合わせて、痩せ型では少ない巻数、また肥満型では複数巻し、大きさ(太さ)や形状を調節したものが使用され、また、圧迫フトンは、通常、小型ザブトンからなり、この小型ザブトンは形状乃至厚さが異なるものを複数用意して、体型に合わせて選択して使用されている。
【0003】
このようなバスタオルや、小型ザブトンは、被検者の体型に合わせて、バスタオルにあっては太さや形状を変化させ、小型ザブトンにあってはサイズ及び厚さが異なったものを選択して使用するので、太さや形状の細工或いはサイズ乃至厚さの異なるものの選択が面倒なことから、さらに工夫した腹部圧迫体が提案されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、二つのバルーンからなる圧迫手段を設けて胃をX線撮影するX線撮影補助具が提案されている。
【0005】
このX線撮影補助具は、
図11に示したように、傾斜自在とした寝台を備えたX線撮影装置で胃部のX線撮影を行う際に、寝台上に腹臥させた被検者の心窩部部分に配置して腹部を圧迫するために用いるX線撮影補助具であって、流体が送給されることにより膨張する圧迫手段40と、この圧迫手段に流体を送給する流体送給手段を有し、圧迫手段40は、流体の流入によって膨張する二つのバルーン41、41と、これらのバルーンが所定の体積以上に膨張することを禁止する拘束体43を有し、バルーンが所定の体積となった以降にもバルーンに流体を流入させることにより、圧迫手段の硬さを調整可能とし、圧迫手段が、拘束体43が装着されたバルーンを、バルーンの膨張方向に複数重ねた状態で一体化する一体化手段を備え、この一体化手段を、複数重ねた状態のバルーンを内包する包装体42とした構成となっている。
【0006】
この補助具によれば、被検者の腹部を圧迫する圧迫手段が、流体の流入によって膨張するバルーンと、このバルーンが所定の体積以上に膨張することを禁止する拘束体とを備え、バルーンが所定の体積となった以降にもバルーンに流体を流入させることによって圧迫手段の硬さを調整可能としているので、圧迫手段に変形を生じ難くすることができ、圧迫手段による腹部の圧迫状態が変化することを抑制できる。
特に、X線撮影装置の寝台の傾斜状態を変更した場合でも、圧迫手段に変形が生じに難いために、圧迫手段による腹部の圧迫状態が変化することがなく、被験者は姿勢維持に気をつかう必要がなく、被験者の負担を大きく低減できる。
【0007】
また、同様のX線撮影補助具は、下記特許文献2〜5にも記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記各腹部圧迫体のうち、バスタオルからなる圧迫マクラは、被検者の体型などに合わせて、その都度、不定形のバスタオルを丸めなどに細工して所定の大きさ及び形状に調節しなければならないので、扱い難くて、熟練を要し、初心者では困難な作業であって、その良否が検査結果に反映され、不出来であると正確な検査結果が得られないことがある。一方でまた、丸めたタオルは、弾力性乃至バネ性に欠けたものになり、固い箇所が腹部に強く当たると、被検者に苦痛を与え、また当たり場所が悪いと、最悪の場合は骨折させることがあり、これが医療事故の原因にもなる恐れがある。
【0010】
また、小型ザブトンからなる圧迫フトンも体型に合ったものを揃え、その都度、選択しなければならないので、数が多くなり、一方でまた、弾力乃至バネ力が不足し、胃部位を所望の範囲までに進展させることができない恐れがある。
【0011】
さらに、上記特許文献1に記載されたX線撮影補助具は、二つのバルーンからなる圧迫手段、この手段へ流体を供給する流体送給手段、バルーンの体積が所定以上に膨張することを禁止する拘束体、各バルーンの膨張方向に複数重ねた状態で一体化する一体化手段、さらに複数重ねた状態のバルーンを内包する包装体などから構成されている。このため、圧迫手段等及び拘束体等の手段及び物体等の数が多く、補助具が高価になり、しかもそれらの操作が極めて面倒で初心者が扱えるものでない。また、バルーン(風船)への流体(空気)調節は、被検者に合わせて、その都度、調節しければならないので、時間が掛かり、検査効率が悪くなるので、一度に大勢の被検者を集団検診するような場合などの際の課題となっている。
【0012】
また、他の特許文献2〜5記載のX線撮影補助具も略同じ構成なので同様の課題を抱えている。
【0013】
ところで、人の胃は、性別や体型、或いは胃の周辺臓器などによって異なった形状乃至変形し、個々人によって異なり、いわば十人十色乃至千差万別なものとなる。例えば、体型別では、肥満型は概ね牛角状、標準型は鉤状或いは痩長身型は長鉤状などの形状をしており、一方でまた、胃は変形し、その変形は、例えば、B型変形、胃外圧迫、壁不整、壁硬化し、胃角も正常な胃に対してU字形変形、棍棒状変形、胃角の消出、直角化、直線化、先鋭化などに変形する。
【0014】
さらに、X線撮影装置は、検査台が傾斜自在となっており、この検査台に腹臥した被検者を適宜に傾斜させることにより胃内のバリウム(炭酸ガス)の位置を調整するため、被検者の胃形とX線撮影補助具との間に正確な位置決めが必要となる。
【0015】
このようなX線撮影補助具を使用する場合、上記したように、人の胃は、性別、体型及び周辺臓器などによって異なった形状乃至変形し、人によって異なり、十人十色乃至千差万別なものになり、それも、バリウム(炭酸ガス)を入れた状態で、腹臥した被検者の胃部位と補助具との間の正確な位置決めが必要となる。また、使用する補助具の種類及び腹部への押し当て方乃至箇所によっては、胃部位の圧迫乃至伸展状態が変化し、補助具の選択、その当て方乃至箇所が不適切であると正確な撮影ができなくなる。
【0016】
しかし、これまでの補助具は、被検者に胃形に対して胃部位の何処に対応しているかは分からず、殆どが診療放射線技師(以下、放射線技師という)の経験乃至勘などに頼らざるを得ない状況にあった。
【0017】
そうすると、病院等の施設には種類の異なるX線撮影補助具が備えられ、これらから選択して放射線技師によって操作されるが、放射線技師の習熟度、すなわちベテラン放射線技師、中堅放射線技師及び初心放射線技師によって、検査結果が違ったものとなり、結果として、施設間の格差及び放射線技師間の検査格差が生じることとなる。また、後日再検査が必要になった場合、先の撮影でどのようなX線撮影補助具が使用され、また腹部へどのように押し当てられかを調べようとしても、それらがX線撮影フィルムにその履歴が残らないのでそれができない。このため、仮にX線撮影補助具の選択、使用法が不適切であったとしても履歴レビューができず改善の契機が喪失され、以後の撮影において同様のことが繰り替えされる恐れがある。
このような状況から、学会等においては基準撮影ガイドラインを発表して検査格差の是正を試みているが、現在も、これらの検査格差は解消されるに至っていない。
【0018】
そこで、本発明者らは、従来技術が上記課題を抱え及び諸要求があることから、この課題を解決及び要求に応えるために、これまで30余年X線撮影に従事し、その経験に基づいて、X線撮影補助具を構成する腹部圧迫体を少ない個数でしかも単純形状なもので構成し、それらを単独乃至複数組み合わせて使用することにより、被検者によってそれぞれ異なる胃形、例えば鉤状胃、横胃(牛角胃)、下垂胃、瀑状胃など略すべての胃形に対応でき、また、これらの腹部圧迫体にX線マーカーを装着することにより、撮影時にそれらをモニターでき、さらに、このX線マーカーにより、後日検査時における使用状態の把握が可能になり、再検査乃至検証にも利用できるようになり、その結果、施設及び放射線技師間の検査格差を解消して正確な撮影ができることに想到し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0019】
本発明は、上記従来技術が抱える課題の解決及び上記諸要求に応えるためになされたものである。
【0020】
本発明の目的は、1個の腹臥位腹部圧迫体を用い、この腹部圧迫体にクッション性及びバネ性を持たせると共にX線マーカーを付設し、また胃形に応じて補助バネ体を追加付設して、被検者の胃形に適合させモニターしながら撮影を補助するX線撮影補助具を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的は、複数個の腹臥位腹部圧迫体を用い、これらの腹部圧迫体にクッション性及びバネ性を持たせると共にX線マーカーを付設し、これらを単独乃至複数組み合わせ、被検者の胃形に適合させモニターしながら撮影を補助するX線撮影補助具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様のX線撮影補助具は、被検者の腹部へ押し当て胃部位の撮影を補助するX線撮影補助具において、直方体ブロック体、円盤状ブロック体、球状乃至半楕円球状ブロック体、柱状ブロック体からなる複数個の腹臥位腹部圧迫体を含み、前記腹臥位腹部圧迫体の1個乃至複数個
が被
検者の胃形に適応
されるように選択
されて使用
されるものであり、前記腹臥位腹部圧迫体の少なくとも一つの平坦部乃至湾曲面の一部にX線マーカーが付設されていることを特徴とする。
【0025】
本発明の第
2の態様のX線撮影補助具は、第
1の態様のX線撮影補助具において、前記X線マーカーは、所定長さの板状片乃至棒状体からなり、それらはX線半吸収材乃至X線全吸収材で形成されていることを特徴とする。
【0026】
本発明の第
3の態様のX線撮影補助具は、第
2の態様のX線撮影補助具において、前記X線マーカーの長さは、10mm〜20mmの範囲にあることを特徴とする。
【0027】
本発明の第
4の態様のX線撮影補助具は、第1〜
3のいずれかの態様のX線撮影補助具において、前記腹臥位腹部圧迫体は、それぞれが交換自在なカバー体で覆って、使用されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の第1の態様のX線撮影補助具に
よれば、以下の顕著な作用効果を奏する。
(ア)X線撮影補助具は、複数個の腹部圧迫体を単独乃至複数個組み合わせることによって、被検者によってそれぞれ異なる胃形に適応させて、モニターしながら撮影できる。また、個数が少ないので扱い及び操作が簡単になり、また、保管・管理も容易になる。
(イ)各腹部圧迫体には、X線マーカーが付設されているので、このX線マーカーをモニターすることによって、各腹部圧迫体の腹部への位置決め調整が正確にできる。また、再検査などの際に、X線写真フィルム上のX線マーカーにより検査時に如何なる腹部圧迫体が選択され、位置された箇所などの調査・検証が可能になる。さらに、X線マーカーは胃がんの大きさを測る物差しにもなる。
【0029】
(ウ)X線撮影補助具は、腹部圧迫体を単独乃至組み合わせることによって、被検者によって異なる胃形、例えば鉤状胃、牛角胃、横胃(下垂胃)、瀑状胃など略すべての胃形に適応させて各胃のX線撮影が可能になる。
(エ)腹部圧迫体は、合成樹脂からなスポンジ材で形成されているので、スポンジ材は柔軟性、クッション性及び衝撃吸収性が優れた性質を備えていることから、腹部圧迫体及び補助バネ体に適度なクッション性及びバネ性が付与されるので、検査時に被検者に苦痛を与えるようなことはない。すなわち、腹部圧迫体は、柔軟な弾性材(スポンジ材)形成されているので、被検者の腹部へ押し当てたときに、ソフトタッチとなり苦痛を与えることがない。
(オ)X線撮影補助具は、部材の数が少ないので、従来技術の補助具と対比して、格段に扱い乃至管理が簡単、容易になり、一方でまた、一度に大勢の被検者を検査する集団検診の際にも検査効率を上げて使用できる。
(カ)腹部圧迫体は単純な形状をしたものであり、材料として例えばスポンジ材を用いることができる。スポンジ材は、入手が簡単にでき、しかも、任意の形状に裁断、加工できるので簡単、安価に製作できる。
【0030】
(キ)X線撮影補助具を構成する腹部圧迫体は、少ない個数で単純な直方状ブロック体乃至円盤状ブロック体で形成されるので、製作が簡単で安価になる。
【0031】
本発明の第
2の態様のX線撮影補助具は、腹部圧迫体にX線マーカーが付設されているので、検査時にモニターしながら腹部への正確な位置決めができる。さらに、X線マーカーは撮影フィルムに写っているので、後日、検査時における使用状態の把握が可能になり、再検査乃至検証にも利用できる。
【0032】
本発明の第
3の態様のX線撮影補助具は、X線マーカーを所定長さにすることによって、胃癌の進行度合いが検知できる。
【0033】
本発明の第
4の態様のX線撮影補助具は、腹部圧迫体は検査時に交換自在なカバー体内に収納されて使用するので、感染予防になり衛生的に扱え、被検者に嫌悪感を与えるのを回避できる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るX線撮影補助具を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのX線撮影補助具を例示するものであって、本発明をこれに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
【0036】
[実施形態1]
図1〜3を参照して、本発明の実施形態1に係るX線撮影補助具の概要を説明する。なお、
図1は本発明の実施形態1に係るX線撮影補助具を示し、
図1Aは腹臥位腹部圧迫体の斜視図、
図1Bは補助バネ体の斜視図、
図1Cはカバー体の斜視図である。
本発明の実施形態1に係るX線撮影補助具10は、
図1に示したように、1個の腹臥位腹部圧迫体(腹部圧迫体)11と、1本の補助バネ体15とからなり、これらはいずれもスポンジ材で形成され、腹部圧迫体11にX線マーカー14(
図2C参照)が付設され、補助バネ体15は被検者の胃形に応じて、腹部圧迫体11に付設して使用するものであって、これらの腹部圧迫体11及び補助バネ体15は検査時に交換自在なカバー体16内に収納して使用する構成となっている。
【0037】
このX線撮影補助具によれば、従来技術の課題を解決できると共に、検査従事者などからの諸要求にも応えることができものであって、以下の顕著な作用効果を奏する。
(1−1)X線撮影補助具は、1個の腹部圧迫体と1本の補助バネ体との2つの部材からなり、これらの部材を単独乃至組み合わせることによって、被検者によって異なる胃形、例えば鉤状胃、横胃(牛角胃)、下垂胃、瀑状胃など略すべての胃形に適応させて各胃のX線撮影が可能になる。
(1−2)腹部圧迫体及び補助バネ体の2つの部材は、いずれも合成樹脂からなるスポンジ材で形成されているので、スポンジ材は柔軟性、クッション性及び衝撃吸収性が優れた性質を備えていることから、腹部圧迫体及び補助バネ体に適度なクッション性及びバネ性が付与されるので、検査時に被検者に苦痛を与えるようなことはない。すなわち、腹部圧迫体は、柔軟な弾性材(スポンジ材)形成されているので、被検者の腹部へ押し当てたときに、ソフトタッチとなり苦痛を与えることがない。
(1−3)X線撮影補助具は、部材の数が少ないので、従来技術の補助具と対比して、格段に扱い乃至管理が簡単、容易になり、一方でまた、一度に大勢の被検者を検査する集団検診の際にも検査効率を上げて使用できる。
(1−4)2つの部材、すなわち、腹部圧迫体及び補助バネ体は単純な形状をしたものであり、また材料となるスポンジ材は、入手が簡単、安価にでき、しかも、任意の形状に裁断、加工できるので簡単、安価に製作できる。
(1−5)腹部圧迫体にX線マーカーが付設されているので、検査時にモニターしながら腹部への正確な位置決めができる。また、X線マーカーを所定長さにすることによって、胃癌の進行度合いが検知でき、さらに、X線マーカーは撮影フィルムに写っているので、後日、検査時における使用状態の把握が可能になり、再検査乃至検証にも利用できる。
(1−6)腹部圧迫体及び補助バネ体は検査時に交換自在なカバー体内に収納されて使用するので、感染予防になり衛生的に扱え、被検者に嫌悪感を与えるのを回避できる。
(1−7)以上から、放射線技師の経験年数乃至スキル差に殆ど左右されることなく、病院等施設及び放射線技師間の検査格差を解消できる。
【0038】
以下、このX線撮影補助具の細部構成及び他の特徴及び作用効果を説明する。
【0039】
図1A、
図2を参照して、腹部圧迫体を説明する。なお、
図1は本発明の実施形態1に係るX線撮影補助具を示し、
図1Aは腹臥位腹部圧迫体の斜視図、
図1Bは補助バネ体の斜視図、
図1Cはカバー体の斜視図、
図2は
図1Aの腹臥位腹部圧迫体を示し、
図2Aは側面図、
図2Bは上面図である。
腹部圧迫体11は、
図1A、
図2Aに示したように、所定大きさの表裏面積及び厚さを有する所定形状のブロック体、例えば円盤状乃至小型ザブトン状などした本体クッション部12と、この本体クッション部12の表裏いずれかの面、この実施形態では裏面(
図1の下側面)の略中央部を所定高さ突起させた山型のバネ突起部13と、を有し、全体が柔軟性、クッション性及び衝撃吸収性が優れた合成樹脂からなるスポンジ材で形成されている。なお、ブロック体は、特定の形状のものに限定されるものでなく任意のものでよいが、以下、円盤状のもので説明する。
【0040】
本体クッション部12は、
図2Aに示したように、所定大きさの上下平坦面12a、12bと、所定高さ周側面12cとからなる円盤状ブロック体かなり、上平坦面12aは、腹部への押し当て面乃至補助バネ体15の装着面となり、また、周側面12cは、湾曲しており一部がX線マーカー14の付設面となっている。なお、この上平坦面12aは、略中央部12
1に補助バネ体14を脱着自在に装着できる脱着部材(図示省略)を設けるのが好ましい。
【0041】
また、バネ突起部13は、本体クッション部12の裏面12b(
図1の下側面)の略中央部から、所定高さ突起した山型ブロックで形成されている。
この山型バネ突起部13は、大サイズの大台ブロック13aと小サイズの小台ブロック13bとを2段に重ねた山型ブロックからなり、本体クッション部12と一体のスポンジ材で形成されている。
【0042】
腹部圧迫体11の寸法は、本体クッション部12にあって、上平坦面12aの直径D1は200mm、厚さH1は50mm、及びバネ突起部13の高さH2は50mm、また、バネ突起部13の大台ブロック13aは、底面の直径D2は100mm、高さは25mm、小台ブロック13bの底面の直径D3は50mm、高さH3は25mmである。なお、この寸法は一例であって、これらに限定されるものでない。
【0043】
腹部圧迫体11は、本体クッション部12と、バネ突起部13とからなり、これらがスポンジ材で形成され、それぞれ所定の厚さ及び高さとなっているので、腹部圧迫体11が腹部へ押し当てらときに、本体クッション部12がクッションとなって弾性圧縮され、また同時にバネ突起部13は同様に圧縮されると共に反発力が働き、胃部位を適度な弾性及びバネ力によって伸展させることができる。勿論、従来技術のバスタオルを丸めた圧迫マクラのような苦痛を与えることはない。
【0044】
本体クッション部12は、その側周面12cの一部にX線マーカー14が取付けられている。
【0045】
図2Cを参照して、X線マーカーを説明する。なお、
図2CはX線マーカーの側面図である。
X線マーカー14は、所定厚さW及び長さHの板状体からなり、X線半吸収材乃至吸収材で形成されている。厚さdは例えば2mm、長さhは例えば20mm、幅wは例えば10mmである。
【0046】
X線半吸収材及び吸収材は、元素記号が大きいほどX線の透過性が低く、透過性が一番低いものが鉛(X線を遮断)、次に銀、鉄、チタン。この中でX線透過率が高いのがチタンとなっている。本実施形態ではアルミニウムを使用している。
このX線マーカー14は、検査時に腹部圧迫体11をモニターできる一方でまた、スケーラー(物差し)になっている。すなわち、X線マーカーは進行胃癌の大きさを図る物差しできると共に、後日、X線検査結果を検証例にすることが可能となり、この検証例によって、今後の検査方法の改善を図ることもできる。
【0047】
スケーラーとしての長さは、10mm〜20mmの範囲が好ましい。検査によって胃がんが見つかると、癌組織の長さが10mm程度の場合、命の危険度が低く殆ど治癒可能であり、また20mmになると命の危険度が70〜80%と高くなると言われている。これから、X写真にX線マーカーと癌組織が写しだされるので、両者の対比から癌危険度の判定が容易になる。
このX線マーカー14は、本体クッション部12の側周面12cの一部に、貼付乃至埋め込みにより取付けられている。X線マーカーを脱着自在にすることによって、放射線技師が任意に選択できる。
X線マーカー14は、板状体のものに限定するものでなく、他の形状、例えば棒状体などにしてもよく。また、直線状でなく折曲、例えば「く」字状に折曲してもよい。
【0048】
図1B、
図3を参照して、補助バネ体を説明する。なお、
図3は
図1Aの補助バネ体を示し、
図3Aは正面図、
図3Bは側面図、
図3Cは底面図、
図3Dは使用例の斜視図である。
補助バネ体15は、所定大きさの矩形状の上下面15a、15b、側周面15c〜15fを有し、所定高さの四角柱状ブロック体からなり、スポンジ材で形成されている。この補助バネ体15の寸法は、例えば、横幅W1が100mm、長さLは200mm、縦幅W2は60mmである。
【0049】
補助バネ体15は、
図3Dに示したように、略中央部で二つ折りにして、腹部圧迫体11を構成する本体クッション部12の表面12aに載せて使用する。二つ折りにより、補助バネ体は略「く」字状の湾曲し比較的強いバネ力が生じ、腹部圧迫体11のバネ力に加算され、腹部への押し当てを強くし、胃部位をより効果的に伸展させることができる。腹部圧迫体11と補助バネ体とにより、よりバネ力が強くなっても従来技術の圧迫マクラ(バスタオルを丸めたマクラ)が抱える課題が生じ、被検者に苦痛を与えることがない。なお、腹部圧迫体11の表面12aへの載置を確実にするために、補助バネ体15の載置部12
1(
図1A参照)を設けるのが好ましい
【0050】
X撮影補助具10は、検査時に、腹部圧迫体11単独、乃至腹部圧迫体11と補助バネ体15とを合体してカバー体16で覆って使用する。このカバー体は、
図1Cに示したように、開口16
1を有する収納部16aを備え、開口部に閉じ紐16bが装着されて、封止できるようになっている。カバー体16は薄いゴム材で作製する。なお、ゴム材に限定するものでなく、他の材料で作製してもよい。例えば、滑り止め材で作製すると、検査時の滑落を防止できる。
【0051】
図4、
図5を参照して、実施形態1のX線撮影補助具を用いたX線撮影方法を説明する。なお、
図4は実施形態1のX線撮影補助具を用いた各胃形のX線撮影方法を示し、
図4Aは鉤状胃/下垂胃撮影の概略図、
図4Bはやや横胃撮影の概略図、
図5はX線撮影補助具を用いた他の胃形のX線撮影方法を示し、
図5Aは横胃撮影の概略図、
図5Bは瀑状胃撮影の概略図である。
各
図4、
図5は、被検者を検査台に腹臥位させた状態における被検者の頭部、腹壁、横隔膜及び剣状突起(鳩尾)と、使用するX線撮影補助具の位置関係を示している。
用語「腹臥位」(ふくがい)とは、被検者の顔を自然な形で横に向けうつ伏せに寝かせた状態を意味している。また、使用するX線撮影補助具は胃形によって異なり、
図4の胃形の場合は腹部圧迫体単独の使用、
図5の胃形の場合は腹部圧迫体と補助バネ体との組合せ使用となっている。
【0052】
(a)鉤状胃/下垂胃の撮影
被検者の胃形が鉤状胃/下垂胃の場合、X線撮影補助具10として、腹部圧迫体11を単独で使用し、X線マーカーでモニターしながら位置を調整し正確に位置決めしてX線撮影を行う。
すなわち、鉤状胃は、釣り針や鉤のように曲がっている胃であり、胃体部、前庭部、幽門部の撮影が困難な胃部位であるが、
図4Aに示したように、腹部圧迫体11を被検者の鳩尾に押し当てることにより、鉤状胃のU、M、L部分が伸展拡大され、鉤状胃のU、M、L部分も前胃壁が伸展拡大され、描出範囲が広くなるので正確なX線撮影ができる。
【0053】
また、下垂胃は、下垂していて胃角部胃角切痕が腸骨線を超えて骨盤にかかっている胃であり、この胃は胃体部、前庭部及び幽門部の撮影が困難な胃部位となっているが、腹部圧迫体11を
図4Aの点線の位置へ移動させることによって、下垂胃のU、M、L部分も前胃壁が伸展拡大され、描出範囲が広くなるので正確なX線撮影ができる。
【0054】
(b)やや横胃の撮影
軽度横胃は、胃体部、前庭部、幽門部)胃体部は更に短縮し更に横に傾き、頭側方に軽度回転。立て方向の伸展と横方向の平坦化が求められる。
そこで、このやや横胃に対しては、
図4Bに示したように、
図4Aの鉤状胃などと同様にて、被検者の鳩尾に腹部圧迫体11を押し当てて撮影する。結果は、鉤状胃の撮影と同じになる。
【0055】
(c)横胃の撮影
横胃に対しては、
図5Aに示したように、腹部圧迫体11に補助バネ体15を二つ折りして付設し、被検者の鳩尾に腹部圧迫体11を押し当てて撮影する。
【0056】
(d)瀑状胃の撮影
瀑状胃は、窮隆部が背中側に捲れこんでいて、これが瀑布のように観察される胃であるが、胃体部、前庭部、幽門部の撮影が困難な胃部位となっている。そこで、X線補助具10は、
図5Bに示したように、腹部圧迫体11に補助バネ体15を二つ折りして付設し、被検者の鳩尾に腹部圧迫体11を押し当てて撮影する。
【0057】
以上説明したように、X線撮影補助具10によれば、腹部圧迫体11単独、乃至腹部圧迫体11に補助バネ体15を付設することによって、被検者によって異なる胃形、例えば鉤状胃、横胃(牛角胃)、下垂胃、瀑状胃など略すべての胃形に適応させて各胃のX線撮影が可能になる。すなわち、上記(1−1)〜(1−7)の作用効果を奏することができる。その結果、病院等施設及び放射線技師間の検査格差が解消されて正確な撮影ができる。
【0058】
[実施形態2]
図6〜
図10を参照して、本発明の実施形態2に係るX線撮影補助具を説明する。
【0059】
図6を参照して、本発明の実施形態2に係るX線撮影補助具の概要を説明する。なお、
図6は本発明の実施形態2に係るX線撮影補助具を構成する4個の腹臥位腹部圧迫体
の概略斜視図である。
本発明の実施形態2に係るX線撮影補助具17は、形状乃至サイズなどが異なる、いわゆるタイプ(type)が異なる複数個、例えば4個の腹部圧迫体18〜21で構成されおり、この点で1個の腹部圧迫体10からなる実施形態1のX線撮影補助具10と構成が異なっている。
以下の説明は、両者に共通する構成部分には同一符号を付して重複説明を省略し、異なる構成を詳述する。
【0060】
このX線撮影補助具17は、タイプ(type)が異なる複数個、例えば4個の腹部圧迫体18〜21で構成されており、これらの腹部圧迫体18〜21は、
図6に示したように、形状乃至サイズが異なる直方状乃至円盤状ブロック体からなり、これらは少なくとも一つの平坦面乃至湾曲面を有し、いずれかの面にX線マーカー14が付設された構成を有する。なお、「直方状ブロック体」及び「円盤状ブロック体」における「状」は幾何学的な「直方体」及び「円盤体」形状だけでなく、それらの形状を若干変更、例えば「直方体」にあっては隅角部が「直角」でなく湾曲したものなどを含んだ意味を表している。なお、このX線撮影補助具17にあって、それぞれの腹部圧迫体18〜21は各カバー体(図示省略)に収納して使用されるようになっている。
【0061】
このX線撮影補助具によれば、X線撮影補助具は、例えば4個の腹部圧迫体で構成され、これらにX線マーカーが付設されているので、以下の顕著な作用効果を奏する。
(2−1)X線撮影補助具は、複数個の腹部圧迫体を単独乃至複数個組み合わせることによって、被検者によってそれぞれ異なる胃形に適応させて、モニターしながら撮影できる。また、個数が少ないので扱い及び操作が簡単になり、また、保管・管理も容易になる。
(2−2)X線撮影補助具を構成する腹部圧迫体は、少ない個数で単純な直方状ブロック体乃至円盤状ブロック体で形成されるので、製作が簡単で安価になる。
(2−3)各腹部圧迫体には、X線マーカーが付設されているので、このX線マーカーをモニターすることによって、各腹部圧迫体の腹部への位置決め調整が正確にできる。また、再検査などの際に、X線写真フィルム上のX線マーカーにより検査時に如何なる腹部圧迫体が選択され、位置された箇所などの調査・検証が可能になる。さらに、X線マーカーは進行胃癌の大きさを測る物差しにもなる。
(2−4)各腹部圧迫体はカバー体で覆って使用するので、被検者毎に交換が可能になり、感染予防になり衛生的に扱える。
(2−5)以上から、このX線撮影補助具は、放射線検査技師の経験年数乃至スキル差に殆ど左右されることなく、病院等施設及び放射線技師間の検査格差を解消できる。
【0062】
以下、
図7〜
図8を参照して、このX線撮影補助具を構成する個々の腹部圧迫体を詳述する。
【0063】
図7A〜
図7Dを参照して、2個の腹部圧迫体18、19を説明する。なお、
図7は図
6の腹臥位腹部圧迫体
18、19を示し、
図7Aは腹臥位腹部圧迫体
18の正面図、
図7Bは
図7Aの底面図、
図7Cは腹臥位腹部圧迫体
19の上面図、
図7Dは
図7Cの側面図である。
腹部圧迫体(以下、type1ともいう)18は、上下面に所定大きさの正方形及び周囲側面が長方形の直方状ブロック体からなり、スポンジ材で形成されている。
このブロック体の一面にX線マーカー14が付設されている。寸法は、長さL
21は100mm、横幅W
21は100mm、縦幅W
22は50mmである。
この腹部圧迫体18は、後述する腹部圧迫体21(type4)と組み合わせて「瀑状胃」の撮影に使用する。
【0064】
また、腹部圧迫体(以下、type2ともいう)19は、上下面が所定大きさの円形及び周囲側面が湾曲した円盤状ブロック体からなり、スポンジ材で形成されている。周囲側面にマーカー装着穴が形成されている。
腹部圧迫体19の寸法は、上下面正方形の一辺は、例えば100mm、各側面(厚さ)は50mmである。この腹部圧迫体19は、単独で「下垂胃」の撮影に使用する。
【0065】
図8A〜
図8Cを参照して、他の2個の腹部圧迫体20、21を説明する。なお、
図8は図
6の腹臥位腹部圧迫体
20、21を示し、
図8Aは腹臥位腹部圧迫体
20の正面図、
図8Bは
図8Aの底面図、
図8Cは側面図、
図8Dは腹臥位腹部圧迫体
21の上面図、
図8Eは
図8Dの底面図、
図8Fは側面図である。
腹部圧迫体(以下、type3ともいう)20は、
左右側面が所定大きさの正方形並びに上下及び周囲側面が長方形の直方状体からなるクッション材で形成され、一面にX線マーカー14が付設された構成を有する。
【0066】
また、腹部圧迫体(以下、type4ともいう)21は、左右側面が所定大きさの
湾曲した長方形並びに上下及び周囲側面が長方形の直方状体からなるクッション材で形成され、一面にX線マーカー14が付設された構成を有する。
【0067】
以上説明したように、X線撮影補助具10は、タイプが異なる4個の腹部圧迫体18〜21
等のように、形状乃至サイズが異なる直方状体乃至円盤状体からなり、これらは少なくとも一つの平坦面乃至湾曲面を有し
ており、いずれかの面にX線マーカー
14が付設された構成を有する。このX線撮影補助具
10によれば、X線胃撮影時に、被検者へ押し当てた腹臥腹部圧迫体
18〜21の位置をモニターできるので、正確な胃部位のX線撮影が可能になる。腹臥腹部圧迫体
18〜21は単純形状且つ数少ない個数で構成することによって、扱いを容易にし、且つ安価なX線撮影補助具を提供できる。少ない個数の単純な形状な腹臥位腹部圧迫体を単独乃至複数組み合わせて使用することよって病院等施設及び放射線技師間の検査格差を解消できる。なお、腹部圧迫体の個数
18〜21は4個に限定するものでなく、
5個以上であってもよく、また、ブロック体は他の形状、例えば、球状/半球状ブロック体などであってもよい。
【0068】
次に、
図9、図10を参照して、上記腹部圧迫体を用いた胃部位のX線撮影法を説明する。なお、
図9は実施形態2のX線撮影補助具を用いた各胃形のX線撮影を示し、
図9Aは鉤状胃/下垂胃撮影の概略図、
図9Bはやや横胃撮影の概略図である。
図10は
実施形態2のX線撮影補助具を用いた他の胃形のX線撮影を示し、
図10Aは横胃撮影の概略図、
図10Bは瀑状胃撮影の概略図である。
4個の腹部圧迫体18〜21を用い、被検者の胃形に合わせ、これらを単独乃至複数組み合わせて撮影する。
【0069】
(a)鉤状胃/下垂胃の撮影
被検者の胃形が鉤状胃/下垂胃の場合、腹部圧迫体
19(type2)を単独で使用し、X線マーカーでモニターしながら位置を調整し正確に位置決めしてX線撮影を行う。
すなわち、鉤状胃は、釣り針や鉤のように曲がっている胃であり、胃体部、前庭部、幽門部の撮影が困難な胃部位であるが、
図9Aに示したように、腹部圧迫体19を被検者の鳩尾に押し当てることにより、鉤状胃のU、M、L部分が伸展拡大され、鉤状胃のU、M、L部分も前胃壁が伸展拡大され、描出範囲が広くなるので正確なX線撮影ができる。
【0070】
また、下垂胃は、下垂していて胃角部胃角切痕が腸骨線を超えて骨盤にかかっている胃であり、この胃は胃体部、前庭部及び幽門部の撮影が困難な胃部位となっているが、同じ方法によって、下垂胃のU、M、L部分も前胃壁が伸展拡大され、描出範囲が広くなるので正確なX線撮影ができる。
【0071】
(b)やや横胃の撮影
やや横胃は、
図9Bに示したように、
type3の腹部圧迫体20とtype4の腹部圧迫体21とを組合せて撮影する。
【0072】
(c)横胃の撮影
横胃に対しては、図
10Aに示したように、
type3の腹部圧迫体20とtype4の腹部圧迫体21を組合せて撮影する。
【0073】
(d)瀑状胃の撮影
瀑状胃に対しては、図
10Bに示したように、
type1の腹部圧迫体18と、type4の腹部圧迫体21と、type3の腹部圧迫体20を図3Dに示した実施形態1の腹部圧迫体15の場合と同様に折り曲げたものとを組合せて撮影する。
【0074】
以上から、このX線撮影補助具は、放射線検査技師の経験年数乃至スキル差に殆ど左右されることなく、病院等施設及び放射線技師間の検査格差を解消できる。