(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持部のうち先端部分を含む連続した部分の少なくとも一部の方向の太さが、前記支持部のうち前記連続した部分以外の部分又は前記張架部又は前記把捉部の少なくとも一方のうち前記支持部の付け根の部分及びその近隣の部分の少なくとも一方の少なくとも一部の方向の太さ以上である
請求項1に記載のデンタルフロスホルダ。
材料を加工し、歯間清掃用のデンタルフロスホルダであって、デンタルフロスと、該デンタルフロスを張架する張架部と、該張架部が係合された把捉部と、前記張架部又は前記把捉部の少なくとも一方に係合された突起状の支持部と、を有し、前記張架部又は前記把捉部の少なくとも一方の1つにつき前記支持部が1つ以下であるか、前記張架部又は前記把捉部の少なくとも一方の1つにつき前記支持部が複数であって前記張架部又は前記把捉部の少なくとも一方の1つに係合する前記複数の支持部の先端部分どうしの間隔が5mm以上であるか、前記張架部又は前記把捉部の少なくとも一方の1つにつき前記支持部が複数であって前記複数の支持部の少なくとも一部の端部が略半径0.5mm以上の丸みを帯びた形状であるか、の少なくともいずれかであり、前記支持部の少なくとも一部において、先端部分を含む連続した部分の任意の方向の最大の太さが前記支持部の少なくとも一部のうち前記連続した部分以外の部分の前記任意の方向と同一の方向の最小の太さ以下であるか、前記最大の太さが前記最小の太さより大きく前記連続した部分の張り出し部分のうち前記支持部の少なくとも一部と係合する前記張架部又は前記把捉部に向き合う部分が前記デンタルフロスの長さ方向となす角度が45°以下であるか、の少なくとも一方であるデンタルフロスホルダを製造する加工部を具えることを特徴とする
デンタルフロスホルダ製造装置。
材料を加工し、歯間清掃用のデンタルフロスホルダであって、デンタルフロスと、該デンタルフロスを張架する張架部と、該張架部が係合された把捉部と、前記張架部又は前記把捉部の少なくとも一方に係合された突起状の支持部と、を有し、前記張架部又は前記把捉部の少なくとも一方の1つにつき前記支持部が1つ以下であるか、前記張架部又は前記把捉部の少なくとも一方の1つにつき前記支持部が複数であって前記張架部又は前記把捉部の少なくとも一方の1つに係合する前記複数の支持部の先端部分どうしの間隔が5mm以上であるか、前記張架部又は前記把捉部の少なくとも一方の1つにつき前記支持部が複数であって前記複数の支持部の少なくとも一部の端部が略半径0.5mm以上の丸みを帯びた形状であるか、の少なくともいずれかであり、前記支持部の少なくとも一部において、先端部分を含む連続した部分の任意の方向の最大の太さが前記支持部の少なくとも一部のうち前記連続した部分以外の部分の前記任意の方向と同一の方向の最小の太さ以下であるか、前記最大の太さが前記最小の太さより大きく前記連続した部分の張り出し部分のうち前記支持部の少なくとも一部と係合する前記張架部又は前記把捉部に向き合う部分が前記デンタルフロスの長さ方向となす角度が45°以下であるか、の少なくとも一方であるデンタルフロスホルダを製造する加工工程を具えることを特徴とする
デンタルフロスホルダ製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明が提供するデンタルフロスホルダ1(以下、ホルダ1と略記する。)は、ABS・CA・EP・FRP・PC・PCL・PE・PET・PLA・PMMA・PP・PS・PVC等の樹脂、繊維、各種ゴム、金属、木材、ガラス、セラミック、カーボン素材、紙等の材料からなる。ホルダ1は歯ブラシ型の棒状を基本とする形状でもよく、その場合、歯ブラシ程度の大きさが手で持ちやすく、具体的には、棒状の部分は直径が5mm程度から20mm程度まででもよい。あるいは、ホルダ1は板状を基本とする形状でもよく、その厚さは0.2mm程度から5mm程度まででもよい。一般的用途でのホルダ1の長さの上限は100mmか200mm程度がよい。ホルダ1は携帯できる小さなサイズでもよく、一般的用途での長さの下限は30mm・40mm・50mm程度がよい。特殊な用途等には上記以外の長さでもよく、本明細書等における他のサイズ等の数値の記載でも同様である。ホルダ1は、糸状のデンタルフロス2(以下、フロス2と略記する。)と、その両端等をブリッジ状等に張架して緊張状態にする張架部3と、略棒状の細長い形状等であって、手で握る又は掴むことができる把捉部4と、突起状等の支持部5を有する。フロス2は上記以外の材料からなってもよい。
【0015】
フロス2は既知の多様なデンタルフロスから選択されてもよい。フロス2の長さは10mm程度から30mm程度までが好適である。フロス2は張架部3に接着等により固定されてもよく、交換可能でもよい。張架部3と把捉部4とは一体成型等により連続してもよい。張架部3は多くの場合、把捉部4の先端が2つに分岐している部分であり、2つの部分のそれぞれでフロス2の両端に係合される。なお、本明細書等において係合とは、複数の部分が接合・嵌合・溝に引っかけたり巻き付けたりして固定されるような結合等によって組み合わされていることと、互いに異なる名称の部位等がもともと一体としてつながった状態で製造され分けることができないことの両方の意味を含む。フロス2と張架部3の中間のブリッジ部分との間隔は8mmから20mm程度がよいが、後述する垂直型では40・50mmまででもよい。フロス2及び張架部3を合わせて頭部23と記載する。フロス2は、頭部23ごと交換可能でもよく、さらに支持部5と共に交換可能でもよい。フロス2の衛生を保つために、フロス2に手を触れずに頭部23ごと交換可能でもよく、そのために、頭部23が透明等のカバーで覆われ、カバーごと把捉部4と嵌合されてもよい。その際、安全のため、カバーがついた状態でのみ頭部23が把捉部4と嵌合及び取り外し可能となるようロック機構が組み込まれてもよい。あるいは、頭部23が把捉部4と嵌合された状態でのみカバーが取り外し可能となるようなロック機構が組み込まれてもよい。
【0016】
図1が示す各種形状のホルダ1では、フロス2の長さ方向と把捉部4の長さ方向との関係等がそれぞれ異なる。フロス2は、
図1aのように把捉部4の長さ方向に略平行であれば、前歯の歯間清掃に好適であり(このような形状の頭部23を平行型頭部231と記載する。)、
図1bのように把捉部4の長さ方向に略垂直であれば、奥歯の歯間清掃に好適である(このような形状の頭部23を垂直型頭部232と記載する。)。把捉部4の両端にこれらがそれぞれ取り付けられてもよい。また、垂直型頭部232で前歯の歯間清掃を行うことも可能である。
【0017】
図1aではフロス2の歯間への進入方向11が示されているが、
図1bでは歯間への進入方向11は図示されておらず、歯間への進入方向は図の手前側又は奥側に相当する。使用者は、奥歯の歯間清掃時に、例えば左側から右側へと清掃位置を移す際、
図1bのホルダ1を裏返し、進入方向を奥側から手前側に変更することで、支持部5が常に口の内側に向かうようにすることができる。支持部5が片側の張架部3のみに付属する垂直型頭部232では、歯間への進入方向における支持部5及びフロス2の高さの関係が変更可能でもよい。つまり、使用者は、左の下の奥歯の清掃時には
図1bの奥側を歯間への進入方向とし、支持部5を図の手前に移動させ、右の下の奥歯の清掃時には
図1bの手前側を歯間への進入方向とし、支持部5を図の奥に移動させ、というように、支持部5の位置を、使用状況に応じて切り替えられる。これにより、使用者は舌を支持部5に添えやすくなる。
【0018】
垂直型頭部232では、
図1cのように支持部5がフロス2の両側に係合してもよく、その片側又は両側の支持部5が取り外し可能でもよい。支持部5がフロス2の両端の2つの張架部3に係合する場合、奥歯の歯間清掃時に一方の支持部5を使用する時にはもう一方の支持部5が口腔内に当たる。その際に支持部5の先端で口腔に傷がつかないよう、支持部5の先端が半球状等に丸められた形状であることが望ましい。
【0019】
図1dのように、フロス2が把捉部4の長さ方向と45°等の角度をなして斜めになっていれば、前歯と奥歯の両方に使用可能である(このような形状の頭部23を傾斜型頭部233と記載する。)。傾斜型頭部233では、
図1eのように、前歯用支持部51と奥歯用支持部52の両方が取り付けられてもよい。
図1eに図示される進入方向11は前歯の歯間清掃時の方向であり、奥歯の歯間清掃時の進入方向は図の手前側又は奥側となる。また、傾斜型頭部233での奥歯の歯間清掃時には、ホルダ1を口腔内に挿入する際の挿入方向12も図とは異なることがある。
【0020】
図1fのように、頭部23又は頭部23及び支持部5が、角度変更部6により、フロス2の長さ方向及び進入方向11に垂直な方向又はz方向を軸として回転可能であれば、平行型頭部231・垂直型頭部232・傾斜型頭部233が1本のホルダ1で兼用可能になる。この角度変更部6は、自由回転し、摩擦又はネジ等の固定具により任意の角度で固定可能でもよく、例えば15°ごとにクリックストップを有し、定められた角度のうちいずれかで固定可能でもよい。
【0021】
なお、本発明の各図面では、それぞれのフロス2の方向に平行な方向をx方向とし、x方向に垂直で進入方向11に略平行な方向をy方向とし、x方向及びy方向に垂直な方向をz方向とする。進入方向11に略反対の方向がyの正方向であるが、図示の都合もあって、y方向は進入方向11に対してやや傾いていることがある。また、把捉部4の長さ方向とは、頭部23との関係及びホルダ1の機能から導かれる方向であって、ホルダ1の形状を制約するものではない。つまり、ホルダ1及び把捉部4は、長さ方向よりそれと異なる方向の方が長い形状であってもよい。把捉部4の長さ方向は、
図1a・b・cのように口腔への挿入方向12に平行であることもあり、
図1d・e・fのように挿入方向12に平行でないこともある。また、進入方向11及び挿入方向12は、使用者それぞれの使い方により±10°又は±20°程度の範囲で異なることがある。
【0022】
支持部5が張架部3に係合する場合、支持部5にかかる力を張架部3が受ける。よって張架部3は曲がりにくい方がよく、太いか剛性の高い材料によってなることが望ましい。また支持部5も、特に後述の細い棒状等の場合、舌等からの力を受けて曲がらないよう硬質の材質の方がよい。これらは、ACM・ANM・AG‐2・BR・CO・CR・CSM・ECO・EP・EPDM・EPM・EVA・FKM・FPM・IIR・IR・JSR‐BR・JSR‐NBR・JSR‐SBR・N・NBR・NR・PT・Q・PUR・SBR・Si・SR・T・U・VMQといった各種ゴムや、TPEやTPS、あるいはSBC・SEBSのようなゴム状の弾性を有する重合体(本明細書等ではこれらを併せてゴム類と記載する。)によってなる場合、曲がってしまって力を適切に受けられないことがあるため、ゴム類以外等の材料2によってなる方がよい。通常の張架部3・把捉部4・支持部5等の引張り弾性率は、0.3以上5以下が好ましく、0.5以上4以下がより好ましく、1以上3以下がさらに好ましい(いずれも単位は10
4kg/cm
2、ASTM D638に準拠する。)。また曲げ強さは50以上1500以下が好ましく、300以上1000以下がより好ましく(kg/cm、ASTM D638に準拠する。)、又は20以上200以下が好ましく、50以上100以下がより好ましい(MPa、JIS K7171 2016に準拠する。)。曲げ弾性率は50以上5000以下が好ましく、1000以上4000以下がより好ましい(MPa、JIS K7171 2016に準拠する。)。ただし、それらの骨格部分以外の一部、例えば舌等との接触部分等や後述の摩擦低減部等は、柔軟な当たりのため、骨格部分等とは弾性の異なるゴム類等や緩衝材製でもよい。
【0023】
支持部5は、
図1等の各図のように、まっすぐな棒状・曲がった棒状・略平面の板状・曲面の板状の少なくともいずれかでもよい。
図2bに示されるように、支持部5と張架部3又は把捉部4との係合部分50の中心501と、支持部5のうち係合部分の中心501から支持部5の形状に沿った距離において最も離れた部分(その部分が面である場合にはその面の中心)502とを支持部5の形状に沿って結ぶ直線又は曲線500に垂直な支持部5各部の複数の平面の断面を、本明細書等では支持部垂直断面51と記載する。係合部分50及び中心501については後述する。棒状の支持部5では少なくとも一部の支持部垂直断面51の形状が円・正方形・角丸正方形に近く、板状の支持部5では少なくとも一部の支持部垂直断面51の形状が楕円・長方形・
図2cのような角丸長方形に近い。
図1bのようなまっすぐな棒状の支持部5では、直線500は支持部5の長手方向に平行である。
図1d等のように、直線500がフロス2に対して傾斜してもよいが、直線又は曲線500の少なくとも一部がフロス2の長さ方向に略平行の方がよい。その方が、使用者が支持部5に対して進入方向11の正反対の方向に自然に力を加えやすいので効率的であり、加えて、係合部分50に無理な力がかからず、支持部5が折れにくいからである。
【0024】
曲面の板状の支持部5では、少なくとも一部の断面の輪郭が2次曲線等の曲線である。つまり曲面の板状の支持部5は、
図3a・b・cの三面図及び断面図dに示される形状等のように、xy平面に平行な支持部5の断面のうちyの負方向側の部分が曲線であり、yz平面に平行な支持部5の断面の同じyの負方向側の部分が直線であるような場合を含む。また、曲面の支持部5の表面の少なくとも一部は凹面でもよい。凹面とは、中央部が周辺部の少なくとも一部よりくぼんでいるような形状である。支持部5では凹面がyの負方向側を向いてもよく、その場合、舌や指先の凸面が凹面に接した時にフィットしやすい。平面はそれに準じる。凸面状の支持部5では、舌や指に形状がぴったり合うという効果が得られないことが多い。支持部5は、複数の凸面の複合によって全体として凹状にくぼんでいてもよいが、その場合も舌等の形状に適合しないことがある。
【0025】
支持部5の少なくとも一部の(方向の)太さは、張架部3又は把捉部4のうち支持部5が係合する部分及びその近隣の部分の少なくとも一部の(方向の)太さ以上でもよい。例えば支持部5は、
図1b等のように、張架部3と太さが略同じ棒状でもよい。なお、支持部5の太さとは、支持部垂直断面51の任意の方向と平行な方向の複数の長さのうち最大の長さである。また、張架部3及び把捉部4の太さとは、張架部3又は把捉部4の長手方向に垂直な断面における任意の方向と平行な方向の複数の長さのうち支持部5を含まない最大の長さである。さらに、近隣の部分とは、張架部3又は把捉部4において支持部5が係合する部分から当該部分の張架部3又は把捉部4の太さの分離れた位置までの範囲を指す。これは、係合部分では補強のため、また成形の都合等で近隣の部分より太さが大きいことが多いので、その分を差し引くという趣旨である。張架部3・把捉部4・支持部5の太さは方向によって異なることがある。例えば、板状の支持部5の太さはその断面の差し渡しの方向によって異なり、
図2cのAB方向(縦方向)の太さよりそれに垂直な方向(横方向)の太さが大きい。このような場合、板状の支持部5の厚さが張架部3の太さより小さくても、厚さに垂直な方向の太さが張架部3の太さより大きければ、本段落冒頭に記載の条件に適合する。つまり、支持部5は、
図1eの奥歯用支持部52等のように、それが係合する張架部3より一部の方向(のみ)の太さが大きくてもよい。特記の場合、支持部5の太さの一部は、張架部3及び把捉部4のうち太さの一部が略一定である部分のうち太さがもっとも小さい部分の太さの一部以上でもよく、支持部5が係合する張架部3又は把捉部4との係合部分と平行な支持部5の断面の差渡しの長さの少なくとも一部が、張架部3又は把捉部4のうち支持部5が係合する部分及びその近隣の部分の少なくとも一部の太さ以上でもよい。太さの一部が略一定とは、太さの一部が張架部3又は把捉部4の太さの分の長さ方向の範囲において略一定であることである。よって、張架部3又は把捉部4の先端部分で太さが急に小さくなる部分は該当しない。以上により支持部5の強度が確保され、支持部5に舌等からの力がかかっても曲がったり折れたりせずに、その力を張架部3の先等に伝えることができる。なお、本明細書等においては原則として、「端部」は板状の部分等の周囲の部分を指し、「先端部分」は端部の一部であって、支持部5では、係合部分の中心501から支持部5の形状に沿った距離において最も離れた部分502を含む部分、例えば棒状の支持部5における先端の尖った部分を指す。張架部3又は把捉部4の先端部分は、細長い部分の先の部分等を指す。
【0026】
特記の場合には次のように定めてもよい。支持部5の一部の方向の太さは、フロス2の長さ方向に垂直な複数の平面と支持部5各部との交線のなす閉領域の、任意の方向と平行な方向の複数の長さのうち最大の長さである。複数の前記閉領域の幾何中心を結ぶ直線又は曲線が支持部5の中心線である。張架部3又は把捉部4と支持部5との係合部分は、中心501を含みフロス2の長さ方向に垂直な平面と張架部3又は把捉部4と支持部5との交線のなす閉領域である。
【0027】
支持部5は、フロス2から進入方向11とその反対方向とに延長された範囲、及びその範囲から外側に数mm、より具体的には1mm・2mm・3mm・4mm・5mmのいずれかまでの範囲とは重ならない位置に係合されてもよい。この範囲に支持部5があると、ホルダ1を口腔内で動かす範囲が制約される・使用者が鏡でホルダ1及び歯間の位置関係を見ながらホルダ1を使用する際に当該位置が支持部5に隠れて見えない・歯間へのフロス2の挿入時に支持部5が歯に干渉又は衝突するといった問題があるからである。
【0028】
平行型頭部231の場合、支持部5は、
図2のように、フロス2の長さ方向の略延長線上であり、ホルダ1の先端である位置に取り付けられてもよい。つまり、支持部5の一部がフロス2の長さ方向の略先にあってもよい。垂直型頭部232であれば、
図1b等のように支持部5とフロス2の延長線との距離が略0でもよい。このように支持部5がフロス2の延長線に近い方が、支持部5にかけられた力がフロス2に伝わりやすく、またホルダ1が破損しにくい。一方、
図1aのように、支持部5がフロス2の長さ方向の延長線の近傍、すなわちフロス2の長さ方向の延長線上及びそこから進入方向11又はその反対方向(y方向)に0mm以上30mm(特記の場合60mm)までの範囲の位置、さらに進入方向11及びフロス2の長さ方向に垂直な方向すなわちホルダ1の左右方向(z方向)やフロス2の長さ方向(x方向)にそれぞれ0mm以上30mm(特記の場合60mm)までの範囲の位置に取り付けられてもよい。支持部5がフロス2の長さ方向の延長線から離れていると、フロス2が張架部3に開けられたフロス2の長さ方向の穴を通り、外側で固定されるという係合方法が可能となる。これによりフロス2の固定強度の向上及び製造コストの低減が図れる。垂直型頭部232でも、支持部5は、フロス2の長さ方向の延長線から同様の範囲内に取り付けられてもよい。また、使用者が好みに応じて支持部5の位置を調整できてもよい。
【0029】
図2aはホルダ1の使用例を示す。使用者が、下の前歯91の歯間清掃のためにホルダ1を挿入方向12の方向で口腔内に運ぶと、自ずと、支持部5が使用者の舌92に乗った状態になる。使用者は、舌92の先でフロス2の位置を動かしながら、清掃すべき歯間の上に置くことができる。なお、使用者の手は図示しない。次に使用者は、例えばホルダ1全体を細かくのこぎりのように前後させ、フロス2を前歯91の歯間に進入させる。使用者が、例えば支持部5を受ける舌92を前後させつつ、舌92を支点として、把捉部4側をゆっくり下方向に動かすと、フロス2が歯間を貫通する。使用者は、舌92を上下方向にも動かしてもよく、あるいは舌92を動かさずにその上で支持部5を滑らせてもよい。この時、舌92でホルダ1の片側が支えられているため、貫通時の勢いでフロス2が歯間の先の歯茎に強く当たることはない。使用者は、前歯91の側面及び歯間の底の歯茎の歯垢をこそげ落としたのち、舌92の補助を借りて進入時とは逆方向にフロス2を排出後、場合によりフロス2の洗浄を挟んで次の歯間に移る。使用者には、舌92で支えている安心感があるので、フロス2で歯茎が傷つく不安感が払拭される。上記の一連の操作は直感的に可能であり、高齢者や児童等でも容易に行うことができる。また、使用者が使用中の最初から最後まで舌92を支持部5に接している必要はなく、歯間への進入時に、フロス2が勢い余って歯間の奥に直撃しないよう舌92をストッパーとして待機させておくという使い方も可能である。どのように使うかは使用者次第であり、支持部5等の形状が、使用者の好みに応じて自由な使い方ができるようになっていてもよい。
【0030】
上の前歯93の歯間清掃では、使用者は舌92を上にあげて、
図2aとは上下逆に口腔内に入れたホルダ1の支持部5を舌92の下側に添えることで、上記と略同様の操作ができる。犬歯程度まではこの方法で対応可能である。ただし、舌92をあげると舌小帯95が伸びて、使用者によっては支持部5に当たることがある。このような使用者は、後述の垂直型頭部232を用いて、舌92ではなく指を支持部5に添えてもよい。また後述の摩擦低減部や振動減衰部8が付属するホルダ1を用いて、摩擦低減部や振動減衰部8を口蓋94に当てるという対応も可能である。舌小帯95に関する安全対策については後述する。
【0031】
犬歯より奥では、垂直型頭部232の方が楽に使用できる。使用者は、舌92のうち清掃しようとする歯間の付近の部分に支持部5を乗せ、把捉部4をフロス2の長さ方向すなわち左右方向に振ってフロス2を歯間に進入させる。以降は平行型頭部231と同様である。なお、従来のデンタルフロスホルダでは、歯間への進入時に、デンタルフロスの長さ方向を歯間に対して垂直ではなく傾けて進入させることがしばしば推奨される。しかし、奥の歯間に対してこれを行うのは、デンタルフロスの位置や方向と歯間との関係がわかりづらいこと・歯の厚さ等により難しかった。本発明に係る垂直型頭部232では、フロス2を垂直に進入させても安全性が高いので、奥歯の歯間清掃が無理なく行える。
【0032】
上の奥歯等の歯間清掃の際、使用者が、狙った歯間にフロス2を入れようとしているか、指を当てて確かめることがある。その場合にも、本発明に係るホルダ1では支持部5がガイドとなってフロス2を導くのが容易になる。使用者がそのままフロス2を歯間に進入させる際も、支持部5にかけた指をストッパーとして用いて、ホルダ1の意図しない動きすぎを防いでもよく、舌の代わりに指で支持部5を支えてもよい。特許文献1に記載のような糸状のデンタルフロスでは、使用者は両手の指を口腔内に入れ、さらにデンタルフロスをさまざまな方向に動かすために、口を大きく開ける必要がある。しかし、本発明のホルダ1では、使用者は片手の1本の指を口腔内に追加するだけでよく(舌で支える場合には追加しなくてもよく)、フロス2の向きはホルダ1の操作で調整できるので、口を大きく開けずに使用可能であり、使用者の負担が少ない。しかも使用者は、フロス2の両端と追加の指の3点でホルダ1を制御できるので、2点での制御しかできない糸状のデンタルフロスより使用者の意図に沿った操作が可能となる。このような使い方には、
図3a等に示される形状のように、支持部5がフロス2の延長線より進入方向11の反対側(A側)に取り付けられた懸架型の形状が好適である。使用者は、さらに舌を加えた4点でホルダ1の動きを制御することもできる。舌であれ指であれ、支持部5の方が、位置や面積等の点で、張架部3や把捉部4よりも添えやすい。
【0033】
図3は支持部5の各種形状を示す。
図3各図では図示の都合上両側の支持部5の形状がそれぞれ異なるが、これらが同じでもよい。
図3a・b・cの三面図及び断面図dに示される形状や
図3i・j・k・lに示される形状等のように、略平面状であるか凹面状である支持部5の少なくとも一部の面が、挿入方向12に略平行であり、フロス2に正対する側及びそれと対向する側とは異なる側を向いてもよい。より具体的には、略平面状又は凹面状である支持部5の少なくとも一部に接する平面がフロス2の長さ方向に平行な直線となす小さい側の角度は、支持部5が進入方向11の反対の方向(
図3のyの正方向)に向かう力を受けるためには、90°ではない必要があり、好ましくは0°以上60°以下、より好ましくは0°以上45°以下、さらに好ましくは0°以上30°以下であり、0°以上15°以下であればフロス2の方向と平行に近いので一層好ましい。前記角度が0°以上45°以下でより好ましい理由は、
図3dに示すように、その面が正面の方向から受けた力Fのうちy方向の成分Fyの絶対値がx方向の成分Fxの絶対値以上となるため、使用者がホルダ1を舌・指等で確実に支持して、y方向に適切な力を加えられるという点である。支持部5の面が略平面状であり、かつフロス2の方向となす角度が60°より大きいと、舌や指がyの正方向に力を加えても支持部5に適切な力がかからず、x方向にばかり力がかかるか、あるいは舌等が滑ってしまう。同様の理由により、z軸と平行で、係合部分の中心501及び支持部5の先端を通る平面と、フロス2の長さ方向とのなす小さい側の角度が0°以上45°以下等前述の範囲でもよい。
【0034】
図3a等では、支持部5がフロス2に対してy方向に高い位置にある。このように進入方向11においてフロス2と支持部5の高さが異なってもよい。つまり、支持部5のうち舌や指に接する部分である、略平面状であるか、凹面状である少なくとも一部が、フロス2の延長線より進入方向11又はその反対側にずれていてもよく、そのずれの量は20mm以下でもよい。これによりフロス2と支持部5との間に高さの差ができるため、舌・指等による支持が容易となり、フロス2が歯間の奥まで届き、指で支える場合に隙間に指が入りやすくなる。
【0035】
支持部5の一部、特に張架部3又は把捉部4との係合部分で太さが小さいと、細い係合部分が使用時の応力の集中により折れやすいので、係合部分が細くない方がよい。
図3dは、
図3a・bに示される係合部分50の中心501を通るホルダ1の断面である。
図3dでは、2つの支持部5の両方において、
図3cの係合部分50の両端に相当する箇所が、
図4の支持部5のように凹状ではなく、x方向の正負両側でなめらかにつながっている。このように、フロス2の長さ方向に平行で張架部3又は把捉部4と支持部5との係合部分50の中心501を通る断面の少なくとも一部における係合部分50の対向する外形部分の少なくとも片側が凹状でないことが好ましく、両側が凹状でなければより好ましい。その係合部分におけるフロス2の方向に平行なすべての断面において係合部分の少なくとも片側が凹状でなければさらに好ましく、両側が凹状でなければ一層好ましい。なお、断面における凹状とは、断面のある部分が、その部分と輪郭が連続する両隣の部分に対して谷状に内側へくぼんでいることである。係合部分50において、張架部3又は把捉部4の形状の一部が結合部分前後の部分に沿った形状であり、その形状が凹状の部分の一部に含まれる場合、係合部分50が凹部の一部をなしている。支持部5等のうち係合部分50とは異なる部分でも、凹状の部分が少ない又はない方が、強度上・衛生上望ましい。
【0036】
同じ理由で、支持部5のうち係合部分50に接する部分の少なくとも一部の方向の太さが、支持部5のうち係合部分50に接する部分以外の部分・張架部又は前記把捉部のうち係合部分50に接する部分及びその近隣の部分の少なくとも一方の少なくとも一部の方向の太さ以上でもよい。また、張架部3又は把捉部4から支持部5にかけての太さが、略一定であるか、小さくなることはあっても大きくなる部分がなくてもよい。すなわち、支持部5の直線又は曲線500を通る少なくとも一部の方向の断面における中心501に近い任意の部分とより遠い任意の部分との太さを比較すると、前記近い部分の少なくとも一部の太さが前記より遠い部分の少なくとも一部の太さ以上でもよい。あるいは、係合部分以外の支持部5においても、途中の一部のみ細い部分がなくてもよい。前記近い部分の少なくとも一部の太さが前記より遠い部分の少なくとも一部の太さより小さくなる場合、テーパー状になだらかに細くなるのが望ましく、急に細くなる、つまり段差状であると舌等の接触時の快適感を低下させるので望ましくない。このテーパー部分がフロス2の長さ方向となす角度は45°以下が好ましく、22°以下がより好ましい。あるいは、後述のように、段差部分の角がr0.5mm以上の丸みを帯びることが好ましい。
【0037】
使用者は、指ではなく棒状のもので口腔の外から支持部5を支えることもできる。その代わりとして、
図3e・f・gのように、支持部5が棒状部53をあらかじめ有してもよい。つまり、支持部5が把捉部4に近い長さで、口腔外から指で支えられるような形状でもよい。このような支持部5が可動部7により途中で関節状に曲がってもよい。棒状部53の一部が曲がった状態のまま動かず固定されてもよい。
【0038】
支持部5が
図2・3c等のように曲面の板状であれば、支持部5が舌等に広い面積で接触可能である。また、支持部5が棒状であれば、支持部5に強い力がかかっても支持部5がたわむことでその力を吸収し、張架部3との係合部分に過度の負荷がかからずにすむので、張架部3の変形や折れが起こりにくい。それら2者の折衷として、
図3fのように、棒状等の支持部5が張架部3に複数付属してもよい。複数の支持部5が柔軟であれば、力がかかった際にそれぞれが異なる変形量でしなることで舌・指等の形状に適合する。複数の支持部5は、2本の場合が、舌等に対する負荷をそれぞれが分散して受ける効率が高く、3本では1本が負荷を受けられないことがあって効率が下がる。複数の支持部5は1列に並んでいた方がよい。1列に並ぶとは、1つの張架部3又は把捉部4に付属する複数の支持部5を通る直線が存在するか、張架部3又は把捉部4が曲線状の場合、その1つの張架部3又は把捉部4の曲線状の形状に沿ってなめらかな曲面上に複数の支持部5が配列されていることである。特記の場合、複数の棒状の支持部5のそれぞれの直線又は曲線500の少なくとも一部を含む面が、挿入方向12又はz軸に略平行でもよい。複数の棒状の支持部5のそれぞれの直線又は曲線500の少なくとも一部がフロス2の長さ方向に略平行でもよく、直線又は曲線500の少なくとも一部とフロス2の長さ方向のなす角度が15°以下でもよく、30°以下でもよい。そうではなく、複数の支持部5が2列以上で、あるいはy方向に重なるように並んでいると、進入方向11の進入元側(zの正方向側)の支持部5が舌等に接触せずに無駄になることが多い。また、突起状の支持部5の先端が複数に分岐している場合、突起状の支持部5のうち分岐した部分よりも支持部5の根元の部分の長さの割合の方が大きければ、同じ1つの支持部5とみなされる。
【0039】
図3fのように1つの張架部3に複数の支持部5が付属する場合、上の前歯の歯間清掃時等に、複数の支持部5の間の部分が舌の下の舌小帯を挟むことがある。舌小帯が抜けないままホルダ1がひねられると舌小帯が切れる恐れがある。この点からは、1つの張架部3が支持部5を1つのみ有するのが最も安全である。1つの張架部3が複数の支持部5を有する場合、支持部5の隙間の部分が支持部5の長手方向に長いと舌小帯が挟まりやすく、隙間の部分の間隔が狭いと挟まった舌小帯が抜けにくいので、複数の支持部3が短く、それらの間隔が開いているほうがよい。出願人の試験によれば、複数の支持部3の長手方向の長さは10mm以下が好ましい。また、複数の支持部3の間隔は、太さ3mmの棒状の支持部5の場合、5mm以上で舌小帯が挟まってもまず切れないので好ましく、8mm以上で舌小帯が挟まってもすぐに抜けるのでより好ましく、12mm以上で舌小帯が伸びた時の長さ以上のことが多くほとんど挟まらないのでさらに好ましい。太さが2mmでもほぼ同様である。間隔の上限は、張架部3又は把捉部4のうち支持部5が係合可能な部分の長手方向の最大の長さから支持部5の太さ2本分を減じた値である。支持部5の一部が張架部3又は把捉部4と略平行で、それらの間に隙間が開いている場合にも、隙間の間隔は上記の範囲が好ましい。また、複数の支持部3の間隔の長さがそれぞれの支持部3の最大の太さより大きいか、最大の太さの2倍より大きいか、複数の支持部3の間隔の長さが複数の支持部3の長手方向の長さより大きければ、隙間に舌小帯が挟まっても切れることは少ない。支持部5の先端が分岐している場合も上記に準じ、分岐している部分は短く、分岐している部分どうしの間隔は広い方がよい。
【0040】
複数の支持部5が1つの張架部3と一体成形されているような場合、
図3f・gのように、支持部5がその本数に応じて張架部3より細いことで適切な弾力を得てもよい。ただし、支持部5が細すぎると、強度が不足し、また支持部5の先が尖るため、特に垂直型頭部232で両側の張架部3の両方にそれぞれ複数の支持部5が付属する場合、頬の内側の粘膜に当たって傷つける恐れがある。さらに、材料がPPやPE等の一般的な樹脂である場合の弾力性も加味すると、棒状の支持部5の太さは1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましい。上限は張架部の太さの2倍又は5mm程度である。また、支持部5の設置部分の長さの制限と支持部5の太さとの兼ね合いから、複数の支持部5の数にも上限がある。つまり、張架部3の限られた部分に複数の支持部5が付属するので、各支持部5が細くなりすぎず、その強度が保たれるよう、1つの張架部3につき3本までが好ましく、2本までがより好ましい。
【0041】
支持部3が1つの張架部3につき1つであれば金型等の製造コストが低減される。支持部5と張架部3又は把捉部4とが別部品ではなく、一体成形されても製造コストが低減される。いずれの場合も、形状が単純なため使用時の汚れがたまりにくく、使用後の清浄が容易であり、衛生面や安全面や意匠性等様々な面で使用者に安心感を与えやすい。
【0042】
図3hでは左右がTないしY字状につながった支持部5が張架部3の分岐前の把捉部4に係合しており、強い力に耐え、弾力性にも優れる。このような支持部5が両側の張架部3あるいは張架部3と把捉部4の両方に取り付けられてもよく、そのようなホルダ1は強い力がかかる使用法に耐えられる。このように左右がつながった支持部5がxの正負方向にスライドし、清掃する歯間の口腔内での位置に合わせてその都度左側か右側のみがせり出してもよい。それにより、反対の頬部に支持部5がぶつかることがなく、快適性が向上する。左右がつながった部分は、フロス2が歯間の奥まで達した時にも歯に接触しないような距離をフロス2との間に有する。しかし、この距離が歯に接触する範囲であれば、フロス2が歯茎に衝突しないためのストッパーとなる。支持部5はこのようにフロス2に対して進入方向11の逆方向に位置してもよい。そのような支持部5とフロス2との距離が、使用者の条件に合わせて調整可能でもよい。
【0043】
張架部3・把捉部4・支持部5が一体成形されている場合、それらはそれぞれの形状や機能によって区分される。例えば
図3各図では、分岐している部分が張架部3、分岐していない部分が把捉部4と区分される。また、ホルダ1がV字型であれば、2又に分かれた大部分が張架部3であり、根元のごく一部が把捉部4であるとみなすことができる。一方、
図1aのように、張架部3と把捉部4とが連続しており、形状からはそれらを判然と区分できないこともある。定義上、フロス2と係合する部分は張架部3であるから、
図1aのフロス2の下側付近の部分は張架部3であり、そこから外形に沿って上の張架部3に繋がる部分も張架部3と考えられるが、張架部3と把捉部4の境界部分は連続的である。張架部3と支持部5との関係では、境界部分はやや明確になる。例えば、
図3a・b・cに示される形状では、定義に従って、フロス2との係合部分を含む先端部分までが張架部3であり、その張架部3から突起状に派生する部分が支持部5であると考えることができる。張架部3と支持部5の係合部分における各部の帰属は次のようである。
図3bの張架部3を根元から先に、すなわち右から左に辿っていくとすると、支持部5が張架部3から派生する直前の張架部3の少なくとも一部の方向の太さが、支持部5の派生後にも維持されており、そのように太さが一定の仮想的な張架部3に支持部5が付属している、とみなすことができる。これにより張架部3・支持部5と、それらが互いに接する境界面である係合部分50が画定される。図形としての係合部分50の幾何中心が中心501である。
図3a・b・cの点線50の位置に想定される曲面が係合部分50である。このように、張架部3が丸みを帯びた棒状であれば、係合部分50は曲面となり、その曲面に沿った長径と短径の交差する係合部分50の面上の点を中心501とする。特記の場合、中心501は係合部分50の面上になくてもよい。把捉部4と支持部5との関係も張架部3と支持部5との関係と同様である。
図3hでは、T字状の突起が把捉部4から派生していると考えれば、T字状の突起全体が支持部5とされてもよい。
【0044】
図3i・j・k・lのように、突起部54が支持部5に設けられると、滑り止めの効果をもたらす。突起部54は、2本の指でつまむ際のために、支持部5の両面にあってもよい。突起部54はドット状・直線状・曲線状・絵柄等のいずれでもよく、支持部5の略平面又は凹面状である面の全面にあってもよく、周辺部だけでもよく、ゴム等からなってもよい。突起部54の起伏は、凹凸の高さ又は深さが2mm以下であるか、支持部5の太さの1/5以下であるかの少なくとも一方であれば、全体の形状に付加された補足的形状であるから、支持部5の形状の判別に際しては無視されてもよい。凹部が支持部5を貫通した穴状でもよい。
【0045】
ホルダ1のうち通常使用時に口腔内に挿入される部分の先端が鋭利だと、舌等に当たって痛さを感じさせ、時には舌小帯等の皮膚が薄い部分に刺さることがあるので、ホルダ1各部の端部や角は丸みを帯びていることが望ましい。特に支持部5は舌等が直接接触して力を加える部位であるから、尖った角や細い突起を有しないほうがよい。また、支持部5が複数の場合、張架部3又は把捉部4との係合部分の大きさの制限から細い棒状になることが多いが、棒状の支持部5の先端部分の安全性には特に配慮が必要である。
図3lのように、支持部5等が含む凸部では、凸部の高さvが凸部の底部の幅wの1/2以上の場合には、凸部の先端の半径rが0.5mm以上に丸められることが望ましい。つまり、支持部5が棒状であれば、その先端は太さが1mm以上の半球状であることが望ましい。誤飲時等の安全のためにはrは1mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましい。rの上限は、通常は支持部5の先端の最大の太さの1/2である。凸部の先端は球の一部に限られず、回転放物面やなめらかな多面体等でもよく、先端の形状が半径rの球面に近似していれば、その支持部5の先端部分は略半径rの丸みを帯びた形状である。なお、凸部の先端面と半径rの球面の一部との誤差がrの1/5以下(特記の場合1/10以下)であれば近似であるが、凸部の先端の最大の太さは2r以上である。突起の先端部分がさらに細部に複数の凹凸を有する場合には、それぞれの凸部について上記が適用される。板状等の支持部5であって、端部が扁平な場合も、90°以下で面が接する部分の半径rが前記の範囲でもよい。ただし、
図3bのようなゆるやかな弧状の外形の板状支持部5の端部では、力が1点に集中しにくいため棒状体の先端部分より為害性が低い。つまり、板状支持部5の形状によってはrが1mm未満でもよく、90°以下の角度で3以上の面が接する頂点を有するか、2面であっても60°以下の小さい角度で面が接する部分では、rが1mm以上の方がよい。これらにより、支持部5等の安全性と快適性が向上する。また、複数の支持部5の間に舌小帯が挟まった時にも、上記により端部等がすべりやすく傷つけにくければ、舌小帯が切れる事故が抑制される。ただし、触知限界未満のごくわずかな凹凸は無視されてもよい。JIS R 6010:2000(対応する国際規格はISO 6344‐3等)では、サンドペーパーの1000番は最大粒子径が63μm以下で累積沈降高さ95%の粒子径が12.4以上、2000番で58μm以下6.7μm以上とされていることから、凹凸の高さが50μm未満、好ましくは25μm未満、より好ましくは12μm未満であれば略平坦とみなしてよい。
【0046】
図3各図等のように支持部5が両側に付属しているホルダ1では、支持部5の太さ及びフロス2の長さ方向と平行な方向の長さの上限は、フロス2の長さ又は使用者の指の太さ、具体的には15から30mm程度である。口腔のサイズには年齢・性別による差や個人差があるが、フロス2の長さは個人の歯の幅に応じて最適な幅が選択されてもよい。支持部5の太さ及び長さもそれと同等であれば舌・指等と適合することが多く、それより過度に大きいと為害性を増大させる恐れがある。
図1b等のように支持部5が片側のみに付属しているホルダ1では、支持部5のフロス2方向の長さはフロス2の長さより大きくてもよい。その長さが使用者の舌の幅、具体的には40から60mmを超えるとそのままでは使用に支障をきたすが、使用者が好みに応じて短く切れるよう、出荷時にはその程度かそれより長くてもよい。使用者による切断や面取り加工等のための用具が提供されてもよい。
【0047】
使用者はホルダ1をフロス2の長さ方向に往復させながら進入方向11に動かすので、支持部5のフロス2方向の長さはその往復時に舌等から外れない長さであることが望ましい。よってその長さは、フロス2の長さと使用者の奥歯の最大の幅との差の1/2を最小とし、張架部3又は把捉部4の太さ以上が好ましく、3mm以上がより好ましく、5mm以上がさらに好ましい。
【0048】
支持部5は、
図3m・n・oのように半球状やリング状等でもよい。その場合、使用者が指をその中に入れ、挿入方向12又はz軸に垂直な平面上の360°あらゆる方向に力を加えて支持部5を動かすことができるので、よりきめ細かな歯間清掃が可能となる。さらに、半球状の支持部5では指で押すことで挿入方向12又はzの負方向の力を、リング状の支持部5では指の関節に引っ掛けることでzの正負両方向の力を、それぞれ使用者は加えることができる。半球状やリング状の支持部5は一部に切り欠きを有してもよく、切り欠きが指の太さより大きければ、使用者はその部分から横等へ指を出し入れできる。
【0049】
支持部5の先端は球状・半球状・円盤状・回転楕円状・T字状・Y字状等さまざまな形状でよい。ただし支持部5の先が太すぎると、過大な応力が支持部5の根元にかかることで支持部5が塑性変形したり折れたりする可能性が高まる。特に、
図4a・bが示す支持部5やL字状支持部55のように、進入方向11(略yの負方向)に先端部分が張り出した形状では、舌等からの進入方向11の反対方向(略yの正方向)の力が係合部分50にかかるだけでなく、張り出した部分に舌等が引っかかることで、x正方向の力もかかることがあり、支持部5が折れやすくなる。支持部5の進入方向11の側への張り出し幅Δtが小さいか、張り出しの角度がなだらかであれば、舌等が引っかかりにくく、係合部分50等にかかる力が抑えられる。また、支持部5の段差は舌・指等の接触時の快適感を損なうので、その点からも支持部5の先端における進入方向11側への出っ張りは制限された方がよい。具体的には、
図4のような支持部5及びL字状支持部55のうち先端に近い部分(最も離れた部分502を含み係合部分50を含まない連続した部分)の片側の最大の張り出し幅Δtは支持部5の先端に近い部分以外の部分の最小の太さt以下がよく、好ましくはtの1/2以下がよく、張り出しがなくてもよいので、0以上でもよい。また、支持部5の先端に近い部分の張り出し部分のうち係合部分50に向き合う部分がフロス2の長さ方向となす角度θ5は、45°以下が好ましく、22°以下がより好ましい。張り出しがない場合の0°が下限であるが、それを超えて先端に近い部分が薄くてもよい。フロス2の長さ方向の代わりに直線又は曲線500や支持部5のうち係合部分50を含む細い部分が上記角度の一方でもよい。あるいは、Δtが2mm以下、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.5mm以下であれば、舌にはほとんど触知されないので、快適感の問題はなく、余計な力もかかりにくい。上記いずれの条件も、少なくとも進入方向11側で適合すればよいが、他の側でも同様である。さらに、上記いずれかの条件により、舌小帯が張り出した部分に引っかかったり、間の部分に挟まったりして損傷する危険も避けられる。また、同様の理由により、支持部5がL字状の場合には、その先の部分は
図4aのL字状支持部55のようにy方向に長いのではなく、z方向に長い方がよい。支持部5がT字状等の場合も同様である。
【0050】
以下の段落にホルダ1の各種変形例を記載する。1つの頭部23が3以上の張架部3を有してもよい。その場合、例えばフロス2が中間に第3以降の張架部3を有してもよく、それぞれの張架部3間の区間ごとにフロス2の方向が変わってもよく、複数のフロス2の部分においてフロス2の張力・太さ・本数・平滑度・平行か縒ってあるかといった形状等が互いに異なってもよい。それぞれの張架部3が1又はそれ以上の支持部5を有してもよい。1つの頭部23等が有する張架部3が1つのみでもよい。
【0051】
垂直型頭部232における支持部5の位置は、平行型頭部231と同様に頭部23の先でもよい。この場合には、使用者は、進入させる歯間より奥の歯に支持部5を乗せて使用する。このような場合等のために、ホルダ1の左右への往復等の移動が容易になるよう、支持部5が、口腔内の一部との接触部分等に、摩擦を低減するための潤滑部56を有してもよい。潤滑部56は、シリコン・シリコンゴム等の摩擦の少ない部材で摩擦を減らしてもよく、潤滑剤等を溶出等により供給してもよい。あるいは、支持部5が回転部57を有し、ホルダ1の往復が円滑化されてもよい。回転部57は車輪状で、中央に車軸を有し、車軸によって支持部5と係合されてもよい。また、
図5aのように回転部57が球状で、360°すべての方向に回転可能でもよい。潤滑部56及び回転部57を併せて摩擦低減部とする。回転部57は可動部7に含まれることがある。上の奥歯の歯間清掃では、使用者によっては、舌の裏側に支持部5を添えるのが困難である。この場合、
図2aにおける口蓋94に支持部5を添えればよいが、支持部5の往復による摩擦が痛く感じられることがある。摩擦低減部によりこの問題が解決される。
【0052】
上の親知らず等の特に奥の歯間用として、使用者が、口蓋に支持部5をあて、支持部5を略ずらさずに支持部5を軸として、頭部23及び把捉部4を弓状に回転させたり、上下左右に動かしたりできる機能を有する部分を、ホルダ1が具えてもよい。この部分は、例えば、支持部5と、支持部5が係合される頭部23又は把捉部4との間の振動減衰部8である。この振動減衰部8は、把捉部4等とは弾性・可塑性等が異なるゴム・シリコンゴム・シリコン等からなってもよく、たわみやすい又は凹みやすいように弾性を調整されてもよく、ばね等によって伸縮機能又は伸縮性を有してもよく、摩擦低減部同様の可動部を有してもよく、オイルショックアブソーバー等を有してもよく、フロス2が急に歯間を通過した時の衝撃を吸収するダンパーを兼ねてもよい。支持部5に縦横の溝加工が施されたり、吸盤や滑りにくい材料が使用されることで、支持部5が滑り止め機能を有してもよい。また、
図5bのように、支持部5が大きなボール型の振動減衰部8と一体化してもよい。この場合、振動減衰部8は、例えば粘性が高く変形しやすいジェル状の内容物を包み込んでいる。使用者は、上の奥歯の歯間への進入時に、支持部5を口蓋等に密着させたまま、フロス2の長さ方向に往復させることができる。振動減衰部8は、ジェル状内容物等の粘性により、ホルダ1を支持しつつ進入時の振動を吸収できる。下の奥歯の歯間への進入時には、支持部5及び振動減衰部8の形状が、ジェル状内容物等の流動により、舌と歯茎の間の空間に追従してもよい。支持部5又は振動減衰部8は変形・伸縮又は成型によって口腔各部の形状に適合してもよい。
【0053】
図5aのように、振動減衰部8が把捉部4の一部又は把捉部4と頭部23との間に組み込まれてもよい。振動減衰部8は、ゴム等の使用や、把捉部4等と同じ材料でより細い等により、把捉部4等と弾性が異なってもよい。振動減衰部8は振動・衝撃を吸収又は低減し、支持部5や舌等に伝わりにくくする。
【0054】
支持部5・潤滑部55・回転部56・振動減衰部8等が独立した製品として提供され、使用者が、これを既製品のデンタルフロスホルダに取り付けて使用してもよい。上記のようなホルダ1がフロス2を有さず、使用者が既製品のデンタルフロスホルダを嵌合して使用できるようになっていてもよい。
【0055】
支持部5は、頭部23の左右と先の両方に取り付けられてもよく、それらをすべて含むように、O字状、又は把捉部4の周辺を除くU字状に取り付けられてもよい。
【0056】
張架部3に張架されたフロス2は、歯間への進入時には張力が高いほうがよいが、進入後はやや弛緩した状態の方が、途中で曲線状に方向を切り替えて清掃できるので好都合である。そのため、フロス2を弛緩させたり緊張させたりする張架調整部31が頭部23又は把捉部4に内蔵され、これが把捉部4等に設けられたスライド式のスイッチ32等で操作可能でもよい。張架調整部31は、例えば
図2aのように、張架部3の一方及びスイッチ32に係合され、スイッチ32を押して張架調整部31を図の左方向にスライドさせた時のみ、張架部3の間隔が狭まり、フロス2が弛緩するが、通常はばね等によりフロス2の緊張を保つようになっている。また、同じホルダ1が繰り返し使用されると、次第にフロス2が伸びて弛緩していくので、フロス2の張力を一定に保つような機構を張架調整部31が兼ねてもよい。さらに、張架調整部31の機能を支持部5等が有してもよい。つまり、使用者が、フロス2の歯間進入時には支持部5に力を加えることでフロス2が緊張し、歯間通過後は支持部5から舌等を離すことでフロス2が弛緩してもよい。これを実現するために、例えば張架部3の一部と支持部5が1つの部品になった張架支持部35により、てこの原理で加圧されてもよい。例えば、
図5bのように、フロス2が張架支持部35に固定され、張架支持部35におけるその固定位置と舌等が接する位置の間に張架部3又は把捉部4との係合部分があり、舌等に加えられた力がフロス2に伝わって張力を増大させる。張架支持部35は、張架部3又は把捉部4と可動部7で係合されてもよく、一体成形で係合部分が細いことで弾力性を有してもよく、ばね等により張力・弾力が与えられてもよく、弛緩又は緊張が過度とならないようなストッパー等を有してもよい。また、張架支持部35は張架支持部固定部351によりフロス2の弛緩位置や緊張位置で一時的に固定されてもよい。張架支持部35がフロス2の両側に設置されている場合には、片側の張架支持部35が固定されていることで、もう片側の張架支持部35での操作性が向上する。張架支持部固定部351は張架支持部35とは独立したスイッチ状の部品でもよく、張架支持部35と一体であって、例えば張架支持部35をフロス2の方向に動かして固定及び解除を行うような機構でもよく、自動ロック機能を有してもよい。舌等により力をかけない時にはフロス2が完全に弛緩してもよいが、多少の張力がかかっていた方が清掃しやすい。そのために、ホルダ1が特許文献2のようなフロス2を巻きだす方式であって、フロス2の巻き出し又は巻取り側に張力をかけてもよい。使用により張力が下がれば巻き直しで調整可能である。一般に、特許文献2・3のようなデンタルフロスホルダーよりも、特許文献1のようなデンタルフロスの方が、適切に用いられれば、歯間に付着した歯垢の除去効率が高いとされる。それは、デンタルフロスはたわめることで歯の側面の曲面形状に沿わせたり歯と歯茎の隙間(いわゆる歯周ポケット)に届けたりすることができるからであるが、本変形例でも同様の使用法が可能である。さらに、本変形例では特許文献1のデンタルフロスと異なり、奥歯の歯間の底の歯茎に対してもそのような使用法が容易であるので、歯垢除去効率がより高い。なお本発明では、張架支持部35のように、ホルダ1を構成する異なる複数の要素が一体で独立した要素をなしてもよく、張架部3と張架支持部35のように、1つの要素が2つの部品に分かれてもよい。
【0057】
上の奥歯を使用者本人が1枚の鏡のみで見ることは難しく、鏡で見ながらデンタルフロス操作を行うには合わせ鏡やカメラ及びモニター等を用いる必要がある。しかし、使用者が2枚目の鏡を手で持つと唇をめくり上げることができなくなり、また合わせ鏡やモニターを介しての空間把握、つまり左右及び奥・手前の方向の把握が難しく、上の奥歯の歯間清掃はよほど慣れないと困難であった。本発明のホルダ1により、使用者は鏡等を使わずに舌先等の感触でフロス2及び歯間の位置を直感的に確認できるので、容易に歯間清掃できる。
【0058】
ただし、下の歯や前歯の歯間清掃時も含めて鏡の使用は有効であるから、支持部5又は振動減衰部8のジェル状内容物等が蓄光塗料を含み(ジェル状内容物及び蓄光塗料は口腔には漏出しない。)、口腔内で発光すれば、鏡で見ながらの使用が容易になる。照明用のLED及び電源等の他の発光手段がホルダ1に内蔵されてもよい。
【0059】
ホルダ1は、例えば特許文献2等のような巻き出し式でもよく、その場合、支持部5がフロス2の固定や巻き付けといった機能を兼ねてもよい。ただし、フロス2の固定等のためには、舌等よりも曲率が小さく舌等の形状にフィットするという目的には適合しない凹部や分岐部等が支持部5に必要になることがあり、また巻かれたフロス2が舌等の感触を損なうこともあり、いずれにせよ使用時の快適感の低下につながる。それを避けるため、支持部5がフロス2の固定等の機能を有さなくてもよい。また、支持部5の凹状の部分の少なくとも一部の断面が、直径4mm以上、好ましくは直径8mm以上、より好ましくは直径12mm以上の円の一部と近似していれば、その支持部5は舌等の形状にフィットする。支持部5は少なくとも一部が平面状でもよいので、直径の上限は無限大である。
【0060】
ホルダ1は、可搬性を高めるため、支持部5等が折りたたみ式でもよい。また、フロス2及び張架部3に場合によりカバーがセットになった交換用替え部品が、把捉部4内に1つ以上収納可能でもよい。
【0061】
支持部5は、可塑性の高い材質、又は温湯に浸すことで変形可能となる形状記憶ポリマー等の使用により、使用者が自由に形状を変更可能でもよい。これにより、フロス2と支持部5との高さや距離が、使用者の身体的特徴や使い勝手に応じて調整可能になる。把捉部4等においても同様である。
【0062】
一般に、年齢・性別等により口腔の大きさが異なり、口腔や舌の形状にも個人差がある。したがって、頭部23及び支持部5の位置関係・大きさ・厚さ等については、数多くの要求が想定されるため、例えばL・M・Sの3種等、複数のサイズが用意されてもよい。また、使用者の口腔内等の各部の寸法を計測したデータやX線画像等に基づき、ホルダ1がオーダーメイドで製作されてもよい。同様に、使用者の舌の形状に近いゴム製等の舌サックが提供されてもよい。舌サックは、ホルダ1と併用されることで、支持部5が舌に当たるときの衝撃等から舌を保護する。舌サックはレディメイドの汎用品でもよい。
【0063】
ホルダ1は、清掃される歯の本人が操作してもよく、別人が操作してもよく、ペット等の動物にも対応可能である。
【0064】
ホルダ1は、手動でもよく、電動でもよく、既知の人工知能等を有し、使用者の個々の歯間ごとの位置・幅・深さ・形状・方向等のデータを記憶して、そのデータに基づいて自動制御で動作してもよい。自動制御であっても、上記に記載の、口腔内での事故を防止するための支持部5が有用である。このようなホルダ1では、支持部5は、例えばフロス2の長さ方向に垂直な方向上の2カ所に、フロス2を挟むように取り付けられ、フロス2が進入する歯間の両側の歯に当たるようになっている。この支持部5は張架部3や把捉部4に係合されなくてもよい。このホルダ1は把捉部4を有さなくてもよい。この支持部5は、前歯等の形状に適合しやすいよう、V字溝を有してもよい。また、それとは別に平坦に近い又は凹状等の奥歯用の支持部5も用意され、それらが歯の部位に応じて切り替えられてもよい。支持部5がフロス2の歯間への進入時・歯間清掃時・排出時に歯を歯列の内側と外側の両側等から掴んで支持してもよい。このホルダ1は、フロス2の歯間への進入時にフロス2が歯茎に衝突することがないよう、例えば上記データから読み出した歯間ごとの深さに応じて、フロス2と支持部5との進入方向11上の距離を変更することができる。あるいは、歯間が狭い部分の多くは歯間の入り口付近であるため、歯間の入り口から何mmで止まるように使用者が設定し、支持部5の位置がそれに応じて変更されるようになっていれば、歯間ごとに調整される必要がなく、コストダウン及び動作の高速化に寄与する。また、その距離は人によらず一律でもよい。フロス2の排出時にも、支持部5とフロス2との間に進入時とは逆方向の力を加えればよく、無理な力がかからないですむ。これらの場合はフロス2の進入運動のストッパーが歯であるが、このストッパーは舌でもよく、指でもよく、あるいは、ホルダ1の内部にあって、ホルダが歯や口腔で固定される力によってフロス2の進みすぎを止める構造でもよい。また、このホルダ1は、歯間が特に狭い部分ではフロス2を進入方向11に動かし、歯間が広がるかフロス2の運動に対する抵抗が少なくなるとセンサが検知してフロス2の進入方向11の動きを減速することで、支持部5の機能を有してもよい(ホルダ1は、センサでなく、カメラを搭載し、その撮影画像を解析して判断してもよい)。そのようなフロス2の動きの電子的な制御に、支持部5と歯等との接触によるブレーキという物理的な停止方法が併用されれば、自動制御のホルダ1による歯間清掃時の安全性がより向上する。この支持部5は、歯間清掃中には進入方向11の反対側等に一旦退避し、歯間からの排出時にまた元の位置に戻ってもよい。これらの動作も自動的に行われてもよい。
図5cのホルダ1が有する駆動部71は、既知の演算回路及び記憶回路等からなる自動制御機構を有し、電気・空気圧・水圧・熱機関等の人力以外の動力源又は人力によって駆動され、上記の動作を行う。自動制御のホルダ1は、歯列の外周及び内周をU字状に取り巻くような形状で、例えば口腔内で支持部5等を噛みこむことで固定されて用いられてもよい。その場合、
図5cのようなホルダ1の1組が、U字状のレール上をモータ等により移動して、歯間を順次清掃してもよく、複数の歯間ごとに1つずつ設置されてもよい。後者の場合、それぞれのフロス2等の位置が歯間等に合わせて調整可能でもよく、複数のフロス2に対応する支持部5が連続してもよい。ホルダ1は、これらの機構を有さないことで低廉でもよい。
【0065】
本発明が提供するデンタルフロスホルダ製造装置100は、
図6のように、材料取得部101及び加工部102を具える。本発明が提供するデンタルフロスホルダ製造方法は、
図7のように、材料取得工程S101及び加工工程S102を具える。材料取得部101はフロス2等の材料10を取得し、加工部102に渡す(S101)。加工部102は射出成形により材料10を成形してもよく、材料10を組み合わせてホルダ1を製造してもよい(S102)。加工部102は上記計測データ等に基づくオーダーメイドにも対応できる。デンタルフロスホルダ製造装置100は、例えば既製品のデンタルフロスホルダ及び支持部5を材料とし、それらを接着・圧着・熱圧着等により接合・嵌合することで、ホルダ1を製造してもよい。
【0066】
本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【解決手段】歯間清掃用のデンタルフロス2と、該デンタルフロスの両端を張架する張架部3と、該張架部が係合された把捉部4と、前記張架部又は前記把捉部の少なくとも一方に係合された突起状の支持部5と、を有し、前記張架部又は前記把捉部の少なくとも一方の1つにつき前記支持部が1つ以下であるか、前記張架部又は前記把捉部の少なくとも一方の1つにつき前記支持部が複数であって前記張架部又は前記把捉部の少なくとも一方の1つに係合する複数の支持部どうしの間隔が5mm以上であるか、前記張架部又は前記把捉部の少なくとも一方の1つにつき前記支持部が複数であって前記複数の支持部の少なくとも一部の端部が略半径0.5mm以上の丸みを帯びた形状であるか、の少なくともいずれかであるデンタルフロスホルダ1とする。