特許第6582289号(P6582289)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 下西技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6582289-ヒンジ 図000002
  • 特許6582289-ヒンジ 図000003
  • 特許6582289-ヒンジ 図000004
  • 特許6582289-ヒンジ 図000005
  • 特許6582289-ヒンジ 図000006
  • 特許6582289-ヒンジ 図000007
  • 特許6582289-ヒンジ 図000008
  • 特許6582289-ヒンジ 図000009
  • 特許6582289-ヒンジ 図000010
  • 特許6582289-ヒンジ 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6582289
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】ヒンジ
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/10 20060101AFI20190919BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20190919BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20190919BHJP
   G03B 27/62 20060101ALN20190919BHJP
【FI】
   F16C11/10 C
   F16C11/04 F
   G03G21/16 142
   !G03B27/62
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-89045(P2015-89045)
(22)【出願日】2015年4月24日
(65)【公開番号】特開2016-205541(P2016-205541A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】592264101
【氏名又は名称】下西技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】西田 行宏
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−1619(JP,A)
【文献】 特開2011−247954(JP,A)
【文献】 特開2011−43593(JP,A)
【文献】 特開2007−333970(JP,A)
【文献】 特開平10−315570(JP,A)
【文献】 特開平9−96877(JP,A)
【文献】 実開昭61−37369(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/00−11/12
G03B 27/58−27/64
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一連結対象物と第二連結対象物とを回動可能に連結するヒンジであって、
前記第一連結対象物に配設され、第一カム面と、前記第一カム面から突出する第二カム面とを備えるカムブロックと、
前記第二連結対象物に固定されるとともに、回動軸を介して前記カムブロックに回動可能に支持されるケースと、
前記カムブロックに対して接近又は離間する方向に移動可能に前記ケース内に収容され、前記カムブロックと反対の側に収容凹部が形成され、前記カムブロックの側に前記第一カム面と当接可能なカム受け部が形成され、前記カム受け部と前記収容凹部の底面とを連通する挿入孔部が形成され、前記収容凹部の底面において前記挿入孔部と交差するピン収容溝が形成されるスライダと、
シリンダと、前記シリンダから突出するピストンと、を備え、前記ピストンが前記シリンダに押し込まれることによって前記ピストンに減衰力を付与し、前記ピストンの先端部が前記挿入孔部に挿入された状態で前記収容凹部に収容されるダンパと、
前記スライダにおける前記ピン収容溝に収容されて前記挿入孔部に表出し、前記ピン収容溝の内部を前記ピストンの移動方向に移動可能に収容され、前記カムブロックの前記第二カム面に当接可能、かつ、前記ピストンの先端部に当接可能に配設されるピンと、
前記収容凹部の底面に当接するとともに前記スライダを前記カムブロックに接近する方向に付勢する付勢部材と、を具備し、
前記第一連結対象物と前記第二連結対象物とが接近する方向に回動すると、前記カムブロック又は前記ケースが回動して、前記カムブロックの前記第一カム面が前記スライダのカム受け部を押圧し、前記スライダが前記カムブロックから離間する方向に移動するとともに、前記第二カム面が前記挿入孔部に挿入され、前記カムブロックの前記第二カム面が前記ピンを介して前記ピストンを前記シリンダに押し込む
ことを特徴とするヒンジ。
【請求項2】
前記ピンは、前記ピン収容溝の内部で回動不能に収容される
ことを特徴とする請求項1に記載のヒンジ。
【請求項3】
前記カムブロックは、棒状の挿入部と連結され、
前記第一連結対象物に形成された挿入孔に前記挿入部が挿入されることにより、前記カムブロックが前記第一連結対象物に固定され、
前記挿入部の端面は、前記第二カム面よりも前記第二カム面の突出方向側に配設される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヒンジ。
【請求項4】
前記付勢部材は、圧縮バネであって、
前記ピンは、前記圧縮バネの内径よりも長く形成され、
前記圧縮バネの一端部は、前記収容凹部の底面における前記ピン収容溝の開口部に当接する
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のヒンジ。
【請求項5】
前記付勢部材は、第一圧縮バネと、前記第一圧縮バネの内側に配設される第二圧縮バネと、で構成され、
前記ピンは、前記第二圧縮バネの内径よりも長く形成され、
前記第二圧縮バネの一端部は、前記収容凹部の底面における前記ピン収容溝の開口部に当接し、
前記スライダの前記収容凹部において、前記第一圧縮バネと当接する当接面は、前記収容凹部の底面よりも、前記カムブロックから離間する側に形成され、
前記スライダにおける前記カムブロックの側には、前記挿入部の端部を挿入可能な挿入凹部が形成される
ことを特徴とする請求項3に記載のヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本体(第一連結対象物)および原稿圧着板(第二連結対象物)を備えて構成される事務機(スキャナー、ファクス、コピー機、または、複合機等)に備えられて、事務機の本体に原稿圧着板を回動可能に連結するヒンジが知られている(特許文献1又は特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−247954号公報
【特許文献2】特開2014−29181号公報
【0004】
前記特許文献に記載のヒンジは、ケースと、カムブロックと、スライダと、付勢部材(巻きバネ)と、ダンパと、アームと、を具備し、ケースが事務機の本体に固定され、カムブロックが事務機の原稿圧着板に固定される。そして、事務機の本体に対して原稿圧着板が閉じる方向(原稿圧着板の回動角度が小さくなる方向)に回動したときに、カムブロックが回動する。このカムブロックの回動によって、付勢部材の付勢力に抗してスライダを押し込み、付勢部材による緩衝効果が発生するように構成される。また、カムブロックの回動によって、アームがカムブロックに当接した状態で回動してダンパのピストンのロッド部を押し込み、ダンパによる緩衝効果が発生するように構成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の如く構成されたヒンジによれば、アームをスライダ又はケースに回動可能に設ける必要があるため、アームを支持する支持部や回動軸等の構成が必要となり、ヒンジの構成が複雑となる。このため、簡易な構成で、付勢部材による緩衝効果とダンパによる緩衝効果が得られるヒンジが求められていた。
【0006】
本発明は、以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、付勢部材による緩衝効果とダンパによる緩衝効果が得られるヒンジを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、第一連結対象物と第二連結対象物とを回動可能に連結するヒンジであって、前記第一連結対象物に配設され、第一カム面と、前記第一カム面から突出する第二カム面とを備えるカムブロックと、前記第二連結対象物に固定されるとともに、回動軸を介して前記カムブロックに回動可能に支持されるケースと、前記カムブロックに対して接近又は離間する方向に移動可能に前記ケース内に収容され、前記カムブロックと反対の側に収容凹部が形成され、前記カムブロックの側に前記第一カム面と当接可能なカム受け部が形成され、前記カム受け部と前記収容凹部の底面とを連通する挿入孔部が形成され、前記収容凹部の底面において前記挿入孔部と交差するピン収容溝が形成されるスライダと、シリンダと、前記シリンダから突出するピストンと、を備え、前記ピストンが前記シリンダに押し込まれることによって前記ピストンに減衰力を付与し、前記ピストンの先端部が前記挿入孔部に挿入された状態で前記収容凹部に収容されるダンパと、前記スライダにおける前記ピン収容溝に収容されて前記挿入孔部に表出し、前記ピン収容溝の内部を前記ピストンの移動方向に移動可能に収容され、前記カムブロックの前記第二カム面に当接可能、かつ、前記ピストンの先端部に当接可能に配設されるピンと、前記収容凹部の底面に当接するとともに前記スライダを前記カムブロックに接近する方向に付勢する付勢部材と、を具備し、前記第一連結対象物と前記第二連結対象物とが接近する方向に回動すると、前記カムブロック又は前記ケースが回動して、前記カムブロックの前記第一カム面が前記スライダのカム受け部を押圧し、前記スライダが前記カムブロックから離間する方向に移動するとともに、前記第二カム面が前記挿入孔部に挿入され、前記カムブロックの前記第二カム面が前記ピンを介して前記ピストンを前記シリンダに押し込むものである。
【0009】
請求項2においては、前記ピンは、前記ピン収容溝の内部で回動不能に収容されるものである。
【0010】
請求項3においては、前記カムブロックは、棒状の挿入部と連結され、前記第一連結対象物に形成された挿入孔に前記挿入部が挿入されることにより、前記カムブロックが前記第一連結対象物に固定され、前記挿入部の端面は、前記第二カム面よりも前記第二カム面の突出方向側に配設されるものである。
【0011】
請求項4においては、前記付勢部材は、圧縮バネであって、前記ピンは、前記圧縮バネの内径よりも長く形成され、前記圧縮バネの一端部は、前記収容凹部の底面における前記ピン収容溝の開口部に当接するものである。
【0012】
請求項5においては、前記付勢部材は、第一圧縮バネと、前記第一圧縮バネの内側に配設される第二圧縮バネと、で構成され、前記ピンは、前記第二圧縮バネの内径よりも長く形成され、前記第二圧縮バネの一端部は、前記収容凹部の底面における前記ピン収容溝の開口部に当接し、前記スライダの前記収容凹部において、前記第一圧縮バネと当接する当接面は、前記収容凹部の底面よりも、前記カムブロックから離間する側に形成され、前記スライダにおける前記カムブロックの側には、前記挿入部の端部を挿入可能な挿入凹部が形成されるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
即ち、本発明に係るヒンジによれば、簡易な構成で、付勢部材による緩衝効果とダンパによる緩衝効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るヒンジと事務機とを示した左側面図。
図2】閉塞状態のヒンジを示した斜視図。
図3】同じくヒンジを示した左側面図。
図4】同じくヒンジを示した正面図。
図5図4におけるX−X線断面図。
図6図4におけるY−Y線断面図。
図7】カムブロックと挿入部材との組付け状態を示した斜視図。
図8】(a)及び(b)はそれぞれスライダの後方斜視図及び前方斜視図。
図9】(a)及び(b)はそれぞれ開放状態のヒンジにおける図4のX−X線断面図及びY−Y断面図。
図10】(a)及び(b)はそれぞれ閉塞途中のヒンジにおける図4のX−X線断面図及びY−Y断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図1から図8を用いて、本発明の一実施形態に係るヒンジ100、及び、ヒンジ100が配設される複合機1について説明する。なお、本発明に係るヒンジは複合機にのみ適用されるものではなく、他のあらゆる連結対象物を連結することが可能である。
【0017】
図1に示す如く、複合機1は事務機器の実施の一形態であり、本体2、原稿圧着板3、及びヒンジ100を具備する。ヒンジ100は本実施形態における二つの連結対象物である本体2と原稿圧着板3とを回動可能に連結する。
【0018】
本体2は本発明に係る第一連結対象物の実施の一形態である。本体2は原稿読み取り装置、制御装置、印刷装置、表示装置および入力装置を具備する。原稿読み取り装置は本体2の上面に配置される。原稿読み取り装置は本体2の上面に載置された原稿を読み取る(原稿の画像情報を生成する)。制御装置は複合機1の各部の動作、より詳細には原稿読み取り装置、印刷装置およびADFの動作を制御する。また、制御装置は原稿読み取り装置が生成した画像情報および本体2に接続された回線(インターネット回線等)を通じて取得した画像情報を記憶することが可能である。印刷装置は原稿読み取り装置の下方に配置される。印刷装置は、制御装置が記憶した画像情報に基づいて紙に画像を印刷する。表示装置は例えば液晶パネルからなり、複合機1の動作状況等に係る情報を表示する。入力装置は例えばボタン、スイッチ等からなり、作業者が複合機1に対する指示等を入力する際に操作するものである。表示装置および入力装置は本体2の上面前端部に配置される。
【0019】
原稿圧着板3は本発明に係る第二連結対象物の実施の一形態である。原稿圧着板3は原稿読み取り装置の上に載置された原稿を当該原稿読み取り装置に向かって押さえつける(圧着する)ことにより、当該原稿読み取り装置が原稿を読み取る際に原稿が動く(原稿読み取り装置との相対的な位置が変化する)ことを防止する。原稿圧着板3は読取前原稿収容トレイ、ADF(Auto Document Feeder)および読取後原稿収容トレイを具備する。ADFは読取前原稿収容トレイに積層状態で収容された複数枚の原稿を一枚ずつ順に取り出して原稿読み取り装置の上の所定の読取位置に載置し、当該原稿読み取り装置による原稿の読み取りが終了した後、当該原稿読み取り装置に載置された原稿を読取後原稿収容トレイに搬送する。
【0020】
本実施形態における「原稿圧着板3の(本体2に対する)閉塞状態(閉じている状態)」は、図1に示す如く原稿圧着板3が本体2の上側近傍に位置する状態を指す。また、「原稿圧着板3の(本体2に対する)開放状態(開いている状態)」は、原稿圧着板3が本体2に対して回動することにより、原稿圧着板3の下面および本体2の上面が離間した状態を指す。
【0021】
加えて、ヒンジ100の閉塞状態、開放状態についても、原稿圧着板3の閉塞状態及び開放状態に対応した状態を指すものである。即ち、ヒンジ100の閉塞状態とは、図2から図6に示す如くケース10が前方に向かって延出され、ケース10と挿入部材24における挿入部25とが近接した状態を指す。また、ヒンジ100の開放状態とは、図9に示す如くケース10と挿入部25とが離間した状態を指す。
【0022】
以下の説明では、図1に示す如く原稿圧着板3が本体2と当接しているときの原稿圧着板3の本体2に対する回動角度θを「0度」とし、原稿圧着板3が開く方向に回動するときに回動角度θが増加する(回動角度θの値が正になる)ものとして、原稿圧着板3及びヒンジ100の回動角度θを定義する。
【0023】
以下では便宜上、ヒンジ100が複合機1に取り付けられ、かつ、原稿圧着板3が本体2に対して閉じているとき(本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θ=0度のとき)の複合機1の上下方向、前後方向および左右方向を基準とし、原稿圧着板3が本体2に対して閉じているときの複合機1の上下方向、前後方向および左右方向がそれぞれヒンジ100の上下方向、前後方向および左右方向に対応するものとして、ヒンジ100を構成する各部材を説明する。
【0024】
図2から図6に示す如く、ヒンジ100はケース10、カムブロック21、挿入部材24、スライダ30、ダンパ60、第一圧縮バネ63、第二圧縮バネ64、ピン70等を具備する。以下、各部材について説明する。
【0025】
ヒンジ100のケース10は、一枚の金属板を折り曲げた箱状の部材であり、下方及び後方が開口した四角筒状に形成される。ケース10の両側面には、ケース10を形成する側面板を矩形状に切り欠いて側方に折り曲げた固定片10a・10aが配設される。固定片10a・10aを切り欠いた部分は開口部11b・11bとして形成される。固定片10a・10aが原稿圧着板3にネジ等の固定具で固定されることにより、ケース10は原稿圧着板3に固定される。
【0026】
図5及び図6に示す如く、ケース10の内部には、スライダ30、ダンパ60、第一圧縮バネ63、第二圧縮バネ64、ピン70等が収納される。また、ケース10の後部には、左右方向に回動軸50が挿通される。
【0027】
カムブロック21は、前方向に突出する曲面形状に形成された第一カム面22と、第一カム面22の中央部からさらに前方向に突出する第二カム面23と、を備えた樹脂製部材である。カムブロック21の後部には左右方向に貫通する挿通孔21aが開口されている。カムブロック21は、挿通孔21aに回動軸50が挿通されることにより、回動軸50を介してケース10と相対的に回動可能に軸支される。また、カムブロック21の下部には左右方向に貫通する挿通孔21bが開口されている。カムブロック21の中央部には、カムブロック21を上下方向に貫通する固定孔21dが開口されている。固定孔21dはカムブロック21の下面に開口されている挿入部21c・21cと連通している。カムブロック21の後方下部には、前後方向に厚みを有する連結板部21eが形成されている(図5を参照)。
【0028】
カムブロック21は挿入部材24と連結される。挿入部材24は板状部材を折り曲げることにより、本体2に形成された図示しない挿入孔に挿入可能な棒状に形成された部材である。挿入部材24は、本体2に挿入される挿入部25と、挿入部25の上側に形成されてカムブロック21と連結される連結部26・26とを備える。連結部26・26には、回動軸50が挿通される挿通孔26a・26aと、連結ピン51が挿通される挿通孔26b・26bとが開口される。連結部26・26の後部が左右方向に折り曲げられることにより、連結板27・27が形成される。連結板27・27には連結板27・27を貫通して固定孔27a・27aが開口されている。
【0029】
カムブロック21と挿入部材24とを連結する際には、図7に示す如くカムブロック21の下方から挿入部材24を近接させる。そして、カムブロック21の挿入部21c・21c及び固定孔21dに挿入部材24の連結部26・26を挿入する。さらに、挿通孔26b・26b及び挿通孔21bに連結ピン51を挿通する(図5及び図6を参照)。加えて、連結板部21eと連結板27とをボルト53で締結することにより、カムブロック21と挿入部材24とが強固に連結される。カムブロック21と挿入部材24とが連結した状態で、挿入部材24が本体2の挿入孔に挿入されることにより、カムブロック21は本体2に配設される。本実施形態において、挿入部材24は挿入孔から延出可能に配設されている。
【0030】
上記の如く、ヒンジ100においては、カムブロック21と挿入部材24とが連結され、ケース10と、カムブロック21及び挿入部材24が回動軸50を介して回動可能に連結される。そして、ケース10が原稿圧着板3に固定され、挿入部材24が本体2の挿入孔に挿入されることにより、原稿圧着板3は本体2に対して回動可能に連結される。なお、ケース10を本体2に固定し、挿入部材24及びカムブロック21を原稿圧着板3に固定する構成とすることも可能である。
【0031】
図5及び図6に示すように、ヒンジ100のスライダ30は、カムブロック21に当接可能に構成される。スライダ30は、前方に開口した円筒状の収容凹部32を有し、外形が直方体形状に形成される樹脂製の部材である。スライダ30は、スライダ30の底板をカムブロック21側に向け、スライダ30の外側の面がケース10の内側の面(ケース10の上板及び両側板の内側の面)に当接するようにして、ケース10に収容される。スライダ30は、カムブロック21に接近する方向およびカムブロック21から離間する方向に移動可能に構成される。
【0032】
スライダ30には、カムブロック21の側である後面に、第一カム面22と当接可能なカム受け部31が形成される。また、カム受け部31と収容凹部32の底面33bとを連通する挿入孔部30aが形成される。図5及び図6に示す如く、挿入孔部30aには第二カム面23が挿入される。さらにスライダ30の内周面には、収容凹部32の底面33bにおいて挿入孔部30aと交差するピン収容溝30bが、長手方向を左右方向に向けて形成される。
【0033】
スライダ30の収容凹部32は、底面33bの周囲に、底面33bよりもカムブロック21から離間する側である前側に当接面33aが形成された二段形状となっている。また、図5及び図6に示す如く、スライダ30のカムブロック21の側における下部には、挿入部材24の挿入部25の上端を挿入可能な挿入凹部30cが形成されている。
【0034】
図5または図6に示すように、ヒンジ100は付勢部材として第一圧縮バネ63及び第二圧縮バネ64を備える。第一圧縮バネ63はスライダ30の収容凹部32に収容される。第二圧縮バネ64は第一圧縮バネ63よりも小径に形成され、第一圧縮バネ63の内側に配設される。第一圧縮バネ63は収容凹部32における当接面33aとケース10の前側内周面とに当接する。第二圧縮バネ64は収容凹部32における底面33bとケース10の前側内周面とに当接する。これにより、第一圧縮バネ63及び第二圧縮バネ64はスライダ30をカムブロック21に接近する方向に付勢している。
【0035】
ヒンジ100のダンパ60は、シリンダ61と、シリンダ61から突出するピストン62とを備える流体ダンパ装置である。ダンパ60は、シリンダ61内に非圧縮性の流体の一種であるシリコンオイルが充填されて構成される。ダンパ60は、ピストン62がシリンダ61から左方に突出するとともにピストンの胴部(不図示)がシリンダ61内に位置するようにピストン62が配置される。ダンパ60は、シリンダ61と略同軸上にその軸方向にピストン62が移動可能に設けられて構成される。
【0036】
ヒンジ100のダンパ60は、ピストン62に外力を加えて、ピストン62のシリンダ61からの突出長が短くなるようにピストン62を移動させることによってシリコンオイルの粘性抵抗により反力(ピストン62を押し返す力)が発生し、緩衝効果が発生するように構成される。即ち、ピストン62がシリンダ61に押し込まれることによってピストン62に減衰力が付与される。ダンパ60は、ピストン62におけるシリンダ61からの突出長が短くなるようにピストン62を移動させた後、前記ピストン62に加えられる外力を解除した場合、シリンダ61内の戻しバネ(不図示)の付勢力によって、ピストン62におけるシリンダ61からの突出長が長くなるようにピストン62が移動するように構成される。
【0037】
ヒンジ100のダンパ60は、図6に示す如く、ピストン62の先端部が挿入孔部30aに挿入された状態で、収容凹部32の内部におけるダンパ60は第二圧縮バネ64の内側に配設される。
【0038】
図5及び図6に示すように、スライダ30に形成されるピン収容溝30bには、ピン収容溝30bに沿って形成されたピン70が収容される。ピン70の中央部分は挿入孔部30aに表出する。ピン70は第二圧縮バネ64の内径よりも長く形成される。そして、第二圧縮バネ64の一端部は収容凹部32の底面33bにおけるピン収容溝30bの開口部に当接する。これにより、第二圧縮バネ64はピン70がピン収容溝30bから脱落することを防いでいる。
【0039】
また、ピン70はピン収容溝30bの内部をピストン62の移動方向に移動可能に収容されることにより、カムブロック21の第二カム面23に当接可能、かつ、ピストン62の先端部に当接可能に配設される。本実施形態において、ピン70は軸心方向と直交する断面で楕円形に形成されており、楕円の長手方向はピン収容溝30bの幅よりも大きくなっている。即ち、ピン70はピン収容溝30bの内部で軸心回りに回動不能に配設されている。
【0040】
ピン70は、ヒンジ100の閉塞状態からケース10とカムブロック21とが回動し、その回動角度が所定角度(本実施形態においては約20度(図10を参照))になるまで、ピンはピストン62の先端部と当接している。詳細には、ケース10とカムブロック21との回動角度が所定角度より小さい範囲では、ピン70は第二カム面23に押し込まれることにより、ピストン62を押圧する。
【0041】
図9及び図10に示すように、ヒンジ100は、複合機1の本体2(第一連結対象物)に対して原稿圧着板3(第二連結対象物)が閉じる方向(ケース10とカムブロック21との回動角度が小さくなる方向)に回動し、本体2と原稿圧着板3とが接近すると、カムブロック21に対してケース10が回動する。
【0042】
そして、ヒンジ100において、カムブロック21の第一カム面22がスライダ30のカム受け部31を押圧し、スライダ30が第一圧縮バネ63及び第二圧縮バネ64の付勢力に抗してカムブロック21から離間する方向に移動する。また、ケース10とカムブロック21との回動角度が所定角度より小さくなると、第二カム面23が挿入孔部30aに挿入され、カムブロック21の第二カム面23がピン70を介してピストン62をシリンダ61に押し込む。これにより、ピストン62がシリンダ61からの突出長が短くなるように移動する。
【0043】
このように、ヒンジ100は、複合機1の本体2に対して原稿圧着板3が閉じる方向に、ケース10とカムブロック21とが回動すると、ピン70がピストン62を押し込むとともにスライダ30が移動して、ダンパ60による緩衝効果と、第一圧縮バネ63及び第二圧縮バネ64による緩衝効果と、が発生するように構成される。
【0044】
上記の如く、本実施形態に係るヒンジ100によれば、ピン70を介してダンパ60のピストン62を押し込む構成としている。これにより、アーム等をスライダ又はケースに回動可能に設ける必要がないため、ヒンジ100の構成を簡易にすることができる。即ち、簡易な構成で、第一圧縮バネ63及び第二圧縮バネ64による緩衝効果とダンパ60による緩衝効果とを得ることができるのである。
【0045】
また、本実施形態に係るヒンジ100において、ピン70はピン収容溝30bの内部で軸心回りに回動不能に配設されている。これにより、原稿圧着板3を閉塞する際に、ピン70のうち所定の部分をダンパ60のピストン62に当接させることができる。即ち、ピン70がピストン62を押し込む際に、ピン70とピストン62との間で摩擦が発生しないため、ピン70とピストン62との摩耗を抑制することが可能となる。なお、ピン70がピン収容溝30bの内部で軸心回りに回動不能に配設される構成であれば、ピン70の断面形状は楕円以外の形状(矩形等)とすることも可能である。
【0046】
また、本実施形態に係るヒンジ100において、挿入部材24における挿入部25の前側上端面は、第二カム面23よりも第二カム面23の突出方向側に配設される。これにより、本体2と原稿圧着板3との間に厚みのある本等の資料を載置した場合、挿入部25と資料との距離を小さくすることができる。即ち、原稿圧着板3を閉塞する際に、資料を支点とする「てこの原理」を作用させて、挿入部25を挿入孔から延出しやすくすることができる。
【0047】
また、本実施形態に係るヒンジ100において、スライダ30におけるカムブロック21の側には、挿入部25の前側上端部を挿入可能な挿入凹部30cが形成される。これにより、原稿圧着板3を閉塞した際に、挿入部25の前側上端部が挿入凹部30cに挿入されるため、挿入部25とスライダ30との干渉を防止することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ヒンジ
10 ケース
21 カムブロック
30 スライダ
60 ダンパ
62 ピストン
70 ピン
100 ヒンジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10