(54)【発明の名称】6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンから調製した(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オン
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンからの多段合成における(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンの製造方法であって、
a)(5E,9E)−/(5E,9Z)−/(5Z,9E)−/および(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンの混合物、または、(5E,9E)−/(5E,9Z)−/(5Z,9E)−/および(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンの混合物を提供するステップ、
b)6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンの前記(5E,9E)−および/または前記(5Z,9Z)異性体をステップa)の前記混合物から個々に分離するステップ、
c)分子水素を用いて、キラルイリジウム錯体の存在下で不斉水素化して、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンを得るステップ
を含む製造方法。
前記残存する異性体がシス/トランス異性化触媒により異性化され、ステップa)によりもたらされた前記対応する異性体の混合物に加えられることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
香味料および芳香剤または薬学生成物、ビタミンおよび食品、または、飼料産業の分野における、生成物または中間体の合成のための請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法の使用。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1a】
図1は、異性化実験の結果を示す。x軸は、加熱時間、すなわち、105℃での異性化時間を表し、y軸は、
図1a)において、ZZ/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比、
図1b)において、(EZ+ZE)/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比、
図1c)において、EE/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比を表す。
【
図1b】
図1は、異性化実験の結果を示す。x軸は、加熱時間、すなわち、105℃での異性化時間を表し、y軸は、
図1a)において、ZZ/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比、
図1b)において、(EZ+ZE)/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比、
図1c)において、EE/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比を表す。
【
図1c】
図1は、異性化実験の結果を示す。x軸は、加熱時間、すなわち、105℃での異性化時間を表し、y軸は、
図1a)において、ZZ/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比、
図1b)において、(EZ+ZE)/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比、
図1c)において、EE/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比を表す。
【
図2a】
図2は、異性化実験の結果を示す。x軸は、加熱時間、すなわち、90℃での異性化時間を表し、y軸は、
図2a)において、EE/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比、
図2b)において、(EZ+ZE)/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比、
図2c)において、ZZ/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比を表す。
【
図2b】
図2は、異性化実験の結果を示す。x軸は、加熱時間、すなわち、90℃での異性化時間を表し、y軸は、
図2a)において、EE/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比、
図2b)において、(EZ+ZE)/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比、
図2c)において、ZZ/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比を表す。
【
図2c】
図2は、異性化実験の結果を示す。x軸は、加熱時間、すなわち、90℃での異性化時間を表し、y軸は、
図2a)において、EE/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比、
図2b)において、(EZ+ZE)/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比、
図2c)において、ZZ/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比を表す。
【
図3-1】
図3は、2−ambo−α−トコフェノールの分離に係るクロマトグラムを示す。
【
図3-2】
図3は、2−ambo−α−トコフェノールの分離に係るクロマトグラムを示す。
【
図4a】
図4は、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オン(R−IV)の合成に係る3つの異なる可能性を概略的に示す(
図4a)、4b)、4c))。
【
図4b】
図4は、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オン(R−IV)の合成に係る3つの異なる可能性を概略的に示す(
図4a)、4b)、4c))。
【
図4c】
図4は、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オン(R−IV)の合成に係る3つの異なる可能性を概略的に示す(
図4a)、4b)、4c))。
【
図5】
図5は、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンの(R,R)−イソフィトールへの転換に係る2つの変形例を示す。
【0008】
[発明の概要]
従って、本発明により解決されるべき課題は、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンの製造プロセスの提供である。
【0009】
驚くべきことに、請求項1に記載のプロセスにより、この問題を解決可能であることが見出された。出発材料の異性体の混合物、すなわち、(5E,9E)−/(5E,9Z)−/(5Z,9E)−/および(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンの混合物、または、(5E,9E)−/(5E,9Z)−/(5Z,9E)−/および(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンの混合物から、関心のある1種の特定の異性体を得ることが可能であることが示されている。
【0010】
本発明の好ましい実施形態により、シス/トランス−異性化を用いることにより所望されない異性体の利用が可能となる。本発明の重要な要素の1つである不斉水素化を、不斉水素化されるケトンのケタール化、ならびに、特定の添加剤の使用により、質および速度において向上させることが可能である。
【0011】
本発明のプロセスにより、目標分子を異性体混合物から効率的に高い質で生産することが可能であり、工業規模での生産に対する使用が可能となる。本プロセスは、出発生成物の立体異性体混合物から効率的な方法で所望のキラル生成物が形成され、きわめて有利である。
【0012】
本発明のさらなる態様はさらなる独立請求項の主題である。特に好ましい実施形態が従属請求項の主題である。
【0013】
[発明の詳細な説明]
第1の態様において、本発明は、6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンからの多段合成において、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンを製造するプロセスに関し、このプロセスは、
a)(5E,9E)−/(5E,9Z)−/(5Z,9E)−/および(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンの混合物、または、(5E,9E)−/(5E,9Z)−/(5Z,9E)−/および(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンの混合物を提供するステップ、
b)6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンの(5E,9E)−および/または(5Z,9Z)異性体をステップa)の混合物から個々に分離するステップ、
c)分子水素を用いて、キラルイリジウム錯体の存在下で不斉水素化して、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンを得るステップ
を含み、ここで、ステップa)〜c)はa、b、cの順である。
【0014】
「相互に独立して」という用語は、本書面において、置換基、部分または基に係る文脈において、同じく示されている置換基、部分または基は、同一の分子内において、異なる意味で同時に存在することが可能であることを意味する。
【0015】
「C
x〜yアルキル」基は、x〜y個の炭素原子を含むアルキル基であり、すなわち、例えば、C
1〜3アルキル基は、1〜3個の炭素原子を含むアルキル基である。アルキル基は、直鎖または分岐鎖であることが可能である。例えば−CH(CH
3)−CH
2−CH
3は、C
4アルキル基とみなされる。
【0016】
「C
x〜yアルキレン」基は、x〜y個の炭素原子を含むアルキレン基であり、すなわち、例えばC
2〜C
6アルキレン基は、2〜6個の炭素原子を含むアルキル基である。アルキレン基は、直鎖または分岐鎖であることが可能である。例えば基−CH(CH
3)−CH
2−は、C
3アルキレン基とみなされる。
【0017】
「フェノールアルコール」は、本書面において、芳香族基に直接結合したヒドロキシル基を有するアルコールを意味する。
【0018】
「(R,R)−イソフィトール」という用語は、本書面において用いられるところ、(3RS,7R,11R)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−1−エン−3−オール)を意味する。
【0019】
「(R,R)−フィトール」という用語は、本書面において用いられるところ、(2E,7R,11R)−3,7,11,15−テトラメチル−2−ヘキサデカン−1−オール)を意味する。
【0020】
ポリチオールなどの「ポリ」で始まる物質名は、本書面において用いられるところ、形式上、1つの分子当たり、対応する官能基を2つ以上含有する物質を指す。
【0021】
「不斉中心」という用語は、本書面において用いられるところ、いずれか2つの基を交換させることにより立体異性体がもたらされるよう基に含まれる原子である。立体異性体は、分子式が同一であると共に結合原子(構成単位)の配列が同一であるが、空間中において三次元方向における原子の配向が異なる異性分子である。
【0022】
不斉中心に係る配置は、RまたはSのいずれかであると定義される。R/Sの概念、および、立体化学における絶対配置の判定に係る規則は当業者に公知である。
【0023】
本書面において、炭素−炭素二重結合は、前記炭素−炭素二重結合に対する分子水素の付加によって不斉炭素中心が形成される場合においては、「プロキラル」と定義される。
【0024】
シス/トランス異性体は、二重結合について異なる配向を有する立体配置異性体である。本書面において、「シス」という用語は、「Z」と等しく用いられていると共に逆もまた同様であり、ならびに、「トランス」は「E」と等しく用いられていると共に逆もまた同様である。従って、例えば「シス/トランス異性化触媒」という用語は、用語「E/Z異性化触媒」と等しい。
【0025】
「シス/トランス異性化触媒」は、シス異性体(Z異性体)をシス/トランス異性体混合物(E/Z異性体混合物)に異性化させるか、または、トランス異性体(E異性体)をシス/トランス異性体(E/Z異性体混合物)に異性化させることが可能である触媒である。
【0026】
「E/Z」、「シス/トランス」および「R/S」という用語は、それぞれ、EおよびZの混合物、シスおよびトランスの混合物、ならびに、RおよびSの混合物を指す。
【0027】
数々の式中において符号または基に関して同一の標示が存在している場合、本書面においては、ある特定の式一つに関する文脈においてなされている前記基または符号の定義が、前記同一の標示を含む他の式についても適用される。
【0028】
本書面において、一重の点線はいずれも、置換基が分子の残りに結合する結合を表す。
【0029】
不斉水素化の「アッセイ収率」は、本出願において、完全飽和ケトンまたはアルデヒドまたはケタールまたはアセタールの分子の数対、水素化に供される不飽和ケトンまたはアルデヒドまたはケタールまたはアセタールの分子の数のモル比である。
【0030】
6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンは市販されており、(5E,9E)−/(5E,9Z)−/(5Z,9E)−/および(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンの混合物の混合物である。
【0031】
6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンは、米国特許第6,329,554号明細書のそれぞれ実施例1、実施例2に従って調製可能であり、(5E,9E)−/(5E,9Z)−/(5Z,9E)−/および(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンの混合物である。
【0032】
ステップb)は、ステップa)の混合物からの、6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンの(5E,9E)−および/または(5Z,9Z)異性体の別個の分離に関する。
【0033】
ステップb)における異性体のこの分離は、異なる方法で行うことが可能である。第1の可能性は、クロマトグラフィによる分離である。さらなる好ましい分離法は、蒸留により行われるステップb)における異性体の分離である。分離は、異性体は異なる沸点を有するという事実により可能である。異性体の熱劣化を最小とするために、減圧下において、かつ、蒸留カラムにより蒸留を行うことが提言される。
【0034】
分離される異性体は異なる沸点を有する(表1を参照のこと)ため、異性体は蒸留により分離が可能である。特定の蒸留技術および器具を用いることにより、特にEEおよびZZ異性体を混合物から分離することが可能である。
【0035】
【表1】
【0036】
(5Z,9E)−および/または(5E,9Z)異性体が分離されている場合、本発明の目的を達成するために(すなわち、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンの製造)、これらの分離された異性体はさらに使用されるべきではないか、または、以下に詳細に考察されているとおりシス/トランス異性化に好ましく供されて(5E,9E)−および(5Z,9Z)異性体に異性化されるべきであることが好ましい。
【0037】
好ましい実施形態において、蒸留はシス/トランス異性化触媒の存在下において行われる。
【0038】
シス/トランス異性化触媒は、炭素−炭素二重結合を異性化させる触媒である。本発明の目的について、5位および9位における二重結合のシス/トランス異性化を触媒する前記シス/トランス異性化触媒は、特に一酸化窒素(NO)または有機硫黄化合物、特にポリチオールであることが見出された。
【0039】
式(X)のポリチオールまたは芳香族ポリチオールが、シス/トランス異性化触媒として特に好適である。
【化1】
(式中、n1は1〜4の整数、特に2を表し、
m1は、2〜8の整数、特に3または4、好ましくは4を表し、
ならびに、Aは、28g/mol〜400g/mol、特に90〜150g/molの分子量のm1価の脂肪族炭化水素基を表す)
【0040】
ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(メルカプトアセテート)、グリコールジメルカプトアセテート、ペンタエリスリトールテトラ−(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリ−(3−メルカプトプロピオネート)(=2−エチル−2−(((3−メルカプトプロパノイル)オキシ)メチル)プロパン−1,3−ジイルビス(3−メルカプトプロパノエート))およびグリコールジ(3−メルカプトプロピオネート)といったポリチオールが、高度に好ましい式(X)のポリチオールであるとして示されており、上記のポリチオールの全てにおける好ましいポリチオールである。
【0041】
芳香族ポリチオールとして特に好ましいものは、4,4’−ジメルカプトビフェニルまたは4,4’−チオジベンゼンチオールである。
【0042】
シス/トランス異性化触媒としての式(X)のポリチオールの使用は、ポリチオールは一般にきわめて低い蒸気圧(すなわち高い沸点)を有し、例えば低沸点異性体を蒸留している最中といった、高い温度での使用が可能であるために、きわめて有利である。さらに、ポリチオールは分子量当たりのチオール官能基が高密度であり、これは、添加されるべき触媒が少量でよいためにきわめて有利である。
【0043】
シス/トランス異性化触媒としてのポリチオールの使用は、かなり速い異性化が可能であるためにきわめて有利である。
【0044】
一酸化窒素(NO)はガスであり、単独で、または、ガス混合物の形態、特に少なくとも1種の不活性ガス、特に窒素との組み合わせで異性化対称であるケトンまたはケタールに導入されることが可能である。ガス混合物が用いられる場合、ガス混合物中の一酸化窒素の量は、ガス混合物の重量を基準として、1〜99%、特に5〜95%の範囲内であることが好ましい。特に、腐食および毒性の観点から、ガス混合物中の一酸化窒素の量は、ガス混合物の10〜60重量%の範囲内であることが好ましい。
【0045】
シス/トランス異性化触媒としての一酸化窒素の使用は、異性化対称であるケトンまたはケタールから異性化触媒をきわめて容易に除去可能である点できわめて有利である。
【0046】
一酸化窒素は、大気圧または1MPa以下の超過圧力でケトンまたはケタールに導入されることが好ましい。超過圧力は、10〜300kPaであることが好ましい。
【0047】
一酸化窒素(NO)または一酸化窒素(NO)と他のガスとの混合物は、チューブによって、異性化対称であるケトンまたはケタール中に通気させることにより継続的になされることが好ましい。
【0048】
シス/トランス異性化を利用することで、純粋なシスまたはトランス異性体または異性体のいずれかの混合物を転換して、シスおよびトランス異性体の熱力学的に平衡な混合物を得ることが可能となる。全体として、これにより、好ましくない異性体(残存異性体)の所望される異性体への蒸留および転換(異性化)によって、所望される異性体の分離が可能となる。
【0049】
蒸留は、所望の異性体が連続的に再形成され、蒸留により分離可能であるよう、シス/トランス異性化触媒の存在下(ワンポット異性化またはインサイチュ異性化)で行われることが可能である。
【0050】
さらに、シス/トランス異性化は、シス/トランス異性化触媒が蒸留の残存物に加えられる分離容器中で行うことが可能である。それ故、残存する異性体がシス/トランス異性化触媒によって異性化され、その後、ステップa)においてもたらされた異性体の対応する混合物に加えられる。
【0051】
ステップbにおいてシス/トランス異性化を用いることで所望の異性体について高い収率が達成される。好ましい事例においては、基本的にすべての所望されない異性体の所望される異性体への全異性化を達成することが可能である。
【0052】
好ましくは、異性化触媒が一酸化窒素ではない場合においては特に、より好ましくは異性化触媒としてポリチオールが用いられる場合に、異性化は、20℃を超える温度、特に20℃と所望される異性体の沸点との間、特に50℃と所望される異性体の沸点との間の温度で行われる。異性化は雰囲気圧または減圧下で行われることが可能である。ワンポット異性化の場合、異性化は、減圧下にて行われることが好ましい。
【0053】
一酸化窒素がシス/トランス異性化触媒である場合において特に、異性化は、雰囲気圧または超過圧力で行われる。
【0054】
さらに、ポリチオールを伴う異性化においては、アミド、ピロリドン、スルホン、スルホキシド、イオン性液体、特にN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)またはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、スルホラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)および1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミドなどの極性溶剤を添加することで、異性化効果が加速されることが分かっている。
【0055】
従って、シス/トランス異性化プロセスは、特に、イオン性液体、特に1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、スルホランおよびジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群から選択される極性溶剤である極性溶剤の存在下で行われることが好ましい。
【0056】
シス/トランス異性化プロセスは、特に、イオン性液体、特に1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群から選択される極性溶剤である極性溶剤の存在下で行われることがより好ましい。
【0057】
シス/トランス異性化触媒の量は、6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンの異性体の量に関連して、1〜20重量%であることが好ましい。
【0058】
[ケタール形成]
さらなる実施形態においては、ステップc)に先立って、ステップc
0)
c
0)ステップb)において分離された6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンの異性体のケタールを形成するステップ;
が行われ、ステップc)においては、6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンのケタールが不斉水素化され、不斉水素化の後に、水素化ケタールがケトンに加水分解され、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンが得られる。
【0059】
ケトンからのケタールの形成自体は当業者に公知である。
【0060】
不飽和ケトンのケタールは、好ましくは、上記の不飽和ケトンおよびアルコールから形成可能である。
【0061】
ケタールに対する代替的な合成経路が存在することは当業者に公知である。原理上は、ケタールは、ケトンをオルト−エステルで処理することにより、または、例えばPerio et al.,Tetrahedron Letters 1997,38(45),7867−7870、または、Lorette and Howard,J.Org.Chem.1960,25,521−525(この両方の全内容は、参照により本明細書において援用されている)に開示されているものなどのトランス−ケタール化により、形成されることも可能である。
【0062】
好ましくは、ケタールは、上記の不飽和ケトンおよびアルコールから形成される。
【0063】
アルコールは、1つまたは複数のヒドロキシル基を含んでいることが可能である。アルコールは、フェノールアルコールまたは脂肪族または脂環式アルコールであり得る。好ましくは、アルコールは、1つまたは2つのヒドロキシル基を有する。
【0064】
アルコールが1つのヒドロキシル基を有する場合、アルコールは、1〜12個の炭素原子を有するアルコールであることが好ましい。特に、1つのヒドロキシル基を有するアルコールは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、ペンタン−1−オール、3−メチルブタン−1−オール、2−メチルブタン−1−オール、2,2−ジメチルプロパン−1−オール、ペンタン−3−オール、ペンタン−2−オール、3−メチルブタン−2−オール、2−メチルブタン−2−オール、ヘキサン−1−オール、ヘキサン−2−オール、ヘキサン−3−オール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、2,2−ジメチル−1−ブタノール、2,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、ならびに、ヘプタノール、オクタノールおよびハロゲン化C
1〜C
8アルキルアルコールのすべての構造異性体、特に2,2,2−トリフルオロエタノールからなる群から選択される。第1級または第2級アルコールが特に好適である。好ましくは、第1級アルコールは、1つのヒドロキシル基を有するアルコールとして用いられる。特に、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールまたは2,2,2−トリフルオロエタノール、好ましくはメタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノールまたは2,2,2−トリフルオロエタノールが、1つのヒドロキシル基を有するアルコールとして用いられる。
【0065】
他の実施形態において、アルコールは、ジオールであり、従って、2つのヒドロキシル基を有する。好ましくは、ジオールは、エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブタン−1,2−ジオール、ブタン−2,3−ジオール、2−メチルプロパン−1,2−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、1,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、ベンゼン−1,2−ジオールおよびシクロヘキサン−1,2−ジオールからなる群から選択される。2種のシクロヘキサン−1,2−ジオールのうち、好ましい立体異性体は、シン−シクロヘキサン−1,2−ジオール(=シス−シクロヘキサン−1,2−ジオール)である。
【0066】
2つのヒドロキシル基は、一実施形態において、2個の隣接する炭素原子に結合しており、従って、これらのジオールはビシナルジオールである。ビシナルジオールはケタールまたはアセタール中において5員環を形成する。
【0067】
エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、ブタン−1,2−ジオール、ブタン−2,3−ジオール、2−メチルプロパン−1,2−ジオール、ベンゼン−1,2−ジオールおよびシン−シクロヘキサン−1,2−ジオール、特にエタン−1,2−ジオールからなる群から選択されるビシナルジオールが特に好適である。
【0068】
他の特に好適なアルコールはジオールであって、ヒドロキシル基が3個の炭素原子により分離しているものであり、および、従って、ケタールまたはアセタール中においてきわめて安定な6員環を形成する。この種の特に好適なジオールは、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、2−メチルブタン−1,3−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、1,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、3−メチルペンタン−2,4−ジオールおよび2−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサノールである。
【0069】
好ましくは、第1級アルコールがジオールとして用いられる。
【0070】
ケタール形成に用いられる反応条件および化学量論は当業者に公知である。
【0071】
好ましいケタールは、式(XII)を有する。
【化2】
(式中、波線は、隣接する炭素−炭素二重結合に結合して、前記炭素−炭素二重結合をZ配置またはE配置のいずれかで有する、炭素−炭素結合を表し、
および、式中における点線を伴う二重結合(
【化3】
)は、炭素−炭素単結合または炭素−炭素二重結合のいずれかを表し、
ならびに、式中、
Q
1およびQ
2は、
各々、もしくは、共に、C
1〜C
10アルキル基もしくはハロゲン化C
1〜C
10アルキル基を指し、
または、一緒になって、C
2〜C
6アルキレン基もしくはC
6〜C
8シクロアルキレン基を形成する。
Q
1およびQ
2は、特に、
直鎖C
1〜C
10アルキル基またはフッ素化直鎖C
1〜C
10アルキル基のいずれか、好ましくは直鎖C
1〜C
4アルキル基または−CH
2CF
3基
または、式
【化4】
の基(式中、Q
3、Q
4、Q
5およびQ
6は、相互に独立して、水素原子またはメチルまたはエチル基である)
を指す)。
【0072】
本発明の一実施形態において、式(XII)のケタールは、2,2−ジメトキシ−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン、2,2−ジエトキシ−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン、6,10,14−トリメチル−2,2−ジプロポキシペンタデカ−5,9−ジエン、2,2−ジイソブトキシ−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン、2,2−ジ−sec−ブトキシ−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン、2,2−ジイソブトキシ−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン、2,2−ビス(ヘキサン−2−イルオキシ)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン、6,10,14−トリメチル−2,2−ビス((4−メチルペンチル)オキシ)ペンタデカ−5,9−ジエン、6,10,14−トリメチル−2,2−ビス(ペンチルオキシ)ペンタデカ−5,9−ジエン、2−メチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7−ジエン−1−イル)−1,3−ジオキソラン、2,4−ジメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7−ジエン−1−イル)−1,3−ジオキソラン、2,4,5−トリメチル−2−(4,8、12−トリメチルトリデカ−3,7−ジエン−1−イル)−1,3−ジオキソラン、2−メチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7−ジエン−1−イル)−1,3−ジオキサン、2,5−ジメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7−ジエン−1−イル)−1,3−ジオキサン、2,5,5−トリメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7−ジエン−1−イル)−1,3−ジオキサン、6,10,14−トリメチル−2,2−ビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ペンタデカ−5,9−ジエン、ならびに、これらのすべての(E,E)および(Z,Z)異性体からなる群、
および/または、14,14−ジメトキシ−2,6,10−トリメチルペンタデカ−2,6,10−トリエン、14,14−ジエトキシ−2,6,10−トリメチルペンタデカ−2,6,10−トリエン、2,6,10−トリメチル−14,14−ジプロポキシペンタデカ−2,6,10−トリエン、14,14−ジイソブトキシ−2,6,10−トリメチルペンタデカ−2,6,10−トリエン、14,14−ジ−sec−ブトキシ−2,6,10−トリメチルペンタデカ−2,6,10−トリエン、14,14−ジイソブトキシ−2,6,10−トリメチルペンタデカ−2,6,10−トリエン、14,14−ビス(ヘキサン−2−イルオキシ)−2,6,10−トリメチルペンタデカ−2,6,10−トリエン、2,6,10−トリメチル−14,14−ビス((4−メチルペンチル)オキシ)ペンタデカ−2,6,10−トリエン、2,6,10−トリメチル−14,14−ビス(ペンチルオキシ)ペンタデカ−2,6,10−トリエン、2−メチル−2−(−4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7,11−トリエン−1−イル)−1,3−ジオキソラン、2,4−ジメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7,11−トリエン−1−イル)−1,3−ジオキソラン、2,4,5−トリメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7,11−トリエン−1−イル)−1,3−ジオキソラン、2−メチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7,11−トリエン−1−イル)−1,3−ジオキサン、2,5−ジメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7,11−トリエン−1−イル)−1,3−ジオキサン、2,5,5−トリメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7,11−トリエン−1−イル)−1,3−ジオキサン、2,6,10−トリメチル−14,14−ビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ペンタデカ−2,6,10−トリエン、ならびに、これらのすべての(E,E)および(Z,Z)異性体からなる群から選択される。
【0073】
特に、Q
1およびQ
2は共に、フッ素化直鎖C
1〜C
10アルキル基、−CH
2CF
3基を指すか、または、一緒になって、アルキレン基CH
2−C(CH
3)
2−CH
2を形成する。
【0074】
従って、不斉水素化される好ましいケタールは、2,5,5−トリメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7−ジエン−1−イル)−1,3−ジオキサン、2,5,5−トリメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7,11−トリエン−1−イル)−1,3−ジオキサン、2,6,10−トリメチル−14,14−ビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ペンタデカ−2,6,10−トリエン、6,10,14−トリメチル−2,2−ビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ペンタデカ−5,9−ジエン、ならびに、これらのすべての(E,E)および(Z,Z)異性体からなる群から選択される。
【0075】
水素化されたケタールの対応するケトンへの加水分解は当業者に公知である。形成されたケトンの酸および単離による、特に抽出による加水分解は特に好適である。
【0076】
[不斉水素化]
ステップc)は、キラルイリジウム錯体の存在下における、分子水素による不斉水素化を含む。
【0077】
キラルイリジウム錯体は、中心イリジウム原子に配位された有機リガンドを有する化合物である。キラルイリジウム錯体のキラリティーは、リガンドのキラリティー、または、リガンドの空間的配置のいずれかによるものである。このキラリティーのコンセプトは錯体化学から周知である。リガンドは単座または多座であることが可能である。好ましくは、イリジウム中心原子に結合しているリガンドはキレート化リガンドである。本発明に関しては、特に、不斉中心を備える有機リガンドを有するキラルイリジウム錯体がきわめて好適であることが示されている。
【0078】
キラルイリジウム錯体は配位原子としてNおよびPを有するキレート化有機リガンド、2つのオレフィンまたは2つの炭素−炭素二重結合を有するジエンのいずれかに結合していることが好ましく、それ故、キラルイリジウム錯体は以下の式(III−0)を有することが好ましい。
【化5】
(式中、
P−Q−Nは、不斉中心を含むか、または、面性もしくは軸キラリティーを有し、かつ、前記錯体のイリジウム中心に対する結合部位として窒素およびリン原子を有するキレート化有機リガンドを指し、
Y
1、Y
2、Y
3およびY
4は、相互に独立して、水素原子、C
1〜12アルキル、C
5〜10−シクロアルキルもしくは芳香族基であり;または、これらの少なくとも2つが一緒になって、少なくとも2個の炭素原子を有する少なくとも2価の架橋された基を形成し;ただし、Y
1、Y
2、Y
3およびY
4のすべてが水素原子とされることはなく;ならびに
【化6】
は、
アニオンであり、特に、ハライド、PF
6−、SbF
6−、テトラ(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ホウ酸イオン(BAr
F−)、BF
4−、過フッ素化スルホン酸イオン、好ましくはF
3C−SO
3−またはF
9C
4−SO
3−;ClO
4−、Al(OC
6F
5)
4−、Al(OC(CF
3)
3)
4−、N(SO
2CF
3)
2−、N(SO
2C
4F
9)
2−およびB(C
6F
5)
4−からなる群から選択され
る)
【0079】
窒素とリン原子とは、リガンドP−Q−Nの化学式において、2〜5個、好ましくは3個の原子によって分離されていることが好ましい。
【0080】
キレート化有機リガンドP−Q−Nは、式(III−N1)、(III−N2)、(III−N3)、(III−N4)、(III−N5)、(III−N6)、(III−N7)、(III−N8)および(III−N9)から選択されることが好ましい。
【化7】
(式中、G
1は、C
1〜C
4アルキル、C
5〜7−シクロアルキル、アダマンチル、フェニル(1〜3個のC
1〜5アルキル、C
1〜4アルコキシ、C
1〜4−パーフルオロアルキル基および/または1〜5個のハロゲン原子により任意選択により置換されている)、ベンジル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−フリル基のいずれかを表し、
G
2、G
3およびG
4は、相互に独立して、水素原子またはC
1〜C
4アルキル、C
5〜7−シクロアルキル、アダマンチル、フェニル(1〜3個のC
1〜5−、C
1〜4アルコキシ、C
1〜4−パーフルオロアルキル基および/または1〜5個のハロゲン原子で任意選択により置換されている)、ベンジル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−フリル基を表し、
X
1およびX
2は、相互に独立して、水素原子、C
1〜4アルキル、C
5〜7−シクロアルキル、アダマンチル、フェニル(1〜3個のC
1〜5アルキル、C
1〜4アルコキシ、C
1〜4−パーフルオロアルキル基および/または1〜5個のハロゲン原子により任意選択により置換されている)、ベンジル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−フリルまたはフェロセニルであり、
Phはフェニルを指し、
nは、1または2または3、好ましくは1または2であり、
およびR
1、Z
1およびZ
2は、式(III)について以下に定義されているとおりである)
【0081】
Y
1およびY
2および/またはY
3およびY
4が、式Y
1−=−Y
2および/または式Y
3−=−Y
4のオレフィンを形成する場合、このオレフィンまたはこれらのオレフィンは、エテン、プロプ−1−エン、2−メチルプロプ−1−エン、2−メチル−ブタ−2−エン、2,3−ジメチルブタ−2−エン、(Z)−シクロオクテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロペンテンおよびノルボルネンからなる群から選択されることが好ましい。
【0082】
Y
1、Y
2、Y
3およびY
4がジエンを形成する場合、環式(環中に二重結合)または非環式(環以外に二重結合)のいずれかである。
【0083】
ジエンの2つの炭素−炭素二重結合は、2つの炭素結合によって結合されていることが好ましく、すなわち、ジエンは、下位構造C=C−C−C−C=Cを含むことが好ましい。
【0084】
好ましい非環式ジエンの例は、ヘキサ−1,5−ジエン、ヘプタ−1,5−ジエン、オクタ−1,5−ジエン、オクタ−2,6−ジエン、2,4−ジアルキル−2,7−オクタジエン、3,6−ジアルキルオクタ−2,6−ジエン、1,2−ジビニルシクロヘキサンおよび1,3−ブタジエンである。
【0085】
環式ジエンに対する例は、シクロオクタ−1,5−ジエン、シクロヘキサ−1,4−ジエン、シクロヘキサ−1,3−ジエン、3,4,7,8−テトラアルキルシクロオクタ−1,5−ジエン、3,4,7−トリアルキルシクロオクタ−1,5−ジエン、3,4−ジ−アルキルシクロオクタ−1,5−ジエン、3,7−ジ−アルキルシクロオクタ−1,5−ジエン、3,8−ジ−アルキルシクロオクタ−1,5−ジエン、3−アルキルシクロオクタ−1,5−ジエン;ノルボルナジエン、1−アルキル−ノルボルナジエン、2−アルキルノルボルナジエン、7−アルキルノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエンおよび(1s,4s)−ビシクロ[2.2.2]オクタ−2,5−ジエンである。
【0086】
好ましいジエンはシクロオクタ−1,5−ジエンである。
【0087】
キラルイリジウム錯体の高度に好ましいクラスは、式(III)のキラルイリジウム錯体である。
【化8】
(式中、
nは、1または2または3、好ましくは1または2であり、
X
1およびX
2は、相互に独立して、水素原子、C
1〜4アルキル、C
5〜7−シクロアルキル、アダマンチル、フェニル(1〜3個のC
1〜5−、C
1〜4アルコキシ、C
1〜4−パーフルオロアルキル基および/または1〜5個のハロゲン原子で任意選択により置換されている)、ベンジル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−フリルまたはフェロセニルであり、
Z
1およびZ
2は、相互に独立して、水素原子、C
1〜5アルキルまたはC
1〜5アルコキシ基であり、
または、Z
1およびZ
2は、一緒になって、5〜6員環を形成する架橋基を指し、
【化9】
は、
アニオンであり、特に、ハライド、PF
6−、SbF
6−、テトラ(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ホウ酸イオン(BAr
F−)、BF
4−、過フッ素化スルホン酸イオン、好ましくはF
3C−SO
3−またはF
9C
4−SO
3−;ClO
4−、Al(OC
6F
5)
4−、Al(OC(CF
3)
3)
4−、N(SO
2CF
3)
2−、N(SO
2C
4F
9)
2−およびB(C
6F
5)
4−からなる群から選択さ
れ、
R
1は、フェニルもしくはo−トリルもしくはm−トリルもしくはp−トリル、または、式(IVa)もしくは(IVb)もしくは(IVc)の基のいずれかを表し、
【化10】
(式中、R
2およびR
3は、共にHもしくはC
1〜C
4アルキル基もしくはハロゲン化C
1〜C
4アルキル基を表すか、または、ハロゲン原子もしくはC
1〜C
4アルキル基もしくはC
1〜C
4アルコキシ基により任意選択により置換されている6員脂環式もしくは芳香族環を一緒になって形成する二価の基を表し、
R
4およびR
5は、共にHもしくはC
1〜C
4アルキル基もしくはハロゲン化C
1〜C
4アルキル基、または、ハロゲン原子もしくはC
1〜C
4アルキル基もしくはC
1〜C
4アルコキシ基により任意選択により置換されている6員脂環式もしくは芳香族環を一緒になって形成する二価の基を表し、
R
6およびR
7およびR
8は、各々、C
1〜C
4アルキル基またはハロゲン化C
1〜C
4アルキル基を表し、
R
9およびR
10は、共にHもしくはC
1〜C
4アルキル基もしくはハロゲン化C
1〜C
4アルキル基、または、ハロゲン原子もしくはC
1〜C
4アルキル基もしくはC
1〜C
4アルコキシ基により任意選択により置換されている6員脂環式もしくは芳香族環を一緒になって形成する二価の基を表す)
ならびに、*は、式(III)の錯体の不斉中心を表す)
【0088】
式(III)の錯体は天然に産するものであり、すなわち、この錯体は、既に定義されている式(III’)の錯体カチオンとアニオンYとから構成される。
【化11】
【0089】
アニオンとカチオンとが解離し得ることは当業者に公知である。
【0090】
X
1および/またはX
2は、好ましくは、水素原子、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソ−ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、フェニル、ベンジル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、4−メトキシフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル、3,5−ジメトキシフェニル、1−ナフチル、ナフチル、2−フリル、フェロセニル、または、1〜5個のハロゲン原子で置換されているフェニル基を表す。
【0091】
X
1および/またはX
2が1〜5個のハロゲン原子で置換されているフェニル基を表す場合、フッ素原子で置換されているフェニル基が特に有用であり、すなわち、C
6H
4F、C
6H
3F
2、C
6H
2F
3、C
6HF
4またはC
6F
5が特に有用である。
【0092】
X
1および/またはX
2が1〜3個のC
1〜4アルキルで置換されているフェニル基を表す場合、メチル基で置換されているフェニル基が特に有用であり、特にオルト−トリルおよびパラ−トリルが特に有用である。
【0093】
X
1およびX
2が共に同一の置換基を表すことが好ましい。
【0094】
X
1およびX
2が共にフェニルまたはオルト−トリル基であることが最も好ましい。
【0095】
上記のR
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9およびR
10の定義において用いられているC
1〜C
4アルキルまたはアルコキシ基は、第1級または第2級、好ましくは第1級アルキルまたはアルコキシ基であることが好ましい。
【0096】
式(IVa)の特に好適な置換基R
1は、9−アントリルまたは1−ナフチル基である。
【0097】
式(IVb)のさらに特に好適な置換基R
1は、メシチル基である。
【0098】
式(IVc)のさらに特に好適な置換基R
1は、2−ナフチル基である。
【0099】
好ましくは、R
1は、フェニル(「Ph」と略記される)または式(IV−1)または(IV−2)または(IV−3)、特に(IV−1)または(IV−3)により表される。
【化12】
【0100】
最も好ましい置換基R
1は、9−アントリルまたはフェニルのいずれかであることが見出された。
【0101】
式(III)の好ましいキラルイリジウム錯体は、式(III−A)、(III−B)、(III−C)、(III−D)、(III−E)および(III−F)の錯体である。
【化13】
【0102】
式(III)のキラルイリジウム錯体としては、式(III−C)および(III−D)および(III−F)の錯体、特に式(III−C)または(III−F)の錯体が最も好ましい。
【0103】
式(III)のキラルイリジウム錯体は、その全内容が参照により本明細書において援用されている、Chem.Sci.,2010,1,72−78に詳述されているとおり、合成可能である。
【0104】
式(III)のイリジウム錯体はキラルである。アスタリスクによって示されている前記キラル中心に係るキラリティーはSまたはRのいずれかであり、すなわち、式(III)のキラル錯体の2種のエナンチオマー(IIIa)および(IIIb)が存在している。
【化14】
【0105】
式(III)の錯体のエナンチオマーの個々は、主に、ラセミ混合物からの錯化ステップの後に分離されることが可能である。しかしながら、Chem.Sci.,2010,1,72−78に開示されているとおり、式(III)の錯体の合成は、非ラセミキラルアルコールが関わる反応を含む。さらなる反応ステップにおいても錯体のキラリティーは変わらないことは公知であり、従って、その異性体純度(S:R比)は、前記アルコールの鏡像体純度によって決定される。前記対応するアルコールはそれぞれ、99%超、1%未満のR/S比で入手可能であるため、式(III)の錯体は、きわめて高い鏡像体純度、特にそれぞれ、99%超、1%未満のR/S比で入手可能である。
【0106】
キラルイリジウム錯体は、1種のエナンチオマーが過剰量で用いられることが好ましい。
【0107】
特に、式(III)のキラルイリジウム錯体の個々のエナンチオマーR:Sのモル量の比は、90:10超または10:90未満、好ましくは100:0〜98:2または0:100〜2:98の範囲であることが好ましい。この比が、それぞれ、約100:0、約0:100であることが最も好ましい。比が、それぞれ、100:0、0:100であることがきわめて好ましい。
【0108】
一実施形態において、*によって示されている不斉中心はR配置を有する。
【0109】
他の実施形態において、*によって示されている不斉中心はS配置を有する。
【0110】
水素化剤は分子水素(H
2)である。
【0111】
キラルイリジウム錯体の量は、それぞれ、ケトン、ケタールの量に基づいて、約0.0001〜約5mol%、好ましくは約0.001〜約2mol%、より好ましくは約0.01〜約1mol%であることが好ましい。
【0112】
水素化は、物質または不活性キャリア中において、特に不活性溶剤、または、不活性溶剤の混合物中において行われることが可能である。水素化は、物質(未希釈)中において行われることが好ましい。
【0113】
好ましい好適な溶剤は、ハロゲン化炭化水素、炭化水素、炭酸塩、エーテルおよびハロゲン化アルコールである。
【0114】
特に好ましい溶剤は、炭化水素、フッ素化アルコールおよびハロゲン化炭化水素、特にハロゲン化脂肪族炭化水素である。
【0115】
炭化水素の好ましい例は、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンおよびベンゼン、特にトルエンおよびヘプタンである。
【0116】
好ましいエーテルは、ジアルキルエーテルである。特に有用なエーテルは、8個未満の炭素原子を有するジアルキルエーテルである。最も好ましいエーテルは、メチルtert.−ブチルエーテル(CH
3−O−C(CH
3)
3)である。
【0117】
好ましいハロゲン化アルコールは、フッ素化アルコールである。特に好ましいフッ素化アルコールは2,2,2−トリフルオロエタノールである。
【0118】
ハロゲン化炭化水素の好ましい一グループは、ハロゲン化芳香族化合物、特にクロロベンゼンである。
【0119】
ハロゲン化脂肪族炭化水素の好ましい例は、モノ−またはポリハロゲン化直鎖または分岐鎖または環式C
1〜C
15アルカンである。特に好ましい例は、モノ−またはポリ塩化または−臭素化直鎖または分岐鎖または環式C
1〜C
15アルカンである。モノ−またはポリ塩化直鎖または分岐鎖または環式C
1〜C
15−−アルカンがより好ましい。ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロホルム、および臭化メチレンが最も好ましい。
【0120】
水素化に最も好ましい溶剤はジクロロメタンである。
【0121】
用いられる溶剤の量は、あまり重要ではない。しかしながら、水素化されるべきケトンまたはケタールの濃度は、0.05〜1M、特に0.2〜0.7Mであることが好ましいことが示されている。
【0122】
水素化反応は、約1〜約100barの分子水素の絶対圧、好ましくは約20〜約75barの分子水素の絶対圧で簡便に実施される。反応温度は、約0〜約100℃、好ましくは約10〜約60℃であることが簡便である。
【0123】
反応体および溶剤を添加する順番は重要ではない。
【0124】
水素化に好適な技術および装置は主に当業者に公知である。
【0125】
不斉水素化を行うことにより、プロキラル炭素−炭素二重結合が水素化されて、炭素原子の一方または両方においてキラル不斉中心が形成される。
【0126】
ステップc)においては、6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンもしくは6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オン、または、6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンもしくは6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンのケタールが水素化される。
【0127】
ケタールが不斉水素化される場合、不斉水素化後、不斉水素化されたケタールは、式(XVI)を有することが好ましい。
【化15】
(式中、
【化16】
は不斉中心を表し、
ならびに、Q
1およびQ
2は式(XII)について定義されているとおりである)
【0128】
従って、不斉水素化された好ましいケタールは、6,10,14−トリメチル−2,2−ビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ペンタデカン、2,5,5−トリメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)−1,3−ジオキサン、2,5,5−トリメチル−2−((4R,8R)−4,8,12−トリメチルトリデシル)−1,3−ジオキサンおよび(6R,10R)−6,10,14−トリメチル−2,2−ビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ペンタデカンからなる群から選択されることが好ましい。
【0129】
これらのケタールが対応するケトンに加水分解される際、これらにより、それぞれ、6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンまたは(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンが得られる。
【0130】
キラルイリジウム錯体、特に式(III)のキラルイリジウム錯体の存在下における分子水素による6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンの不斉水素化は、すでにそれなりに速く、かつ、効率的であり、高い転換率、ならびに、優れた選択性を示すものではあるが、対応するケトンのケタールが不斉水素化される場合、不斉水素化をさらに向上させることが可能であることが分かっている。
【0131】
特定のキラリティー(RまたはS)のキラルイリジウム錯体は、不斉水素化によって形成される特定の不斉中心を有する生成物に出発材料を転換させることが分かっている。
【0132】
本発明に記載のとおり、不斉水素化によってR配置を伴う立体中心を有する生成物、すなわち、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンをステップc)において生産することが所望され、ステップc)において分離されるオレフィン異性体がZZ配置またはEE配置を有するかに応じて、キラルイリジウム錯体のキラリティーを選択する必要がある。
【0133】
*によって示される不斉中心でS配置を有する式(III)のキラルイリジウム錯体が、E異性体、すなわち、(5E,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは(5E,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンの水素化に用いられる場合、対応する生成物、すなわち、ステップc)において(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンが、新たに形成された不斉中心でR配置を有するものとして得られることが示されている。同様に、Z異性体、すなわち、(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンの水素化は、*によって示される不斉中心でR配置を有する式(III)のキラルイリジウム錯体の存在下で、同一の生成物をもたらし、すなわち、ステップc)において(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンが、新たに形成された不斉中心でR配置を有するものとして得られる。
【0134】
驚くべきことに、この知見は、ステップc)においてケトンまたはケタールのいずれが用いられるかに関わらないことが見出された。
【0135】
従って、不斉水素化のためにステップc)において用いられる式(III)のキラルイリジウム錯体は、好ましくは、
(5E,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンもしくは(5E,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オン、または、そのケタールが水素化される事例においては、*によって示される不斉中心でS配置を有し、
または、
(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンもしくは(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オン、または、そのケタールが水素化される事例においては、*によって示される不斉中心でR配置を有する。
【0136】
本発明の好ましい実施形態において、ステップc)における不斉水素化は、有機スルホン酸、有機スルホン酸の遷移金属塩、金属アルコキシド、アルミノキサン、アルキルアルミノキサンおよびB(R)
(3−v)(OZ)
vからなる群から選択される添加剤の存在下で行われ、式中、vは0、1、2または3を指し、Rは、F、C
1〜6アルキル、ハロゲン化C
1〜6アルキル、アリールまたはハロゲン化アリール基を指し;および、Zは、C
1〜6アルキル、ハロゲン化C
1〜6アルキル、アリールまたはハロゲン化アリール基を指す。
【0137】
特に好適な添加剤は、トリフリック酸、アルキルアルミノキサン、特にメチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、テトラアルコキシチタン酸塩、B(R)
(3−v)(OZ)
v;特に、トリ−イソプロピルボレートおよびトリエチルボランおよびBF
3(好ましくはBF
3エーテラートの形態)からなる群から選択される。
【0138】
有機スルホン酸の遷移金属塩としては、有機スルホン酸のスカンジウム、インジウム、イットリウムおよびジルコニウム塩が特に有用である。
【0139】
金属アルコキシドは当業者に公知である。この用語は、特に、周期律システムにおける第4〜13族の元素のアルコキシドに関連する。また、金属アルコキシドは、度々、十分に確定された構造を形成しないことがあることが当業者に公知である。典型的には、金属アルコキシドは、酸素原子によって金属中心に結合したヒドロカルビル基を有する。金属アルコキシドはまた、例えば(多環式)アルミニウムオキソアルコキシドなど、酸素または酸素含有基によって架橋された異なる金属中心を有し得る。
【0140】
金属アルコキシドとしては、チタンアルコキシド(アルコキシチタネートとも呼ばれる)、ジルコニウムアルコキシド(アルコキシジルコネートとも呼ばれる)、または、アルミニウムアルコキシドが特に有用である。
【0141】
金属アルコキシドの特に好ましいクラスは、J.Chem.Soc.,Dalton Trans.,2002,259−266またはOrganometallics 1993,12,2429−2431に開示されているものなどの、多環式アルミニウムオキソアルコキシドタイプのものである。
【0142】
アルキルアルミノキサンは、チーグラーナッタタイプのオレフィン重合のための助触媒として特に有用である公知の生成物である。これらは、トリアルキルアルミニウム化合物、特にトリメチルアルミニウムまたはトリエチルアルミニウムの制御された加水分解により調製される。加水分解は、例えば金属塩水和物(結晶水を含有する金属塩)により達成可能である。
【0143】
好ましくは、添加剤は、トリフリック酸、アルキルアルミノキサン、特にメチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、テトラアルコキシチタン酸塩、B(R)
(3−v)(OZ)
v;特に、トリ−イソプロピルボレートおよびトリエチルボランおよびBF
3(好ましくはBF
3エーテラートの形態)からなる群から選択される。
【0144】
トリフリック酸、アルキルアルミノキサン、特にメチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、テトラアルコキシチタン酸塩、B(R)
(3−v)(OZ)
v;特に、トリ−イソプロピルボレートおよびトリエチルボランがより好ましい。
【0145】
特に良好な結果が、トリメチルアルミノキサンおよび2,2,2−トリフルオロエタノールまたはトリアルキルアルミニウムおよび2,2,2−トリフルオロエタノールから得られる添加剤により達成される。
【0146】
キラルイリジウム錯体の存在下で分子水素を用いる不斉水素化の質および速度が、上記の添加剤を用いると顕著に増大することが見出された。
【0147】
上記の添加剤が、不斉水素化されるべきケトンの対応するケタール、すなわち、6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンと共に用いられる場合に、不斉水素化の効率が最も顕著に最大化されることがさらに観察された。
【0148】
効率が高いことにより、6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンもしくは6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンのケタールを用い、および/または、特にフッ素化アルコール、特に2,2,2−トリフルオロエタノールとの組み合わせで、既述の添加剤を添加することで、キラルイリジウム錯体の量を著しく低減することが可能であるという効果が得られ、6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オン単独での対応する不斉水素化と比して、不斉水素化において所与の収率および不斉水素化が達成される。
【0149】
プロセスがシス/トランス異性化ステップを含む場合、上記に詳述されているとおり、すべての出発材料の最適な使用のために、反対のキラリティーの水素化錯体を用いる各異性体の別々の不斉水素化のために2本の並行する生産ラインを設定する必要がなく、本発明のプロセスはきわめて興味深い。従って、上記のインサイチュ異性化がかなり好ましい。
【0150】
既述のとおり、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンは重要な中間体であり、(R,R)−イソフィトール、(2−ambo)−α−トコフェロールまたは(2R,4’R,8’R)−α−トコフェロールの合成に特に有用である。
【0151】
従って、さらなる態様において、本発明は、(R,R)−イソフィトール((3RS,7R,11R)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−1−エン−3−オール)の製造プロセスに関し、これは、
上記において詳述されているとおり、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンを製造するプロセス、
これに続いて、
g)塩基の存在下においてエチンを用いて、(7R,11R)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−1−イン−3−オールを得る(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンのエチニル化、
h)リンドラー触媒の存在下において、(R,R)−イソフィトールを得る、分子水素による(7R,11R)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−1−イン−3−オールの水素化、
または
h’)ビニルグリニャール試薬の添加により(R,R)−イソフィトールを得る(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンのビニル化
のいずれかのステップを含む。
【0152】
ステップg)を用いる変形例の反応タイプおよび条件の詳細が、その全内容は参照により本明細書により援用されている、欧州特許第1 532 092 B1号明細書、特に実施例2、または国際公開第2003/029175 A1号パンフレット(塩基性アニオン交換樹脂を使用)において開示されている。ステップh)における、リンドラー触媒の存在下での分子水素による水素化は当業者に公知である。例えばA.Ofner et al,Chim.Acta 1959,42,2577−2584はステップg)およびh)の組み合わせを開示しており、その全内容は参照により本明細書により援用されている。
【0153】
米国特許第4,028,385号明細書は、例えば、ステップh’)ならびにステップg)およびh)のシーケンスの両方を用いる変形例の反応タイプおよび条件の詳細を開示しており、その全内容は参照により本明細書により援用されている。
【0154】
さらなる態様において、本発明は、式(V)の化合物の製造プロセスに関し、これは、
上記において詳述されているとおり、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンを製造するプロセス、
これに続いて、
g)塩基性物質の存在下においてエチンを用いて、(7R,11R)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−1−イン−3−オールを得る(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンのエチニル化、
h)リンドラー触媒の存在下において、(R,R)−イソフィトールを得る、分子水素による(7R,11R)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−1−イン−3−オールの水素化、
または
h’)ビニルグリニャール試薬の添加により(R,R)−イソフィトールを得る(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンのビニル化、
のいずれかのステップ、これに続いて、
m)(R,R)−イソフィトールと式(VI)の化合物とを縮合して、#によって示される中心に係るキラリティーについて異性体混合物である式(V)の化合物を得るステップ
【化17】
(式中、#は不斉中心を表す)
を含む。
【0155】
ステップg)およびh)およびh’)に係る条件が上記で検討された)。ステップm)として記載されている(R,R)−イソフィトールおよび式(VI)の化合物の縮合反応は、当業者に公知である。この縮合に関しては、ZnCl
2/鉱酸、BF
3/AlCl
3、Fe/HCl、トリフルオロ酢酸または硼酸/カルボン酸、ならびに、国際公開第2005/121115 A1号パンフレットに開示されているインジウム(III)またはスカンジウム(III)塩などの一連の触媒が用いられ得る。さらに、好適な触媒は、ヘテロポリ酸、特に欧州特許出願公開第0 970 953 A1号明細書に開示されているものなどの12−タングストリン酸または12−タングストケイ酸である。
【0156】
式(V)の化合物は、(2−ambo)−α−トコフェロール、すなわち、対応する(2R,4’R,8’R)−α−トコフェロールおよび(2S,4’R,8’R)−α−トコフェロール)の混合物を表す。
【0157】
さらなる態様において、本発明は、式(V−A)の化合物の製造プロセスに関し、これは
上記において詳述されているとおり、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンを製造するプロセス、
これに続いて、
g)塩基性物質の存在下においてエチンを用いて、(7R,11R)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−1−イン−3−オールを得る(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンのエチニル化、
h)リンドラー触媒の存在下において、(R,R)−イソフィトールを得る、分子水素による(7R,11R)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−1−イン−3−オールの水素化、
または
h’)ビニルグリニャール試薬の添加により(R,R)−イソフィトールを得る(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンのビニル化、
のいずれかのステップ、これに続いて、
m)(R,R)−イソフィトールと式(VI)の化合物とを縮合して、#によって示される中心に係るキラリティーについて異性体混合物である式(V)の化合物を得るステップ、
【化18】
(式中、#は不斉中心を表す)、
および
n)式(V−A)の化合物を式(V)の異性体混合物から単離するステップ
【化19】
を含む。
【0158】
この式(V−A)の化合物の製造プロセスは、追加のステップn)を除き、式(V)の化合物の製造プロセスと同一である。
【0159】
対応する(2−ambo)−α−トコフェロールからの(2R,4’R,8’R)−a−トコフェロールの単離は、特に国際公開第2012/152779 A1号パンフレットに記載されているとおり、キラル相によるクロマトグラフィ分離によって達成可能である。国際公開第2012/152779 A1号パンフレットにおいてステップc)として開示されているとおり、(2S,4’R,8’R)−α−トコフェロールにおいて富化された画分のエピマー化によって(2R,4’R,8’R)−α−トコフェロールの収率を高めることも好ましい。国際公開第2012/152779 A1号パンフレットの全内容は、参照により本明細書において援用されている。
【0160】
物質(5E,9E)−/(5E,9Z)−/(5Z,9E)−/および(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンおよび(5E,9E)−/(5E,9Z)−/(5Z,9E)−/および(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オン;(5E,9E)−/(5E,9Z)−/(5Z,9E)−/および(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンのケタール、ならびに、(5E,9E)−/(5E,9Z)−/(5Z,9E)−/および(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンのケタール;(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オン、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンのケタール、(7R)−3,7,11−トリメチルドデカ−1−エン−3−オールおよび(R,R)−イソフィトールが、トコフェロール、ビタミンK1、ならびに、香味料および芳香剤または薬学生成物の合成に係る重要な中間体である。これらの大半は特徴的な香りを有するため、これらは、香味料、および、香水などの芳香剤に係る産業の製品における処方成分としての使用にきわめて魅力を有するものである。
【0161】
それ故、さらなる態様において、本発明は、香味料および芳香剤または薬学生成物、ビタミンおよび食品、または、飼料産業の分野における、生成物または中間体の合成のための、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンまたは(R,R)−イソフィトールの上記の製造プロセスの使用に関する。
【0162】
さらなる態様において、本発明は、
− 式(XII)の少なくとも1種のケタール、および
− 少なくとも1種のキラルイリジウム錯体
を含む組成物に関する。
【0163】
式(XII)のケタールおよびキラルイリジウム錯体に関して、これらの比、ならびに、これらの好ましい実施形態、特性および効果については、本書面において既にかなり詳細に検討がなされている。
【0164】
さらなる態様において、本発明は、2−メチル−2−(−4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7,11−トリエン−1−イル)−1,3−ジオキソランを除く、式(XII)のケタールに関する。
【0165】
式(XII)のケタール、ならびに、その好ましい実施形態、特性および効果については、本書面において既にかなり詳細に検討がなされている。
【0166】
最終態様において、本発明は、式(XX−C)または(XX−D)のケタールに関する。
【化20】
(式中、上記式中の点線を伴う二重結合(
【化21】
)は、炭素−炭素単結合または炭素−炭素二重結合を表し、および
波線は、隣接する炭素単結合(
【化22】
が
【化23】
を表す)または隣接する炭素−炭素二重結合(
【化24】
が
【化25】
を表す)と結合して、前記炭素−炭素二重結合をZ配置またはE配置のいずれかで有する炭素−炭素結合を表す)。
【0167】
式(XX−D)のケタールが最も好ましい。
【0168】
好ましいケタールは、2,5,5−トリメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7−ジエン−1−イル)−1,3−ジオキサン、2,5,5−トリメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7,11−トリエン−1−イル)−1,3−ジオキサン、2,6,10−トリメチル−14,14−ビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ペンタデカ−2,6,10−トリエン、6,10,14−トリメチル−2,2−ビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ペンタデカ−5,9−ジエン;ならびに、そのすべての可能なE/Z異性体からなる群から選択され;
ならびに/または、
6,10,14−トリメチル−2,2−ビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ペンタデカン、2,5,5−トリメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)−1,3−ジオキサン、2,5,5−トリメチル−2−((4R,8R)−4,8,12−トリメチルトリデシル)−1,3−ジオキサンおよび(6R,10R)−6,10,14−トリメチル−2,2−ビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ペンタデカンからなる群から選択される。
【0169】
これらのケタールはすべて、上記において詳述されているとおり、不斉水素化に特に好適であるか、または、前記不斉水素化の生成物である。既述のとおり、不飽和ケトンのケタールは、その挙動が対応するケトンと比してきわめて有利なものである。
【0170】
[図面]
以下の段落において、いくつかの本発明の好ましい実施形態は、概略
図4〜6によりさらに考察されている。しかしながら、これは、ここでこれらの図面に記載されている実施形態に本発明が限定されるものと理解されるべきではない。
【0171】
(R−VI)などのこれらの図における括弧中の符号は、以下に記載のとおり識別の目的のために用いられ、本書面の他の部分において用いられている(VI)などの式の記載と混同されるべきではない。
【0172】
図4は、6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンから(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンへのその後のステップである。
【0173】
図4および5は、それぞれ、6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンから、(R,R)−イソフィトール、(2−ambo)−α−トコフェロールおよび(2R,4’R,8’R)−α−トコフェロールへのその後のステップを示す。
【0174】
図4においては、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オン(R−IV)の合成に係る3つの異なる可能性が概略的に示されている(
図4a)、4b)、4c))。本書面中上記において記載されているとおり、さらなる可能性が存在する。
図4に示されているすべての可能性に係る第1のステップa)として、(5E,9E)−/(5E,9Z)−/(5Z,9E)−/および(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンの混合物、または、(5E,9E)−/(5E,9Z)−/(5Z,9E)−/および(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オン(EE/EZ/ZE/ZZ−R−III)の混合物が提供されている。
図4a)においては、EE異性体(EE−R−III)(すなわち、(5E,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは(5E,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンおよび対応するZZ異性体(ZZ−R−III)(すなわち、(5E,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9、13−トリエン−2−オンまたは(5E,9E)−6,10,14−トリ−メチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オン)が、ステップa)において提供される混合物からステップb)において分離される。ステップb)における分離は、カラムに係る蒸留により行われることが好ましい。ステップc)においては、ZZ異性体が特定のキラルイリジウム錯体で不斉水素化され、一方で、EE異性体が対応する鏡像体キラルイリジウム錯体で不斉水素化される。好ましいキラルイリジウム錯体は式(III)の1種である。EE異性体(EE−R−III)は、式(III)中において*によって示される不斉中心でS配置を有する式(IIIa)のキラルイリジウム錯体(S−Ir−錯体)の存在下に、分子水素を用いて不斉水素化される。ZZ異性体(ZZ−R−III)は、他方で、式(III)中において*によって示される不斉中心でR配置を有する式(IIIb)(R−Ir−錯体)のキラルイリジウム錯体の存在下に、分子水素を用いて不斉水素化される。両方の不斉水素化経路で、同一の生成物、すなわち、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オン(R−IV)がもたらされる。ステップb)における分離の残りは、(5E,9E)−/(5E,9Z)−/(5Z,9E)−/および(5Z,9Z)異性体の混合物に有利に異性化される。
【0175】
図4b)においては、異性体(EE異性体(EE−R−III))(ここでは:所望される異性体)唯1種のみが、
図4a)について上記されているとおり不斉水素化される。他の異性体(ZZ異性体(ZZ−R−III))(ここでは:所望されない異性体)は、シス/トランス異性化触媒(c/t−cat)の添加および加熱によるステップγ)におけるシス/トランス異性化に供される。好ましく用いられるシス/トランス異性化触媒は、特に式(X)のポリチオールである。シス/トランス異性化触媒の作用により、(ZZ異性体(ZZ−R−III))はEE/ZE/EZ/ZE異性体(EE/EZ/ZE/ZZ−R−III)の混合物に異性化され、これをステップδ)において、ステップa)において提供される混合物に添加することが可能である。
図4b)は、EE異性体が、所望される異性体、すなわち、不斉水素化されたものである場合のプロセスを示す。ZZ異性体が、所望される異性体、すなわち、不斉水素化されたものである場合、異性化プロセスはEE異性体と同様に適用されることとなるであろうことは明らかである。ステップb)における分離の残存物は、(5E,9E)−/(5E,9Z)−/(5Z,9E)−/および(5Z,9Z)異性体の混合物に有利に異性化される。これは、ZZ異性体の異性化と同一のステップ(γ)において、または、個別の異性化ステップにおいて行われることが可能である。
【0176】
図4c)においては、異性体(ZZ異性体(ZZ−R−III))(ここでは:所望される異性体)唯1種のみが、
図4a)について上記されているとおり不斉水素化される。シス/トランス異性化触媒(c/t−cat)は、ステップa)において提供されるEE/ZE/EZ/ZE異性体(EE/EZ/ZE/ZZ−R−III)の混合物に添加される。ステップb)において、(所望される)異性体(ZZ異性体(ZZ−R−III))の分離は、シス/トランス異性化触媒の存在下に、(ワンポット異性化またはインサイチュ異性化)で蒸留により行われる。所望される異性体が蒸留によって分離されるに伴って、蒸留容器内においてEE/ZE/EZ/ZE異性体間の熱力学的平衡が連続的に形成されるよう、沸点の高い異性体が富化された残存物が異性化される。この手法により、ステップa)において開始時に異性体混合物中に存在していた所望されない異性体のすべての所望される異性体への転換が可能とされ得る。既述のとおり、
図4c)は、ZZ異性体が所望される異性体(すなわち、分離され、および、不斉水素化された)であることを示しているが、しかしながら、上記の考察が、EE異性体が沸点が最低である所望される異性体であろう場合にも同様に適用されることは明らかである。
【0177】
図5は、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンから、それぞれ、(R,R)−イソフィトール、(2−ambo)−α−トコフェロール、および(2R,4’R,8’R)−α−トコフェロールへのその後のステップを示す。
【0178】
図5は、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンの(R,R)−イソフィトールへの転換に係る2つの変形例を示す。第1の変形例においては、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オン(R−IV)から、第1のステップ、すなわち、ステップg)において、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オン(R−IV)をエチン(アセチレン)と、塩基(KOHが示されている)の存在下に反応させて中間体(7R,11R)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−1−イン−3−オール(R−IVa)を得、次いで、第2のステップ、すなわち、ステップh)において、リンドラー触媒の存在下において分子水素と反応させることにより、(R,R)−イソフィトール(R−V)が形成される。
【0179】
図示されている他の変形例においては、(R,R)−イソフィトール(R−V)が、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オン(R−IV)から、グリニャール試薬を伴う反応により形成される。
図5においては、塩化ビニルマグネシウムがグリニャール試薬として示されている。
【0180】
(R,R)−イソフィトール(R−V)はさらに、ステップm)において、2,3,5−トリメチルベンゼン−1,4−ジオールと縮合させて、(2−ambo)−α−トコフェロール(R/S−VI))を得ることが可能である。
【0181】
さらなるステップn)においては、(2R,4’R,8’R)−α−トコフェロール(R−VI))が、対応する(2−ambo)−α−トコフェロール(R/S−VI)から単離される。単離は、キラル相によるクロマトグラフィ分離によって行われることが好ましい。
【0182】
図6においては、不斉水素化の好ましい実施形態が示されている。
図6は、
図4のプロセスステップを示す。
【0183】
図6の左側には、ステップc
0)における、酸の存在下でアルコール(
図6においては、エチレングリコールが示されている)を用いる、ステップb)における異性体分離後に得られる(5E,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは(5E,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オン(EE−R−III)のケタール(EE−R−IIIK)の形成が示されている。次いで、ケタール(EE−R−IIIK)は、
図4において考察されているとおり、ステップc)において不斉水素化される。この不斉水素化の直接生成物は、不斉水素化されたケタール、すなわち、2−メチル−2−((4R,8R)−4,8,12−トリメチルトリデシル)−1,3−ジオキソラン(R−IVK)であり、これは、ステップc’)における酸性加水分解の後に、(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オン(R−IV)をもたらす。
図6の右側には、対応する反応スキームが、ZZ異性体、すなわち、(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オン(ZZ−R−III)について示されており、ケタール中間体を介して、好ましくは同一の化合物である(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オン(R−IV)がもたらされる。
【0184】
[実施例]
本発明を、以下の実験によりさらに例示する。
【0185】
[分析方法]
[(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンの純度のGC定量]
Agilent 6850、カラムDB−5HT(30m、0.25mm直径、0.10μmフィルム厚)、115kPaヘリウムキャリアガス)。サンプルを、ヘキサン中の溶液として、分割比300:1、インジェクタ温度200℃、検出器温度350℃で注入した。オーブン温度プログラム:120℃(5分間)、260℃まで14℃/分(2分間)、280℃まで20℃/分(4分間)、ランタイム22分間。
【0186】
[(3RS,7R,11R)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−1−エン−3−オール((R,R)−イソフィトール)の純度のGC定量]
FID.Agilent DB−5カラム(30m、0.32mm直径、0.25μmフィルム厚)を備えるAgilent 6850機器、25psi 分子水素キャリアガス。サンプルを、アセトニトリル中の溶液として、50:1の分割比で注入した。インジェクタ温度:250℃、検出器温度:350℃。オーブン温度プログラム:100℃、250℃まで4℃/分。
【0187】
[6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オン、6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンおよびケタールのE/Z比および/または純度のGC定量:]
Agilent 6850機器、カラムAgilent DB−5(123−5032E、30m×0.32mm、フィルム0.25μm)、サンプルはアセトニトリル中の溶液として注入、分割比50:1、インジェクタ250℃、検出器350℃。オーブン温度プログラム:100℃、250℃まで4℃/分、合計ランタイム37.5分間。
【0188】
【表2】
【0189】
[不斉水素化反応生成物の分析]
対応するジメチル、エチレングリコール、ネオペンチルおよびビス(トリフルオロエチル)ケタールを水性酸の存在下でケトンに加水分解し、ケトンに対して以下の方法を用いて転換率およびその立体異性体比を分析した。
【0190】
水素化反応の転換率をキラルカラムを用いるガスクロマトグラフィによって判定した。
【0191】
[転換方法:]
FID.Agilent HP−5カラム(30m、0.32mm直径、0.25μmフィルム厚)を備えるAgilent 7890A GC、25psi分子水素キャリアガス。サンプルを、ジクロロメタン中の溶液として、10:1の分割比で注入した。インジェクタ温度:250℃、検出器温度:300℃。オーブン温度プログラム:50℃(2分間)、次いで、300℃まで15℃/分、5分間保持。
【0192】
異性体比の判定のために、A.Knierzinger,W.Walther,B.Weber,R.K.Mueller,T.Netscher,Helv.Chim.Acta 1990,73,1087−1107に記載されているとおり、水素化ケトンを、(+)−ジイソプロピル−O,O’−ビス(トリメチルシリル)−L−タルトレートまたは(−)−ジイソプロピル−O,O’−ビス(トリメチルシリル)−D−タルトレートのいずれかと、トリメチルシリルトリフレート[Si(CH
3)
3(OSO
2CF
3)]の存在下で反応させて、ジアステレオ異性ケタールを形成することが可能である。ケタールは、キラルカラムを用いるガスクロマトグラフィにより分析して、異性体比を判定可能である。水素化ケトン、6,10−ジメチルウンデカン−2−オンについては、D−(−)−またはL−(+)−ジイソプロピルタルトレートのいずれかを使用可である。6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンについては、L−(+)−ジイソプロピルタルトレートを用いて、存在していた(6R,10R)異性体の量を計測することが可能である。D−(−)−ジイソプロピルタルトレートを用いて、(6S,10S)異性体の量を判定することが可能である。これにより、立体選択的水素化の選択性を間接的に判定可能である。
【0193】
[異性体の判定方法:]
FAMEカラム用FID.Agilent CP−Sil88(60m、0.25mm直径、0.20μmフィルム厚)を備えるAgilent 6890N GC、16psi分子水素キャリアガス。サンプルを、酢酸エチル中の溶液として、5:1の分割比で注入した。インジェクタ温度:250℃、FID検出器温度:250℃。オーブン温度プログラム:165℃(恒温、240分間)。
【0194】
以下の実験に示されているIr錯体は、Chem.Sci.,2010,1,72−78における開示に従って調製される。
【0195】
[実験E1:6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンのEE/ZZ/(EZ+ZE)異性体混合物の分離(ステップb)]
(5E,9E)−/(5E,9Z)−/(5Z,9E)−/および(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンの混合物である6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンの市販のサンプルは、分留により、(5Z,9Z)異性体の低沸点画分、(5E,9E)異性体の高沸点画分、ならびに、(5E,9Z)−および/(5Z,9E)異性体の両方を含有する中沸点画分に分離された。
【0196】
高沸点EE異性体を、97.9%の(5E,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オン、0%(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オン、ならびに、合計で0.5%の(5E,9Z)−および(5Z,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オン(GCによる計測で、合計で98.4%の6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オン異性体)(以下において、「EE異性体」または「EE−FA」と標識される)の含有量を有するものとして単離した。
【0197】
低沸点ZZ異性体を、88.6%の(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オン、0%(5E,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オン、ならびに、合計で4.0%の(5E,9Z)−および(5Z,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オン(GCによる計測で、合計で92.6%の6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オン異性体)(以下において、「ZZ異性体」または「ZZ−FA」と標識される)の含有量を有するものとして単離した。
【0198】
[実験E2:(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンの異性化]
5重量%のペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)を実験E1のZZ異性体に添加した。次いで、混合物を撹拌し、異性化が生じる条件下に、アルゴン下で105℃に加熱した。個々の異性体の量を一定の反応時間後、GCにより定期的に計測した。
【0199】
図1a)〜c)は、この異性化実験の結果を示す。x軸は、加熱時間、すなわち、105℃での異性化時間を表し、および、y軸は、
図1a)において、ZZ/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比を表す。y軸は、
図1b)において、(EZ+ZE)/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比を表す。y軸は、
図1c)において、EE/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比を表す。
図1a)〜c)は、すべての異性体が異性化され、約40%のZZ/(ZZ+EZ+ZE+EE)、約46%の(EZ+ZE)/(ZZ+EZ+ZE+EE)および約14%のEE/(ZZ+EZ+ZE+EE)の異性体比が得られることを示す。
【0200】
この混合物は、残存物、および、(5E,9Z)−/(5Z,9E)異性体の中沸点混合画分に添加可能であり、再利用が可能である。
【0201】
[実験E3:(5E,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンおよび(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンの不斉水素化]
実験1のEE異性体およびZZ異性体の両方の画分を、以下の方法で相互に別々に不斉水素化した。
【0202】
6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンの対応する異性体(EE異性体またはZZ異性体)0.25mmol、0.5mol%または1mol%の表2に記載の式のIr錯体、および、それぞれ、1.25mlの無水(乾燥)ジクロロメタン(DCM)または2,2,2−トリフルオロエタノール(TFEをオートクレーブに入れた)。オートクレーブを閉め、水素を50barの圧力で印加した。反応溶液を室温で14時間撹拌した。その後、圧力を解放し、溶剤を除去した。転換率を判定するために、粗生成物を、さらに精製することなく、キラルガスクロマトグラフィにより分析した。異性体の量を、上記の方法を用いて判定し、および、実施例1〜6と同様に表2中に記載した。
【0203】
【表3】
【0204】
[実験E4:6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンのEE/ZZ/(EZ+ZE)異性体混合物の分離(ステップb)]
(5E,9E)−/(5E,9Z)−/(5Z,9E)−/および(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンの混合物である6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンのサンプルを、精留により、低沸点画分の(5Z,9Z)異性体(以下において、「ZZ異性体」または「ZZ−DHFA」と標識される)と、高沸点画分の(5E,9E)異性体(以下において、「EE異性体」またはEE−DHFAと標識される)と、(5E,9Z)−および(5Z,9E)異性体(以下において、「EZ/ZE異性体」と標識される)を含有する中沸点画分とに分離した。
【0205】
EZ異性体およびZE異性体の中沸点混合物EZ/ZE異性体を、合計で93.3%(5E,9Z)−および(5Z,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オン、3.0%(5E,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オン、ならびに、1.0%の(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オン(GCによる計測で、合計で97.3%の6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オン異性体)の含有量を有するものとして単離した。
【0206】
[実験E5:6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンの(EZ/ZE)異性体の異性化]
5重量%のペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)を実験E4のEZ/ZE異性体に添加した。次いで、混合物を撹拌し、異性化が生じる条件下に、アルゴン下で90℃に加熱した。個々の異性体の量を一定の反応時間後、GCにより定期的に計測した。
【0207】
図2a)〜c)は、この異性化実験の結果を示す。x軸は、加熱時間、すなわち、90℃での異性化時間を表し、および、y軸は、
図2a)において、EE/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比を表す。y軸は、
図2b)において、(EZ+ZE)/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比を表す。y軸は、
図2c)において、ZZ/(ZZ+EZ+ZE+EE)の重量比を表す。
図2a)〜c)は、約15%のZZ/(ZZ+EZ+ZE+EE)、約54%の(EZ+ZE)/(ZZ+EZ+ZE+EE)および約31%のEE/(ZZ+EZ+ZE+EE)で、すべての異性体が異性化されると共に平衡が達成されることを示す。
【0208】
[実験E6:(5E,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンおよび(5Z,9Z)−6.10,14−トリメチルペンタデカ−5.9−ジエン−2−オンの不斉水素化]
実験E4のEE異性体およびZZ異性体の両方の画分を、以下の方法で相互に別々に不斉水素化した。
【0209】
6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オン1mol%の対応する異性体(EE異性体またはZZ異性体)0.25mmol、表3に記載の式のIr錯体、および、1.25mlの無水(乾燥)ジクロロメタン(DCM)または2,2,2−トリフルオロエタノール(TFE)をそれぞれオートクレーブに入れた。オートクレーブを閉め、水素を50barの圧力で印加した。反応溶液を室温で12〜18時間撹拌した。その後、圧力を解放し、溶剤を除去した。転換率を判定するために、粗生成物を、さらに精製することなく、キラルガスクロマトグラフィにより分析した。異性体の量を、上記の方法を用いて判定し、および、実施例7〜11と同様に表3中に記載した。
【0210】
【表4】
【0211】
さらなる実験において、オートクレーブ中に、0.25mmolのEE−FAまたはZZ−FAまたはEE−DHFAまたはZZ−DHFA、および、表3’または表3’’または表3’’’または表3’’’’に記載の式のIr錯体1mol%、ならびに、表3’または3’’または3’’’または3’’’’に示されている1.25mlの無水(乾燥)溶剤を入れた。オートクレーブを閉め、分子水素で50barの圧力をかけた。攪拌下で、反応溶液を室温で16時間保持した。その後、圧力を解放し、溶剤を除去した。転換率を判定するために、粗生成物を、さらに精製することなく、キラルガスクロマトグラフィにより分析した。異性体の量を、上記の方法を用いて判定した。
【0212】
【表5】
【0213】
【表6】
【0214】
【表7】
【0215】
【表8】
【0216】
[実験E7:6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンのケタールの形成(ステップc
0)]
[a)ジメチルケタールの調製]
6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オン(170.5mmol)をトリメチルオルトギ酸エステル(50.8mL、49.2g、451mmol、2.65当量)に添加し、5℃に冷却した。MeOH(16ml)中の硫酸(96%、32.3mg、0.29mmol、0.2mol%)を5分間以内に添加した。その後、この反応を還流(65℃ IT)に3時間加熱した。冷却した後、薄層クロマトグラフィ(TLC)による分析は完全な転換を示した。NaOMe(0.24mLのMeOH中の25%溶液)を添加して酸を中和した。混合物を減圧中で濃縮し、その後、ヘキサン(50mL)で希釈した。現れた沈殿物をろ出し、濾液を濃縮した。粗生成物を蒸留により精製して、所望のジメチルケタールを得、その特性付けを行い、その詳細は以下に示すとおりである。
【0217】
【表9】
【0218】
[特性付けデータ:]
[(5E,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オン(EE−FA−DM)]
1H−NMR(300.1MHz,CDCl
3):δ=1.28(s,2−CH
3),1.56〜1.70(m,4CH
3+CH
2),1.92〜2.12(m,10H),3.18(s,2OCH
3),5.05〜5.17(m,3H
olefin)。
13C−NMR(75.5MHz,CDCl
3):δ=16.0(2C),17.7,20.9,22.8,25.7,26.6,26.8,36.5,39.67,39.72,48.0(2OCH
3),101.5(C−2),123.8および124.2および124.4(3C
olefin),131.3および135.0および135.3(3C
olefin)。
IR(ATR,cm
−1):2924s,2856w,2828w,1668m,1450s,1376s,1346w,1302m,1261m,1222m,1196m,1172m,1153w,1123s,1053s,985w,929w,854s,744m,620w。
MS(m/z):308(M
+,0.1%),293[(M−15)
+,0.2],276[(M−CH
3OH)
+,6],244[(M−2CH
3OH)
+,4],207[(M−CH
3OH−C
5H
9)
+,11],175[(M−2CH
3OH−C
5H
9)
+,19],107[(M−2CH
3OH−2C
5H
9+H)
+,71],69(C
5H
9+,100)。
【0219】
[(5E,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5.9−ジエン−2−オン(EE−DHFA−DM)]
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ0.87(d,J=6.6Hz,6H),1.06〜1.17(m,2H),1.28(s,3H),1.31〜1.42(m,2H),1.53(tqq,J=6.6,6.6,6.6Hz,1H),1.58(s,3H)と重畳,1.58〜1.65(m,2H)と重畳,1.62(s,3H)と重畳,1.90〜2.11(m,8H),3.18(s,6H),5.06〜5.15(m,2H)ppm。
13C−NMR(75MHz,CDCl
3):δ16.3(1C),16.4(1C),21.3(1C),23.0(2C),23.3(1C),26.2(1C),27.0(1C),28.3(1C),36.9(1C),39.0(1C),40.1(1C),40.3(1C),48.4(2C),101.9(1C),124.25(1C),124.31(1C),135.66(1C),135.71(1C)ppm。
MS(El,m/z):カラムにおける分解のためにGC−MSは入手しなかった。
IR(cm
−1):2953(m),2930(m),2870(m),2828(w),1668(w),1457(m),1377(m),1345(w),1302(w),1262(m),1222(m),1196(m),1172(m)1123(s),1054(s),929(w),854(s),739(w),620(w)。
【0220】
[(5Z,9Z)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オン(ZZ−DHFA−DM)]
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ0.88(d,J=6.6Hz,6H),1.11〜1.21(m,2H),1.28(s,3H),1.30〜1.43(m,2H),1.54(qq,J=6.6Hz,1H),1.57〜1.66(m,2H)と重畳,1.67(br s,3H),1.69(q,J=1.3Hz,3H),1.94〜2.10(m,8H),3.18(s,6H),5.12(t,J=6.4Hz,2H)ppm。
13C NMR(75MHz,CDCl
3):δ20.9(1C),22.3(1C),22.6(1C),22.7(1C),23.39(1C),23.40(1C),25.8(1C),26.3(1C),27.9(1C),31.9(1C),32.2(1C),36.7(1C),38.9(1C),48.0(2C),101.4(1C),124.6(1C),124.7(1C),135.4(1C),135.8(1C)ppm。
MS(El,m/z):カラムにおける分解のためにGC−MSは入手しなかった。
IR(cm
−1):2953(m),2870(m),2828(w),1454(m),137(m),1302(w),1261(m),1201(m),1172(m),1152(m),1098(m),1054(s),854(s),749(w),622(w)。
【0221】
[b)エチレングリコールケタールの調製]
窒素下で、反応容器に、グリコール(112mL、125g、2.1mol)、p−トルエンスルホン酸一水和物(0.150g、0.5774mmol)、および、0.5molの(5E,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは(5E,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンを仕込んだ。この混合物を、周囲温度で、5時間、減圧下(0.39mbar)で撹拌した。減圧を維持しながら、温度をゆっくりと40℃に昇温した。ケトンの95%を超える転換率では、温度をさらに高くして、グリコールを穏やかに蒸留し、99%を超える転換率が達成されるまで継続した。
【0222】
室温で、生成物をトリエチルアミンのヘプタン中の溶液(2mLトリエチルアミン/Lヘプタン)により抽出した。グリコール相を分離し、ヘプタン層を水中のNaHCO
3溶液で洗浄した。ヘプタン相の分離、無水Na
2SO
4での乾燥、ろ過、減圧中での溶剤の除去により、粗ケタールを得た。このケタールを蒸留によりさらに精製した。対応するケタールを
1H−NMRにより同定した。
【0223】
【表10】
【0224】
[特性付けデータ:]
[2−メチル−2−((3E,7E)−4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7,11−トリエン−1−イル)−1,3−ジオキソラン(EE−FA−エン)]
1H−NMR(300MHz,CDCl
3)δ5.12(m,3H),3.95(m,4H),2.16〜1.92(m,10H),1.73〜1.56(m,14H),1.34(s,3H)ppm。
【0225】
[2−メチル−2−((3E,7E)−4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7−ジエン−1−イル)−1,3−ジオキソラン(EE−DHFA−エン):]
1H−NMR(300MHz,CDCl
3)δ5.18〜5.08(m,2H),3.99〜3.91(m,4H),2.16〜1.05(m,24H),0.95〜0.80(d,6H)ppm。
【0226】
[2−メチル−2−((3Z,7Z)−4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7,11−トリエン−1−イル)−1,3−ジオキソラン(ZZ−DHFA−エン)]
1H−NMR(300MHz,CDCl
3)δ5.13(m,3H),3.94(m,4H),2.2〜1.9(m,10H),1.73〜1.5(m,14H),1.33(s,3H)ppm。
【0227】
[c)ネオペンチルグリコールケタールの調製]
6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オン(90.7mmol)、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール、32.4g、283mmol、3.4当量)およびp−トルエンスルホン酸一水和物(60mg、0.31mmol、0.3mol%)をトルエン(300mL)中に懸濁させた。この反応を90℃に加熱したところ、均質な溶液が形成された。その後、75℃で、トルエンをゆっくりと蒸発させる(4時間でおよそ100mL)ために注意深く減圧(先ず63mbarで、次いで24mbar)した。4時間後、薄層クロマトグラフィ(TLC)による分析はケトンの完全な転換を示した。この反応を室温に冷却し、ヘプタン(300mL)で希釈したところ過剰量のネオペンチルグリコールが析出した。沈殿物をろ出した(17.4g wet)。濾液をEt
3N(1mL)で処理し、続いて、NaHCO
3水溶液(2.4%w/w、2×300mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、減圧中で濃縮した。粗生成物を蒸留により精製し、所望のネオペンチルケタールを得、その特性付けを行い、その詳細は以下に示すとおりである。
【0228】
【表11】
【0229】
[特性付けデータ:]
[2,5,5−トリメチル−2−((3E,7E)−4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7−ジエン−1−イル)−1,3−ジオキサン(EE−DHFA−neo)]
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ0.86(d,J=6.6Hz,6H),0.92(s,3H),0.99(s,3H),1.05〜1.22(m,2H),1.37(s,3H),1.31〜1.42(m,2H)と重畳,1.52(tqq,J=6.6,6.6,6.6Hz,1H),1.57(s,3H),1.61(s,3H),1.67〜1.76(m,2H),1.88〜2.16(m,8H),ABシグナル(δ
A=3.45,δ
B=3.52,J
AB=11.3Hz,4H),5.05〜5.17(m,2H)ppm。
13C NMR(75MHz,CDCl
3):δ15.85(1C),15.92(1C),20.9(1C),22.0(1C),22.55(1C),22.62(2C),22.68(1C),25.7(1C),26.5(1C),27.8(1C),29.9(1C),37.3(1C),38.6(1C),39.7(1C),39.9(1C),70.3(2C),98.8(1C),123.9(1C),124.1(1C),135.1(1C),135.2(1C)ppm。
MS(El,m/z):350(M
+,4),335[(M−CH
3)
+,11),246(10),206(10),161(9),129(100),107(13),69(38),43(32)。
IR(cm
−1):2953(s),2928(s),2867(m),1462(m),1394(m),1382(m),1368(m),1305(w),1271(w),1249(m),1211(m),1187(m),1123(s),1087(s),1043(m),1021(m),950(w),925(w),907(w),862(m)791(w),739(w),678(w)。
【0230】
[2,5,5−トリメチル−2−((3E,7E)−4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7−ジエン−1−イル)−1,3−ジオキサン(ZZ−DHFA−neo)]
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ0.87(d,J=6.8Hz,6H),0.92(s,3H),0.98(s,3H),1.10〜1.21(m,2H),1.29〜1.42(m,2H),1.36(s,3H)と重畳,1.53(qqt,J=6.7,6.7,6.7Hz,1H),1.66(br.s,3H),1.68(q,J=1.4Hz,3H),1.67〜1.75(m,2H),1.99(t,J=7.7Hz,2H),2.02〜2.16(m,6H),ABシグナル(δ
A=3.45,δ
B=3.52,J
AB=11.5Hz,4H),5.02〜5.22(m,2H)ppm。
13C NMR(75MHz,CDCl
3):δ20.9(1C),21.9(1C),22.6(3C),22.7(1C),23.38(1C),23.42(1C),25.8(1C),26.3(1C),27.9(1C),29.9(1C),31.9(1C),32.1(1C),37.4(1C),38.9(1C),70.3(2C),98.8(1C),124.7(1C),125.0(1C),135.2(1C),135.6(1C)ppm。
MS(El,m/z):350(M
+,5),335[(M−CH
3)
+,10),246(8),206(8),151(7),129(100),107(10),69(35),43(27)。
IR(cm
−1):2953(s),2867(m),1452(m),1394(w),1372(m),1315(w),1271(w),1249(m),1211(m),1189(w),1119(s),1087(s),1043(m),1021(m),951(w),925(w),907(w),856(m)792(w),737(w),668(w)。
【0231】
[d)ビス(トリフルオロエチル)ケタールの調製]
攪拌棒を伴う250mL三首フラスコを高真空で乾燥させ(250℃でヒートガン使用)、次いで、冷却させ、アルゴンでフラッシュし、1,1,1トリフルオロエタノール(TFE)(40mL)をアルゴン下で仕込んだ。このフラスコを、トリメチルアルミニウム(ヘプタン中に2M、20.0mL、40.0mmol、1.95当量)を60分間以内に滴下しながら氷浴で冷却して温度を22℃未満に維持した。数分後に二相(TFE/ヘプタン)混合物は再び清透になり、室温でさらに20分間撹拌した。対応する(5E,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは(5E,9E)−6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オンの20.7mmolのジメチルケタール(上記のとおり調製したもの)を、室温で5分間に滴下した。1.5時間後、GC分析は、出発材料の完全な転換を示した。反応を酒石酸ナトリウムカリウムの水(100mL)中の半飽和溶液で失活させ、2時間室温で撹拌し、最後に、n−ヘキサン(200mL)で希釈した。有機相を分離し、n−ヘキサンで抽出し(2×100mL)、MgSO
4で乾燥させ、濃縮した。粗生成物を、カラムクロマトグラフィにより精製した(中性アルミニウム酸化物、溶離液:n−ヘキサン)。ケタールの特性付けを以下に詳細に示す。
【0232】
【表12】
【0233】
[特性付けデータ:]
[(6E,10E)−2,6,10−トリメチル−14,14−ビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ペンタデカ−2,6,10−トリエン(EE−FA−tfe)]
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ1.41(s,3H),1.61(br s,6H),1.63(br s,3H),1.67〜1.75(m,2H),1.69(br q,J=0.9Hz,3H)と重畳,1.93〜2.16(m,10H),3.74〜3.95(m,4H),5.11(br t,J=6.5Hz,3H)ppm。
13C NMR(75MHz,CDCl
3):δ15.94(1C),15.98(1C),17.6(1C),21.3(1C),22.6(1C),25.6(1C),26.5(1C),26.8(1C),37.0(1C),39.6(1C),39.7(1C),59.3(q,J
C,F=34.9Hz,2C),103.4(1C),124.0(q,J
C,F=275.8Hz,2C),122.7(1C),124.0(1C),124.3(1C),131.3(1C),135.1(1C),136.2(1C)ppm。
MS(El,m/z):444(M
+,5),429[(M−CH
3)
+,1],344[(M−TFE)
+,4],225[(CF
3CH
2O)
2C−CH
3)
+,54],175(33),136(28),107(48),81(53),69(100),41(34)。
IR(cm
−1):2922(w),2858(w),1457(w),1419(w),1385(w),1282(s),1223(w),1157(s),1133(s),1111(m),1081(s),971(s),889(m),860(w),845(w),678(w),663(m)。
【0234】
[(5E,9E)−6,10,14−トリメチル−2,2−ビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ペンタデカ−5,9−ジエン(EE−DHFA−tfe)]
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ0.88(d,J=6.6Hz,6H),1.08〜1.20(m,2H),1.32〜1.44(m,2H),1.41(s,3H)と重畳,1.54(tqq,J=6.6,6.6,6.6Hz,1H),1.60(br s,3H),1.63(br s,3H),1.67〜1.76(m,2H),1.89〜2.17(m,8H),3.73〜3.97(m,4H),5.04〜5.17(m,2H)ppm。
13C NMR(75MHz,CDCl
3):δ15.89(1C),15.95(1C),21.4(1C),22.60(1C),22.61(2C),25.8(1C),26.5(1C),27.9(1C),37.0(1C),38.6(1C),39.7(1C),39.9(1C),59.3(q,J
C,F=35.5Hz,2C),103.4(1C),124.0(q,J
C,F=276.0Hz,2C),122.7(1C),123.7(1C),135.5(1C),136.2(1C)ppm。
MS(El,m/z):431[(M−CH
3)
+,1],346[(M−TFE)
+,13],262(9),225[(CF
3CH
2O)
2C−CH
3)
+,93],206(43),153(17),127(24),107(45),83(CF
3CH
2+,100),69(51),55(43),43(28)。
IR(cm
−1):2955(w),2931(w),2871(w),1462(w),1419(w),1385(m),1282(s),1223(w),1157(s),1133(s),1080(s),971(s),889(m),860(w),845(w),679(w),663(m)。
【0235】
[実験E8:ケタールの不斉水素化]
ケタールを以下の方法で不斉水素化した:
オートクレーブ容器に、窒素下で、表5a〜cに示されている*により示すキラル中心で立体配置を有する表5a〜cに示されている式のキラルイリジウム錯体、表5a〜cに示されている6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンまたは6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オン(conc.)のケタール、表5a〜cに示されている溶剤を仕込んだ。反応容器を閉め、分子水素で表5a〜cに示す圧力(pH
2)に加圧した。反応混合物を、室温で、表5a〜c中に示されている時間(t)、水素下に撹拌した。次いで、圧力を解放し、完全水素化生成物のアッセイ収率および立体異性体分布を判定した。触媒添加量(S/C)は、ケタール(「基材」)のmmol数/キラルイリジウム錯体のmmol数として定義される。
【0236】
水素化ケタールの特性付けを以下に示す。
【0237】
【表13】
【0238】
【表14】
【0239】
【表15】
【0240】
[特性付けデータ:]
[(6R,10R)−2,2−ジメトキシ−6,10,14−トリメチルペンタデカン(RR18−DM)]
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ0.83〜0.89(m,12H),0.98〜1.45(m,21H),1.46〜1.65(m,3H),3.18(s,6H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3):δ19.68(1C),19.73(1C),21.0(1C),21.7(1C),22.6(1C),22.7(1C),24.5(1C),24.8(1C),28.0(1C),32.72(1C),32.78(1C),36.8(1C),37.28(1C),37.33(1C),37.36(1C),37.41(1C),39.4(1C),48.0(2C),101.7(1C)ppm。
IR(cm
−1):2951(s),2926(s),2869(s),2828(m),1734(w),1723(w),1216(w),1463(s),1377(s),1308(w),1255(m),1215(m),1172(s),1105(s),1090(s),1054(s),971(w),933(w),860(s),815(m),736(w)618(w)。
【0241】
[2,5,5−トリメチル−2−((4R,8R)−4,8,12−トリメチルトリデシル)−1,3−ジオキサン(RR18−neo)]
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ0.78〜0.95(m,15H),0.95〜1.61(m,19H),1.01(s,3H)と重畳,1.36(s,3H),1.63〜1.74(m,2H),ABシグナル(δ
A=3.44,δ
B=3.55,J
AB=11.7Hz,4H)ppm。
13C NMR(75MHz,CDCl
3):δ19.72(1C),19.74(1C),20.4(1C),20.9(1C),22.56(1C),22.62(1C),22.72(1C),22.77(1C),24.5(1C),24.8(1C),28.0(1C),30.0(1C),32.8(1C),32.8(1C),37.28(1C),37.35(1C),37.42(2C),38.2(1C),39.4(1C),70.3(2C),99.1(1C)ppm。
MS(El,m/z):339[(M−CH
3)
+,83],269(5),129(100),69(21),43(18)。
IR(cm
−1):2952(s),2925(s),2867(m),1463(m),1394(m),1372(m),1258(m),1211(m),1189(w),1141(w),1100(s),1043(m),1020(m),951(w),925(w),907(m),858(m),792(w),737(w),677(w)。
【0242】
[(6R,10R)−6,10,14−トリメチル−2,2−ビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ペンタデカン(RR18−tfe)]
1H−NMR(600MHz,CDCl
3):δ0.86(d,J=6.6Hz,3H),0.879(d,J=6.6Hz,3H),0.882(d,J=6.6Hz,3H),0.884(d,J=6.6Hz,3H),1.03〜1.46(m,18H),1.40(s,3H)と重畳,1.54(qqt,J=6.6,6.6,6.6Hz,1H),1.60〜1.70(m,2H),3.77〜3.90(m,4H)ppm。
13C NMR(151MHz,CDCl
3):δ19.6(1C),19.7(1C),21.4(1C),21.5(1C),22.6(1C),22.7(1C),24.5(1C),24.8(1C),28.0(1C),32.6(1C),32.8(1C),37.0(1C),37.24(1C),37.30(1C),37.34(1C),37.43(1C),39.4(1C),59.2(q,
2J
C,F=35.0Hz,2C),103.6(1C),124.0(q,
1J
C,F=277.0Hz,2C)ppm。
MS(El,m/z):435[(M−CH
3)
+,1],351(1),250(1),225[(CF
3CH
2O)
2C−CH
3)
+,100],153(7),140(5),83(CF
3CH
2+,3),43(6)。
IR(cm
−1):2954(m),2927(m),2871(w),1463(w),1419(w),1384(w),1281(s),1215(w),1157(s),1123(m),1082(s),972(s),892(m),861(w),737(w),679(w),663(m)。
【0243】
[実験E9:水素化ケタールの加水分解]
実験E8に示すケタールの不斉水素化の後、得られた水素化ケタールをケトンに加水分解した。
【0244】
[方法1−ジクロロメタン中における不斉水素化反応によるネオペンチルケタール、ジメチルケタール]
不斉水素化反応からの反応混合物のサンプル(1〜2ml)を、等しい体積の塩酸の1M水溶液で、室温で、1時間撹拌した。ジクロロメタン(2ml)を添加し、層を分離した。水性層をジクロロメタン(2ml)で2回洗浄した。組み合わせた有機層を減圧下で蒸発させて、無色〜薄い黄色の油としてケトンを得た。次いで、粗ケトンを純度および異性体比について分析した。
【0245】
[方法2−トリフルオロエタノール中における不斉水素化反応によるエチレングリコールケタール、ビス(トリフルオロエタノール)ケタールおよびジメチルケタール]
不斉水素化反応からの反応混合物のサンプル(1〜2ml)を、9:1:0.2(体積)メタノール:水:トリフルオロ酢酸の0.5mlの溶液で、40℃で、1時間撹拌した。ジクロロメタン(2ml)および水(2ml)を添加し、層を分離した。水性層をジクロロメタン(2ml)で2回洗浄した。組み合わせた有機層を減圧下で蒸発させて、無色〜薄い黄色の油としてケトンを得た。次いで、粗ケトンを純度および異性体比について分析した。
【0246】
[実験E10:添加剤の存在下におけるケトンおよびケタールの不斉水素化]
オートクレーブ容器に、窒素下で、*で示したキラル中心でR配置の式(III−F)のキラルイリジウム錯体、6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9,13−トリエン−2−オンもしくは6,10,14−トリメチルペンタデカ−5,9−ジエン−2−オン、または、そのケタールを、表6a〜6gに示されている量(conc.)で、表6a〜6gに示されている溶剤、および、表6a〜6gに示されている添加剤を仕込んだ。反応容器を閉め、分子水素で表6a〜6gに示す圧力(pH
2)に加圧した。反応混合物を、室温で、表6a〜6g中に示されている時間(t)、水素下に撹拌した。次いで、圧力を解放し、完全水素化生成物のアッセイ収率および立体異性体分布を判定した。ケタールの場合、アッセイ収率および立体異性体分布は、実験E9に示されている酸によるケタールの加水分解後に判定した。触媒添加量(S/C)は、ケトンまたはケタール(「基材」)のmmol数/キラルイリジウム錯体のmmol数として定義される。
【0247】
[添加剤の調製]
− MAO/TFE:1.6M MAO(MAO:トルエン(0.64mL)中のメチルアルミノキサン溶液を2,2,2−トリフルオロエタノール(TFE)(3.1mmol)で失活させて、わずかに過剰量の遊離TFEをもたらした。
− EAO/TFE:10重量%EAO(EAO:トルエン(1mmol)中のエチルアルミノキサン溶液をTFE(3.2mmol)で失活させて、わずかに過剰量の遊離TFEをもたらした。
− TMA/TFE:2M TMA(TMA:ヘプタン(1mmol)中のトリメチルアルミニウム(Al(CH
3)
3))溶液をTFE(3.1mmol)で失活させて、わずかに過剰量の遊離TFEをもたらした。
− TEA/TFE:2M TEA(TEA:ヘプタン(1mmol)中のトリエチルアルミニウム(Al(CH
2CH
3)
3))溶液をTFE(3.1mmol)で失活させて、わずかに過剰量の遊離TFEをもたらした。
− TMA/BHT/TFE:ヘプタン(1mmol)中の2M TMA溶液を2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)(2mmol)、続いて、TFE(3.1mmol)で失活させて、わずかに過剰量の遊離TFEをもたらした。
− Ti(OCH
2CF
3)
4:オルトチタン酸テトライソプロピル(8.1mmol)を2,2,2−トリフルオロエタノール中に50℃で溶解させた。溶剤を除去して、Ti(OCH
2CF
3)
4を白色の残渣として得、これを単離し、Ti(OCH
2CF
3)
4として同定した。
【0248】
これらの添加剤を新たに調製し、不均質混合物として室温で、または、50℃〜70℃の温度に加熱することにより均質混合物として用いた。
【0249】
添加剤オルトチタン酸テトライソプロピル(Ti(OiPr)
4)、アルミニウムトリイソプロポキシド(Al(OiPr)
3)およびトリエチルボラン(TEB)(ヘキサン中の1M溶液)は市販されており、入手したまま用いた。
【0250】
トリフリック酸を新たに調製したジクロロメタン中の0.1M溶液として水素化実験に導入した。
【0251】
【表16】
【0252】
【表17】
【0253】
【表18】
【0254】
【表19】
【0255】
【表20】
【0256】
【表21】
【0257】
【表22】
【0258】
[(R,R)−イソフィトールの形成]
[実験C1a:(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンのエチニル化(ステップg)]
(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オン(35.0g、129mmol、1.0当量、98.8%)を、サーモスタット、計量供給ポンプ、アセチレンインレットおよびアンモニアインレットを備えるオートクレーブに加えた。反応器をシールし、排気し、次いで窒素でフラッシュし、15℃に冷却した。アンモニア(715g、45.0mol、326当量、99.8%)を反応器内に縮合させ、15℃に冷却したところ、8〜9barの圧力が得られた。12barに達するまでアセチレンを導入し、続いて、KOH(水中に40重量%、5.0g、35.6mmol、28mol%)を15℃で計量して添加した。反応の進行をGCにより監視した。所望の転換率(およそ2時間後)で、反応混合物を酢酸で中和し、その後、反応器を25℃でベントした。反応混合物を洗浄し、減圧中で濃縮し、減圧中の蒸留により精製して、26.9g(7R,11R)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−1−イン−3−オールを98.8面積%の純度(70%収率)で得た。
【0259】
[実験C1b リンドラー触媒の存在下における(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンの水素化(ステップh)]
ヘプタン(40g)に溶解した(7R,11R)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−1−イン−3−オール(10g、33.4mmol、98.4%純度)、および、リンドラー触媒(850mg)をオートクレーブに入れた。反応器をシールし、窒素でフラッシュし、その後、85℃に加熱した。所望の温度に達したら、反応を2bar水素に加圧した。反応を、およそ22時間、この温度で必要量の水素ガスが消費されるまで撹拌した。ろ過の後、粗生成物を第2の反応バッチと組み合わせた。11.9gの粗材料を蒸留により精製し、11.1gの(R,R)−イソフィトール(GCにより97.6%純度、88%全収率)を得た。
【0260】
[実験C1c:(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンのビニル化(ステップh’)]
オーバーヘッド攪拌機、温度計、凝縮器およびアルゴンインレットを備える乾燥させた100mL四首フラスコを排気し、アルゴンでパージした。ビニル塩化マグネシウム(18.3mLのTHF中の1.6M溶液、29.0mmol、1.59当量)を室温で加えた。(6R,10R)−6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オン(5.00g、18.3mmol、98.2%、1.0当量)の乾燥THF(20mL)中の溶液を25分間以内にゆっくりと添加した。氷浴で冷却することで、発熱反応を25〜30℃の内部温度に維持した。添加が完了した後、反応を室温で1時間撹拌した。飽和NH
4Cl溶液(10mL)を注意深く添加して過剰量のグリニャール試薬を失活させた。ペンタン(150mL)、水(150mL)および塩水(150mL)を添加した。有機相を塩水(2×150mL)で抽出し、水性相をペンタン(2×150mL)で逆抽出した。組み合わせた有機相を乾燥させ(MgSO
4)、減圧中で濃縮し、無色の油を得た(5.58g)。粗生成物をクーゲルロール装置における減圧蒸留により精製した。143℃/3.5×10
−2mbarで主な画分が蒸留され、(R,R)−イソフィトール(=(7R,11R)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−1−エン−3−オール)を99.3%の純度(5.271g、96%収率)で無色の油として得た。
【0261】
[実験C2:(2−ambo)−α−トコフェロールの形成(ステップm)]
国際公開第2005/121115 A1号パンフレットに開示の手法に従って、(R,R)−イソフィトール(=(7R,11R)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−1−エン−3−オール)を2,3,5−トリメチルベンゼン−1,4−ジオール(=2,3,5−トリメチルヒドロキノン)と、縮合触媒の存在下において、(2−ambo)−α−トコフェロールに縮合させた。
【0262】
[実験C3:(2R,4’R,8’R)−α−トコフェロールの形成(ステップn)]
(2−ambo)−α−トコフェロールを、キラル相を用いるクロマトグラフィ分離により分離した。分取クロマトグラフィにより(2R,4’R,8’R)−α−トコフェロールおよび(2S,4’R,8’R)−α−トコフェロールを得た。
【0263】
実験C2の(2−ambo)−α−トコフェロールのHPLCにより分析した(カラム:Daicel Chiracel(登録商標)OD−H、250mm×4.6mm;溶離液n−ヘプタン中の0.5%エタノール;流量1ml/分;検出220nm、2μl注入)。
図3b)は、このクロマトグラムを示す(それぞれ、保持時間7.2、8.2分間、50.2:49.2)。140mg(2−ambo)−α−トコフェロールのヘプタン中の溶液を注入し、最大で13.4分間(1)(50.1%)および15.0分間(2)(49.9%)の保持時間で2つのピークを、分取HPLC分離により分離した。
図3a)は、分取HPLC分離のクロマトグラムを示す。
【0264】
乾燥するまで蒸発および溶解させた後、2つの回収した画分を分析カラムで再分析した(Daicel Chiracel(登録商標)OD−H、250mm×4.6mm;溶離液n−ヘプタン中の0.5%エタノール;流量1ml/分;検出220nm、2μl注入)。それぞれ、
図3c)、
図3d)は、それぞれ、第1の画分と第2の画分のクロマトグラムを示す。前記画分における2種の異性体(それぞれ、保持時間7.2分間、8.2分間)の異性体比は、それぞれ、99.5:0.5(
図3c))および0.8:99.2(
図3d)である。それ故、これらの2種の異性体をほぼ完全に分取クロマトグラフィにより分離した。異性体は、(2R,4’R,8’R)−α−トコフェロール(保持時間7.2分間)および(2S,4’R,8’R)−α−トコフェロール(保持時間8.2分間)であると同定された。
【0265】
[実験C3のクロマトグラフィに係る実験の詳細:]
分取分離を、Agilent 1100デガッサ、Agilent 1100分取ポンプ、Agilent 1100ダイオードアレイ検出器、chemstation/CC−modeソフトウェアパッケージにより制御されるAgilent 1100MPS G2250Aオートサンプラー/画分コレクタから構成されるAgilent 1100シリーズHPLCシステムで行った。
【0266】
[分取分離に係るHPLC条件:]
カラム:Daicel Chiracel(登録商標)OD−H、250mm×20mm;溶離液0.5%イソプロパノール、n−ヘプタン中の0.2%酢酸;流量13ml/分;検出220nm、400μl注入。