(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6582330
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】ガスタービンの制御装置および方法
(51)【国際特許分類】
F02C 9/16 20060101AFI20190919BHJP
F02C 9/00 20060101ALI20190919BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
F02C9/16
F02C9/00 B
F01D25/00 N
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-43584(P2018-43584)
(22)【出願日】2018年3月9日
(65)【公開番号】特開2018-184947(P2018-184947A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2018年3月9日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0052388
(32)【優先日】2017年4月24日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507002918
【氏名又は名称】ドゥサン ヘヴィー インダストリーズ アンド コンストラクション カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ビュン ヒー
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ソン ジン
【審査官】
高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−075578(JP,A)
【文献】
特表2011−513635(JP,A)
【文献】
特開2004−132255(JP,A)
【文献】
特開2013−036357(JP,A)
【文献】
特開昭63−097835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/04
F02C 9/00
F02C 9/16
F02C 9/18
F02C 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を吸い込んで圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮した圧縮空気を燃焼器およびタービンに供給する供給機と、前記圧縮空気と燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に発生する燃焼ガスによって回転するタービンとを備え、前記タービンの回転によって発電機を駆動するガスタービンシステムの制御装置であって、
前記燃焼器で生成された燃焼ガスが入る前記タービンの入口の温度を示すタービン入口温度および前記タービンから排出される排出ガスの温度を示す排出ガス温度を測定するセンシング部と、
前記センシング部で測定した前記タービン入口温度および前記排出ガス温度に基づいて、前記タービンに供給される圧縮空気の量を調節するように、前記供給機を制御する圧縮空気制御部とを含み、
前記圧縮空気制御部は、
前記排出ガス温度が、設定された臨界値に到達し、前記タービン入口温度が、設定された最大値以下の場合には、第2の設定量の比率で圧縮空気をさらに供給するように、前記供給機を制御する、ガスタービンの制御装置。
【請求項2】
前記圧縮空気制御部は、
前記排出ガス温度が高くなると、前記タービンに供給される前記圧縮空気の量を増加させる、請求項1に記載のガスタービンの制御装置。
【請求項3】
前記圧縮空気制御部は、
前記排出ガス温度が、設定された臨界値以下の場合には、第1の設定量の圧縮空気を供給する、請求項1または2に記載のガスタービンの制御装置。
【請求項4】
前記圧縮空気制御部は、
前記第2の設定量の比率を(第1の設定量)×(前記タービン入口温度の設定された最大値−測定されたタービン入口温度)/(前記タービン入口温度の設定された最大値)に比例するように設定する、請求項1から3の何れか1つに記載のガスタービンの制御装置。
【請求項5】
空気を吸い込んで圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮した圧縮空気を燃焼器およびタービンに供給する供給機と、前記圧縮空気と燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に発生する燃焼ガスによって回転するタービンとを備え、前記タービンの回転によって発電機を駆動するガスタービンシステムの制御装置であって、
前記タービンに設けられたロータ(rotor)の回転速度および前記タービンから排出される排出ガスの温度を示す排出ガス温度を測定するセンシング部と、
前記センシング部で測定した前記タービンに設けられた前記ロータの回転速度および前記排出ガス温度に基づいて、前記タービンに供給される圧縮空気の量を調節するように、前記供給機を制御する圧縮空気制御部とを含み、
前記圧縮空気制御部は、
前記排出ガス温度が、設定された臨界値以下の場合には、第1の設定量の圧縮空気を供給し、
前記排出ガス温度が、前記設定された臨界値に到達し、前記ロータの回転速度が、変曲点の回転速度以下の場合には、第3の設定量の比率で圧縮空気をさらに供給するように、前記供給機を制御し、
前記変曲点の回転速度は、前記排出ガス温度が、前記設定された臨界値から前記設定された臨界値より低い値に変化し始める時の前記ロータの回転速度を示す、ガスタービンの制御装置。
【請求項6】
前記圧縮空気制御部は、
前記第3の設定量の比率を(前記第1の設定量)×(前記変曲点の回転速度−測定された回転速度)/(前記変曲点の回転速度)に比例するように設定する、請求項5に記載のガスタービンの制御装置。
【請求項7】
空気を吸い込んで圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮した圧縮空気を燃焼器およびタービンに供給する供給機と、前記圧縮空気と燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に発生する燃焼ガスによって回転するタービンとを備え、前記タービンの回転によって発電機を駆動するガスタービンシステムの制御方法であって、
前記燃焼器で生成された燃焼ガスが入る前記タービンの入口の温度を示すタービン入口温度および前記タービンから排出される排出ガスの温度を示す排出ガス温度を測定するステップと、
測定した前記タービン入口温度および前記排出ガス温度に基づいて、前記タービンに供給される圧縮空気の量を調節するように、前記供給機を制御するステップとを含み、
前記供給機を制御するステップは、
前記排出ガス温度が、設定された臨界値に到達し、前記タービン入口温度が、設定された最大値以下の場合には、第2の設定量の比率で圧縮空気をさらに供給するように、前記供給機を制御するステップを含む、ガスタービンの制御方法。
【請求項8】
前記供給機を制御するステップは、
前記排出ガス温度が、設定された臨界値以下の場合には、第1の設定量の圧縮空気を供給するステップを含む、請求項7に記載のガスタービンの制御方法。
【請求項9】
前記第2の設定量の比率で圧縮空気をさらに供給するように、前記供給機を制御するステップは、
前記第2の設定量の比率を(第1の設定量)×(前記タービン入口温度の設定された最大値−測定されたタービン入口温度)/(前記タービン入口温度の設定された最大値)に比例するように設定するステップを含む、請求項7または8に記載のガスタービンの制御方法。
【請求項10】
空気を吸い込んで圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮した圧縮空気を燃焼器およびタービンに供給する供給機と、前記圧縮空気と燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に発生する燃焼ガスによって回転するタービンとを備え、前記タービンの回転によって発電機を駆動するガスタービンシステムの制御方法であって、
前記タービンに設けられたロータ(rotor)の回転速度および前記タービンから排出される排出ガスの温度を示す排出ガス温度を測定するステップと、
測定した前記タービンに設けられた前記ロータの回転速度および前記排出ガス温度に基づいて、前記タービンに供給される圧縮空気の量を調整するように、前記供給機を制御するステップとを含み、
前記供給機を制御するステップは、
前記排出ガス温度が、設定された臨界値以下の場合には、第1の設定量の圧縮空気を供給するステップ、または、
前記排出ガス温度が、前記設定された臨界値に到達し、前記ロータの回転速度が、変曲点の回転速度以下の場合には、第3の設定量の比率で圧縮空気をさらに供給するように、前記供給機を制御するステップを含み、
前記変曲点の回転速度は、前記排出ガス温度が、前記設定された臨界値から前記設定された臨界値より低い値に変化し始める時の前記ロータの回転速度を示す、ガスタービンの制御方法。
【請求項11】
前記第3の設定量の比率で圧縮空気をさらに供給するように、前記供給機を制御するステップは、
前記第3の設定量の比率を(前記第1の設定量)×(前記変曲点の回転速度−測定された回転速度)/(前記変曲点の回転速度)に比例するように設定するステップを含む、請求項10に記載のガスタービンの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの制御装置および方法に関し、より詳細には、ガスタービンから排出される有害ガスを低減するためのガスタービンの制御装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ガスタービンや蒸気タービンのようにタービン(turbine)を備えた機関または装置は、ガスまたは流体の熱エネルギーを機械的エネルギーである回転力に変換する動力発生装置であり、ガスまたは流体によって軸回転するロータ(rotor)と、前記ロータを支持し包むステータ(stator)とを含んでいる。
【0003】
電気を生産するために発電所などで使用されるガスタービンの構造について簡単に説明すると、空気を圧縮して高圧の空気を燃焼器に供給する圧縮機と、燃焼ガスを生成するための燃焼器と、燃焼器から吐出される燃焼ガスによって駆動するタービンとを含むことができる。
【0004】
ガスタービンの圧縮機は、一般的に、タービンの軸と一体に結合してタービンとともに軸回転し、このように軸回転をしながら外部空気を吸い込んで圧縮する。圧縮された空気は燃焼器に供給され、燃焼器では、圧縮された空気に燃料を供給して燃焼させることで、高温、高圧の燃焼ガスを生成し、これをタービンに供給する。
【0005】
タービンに供給された高温、高圧の燃焼ガスは、タービンの回転翼を駆動させることでタービンのロータ(rotor)を回転させる。
【0006】
このように構成されたガスタービンは、圧縮機で圧縮された空気がタービンを冷却させるために一部の圧縮空気をタービンに供給し、一部は燃焼器に供給するシステムを備えている。
【0007】
また、一般的に、ガスタービンは、効率を最大化し、且つ排出ガスを最小化することを可能にするために、タービンの入口での温度を最適の温度に維持するように制御される。しかし、負荷が低くなるにつれてタービンの入口の温度を一定に維持することが難しくなり、結局、低くなるが、タービンの入口の温度が低くなると、それによって有害排出ガスが増加する。したがって、負荷が低い場合にもタービンの入口の温度を一定に維持して、有害排出ガスの増加を防止するための制御が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、低い負荷状態でもタービンの入口の温度を最適の温度に一定に維持するようにするガスタービンの制御装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するための本発明に係る空気を吸い込んで圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮した圧縮空気を燃焼器およびタービンに供給する供給機と、前記圧縮空気と燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に発生する燃焼ガスによって回転するタービンとを備え、前記タービンの回転によって発電機を駆動するガスタービンシステムの制御装置は、前記燃焼器で生成された燃焼ガスが入る前記タービンの入口の温度を示すタービン入口温度および前記タービンから排出される排出ガスの温度を示す排出ガス温度を測定するセンシング部と、前記センシング部で測定したタービン入口温度および排出ガス温度に基づいて、前記タービンに供給される圧縮空気の量を調整するように、前記供給機を制御する圧縮空気制御部とを含んでもよい。
【0010】
また、前記圧縮空気制御部は、前記排出ガス温度が、設定された臨界値以下の場合には、第1の設定量の圧縮空気を供給し、前記排出ガス温度が、前記設定された臨界値であり、前記タービン入口温度が、設定された最大値以下の場合には、第2の設定量の比率で圧縮空気をさらに供給するように、前記供給機を制御してもよく、これに加え、前記第2の設定量の比率を(前記第1の設定量)×(前記タービン入口温度の設定された最大値−測定されたタービン入口温度)/(前記タービン入口温度の設定された最大値)に比例するように設定してもよい。
【0011】
上述の目的を達成するための本発明に係る空気を吸い込んで圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮した圧縮空気を燃焼器およびタービンに供給する供給機と、前記圧縮空気と燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に発生する燃焼ガスによって回転するタービンとを備え、前記タービンの回転によって発電機を駆動するガスタービンシステムの制御装置は、前記タービンに設けられたロータ(rotor)の回転速度およびタービンから排出される排出ガスの温度を示す排出ガス温度を測定するセンシング部と、前記センシング部で測定した前記タービンに設けられたロータの回転速度および排出ガス温度に基づいて、前記タービンに供給される圧縮空気の量を調整するように、前記供給機を制御する圧縮空気制御部とを含んでもよい。
【0012】
また、前記圧縮空気制御部は、前記排出ガス温度が、設定された臨界値以下の場合には、第1の設定量の圧縮空気を供給し、前記排出ガス温度が、前記設定された臨界値であり、前記ロータの回転速度が、変曲点の回転速度‐変曲点の回転速度は、前記排出ガス温度が、前記設定された臨界値から前記設定された臨界値より低い値に変化し始める時の前記ロータの回転速度を示す‐以下の場合には、第3の設定量の比率で圧縮空気をさらに供給するように、前記供給機を制御してもよく、また、前記第3の設定量の比率を(前記第1の設定量)×(前記変曲点の回転速度−測定された回転速度)/(前記変曲点の回転速度)に比例するように設定してもよい。
【0013】
上述の目的を達成するための本発明に係るガスタービンシステムは、空気を吸い込んで圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮した圧縮空気を燃焼器およびタービンに供給する供給機と、前記圧縮空気と燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に発生する燃焼ガスによって回転するタービンと、前記タービンの回転によって駆動される発電機と、上述の制御装置とを含んでもよい。
【0014】
上述の目的を達成するための本発明に係る空気を吸い込んで圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮した圧縮空気を燃焼器およびタービンに供給する供給機と、前記圧縮空気と燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に発生する燃焼ガスによって回転するタービンとを備え、前記タービンの回転によって発電機を駆動するガスタービンシステムの制御方法は、前記燃焼器で生成された燃焼ガスが入る前記タービンの入口の温度を示すタービン入口温度および前記タービンから排出される排出ガスの温度を示す排出ガス温度を測定するステップと、測定した前記タービン入口温度および前記排出ガス温度に基づいて、前記タービンに供給される圧縮空気の量を調整するように、前記供給機を制御するステップとを含んでもよい。
【0015】
また、前記供給機を制御するステップは、前記排出ガス温度が、設定された臨界値以下の場合には、第1の設定量の圧縮空気を供給するステップと、前記排出ガス温度が、前記設定された臨界値であり、前記タービン入口温度が、設定された最大値以下の場合には、第2の設定量の比率で圧縮空気をさらに供給するように、前記供給機を制御するステップとを含み、前記第2の設定量の比率で圧縮空気をさらに供給するように、前記供給機を制御するステップは、前記第2の設定量の比率を(前記第1の設定量)×(前記タービン入口温度の設定された最大値−測定されたタービン入口温度)/(前記タービン入口温度の設定された最大値)に比例するように設定するステップを含んでもよい。
【0016】
上述の目的を達成するための本発明に係る空気を吸い込んで圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮した圧縮空気を燃焼器およびタービンに供給する供給機と、前記圧縮空気と燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に発生する燃焼ガスによって回転するタービンとを備え、前記タービンの回転によって発電機を駆動するガスタービンシステムの制御方法は、前記タービンに設けられたロータ(rotor)の回転速度およびタービンから排出される排出ガスの温度を示す排出ガス温度を測定するステップと、測定した前記タービンに設けられたロータの回転速度および前記排出ガス温度に基づいて、前記タービンに供給される圧縮空気の量を調整するように、前記供給機を制御するステップとを含んでもよい。
【0017】
また、前記供給機を制御するステップは、前記排出ガス温度が、設定された臨界値以下の場合には、第1の設定量の圧縮空気を供給するステップと、前記排出ガス温度が、前記設定された臨界値であり、前記ロータの回転速度が、変曲点の回転速度‐変曲点の回転速度は、前記排出ガス温度が、前記設定された臨界値から前記設定された臨界値より低い値に変化し始める時の前記ロータの回転速度を示す‐以下の場合には、第3の設定量の比率で圧縮空気をさらに供給するように、前記供給機を制御するステップとを含んでもよく、前記第3の設定量の比率で圧縮空気をさらに供給するように、前記供給機を制御するステップは、前記第3の設定量の比率を(前記第1の設定量)×(前記変曲点の回転速度−測定された回転速度)/(前記変曲点の回転速度)に比例するように設定するステップを含んでもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、低い負荷状態でも燃焼器での完全燃焼を可能にすることで、排出される有害ガスの量を低減することができるという効果がある。
【0019】
また、本発明によると、タービンに供給される冷却用圧縮空気の量を調整することで、タービンから排出される排出ガスの温度を下げることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るガスタービンシステムを図示した図である。
【
図2】負荷による燃焼ガスのタービン20の引き込み温度と排出ガス温度との関係を図示した図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る制御装置100の構造を図示した図である。
【
図4】本発明の制御装置による制御結果を図示した図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るガスタービンシステムの制御装置100の制御方法を図示した図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る燃焼ガスのタービン入口温度を測定することができない場合のガスタービンシステムの制御装置100の制御方法を図示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略しており、明細書の全体にわたり同一または類似の構成要素に対しては、同じ参照符号を付けることにする。
【0022】
明細書の全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているとしたとき、これは、「直接連結」されている場合だけでなく、その間に他の素子を挟んで「電気的に連結」されている場合をも含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」としたとき、これは、特に相反する記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0023】
ある部分が他の部分の「上に」あると言及した場合、これは、他の部分のすぐ上にあってもよく、その間に他の部分が伴われてもよい。対照的に、ある部分が他の部分の「真上に」あると言及した場合、その間には他の部分が伴われない。
【0024】
第1、第2および第3などの用語は、様々な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これらの用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、以下で記述する第1の部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲から逸脱しない範囲内で、第2の部分、成分、領域、層またはセクションに言及され得る。
【0025】
ここで使用される専門用語は、単に特定の実施形態を言及するためのものであって、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形態は、文句がこれと明らかに相反する意味を有していない限り、複数形態をも含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除くものではない。
【0026】
「下」、「上」などの相対的な空間を示す用語は、図面に図示されている一部分の他の部分に対する関係をより簡単に説明するために使用され得る。かかる用語は、図面で意図した意味とともに使用中の装置の他の意味や動作を含むように意図される。例えば、図面中の装置を覆すと、他の部分の「下」にあるものと説明されたある部分は、他の部分の「上」にあるものと説明される。したがって、「下」という例示的な用語は、上方向と下方向の両方を含む。装置は、90゜回転または他の角度で回転してもよく、相対的な空間を示す用語もこれにしたがって解釈される。
【0027】
他に定義してはいないが、ここで使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。普段使用される辞書に定義されている用語は、関連技術文献と現在開示されている内容に合致する意味を有するものとさらに解釈され、定義されない限り、理想的または非常に公式的な意味に解釈されない。
【0028】
図1は本発明の一実施形態に係るガスタービンシステムを図示した図である。
【0029】
図1を参照すると、ガスタービンシステムは、圧縮機10と、供給機50と、燃焼器30と、タービン20と、制御装置100とを含んでもよい。
【0030】
圧縮機10は、外部空気を吸い込んで圧縮し、高圧の空気を生成する機能を行うことができる。圧縮された空気は、供給機50によって燃焼器30に伝達され得、一部の圧縮空気は、タービン20に伝達されて、タービンを冷却するために使用され得る。この際、タービンに伝達される圧縮空気は、冷却器(図示せず)を経ることで温度が下がることがあり、温度が下がった圧縮空気は、タービン20に伝達され得る。
【0031】
燃焼器30は、圧縮機10から入る圧縮空気に燃料を注入して燃焼させることで、高圧、高温の燃焼ガスを生成し、タービン20に提供することができる。タービン20に供給された高温、高圧の燃焼ガスは、タービンの回転翼を駆動させてタービン20のロータを回転させる。タービン20に供給された高温、高圧の燃焼ガスは、タービンの回転翼を駆動させることで温度と圧力が減少し、排出ガスとして大気中に放出される。
【0032】
タービン20と圧縮機10は、一つの軸40にともに固定されており、上述のように、タービン20のロータが回転するに伴い圧縮機10も回転することができる。
【0033】
制御装置100は、一般的に、ガスタービンシステムの効率的な駆動のために、様々な制御を行うことができるが、本発明は、特に、タービン20に供給される圧縮空気の量を調整するために供給機50を制御する方法に関する。
【0034】
一般的に、ガスタービンシステムは、燃料を燃焼させてタービン20のロータを回転させることで発電を行うことができるが、この際、上述のとおり、有害な排出ガスが生成される。有害な排出ガスの生成を最小化するためには、注入される燃料を完全に燃焼させる必要がある。すなわち、燃焼器で生成される燃焼ガスのタービン20の入口での温度をできるだけ高く、且つ一定に維持することで、有害な排出ガスの生成を最小化することができる。また、ガスタービンシステムの出力は、燃焼器30に流入される燃料の量を制御する燃料弁を制御することで、直接制御され得る。
【0035】
すなわち、制御装置100は、燃焼ガスのタービン入口温度(Turbine Inlet Temperature)および排出ガス温度(Exhaust Gas Temperature)に基づいて、ガスタービンシステムが効率よく運行されるように制御を行うことができる。
【0036】
図1および
図2は、負荷による燃焼ガスのタービン20の引き込み温度および排出ガス温度の関係を図示した図である。
【0037】
一般的な状況で、ガスタービンシステムは、最適の効率および最小の有害排出ガスを取得するために、タービン入口温度をできるだけ高く、且つ一定に維持しようとする。タービン入口温度の限界は、タービンおよび燃焼器の温度に対する耐久性によって決定され得る。すなわち、タービンおよび/または燃焼器の構成品が影響を受けない最大の温度をタービン入口温度として設定することができ、制御装置100は、タービン入口温度が、設定された最大値を維持するように、燃焼器に供給する圧縮空気量および燃料量を決定して制御することができる。
【0038】
図2を参照すると、負荷が大きいほどタービン入口温度210は一定に維持され、且つ排出ガス温度220は低くなる。逆に考えると、負荷が小さくなるほどタービン入口温度210は低くなり、且つ排出ガス温度220は高くなる。これは、負荷が小さくなるほどロータの回転が小さくなり、消費する熱エネルギーが小さくなるためである。すなわち、負荷が小さくなるほど、同じ温度でタービン20に引き込まれる燃焼ガスが消費する熱エネルギーが小さくなるため、排出ガス温度220は大きくなる。また、排出ガス温度220は、環境規制などによって、臨界値以上に上がることができない。すなわち、臨界値以上になると、有害排出ガスの量が制御可能な範囲から逸脱することになり、規制範囲以上の有害ガスを排出し得るためである。
【0039】
したがって、制御装置100は、排出ガス温度220を臨界値以上に上がらないようにするために、燃焼ガスのタービン入口温度210を下げるように制御することができる。すなわち、負荷が最大に生産可能な負荷より小さい部分負荷状態211では、排出ガス温度220が臨界値以上に上がらないようにするために、タービン入口温度210を下げるように制御することができる。しかし、タービン入口温度210を下げると、ガスタービンシステムの効率が低下し、また、燃料の不完全燃焼によって有害物質が排出ガスに、より多く含まれる可能性がある。これを防止するためには、タービン入口温度210が最大値を維持し続けるように制御しながら排出ガス温度220を低下させる必要がある。
【0040】
図3は本発明の一実施形態に係る制御装置100の構造を図示した図である。
【0041】
図1〜
図3を参照すると、制御装置100は、センシング部110と圧縮空気制御部120とを含んでもよい。センシング部110は、タービン入口温度210および排出ガス温度220を測定することができる。また、タービン20にあるロータの回転数を測定し、これに基づいて負荷を推定することができる。
【0042】
圧縮空気制御部120は、センシング部110で測定したタービン入口温度210、排出ガス温度220、および/または負荷に基づいて、燃焼器30およびタービン20に向かう圧縮空気の量を制御することができる。圧縮空気制御部120は、負荷が減少するにつれて排出ガス温度220が上昇すると、燃焼器30に引き込まれる圧縮空気の量を制御することで、タービン入口温度210を最大値に維持し続けることができる。これに加え、圧縮空気制御部120は、排出ガス温度220の継続した上昇によって臨界値に到達した場合には、タービン20の冷却のために、タービン20に供給される圧縮空気の量を増加させるように供給機50を制御することができる。これにより、タービン20に引き込まれる燃焼ガスはさらに冷却され得、これにより、排出ガス温度220を下げることができる。この際、増加させる圧縮空気の量は、現在測定されているタービン入口温度210に基づいて決定することができる。一実施形態として、圧縮空気制御部120は、(タービン入口温度の最大値−現在のタービン入口温度)/(タービン入口温度の最大値)により求められる比率に比例するように供給する圧縮空気の量を増加させることができる。
【0043】
上述のように、タービンに供給する圧縮空気の量を増加させることで、排出ガス温度をさらに下げ、これにより、タービン入口温度を下げることなく、排出ガス温度を臨界値以下に制御することができる。
【0044】
図4は本発明の制御装置による制御結果を図示した図である。
【0045】
図4を
図2と比較すると、負荷が低い領域213で排出ガス温度220が臨界値に到達しても、タービン入口温度210を最大値に維持できることが分かる。これにより、燃料の完全燃焼が可能となり、有害ガスの排出を最小化することができる。
【0046】
図5は本発明の一実施形態に係るガスタービンシステムの制御装置100の制御方法を図示した図である。
【0047】
図1〜
図3および
図5を参照すると、本発明の一実施形態に係るガスタービンシステムの制御装置100は、センシング部110などを用いて、タービン入口温度および排出ガス温度を測定(S510)することができる。一般的な正常動作の場合には、タービン入口温度は最大値の周辺に存在し、排出ガス温度は臨界値以下に存在する。このように排出ガス温度が臨界値以下の場合には、制御装置100は、第1の設定量の圧縮空気がタービン20に供給され続ける(S520)ように制御することができる。しかし、求められる負荷の減少によってタービン20のロータの回転速度が減少し、排出ガス温度が上がる。以降、排出ガス温度が臨界値に到達し、タービン入口温度が最大値以下になると、第2の設定量の比率で圧縮空気の供給を増加させることができる(S530)。この際、第2の設定量の比率は、測定されたタービン入口温度に基づいて設定することができる。一実施形態として、第2の設定量の比率は、(タービン入口温度の最大値−現在のタービン入口温度)/(タービン入口温度の最大値)で求められた比率で設定され得る。
【0048】
一方、上述の説明では、タービン入口温度を測定することができると想定しているが、タービン入口温度が高すぎて測定が不可能な場合があり得る。この場合には、負荷および排出ガス温度に基づいて、タービン入口温度を推定することができる。
【0049】
すなわち、ガスタービンシステムの制御装置100は、排出ガス温度と負荷に基づいて、タービン入口温度を推定することができる。したがって、制御装置100は、排出ガス温度が臨界値にあり、負荷の大きさが小さい状態211では、タービン入口温度が最大値以下にあると判断することができる。この際、制御装置100は、負荷量またはタービン20のロータの回転速度に基づいて、タービンに供給する圧縮空気の追加比率を設定することができる。一実施形態として、制御装置100は、正常状態でタービン入口温度が最大値にあり、排出ガス温度が臨界値から減少する地点(A)の負荷量と現在(B)の負荷量に基づいて、(A地点の負荷量−現在の負荷量)/(A地点の負荷量)で求めた値に比例してタービンに供給する圧縮空気の追加比率を設定することができる。
【0050】
図6は本発明の一実施形態に係る燃焼ガスのタービン入口温度を測定することができない場合のガスタービンシステムの制御装置100の制御方法を図示した図である。
【0051】
図1〜
図3および
図6を参照すると、本発明の一実施形態に係るガスタービンシステムの制御装置100は、センシング部110などを用いて、負荷量および排出ガス温度を測定(S610)することができる。一般的な正常動作の場合には、タービン入口温度は最大値の周辺に存在し、排出ガス温度は臨界値以下に存在する。このように排出ガス温度が臨界値以下の場合に、制御装置100は、第1の設定量の圧縮空気がタービン20に供給され続ける(S620)ように制御することができる。しかし、求められる負荷の減少によってタービン20のロータの回転速度が減少し、排出ガス温度が上がる。以降、排出ガス温度が臨界値に到達し、負荷量が変曲点(A)(すなわち、排出ガス温度が臨界値から低い値に変化し始める地点)での負荷量より小さくなると、制御装置100は、第3の設定量の比率で圧縮空気の供給を増加させることができる(S630)。この際、第3の設定量の比率は、測定された負荷量に基づいて設定することができる。一実施形態として、第3の設定量の比率は、(A地点の負荷量−現在の負荷量)/(A地点の負荷量)で求められた比率に比例して設定され得る。もしくは、負荷量とタービンのロータの回転速度は、同じ物理的な概念を提供するため、制御装置100は、(A地点の回転速度−現在の回転速度)/(A地点の回転速度)で求められた比率に比例して第3の設定量の比率を設定することもできる。
【0052】
以上、本発明は、タービンに引き込まれる燃焼ガスの温度を示すタービン入口温度が最大値を有するように制御する制御装置を提示しており、かかる制御装置の使用は、ガスタービンシステムから排出される有害排出ガスの量を最小化することができるという利点を提供することができる。
【0053】
本発明が属する技術分野において当業者は、本発明がその技術的思想や必須特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施され得ることから、上述の実施形態は、すべての面において例示的なものであって、限定的ではないものと理解すべきである。本発明の範囲は、詳細な説明よりも後述する特許請求の範囲により定められ、特許請求の範囲の意味および範囲、またその等価概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が、本発明の範囲に含まれると解釈すべきである。
【符号の説明】
【0054】
10:圧縮機
20:タービン
30:燃焼器
40:回転軸
50:供給機
100:制御装置
110:センシング部
120:圧縮空気制御部