(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6582331
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】ガスタービンシステムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
F02C 9/28 20060101AFI20190919BHJP
F01D 15/10 20060101ALI20190919BHJP
F02C 7/22 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
F02C9/28 C
F01D15/10 C
F02C7/22 Z
F01D15/10 D
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-44931(P2018-44931)
(22)【出願日】2018年3月13日
(65)【公開番号】特開2018-184949(P2018-184949A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2018年3月13日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0053795
(32)【優先日】2017年4月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507002918
【氏名又は名称】ドゥサン ヘヴィー インダストリーズ アンド コンストラクション カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ビュン ヒー
【審査官】
齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−153645(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0260293(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0060065(US,A1)
【文献】
特開2003−239763(JP,A)
【文献】
特開2000−170548(JP,A)
【文献】
特開昭60−030404(JP,A)
【文献】
特開昭54−158507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 9/28
F01D 15/10
F02C 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から空気を吸入して圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮した圧縮空気と燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に発生する燃焼ガスにより回転するロータを備えたタービンと、前記ロータの回転により駆動される発電機とを備え、前記ロータの回転数は系統周波数に比例し、前記系統周波数が定格周波数から外れる場合、前記系統周波数を前記定格周波数に復旧させるために、目標速度調整率(δt)に応じて前記発電機の出力を増減させるガスタービンシステムの制御装置であって、
前記ロータの回転数および前記発電機の出力を測定するセンシング部と、
前記センシング部で測定した前記ロータの回転数および前記発電機の出力に基づいて実際の速度調整率(δr)を計算し、前記実際の速度調整率(δr)および前記目標速度調整率(δt)に基づいて参照速度調整率(δref)を設定する速度調整率設定部であって、前記実際の速度調整率(δr)が前記目標速度調整率(δt)と一致しない場合、前記参照速度調整率(δref)を前記実際の速度調整率(δr)に基づいて再び設定する、速度調整率設定部と、
前記速度調整率設定部で設定した参照速度調整率(δref)に基づいて前記燃焼器に供給する燃料量を制御する燃料量制御部とを備える、ガスタービン制御装置。
【請求項2】
前記燃料量制御部は、前記センシング部で測定した前記ロータの回転数および前記速度調整率設定部で設定した参照速度調整率(δref)に基づいて前記発電機で生産する出力を決定し、前記発電機が前記決定された出力を生産するように前記燃焼器に供給する燃料量を制御する、請求項1に記載のガスタービン制御装置。
【請求項3】
前記燃料量制御部は、
【数13】
(ここで、N
Nは前記タービンのロータの定格回転数、N
oは前の参照速度調整率の設定時に測定された前記タービンのロータの回転数、N
cは現在のタービンのロータの回転数、P
Nは前記発電機の定格出力、P
oは前の参照速度調整率の設定時に測定された前記発電機の出力、δ
refは前記速度調整率設定部で設定した参照速度調整率)の式を用いて前記発電機で生産する出力を決定する、請求項2に記載のガスタービン制御装置。
【請求項4】
前記速度調整率設定部は、予め設定された一定周期に応じて前記参照速度調整率を設定し、
前記センシング部は、前記予め設定された一定周期で測定したものを累積平均して、前記ロータの回転数および前記発電機の出力を測定する、請求項1から3のいずれか一項に記載のガスタービン制御装置。
【請求項5】
前記速度調整率設定部は、
【数14】
(ここで、N
Nは定格回転数、N
oは前の周期のタービンのロータの回転数、N
cは現在のタービンのロータの回転数、P
Nは前記発電機の最大出力である定格出力、P
oはタービンのロータの回転数がN
oの時の前記発電機の出力、P
cはタービンのロータの回転数がN
cの時の前記発電機の出力である)の式を用いて前記実際の速度調整率(δ
r)を計算する、請求項4に記載のガスタービン制御装置。
【請求項6】
前記速度調整率設定部は、前記参照速度調整率(δ
ref)により求められる前記発電機の出力と前の周期における参照速度調整率(δ
oref)により求められる前記発電機の出力との間の差が、目標速度調整率(δ
t)により求められる前記発電機の出力と実際の速度調整率(δ
r)により求められる前記発電機の出力との間の差と一致するように参照速度調整率(δ
ref)を設定するが、
前記発電機の出力は、
【数15】
(ここで、N
Nは前記タービンのロータの定格回転数、N
oは前の参照速度調整率の設定時に測定された前記タービンのロータの回転数、N
cは現在のタービンのロータの回転数、P
Nは前記発電機の定格出力、P
oは前の参照速度調整率の設定時に測定された前記発電機の出力、Aはδ
ref、δ
oref、δ
t、またはδ
rである)により計算される、請求項4に記載のガスタービン制御装置。
【請求項7】
前記速度調整率設定部は、
【数16】
の式を用いて計算された値を参照速度調整率(δ
ref)に設定する、請求項6に記載のガスタービン制御装置。
【請求項8】
発電のためのガスタービンシステムであって、
外部から空気を吸入して圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮した圧縮空気と燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、
前記燃焼器に発生する燃焼ガスにより回転するロータを備えたタービンと、
前記ロータの回転により駆動される発電機と、
前記燃焼器に供給する燃料量を制御する請求項1〜7のいずれか1項に記載のガスタービン制御装置に含まれる制御装置とを備える、ガスタービンシステム。
【請求項9】
外部から空気を吸入して圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮した圧縮空気と燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に発生する燃焼ガスにより回転するロータを備えたタービンと、前記ロータの回転により駆動される発電機とを備え、前記ロータの回転数は系統周波数に比例し、前記系統周波数が定格周波数から外れる場合、前記系統周波数を前記定格周波数に復旧させるために、目標速度調整率(δt)に応じて前記発電機の出力を増減させるガスタービン制御方法であって、
目標速度調整率(δt)を設定するステップと、
前記タービンのロータの回転数および前記発電機の出力を測定するステップと、
前記タービンのロータの回転数および前記発電機の出力に基づいて実際の速度調整率(δr)を計算するステップと、
前記実際の速度調整率(δr)および前記目標速度調整率(δt)に基づいて参照速度調整率(δref)を設定するステップであって、前記実際の速度調整率(δr)が前記目標速度調整率(δt)と一致しない場合、前記参照速度調整率(δref)を前記実際の速度調整率(δr)に基づいて再び設定する、ステップと、
前記参照速度調整率(δref)に応じて前記燃焼器に供給する燃料量を制御するステップとを含む、ガスタービン制御方法。
【請求項10】
前記参照速度調整率(δref)に応じて前記燃焼器に供給する燃料量を制御するステップは、
前記ロータの回転数および前記参照速度調整率(δref)に基づいて前記発電機で生産する出力を決定するステップと、
前記発電機が前記決定された出力を生産するように前記燃焼器に供給する燃料量を制御するステップとを含む、請求項9に記載のガスタービン制御方法。
【請求項11】
前記発電機で生産する出力を決定するステップは、
【数17】
(ここで、N
Nは前記タービンのロータの定格回転数、N
oは前の参照速度調整率の設定時に測定された前記タービンのロータの回転数、N
cは現在のタービンのロータの回転数、P
Nは前記発電機の定格出力、P
oは前の参照速度調整率の設定時に測定された前記発電機の出力、δ
refは設定された参照速度調整率)の式を用いて前記発電機で生産する出力を決定するステップを含む、請求項10に記載のガスタービン制御方法。
【請求項12】
前記実際の速度調整率(δ
r)および前記目標速度調整率(δ
t)に基づいて参照速度調整率(δ
ref)を設定するステップは、前記参照速度調整率(δ
ref)により求められる前記発電機の出力と前の周期における参照速度調整率(δ
oref)により求められる前記発電機の出力との間の差が、目標速度調整率(δ
t)により求められる前記発電機の出力と実際の速度調整率(δ
r)により求められる前記発電機の出力との間の差と一致するように参照速度調整率(δ
ref)を設定するステップを含むが、前記発電機の出力は
【数18】
(ここで、N
Nは前記タービンのロータの定格回転数、N
oは前の参照速度調整率の設定時に測定された前記タービンのロータの回転数、N
cは現在のタービンのロータの回転数、P
Nは前記発電機の定格出力、P
oは前の参照速度調整率の設定時に測定された前記発電機の出力、Aはδ
ref、δ
oref、δ
t、またはδ
rである)により計算される、請求項9から11のいずれか一項に記載のガスタービン制御方法。
【請求項13】
前記実際の速度調整率(δ
r)および前記目標速度調整率(δ
t)に基づいて参照速度調整率(δ
ref)を設定するステップは、
【数19】
の式を用いて計算された値を参照速度調整率(δ
ref)に設定するステップを含む、請求項12に記載のガスタービン制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンシステムおよびその制御方法に関し、より詳細には、ガスタービンシステムが目標速度調整率を合わせるために、燃料量制御部が燃焼器に供給する燃料量を制御する際に参照する参照速度調整率を調整することのできるガスタービンシステムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ガスタービンや蒸気タービンのようなタービン(turbine)を備えた機関または装置は、気体または流体の熱エネルギーを機械的エネルギーの回転力に変換する動力発生装置で、気体または流体によって軸回転するロータ(rotor)と、前記ロータを支持して取り囲むステータ(stator)とを備えている。
【0003】
電気を生産するために発電所などで用いられるガスタービンの構成を簡単に説明すれば、空気を圧縮した高圧の空気を燃焼器に供給する圧縮機と、燃焼ガスを生成するための燃焼器と、燃焼器から吐出される燃焼ガスによって駆動するタービンとを備えることができる。
【0004】
ガスタービンの圧縮機は、一般的に、タービンの軸と一体に結合してタービンとともに軸回転をし、このように軸回転をしながら外部空気を吸入して圧縮する。圧縮された空気は燃焼器に供給され、燃焼器では、圧縮された空気に燃料を供給して燃焼させることにより高温、高圧の燃焼ガスを生成し、これをタービンに供給する。
【0005】
タービンに供給された高温、高圧の燃焼ガスは、タービンの回転翼を駆動させてタービンのロータ(rotor)を回転させる。
【0006】
電気を伝送する電力系統において、電力系統全体の安定運用のためには、系統周波数が定格周波数(韓国の場合は60Hz)に維持され続ける必要がある。そして、一般的に、複数の発電所が系統上に連結されて分担して電力を供給しており、供給と負荷が一致すると、系統周波数は定格周波数に安定する。しかし、一部の発電所が故障などによって電力を供給できなければ供給が不足し、これによって系統周波数が低下する。この場合、他の発電所が不足する電力分を追加的に供給して系統周波数を安定させる。この時、各発電所がどれだけの電力を追加的に供給するかを示す指標として、速度調整率という概念がある。速度調整率とは、周波数変化率と発電機の出力の変化率との比を百分率で表したものである。
【0007】
ところで、発電所が速度調整率に合わせて追加的に電力を供給すると期待するものの、制御応答時間における時差および制御ロジック上でのエラーなどで実際に測定された速度調整率が目標の速度調整率に及ばないことがある。この場合、追加的に供給すべき電力がニーズに及ばず、系統周波数を定格周波数に維持するうえで問題点として作用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、目標速度調整率を合わせるために、燃料量制御部が制御のために参照する参照速度調整率を測定した実際の速度調整率に基づいて調整することのできるガスタービンシステムおよびその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための、本発明に係る、外部から空気を吸入して圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮した圧縮空気と燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に発生する燃焼ガスにより回転するロータを備えたタービンと、前記ロータの回転により駆動される発電機とを備え、前記ロータの回転数は系統周波数に比例し、前記系統周波数が定格周波数から外れる場合、前記系統周波数を前記定格周波数に復旧させるために、目標速度調整率(δ
t)に応じて発電機の出力を増減させるガスタービンシステムの制御装置は、前記ロータの回転数および前記発電機の出力を測定するセンシング部と、前記センシング部で測定した前記ロータの回転数および前記発電機の出力に基づいて実際の速度調整率(δ
r)を計算し、前記実際の速度調整率(δ
r)および前記目標速度調整率(δ
t)に基づいて参照速度調整率(δ
ref)を設定する速度調整率設定部
であって、前記実際の速度調整率(δr)が前記目標速度調整率(δt)と一致しない場合、前記参照速度調整率(δref)を前記実際の速度調整率(δr)に基づいて再び設定する、速度調整率設定部と、前記速度調整率設定部で設定した参照速度調整率(δ
ref)に基づいて前記燃焼器に供給する燃料量を制御する燃料量制御部とを備えることができる。
【0010】
より詳細には、前記燃料量制御部は、前記センシング部で測定した前記ロータの回転数および前記速度調整率設定部で設定した参照速度調整率(δ
ref)に基づいて前記発電機で生産する出力を決定し、前記発電機が前記決定された出力を生産するように前記燃焼器に供給する燃料量を制御することができ、この時、前記燃料量制御部は、
【数1】
(ここで、N
Nは前記タービンのロータの定格回転数、N
oは前の参照速度調整率の設定時に測定された前記タービンのロータの回転数、N
cは現在のタービンのロータの回転数、P
Nは発電機の定格出力、P
oは前の参照速度調整率の設定時に測定された発電機の出力、δ
refは前記速度調整率設定部で設定した参照速度調整率)の式を用いて前記発電機で生産する出力を決定することができる。
【0011】
そして、前記速度調整率設定部は、予め設定された一定周期に応じて前記参照速度調整率を設定し、前記センシング部は、前記予め設定された一定周期で測定したものを累積平均して、前記ロータの回転数および前記発電機の出力を測定することができる。
【0012】
また、前記速度調整率設定部は、
【数2】
(ここで、N
Nは定格回転数、N
oは前の周期のタービンのロータの回転数、N
cは現在のタービンのロータの回転数、P
Nは発電機の最大出力である定格出力、P
oはタービンのロータの回転数がN
oの時の発電機の出力、P
cはタービンのロータの回転数がN
cの時の発電機の出力である)の式を用いて前記実際の速度調整率(δ
r)を計算し、前記参照速度調整率(δ
ref)により求められる発電機の出力と前の周期における参照速度調整率(δ
oref)により求められる発電機の出力との間の差が、目標速度調整率(δ
t)により求められる発電機の出力と実際の速度調整率(δ
r)により求められる発電機の出力との間の差と一致するように参照速度調整率(δ
ref)を設定するが、前記発電機の出力は、
【数3】
(ここで、N
Nは前記タービンのロータの定格回転数、N
oは前の参照速度調整率の設定時に測定された前記タービンのロータの回転数、N
cは現在のタービンのロータの回転数、P
Nは発電機の定格出力、P
oは前の参照速度調整率の設定時に測定された発電機の出力、Aはδ
ref、δ
oref、δ
t、またはδ
rである)により計算される。
【0013】
より簡単には、前記速度調整率設定部は、
【数4】
の式を用いて計算された値を参照速度調整率(δ
ref)に設定することができる。
【0014】
上記の目的を達成するための、本発明に係る発電のためのガスタービンシステムは、外部から空気を吸入して圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮した圧縮空気と燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に発生する燃焼ガスにより回転するロータを備えたタービンと、前記ロータの回転により駆動される発電機と、前記燃焼器に供給する燃料量を制御する請求項1〜7のいずれか1項に記載の制御装置とを備えることができる。
【0015】
上記の目的を達成するための、本発明に係る、外部から空気を吸入して圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮した圧縮空気と燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に発生する燃焼ガスにより回転するロータを備えたタービンと、前記ロータの回転により駆動される発電機とを備え、前記ロータの回転数は系統周波数に比例し、前記系統周波数が定格周波数から外れる場合、前記系統周波数を前記定格周波数に復旧させるために、目標速度調整率(δ
t)に応じて発電機の出力を増減させるガスタービン制御方法は、目標速度調整率(δ
t)を設定するステップと、前記タービンのロータの回転数および前記発電機の出力を測定するステップと、前記タービンのロータの回転数および前記発電機の出力に基づいて実際の速度調整率(δ
r)を計算するステップと、前記実際の速度調整率(δ
r)および前記目標速度調整率(δ
t)に基づいて参照速度調整率(δ
ref)を設定するステップ
であって、前記実際の速度調整率(δr)が前記目標速度調整率(δt)と一致しない場合、前記参照速度調整率(δref)を前記実際の速度調整率(δr)に基づいて再び設定する、ステップと、前記参照速度調整率に応じて前記燃焼器に供給する燃料量を制御するステップとを含むことができる。
【0016】
より詳細に説明すれば、前記参照速度調整率(δ
ref)に応じて前記燃焼器に供給する燃料量を制御するステップは、前記ロータの回転数および前記参照速度調整率(δ
ref)に基づいて前記発電機で生産する出力を決定するステップと、前記発電機が前記決定された出力を生産するように前記燃焼器に供給する燃料量を制御するステップとを含むことができ、前記発電機で生産する出力を決定するステップは、
【数5】
(ここで、N
Nは前記タービンのロータの定格回転数、N
oは前の参照速度調整率の設定時に測定された前記タービンのロータの回転数、N
cは現在のタービンのロータの回転数、P
Nは発電機の定格出力、P
oは前の参照速度調整率の設定時に測定された発電機の出力、δ
refは設定された参照速度調整率)の式を用いて前記発電機で生産する出力を決定するステップを含むことができる。
【0017】
そして、前記実際の速度調整率(δ
r)および前記目標速度調整率(δ
t)に基づいて参照速度調整率(δ
ref)を設定するステップは、前記参照速度調整率(δ
ref)により求められる発電機の出力と前の周期における参照速度調整率(δ
oref)により求められる発電機の出力との間の差が、目標速度調整率(δ
t)により求められる発電機の出力と実際の速度調整率(δ
r)により求められる発電機の出力との間の差と一致するように参照速度調整率(δ
ref)を設定するステップを含むが、前記発電機の出力は、
【数6】
(ここで、N
Nは前記タービンのロータの定格回転数、N
oは前の参照速度調整率の設定時に測定された前記タービンのロータの回転数、N
cは現在のタービンのロータの回転数、P
Nは発電機の定格出力、P
oは前の参照速度調整率の設定時に測定された発電機の出力、Aはδ
ref、δ
oref、δ
t、またはδ
rである)により計算され、より単純には、
【数7】
の式を用いて計算された値を参照速度調整率(δ
ref)に設定するステップを含むことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、負荷の減少/増加または他の発電所の故障によって追加的な電力を供給しなければならない場合の目標速度調整率を満足できるようにガスタービンシステムを制御することで、系統全体の安定運用を確保可能にする効果がある。
【0019】
また、本発明によれば、システムの応答時間遅延などの影響で実際の速度調整率が目標速度調整率より低い場合を無くすことで、事業者が要求する速度調整率を合わせることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るガスタービンシステムを示す図である。
【
図2】2つの異なる速度調整率の時の系統周波数に応じた発電機50の出力を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る制御装置100のブロック図を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る制御装置100において、参照速度調整率を設定し、目標速度調整率を合わせるように制御する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略しており、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一の参照符号を付す。
【0022】
明細書全体において、ある部分が他の部分に『連結』されているとする時、これは、『直接的に連結』されている場合のみならず、その中間に他の素子を挟んで『電気的に連結』されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を『含む』とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0023】
ある部分が他の部分の『上に』あると言及する場合、これは、直に他の部分の上にあり得るか、その間に他の部分が伴うこともある。対照的に、ある部分が他の部分の『真上に』あると言及する場合、その間に他の部分は伴わない。
【0024】
第1、第2および第3などの用語は、多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使われるが、これらに限定されない。これらの用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを、他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにのみ使われる。したがって、以下に述べる第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及されてもよい。
【0025】
ここで使われる専門用語は、単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使われる単数形態は、文章がこれと明らかに反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。明細書で使われる『含む』の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるわけではない。
【0026】
『下』、『上』などの相対的な空間を示す用語は、図面に示された一部分の他の部分に対する関係をより容易に説明するために使われる。このような用語は、図面で意図した意味とともに、使用中の装置の他の意味や動作を含むように意図される。例えば、図中の装置を覆すと、他の部分の『下』にあると説明されていたある部分は、他の部分の『上』にあると説明される。したがって、『下』という例示的な用語は、上と下の方向をすべて含む。装置は90゜回転または他の角度で回転してもよく、相対的な空間を示す用語もこれに基づいて解釈される。
【0027】
別途に定義しないが、ここで使われる技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同じ意味を持つ。通常使われる辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を持つものと追加解釈され、定義されない限り、理想的または非常に公式的な意味で解釈されない。
【0028】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係るガスタービンシステムを示す図である。
【0030】
図1を参照すれば、ガスタービンシステムは、圧縮機10と、燃焼器30と、タービン20と、発電機50と、制御装置100とを備えることができる。
【0031】
圧縮機10は、外部から吸入した空気を圧縮して高圧の圧縮空気を生成する機能を果たすことができる。圧縮空気は燃焼器30に伝達される。
【0032】
燃焼器30は、圧縮機10から入る圧縮空気に燃料を注入し燃焼させて高圧、高温の燃焼ガスを生成し、タービン20に提供することができる。タービン20に供給された高温、高圧の燃焼ガスは、タービンの回転翼を駆動させてタービン20のロータを回転させる。タービン20に供給された高温、高圧の燃焼ガスは、タービンの回転翼を駆動させるにつれ、温度と圧力が低くなり、排出ガスとして大気中に放出される。
【0033】
発電機50は、タービン20のロータの回転を利用して電力を生産することができる。
【0034】
そして、タービン20と圧縮機10とは1つの軸40にともに固定されていて、上述のように、タービン20のロータが回転するにつれ、圧縮機10もともに回転し、これを利用して空気を圧縮する。
【0035】
制御装置100は、一般的に、ガスタービンシステムの効率的な駆動のために多様な制御を行うことができる。
【0036】
ガスタービンシステムの場合、タービン20のロータの回転速度を調整する方式には、ロード制限(Load Limit)方式とガバナフリー(Governor Free)方式とがある。ロード制限方式は、タービン20のロータの回転速度を一定に固定しておく方式をいうものであり、ガバナフリー方式は、電力系統の周波数変化に応じてタービン20のロータの回転速度が自動的に制御されるようにする方式をいう。一般的に、電力系統全体の安定運用のためには、系統周波数が定格周波数(韓国の場合は60Hz)に維持され続ける必要がある。そこで、ガスタービンシステムの運用者は、設備保護レベルでガスタービンシステムの急激な動揺を防止できるロード制限方式を好むが、電力系統全体の安定運用をつかさどる韓国電力取引所の「電力市場運営規則」には「発電会員はガバナフリー運転で系統周波数の維持に積極的に協調しなければならない。」という義務条項が挿入されていて、ガスタービンシステムはガバナフリー方式で運転されるのが一般的である。
【0037】
ガバナフリー方式で運用されると、系統周波数に比例する回転速度でタービン20のロータが回転する。ここで、速度調整率(DroopまたはSpeed Regulation Rate)の概念が導入される。速度調整率とは、周波数変化率(タービン20のロータの回転速度の変化率)と発電機50の出力の変化率との比を百分率で表したものをいう。もし、A、B、C、・・・、Kの発電所が電力系統に電力を供給しており、K発電所が故障などによって電力供給を中断して発電量が不足すると、発電量と負荷との間の不均衡のため、系統周波数が小さくなる。この場合、A、B、C、・・・の発電所が不足する発電量を適切に分けて分担して追加的な発電をすることで系統周波数を早速復旧する必要があり、この時、各発電所は与えられた速度調整率に応じて追加的な発電を試みるようになる。
【0038】
一般的に、速度調整率(δ)は、次の式のように表される。
[数式1]
【数8】
【0039】
そして、上記式から
[数式2]
【数9】
を求めることができる。ここで、N
1、N
2、N
Nはタービン20のロータの回転数を表し、P
1、P
2、P
Nは発電機の出力を表す。より詳細に説明すれば、N
1は直前のロータの回転数、N
2は現在のロータの回転数、N
Nは定格回転数、P
1は直前の発電機の出力、P
Nは定格出力、P
2はロータの回転数がN
1からN
2に変化した時の発電機が生産すべき出力を表す。
【0040】
一例として、速度調整率(δ)は3%、定格出力(P
N)は28.8MW、直前の発電機の出力(P
1)は21.6MWであり、系統周波数が定格周波数(60Hz)で運用される途中、系統事故によって系統周波数が急に59.7Hzに低下した場合に、タービン20のロータの回転数は系統周波数に比例するので、N
1=N
N=60k、N
2=59.7kになる。すると、系統周波数を定格周波数に復帰させるために発電機が生産すべき出力(P
2)は26.4MWにならなければならない。
【0041】
図2は、2つの異なる速度調整率の時の系統周波数に応じた発電機50の出力を示す図である。
【0042】
図2を参照すれば、直線220は速度調整率が2%の場合であり、直線210は速度調整率が4%の場合である。系統周波数が定格周波数の場合、発電機はPの出力を生産する。そうしている間に、系統周波数が定格周波数より減少すると、速度調整率に応じて生産する出力を高めなければならず、系統周波数が定格周波数より大きくなると、速度調整率に応じて生産する出力を低下させなければならない。特に、速度調整率が2%の場合には、周波数変動率が1%(0.6Hz)変化した時、定格周波数における出力(P)の1.5倍の出力を発電機が生産しなければならず、速度調整率が4%の場合には、周波数変動率が2%(1.2Hz)変化した時、定格周波数における出力(P)の1.5倍の出力を発電機が生産しなければならない。すなわち、速度調整率が小さい場合に、より急激に生産する出力を変化させなければならないことが分かる。
【0043】
この時、速度調整率に応じて出力を高めるためには、燃焼器30に供給する燃料の量を増加させて、より多い高温、高圧の燃焼ガスを生成しなければならない。
【0044】
本発明の制御装置100は、上述の目標速度調整率を合わせるために、燃焼器30に供給する燃料の量を制御することができる。これに加えて、圧縮機10から燃焼器30に供給される圧縮空気量も制御可能である。その他のガスタービンシステム上の他の制御要素も制御可能である。
【0045】
しかし、制御装置100による実際の制御により取得される速度調整率が、系統管理者が所望する目標速度調整率と一致するかが問題となる。すなわち、目標速度調整率に応じて発電機50が出力を生産するようにするために多様なシミュレーションなどにより供給する燃料の量を何%増加させればよいとの情報などを有していてもよいが、制御に対するシステムの応答時間の変化、システムの状態や燃料の質、環境などによって、同一の燃料量を注入しても取得可能な速度調整率が目標速度調整率と一致するかを知ることができない。
【0046】
したがって、本発明では、制御装置100が適応的に目標速度調整率を達成できるように設計しようとする。
【0047】
図3は、本発明の一実施形態に係る制御装置100のブロック図を示す図である。
【0048】
図3を参照すれば、本発明の一実施形態に係る制御装置100は、センシング部110と、速度調整率設定部120と、燃料量制御部130とを備えることができる。
【0049】
センシング部110は、タービン20のロータの回転数および発電機50の出力を測定することができる。上述のように、タービン20のロータの回転数は系統周波数に比例するので、タービン20のロータの回転数を測定することにより、系統周波数の変化を認知することができる。
【0050】
燃料量制御部130は、後述する速度調整率設定部120で設定した参照速度調整率およびセンシング部110で測定したタービン20のロータの回転数に基づいて発電機50で生産する出力を決定し、発電機50が決定された出力を生産できるようにガスタービンシステムを制御する。特に、燃焼器30に供給される燃料量を制御することができる。すなわち、発電機50でより高い出力を生産しなければならない場合には、より多い燃料が燃焼器30に供給できるように制御し、より小さい出力を生産しなければならない場合には、より少ない燃料が燃焼器30に供給されるように制御することができる。この時、発電機50で生産する出力は、次の数式3により求められる。
[数式3]
【数10】
【0051】
ここで、N
Nは前記タービン20のロータの定格回転数であり、N
oは前の参照速度調整率の設定時に測定された前記タービン20のロータの回転数であり、N
cは現在のタービン20のロータの回転数であり、P
Nは発電機50の定格出力であり、P
oは前の参照速度調整率の設定時に測定された発電機50の出力であり、δ
refは新しく設定された参照速度調整率である。
【0052】
速度調整率設定部120は、燃料量制御部130が燃焼器30に供給する燃料量を決定するために参照する参照速度調整率(δ
ref)を設定することができる。単純には、目標速度調整率(δ
t)を参照速度調整率(δ
ref)として設定すればよいが、上述のような様々な理由によって実際の速度調整率(δ
r)が目標速度調整率(δ
t)と一致しないことがある。このために、参照速度調整率(δ
ref)を実際の速度調整率(δ
r)に基づいて再び設定することができる。実際の速度調整率(δ
r)は、次の数式4から求めることができる。
[数式4]
【数11】
【0053】
ここで、N
Nは定格回転数であり、N
oは直前のタービン20のロータの回転数、N
cは現在のタービン20のロータの回転数を表し、P
Nは発電機50の最大出力である定格出力を表し、P
oはタービン20のロータの回転数がN
oの時の発電機の出力、P
cはタービン20のロータの回転数がN
cの時の発電機の出力である。この時、タービン20のロータの回転数および出力は、一定時間で測定した結果を累積して平均したものであってよい。すなわち、毎測定時ごとの結果に基づいて実際の速度調整率を計算するのではなく、一定時間で累積して測定した結果に基づいて実際の速度調整率を計算することができる。
【0054】
一実施形態として、N
N=N
o=60k、N
c=59.7k、P
N=28.8MW、P
o=21.6MW、P
c=26.4MWとすれば、実際の速度調整率(δ
r)は数式4により3%になる。目標速度調整率(δ
t)が3%であれば、実際の速度調整率(δ
r)が目標速度調整率(δ
t)と一致するので、現在設定された参照速度調整率(δ
ref)をそのまま維持すればよい。しかし、実際の速度調整率(δ
r)が目標速度調整率(δ
t)と異なる場合には、目標速度調整率(δ
t)と一致させるために参照速度調整率(δ
ref)を修正する必要がある。
【0055】
上述の一実施形態において、発電機50がP
2=25.2MWを生産していれば、実際の速度調整率は4%になり、目標速度調整率3%を満足させることができない。これを解決するために、度調整率設定部120は、参照速度調整率(δ
ref)を現在よりも小さく設定することができる。
【0056】
このために、速度調整率設定部120は、発電機50が生産する出力(P
2)に基づいて実際の速度調整率(δ
r)を前記数式4を用いて計算し、目標速度調整率(δ
t)に基づいて新しい参照速度調整率(δ
ref)を次の数式5を用いて求めることができる。
[数式5]
【数12】
【0057】
数式5は、前記数式3に基づいて新しい参照速度調整率(δ
ref)により求められる発電機50の出力と前の参照速度調整率(δ
oref)により求められる発電機50の出力との間の差が、目標速度調整率(δ
t)により求められる発電機50の出力と実際の速度調整率(δ
r)により求められる発電機50の出力との間の差と一致するように新しい参照速度調整率(δ
ref)を設定する一例を示すものである。
【0058】
図4は、本発明の一実施形態に係る制御装置100において、参照速度調整率を設定し、目標速度調整率を合わせるように制御する方法を示す図である。
【0059】
図4を参照すれば、本発明の一実施形態に係る制御装置100は、ガスタービンシステムが目標速度調整率に合わせながら運用できるようにするために、まず、ガスタービンシステムが合わせようとする目標速度調整率を設定(S510)する。そして、タービン20のロータの回転数および発電機の出力を測定(S520)する。この時、タービン20のロータの回転数に基づいて系統周波数を決定することができる。もし、系統周波数が定格周波数の時は、速度調整率による制御を必要とせず、この場合には、定格周波数における発電機50の出力がどの程度なのかを測定して保存していてもよい。
【0060】
もし、タービン20のロータの回転数により計算された系統周波数が定格周波数でなければ、目標速度調整率に応じて発電機50の出力を高めたり低下させなければならない。このために、制御装置100は、燃料量制御部130が燃料量を制御するために参照する参照速度調整率(δ
ref)を設定することができる。最初の参照速度調整率(δ
ref)を目標速度調整率(δ
t)と同一に設定することができる。そして、一定期間で累積して測定したタービン20のロータの回転数および発電機の出力に基づいて実際の速度調整率(δ
r)を計算(S530)する。もし、計算した実際の速度調整率(δ
r)が目標速度調整率(δ
t)を満足しなければ、新しい参照速度調整率(δ
ref)を設定すればよい。そして、燃料量制御部130は、新しく設定された参照速度調整率(δ
ref)に応じて燃焼器に供給する燃料量を制御(S550)することができる。制御装置100の速度調整率設定部130は、目標速度調整率(δ
t)を満足するまで、ステップS520からステップS540を周期的に繰り返し行うことができる。
【0061】
上述の方法によって速度調整率設定部130が一定周期ごとに参照速度調整率(δ
ref)を設定することにより、ガスタービンシステムが目標速度調整率(δ
t)を合わせるように制御可能である。
【0062】
この時、新しい参照速度調整率(δ
ref)を設定する一実施形態は、前記数式3に基づいて新しい参照速度調整率(δ
ref)により求められる発電機50の出力と前の参照速度調整率(δ
oref)により求められる発電機50の出力との間の差が、目標速度調整率(δ
t)により求められる発電機50の出力と実際の速度調整率(δ
r)により求められる発電機50の出力との間の差と一致するように新しい参照速度調整率(δ
ref)を設定するものであってもよい。
【0063】
以上、本発明で提示する制御装置は、実際の速度調整率に基づいて参照速度調整率を設定し、参照速度調整率に基づいて燃料量を調整する機能を提供することにより、ガスタービンシステムが目標速度調整率を達成可能にする効果を提供することができる。
【0064】
本発明の属する技術分野における当業者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できるため、以上に述べた実施形態はあらゆる面で例示的なものであり、限定的ではないものとして理解しなければならない。本発明の範囲は、詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその等価概念から導出されるあらゆる変更または変形した形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
本願によれば、以下の各項目もまた開示される。
[項目1]
外部から空気を吸入して圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮した圧縮空気と燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に発生する燃焼ガスにより回転するロータを備えたタービンと、前記ロータの回転により駆動される発電機とを備え、前記ロータの回転数は系統周波数に比例し、前記系統周波数が定格周波数から外れる場合、前記系統周波数を前記定格周波数に復旧させるために、目標速度調整率(δt)に応じて前記発電機の出力を増減させるガスタービンシステムの制御装置であって、
前記ロータの回転数および前記発電機の出力を測定するセンシング部と、
前記センシング部で測定した前記ロータの回転数および前記発電機の出力に基づいて実際の速度調整率(δr)を計算し、前記実際の速度調整率(δr)および前記目標速度調整率(δt)に基づいて参照速度調整率(δref)を設定する速度調整率設定部と、
前記速度調整率設定部で設定した参照速度調整率(δref)に基づいて前記燃焼器に供給する燃料量を制御する燃料量制御部とを備える、ガスタービン制御装置。
[項目2]
前記燃料量制御部は、前記センシング部で測定した前記ロータの回転数および前記速度調整率設定部で設定した参照速度調整率(δref)に基づいて前記発電機で生産する出力を決定し、前記発電機が前記決定された出力を生産するように前記燃焼器に供給する燃料量を制御する、項目1に記載のガスタービン制御装置。
[項目3]
前記燃料量制御部は、
【数13】
(ここで、NNは前記タービンのロータの定格回転数、Noは前の参照速度調整率の設定時に測定された前記タービンのロータの回転数、Ncは現在のタービンのロータの回転数、PNは前記発電機の定格出力、Poは前の参照速度調整率の設定時に測定された前記発電機の出力、δrefは前記速度調整率設定部で設定した参照速度調整率)の式を用いて前記発電機で生産する出力を決定する、項目2に記載のガスタービン制御装置。
[項目4]
前記速度調整率設定部は、予め設定された一定周期に応じて前記参照速度調整率を設定し、
前記センシング部は、前記予め設定された一定周期で測定したものを累積平均して、前記ロータの回転数および前記発電機の出力を測定する、項目1から3のいずれか一項に記載のガスタービン制御装置。
[項目5]
前記速度調整率設定部は、
【数14】
(ここで、NNは定格回転数、Noは前の周期のタービンのロータの回転数、Ncは現在のタービンのロータの回転数、PNは前記発電機の最大出力である定格出力、Poはタービンのロータの回転数がNoの時の前記発電機の出力、Pcはタービンのロータの回転数がNcの時の前記発電機の出力である)の式を用いて前記実際の速度調整率(δr)を計算する、項目4に記載のガスタービン制御装置。
[項目6]
前記速度調整率設定部は、前記参照速度調整率(δref)により求められる前記発電機の出力と前の周期における参照速度調整率(δoref)により求められる前記発電機の出力との間の差が、目標速度調整率(δt)により求められる前記発電機の出力と実際の速度調整率(δr)により求められる前記発電機の出力との間の差と一致するように参照速度調整率(δref)を設定するが、
前記発電機の出力は、
【数15】
(ここで、NNは前記タービンのロータの定格回転数、Noは前の参照速度調整率の設定時に測定された前記タービンのロータの回転数、Ncは現在のタービンのロータの回転数、PNは前記発電機の定格出力、Poは前の参照速度調整率の設定時に測定された前記発電機の出力、Aはδref、δoref、δt、またはδrである)により計算される、項目4に記載のガスタービン制御装置。
[項目7]
前記速度調整率設定部は、
【数16】
の式を用いて計算された値を参照速度調整率(δref)に設定する、項目6に記載のガスタービン制御装置。
[項目8]
発電のためのガスタービンシステムであって、
外部から空気を吸入して圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮した圧縮空気と燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、
前記燃焼器に発生する燃焼ガスにより回転するロータを備えたタービンと、
前記ロータの回転により駆動される発電機と、
前記燃焼器に供給する燃料量を制御する項目1〜7のいずれか1項に記載のガスタービン制御装置に含まれる制御装置とを備える、ガスタービンシステム。
[項目9]
外部から空気を吸入して圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮した圧縮空気と燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に発生する燃焼ガスにより回転するロータを備えたタービンと、前記ロータの回転により駆動される発電機とを備え、前記ロータの回転数は系統周波数に比例し、前記系統周波数が定格周波数から外れる場合、前記系統周波数を前記定格周波数に復旧させるために、目標速度調整率(δt)に応じて前記発電機の出力を増減させるガスタービン制御方法であって、
目標速度調整率(δt)を設定するステップと、
前記タービンのロータの回転数および前記発電機の出力を測定するステップと、
前記タービンのロータの回転数および前記発電機の出力に基づいて実際の速度調整率(δr)を計算するステップと、
前記実際の速度調整率(δr)および前記目標速度調整率(δt)に基づいて参照速度調整率(δref)を設定するステップと、
前記参照速度調整率(δref)に応じて前記燃焼器に供給する燃料量を制御するステップとを含む、ガスタービン制御方法。
[項目10]
前記参照速度調整率(δref)に応じて前記燃焼器に供給する燃料量を制御するステップは、
前記ロータの回転数および前記参照速度調整率(δref)に基づいて前記発電機で生産する出力を決定するステップと、
前記発電機が前記決定された出力を生産するように前記燃焼器に供給する燃料量を制御するステップとを含む、項目9に記載のガスタービン制御方法。
[項目11]
前記発電機で生産する出力を決定するステップは、
【数17】
(ここで、NNは前記タービンのロータの定格回転数、Noは前の参照速度調整率の設定時に測定された前記タービンのロータの回転数、Ncは現在のタービンのロータの回転数、PNは前記発電機の定格出力、Poは前の参照速度調整率の設定時に測定された前記発電機の出力、δrefは設定された参照速度調整率)の式を用いて前記発電機で生産する出力を決定するステップを含む、項目10に記載のガスタービン制御方法。
[項目12]
前記実際の速度調整率(δr)および前記目標速度調整率(δt)に基づいて参照速度調整率(δref)を設定するステップは、前記参照速度調整率(δref)により求められる前記発電機の出力と前の周期における参照速度調整率(δoref)により求められる前記発電機の出力との間の差が、目標速度調整率(δt)により求められる前記発電機の出力と実際の速度調整率(δr)により求められる前記発電機の出力との間の差と一致するように参照速度調整率(δref)を設定するステップを含むが、前記発電機の出力は
【数18】
(ここで、NNは前記タービンのロータの定格回転数、Noは前の参照速度調整率の設定時に測定された前記タービンのロータの回転数、Ncは現在のタービンのロータの回転数、PNは前記発電機の定格出力、Poは前の参照速度調整率の設定時に測定された前記発電機の出力、Aはδref、δoref、δt、またはδrである)により計算される、項目9から11のいずれか一項に記載のガスタービン制御方法。
[項目13]
前記実際の速度調整率(δr)および前記目標速度調整率(δt)に基づいて参照速度調整率(δref)を設定するステップは、
【数19】
の式を用いて計算された値を参照速度調整率(δref)に設定するステップを含む、項目12に記載のガスタービン制御方法。
【符号の説明】
【0065】
10:圧縮機
20:タービン
30:燃焼器
40:軸
50:発電機
100:制御装置
110:センシング部
120:速度調整率設定部
130:燃料量制御部