【実施例】
【0018】
(実施例1)
Ni上に酸化タンタルを0.5〜0.8μmの厚みでコーティングした陽極板(表面粗さRa:4μm、64×64×2mm)を用いて下記に示すアルカリ性亜鉛ニッケル合金めっき浴を使用し(500mL)、500Ah/L通電により亜鉛ニッケル合金めっきを実施した。コーティング皮膜中の空孔径は、0.1〜1μmであり、めっき浴の汲み出しは2mL/Ahとした。陰極電流密度は4A/dm
2であり、陽極電流密度は9.8A/dm
2であり、めっき浴温は25℃である。めっき浴は、冷却して25℃を維持した。陰極には鉄板を使用した。尚、通電中16Ah/L毎に陰極の鉄板を交換した。めっき浴の亜鉛イオン濃度は、金属亜鉛を浸漬溶解させることにより一定に維持した。めっき浴のニッケルイオン濃度は、ニッケル補給剤のIZ−250YNi(ディップソール社製)を補給して一定に維持した。めっき浴の苛性ソーダ濃度は、定期的に分析し濃度が一定になるように補給した。光沢剤は、ポリアミン系のIZ−250YR1(ディップソール社製)及び含窒素複素環4級アンモニウム塩系のIZ−250YR2(ディップソール社製)を其々補給率15mL/kAh及び15mL/kAhで補給した。アミン系キレート剤IZ−250YBは、IZ−250YBの補給率80mL/kAhで補給した。250Ah/L通電毎に陰極液中のアミン系キレート剤濃度、シュウ酸濃度、及びシアン濃度を分析した。また、沈殿物の有無を目視で確認した。これらの結果を表1に示す。さらに、500Ah/L通電時にキレート剤濃度を初期濃度に合わせ、20cmの鉄板を陰極とするロングセルを用いて、ハルセル試験に準ずるめっき試験を行い、めっき外観、膜厚分布、及びNi共析率分布を測定した。これらの結果をそれぞれ
図1、
図6及び
図7に示す。なお、ハルセル試験に準ずるめっき試験の条件は、4A−20分、25℃である。また、アノードの表面を観察し、皮膜剥離の有無を確認した。結果を表1に示す。
めっき液組成:
Znイオン濃度 8g/L(Znイオン源はNa
2[Zn(OH)
4])
Niイオン濃度 1.6g/L(Niイオン源はNiSO
4・6H
2O)
苛性ソーダ濃度 130g/L
アミン系キレート剤(アルキレンアミンのエチレンオキサイド付加物)IZ−250YB(ディップソール社製) 60g/L
光沢剤IZ−250YR1(ディップソール社製) 0.6mL/L(ポリアミン0.1g/L)
光沢剤IZ−250YR2(ディップソール社製) 0.5mL/L(ニコチン酸の4級アンモニウム塩0.2g/L)
【0019】
(実施例2)
Fe上に酸化タンタルを0.5〜0.8μmの厚みでコーティングした陽極板(表面粗さRa:4μm、64×64×2mm)を用いて下記に示すアルカリ性亜鉛ニッケル合金めっき浴を使用し(500mL)、500Ah/L通電により亜鉛ニッケル合金めっきを実施した。コーティング皮膜中の空孔径は、0.1〜1μmであり、めっき浴の汲み出しは2mL/Ahとした。陰極電流密度は4A/dm
2であり、陽極電流密度は9.8A/dm
2であり、めっき浴温は25℃である。めっき浴は、冷却して25℃を維持した。陰極には鉄板を使用した。尚、通電中16Ah/L毎に陰極の鉄板を交換した。めっき浴の亜鉛イオン濃度は、金属亜鉛を浸漬溶解させることにより一定に維持した。めっき浴のニッケルイオン濃度は、ニッケル補給剤のIZ−250YNi(ディップソール社製)を補給して一定に維持した。めっき浴の苛性ソーダ濃度は、定期的に分析し濃度が一定になるように補給した。光沢剤は、ポリアミン系のIZ−250YR1(ディップソール社製)及び含窒素複素環4級アンモニウム塩系のIZ−250YR2(ディップソール社製)を其々補給率15mL/kAh及び15mL/kAhで補給した。アミン系キレート剤IZ−250YBは、IZ−250YBの補給率80mL/kAhで補給した。250Ah/L通電毎に陰極液中のアミン系キレート剤濃度、シュウ酸濃度、及びシアン濃度を分析した。また、沈殿物の有無を目視で確認した。これらの結果を表1に示す。さらに、500Ah/L通電時にキレート剤濃度を初期濃度に合わせ、20cmの鉄板を陰極とするロングセルを用いて、ハルセル試験に準ずるめっき試験を行い、めっき外観、膜厚分布、及びNi共析率分布を測定した。これらの結果をそれぞれ
図2、
図8及び
図9に示す。なお、ハルセル試験に準ずるめっき試験の条件は、4A−20分、25℃である。また、アノードの表面を観察し、皮膜剥離の有無を確認した。結果を表1に示す。
めっき液組成:
Znイオン濃度 8g/L(Znイオン源はNa
2[Zn(OH)
4])
Niイオン濃度 1.6g/L(Niイオン源はNiSO
4・6H
2O)
苛性ソーダ濃度 130g/L
アミン系キレート剤(アルキレンアミンのエチレンオキサイド付加物)IZ−250YB(ディップソール社製) 60g/L
光沢剤IZ−250YR1(ディップソール社製) 0.6mL/L(ポリアミン0.1g/L)
光沢剤IZ−250YR2(ディップソール社製) 0.5mL/L(ニコチン酸の4級アンモニウム塩0.2g/L)
【0020】
(実施例3)
Ni上に酸化タンタルを0.5〜0.8μmの厚みでコーティングした陽極板(表面粗さRa:4μm、64×64×2mm)を用いて下記に示すアルカリ性亜鉛ニッケル合金めっき浴を使用し(500mL)、500Ah/L通電により亜鉛ニッケル合金めっきを実施した。コーティング皮膜中の空孔径は、0.1〜1μmであり、めっき浴の汲み出しは2mL/Ahとした。陰極電流密度は2A/dm
2であり、陽極電流密度は4.9A/dm
2であり、めっき浴温は25℃である。めっき浴は、冷却して25℃を維持した。陰極には鉄板を使用した。尚、通電中16Ah/L毎に陰極の鉄板を交換した。めっき浴の亜鉛イオン濃度は、金属亜鉛を浸漬溶解させることにより一定に維持した。めっき浴のニッケルイオン濃度は、ニッケル補給剤のIZ−250YNi(ディップソール社製)を補給して一定に維持した。めっき浴の苛性ソーダ濃度は、定期的に分析し濃度が一定になるように補給した。光沢剤は、ポリアミン系のIZ−250YR1(ディップソール社製)及び含窒素複素環4級アンモニウム塩系のIZ−250YR2(ディップソール社製)を其々補給率15mL/kAh及び15mL/kAhで補給した。アミン系キレート剤テトラエチレンペンタミンは、補給率40mL/kAhで補給した。250Ah/L通電毎に陰極液中のアミン系キレート剤濃度及びシアン濃度を分析した。また、沈殿物の有無を目視で確認した。これらの結果を表2に示す。さらに、500Ah/L通電時にキレート剤濃度を初期濃度に合わせ、20cmの鉄板を陰極とするロングセルを用いて、ハルセル試験に準ずるめっき試験を行い、めっき外観、膜厚分布、及びNi共析率分布を測定した。これらの結果をそれぞれ
図3、
図10及び
図11に示す。なお、ハルセル試験に準ずるめっき試験の条件は、2A−20分、25℃である。
めっき液組成:
Znイオン濃度 8g/L(Znイオン源はNa
2[Zn(OH)
4])
Niイオン濃度 1.2g/L(Niイオン源はNiSO
4・6H
2O)
苛性ソーダ濃度 130g/L
アミン系キレート剤(テトラエチレンペンタミン) 30g/L
光沢剤IZ−250YR1(ディップソール社製) 0.6mL/L(ポリアミン0.1g/L)
光沢剤IZ−250YR2(ディップソール社製) 0.5mL/L(ニコチン酸の4級アンモニウム塩0.2g/L)
【0021】
(比較例1)
下記に示すアルカリ性亜鉛ニッケル合金めっき浴を使用して(500mL)、500Ah/L通電により亜鉛ニッケル合金めっきを実施した。めっき浴の汲み出しは2mL/Ahとした。陰極電流密度は4A/dm
2であり、陽極電流密度は9.8A/dm
2であり、めっき浴温は25℃である。めっき液は、冷却して25℃を維持した。陰極には鉄板を使用し、陽極にはニッケル板を使用した。尚、通電中16Ah/L毎に陰極の鉄板を交換した。めっき浴の亜鉛イオン濃度は、金属亜鉛を浸漬溶解させることにより一定に維持した。めっき浴のニッケルイオン濃度は、ニッケル補給剤のIZ−250YNi(ディップソール社製)を補給して一定に維持した。めっき浴の苛性ソーダ濃度は、定期的に分析し濃度が一定になるように補給した。光沢剤は、ポリアミン系のIZ−250YR1(ディップソール社製)及び含窒素複素環4級アンモニウム塩系のIZ−250YR2(ディップソール社製)を其々補給率15mL/kAh及び15mL/kAhで補給した。アミン系キレート剤IZ−250YBは、IZ−250YBの補給率80mL/kAhで補給した。250Ah/L通電毎にアミン系キレート剤濃度、シュウ酸濃度、及びシアン濃度を分析した。また、沈殿物の有無を目視で確認した。これらの結果を表1に示す。さらに、500Ah/L通電時にキレート剤濃度を初期濃度に合わせ、20cmの鉄板を陰極とするロングセルを用いて、ハルセル試験に準ずるめっき試験を行い、めっき外観、膜厚分布、及びNi共析率分布を測定した。これらの結果をそれぞれ
図4、
図12及び
図13に示す。なお、ハルセル試験に準ずるめっき試験の条件は、4A−20分、25℃である。
めっき液組成:
Znイオン濃度 8g/L(Znイオン源はNa
2[Zn(OH)
4])
Niイオン濃度 1.6g/L(Niイオン源はNiSO
4・6H
2O)
苛性ソーダ濃度 130g/L
アミン系キレート剤(アルキレンアミンのエチレンオキサイド付加物)IZ−250YB(ディップソール社製) 60g/L
光沢剤IZ−250YR1(ディップソール社製) 0.6mL/L(ポリアミン0.1g/L)
光沢剤IZ−250YR2(ディップソール社製) 0.5mL/L(ニコチン酸の4級アンモニウム塩0.2g/L)
【0022】
(比較例2)
Pt/Ti上に酸化イリジウムを0.5〜0.8μmの厚みでコーティングした陽極板(表面粗さRa:4μm、64×64×2mm)を用いて下記に示すアルカリ性亜鉛ニッケル合金めっき浴を使用し(500mL)、500Ah/L通電により亜鉛ニッケル合金めっきを実施した。コーティング皮膜中の空孔径は、0.1〜1μmであり、めっき浴の汲み出しは2mL/Ahとした。陰極電流密度は4A/dm
2であり、陽極電流密度は9.8A/dm
2であり、めっき浴温は25℃である。めっき浴は、冷却して25℃を維持した。陰極には鉄板を使用した。尚、通電中16Ah/L毎に陰極の鉄板を交換した。めっき浴の亜鉛イオン濃度は、金属亜鉛を浸漬溶解させることにより一定に維持した。めっき浴のニッケルイオン濃度は、ニッケル補給剤のIZ−250YNi(ディップソール社製)を補給して一定に維持した。めっき浴の苛性ソーダ濃度は、定期的に分析し濃度が一定になるように補給した。光沢剤は、ポリアミン系のIZ−250YR1(ディップソール社製)及び含窒素複素環4級アンモニウム塩系のIZ−250YR2(ディップソール社製)を其々補給率15mL/kAh及び15mL/kAhで補給した。アミン系キレート剤IZ−250YBは、IZ−250YBの補給率80mL/kAhで補給した。250Ah/L通電毎に陰極液中のアミン系キレート剤濃度、シュウ酸濃度、及びシアン濃度を分析した。また、沈殿物の有無を目視で確認した。これらの結果を表1に示す。さらに、500Ah/L通電時にキレート剤濃度を初期濃度に合わせ、20cmの鉄板を陰極とするロングセルを用いて、ハルセル試験に準ずるめっき試験を行い、めっき外観、膜厚分布、及びNi共析率分布を測定した。これらの結果をそれぞれ
図5、
図14及び
図15に示す。なお、ハルセル試験に準ずるめっき試験の条件は、4A−20分、25℃である。また、アノードの表面を観察し、皮膜剥離の有無を確認した。結果を表1に示す。
めっき液組成:
Znイオン濃度 8g/L(Znイオン源はNa
2[Zn(OH)
4])
Niイオン濃度 1.6g/L(Niイオン源はNiSO
4・6H
2O)
苛性ソーダ濃度 130g/L
アミン系キレート剤(アルキレンアミンのエチレンオキサイド付加物)IZ−250YB(ディップソール社製) 60g/L
光沢剤IZ−250YR1(ディップソール社製) 0.6mL/L(ポリアミン0.1g/L)
光沢剤IZ−250YR2(ディップソール社製) 0.5mL/L(ニコチン酸の4級アンモニウム塩0.2g/L)
【0023】
表1 アミン系キレート剤濃度、シュウ酸濃度、及びシアン濃度の推移、並びに沈殿及び皮膜剥離の有無
【表1】
【0024】
表2 アミン系キレート剤濃度及びシアン濃度の推移、並びに沈殿の有無
【表2】
実施例1〜3は、比較例1及び2に比べ以下の効果が認められる。
(1)アミン系キレート剤の分解が抑制されている。
(2)めっき外観の低下が抑制される。
(3)めっき速度の低下が抑制される。
(4)Ni共析率の低下が抑制される。
本発明により、アルカリ性亜鉛又は亜鉛合金めっき浴、特にアルカリ性亜鉛ニッケル合金めっき浴の長寿命化が可能となった。また、アルカリ性亜鉛又は亜鉛合金めっき浴、特にアルカリ性亜鉛ニッケル合金めっき浴の長寿命化により、めっき品質の安定化、めっき時間の短縮化、排水処理の負担軽減化が可能となった。