(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のボイラシステム1の好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、
図1を参照して、第1実施形態のボイラシステム1の全体構成について説明する。尚、以下の説明において「ライン」とは、流路、経路、管路等の総称である。
【0013】
第1実施形態のボイラシステム1は、複数種類の燃料ガスを混合して燃焼させることが可能なボイラシステムであり、特に、プラント設備等において副産物として発生した水素ガスを主燃料として使用可能なボイラシステムである。このボイラシステム1は、燃料供給装置2と、貫流ボイラ3と、制御装置4と、を備える。
【0014】
貫流ボイラ3は、燃料供給装置2から供給された気体燃料を、送風機(図示せず)から供給される燃焼用空気と混合してバーナにて燃焼させ、缶体内の水を加熱することで蒸気を発生させる。貫流ボイラ3は、図示しない負荷機器と接続され、発生させた蒸気を負荷機器に対して供給する。第1実施形態では、貫流ボイラ3は、気体燃焼と燃焼用空気とを予め混合せずにバーナにおいて混合して燃焼させる先混合式バーナを備える。
【0015】
燃料供給装置2は、水素ガスライン21と、副燃料ガスライン22と、混合装置23と、混合ガスライン24と、バイパスライン25と、混合ガス分岐ライン26と、を備える。
水素ガスライン21は、貫流ボイラ3に対して主燃料としての水素ガスを供給する。水素ガスライン21の上流側は、水素ガス供給装置100に接続される。水素ガス供給装置100としては、例えば、ボイラシステム1が設置されたプラント内で発生した水素ガスを貯蔵する貯蔵設備が挙げられる。
【0016】
水素ガスライン21には、遮断弁211,212と、水素ガス流量調整弁213と、圧力センサ214と、が配置される。遮断弁211,212は電磁弁により構成され、水素ガスライン21を開放又は閉止する。遮断弁211,212を開放することで水素ガス供給装置100から貫流ボイラ3に水素ガスが供給され、閉止することで水素ガス供給装置100から貫流ボイラ3への水素ガスの供給が停止される。また、遮断弁211,212は、水素ガス供給装置100への水素ガスの逆流を防止する機能も有する。
水素ガス流量調整弁213は、水素ガスライン21を流れる水素ガスの圧力を調整することで、水素ガスライン21における水素ガスの流量を調整する。圧力センサ214は、水素ガスライン21における水素ガス流量調整弁213の下流側の水素ガスの圧力を検出する。
【0017】
副燃料ガスライン22は、貫流ボイラ3に対して副燃料ガスを供給する。副燃料ガスとしては、水素ガスよりも燃焼速度が遅くかつ酸素を含まないガスが用いられる。副燃料ガスとしては、水素ガスとの混合ガスとしての燃焼速度を好適に保つ観点から、燃焼速度が20cm/s〜60cm/sの炭化水素ガスを用いることが好ましい。具体的には、副燃料ガスとしては、都市ガス(LNG)やプロパンガス(LPG)を用いることができる。
【0018】
副燃料ガスライン22には、遮断弁221,222と、副燃料ガス流量調整弁223と、圧力センサ224が配置される。遮断弁221,222は電磁弁により構成され、副燃料ガスライン22を開放又は閉止する。遮断弁221,222を開放することで貫流ボイラ3に副燃料ガスが供給され、閉止することで貫流ボイラ3への副燃料ガスの供給が停止される。また、遮断弁221,222は、副燃料ガスの逆流を防止する機能も有する。
副燃料ガス流量調整弁223は、副燃料ガスライン22を流れる副燃料ガスの圧力を調整することで、副燃料ガスライン22における副燃料ガスの流量を調整する。圧力センサ224は、副燃料ガスライン22における副燃料ガス流量調整弁223の下流側の副燃料ガスの圧力を検出する。
【0019】
混合装置23は、水素ガスライン21の下流側及び副燃料ガスライン22の下流側に接続され、水素ガスと副燃料ガスとを混合する。混合装置23は、例えば、エゼクタにより構成できる。これにより、一方のガスが通過するときに発生する負圧を利用して他方のガスを吸引し、水素ガスと副燃料ガスとを混合できる。特に、副燃料ガスとして都市ガスを利用する場合には、都市ガスの供給圧力を利用して水素ガスを吸引できる。
【0020】
混合ガスライン24は、混合装置23と貫流ボイラ3とを接続し、混合装置23で混合された水素ガスと副燃料ガスとの混合ガスを気体燃料としてバーナに供給する。この混合ガスライン24には、オリフィス241と、排出弁242と、圧力センサ243と、が配置される。
【0021】
オリフィス241は、混合ガスライン24を流通する混合ガスを減圧し、混合ガスライン24を流通する混合ガスの流量を制限(調整)する。
排出弁242は、モータバルブにより構成される。この排出弁242を開放することで、混合ガスライン24を流通する混合ガスは外部空間に排出される。
圧力センサ243は、混合ガスライン24におけるオリフィス241の上流側に配置される。圧力センサ243は、混合ガスライン24におけるオリフィス241の上流側の混合ガスの圧力を検出する。
【0022】
バイパスライン25は、副燃料ガスライン22と混合ガスライン24とを接続する。バイパスライン25は、副燃料ガスライン22を流通する副燃料ガスを、混合装置23を介さずに混合ガスライン24にバイパスさせる。バイパスライン25には、バイパス開閉弁251が配置される。バイパス開閉弁251は電磁弁により構成され、バイパスライン25を開閉させる。
【0023】
混合ガス分岐ライン26は、混合ガスライン24におけるオリフィス241の上流側と下流側とを接続する。混合ガス分岐ライン26には、分岐ライン開閉弁261が配置される。分岐ライン開閉弁261は電磁弁により構成され、混合ガス分岐ライン26を開閉させる。
【0024】
制御装置4は、貫流ボイラ3、圧力センサ214,224,243及び各種弁と電気的に接続され、貫流ボイラ3の燃焼状態及び各種弁の開閉又は開度を制御する。
具体的には、制御装置4は、貫流ボイラ3から発生した蒸気を貯留する図示しない蒸気ヘッダの内部の圧力に基づいて貫流ボイラ3の燃焼状態を制御する。即ち、蒸気ヘッダの内部の圧力が所定値よりも低いとより多くの蒸気を発生するように貫流ボイラ3の燃焼状態を制御し、蒸気ヘッダの内部の圧力が所定値よりも高いとより少ない蒸気を発生するように貫流ボイラ3の燃焼状態を制御する。
【0025】
また、第1実施形態のボイラシステム1は、水素ガスを主燃料とし、この水素ガスに副燃料ガスとしてのLNGを混合した混合ガスを気体燃料としてバーナで燃焼させる。ここで、本実施形態では、LNGやLPG等の一般的な炭化水素ガスを燃料ガスとして用いるために設計されたバーナを備える貫流ボイラ3に対して、水素ガスを主体とした気体燃料を供給して好適に燃焼させるために、制御装置4は、副燃料ガスであるLNGの供給量(体積流量)がバーナに供給される気体燃料の20%以上となるように制御する。即ち、水素ガスは、LNGに比して燃焼速度が早いため、気体燃料中に含まれる水素ガスの割合が増加しすぎると、バーナよりも上流側に火炎が噴出する逆火が生じやすくなってしまう。また、水素ガスは、LNGに比して単位質量当たりの発熱量が大きいため、バーナの耐久性が低下してしまう。
【0026】
そこで、制御装置4により、LNGの供給量がバーナに供給される気体燃料の20%以上となるように制御することで、水素ガスを主体とした気体燃料全体としての燃焼速度が早くなりすぎることを防げ、また、発熱量が大きくなりすぎることを防げる。即ち、第1実施形態のボイラシステム1によれば、気体燃料中に含まれる水素ガスの割合を、80%まで増やして貫流ボイラ3を燃焼させられるので、プラント設備において発生した水素ガスをより有効に利用できる。
【0027】
具体的には、制御装置4は、蒸気ヘッダの内部の圧力に基いて算出された貫流ボイラ3の燃焼指示量(燃焼率)応じて、水素ガス流量調整弁213の開度及び副燃料ガス流量調整弁223の開度を調整し、水素ガスの流量及びLNGの流量を制御すると共に、LNGの流量が混合ガスの流量の20%を下回らないように制御する。
第1実施形態では、制御装置4は、圧力センサ214及び圧力センサ224の検出圧力に基いて、水素ガス流量調整弁213の開度及び副燃料ガス流量調整弁223の開度を制御する。また、制御装置4は、圧力センサ243の検出圧力が燃焼状態に応じた所定の値となるように、水素ガス流量調整弁213の開度及び副燃料ガス流量調整弁223の開度を制御する。
【0028】
また、制御装置4は、貫流ボイラ3の燃焼が停止している状態では、遮断弁211,212及び遮断弁221,222を閉止することで、貫流ボイラ3に混合ガスが供給されないようにし、また、排出弁242を開放することで、混合ガスライン24に滞留する混合ガスを外部に排出する。
【0029】
また、第1実施形態のボイラシステム1は、プラント設備において水素ガスが生成されない場合には、LNGのみを気体燃料として貫流ボイラ3を燃焼させるための構成として、バイパスライン25、バイパス開閉弁251、混合ガス分岐ライン26、及び分岐ライン開閉弁261を備える。
【0030】
次に、第1実施形態のボイラシステム1の動作について説明する。
第1実施形態のボイラシステム1において、水素ガスとLNGとの混合ガスを気体燃料として貫流ボイラ3を燃焼させる場合、制御装置4は、まず、バイパス開閉弁251を閉止させ、分岐ライン開閉弁261を開放させる。
【0031】
次いで、制御装置4は、遮断弁211,212及び遮断弁221,222を開放させる。また、制御装置4は、圧力センサ214により検出される水素ガスの圧力及び圧力センサ224により検出されるLNGの圧力が、それぞれ、貫流ボイラ3の燃焼状態に応じて設定された設定圧力となるように、水素ガス流量調整弁213の開度及び副燃料ガス流量調整弁223の開度を調整する。
【0032】
これにより、水素ガスライン21から供給される水素ガスと副燃料ガスライン22から供給されるLNGが混合装置23において混合され、この混合された混合ガスが混合ガスライン24及び混合ガス分岐ライン26を流通して貫流ボイラ3に供給される。貫流ボイラ3では、混合ガスと燃焼用空気とが先混合式バーナにおいて混合された後燃焼される。
【0033】
一方、LNGのみを気体燃料として貫流ボイラ3を燃焼させる場合、制御装置4は、まず、バイパス開閉弁251を開放させ、分岐ライン開閉弁261を閉止させる。
【0034】
次いで、制御装置4は、遮断弁211,212を閉止した状態で、遮断弁221,222を開放させる。また、制御装置4は、圧力センサ224により検出されるLNGの圧力が、貫流ボイラ3の燃焼状態に応じて設定された設定圧力となるように、副燃料ガス流量調整弁223の開度を調整する。
【0035】
これにより、副燃料ガスライン22から供給されるLNGは、バイパスライン25及び混合ガスライン24を流通して貫流ボイラ3に供給される。この場合、水素ガスライン21からは水素は供給されない。そして、貫流ボイラ3では、LNGと燃焼用空気とが先混合式バーナにおいて混合された後燃焼される。
【0036】
また、貫流ボイラ3の燃焼を停止させた場合、制御装置4は、排出弁242を開放し混合ガスライン24及び混合ガス分岐ライン26から混合ガスを排出する。これにより、混合ガスライン24及び混合ガス分岐ライン26の内部で混合ガスの圧力が上昇することがなく、結果、混合ガスが逆流することを防げる。よって、水素ガスを混合した場合であっても安全にボイラシステム1を運用することができる。
【0037】
以上説明した第1実施形態のボイラシステム1によれば、以下のような効果を奏する。
【0038】
(1)水素ガスを含む混合ガスを気体燃料として貫流ボイラ3を燃料させる場合、特に、水素ガスを主燃料ガスとして用いることを考えた場合、水素ガス特有の性質に起因する種々の課題が生じる。そこで、ボイラシステム1を、水素ガスと副燃料ガスとの混合ガスを貫流ボイラ3に供給する燃料供給装置2を含んで構成し、この燃料供給装置2を、副燃料ガスの供給量を気体燃料の20%以上となるように制御する制御装置4を含んで構成した。これにより、水素ガスを主体とした気体燃料全体としての燃焼速度が早くなりすぎることを防げ、また、発熱量が大きくなりすぎることを防げる。よって、LNGやLPG等を燃料とする既存の貫流ボイラ3に対して水素ガスを主体とした気体燃料を供給した場合であっても、この貫流ボイラ3を安定して燃焼させられる。また、気体燃料中に含まれる水素ガスの割合を、80%まで増やして貫流ボイラ3を燃焼させられるので、プラント設備において発生した水素ガスをより有効かつ安全に利用できる。
【0039】
(2)バーナを、先混合式バーナにより構成した。これにより、バーナよりも上流側において水素ガスが燃焼用空気と混合されることを防げるので、逆火の発生を抑制できる。
【0040】
(3)貫流ボイラ3の燃焼を停止させた場合、制御装置4に、排出弁242を開放させ、混合ガスライン24及び混合ガス分岐ライン26から混合ガスを排出させた。これにより、混合ガスライン24及び混合ガス分岐ライン26の内部で混合ガスの圧力が上昇することがなく、結果、混合ガスが逆流することを防げる。よって、水素ガスを混合した場合であっても安全にボイラシステム1を運用することができる。
【0041】
(4)混合ガスを気体燃料として用いる場合と、LNGを単独で気体燃料として用いる場合とでは、所定の燃焼状態において好適な流量及び比重がことなる。そこで、ボイラシステム1を、バイパスライン25と、バイパス開閉弁251と、混合ガス分岐ライン26と、分岐ライン開閉弁261と、を含んで構成した。これにより、混合ガスを気体燃料として用いる場合には、バイパスライン25を閉止して混合ガス分岐ライン26を開放し、また、LNGを気体燃料として用いる場合には、バイパスライン25を開放して混合ガス分岐ライン26を閉止することで、気体燃料の種別に応じて貫流ボイラ3に供給される気体燃料の流量を調整できる。
【0042】
次に、本発明の第2実施形態に係るボイラシステム1Aについて、
図2を参照しながら説明する。尚、第2実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
第2実施形態のボイラシステム1Aは、燃料供給装置2Aが、副燃料ガスライン22とは独立して貫流ボイラ3に副燃料ガスを供給する第2副燃料ガスライン27を備える点等で、第1実施形態と異なる。
【0043】
第2副燃料ガスライン27は、副燃料ガスライン22とは独立して設けられ、混合ガスライン24に接続される。第2副燃料ガスライン27には、遮断弁271,272と、流量調整部材としてのガバナ273と、オリフィス274と、三方弁275と、が配置される。
【0044】
遮断弁271,272は、電磁弁により構成され、第2副燃料ガスライン27を開放又は閉止する。遮断弁271,272を開放することで貫流ボイラ3に副燃料ガスが供給され、閉止することで貫流ボイラ3への副燃料ガスの供給が停止される。また、遮断弁271,272は、副燃料ガスの逆流を防止する機能も有する。
ガバナ273は、第2副燃料ガスライン27を流れる副燃料ガスの圧力が所定の圧力となるように調整する。オリフィス274は、第2副燃料ガスライン27を流通するLNGを減圧し、第2副燃料ガスライン27を流通するLNGの流量を制限(調整)する。
【0045】
三方弁275は、混合ガスライン24と第2副燃料ガスライン27との接続部に配置される。三方弁275は、第2副燃料ガスライン27から混合ガスライン24における三方弁275の下流側にLNGを流通させる状態と、混合ガスライン24における三方弁275の上流側から下流側に混合ガスを流通させる状態と、を切り替える。
【0046】
また、ボイラシステム1Aは、第2副燃料ガスライン27におけるオリフィス274の上流側と下流側とを接続する分岐ライン28と、この分岐ライン28に配置された開閉弁281と、を備える。
【0047】
第2実施形態のボイラシステム1Aでは、水素ガスとLNGとの混合ガスを気体燃料として貫流ボイラ3を燃焼させる場合、制御装置4は、遮断弁271,272を閉止させ、遮断弁211,212及び遮断弁221,222を開放させる。また、制御装置4は、圧力センサ214により検出される水素ガスの圧力及び圧力センサ224により検出されるLNGの圧力が、それぞれ、貫流ボイラ3の燃焼状態に応じて設定された設定圧力となるように、水素ガス流量調整弁213の開度及び副燃料ガス流量調整弁223の開度を調整する。
【0048】
これにより、水素ガスライン21から供給される水素ガスと副燃料ガスライン22から供給されるLNGが混合装置23において混合され、この混合された混合ガスが混合ガスライン24及び混合ガス分岐ライン26を流通して貫流ボイラ3に供給される。貫流ボイラ3では、混合ガスと燃焼用空気とが先混合式バーナにおいて混合された後燃焼される。
【0049】
一方、LNGのみを気体燃料として貫流ボイラ3を燃焼させる場合、制御装置4は、遮断弁271,272を開放させ、遮断弁211,212及び遮断弁221,222を閉止させる。
【0050】
これにより、第2副燃料ガスライン27から供給されるLNGは、混合ガスライン24を流通して貫流ボイラ3に供給される。この場合、水素ガスライン21からは水素は供給されず、また、副燃料ガスライン22からはLNGは供給されない。そして、貫流ボイラ3では、LNGと燃焼用空気とが先混合式バーナにおいて混合された後燃焼される。
【0051】
第2実施形態のボイラシステム1Aによれば、上述した(1)〜(3)の効果を奏する。
【0052】
以上、本発明のボイラシステムの好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0053】
例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、混合装置23をエゼクタにより構成したが、これに限らない。即ち、混合装置を複数の流量調整弁等により構成してもよい。