(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の超音波式流量計測装置においては、平面センサーが配管内に超音波を効率良く入射させることが難しく、流量計測を精度良く行うことが難しかった。また、配管径や厚さ等といった計測条件が極めて限定されているため、計測対象が限られてしまい、特に配管径が小さいものに対する汎用性において改善すべき点があった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、汎用性に優れ、異なる計測条件下においても、配管内を流れる気体の流量を精度良く計測できる流量計測装置および流量計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に従えば
、配管の内部を流れる気体の流量を計測する流量計測装置であって、前記配管に接触して設置される超音波トランスデューサと、前記超音波トランスデューサによる超音波の受信結果に基づいて、前記気体の流量を算出する流量算出部と、前記配管と前記超音波トランスデューサとの間に着脱可能なスペーサー部材とを備え、前記超音波トランスデューサは、前記配管の内部に向けて前記超音波を発振する超音波発振部と、前記超音波発振部が設けられる側の反対側の前記配管上に設置され、前記超音波を受信する超音波受信部とを含み、少なくとも前記超音波発振部が前記超音波を前記配管の中心に収束させる収束手段を有し、前記スペーサー部材は、前記配管の外面の曲率と同等の内径を有するとともに、
前記超音波発振部の前記超音波の発振面の曲率と同等の外径を有することを特徴とする流量計測装置が提供される。
【0007】
また、上記第1態様においては、前記収束手段は、前記超音波の発振面が前記配管の外面に対応した曲率を有することで構成されてもよい。
【0008】
また、上記第1態様においては、前記超音波受信部が第2の収束手段を有し、前記第2の収束手段は、前記超音波の受信面が前記配管の外面に対応した曲率を有することで構成されてもよい。
【0009】
また、上記第1態様においては、前記配管に設けられた抑振材をさらに備える構成としてもよい。
【0010】
また、上記第1態様においては、前記配管と前記超音波トランスデューサとの間に着脱可能なスペーサー部材をさらに備え、前記スペーサー部材は、前記配管の外面の曲率と同等の内径を有するとともに、前記発振面の曲率と同等の外径を有する構成としてもよい。
【0011】
また、上記第1態様においては、前記配管の周方向における複数個所に設置された複数の超音波トランスデューサの各計測結果に基づいて、前記配管の内部における前記気体の流速分布の偏りを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて、複数の前記超音波トランスデューサの中から計測に用いるものを選択する選択部と、をさらに備える構成としてもよい。
【0012】
また、上記第1態様においては、前記超音波トランスデューサは、前記超音波の中心周波数が100KHz〜1MHzに設定されている構成としてもよい。
【0013】
また、上記第1態様においては、気体の流量を、タフト法を用いて計測する構成としてもよい。
【0014】
本発明の第2態様に従えば、配管の内部を流れる気体の流量を計測する流量計測方法であって、前記配管の内部に向けて超音波を発振する超音波発振部と、前記超音波発振部が設けられる側の反対側の前記配管上に設置され、前記超音波発振部が発振した前記超音波を受信する超音波受信部とを含み、少なくとも前記超音波発振部が前記超音波を前記配管の中心に収束させる収束手段を有する超音波トランスデューサを用いて、該配管の内部に向けて発振した超音波を受信する受信ステップと、前記受信ステップで受信した結果に基づいて、前記気体の流量を算出する流量算出ステップと、を備え、前記受信ステップにおいて、
前記配管と前記超音波トランスデューサとの間に着脱可能に設けられ、前記配管の外面の曲率と同等の内径を有するとともに、前記超音波発振部の前記超音波の発振面の曲率と同等の外径を有するスペーサー部材を用いる流量計測方法が提供される。
【0015】
また、上記第2態様においては、前記受信ステップにおいて、前記超音波トランスデューサとして、前記収束手段が前記超音波の発振面が前記配管の外面に対応した曲率を有することで構成されたものを用いてもよい。
【0016】
また、上記第2態様においては、前記受信ステップにおいて、前記超音波トランスデューサとして、前記超音波受信部が第2の集光手段を有したものを用い、前記第2の収束手段は、前記超音波の受信面が前記配管の外面に対応した曲率を有することで構成されてもよい。
【0017】
また、上記第2態様においては、前記受信ステップにおいて、前記配管に抑振材を配置した状態とする構成としてもよい。
【0018】
また、上記第2態様においては、前記受信ステップに先立ち、前記配管の周方向の複数個所で前記気体の流量をそれぞれ計測した結果に基づいて前記配管の内部における前記気体の流速分布の偏りを判定する判定ステップと、前記判定ステップの結果に基づいて、前記受信ステップで使用する前記超音波トランスデューサを選択する選択ステップと、を備える構成としてもよい。
【0019】
また、上記第2態様においては、前記超音波トランスデューサとして、前記超音波の中心周波数が100KHz〜1MHzに設定されたものを用いる構成としてもよい。
【0020】
また、上記第2態様においては、前記気体の流量を、タフト法を用いて計測する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、汎用性に優れ、異なる計測条件の配管内を流れる気体の流量を精度良く計測することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る流量計測装置は、例えば、ボイラーなどの蒸気製造装置と負荷設備との間に配設される配管内を流れる気体(例えば、蒸気)の流量を計測可能なシステムである。また、本実施形態の流量計測装置は、配管内を流れる気体の流量を、超音波を利用して計測する装置である。
【0024】
図1は本実施形態に係る流量計測装置の概略構成を示す図である。
図2は、流量計測装置の要部構成を示す図である。
本実施形態に係る流量計測装置100は、
図1に示すように、超音波トランスデューサ1と、制御部2とを備えている。
図1において、配管10は、蒸気製造装置20(ボイラーなど)と負荷設備30との間に配設されている。蒸気製造装置20からの蒸気が配管10を流れ、負荷設備30に送られる。負荷設備30において、蒸気又は蒸気の熱が利用される。負荷設備30から排出された蒸気はドレンとして回収され、還水槽(不図示)に集約された後、蒸気製造装置20に再度給水される。
【0025】
従来、配管を破壊せずに、該配管の内部を流れる流体(液体)の流量を外側から超音波を用いて計測することは行われていた。以下、配管を破壊することなく、配管表面に設置した超音波トランスデューサにより外側から内部を流れる流体の流量を計測する方式をクランプオン方式と呼ぶことにする。
【0026】
上述のクランプオン方式により配管内の液体の流量を計測する際、超音波の送受信経路は、配管材料(固体)、液体、及び配管材料(固体)となる。この場合、固液界面での音波の反射によるエネルギーロスがみられるものの、概ね良好に超音波信号の送受信が可能である。これは、固体と液体とでは、媒質の音速と密度の積である音響インピーダンスの整合が相対的に良好なためである。すなわち、固体及び液体では、密度比および音速比は数倍から10倍程度となっている。
【0027】
一方、配管の内部を流れる気体(例えば、蒸気)の流量を、超音波を用いて計測する場合、固体および気体における著しい音響インピーダンスの相違を回避する必要がある。そのため、配管内を流れる気体の流量を計測する場合、クランプオン方式による気体の流量計測は困難とされていた。
【0028】
そこで、配管内を流れる気体の流量を計測する場合、超音波発振子および受信子を配管内に設置する方式が一般的であった。この場合、鋼管に貫通穴を設けた専用のフランジ付測定部を挿入する必要があるため、運転中のプラントを一旦停止させ、配管を切断する作業が必要であった。
【0029】
さらに、従来の流量計測に用いられる超音波トランスデューサは、振動面が平面の平面センサーから構成されていた。平面センサーは、配管に対して超音波を入射した際、配管の中心のみを通る音波のみが透過し、配管中心を逸れた音波は配管の曲率により反射又は屈折され、受信することができない。また、平面センサーは、配管を伝搬するガイド波(ノイズ成分)を受信し易かった。そのため、上述のようなクランプオン方式の気体の流量計測に平面センサーを用いると、超音波信号の送受信が良好に行うことができず、流量計測を精度良く行うことが難しかった。
【0030】
本発明者らは、配管内を流れる気体の流量をクランプオン方式で計測する場合、配管内部に超音波を効率良く導くために、超音波トランスデューサ(センサー)の形状が重要であるとの知見を得た。
【0031】
図2は超音波トランスデューサ1の概略構成を示す図であり、
図2(a)は配管10の管軸方向に沿った断面図であり、
図2(b)は配管10の管軸方向から視た断面図である。
図2(a)に示すように、超音波トランスデューサ1は、配管10の表面10aに接触した状態で設置されている(クランプオン方式)。超音波トランスデューサ1は、第1素子21と第2素子22とを含む。第1素子21と第2素子22は、それぞれ超音波の送信受信を行うことができる。
【0032】
本実施形態において、第1素子21は、配管10の内部に向けて超音波Pを発振する超音波発振部として機能する。第2素子22は、第1素子21が発振した超音波Pを受信する超音波受信部として機能する。
【0033】
超音波トランスデューサ1において、その中心周波数は数十KHz〜数MHzであることが好ましい。中心周波数が数百KHz以上であると、環境雑音の影響が低下するという利点がある。中心周波数が数MHz以下であると、超音波の空気中での減衰率が低下するという利点がある。本実施形態では、中心周波数を100KHz〜1MHz、例えば、500KHzとした。
【0034】
本実施形態の第1素子21および第2素子22は、配管10の内部に超音波Pを効率良く導くために、配管10の表面10aに対応した曲率を有した曲面センサーから構成される。
【0035】
具体的に第1素子21は、
図2(b)に示すように、超音波を発振する発振面21aが配管10の表面10aに対応した曲面(断面形状が円)となっている。すなわち、発振面21aは、超音波の発振素子が曲面状に配置されることで、発振した超音波を配管10の中心に収束させることが可能となっている。本実施形態において、発振面21aは配管10の中心に超音波を集束させる収束手段を構成する。
【0036】
また、第2素子22は、
図2(b)に示すように、超音波を受信する受信面22aが配管10の表面10aに対応した曲面(断面形状が円)となっている。よって、配管10の中心に収束した超音波は受信面22aに対して垂直に入射するようになっている。
【0037】
ここで、発振面21aおよび受信面22aが表面10aに対応する態様とは、発振面21aおよび受信面22aが表面10aと直接的に接触する態様に限定されず、例えば、超音波トランスデューサ1と配管10との隙間に楔状のスペーサー部材が配置されることで、発振面21aおよび受信面22aが表面10aに間接的に接触する態様も含む。
【0038】
図3はスペーサー部材の概略構成を示す図である。
図3に示すように、スペーサー部材13は、内径13aが表面10aの曲率に一致し、外径13bが発振面21aおよび受信面22aの曲率に一致している。例えば、内径13aを異ならせた複数のスペーサー部材13を用いれば、1つの超音波トランスデューサ1が表面10aの径が異なる種々の配管10に対して流量計測を行うことが可能となる。よって、配管10の径に依存しない汎用性に優れた流量計測装置100が提供される。
【0039】
また、本実施形態において、配管10は、一部が制振材11で覆われている。制振材11は、超音波トランスデューサ1(第1素子21および第2素子22)の設置部分を除くように配管10の管軸方向に亘って設置されている。
【0040】
制振材11としては、音響減衰効果が高い部材であればよく、例えば、粘土状またはペースト状材料、吸音材(パンチングメタル)、高分子材料等を例示することができる。また、内部に蒸気が流れることで配管10の表面温度が高くなる場合においては、制振材11としては音響減衰効果に加え、耐熱性を備えた材料を用いるのが望ましい。
【0041】
図4は、制御部2の構成を示す模式図である。
図4に示すように、制御部2は、計算装置40に加え、入力装置41、及び表示装置(出力装置)42を有する。計算装置40は、A/D変換器等の変換器43、CPU(演算処理手段)44、及びメモリ45等を有する。流量計測装置100の超音波トランスデューサ1から送られる測定データ(超音波計測結果)が、必要に応じて変換器43等で変換され、CPU44に取り込まれる。また、初期設定値、及び仮データなどが入力装置41などを介して計算装置40に取り込まれる。表示装置42は、入力されたデータに関する情報、及び計算に関する情報などを表示することができる。
【0042】
CPU44は、測定データ、及びメモリ45に記憶された情報に基づき、配管10の内部を流れる蒸気の流量を算出することができる。CPU44は、例えば、超音波トランスデューサ1の受信結果(配管10内の超音波の空間分布)を用いて求めた蒸気の流速と、後述のようにメモリ45に記憶された情報(配管10の断面積、蒸気の密度)から配管10の内部を流れる蒸気の流量を算出する。ここで、蒸気の流量Qは、蒸気の流速Vと、配管10の断面積Aと、蒸気の密度ρ(温度および圧力から算出可能)との積(Q=V×A×ρ)から算出される。すなわち、制御部2は、配管10の内部を流れる蒸気の流量を算出する特許請求の範囲に記載の流量算出部を構成する。
【0043】
本実施形態において、流量計測装置100の流量測定方法としては、タフト法又は時間差法のいずれにも適用可能である。
タフト法とは、超音波を配管断面に平行、すなわち管軸に対して垂直に発振し、対向する位置に設けたセンサーにより音響強度分布の空間移動量から流量を決定する方式である。
時間差法とは、2つの超音波送受信子を配管の管軸に対して斜めに設置し、上流から下流に向かう超音波の往路における到達時間と、下流から上流に向かう超音波の復路における到達時間とを求めることで、気体の速度に応じた到達時間の変化から流量を決定する方式である。
【0044】
本実施形態の流量計測装置100は、例えば、タフト法により流量計測を行う場合を例に挙げる。タフト法は上述のように配管10に対して超音波を垂直に入射させるため、界面での反射、屈折が抑制されることで配管10の内部に超音波を良好に入射するからである。
【0045】
ここで、クランプオン方式で超音波流量計測を行った場合に受信可能となる超音波信号におけるシミュレーションの解析結果を用いて、本実施形態の流量計測装置100の有効性について説明する。
【0046】
本シミュレーションはタフト法により計測を行う場合をモデル化して計算を行った。また、本解析では、ボクセル型有限要素法を用い、管内径、外径、材質等の物性値は流量計測装置100と同一とし、超音波信号は間歇的正弦波を一定周期で送出するバースト波とした。なお、超音波伝播数値計算を行う際、蒸気の音速、密度が重要な物性値となる。蒸気の音速は圧力温度依存性があるため、蒸気を完全気体として飽和蒸気の音速を算出した。
【0047】
図5は従来の平面センサーを用いた場合の解析結果を示した図である。
図6は本実施形態の超音波トランスデューサ1(曲面センサー)を用いた場合の解析結果を示した図である。
図7は超音波トランスデューサ1(曲面センサー)に加え、制振材11を設置した場合(すなわち、本実施形態の流量計測装置100の構成)の解析結果を示した図である。
図5〜7は超音波伝播解析結果(音圧の強度分布)を示す。
【0048】
図5に示されるように、図中左端に設置された超音波発振子からバースト状の加振を行うと横波が励起され、配管(鋼管)に音波が速やかに伝搬するとともに、配管内へと音波が進入する。ここで、気体中及び固体中での音速比は10倍以上であるため、固体中の音波は直ちに反対側の超音波受信子に到達するが、この間に配管内へと音波を照射し、ほぼ円形の音場が管内外に励起され、複雑な音響強度分布となる。そのため、平面センサーを用いた場合は、超音波受信子に到達する波形の信号対雑音比が極めて低く、管内の音波を明確に判別することが難しいことが確認できる。
以上から、クランプオン方式と平面センサーとを組み合わせた従来構造では、流量計測を行うのが非常に困難であると言える。
【0049】
図6からは、配管内の気体(蒸気)に集束超音波が効率的に導入され、同時に配管内を伝搬する音波が著しく弱められた状態で曲面センサー(超音波受信子)に音波が到達することが確認できた。具体的に、受信信号全体の振幅レベルが約1/10以下程度に低下することが確認できた。これは、信号対雑音比の向上にセンサー形状が大きく影響することを示すものである。
以上から、クランプオン方式と曲面センサーとを組み合わせた本発明の構造は流量計測を良好に行うことが可能である。
【0050】
なお、クランプオン方式と曲面センサーとを組み合わせた流量計測方法においても、依然として配管内を伝搬するノイズ成分が存在している。
この場合、
図7に示されるように、制振材を使用することで配管内を伝搬する音波が減少し、曲面センサー(超音波受信子)に到達するノイズ成分を曲面センサーのみを用いた場合に比べ、より減少できることが確認できた。
【0051】
以上の解析結果に鑑みてなされた本実施形態の流量計測装置100によれば、配管を切断しないクランプオン方式(非破壊検査)による計測であっても、超音波トランスデューサ1を構成する第1素子21が配管10の表面10aに対応した曲面センサーから構成されるため、超音波を配管10の中心で収束させることができる。
よって、配管10の曲率に影響される屈折や反射が抑えるので、信号強度を向上させることができる。また、第2素子22が配管10の表面10aに対応した曲面センサーから構成されるため、配管10の中心に収束した超音波を受信面22aに対して垂直に入射させることができる。
また、本実施形態においては、配管10に制振材11が設置されているため、配管10内を伝搬する音波が減少する。そのため、受信される超音波信号の強度が向上して信頼性の高い計測を行うことができる。
【0052】
続いて、本実施形態に係る流量計測装置100による流量計測方法について説明する。
はじめに、制御部2は蒸気製造装置20から配管10を介して負荷設備30への蒸気の供給を開始する。
【0053】
続いて、制御部2は超音波トランスデューサ1を駆動し、第1素子21の発振面21aから配管10の内部に向けて超音波を発振する。本実施形態において、超音波トランスデューサ1を構成する第1素子21が配管10の表面10aに対応した曲率の発振面21aを有するので、超音波を配管10の中心で収束させることができる。よって、配管10の曲率に影響される屈折や反射が抑えることができる。
【0054】
配管10の中心で収束された超音波は、配管10の対向面側に設置された第2素子22により受信される(受信ステップ)。本実施形態において、超音波トランスデューサ1を構成する第2素子22が配管10の表面10aに対応した曲率の受信面22aを有するので、配管10の中心に収束した超音波を受信面22aに対して垂直に入射させることができる。よって、受信される信号の強度が向上して信頼性の高い計測が可能となる。
【0055】
受信面22aで受信した信号は制御部2へと送信される。制御部2は、送信された信号をA/D変換機等の変換器43(
図4参照)によりデジタル変換し、CPU44(
図4参照)に取り込む。
【0056】
制御部2は、タフト法により超音波トランスデューサ1が取得した超音波の空間分布(分散データ)を用いて、メモリ45(
図4参照)に記憶された情報から配管10の内部を流れる蒸気の流量を算出する(流量算出ステップ)。
【0057】
メモリ45には、例えば、予め実験やシミュレーション等によって求められた蒸気の流速と超音波の空間分布とに関する情報が記憶されている。制御部2は、メモリ45に記憶された上記情報を読み出し、配管10の超音波の空間分布の計測値と比較することで、実際に計測された空間分布(超音波トランスデューサ1の計測結果)に対応した蒸気の流量を算出することができる。
【0058】
以上述べたように、本実施形態によれば、超音波を用いることで、配管10の内部を流れる蒸気の流量を、該配管10を破壊することなく、簡便且つ精度良く求めることができる。
【0059】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態に係る流量計測装置について説明する。本実施形態と第1実施形態との違いは、配管10に設置された超音波トランスデューサ1の数であり、それ以外の構成は共通である。以下では、第1実施形態と共通の構成および部材については同じ符号を付し、その詳細の説明については省略する。
【0060】
図8は、本実施形態の流量計測装置101の要部構成を示す図であり、
図8(a)は配管10の管軸方向に沿った断面図であり、
図8(b)は配管10の管軸方向から視た断面図である。
【0061】
図8(a)、(b)に示すように、本実施形態の流量計測装置101は、複数(例えば、4つ)の超音波トランスデューサ1と、制御部2とを備えている。本実施形態においても、各超音波トランスデューサ1は、それぞれ第1素子21と第2素子22とを含む。
【0062】
各超音波トランスデューサ1は、配管10の周方向に沿ってそれぞれ位置を異ならせるように(40度ずつ位置を違えて)配置されている。各超音波トランスデューサ1は、制御部2に電気的に接続されており、計測結果を制御部2に送信するようになっている。
【0063】
制御部2は、各超音波トランスデューサ1において、第1素子21を超音波発振部として機能させ、第2素子22を超音波受信部として機能させるが、第1素子21を超音波受信部として機能させ、第2素子22を超音波発振部として機能させることも可能である。
【0064】
このような構成に基づき、本実施形態の流量計測装置101は、配管10の断面内の4方向において超音波による流量計測が可能となっている。
【0065】
続いて、本実施形態に係る流量計測装置101による流量計測方法について説明する。
まず、制御部2は蒸気製造装置20から配管10を介して負荷設備30への蒸気の供給を開始する。
【0066】
ここで、配管10の内部に流速分布の偏りが生じている場合や、配管10の下部にドレンが生じている場合も想定される。このような場合において、例えば、複数の計測線のうち、配管10の断面内で流速分布の偏りが生じていない方向(偏流が生じていない方向)あるいはドレンが生じていない方向において超音波の送受信を行うことで安定した計測を行うことが可能となる。また、複数の計測線を用いることで偏流や旋回流等のようにエラーが大きい結果を予め排除することが可能となったり、複数の計測結果を平均化することで計測精度を向上させることもできる。
【0067】
本実施形態では、流量計測を行うに先立ち、配管10の内部に流速分布の偏り(歪)を判定する(判定ステップ)。制御部2は、各々の超音波トランスデューサ1を駆動させ、該超音波トランスデューサ1が取得した超音波の空間分布を取得する。制御部2は、複数の超音波トランスデューサ1から取得したデータに基づいて、配管10の内部を流れる蒸気の流速分布に偏りが生じている計測線を求める。すなわち、制御部2は、配管10の内部を流れる蒸気の流速分布の偏りを判定する特許請求の範囲に記載の判定部を構成する。
【0068】
制御部2は、該流速分布の判定結果に基づいて、計測に用いる超音波トランスデューサ1を選択する。すなわち、制御部2は、計測に用いる超音波トランスデューサ1を選択する特許請求の範囲に記載の選択部を構成する。
【0069】
制御部2は、例えば、配管10の断面内で流速分布の偏りが生じていない方向あるいはドレンが生じていない方向、最も超音波信号の受信強度が強い方向において超音波の送受信可能な超音波トランスデューサ1を複数の中から選択する。そして、制御部2は、選択した超音波トランスデューサ1を駆動する。
【0070】
選択された超音波トランスデューサ1は、第1素子21の発振面21aから配管10の内部に向けて超音波を発振し、発振面21aに対向配置された第2素子22の受信面22aで良好に受信する。
【0071】
受信面22aで受信した信号は制御部2へと送信される。制御部2は、送信された信号をA/D変換機等の変換器43(
図4参照)によりデジタル変換し、CPU44(
図4参照)に取り込む。
【0072】
制御部2は、タフト法により超音波トランスデューサ1が取得した超音波の空間分布を用いて、メモリ45(
図4参照)に記憶された情報から配管10の内部を流れる蒸気の流量を算出する(流量算出工程)。
【0073】
以上述べたように、本実施形態によれば、超音波を用いることで、配管10の内部を流れる蒸気の流量を、該配管10を破壊することなく、簡便且つ精度良く求めることができる。
また、本実施形態の流量計測装置100は、従来、計測することが難しかった、小口径(例えば、径が4インチ以下)の配管10内を流れる蒸気(圧力が8気圧以下)の流量を高精度で計測することが可能である。
【0074】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されることはなく、発明の主旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0075】
例えば、上記実施形態では、配管10の中心に超音波を集束させる収束手段として、超音波を発振する発振面21aを配管10の表面10aに対応した曲面とする態様を例示したが、本発明はこれに限定されることはない。例えば、収束手段として音響レンズを用い、超音波を配管10の中心に収束させるようにしてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、タフト法により流量計測を行う場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されず、上記流量計測装置100、101を時間差法により流量計測を行う場合に適用することも可能である。
【0077】
時間差法においては、第1素子21および第2素子22は、それぞれ超音波の送信および受信を行う。また、時間差法において、第1素子21および第2素子22は、
図9に示すように、配管10の管軸方向に対して斜めに設置される。第1素子21における超音波の送受信面21a´は、配管10の管軸方向と交差する面A内において、超音波Pの送受信を行う。また、第2素子22における超音波の送受信面22a´は、配管10の管軸方向と交差する面A内において、超音波Pの送受信を行う。
【0078】
本構成においても、送受信面21a´、22a´がそれぞれ配管10の表面10aに対応した曲面、すなわち面Aと平行な面内において断面形状が楕円となる曲面を有している。このような曲面を有した第1素子21および第2素子22を用いれば、時間差法を用いた場合であっても、配管10の内部に対して超音波Pの送受信を良好に行うことができるので、配管10内を流れる蒸気の流速計測を精度良く行うことができる。
【0079】
なお、時間差法においても、例えば、
図3に示したように、配管10と超音波トランスデューサ1との隙間にスペーサー部材を配置するようにしてもよい。ここで、サイズの異なる複数のスペーサー部材を用意することで、時間差法であっても外径が異なる種々の配管10に対して流量計測を行うことが可能な汎用性に優れた計測が可能な装置が提供される。
【0080】
また、上述のように外径の異なる配管10に対して流量計測を行う際、スペーサー部材13に代えて、超音波トランスデューサ1として可撓性を有したものを用いればよい。このようにすれば、超音波トランスデューサ1は、容易に折り曲げ可能であるので、表面10aの曲率に応じて折り曲げることで配管10の外径によらず表面10aに沿って確実に設置することが可能となる。よって、外径が異なる種々の配管10に対して流量計測を行うことが可能な汎用性に優れたものとなる。
【0081】
また、上記実施形態では、配管10が制振材11で覆われた構成を例に挙げたが、これに限定されることは無い。例えば、制御部2が配管10を伝搬する音波によるノイズ成分を考慮して超音波トランスデューサ1から送信されるデータを補正する態様であれば、配管10の表面10aを制振材11で被覆しなくてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、気体として配管内を流れる蒸気の流量を計測する場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されず、配管内を流れる空気の流量を計測する場合にも適用可能である。また、配管内を流れる気体がフロン、アンモニア、LNG(Liquefied Natural Gas)等であってもよく、これら流体の流量を計測する場合にも本発明は適用可能である。