(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記異常判定手段は、前記実センサ値と前記推定センサ値との温度差の絶対値が所定の上限閾値よりも高い状態で所定時間以上継続した場合に、前記触媒再生処理を異常と判定する
請求項1又は2に記載の排気浄化システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係る排気浄化システムを説明する。
【0011】
図1に示すように、ディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)10の各気筒には、図示しないコモンレールに畜圧された高圧燃料を各気筒内に直接噴射する筒内インジェクタ11がそれぞれ設けられている。これら各筒内インジェクタ11の燃料噴射量や燃料噴射タイミングは、電子制御ユニット(以下、ECUという)50から入力される指示信号に応じてコントロールされる。
【0012】
エンジン10の吸気マニホールド10Aには新気を導入する吸気通路12が接続され、排気マニホールド10Bには排気を外部に導出する排気通路13が接続されている。吸気通路12には、吸気上流側から順にエアクリーナ14、吸入空気量センサ(以下、MAFセンサという)40、吸気温度センサ48、可変容量型過給機20のコンプレッサ20A、インタークーラ15、吸気スロットルバルブ16等が設けられている。排気通路13には、排気上流側から順に可変容量型過給機20のタービン20B、排気後処理装置30等が設けられている。なお、
図1中において、符号41はエンジン回転数センサ、符号42はアクセル開度センサ、符号46はブースト圧センサ、符号47は外気温度センサをそれぞれ示している。
【0013】
EGR装置21は、排気マニホールド10Bと吸気マニホールド10Aとを接続するEGR通路22と、EGRガスを冷却するEGRクーラ23と、EGR量を調整するEGRバルブ24とを備えている。
【0014】
排気後処理装置30は、ケース30A内に排気上流側から順に酸化触媒31、NOx吸蔵還元型触媒32、パティキュレートフィルタ(以下、単にフィルタという)33を配置して構成されている。また、酸化触媒31よりも上流側の排気通路13には、ECU50から入力される指示信号に応じて、排気通路13内に未燃燃料(主にHC)を噴射する排気インジェクタ34が設けられている。
【0015】
酸化触媒31は、例えば、ハニカム構造体等のセラミック製担体表面に酸化触媒成分を担持して形成されている。酸化触媒31は、排気インジェクタ34又は筒内インジェクタ11のポスト噴射によって未燃燃料が供給されると、これを酸化して排気温度を上昇させる。
【0016】
NOx吸蔵還元型触媒32は、例えば、ハニカム構造体等のセラミック製担体表面にアルカリ金属等を担持して形成されている。このNOx吸蔵還元型触媒32は、排気空燃比がリーン状態のときに排気中のNOxを吸蔵すると共に、排気空燃比がリッチ状態のときに排気中に含まれる還元剤(HC等)で吸蔵したNOxを還元浄化する。
【0017】
フィルタ33は、例えば、多孔質性の隔壁で区画された多数のセルを排気の流れ方向に沿って配置し、これらセルの上流側と下流側とを交互に目封止して形成されている。フィルタ33は、排気中のPMを隔壁の細孔や表面に捕集すると共に、PM堆積推定量が所定量に達すると、これを燃焼除去するいわゆるフィルタ強制再生が実行される。フィルタ強制再生は、排気管噴射又はポスト噴射によって上流側の酸化触媒31に未燃燃料を供給し、フィルタ33に流入する排気温度をPM燃焼温度まで昇温することで行われる。
【0018】
第1排気温度センサ43は、酸化触媒31よりも上流側に設けられており、酸化触媒31に流入する排気温度を検出する。第2排気温度センサ44は、
NOx吸蔵還元型触媒32と、フィルタ33との間に設けられており、NOx吸蔵還元型触媒32に流入
した排気温度を検出する。NOx/ラムダセンサ45は、フィルタ33よりも下流側に設けられており、NOx吸蔵還元型触媒32を通過した排気のNOx値及びラムダ値(以下、空気過剰率ともいう)を検出する。
【0019】
ECU50は、エンジン10等の各種制御を行うもので、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備えて構成されている。これら各種制御を行うため、ECU50にはセンサ類40〜48のセンサ値が入力される。また、ECU50は、フィルタ再生制御部51と、SOxパージ制御部60と、触媒温度推定部70と、異常診断部80と、MAF追従制御部85と、噴射量学習補正部90と、MAF補正係数演算部95とを一部の機能要素として有する。これら各機能要素は、一体のハードウェアであるECU50に含まれるものとして説明するが、これらのいずれか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
【0020】
[フィルタ再生制御]
フィルタ再生制御部51は、車両の走行距離、あるいは図示しない差圧センサで検出されるフィルタ前後差圧からフィルタ33のPM堆積量を推定すると共に、このPM堆積推定量が所定の上限閾値を超えると強制再生フラグF
DPFをオンにする(
図2の時刻t
1参照)。強制再生フラグF
DPFがオンにされると、排気インジェクタ34に排気管噴射を実行させる指示信号が送信されるか、あるいは、各筒内インジェクタ11にポスト噴射を実行させる指示信号が送信されて、排気温度をPM燃焼温度(例えば、約550℃)まで昇温させる。この強制再生フラグF
DPFは、PM堆積推定量が燃焼除去を示す所定の下限閾値(判定閾値)まで低下するとオフにされる(
図2の時刻t
2参照)。強制再生フラグF
DPFをオフにする判定閾値は、例えば、フィルタ強制再生開始(F
DPF=1)からの上限経過時間や上限累積噴射量を基準にしてもよい。
【0021】
本実施形態において、フィルタ強制再生時の燃料噴射量は、詳細を後述する参照温度選択部79(
図6参照)によって適宜選択される酸化触媒温度又は、NOx触媒温度の何れかに基づいてフィードバック制御されるようになっている。
【0022】
[SOxパージ制御]
SOxパージ制御部60は、排気をリッチ状態にして排気温度を硫黄離脱温度(例えば、約600℃)まで上昇させて、NOx吸蔵還元型触媒32をSOx被毒から回復させる制御(以下、この制御をSOxパージ制御という)を実行する。
【0023】
図2は、本実施形態のSOxパージ制御のタイミングチャートを示している。
図2に示すように、SOxパージ制御を開始するSOxパージフラグF
SPは、強制再生フラグF
DPFのオフと同時にオンにされる(
図2の時刻t
2参照)。これにより、フィルタ33の強制再生によって排気温度を上昇させた状態からSOxパージ制御に効率よく移行することが可能となり、燃料消費量を効果的に低減することができる。
【0024】
本実施形態において、SOxパージ制御によるリッチ化は、空気系制御によって空気過剰率を定常運転時(例えば、約1.5)から理論空燃比相当値(約1.0)よりもリーン側の第1目標空気過剰率(例えば、約1.3)まで低下させるSOxパージリーン制御と、噴射系制御によって空気過剰率を第1目標空気過剰率からリッチ側の第2目標空気過剰率(例えば、約0.9)まで低下させるSOxパージリッチ制御とを併用することで実現される。以下、SOxパージリーン制御及び、SOxパージリッチ制御の詳細について説明する。
【0025】
[SOxパージリーン制御の空気系制御]
図3は、SOxパージリーン制御時のMAF目標値MAF
SPL_Trgtの設定処理を示すブロック図である。第1目標空気過剰率設定マップ61は、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Q(エンジン10の燃料噴射量)に基づいて参照されるマップであって、これらエンジン回転数Neとアクセル開度Qとに対応したSOxパージリーン制御時の空気過剰率目標値λ
SPL_Trgt(第1目標空気過剰率)が予め実験等に基づいて設定されている。
【0026】
まず、第1目標空気過剰率設定マップ61から、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qを入力信号としてSOxパージリーン制御時の空気過剰率目標値λ
SPL_Trgtが読み取られて、MAF目標値演算部62に入力される。さらに、MAF目標値演算部62では、以下の数式(1)に基づいてSOxパージリーン制御時のMAF目標値MAF
SPL_Trgtが演算される。
【0028】
数式(1)において、Q
fnl_corrdは後述する学習補正された燃料噴射量(ポスト噴射を除く)、Ro
Fuelは燃料比重、AFR
stoは理論空燃比、Maf
_corrは後述するMAF補正係数をそれぞれ示している。
【0029】
MAF目標値演算部62によって演算されたMAF目標値MAF
SPL_Trgtは、SOxパージフラグF
SPがオン(
図2の時刻t
2参照)になるとランプ処理部63に入力される。ランプ処理部63は、各ランプ係数マップ63A,Bからエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qを入力信号としてランプ係数を読み取ると共に、このランプ係数を付加したMAF目標ランプ値MAF
SPL_Trgt_Rampをバルブ制御部64に入力する。
【0030】
バルブ制御部64は、MAFセンサ40から入力される実MAF値MAF
ActがMAF目標ランプ値MAF
SPL_Trgt_Rampとなるように、吸気スロットルバルブ16を閉側に絞ると共に、EGRバルブ24を開側に開くフィードバック制御を実行する。
【0031】
このように、本実施形態では、第1目標空気過剰率設定マップ61から読み取られる空気過剰率目標値λ
SPL_Trgtと、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量とに基づいてMAF目標値MAF
SPL_Trgtを設定し、このMAF目標値MAF
SPL_Trgtに基づいて空気系動作をフィードバック制御するようになっている。これにより、NOx吸蔵還元型触媒32の上流側にラムダセンサを設けることなく、或いは、NOx吸蔵還元型触媒32の上流側にラムダセンサを設けた場合も当該ラムダセンサのセンサ値を用いることなく、排気をSOxパージリーン制御に必要な所望の空気過剰率まで効果的に低下させることが可能になる。
【0032】
また、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量として学習補正後の燃料噴射量Q
fnl_corrdを用いることで、MAF目標値MAF
SPL_Trgtをフィードフォワード制御で設定することが可能となり、各筒内インジェクタ11の経年劣化や特性変化、個体差等の影響を効果的に排除することができる。
【0033】
また、MAF目標値MAF
SPL_Trgtにエンジン10の運転状態に応じて設定されるランプ係数を付加することで、吸入空気量の急激な変化によるエンジン10の失火やトルク変動によるドライバビリティーの悪化等を効果的に防止することができる。
【0034】
[SOxパージリッチ制御の燃料噴射量設定]
図4は、SOxパージリッチ制御における排気管噴射又はポスト噴射の目標噴射量Q
SPR_Trgt(単位時間当たりの噴射量)の設定処理を示すブロック図である。第2目標空気過剰率設定マップ65は、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて参照されるマップであって、これらエンジン回転数Neとアクセル開度Qとに対応したSOxパージリッチ制御時の空気過剰率目標値λ
SPR_Trgt(第2目標空気過剰率)が予め実験等に基づいて設定されている。
【0035】
まず、第2目標空気過剰率設定マップ65から、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qを入力信号としてSOxパージリッチ制御時の空気過剰率目標値λ
SPR_Trgtが読み取られて、噴射量目標値演算部66に入力される。さらに、噴射量目標値演算部66では、以下の数式(2)に基づいてSOxパージリッチ制御時の目標噴射量Q
SPR_Trgtが演算される。
【0037】
数式(2)において、MAF
SPL_TrgtはSOxパージリーン時のMAF目標値であって、前述のMAF目標値演算部62から入力される。また、Q
fnlRaw_corrdは後述する学習補正されたMAF追従制御適用前の燃料噴射量(ポスト噴射を除く)、Ro
Fuelは燃料比重、AFR
stoは理論空燃比、Maf
_corは後述するMAF補正係数をそれぞれ示している。
【0038】
噴射量目標値演算部66によって演算された目標噴射量Q
SPR_Trgtは、後述するSOxパージリッチフラグF
SPRがオンになると、排気インジェクタ34又は、各筒内インジェクタ11に噴射指示信号として送信される。
【0039】
このように、本実施形態では、第2目標空気過剰率設定マップ65から読み取られる空気過剰率目標値λ
SPR_Trgtと、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量とに基づいて目標噴射量Q
SPR_Trgtを設定するようになっている。これにより、NOx吸蔵還元型触媒32の上流側にラムダセンサを設けることなく、或いは、NOx吸蔵還元型触媒32の上流側にラムダセンサを設けた場合も当該ラムダセンサのセンサ値を用いることなく、排気をSOxパージリッチ制御に必要な所望の空気過剰率まで効果的に低下させることが可能になる。
【0040】
また、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量として学習補正後の燃料噴射量Q
fnl_corrdを用いることで、目標噴射量Q
SPR_Trgtをフィードフォワード制御で設定することが可能となり、各筒内インジェクタ11の経年劣化や特性変化等の影響を効果的に排除することができる。
【0041】
[SOxパージ制御の触媒温度調整制御]
SOxパージ制御中にNOx吸蔵還元型触媒32に流入する排気温度(以下、触媒温度ともいう)は、
図2の時刻t
2〜t
4に示すように、排気管噴射又はポスト噴射を実行するSOxパージリッチフラグF
SPRのオン・オフ(リッチ・リーン)を交互に切り替えることで制御される。SOxパージリッチフラグF
SPRがオン(F
SPR=1)にされると、排気管噴射又はポスト噴射によって触媒温度は上昇する(以下、この期間を噴射期間T
F_INJという)。一方、SOxパージリッチフラグF
SPRがオフにされると、排気管噴射又はポスト噴射の停止によって触媒温度は低下する(以下、この期間をインターバルT
F_INTという)。
【0042】
本実施形態において、噴射期間T
F_INJは、予め実験等により作成した噴射期間設定マップ(不図示)からエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに対応する値を読み取ることで設定される。この噴射時間設定マップには、予め実験等によって求めた排気の空気過剰率を第2目標空気過剰率まで確実に低下させるのに必要となる噴射期間が、エンジン10の運転状態に応じて設定されている。
【0043】
インターバルT
F_INTは、触媒温度が最も高くなるSOxパージリッチフラグF
SPRがオンからオフに切り替えられた際に、フィードバック制御によって設定される。具体的には、SOxパージリッチフラグF
SPRがオフされた際の触媒目標温度と触媒推定温度との偏差ΔTに比例して入力信号を変化させる比例制御と、偏差ΔTの時間積分値に比例して入力信号を変化させる積分制御と、偏差ΔTの時間微分値に比例して入力信号を変化させる微分制御とで構成されるPID制御によって処理される。触媒目標温度は、NOx吸蔵還元型触媒32からSOxを離脱可能な温度で設定され、触媒推定温度は、詳細を後述する参照温度選択部79(
図6参照)によって適宜選択される酸化触媒温度又は、NOx触媒温度の何れかで設定されるようになっている。
【0044】
図5の時刻t
1に示すように、フィルタ強制再生の終了(F
DPF=0)によってSOxパージフラグF
SPがオンされると、SOxパージリッチフラグF
SPRもオンにされ、さらに前回のSOxパージ制御時にフィードバック計算されたインターバルT
F_INTも一旦リセットされる。すなわち、フィルタ強制再生直後の初回は、噴射期間設定マップで設定した噴射期間T
F_INJ_1に応じて排気管噴射又はポスト噴射が実行される(
図5の時刻t
1〜t
2参照)。このように、SOxパージリーン制御を行うことなくSOxパージリッチ制御からSOxパージ制御を開始するので、フィルタ強制再生で上昇した排気温度を低下させることなく、速やかにSOxパージ制御に移行され、燃料消費量を低減することができる。
【0045】
次いで、噴射期間T
F_INJ_1の経過によってSOxパージリッチフラグF
SPRがオフになると、PID制御によって設定されたインターバルT
F_INT_1が経過するまで、SOxパージリッチフラグF
SPRはオフとされる(
図5の時刻t
2〜t
3参照)。さらに、インターバルT
F_INT_1の経過によってSOxパージリッチフラグF
SPRがオンにされると、再び噴射期間T
F_INJ_2に応じた排気管噴射又はポスト噴射が実行される(
図5の時刻t
3〜t
4参照)。その後、これらSOxパージリッチフラグF
SPRのオン・オフの切り替えは、後述するSOxパージ制御の終了判定によってSOxパージフラグF
SPがオフ(
図5の時刻t
n参照)にされるまで繰り返し実行される。
【0046】
このように、本実施形態では、触媒温度を上昇させると共に空気過剰率を第2目標空気過剰率まで低下させる噴射期間T
F_INJをエンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップから設定すると共に、触媒温度を降下させるインターバルT
F_INTをPID制御によって処理するようになっている。これにより、SOxパージ制御中の触媒温度をパージに必要な所望の温度範囲に効果的に維持しつつ、空気過剰率を目標過剰率まで確実に低下させることが可能になる。
【0047】
[触媒温度推定]
図6は、触媒温度推定部70による酸化触媒温度及び、NOx触媒温度の推定処理を示すブロック図である。
【0048】
リーン時HCマップ71は、エンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップであって、リーン運転時にエンジン10から排出されるHC量(以下、リーン時HC排出量という)が予め実験等により設定されている。SOxパージフラグF
SP及び、強制再生フラグF
DPFがオフ(F
SP=0,F
DPF=0)の場合は、リーン時HCマップ71からエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて読み取られたリーン時HC排出量に、MAFセンサ40のセンサ値に応じた所定の係数が乗じられて、各温度推定部77,78に送信されるようになっている。
【0049】
リーン時COマップ72は、エンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップであって、リーン運転時にエンジン10から排出されるCO量(以下、リーン時CO排出量という)が予め実験等により設定されている。SOxパージフラグF
SP及び、強制再生フラグF
DPFがオフ(F
SP=0,F
DPF=0)の場合は、リーン時COマップ72からエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて読み取られたリーン時CO排出量に、MAFセンサ40のセンサ値に応じた所定の係数が乗じられて、各温度推定部77,78に送信されるようになっている。
【0050】
第1SOxパージ時HCマップ73Aは、エンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップであって、筒内インジェクタ11の噴射パターンにアフタ噴射が含まれる状態でSOxパージ制御を実施した際にエンジン10から排出されるHC量(以下、第1SOxパージ時HC排出量という)が予め実験等により設定されている。SOxパージフラグF
SPがオン(F
SP=1)且つ、筒内インジェクタ11の噴射パターンがアフタ噴射を含む場合は、第1SOxパージ時HCマップ73Aからエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて読み取られた第1SOxパージ時HC排出量に、MAFセンサ40のセンサ値に応じた所定の係数が乗じられて、各温度推定部77,78に送信されるようになっている。
【0051】
第2SOxパージ時HCマップ73Bは、エンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップであって、筒内インジェクタ11の噴射パターンにアフタ噴射が含まれない状態でSOxパージ制御を実施した際にエンジン10から排出されるHC量(以下、第2SOxパージ時HC排出量という)が予め実験等により設定されている。SOxパージフラグF
SPがオン(F
SP=1)且つ、筒内インジェクタ11の噴射パターンがアフタ噴射を含まない場合は、第2SOxパージ時HCマップ73Bからエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて読み取られた第2SOxパージ時HC排出量に、MAFセンサ40のセンサ値に応じた所定の係数が乗じられて、各温度推定部77,78に送信されるようになっている。
【0052】
第1SOxパージ時COマップ74Aは、エンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップであって、筒内インジェクタ11の噴射パターンにアフタ噴射が含まれる状態でSOxパージ制御を実施した際にエンジン10から排出されるCO量(以下、第1SOxパージ時CO排出量という)が予め実験等により設定されている。SOxパージフラグF
SPがオン(F
SP=1)且つ、筒内インジェクタ11の噴射パターンがアフタ噴射を含む場合は、第1SOxパージ時COマップ74Aからエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて読み取られた第1SOxパージ時CO排出量に、MAFセンサ40のセンサ値に応じた所定の係数が乗じられて、各温度推定部77,78に送信されるようになっている。
【0053】
第2SOxパージ時COマップ74Bは、エンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップであって、筒内インジェクタ11の噴射パターンにアフタ噴射が含まれない状態でSOxパージ制御を実施した際にエンジン10から排出されるCO量(以下、第2SOxパージ時CO排出量という)が予め実験等により設定されている。SOxパージフラグF
SPがオン(F
SP=1)且つ、筒内インジェクタ11の噴射パターンがアフタ噴射を含まない場合は、第2SOxパージ時COマップ74Bからエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて読み取られた第2SOxパージ時CO排出量に、MAFセンサ40のセンサ値に応じた所定の係数が乗じられて、各温度推定部77,78に送信されるようになっている。
【0054】
フィルタ強制再生時HCマップ75は、エンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップであって、フィルタ強制再生制御を実施した際にエンジン10から排出されるHC量(以下、フィルタ再生時HC排出量という)が予め実験等により設定されている。強制再生フラグF
DPFがオン(F
DPF=1)の場合は、フィルタ強制再生時HCマップ75からエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて読み取られたフィルタ再生時HC排出量に、MAFセンサ40のセンサ値に応じた所定の係数が乗じられて、各温度推定部77,78に送信されるようになっている。
【0055】
フィルタ強制再生時COマップ76、エンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップであって、フィルタ強制再生制御を実施した際にエンジン10から排出されるCO量(以下、フィルタ再生時CO排出量という)が予め実験等により設定されている。強制再生フラグF
DPFがオン(F
DPF=1)の場合は、フィルタ強制再生時COマップ76からエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて読み取られたフィルタ再生時CO排出量に、MAFセンサ40のセンサ値に応じた所定の係数が乗じられて、各温度推定部77,78に送信されるようになっている。
【0056】
酸化触媒温度推定部77は、第1排気温度センサ43で検出される酸化触媒入口温度、酸化触媒31内部でのHC・CO発熱量、MAFセンサ40のセンサ値、外気温度センサ47又は吸気温度センサ48のセンサ値から推定される外気への放熱量等を入力値として含むモデル式やマップ等に基づいて、酸化触媒31の触媒温度を推定演算する。
【0057】
酸化触媒31の内部におけるHC・CO発熱量は、SOxパージフラグF
SPや強制再生フラグF
DPFのオン/オフに応じて各マップ71〜76から入力されるHC・CO排出量を入力値として含むモデル式やマップ等に基づいて演算される。演算されたHC・CO発熱量には、詳細を後述する劣化補正係数演算部83(
図7参照)から入力される劣化補正係数D
_corrが乗算されるようになっている。
【0058】
NOx触媒温度推定部78は、酸化触媒温度推定部77から入力される酸化触媒温度、NOx吸蔵還元型触媒32内部でのHC・CO発熱量、外気温度センサ47又は吸気温度センサ48のセンサ値から推定される外気への放熱量等を入力値として含むモデル式やマップ等に基づいて、NOx吸蔵還元型触媒32の触媒温度を推定演算する。
【0059】
NOx吸蔵還元型触媒32内部のHC・CO発熱量は、SOxパージフラグF
SPや強制再生フラグF
DPFのオン/オフに応じて各マップ71〜76から入力されるHC・CO排出量を入力値として含むモデル式やマップ等に基づいて演算される。演算されたHC・CO発熱量には、詳細を後述する劣化補正係数演算部83(
図7参照)から入力される劣化補正係数D
_corrが乗算されるようになっている。
【0060】
このように、本実施形態では、HC・CO排出量がそれぞれ異なるリーン運転時、SOxパージ時、フィルタ強制再生時等の状況に応じて各種マップ71〜76を適宜切り替えることで、触媒内部におけるHC・CO発熱量を精度よく演算することが可能となり、各触媒31,32の温度推定精度を効果的に向上することができる。
【0061】
[FB制御参照温度選択]
図6に示す参照温度選択部79は、上述したフィルタ強制再生やSOxパージの温度フィードバック制御に用いる参照温度を選択する。
【0062】
酸化触媒31とNOx吸蔵還元型触媒32とを備える排気浄化システムにおいては、触媒の発熱特性等に応じて各触媒31,32におけるHC・CO発熱量が異なってくる。このため、温度フィードバック制御の参照温度としては、発熱量が多い方の触媒温度を選択することが制御性を向上するうえで好ましい。
【0063】
参照温度選択部79は、酸化触媒温度及び、NOx触媒温度のうち、そのときのエンジン10の運転状態から推定される発熱量が多い方の触媒温度を一つ選択して、フィルタ再生制御部51及びSOxパージ制御部60に温度フィードバック制御の参照温度として送信するように構成されている。より詳しくは、排気中の酸素濃度が比較的高く、酸化触媒31のHC・CO発熱量が増加するフィルタ強制再生時は、酸化触媒温度推定部77から入力される酸化触媒温度が温度フィードバック制御の参照温度として選択される一方、排気中の酸素濃度の低下によりNOx吸蔵還元型触媒32におけるHC・CO発熱量が増加するSOxパージリッチ制御時は、NOx触媒温度推定部78から入力されるNOx触媒温度が温度フィードバック制御の参照温度として選択されるようになっている。
【0064】
このように、本実施形態では、HC・CO発熱量が多くなる方の触媒温度を温度フィードバック制御の参照温度として選択することで、制御性を効果的に向上することが可能になる。
【0065】
[異常診断]
図7は、異常診断部80による診断処理を示すブロック図である。
【0066】
温度センサ値推定部81は、NOx触媒温度推定部78から入力されるNOx触媒温度等に基づいて、第2排気温度センサ44の推定センサ値T
ent_estをリアルタイムに演算する。より詳しくは、推定センサ値T
ent_estは、NOx触媒温度、MAFセンサ40のセンサ値、各触媒31,32の発熱量及び、外気への放熱量等を入力値として含むモデル式等に基づいて、第2排気温度センサ44のセンサ部周囲の排気温度を推定すると共に、このセンサ部周囲の排気温度に所定のフィルタ係数を乗算することで演算される。
【0067】
異常判定部82は、温度センサ値推定部81から入力される推定センサ値T
ent_estと、第2排気温度センサ44の実センサ値T
actとに基づいて、システム異常の発生有無を判定する。より詳しくは、実センサ値T
actと推定センサ値T
ent_estとの差の絶対値が所定の上限閾値T
thrよりも大きくなる状態(|T
act−T
ent_est|>T
thr)が所定時間以上継続すると、異常判定部82は、排気インジェクタ34や筒内インジェクタ11の故障、各触媒31,32の故障或は、制御不良等によって引き起こされるシステム異常が発生したと判定する。システム異常と判定された場合は、SOxパージ制御の実施を禁止するようになっている。
【0068】
一方、システム異常は発生していないが、実センサ値T
actと推定センサ値T
ent_estとに所定の温度差がある場合(0<|T
act−T
ent_est|≦T
thr)、異常判定部82は、各触媒31,32の劣化に伴い発熱量変化が生じたものと判定する。発熱量変化が生じたと判定された場合は、劣化補正係数演算部83による劣化補正係数D
_corrの演算が実行される。
【0069】
劣化補正係数演算部83は、実センサ値T
actと推定センサ値T
ent_estとの温度差に所定の係数Cを乗じて積分する以下の数式(3)に基づいて、各触媒31,32の劣化度合である劣化補正係数D
_corrを演算する。
【0071】
数式(3)から求められた劣化補正係数D
_corrは、各触媒31,32の発熱特性として、上述の酸化触媒温度推定部77及び、NOx触媒温度推定部78にそれぞれ入力され、これら推定部77,78で演算される触媒内部のHC・CO発熱量に乗算されるようになっている。
【0072】
このように、本実施形態では、第2排気温度センサ44の実センサ値T
actと推定センサ値T
ent_estとの差に基づいて、システム異常の発生有無を判定すると共に、システム異常が発生した場合はSOxパージを禁止するようになっている。これにより、システム異常が発生した状態でSOxパージを実施することにより引き起こされる排気過昇温や、燃費の悪化等を効果的に防止することが可能になる。
【0073】
また、システム異常が発生していない場合であっても、実センサ値T
actと推定センサ値T
ent_estとに温度差があれば、当該温度差に基づいて各触媒31,32の劣化補正係数D
_corrを演算すると共に、触媒内部のHC・CO発熱量推定に反映させるようになっている。これにより、各触媒31,32の劣化に伴い変化する発熱特性に応じたHC・CO発熱量を精度よく演算が可能となり、触媒内部温度の推定精度も効果的に向上することができる。
【0074】
[SOxパージ制御の終了判定]
SOxパージ制御は、(1)SOxパージフラグF
SPのオンから排気管噴射又はポスト噴射の噴射量を累積し、この累積噴射量が所定の上限閾値量に達した場合、(2)SOxパージ制御の開始から計時した経過時間が所定の上限閾値時間に達した場合、(3)エンジン10の運転状態やNOx/ラムダセンサ45のセンサ値等を入力信号として含む所定のモデル式に基づいて演算されるNOx吸蔵還元型触媒32のSOx吸着量がSOx除去成功を示す所定の閾値まで低下した場合の何れかの条件が成立すると、SOxパージフラグFSPをオフにして終了される(
図2の時刻t
4、
図5の時刻t
n参照)。
【0075】
このように、本実施形態では、SOxパージ制御の終了条件に累積噴射量及び、経過時間の上限を設けたことで、SOxパージが排気温度の低下等によって進捗しなかった場合に、燃料消費量が過剰になることを効果的に防止することができる。
【0076】
[MAF追従制御]
MAF追従制御部85は、(1)通常運転のリーン状態からSOxパージ制御によるリッチ状態への切り替え期間及び、(2)SOxパージ制御によるリッチ状態から通常運転のリーン状態への切り替え期間に、各筒内インジェクタ11の燃料噴射タイミング及び燃料噴射量をMAF変化に応じて補正する制御(MAF追従制御という)を実行する。
【0077】
[噴射量学習補正]
図8に示すように、噴射量学習補正部90は、学習補正係数演算部91と、噴射量補正部92とを有する。
【0078】
学習補正係数演算部91は、エンジン10のリーン運転時にNOx/ラムダセンサ45で検出される実ラムダ値λ
Actと、推定ラムダ値λ
Estとの誤差Δλに基づいて燃料噴射量の学習補正係数F
Corrを演算する。排気がリーン状態のときは、排気中のHC濃度が非常に低いので、酸化触媒33でHCの酸化反応による排気ラムダ値の変化は無視できるほど小さい。このため、酸化触媒31を通過して下流側のNOx/ラムダセンサ45で検出される排気中の実ラムダ値λ
Actと、エンジン10から排出された排気中の推定ラムダ値λ
Estとは一致すると考えられる。このため、これら実ラムダ値λ
Actと推定ラムダ値λ
Estとに誤差Δλが生じた場合は、各筒内インジェクタ11に対する指示噴射量と実噴射量との差によるものと仮定することができる。以下、この誤差Δλを用いた学習補正係数演算部91による学習補正係数の演算処理を
図9のフローに基づいて説明する。
【0079】
ステップS300では、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて、エンジン10がリーン運転状態にあるか否かが判定される。リーン運転状態にあれば、学習補正係数の演算を開始すべく、ステップS310に進む。
【0080】
ステップS310では、推定ラムダ値λ
EstからNOx/ラムダセンサ45で検出される実ラムダ値λ
Actを減算した誤差Δλに、学習値ゲインK
1及び補正感度係数K
2を乗じることで、学習値F
CorrAdptが演算される(F
CorrAdpt=(λ
Est−λ
Act)×K
1×K
2)。推定ラムダ値λ
Estは、エンジン回転数Neやアクセル開度Qに応じたエンジン10の運転状態から推定演算される。また、補正感度係数K
2は、
図8に示す補正感度係数マップ91AからNOx/ラムダセンサ45で検出される実ラムダ値λ
Actを入力信号として読み取られる。
【0081】
ステップS320では、学習値F
CorrAdptの絶対値|F
CorrAdpt|が所定の補正限界値Aの範囲内にあるか否かが判定される。絶対値|F
CorrAdpt|が補正限界値Aを超えている場合、本制御はリターンされて今回の学習を中止する。
【0082】
ステップS330では、学習禁止フラグF
Proがオフか否かが判定される。学習禁止フラグF
Proとしては、例えば、エンジン10の過渡運転時、SOxパージ制御時(F
SP=1)、NOxパージ制御時(F
NP=1)等が該当する。これらの条件が成立する状態では、実ラムダ値λ
Actの変化によって誤差Δλが大きくなり、正確な学習を行えないためである。エンジン10が過渡運転状態にあるか否かは、例えば、NOx/ラムダセンサ45で検出される実ラムダ値λ
Actの時間変化量に基づいて、当該時間変化量が所定の閾値よりも大きい場合に過渡運転状態と判定すればよい。
【0083】
ステップS340では、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて参照される学習値マップ91B(
図8参照)が、ステップS310で演算された学習値F
CorrAdptに更新される。より詳しくは、この学習値マップ91B上には、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに応じて区画された複数の学習領域が設定されている。これら学習領域は、好ましくは、使用頻度が多い領域ほどその範囲が狭く設定され、使用頻度が少ない領域ほどその範囲が広く設定されている。これにより、使用頻度が多い領域では学習精度が向上され、使用頻度が少ない領域では未学習を効果的に防止することが可能になる。
【0084】
ステップS350では、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qを入力信号として学習値マップ91Bから読み取った学習値に「1」を加算することで、学習補正係数F
Corrが演算される(F
Corr=1+F
CorrAdpt)。この学習補正係数F
Corrは、
図8に示す噴射量補正部92に入力される。
【0085】
噴射量補正部92は、パイロット噴射Q
Pilot、プレ噴射Q
Pre、メイン噴射Q
Main、アフタ噴射Q
After、ポスト噴射Q
Postの各基本噴射量に学習補正係数F
Corrを乗算することで、これら燃料噴射量の補正を実行する。
【0086】
このように、推定ラムダ値λ
Estと実ラムダ値λ
Actとの誤差Δλに応じた学習値で各筒内インジェクタ11に燃料噴射量を補正することで、各筒内インジェクタ11の経年劣化や特性変化、個体差等のバラツキを効果的に排除することが可能になる。
【0087】
[MAF補正係数]
MAF補正係数演算部95は、SOxパージ制御時のMAF目標値MAF
SPL_Trgtや目標噴射量Q
SPR_Trgtの設定に用いられるMAF補正係数Maf
_corrを演算する。
【0088】
本実施形態において、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量は、NOx/ラムダセンサ45で検出される実ラムダ値λ
Actと推定ラムダ値λ
Estとの誤差Δλに基づいて補正される。しかしながら、ラムダは空気と燃料の比であるため、誤差Δλの要因が必ずしも各筒内インジェクタ11に対する指示噴射量と実噴射量との差の影響のみとは限らない。すなわち、ラムダの誤差Δλには、各筒内インジェクタ11のみならずMAFセンサ40の誤差も影響している可能性がある。
【0089】
図10は、MAF補正係数演算部95によるMAF補正係数Maf
_corrの設定処理を示すブロック図である。補正係数設定マップ96は、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて参照されるマップであって、これらエンジン回転数Neとアクセル開度Qとに対応したMAFセンサ40のセンサ特性を示すMAF補正係数Maf
_corrが予め実験等に基づいて設定されている。
【0090】
MAF補正係数演算部95は、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qを入力信号として補正係数設定マップ96からMAF補正係数Maf
_corrを読み取ると共に、このMAF補正係数Maf
_corrをMAF目標値演算部62及び噴射量目標値演算部66に送信する。これにより、SOxパージ制御時のMAF目標値MAF
SPL_Trgtや目標噴射量Q
SPR_Trgtの設定に、MAFセンサ40のセンサ特性を効果的に反映することが可能になる。
【0091】
[その他]
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。