(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は本実施形態に係る照明器具の使用態様を模式的に示す図である。
この照明器具10は、道路100の側方に設置された壁部101に設置され、道路100の路面102を照明する道路照明器具である。
道路100は、車両の進行方向が共に同一方向とされた第1車線103、及び第2車線104が併設され、同一方向に2つの車両通行帯を有する、いわゆる片側2車線道路である。なお、
図1中、符号W1は、第1車線103、及び第2車線104の車線幅(本実施例では3.5m(メートル))を示し、道路幅は2×W1である。また、
図1中、符号100L、100Rは道路100の端部を示している。なお、本実施形態の照明器具10は片側1車線の対面通行道路にも適用可能である。
【0012】
道路100の片側には、路肩の幅W2(本実施例では1.75m)だけ離間して壁部101が設けられている。この壁部101は、例えば遮音壁を構成する。この壁部101は、
図1では道路100の進行方向から見て左側だけに設けられているが、道路100の右側に設けられていても良く、また、道路100の両側に設けられていても良い。また、
図1では、左側の壁部101に照明器具10を設けた場合を示しているが、右側の壁部101に照明器具10を設けるようにしても良い。
【0013】
照明器具10は、道路100に沿って壁部101に間隔を空けて設置される。各照明器具10は、路面102からの高さH1が1.2m、或いはその近傍範囲に設置されており、従来と比べて、より低い位置に設けられている。
この設置高さH1にすることにより、既存の壁部101を利用して照明器具10を設置できるとともに、照明器具1を支えるポールが不要となり、低コスト化に有利となる。
【0014】
しかしながら、1.2m程度の設置高さH1の場合、道路100を走行する車両の運転者の目線近くの高さとなるため、運転者が直接、発光素子を見てしまうおそれが生じる。特に、この照明器具10は、光源に発光素子の一例であるLED(Light Emitting Diode)41(後述する
図6)を用いるため、輝度がランプ光源に比べて高く、運転者がより眩しさを感じやすくなる。また、この種の照明器具10を、より簡易な構造にできれば低コスト化により有利となる。
そこで、この照明器具10は、運転者への眩しさ対策を行うとともに、低コスト化に有利な接地構造を備えるようにしている。以下、この照明器具10について説明する。
【0015】
図2は照明器具10の斜視図である。また、
図3は照明器具10を各方向から見た図であり、
図3(A)は正面図、
図3(B)は上面図、
図3(C)は底面図、
図3(D)は左側面図、
図3(E)は右側面図である。
照明器具10は、この照明器具10の筐体を構成する器具ケース21を備えている。器具ケース21は、正面が開口するとともに上下長に比して左右長が長い横長の矩形箱状ケースに形成されている。この器具ケース21は、アルミニウム合金からなる金属製ケースの表面に、耐候性を有する塗料(本実施形態ではポリエステル粉体塗料)を塗装した塗装済みの金属部品となっている。これによって、十分な耐食性、及び熱伝導性を得ている。
【0016】
図3(A)〜
図3(E)に示すように、器具ケース21は、背面を構成する板状の背面板部21Aと、上面を構成する板状の上板部21Bと、底面を構成する板状の底板部21Cと、左右の側面を構成する側板部21Dとを備えている。これら板部21A〜21Dで囲まれる領域が正面に開口し、正面開口21Kが平板状の前面ガラス23(後述する
図6等)で覆われる。
前面ガラス23は、器具ケース21内への雨水等の浸入を防止する透明の蓋部材として機能し、上板部21Bに設けた左右一対のヒンジ部25を介して開閉自在に取り付けられ、底板部21Cに設けた左右一対の留め具26により閉状態に保持される。また、器具ケース21の左右には、この器具ケース21を壁部101に取り付けるためのステー27が着脱自在に取り付けられる。
【0017】
器具ケース21の内部には、光源ユニット31と、電源端子台32と、電源ボックス33とが収容されている。
光源ユニット31は、LED41(後述する
図6)を光源とするユニットであり、その詳細は後述するが、本構成では同構成の光源ユニット31が左右に隣接して同じ高さに取り付けられる。電源端子台32は、器具ケース21の外から引き込まれた配線(
図3(A)中、符号35Aを付して示す)と、電源ボックス33の配線(不図示)とを結線する部材である。
図3(A)及び
図3(C)に示すように、器具ケース21の底板部21Cには、2つの防水型ケーブルクランプ28A,28Bが設けられている。一方の防水型ケーブルクランプ28Aには上記配線35Aがクランプされ、他方の防水型ケーブルクランプ28Bにはアース線35Bがクランプされる。アース線35Bは、防水型ケーブルクランプ28Bを介して器具ケース21内に引き込まれ、器具ケース21の後述するケース本体部52に電気的に接続され、ケース本体部52をグランド(基準電位)に接地させる。
【0018】
電源ボックス33は、光源ユニット31を駆動する直流電力を生成する装置である。この電源ボックス33は、AC−DC変換器を内蔵し、外部から供給される商用の交流電力を直流電力に変換し、光源ユニット31に供給する。なお、電源ボックス33は、外部からの調光指示に基づいて直流電力(例えば直流電流)を可変し、光源ユニット31の光量を可変しても良い。また、器具ケース21には、停電時等に使用する非常用の電力としてバッテリーを内蔵しても良い。
図3(A)に示すように、電源ボックス33は、光源ユニット31の上方に配置され、電源ボックス33及び光源ユニット31の側方に、電源端子台32が配置されている。
【0019】
(器具ケース21の接地構造)
次に、器具ケース21の接地構造を説明する。
図4は器具ケース21の右端部の分解斜視図を示している。
図3(A)〜
図3(E)及び
図4に示すように、器具ケース21は、3つの筐体部品(筐体部)を結合して構成されている。つまり、器具ケース21は、左右の側板部21Dを構成する左右一対のケース端板51(第2の筐体部)と、ケース本体部52(第1の筐体部)とを結合して構成されている。なお、左右のケース端板51は同一部品であり、左右で上下を反転させて使用する。同一部品であるため、製造するために必要な金型が一種類で足り、部品の共通化が図られコスト削減の効果がある。なお、左右で重複する説明は省略する。
【0020】
同
図4に示すように、ケース本体部52は、背面板部21A、上板部21B及び底板部21Cを構成するように正面に開口するコ字状断面で、左右方向に延びる金属部品で形成され、アルミニウム合金を押出成形することによって製作されている。このように、ケース本体部52を押出成形部品で形成するので、背面板部21A、上板部21B及び底板部21Cをそれぞれ別部品で製作する場合と比べて、部品点数の削減、剛性確保、及び防水等の観点から有利である。
【0021】
このケース本体部52は、器具ケース21の組立前に、上述した耐候性を有する塗料(ポリエステル粉体塗料)で塗装された塗装部品とされている。
左右一対のケース端板51は、同一部品で形成されており、ケース本体部52の左右開口を塞ぐように連結される金属部品である。このケース端板51についても、器具ケース21の組立前に、上述した塗料(ポリエステル粉体塗料)で塗装された塗装部品とされている。
【0022】
ケース本体部52とケース端板51とは、その間に防水用のパッキン54(以下、「防水パッキン54」と言う)を介挿した状態で、左右外側から、前後左右に間隔を空けて複数(本構成では4本)の締結部材であるネジ55を締結することによって締結固定される。
この防水パッキン54により、ケース本体部52とケース端板51との間から雨水等が浸入することが確実に防止される。また、各ネジ55とケース端板51との間にはシール座金56が介挿され、これによって、各ネジ55とケース端板51との間から雨水等が浸入することも防止される。このようにして器具ケース21内への雨水等の浸入を効果的に防止することができる。
【0023】
上述した4本のネジ55は、
図4に示すように、各ネジ55が挿通されるネジ挿通部51A、51B、51C、51D(51Dについては
図3(C)参照)の肉厚によって長さが異なっている。つまり、正面側に位置する上下のネジ挿通部51A、51Cは、背面側に位置する上下のネジ挿通部51B、51Dよりも肉厚に形成されている(
図4及び
図3(C)参照)。このため、正面側に位置する上下のネジ挿通部51C、51Dに挿通される2本のネジ55が、他のネジ55よりも長いネジとされる。
【0024】
本構成では、これら4本のネジ55のうちの1本のネジ55に、より具体的には、相対的に長いネジ挿通部51A、51Cに挿通される2本のネジ55のうちのいずれか一方のネジ55に、セルフタップネジ55X(
図4)が用いられる。そして、このセルフタップネジ55Xが、ケース端板51、及びケース本体部52の双方に設けられた下孔を削ってケース端板51、及びケース本体部52に締結される。
これにより、ケース端板51、及びケース本体部52の各下孔に付着した塗膜が除去され、導体であるセルフタップネジ55Xを介してケース端板51とケース本体部52とを適切に電気的に接続することが可能になる。
なお、本実施形態では4本のネジ55のうち1本をセルフタップネジとしているが、セルフタップネジを複数使用してもよい。
【0025】
ここで、セルフタップネジ55Xは、ネジ込むことで雌ネジを切ることが可能な機能を持つ電導性を有する締結部材であり、このセルフタップネジ55Xには、公知のものを広く適用可能である。
また、残りの3本のネジ55には、公知の締結用ネジ(セルフタップネジを除く)が用いられる。このため、3本のネジ55が締結される箇所(ケース本体部52の後述する孔部52H)には、予めタッピング加工により雌ねじが形成され、この雌ねじにネジ55が締結される。次いで、セルフタップネジ55Xを含むネジ55の締結構造について詳述する。
【0026】
ケース本体部52には、
図4に示すように、側面視で4箇所の角部に相当する位置に、ケース本体部52の幅方向に沿って延在する孔部52Hが形成される。これら孔部52Hは、ケース本体部52を押出成形する際に同時に形成され、上記4本のネジ55を締結する締結用孔として使用される。
なお、上側2箇所の孔部52Hは、上板部21Bの内側面に一体に設けられており、ケース本体部52の奥行方向に平行に間隔を空けて設けた孔である。また、下側2箇所の孔部52Hは、底板部21Cの内側面に一体に設けられ、ケース本体部52の奥行方向に平行に間隔を空けて設けられた孔である。上下の孔部52Hの間隔は、同一の間隔とされ、共通のケース端板51を連結可能に構成されている。
【0027】
セルフタップネジ55Xが締結される孔部52H、押出加工によって形成された下孔そのままとされる。なお、残り3つの孔部52Hは、上述したようにタッピング加工により雌ネジに形成される。また、これら4個の孔部52Hは、一部が開放した孔に形成されている。また、これら4個の孔部52Hは、ケース本体部52の長手方向(幅方向)の全体に渡って延在し、ケース本体部52を補強する補強リブとしても機能することができる。
【0028】
図5は右側のケース端板51を示す図であり、
図5(A)は右側から見た図であり、
図5(B)は
図5(A)のX−X断面図をセルフタップネジ55X等と共に示す図である。
図5(A)に示すように、ケース端板51には、ケース本体部52の上記4個の孔部52Hに連通する孔部である4個のネジ挿通部51A〜51Dが形成される。これらネジ挿通部51A〜51Dのうち、セルフタップネジ55Xが挿通されないネジ挿通部51B〜51Dは、ネジ55が遊びを持って挿通される遊嵌孔を有している。
【0029】
一方、セルフタップネジ55Xが挿通されるネジ挿通部51Aは、
図5(B)に示すように、セルフタップネジ55Xが螺合する下孔部51Sを一部に有した遊嵌孔に形成されている。この下孔部51Sは、セルフタップネジ55Xの外径d0(呼び径)よりも小さい径(d1<d0)の孔であり、ネジ挿通部51Aの入口端、及び後端からそれぞれ予め定めた距離S1、S2だけ離間した位置に設けられている。また、下孔部51S以外の内径d2は、セルフタップネジ55Xの外径d0より大きい径(d2>d0)である。
このように、下孔部51Sを、セルフタップネジ55Xが挿通されるネジ挿通部51Aの途中に設けることにより、セルフタップネジ55Xの螺合時に除去された塗膜が逃げる領域(内径D2の領域に相当)を下孔部51Sの両側に確保することができる。これにより、除去された塗膜を下孔部51Sの外に逃がし、電気的接続をより確実に確保し易くなる。
【0030】
図5(B)中、符号LSは下孔部51Sの長さを示す。この長さLSを長くするほど、セルフタップネジ55Xとの接続長(或いは接続面積)が長くなるので、電気的接続に有利となる一方で、セルフタップネジ55Xの締結に要する力を多く必要とする。
従って、下孔部51Sの長さLSについては、十分な接続長と、締結に要する力とのバランスを考慮して適宜に設定すれば良い。なお、左側のケース端板51は、右側のケース端板51と同一部品であるため、左側のケース端板51においては、ネジ挿通部51Cが、下孔部51Sを有する箇所となり、このネジ挿通部51Cにセルフタップネジ55Xが締結され(
図3(A)、
図3(C)参照)、残りのネジ挿通部51A、51B、51Dに、締結用ネジであるネジ55が締結される。
【0031】
上記したように、器具ケース21を構成するケース本体部52(第1の筐体部)と左右のケース端板51(第2の筐体部)の少なくとも一部はセルフタップネジ55Xで固定されているので、塗装済みのケース本体部52、及びケース端板51同士を容易に電気的に接続することができる。本構成では、
図3に示すように、アース線35Bが、ケース本体部52の底板部21Cに設けた防水型ケーブルクランプ28Bを通ってケース本体部52内に引き込まれ、ケース本体部52に電気的に接続される。これによって、左右のケース端板51のそれぞれにアース線35Bを接続しなくても、左右のケース端板51を接地することができ、簡易な接地構造にすることができる。
【0032】
また、
図4に示したように、ケース本体部52と左右のケース端板51との間に防水パッキン54を有するので、防水構造と接地構造を両立できる。また、セルフタップネジ55Xは、ケース端板51が有する複数のネジ挿通部51A〜51Dのうち、ネジ挿通長に相当する肉厚が相対的に大きいネジ挿通部51Aに締結されるので、セルフタップネジ55Xとケース端板51との接触長を十分に確保し易くなる。
【0033】
また、ケース本体部52(第1の筐体部)と左右のケース端板51(第2の筐体部)のうち、セルフタップネジ55Xが挿入される側の筐体部であるケース端板51のネジ挿通部51A、51Cの一部だけにセルフタップネジ55Xの外径d0よりも小さい径の部分(下孔部51Sに相当)が形成されている。これにより、セルフタップネジ55Xをケース端板51に螺合して電気的接続を確保し易くなる。しかも、セルフタップネジ55Xの螺合時に除去された塗膜を下孔部51Sから逃がしやすくなり、電気的接続をより確実に確保し易くなる。
なお、本実施形態ではネジ挿通部51Aの一部だけに下孔部51Sを設けているが、ネジ挿通部51Aの少なくとも一部に下孔部51Sを設けるようにすれば良い。
【0034】
(光源ユニット31の眩しさ対策)
続いて、光源ユニット31について説明する。
図6は光源ユニット31を周辺構成と共に示す側断面図である。
光源ユニット31は、左右に間隔を空けて同じ高さにLED41が実装されたユニット基板42と、LED41の光を反射する反射鏡43と、ユニット基板42、及び反射鏡43が固定される板状のベース板45とを備えている。なお、
図6中、符号LHはLED41を通る水平面を示し、符号LLはLED41の光軸を示している。また、
図6の右側が正面側(道路100側)であり、
図6の左側が
図1に示す壁部101側である。
【0035】
図7は反射鏡43の斜視図である。反射鏡43は、LED41の光を道路100の路面102全体を照らすように配光する配光部品である。この反射鏡43は、LED41よりも上側に配置された上側反射鏡46と、LED41よりも下側に配置された下側反射鏡47とを一体に備えて構成される。そして、上側反射鏡46の下面(以下、「上側反射面46S」と言う)と、下側反射鏡43Bの上面(以下、「下側反射面47S」と言う)とにより、LED41の光を道路100の路面102に向けて反射する。
この上下の反射面46S、47Sにより
図1に示す道路幅方向Mの配光が制御される。また、上側反射鏡46、及び下側反射鏡47は、断面を押し出した形状、つまり、同一断面で幅方向(
図2に示す道路長手方向Jに相当)に延びる形状に形成され、道路長手方向Jに広く光を照射することが可能である。なお、道路長手方向Jは、車両の進行方向と後退方向を含んでいる。
【0036】
また、反射鏡43は、上側反射鏡46及び下側反射鏡47の両縁間を架橋する左右一対の側板48を一体に有しており、この側板48の内側の面が反射面48Sに形成されている。この左右の側板48を設けた分、側板48を設けない場合と比べて、照明器具10から道路100側に出射する光を増やすことができ、光の器具取り出し効率を高めることができる。
反射鏡43の各反射面46S、47S、48Sは、アルミ蒸着された面とされる。これにより、拡散反射成分を抑えた反射面にすることができ、上方光束の増加を抑え易くなる。なお、各反射面46S、47S、48Sは、アルミ蒸着された面に限らず、正反射成分が主であり、拡散成分が少ない反射面であれば良い。
【0037】
ベース板45(
図6)は、金属製の板材で形成され、器具ケース21の背面板部21Aに取り付けられる。このベース板45は、
図6に示すように、LED41の光軸LLが路面102に向けて水平向きより下向きになるように斜めに傾けて取り付けられる。これにより、LED41の光軸LLを水平向きにした場合と比べて、下側反射面47Sへの光量を多く割り振ることができる。本構成では、ベース板45の傾斜角度θ1を10°に設定しているが、10°に限らず、8〜12°の範囲にする等、傾斜角度θ1は適宜に調整すれば良い。
また、LED41は、左右(走行方向や道路長手方向Jに相当)に間隔を空けて水平に一列に並んでおり、単数で用いる場合と比べて、左右への照射角度、つまり、水平角を広くできるとともに、各LED41を垂直方向にずらして配置する場合と比べて、上方光束の増加及び運転者への眩しさを抑えている。
【0038】
図8は上下反射面46S及び下側反射面47SをLED41と共に示す図であり、
図8(A)は上下反射面46S及び下側反射面47SとLED41の位置関係を模式的に示す図である。また、
図8(B)は
図8(A)に、LED41から上側反射面46Sに入射する光を示した図である。なお、以下に説明する鉛直角は、鉛直方向を0°とした場合の角度である。
図8(A)に示すように、上側反射面46Sは、LED41側の基端部46RからLED41と反対側の先端部46Fに向かって概ね下方に傾斜し、先端部46Fが、LED41と水平な位置である水平面LHよりも下側まで延伸している。このため、器具正面視で、上側反射鏡46がLED41の発光中心を覆う。
すなわち、上側反射鏡46はLED41の発光中心が正面から見えないようにする遮蔽部材を兼ねる。これにより、LED41から上方向への光束を抑制するとともに、LED41を正面から運転者が直視できないようにすることができる。従って、運転者への眩しさを効果的に抑制することができる。
【0039】
この上側反射面46Sは、
図8(B)に示すように、LED41から上向き及び水平方向に出射される光を少なくとも水平方向(水平面LHに沿った方向)よりも下向きに反射する。ここで、上側反射面46Sは、LED41側の基端部46Rに近いほど入射角が大きくなり、LED41と反対側の先端部46F側にいくほど入射角が小さくなる傾斜面に形成されているので、基端部46Rに近いほど道路幅方向Mの遠方に向けて光を反射することができる。
また、LED41は上側反射面46S寄りに設けられ、上側反射面46Sへの入射角度が過度に大きくならないようにしている。また、上側反射面46Sは、LED41の上方に隙間SSを開けて配置され、誘導雷サージの影響を受けづらくするように上側反射面46Sとユニット基板42上のLED41の底面の通電部とを十分に離間させている。
【0040】
より具体的には、基端部46R側の領域Y1(
図8(B)参照)で示される基端側反射面(以下、「基端側反射面Y1」と言う)は、水平面LHに対して9°〜30°の角度範囲で下向きに光を反射するようになだらかに連続する連続面に形成されている。これにより、鉛直角度で60°〜81°の範囲内に光を配光制御し、道路幅方向Mの比較的遠方側である第1車線103中程〜第2車線104全体の範囲を照明することができる。
また、この基端部反射面Y1は、なだらかに連続する連続面に形成されているので、道路長手方向Jに延びる縞状のムラを抑制することができる。
【0041】
この上側反射面46Sは、先端部46F側にいくほど入射角が小さくなるので、先端部46Fに近いほど道路幅方向Mの手前に向けて光を反射することができる。同
図8(B)に示すように、上記基端側反射面Y1よりも先端側の領域Y2で示される先端側反射面(以下、「先端側反射面Y2」と言う)は、水平面LHに対して30°〜45°の角度範囲で下向きに光を反射するようになだらかに湾曲する連続面に形成されている。これにより、鉛直角度で45°〜60°の範囲内に光を配光制御し、道路幅方向Mの比較的手前側である路肩W2〜第1車線103中程の範囲を照明可能であるとともに、道路長手方向Jに延びる縞状のムラを抑制することができる。
【0042】
また、この先端側反射面Y2と基端側反射面Y1とをつなぐ領域についても、なだらかに連続する連続面に形成され、道路長手方向Jに延びる縞状のムラを抑制することができる。
なお、この先端側反射面Y2がLED41を通る水平面LHを横断することで、上側反射鏡46を、LED41の発光中心を正面から見えないようにする遮蔽部材として機能させるようになっている。なお、上述した反射角度は、照明器具10の設置高さH1や路肩の幅W2が変わった場合には、その変更に合わせて適宜に変更しても良い。
このように、上側反射面46SのLED41から離れた先端側反射面Y2を、LED41寄りの基端側反射面Y1よりも水平方向下側に光を反射するように構成したので、光源であるLED41を正面から見えないようにしながら、上側反射面46Sにより、道路幅方向Mに広く配光制御し易くなる。
【0043】
図9は、
図8(A)に、LED41から下側反射面47Sに入射する光を示した図である。
図9に示すように、下側反射面47Sは、LED41側の基端部47RからLED41と反対側の先端部47Fに向かって下方に傾斜し、上側反射面46Sの先端部46Fの下方まで前方に延出する。
この下側反射面47Sは、LED41から下向きに出射される光を少なくとも水平方向よりも下向きに反射する反射面であり、道路100の異なる領域を狙う複数の放物形状の反射面(基端側反射面Z1、先端側反射面Z2)を組み合わせた形状に形成されている。
【0044】
ここで、発明者等が検討したところ、道路幅方向Mの遠方(
図1に示す第2車線104)へはピーク状の配光形状となる強い光を照射しなければ、目標の路面照度(輝度)と路面均斉度とを得ることが難しかった。しかし、配光形状におけるピークの幅が狭く、強度が強すぎると、道路幅方向Mの遠方でムラができるおそれがある。そこで、本構成では、狙う角度を微妙にずらした複数の放物形状の反射面を組み合わせている。
すなわち、下側反射面47Sは、基端側の領域Z1で示される基端側反射面(「基端側反射面Z1」と表記する)と、先端側の領域Z2で示される先端側反射面(「先端側反射面Z2」と表記する)とからなる2つの反射面を有している。
【0045】
基端側反射面Z1は、水平方向に対して俯角10°(鉛直角度で80°)を狙う放物面に形成される。また、先端側反射面Z2は、水平方向に対して7.8°(鉛直角度で82.2°)を狙う放物面に形成されている。このようにして、鉛直角度で80°〜82.2°の範囲に最大光度を設定し、道路幅方向Mの遠方で目標の路面照度(輝度)と路面均斉度とを得るようにしている。
また、基端側反射面Z1と先端側反射面Z2の2つのピークの合成により見かけ上幅の広いピークができることから、道路長手方向Jに延びる縞状のムラを抑制することができる。
【0046】
このように、下側反射面47SのLED41寄りの基端側反射面Z1を、LED41から離れた先端側反射面Z2よりも水平方向下側に光を反射するように形成し、LED41から離れた先端側反射面Z2により道路幅方向Mで遠方を照明するようにしたので、光源であるLED41の大きさ(特に
図9の上下方向の幅)の影響を抑えて鋭いピークを作りやすくなる。従って、アルミ蒸着表面の小さなうねり等による拡散照射が生じても鉛直方向、及び上方向への光束を、より発生し難くすることができる。
例えば、
図9に示すように、下側反射面47Sの基端側反射面Z1の地点P1には、LED41から角度8.05°の幅を持つ光が入射するので、拡散がなかったとしても、地点P1からは角度8.05°のばらつきを持つ光が出射される。
【0047】
これに対し、下側反射面47Sの先端側反射面Z2の地点P2には、LED41から角度3.8°の幅を持つ光が入射するので、地点P2からは、地点P1よりも拡がりが小さい光(拡散がなかった場合、角度3.8度のばらつきを持つ光)が出射される。これにより、先端側反射面Z2の方が、ばらつきを抑えた光を出射でき、道路幅方向Mの遠方(第2車線104)を照明するのに好適なピークを作り易くなる。従って、アルミ蒸着表面の小さなうねり等で生じる、鉛直方向、及び上方向への拡散反射光を抑制しつつ、遠方を適切に照明し易くなる。
【0048】
以上説明したように、本構成の照明器具10は、道路100を走行する車両の運転者の目線近くの高さに設置される低位置照明器具であり、この構成の下(
図1参照)、
図8(A)に示すように、光軸LLが水平より下向きになるよう配置された発光素子であるLED41と、LED41よりも上側に配置された上側反射鏡46と、LED41よりも下側に配置された下側反射鏡47とを有し、上側反射鏡46はLED41と水平な位置より下側まで延伸している。これにより、上方光への光束を抑制でき、運転者が感じる眩しさを抑制することができる。
【0049】
また、
図8(B)に示すように、上側反射鏡46の反射面46Sはなだらかに連続する面であり、上側反射鏡46は先端側の方が水平方向下側にLED41からの光を反射させている。これにより、道路長手方向Jに延びる縞状のムラを抑制するとともに、光源であるLED41を正面から見えないようにしながら道路幅方向Mに広く配光制御し易くなる。
【0050】
また、
図9に示すように、下側反射鏡47の反射面47Sは異なる方向を狙う複数の放物形状を組合せた面であり、下側反射鏡47は、基端側の方が水平方向下側にLED41からの光を反射させている。これにより、道路長手方向Jに延びる縞状のムラを抑制するとともに、光源であるLED41の大きさ(特に
図9の上下方向の幅)の影響を抑えて、道路幅方向Mの最遠方に必要な、鋭いピークを作りやすくなり、アルミ蒸着表面の小さなうねり等で生じる拡散照射が生じても鉛直方向、及び上方向への光束が発生し難くなる。
【0051】
また、この照明器具10は、
図8(B)に示すように、下側反射面47Sの基端側反射面Z1により鉛直角度で80°を狙うように配光制御し、下側反射面47Sの先端側反射面Z2により鉛直角度で82.2°を狙うように配光制御している。これにより、鉛直角度で80°〜82.2°の範囲に最大光度を設定し、目標の路面照度(輝度)と路面均斉度とを得ることができる。
なお、目標の路面照度と路面均斉度とを両立できる範囲で、最大光度の範囲を調整しても良く、発明者等の検討によると、鉛直角度78°〜86°の範囲に最大光度を有するように設定することにより、目標の路面照度と路面均斉度とを両立することが可能であった。
【0052】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一実施の態様を例示するものであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
例えば、上述した実施形態において、発光素子の一例として、LEDを例示したが、有機EL等の任意の発光素子を用いることができる。また、LEDの一例として、高輝度化に有利なCOB型LED等の高出力型のLEDを用いるようにしても良く、任意のLEDを用いることができる。
また、上述した器具ケース21の接地構造は、ケース本体部52とケース端板51の少なくとも一部をセルフタップネジ55Xで固定することによって、ケース本体部52とケース端板51とを電気的に接続する場合を説明したが、この接地構造に限定されない。
【0053】
図10は器具ケース21の他の接地構造を示している。この
図10に示す構造では、セルフタップネジ55Xを用いておらず、全てのネジ55に公知の締結用ネジを用いている。また、上述した実施形態と同様の構成は同一の符号を付して示し、重複説明は省略する。
図10に示すように、ケース端板51には、ケース本体部52に向けて突出する複数の突起部57が一体に設けられている。これら突起部57は、ケース端板51を、防水パッキン54を介してケース本体部52に当接させた場合に、防水パッキン54の内側を通ってケース本体部52に当接し、ケース本体部52の当接箇所の塗膜を削ってケース本体部52に接触する。
また、これら突起部57は、薄板状に形成され、ネジ55を用いてケース端板51とケース本体部52とを締結する際に作用する力で容易に変形し、ケース端板51とケース本体部52との間の隙間を適切に閉塞することができる。これらにより、塗装済みのケース端板51とケース本体部52とを容易に電気的に接続でき、簡易な接地構造を得ることができる。
【0054】
また、
図10では、突起部57が先端に向けて細くなる先細形状に形成されることで、塗膜を削りやすい形状に形成されている。なお、突起部57の形状や数等は上述のものに限らず、適宜に変更しても良い。また、突起部57は、器具ケース21を構成する複数の筐体部であるケース端板51及びケース本体部52の少なくともいずれか一方にあれば良い。例えば、突起部57をケース本体部52に設けるようにしても良いし、ケース端板51とケース本体部52の両方に設けるようにしても良い。
【0055】
上述した接地構造は、道路100を照明する照明器具10に適用する場合に限らず、塗装済みの複数の筐体部から構成される筐体(器具ケース21)を備える照明器具に広く適用可能である。
また、上述した照明器具10が具備する反射鏡43についても、上側反射鏡46及び下側反射鏡47が一体の構成に限らず、別体の構成であっても良く、適宜に変更が可能である。