(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定手段は、前記アクセル開度が所定値以上であり、かつ前記燃料噴射量が、前記回転数に対応する走行状態の負荷に対応する下限量以上であるという条件が満たされたことを記憶部に記憶させることを特徴とする、
請求項3に記載の異常検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の方法においては、ギアの状態、クラッチの状態、及びエンジンの回転数に基づいて走行状態であるか否かを判定し、走行状態であるにもかかわらず車速が所定値以下である場合に、車速センサに異常が発生したと判定していた。しかしながら、ギアの状態、クラッチの状態、及びエンジンの回転数に基づいて走行状態であるか否かを判定する場合、トラック等の特装車の架装物を駆動する動力を走行用エンジンから取り出す装置であるPTO(Power Take Off)が動作することにより、走行中でないにもかかわらず、走行中であると判定してしまうことがあった。その結果、車速センサに異常が発生していないにもかかわらず、異常が発生したと誤判定してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、車両の走行速度を検出する装置に発生した異常を検知する精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の異常検出装置は、エンジンの回転数を示す回転数情報を取得するエンジン情報取得手段と、ギア状態を示すギア情報を取得するギア情報取得手段と、クラッチ状態を示すクラッチ情報を取得するクラッチ情報取得手段と、前記エンジンの動力を取り出す装置であるPTOの動作状態を示すPTO情報を取得するPTO情報取得手段と、車両の走行速度を検出する速度検出手段と、前記回転数、前記ギア状態、前記クラッチ状態、及び前記PTO状態が、前記車両が走行している走行状態を示しており、かつ前記速度検出手段が検出した走行速度が所定の閾値以下である場合に、前記速度検出手段に異常が生じたと判定する判定手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
このような構成により、異常検出装置は、ギアの状態、クラッチの状態、及びエンジンの回転数に基づいて走行状態であると判定され得る場合であっても、PTOが動作している場合には走行状態ではないと判定することができるので、速度検出手段における異常の発生の判定精度を向上させることができる。
【0008】
前記判定手段は、前記クラッチ状態が変化したことを検出するまでの間は、前記回転数、前記ギア状態及び前記PTO状態が走行状態を示しており、かつ前記速度検出手段が検出した走行速度が所定の閾値以下である場合に、前記速度検出手段に異常が生じたと判定し、前記クラッチ状態が変化したことを検出した後は、前記回転数、前記ギア状態、前記クラッチ状態及び前記PTO状態が走行状態を示しており、かつ前記速度検出手段が検出した走行速度が所定の閾値以下である場合に、前記速度検出手段に異常が生じたと判定してもよい。
【0009】
このような構成により、異常検出装置は、クラッチの状態を示すクラッチスイッチが故障している場合であっても、異常検出装置が、速度検出手段に異常が発生したか否かを正しく判定でき、クラッチスイッチが故障していないことを確認できた後は、クラッチスイッチの状態を用いて、異常が発生したことを正しく検出することができるようになる。
【0010】
上記のエンジン情報取得手段は、アクセル開度及び燃料噴射量をさらに取得し、前記判定手段は、前記アクセル開度が所定値以上であり、かつ前記燃料噴射量が、前記回転数に対応する走行状態における燃料噴射量の下限量以上であるにもかかわらず、前記速度検出手段が検出した走行速度が所定の閾値以下である場合に、前記速度検出手段に異常が生じたと判定してもよい。このような構成により、クラッチスイッチ又はギアの状態を示すニュートラルスイッチが故障している場合であっても、異常検出装置が、速度検出手段に異常が発生したか否かを正しく判定することができる。
【0011】
前記判定手段は、前記アクセル開度が所定値以上であり、かつ前記燃料噴射量が、前記回転数に対応する走行状態の負荷に対応する下限量以上であるという条件が満たされたことを記憶部に記憶させてもよい。このような構成により、異常検出装置は、アクセルペダルが踏まれた後に短時間で開放された場合であっても、走行状態であるか否かを正しく判定することができるので、速度検出手段における異常の発生の検出精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両の走行速度を検出する装置に発生した異常を検知する精度を向上させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
[異常検出装置1の構成]
図1は、第1の実施形態に係る異常検出装置1の構成を示す図である。異常検出装置1は、エンジン制御ユニット2、ニュートラルスイッチ3、クラッチスイッチ4、PTOスイッチ5及び車速センサ6と接続されている。異常検出装置1は、エンジン制御ユニット2、ニュートラルスイッチ3、クラッチスイッチ4、PTOスイッチ5及び車速センサ6から取得した情報に基づいて、速度検出手段に異常が生じていることを検出し、検出結果をインストルメント・パネル内のディスプレイに表示させる。速度検出手段には、車速センサ6と異常検出装置1とを接続する配線、及び車速センサ6が含まれる。
【0015】
エンジン制御ユニット2は、アクセル開度及び燃料噴射量を制御し、エンジンを動作させる。エンジン制御ユニット2は、エンジンの回転数を示す情報を異常検出装置1に通知する。
ニュートラルスイッチ3は、ギアがニュートラル状態であるか否かによってオン状態とオフ状態とが変化するスイッチである。本実施形態におけるニュートラルスイッチ3は、ギアが入っている状態でオフ状態になり、ギアが入っていないニュートラル状態でオン状態になるものとする。
【0016】
クラッチスイッチ4は、クラッチが接続された状態であるか否かによってオン状態とオフ状態とが変化するスイッチである。本実施形態におけるクラッチスイッチ4は、クラッチが接続されている状態でオフ状態になり、クラッチが開放された状態でオン状態になるものとする。
【0017】
PTOスイッチ5は、PTOが動作している状態であるか否かによってオン状態とオフ状態とが変化するスイッチである。本実施形態におけるPTOスイッチ5は、PTOが動作している状態でオン状態になり、PTOが動作していない状態でオフ状態になるものとする。なお、パーキングブレーキがかかった状態でなければPTOが動作しない車両の場合、パーキングブレーキがかかった状態であるか否かが、PTOが動作しているか否かと等価である。そこで、PTOスイッチ5は、パーキングブレーキの状態に連動して、オン状態とオフ状態とが変化するスイッチであってもよい。
【0018】
車速センサ6は、車輪の回転に応じてパルス信号を出力する。車速センサ6は、車輪の回転速度に比例する数のパルス信号を単位時間内に出力する。
【0019】
以下、異常検出装置1の構成について詳細に説明する。異常検出装置1は、記憶部11と、制御部12とを有する。
記憶部11は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含んでいる。記憶部11は、制御部12が実行するプログラムを記憶している。また、記憶部11は、速度検出手段に異常が生じているか否かを判定するために用いられる各種の閾値、ニュートラルスイッチ3が正常に動作しているか否かを示すニュートラルスイッチフラグ、クラッチスイッチ4が正常に動作しているか否かを示すクラッチスイッチフラグ、及びPTOスイッチ5が正常に動作しているか否かを示すPTOスイッチフラグを記憶している。また、記憶部11は、車速センサ6が出力する単位時間当たりのパルス信号の数と車両の走行速度との関係を示す情報を記憶している。
【0020】
制御部12は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部12は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、エンジン情報取得部121、ギア情報取得部122、クラッチ情報取得部123、PTO情報取得部124、速度検出部125及び判定部126として動作する。
【0021】
エンジン情報取得部121は、エンジン制御ユニット2からエンジンの状態に関する各種の情報を取得する。エンジン情報取得部121は、例えば、エンジンの回転数を示す回転数情報を取得し、回転数情報を判定部126に通知する。
【0022】
ギア情報取得部122は、ニュートラルスイッチ3から、ギアがニュートラル状態であるか否かというギアの状態を示すギア情報を取得し、取得したギア情報を判定部126に通知する。ギア情報取得部122は、ニュートラル状態からギアが入った状態に変化したことを検出すると、ニュートラルスイッチ3が正常に動作していることを示す情報を記憶部11に記憶させる。例えば、ギア情報取得部122は、記憶部11が記憶しているニュートラルスイッチフラグの値を0から1に変化させる。
【0023】
クラッチ情報取得部123は、クラッチスイッチ4から、クラッチが接続された状態であるか否かというクラッチ状態を示すクラッチ情報を取得し、取得したクラッチ情報を判定部126に通知する。クラッチ情報取得部123は、クラッチが開放された状態から、クラッチが接続された状態に変化したことを検出すると、クラッチスイッチ4が正常に動作していることを示す情報を記憶部11に記憶させる。例えば、クラッチ情報取得部123は、記憶部11が記憶しているクラッチスイッチフラグの値を0から1に変化させる。
【0024】
PTO情報取得部124は、PTOスイッチ5から、PTOが動作中であるか否かというPTOの状態を示すPTO情報を取得し、取得したPTO情報を判定部126に通知する。PTO情報取得部124は、PTOの動作状態が変化したことを検出すると、PTOスイッチ5が正常に動作していることを示す情報を記憶部11に記憶させる。例えば、PTO情報取得部124は、記憶部11が記憶しているPTOスイッチフラグの値を0から1に変化させる。
【0025】
速度検出部125は、車速センサ6から、単位時間当たりの車輪の回転数を示すパルス信号を取得し、取得したパルス信号に基づいて、車両の走行速度を検出する。具体的には、速度検出部125は、単位時間当たりのパルス信号の数と走行速度との関係を示す情報を記憶部11から読み出すことにより、車速センサ6から取得したパルス数に対応する走行速度を特定する。速度検出部125は、特定した走行速度を判定部126に通知する。
【0026】
判定部126は、エンジン情報取得部121が取得した回転数情報、ギア情報取得部122が取得したギア情報、クラッチ情報取得部123が取得したクラッチ情報、PTO情報取得部124が取得したPTO情報、及び速度検出部125が検出した走行速度に基づいて、速度検出手段に異常が生じているか否かを判定する。具体的には、判定部126は、まず、回転数情報が、走行状態における回転数の下限値以上の回転数を示しており、ギア情報が、ギアが入った状態を示しており、クラッチ情報が、クラッチが接続された状態を示しており、PTO情報が、PTOが動作していない状態を示している場合に、走行状態であると判定する。そして、判定部126は、走行状態であるにもかかわらず、速度検出部125が検出した走行速度が所定の閾値以下である場合に、速度検出手段に異常が生じたと判定する。
【0027】
判定部126は、ニュートラルスイッチ3、クラッチスイッチ4及びPTOスイッチ5の全てが変化したことを検出するまでの間は、変化したことを検出していないスイッチ以外のスイッチに基づいて得られる情報を用いて、走行状態であるか否かを判定してもよい。例えば、判定部126は、クラッチ状態が変化したことを検出するまでの間は、回転数、ギア状態、及びPTOの状態が走行状態を示しており、かつ速度検出手段が検出した走行速度が所定の閾値以下である場合に、速度検出手段に異常が生じたと判定してもよい。
【0028】
具体的には、判定部126は、記憶部11が記憶しているクラッチスイッチフラグを参照し、クラッチ状態が、オフ状態からオン状態、又はオン状態からオフ状態に一度も変化していないと認識した場合、クラッチスイッチ4が故障している可能性があるので、クラッチ情報を用いることなく、異常の発生の有無を判定する。より具体的には、判定部126は、回転数が、走行状態の回転数の下限値以上であり、ギアが入っている状態であり、PTOが動作していない状態であるにもかかわらず、走行速度が、記憶部11に記憶された閾値速度(例えば、時速5km)以下である場合、速度検出手段に異常が発生したと判定する。
【0029】
判定部126は、クラッチ状態が変化したことを検出した後は、回転数、ギア状態、クラッチ状態及びPTOの状態が走行状態を示しており、かつ速度検出手段が検出した速度が所定の閾値以下である場合に、速度検出手段に異常が生じたと判定する。例えば、判定部126は、記憶部11が記憶しているクラッチスイッチフラグを参照し、クラッチ状態が、オフ状態からオン状態、又はオン状態からオフ状態に変化した実績があると認識した場合、クラッチスイッチ4が正常に動作していると考えられるので、クラッチ情報を用いて、異常の発生の有無を判定する。具体的には、判定部126は、回転数が、走行状態の回転数の下限回転数以上であり、ギアが入っている状態であり、PTOが動作中でなく、かつクラッチが接続された状態であるにもかかわらず、走行速度が、記憶部11に記憶された閾値速度以下である場合、速度検出手段に異常が発生したと判定する。
【0030】
[異常検出装置1における判定処理の手順を示すフローチャート]
図2は、判定部126が実行する判定処理の手順を示すフローチャートである。
判定部126は、まず、エンジンの回転数が、走行状態における回転数の下限値以上であるか否かを判定する(S11)。判定部126は、エンジンの回転数が下限値よりも小さい場合(S11においてNo)、速度検出部125が検出した走行速度が所定の閾値以下であっても問題ないので、S12に進むことなくS11の処理を繰り返す。判定部126は、エンジンの回転数が下限値以上である場合(S11においてYes)、S12に進む。
【0031】
判定部126は、S12において、ギア情報取得部122が取得したギア情報に基づいて、ギアが入っているか否かを判定する。判定部126は、ギアが入っていないと判定した場合(S12においてNo)、速度検出部125が検出した走行速度が所定の閾値以下であっても問題ないので、S13に進むことなくS11に戻る。判定部126は、ギアが入っていると判定した場合(S12においてYes)、S13に進む。
【0032】
判定部126は、S13において、PTO情報取得部124が取得したPTO情報に基づいて、PTOが動作中であるか否かを判定する。判定部126は、PTOが動作中であると判定した場合(S13においてYes)、速度検出部125が検出した走行速度が所定の閾値以下であっても問題ないので、S14に進むことなくS11に戻る。判定部126は、PTOが動作中ではないと判定した場合(S13においてNo)、S14に進む。
【0033】
判定部126は、S14において、速度検出部125が検出した走行速度が所定の閾値より小さいか否かを判定する。判定部126は、走行速度が所定の閾値以上である場合(S14においてNo)、速度検出手段が正常に動作していると考えられるので、S15に進むことなくS11に戻る。判定部126は、走行速度が所定の閾値よりも小さい場合(S14においてYes)、速度検出手段が故障している可能性があるので、S15に進む。
【0034】
判定部126は、S15において、記憶部11が記憶しているクラッチスイッチフラグを参照する。判定部126は、クラッチスイッチフラグが、クラッチ状態が過去に変化したことを示している場合、クラッチ情報取得部123からクラッチ情報を取得し、クラッチが接続中であるか否かを判定する(S16)。判定部126は、クラッチが接続中であると判定した場合(S16においてYes)、走行速度が閾値以上であるべきであるにもかかわらず、速度検出部125が検出した走行速度が閾値より小さいことから、速度検出手段に異常が発生していると判定し(S17)、判定結果を出力する(S18)。判定部126は、S16において、クラッチが開放中であると判定した場合(S16においてNo)、速度検出手段に異常が発生していないと判定してS11に戻る。
【0035】
判定部126は、S15において、クラッチスイッチフラグが、クラッチ状態が過去に変化していないことを示している場合、クラッチスイッチ4が故障している可能性があるので、回転数及びギア情報に基づいて、速度検出手段に異常が発生していると判定する(S19)。
なお、上記のS11からS13までの処理の順序は任意である。
【0036】
(変形例)
以上の説明において、判定部126は、クラッチの状態が過去に変化したことがあるか否かに基づいて、速度検出手段に異常が発生したか否かの判定に、クラッチスイッチ4の状態を用いるか否かを切り替えるものとして説明した。判定部126は、ギア状態が過去に変化したことがあるか否かに基づいて、速度検出手段に異常が発生したか否かの判定に、ニュートラルスイッチ3の状態を用いるか否かを切り替えてもよい。同様に、判定部126は、PTOの動作状態又はパーキングブレーキの状態が過去に変化したことがあるか否かに基づいて、速度検出手段に異常が発生したか否かの判定に、PTOスイッチ5の状態を用いるか否かを切り替えてもよい。
【0037】
具体的には、判定部126は、記憶部11が記憶しているニュートラルスイッチフラグを参照し、ギア状態が変化したことを検出するまでの間は、回転数、クラッチ状態及びPTOの状態が走行状態を示しており、かつ速度検出手段が検出した走行速度が所定の閾値以下である場合に、速度検出手段に異常が生じたと判定してもよい。また、判定部126は、ギア状態が変化したことを検出した後は、回転数、ギア状態、クラッチ状態及びPTOの状態が走行状態を示しており、かつ速度検出手段が検出した速度が所定の閾値以下である場合に、速度検出手段に異常が生じたと判定してもよい。
【0038】
なお、以上の説明においては、判定部126が、エンジンの回転数、ギア状態、クラッチ状態、及びPTO状態に基づいて、走行状態であるか否かを判定するものとしたが、これに限らない。判定部126は、これらの各種の状態のうち、一部の状態に基づいて走行状態であるか否かを判定してもよい。
【0039】
[第1の実施形態における効果]
以上説明したように、第1の実施形態に係る異常検出装置1の判定部126は、エンジンの回転数、ギアの状態、クラッチの状態及びPTOの状態に基づいて走行状態であると判定したにもかかわらず、検出した走行速度が所定の閾値以下である場合に、速度検出手段に異常が発生したと判定する。このようにすることで、ギアの状態、クラッチの状態、及びエンジンの回転数に基づいて走行状態であると判定され得る場合であっても、PTOが動作している場合には走行状態ではないと判定することができるので、速度検出手段における異常の発生の判定精度を向上させることができる。
【0040】
また、判定部126は、クラッチスイッチ4の状態が過去に変化したことがあるか否かに基づいて、速度検出手段に異常が発生したか否かの判定にクラッチスイッチ4の状態を用いるか否かを切り替える。このようにすることで、クラッチスイッチ4に故障が発生している場合に、判定部126が、速度検出手段に異常が発生しているにもかかわらず、異常が発生していないという誤った判断をしてしまうことを防ぐことができるので、異常の検出精度を向上させ、安全性を高めることができる。
【0041】
<第2の実施形態>
第1の実施形態に係る異常検出装置1は、エンジンの回転数、ギアの状態、クラッチの状態及びPTOの状態に基づいて、速度検出手段に異常が発生しているか否かを判定した。これに対して、第2の実施形態に係る異常検出装置1は、アクセル開度及び燃料噴射量に基づいて、速度検出手段に異常が発生しているか否かを判定する点で、第1の実施形態と異なる。第1の実施形態におけるエンジン情報取得部121は、エンジン制御ユニット2からエンジンの回転数を示す回転数情報を取得したが、第2の実施形態におけるエンジン情報取得部121は、アクセル開度を示す情報、及び燃料噴射量を示す情報をエンジン制御ユニット2から取得する点で、第1の実施形態におけるエンジン情報取得部121と異なる。
【0042】
また、第2の実施形態における記憶部11は、エンジンの回転数と、走行中の負荷が発生している場合の燃料噴射量の下限値とを関連付けた、燃料噴射量テーブルを記憶している。判定部126は、記憶部11に記憶された燃料噴射量テーブルを参照し、アクセル開度が所定値以上であり、かつ走行中であることを示す時間以上の期間において、走行状態に生じる負荷が発生しているにもかかわらず、速度検出部125が検出した走行速度が閾値以下である場合に、速度検出手段に異常が生じたと判定する。具体的には、判定部126は、アクセル開度が所定値以上であり、かつエンジンの回転数に対応する走行状態の負荷に対応する下限量以上である状態が、エンジンを起動させてから走行を開始するまでに要する時間以上の期間にわたって続いているにもかかわらず、速度検出部125が検出した走行速度が閾値以下である場合に、速度検出手段に異常が生じたと判定する。
【0043】
ここで、判定部126は、アクセル開度が所定値以上であり、かつ走行中であることを示す時間以上の期間において燃料噴射量が下限値を超えており、走行状態に生じる負荷が発生しているという条件が満たされると、その旨を記憶部11に記憶させる。このようにすることで、判定部126は、上記の条件が満たされた後、すぐにアクセルペダルが開放されてしまったとしても、過去に条件が満たされたという記憶部11内の情報に基づいて、走行状態であると判定し、速度検出手段に異常が発生したことを検出することができる。例えば、判定部126は、所定の時間以上の期間において、短い時間間隔で繰り返しアクセルペダルが踏まれている場合のように、上記の条件が繰り返し満たされる場合には、走行状態であると判定することができる。
【0044】
判定部126は、停車中であるにもかかわらず、PTOの動作により、走行状態の負荷が発生していると誤検知することを防ぐために、PTO情報取得部124が取得したPTO情報に基づいて、走行状態であるか否かを判定してもよい。判定部126は、PTO情報が、PTOが動作中でないことを示していることを条件として、速度検出手段に異常が生じたと判定してもよい。このようにすることで、PTOを動作させるために燃料噴射量が大きくなっているにもかかわらず、速度検出部125が検出した走行速度が小さい場合に、判定部126が、速度検出手段に異常が発生したと誤判定してしまうことを防止できる。なお、判定部126は、PTO情報を用いる代わりに、パーキングブレーキの状態を示す情報に基づいて、走行状態であるか否かを判定してもよい。
【0045】
[異常検出装置1における判定処理の手順を示すフローチャート]
図3は、第2の実施形態に係る異常検出装置1における判定部126が実行する判定処理の手順を示すフローチャートである。
まず、判定部126は、エンジン情報取得部121が取得したアクセル開度が、走行状態に対応する閾値以上であるか否かを判定する(S21)。判定部126は、アクセル開度が閾値よりも小さい場合は(S21においてNo)、走行状態でないと判定し、アクセル開度が閾値以上になるまでS21の処理を繰り返す。
【0046】
判定部126は、S21においてアクセル開度が閾値以上であると判定した場合(S21においてYes)、燃料噴射量が、所定の時間以上の期間において、エンジンの回転数に対応する燃料噴射量の下限量以上であるか否かを判定する(S22)。判定部126は、燃料噴射量が下限量よりも小さい場合は(S22においてNo)、走行状態でないと判定し、S21に戻る。
【0047】
続いて、判定部126は、所定の時間以上の期間において燃料噴射量が下限量以上であると判定した場合(S22においてYes)、速度検出部125が検出した走行速度が閾値より小さいか否かを判定する(S23)。判定部126は、走行速度が閾値以上であると判定した場合(S23においてNo)、速度検出手段に異常が発生していないと判定し、S21に戻る。
【0048】
判定部126は、速度検出部125が検出した走行速度が閾値より小さいと判定した場合(S23においてYes)、PTOが動作しているか否かを判定する(S24)。判定部126は、PTOが動作していると判定した場合(S24においてYes)、走行状態ではないと判定し、S21に戻る。判定部126は、PTOが動作していないと判定した場合(S24においてNo)、走行状態であるにもかかわらず、速度検出部125が検出した走行速度が閾値より小さいことから、速度検出手段に異常が発生していると判定し(S25)、判定結果を出力する(S26)。
【0049】
なお、判定部126は、S21及びS22の処理と
図2に示したS11からS13までの処理とを、連続して実行してもよい。また、判定部126は、S21及びS22の処理、及びS11からS13までの処理を並行して実行し、両方の処理の結果に基づいて速度検出手段に異常が発生しているか否かを判定してもよい。
【0050】
[第2の実施形態における効果]
以上説明したように、第2の実施形態に係る異常検出装置1は、アクセル開度及び燃料噴射量に基づいて走行状態であるか否かを判定し、走行状態であると判定したにもかかわらず、速度検出部125が検出した走行速度が閾値より小さい場合に、速度検出手段に異常が発生していると判定する。このようにすることで、ニュートラルスイッチ3又はクラッチスイッチ4が故障していても、速度検出手段の異常を正しく検出することができる。
【0051】
また、異常検出装置1は、アクセル開度が所定値以上であり、かつ燃料噴射量が、エンジンの回転数に対応する走行状態の負荷に対応する下限量以上であるという条件が満たされたことを記憶部11に記憶させる。このようにすることで、異常検出装置1は、アクセルペダルが踏まれた後に短時間で開放された場合であっても、走行状態であるか否かを正しく判定することができる。
【0052】
また、異常検出装置1は、PTOの動作状態にさらに基づいて走行状態であるか否かを判定することもできる。このようにすることで、異常検出装置1は、停車している状態でPTOを動作させたことにより燃料噴射量が大きくなっている場合に、走行状態であると誤判定することを防止できる。
【0053】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。