特許第6582575号(P6582575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6582575レンズ駆動装置、カメラモジュール、及びカメラ搭載装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6582575
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】レンズ駆動装置、カメラモジュール、及びカメラ搭載装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20060101AFI20190919BHJP
   G02B 7/02 20060101ALI20190919BHJP
   G03B 15/00 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   G02B7/04 E
   G02B7/02 Z
   G03B15/00 V
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-118287(P2015-118287)
(22)【出願日】2015年6月11日
(65)【公開番号】特開2017-3808(P2017-3808A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 大志
(72)【発明者】
【氏名】大坂 智彦
【審査官】 井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0009359(KR,A)
【文献】 特開平04−185248(JP,A)
【文献】 特開2013−083827(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0103445(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
G02B 7/02
G03B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ部の周囲に配置されるオートフォーカス用コイルと、
前記オートフォーカス用コイルに対して径方向に離間し、前記オートフォーカス用コイルの四方を角部を除いて取り囲むように配置される4つの直方体状のオートフォーカス用マグネットと、
前記オートフォーカス用マグネットとともに磁気回路を形成するヨークと、を有し、
前記オートフォーカス用コイルと前記オートフォーカス用マグネットとで構成されるボイスコイルモーターの駆動力を利用して、前記オートフォーカス用マグネット及び前記ヨークを含むオートフォーカス固定部に対して、前記オートフォーカス用コイルを含むオートフォーカス可動部を光軸方向に移動させることにより自動的にピント合わせを行うレンズ駆動装置であって、
4つの前記オートフォーカス用マグネットは、それぞれ、前記オートフォーカス用コイルを取り囲む矩形の各辺に沿って配置され、
前記ヨークは、前記オートフォーカス用マグネットが固定される側枠と、前記オートフォーカス用コイルと前記光軸方向において重ならないように前記側枠の上縁部から内側に張り出す天枠と、前記オートフォーカス用マグネットに対応する部分において前記オートフォーカス用コイルの上方まで張り出す庇部とを有し、
前記庇部の前記オートフォーカス用マグネット部の長さ方向に沿う長さは、前記オートフォーカス用マグネット部の長さよりも短いことを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記ヨークは、冷間圧延鋼材で形成されることを特徴とする請求項に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記ヨークの板厚は、0.05〜0.1mmであることを特徴とする請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記オートフォーカス用コイルは、前記オートフォーカス用マグネットのそれぞれに対向する4つの直線部を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記オートフォーカス用コイルは、八角形状に形成されている、請求項4に記載のレンズ駆動装置。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載のレンズ駆動装置と、
前記オートフォーカス可動部に装着されるレンズ部と、
前記レンズ部により結像された被写体像を撮像する撮像部と、を備えることを特徴とするカメラモジュール。
【請求項7】
情報機器または輸送機器であるカメラ搭載装置であって、
請求項に記載のカメラモジュールを備えることを特徴とするカメラ搭載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートフォーカス用のレンズ駆動装置、オートフォーカス機能を有するカメラモジュール、及びカメラ搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スマートフォン等の携帯端末には、小型のカメラモジュールが搭載されている。このようなカメラモジュールには、被写体を撮影するときのピント合わせを自動的に行うオートフォーカス機能(以下「AF機能」と称する、AF:Auto Focus)を有するレンズ駆動装置が適用される(例えば特許文献1、2)。
【0003】
オートフォーカス用のレンズ駆動装置は、例えばレンズ部の周囲に配置されるオートフォーカス用コイル(以下「AF用コイル」と称する)と、AF用コイルに対して径方向に離間して配置されるオートフォーカス用マグネット(以下「AF用マグネット」と称する)と、例えばAF用マグネットを含むオートフォーカス固定部(以下「AF固定部」と称する)に対してレンズ部及びAF用コイルを含むオートフォーカス可動部(以下「AF可動部」と称する)を弾性支持する弾性支持部(例えば板ばね)とを備える。AF用コイルとAF用マグネットとで構成されるボイスコイルモーターの駆動力を利用して、AF固定部に対してAF可動部を光軸方向に移動させることにより、自動的にピント合わせが行われる。なお、AF固定部がAF用コイルを含み、AF可動部がAF用マグネットを含む場合もある。
【0004】
特許文献1、2に記載のレンズ駆動装置においては、AF用マグネットとともに磁気回路を形成するヨークが設けられており、このヨークがレンズ駆動装置の筐体となっている。また、ヨークは、AF用ボイスコイルモーターの推力を高めるために、天枠の内周縁が全体的に内側に張り出して形成され、AF用コイルを挟んでAF用マグネットと対向する位置には対向ヨーク部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−016572号公報
【特許文献2】特開2014−225042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、スマートフォン等の携帯端末においては、携帯端末の重量に占めるカメラモジュールの重量の割合はそれほど高くないため、カメラモジュールの重量は軽視されがちである。すなわち、カメラモジュールの小型化、低背化に伴い、結果的に軽量化されることはあっても、積極的にカメラモジュールの軽量化を図るための検討はなされていない。
【0007】
しかしながら、最近注目されているウェアラブル端末(腕時計やメガネ等、直接身に着けられる端末)にカメラモジュールを搭載する場合、カメラモジュールの重量も無視できず、積極的な軽量化が要求される(例えば従来の携帯端末用のカメラモジュールの1/2以下)。
【0008】
本発明の目的は、高いパワーウェイトレシオ(総重量当たりの推力(駆動力))を有する軽量のレンズ駆動装置、カメラモジュール、及びカメラ搭載装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るレンズ駆動装置は、
レンズ部の周囲に配置されるオートフォーカス用コイルと、
前記オートフォーカス用コイルに対して径方向に離間し、前記オートフォーカス用コイルの四方を角部を除いて取り囲むように配置される4つの直方体状のオートフォーカス用マグネットと、
前記オートフォーカス用マグネットとともに磁気回路を形成するヨークと、を有し、
前記オートフォーカス用コイルと前記オートフォーカス用マグネットとで構成されるボイスコイルモーターの駆動力を利用して、前記オートフォーカス用マグネット及び前記ヨークを含むオートフォーカス固定部に対して、前記オートフォーカス用コイルを含むオートフォーカス可動部を光軸方向に移動させることにより自動的にピント合わせを行うレンズ駆動装置であって、
4つの前記オートフォーカス用マグネットは、それぞれ、前記オートフォーカス用コイルを取り囲む矩形の各辺に沿って配置され、
前記ヨークは、前記オートフォーカス用マグネットが固定される側枠と、前記オートフォーカス用コイルと前記光軸方向において重ならないように前記側枠の上縁部から内側に張り出す天枠と、前記オートフォーカス用マグネットに対応する部分において前記オートフォーカス用コイルの上方まで張り出す庇部とを有し、
前記庇部の前記オートフォーカス用マグネット部の長さ方向に沿う長さは、前記オートフォーカス用マグネット部の長さよりも短いことを特徴とする。
【0010】
本発明に係るカメラモジュールは、上記のレンズ駆動装置と、
前記オートフォーカス可動部に装着されるレンズ部と、
前記レンズ部により結像された被写体像を撮像する撮像部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るカメラ搭載装置は、情報機器または輸送機器であるカメラ搭載装置であって、
上記のカメラモジュールを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、筐体として必要な機械的強度とレンズ駆動に必要な推力を確保しつつ、従来に比較してヨーク重量が格段に低減されるので、高いパワーウェイトレシオを有する軽量のレンズ駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態に係るカメラモジュールを搭載するウェアラブル端末を示す図である。
図2】カメラモジュールの外観斜視図である。
図3】レンズ駆動装置の上方視分解斜視図である。
図4】レンズ駆動装置の下方視分解斜視図である。
図5】レンズホルダーに対するAF用コイルの載置状態を示す平面図である。
図6】レンズ駆動装置のYZ面の断面図である。
図7】車載用カメラモジュールを搭載するカメラ搭載装置としての自動車を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るカメラモジュールAを搭載するウェアラブル端末W(カメラ搭載装置)を示す図である。カメラモジュールAは、オートフォーカス機能を備え、被写体を撮影するときのピント合わせを自動的に行う。
【0015】
図2は、カメラモジュールAの外観斜視図である。図2に示すように、本実施の形態では、直交座標系(X,Y,Z)を使用して説明する。後述する図においても共通の直交座標系(X,Y,Z)で示している。カメラモジュールAは、ウェアラブル端末Wで実際に撮影が行われる場合に、Z方向が前後方向となるように搭載される。すなわち、Z方向が光軸方向であり、図中上側が光軸方向受光側(「マクロ位置側)ともいう)、下側が光軸方向結像側(「無限遠位置側」ともいう)となる。また、Z軸に直交するX方向及びY方向を「光軸直交方向」と称する。
【0016】
カメラモジュールAは、円筒形状のレンズバレルにレンズが収容されてなるレンズ部2、AF用のレンズ駆動装置1、及びレンズ部2により結像された被写体像を撮像する撮像部(図示略)等を備える。
【0017】
撮像部(図示略)は、撮像素子(図示略)を有し、レンズ駆動装置1の光軸方向結像側に配置される。撮像素子(図示略)は、例えばCCD(chargecoupled device)型イメージセンサー、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)型イメージセンサー等により構成される。撮像素子(図示略)は、レンズ部2により結像された被写体像を撮像する。
【0018】
図3図4は、レンズ駆動装置1の分解斜視図である。図3は光軸方向受光側から見た上方視分解斜視図であり、図4は光軸方向結像側から見た下方視分解斜視図である。図3図4に示すように、レンズ駆動装置1は、AF可動部11、AF固定部12、及び弾性支持部13等を備える。AF可動部11は、AF固定部12に対して径方向内側に離間して配置され、弾性支持部13によってAF固定部12と連結される。
【0019】
AF可動部11は、AF用ボイスコイルモーターを構成するコイルを有し、ピント合わせ時に光軸方向に移動する部分である。AF固定部12は、AF用ボイスコイルモーターを構成するマグネットを有する部分である。すなわち、レンズ駆動装置1には、ムービングコイル方式が採用されている。
【0020】
本実施の形態では、レンズホルダー111及びAF用コイル112がAF可動部11を構成する。ベース121、AF用マグネット部122、ヨーク123、及びカバー124がAF固定部12を構成する。上側弾性支持部131及び下側弾性支持部132が弾性支持部13を構成する。
【0021】
レンズホルダー111は、筒状のレンズ収容部111aと、レンズ収容部111aから径方向外側に突出するフランジ部111bとを有する。
【0022】
レンズ収容部111aの内周面111cには、レンズ部2(図2参照)が接着又は螺合により固定される。レンズ収容部111aの上面111dには、上側弾性支持部131が固定される(以下「上バネ固定部111d」と称する)。上バネ固定部111dは、光軸方向受光側に突出する位置決め片111eを有する。位置決め片111eによって、上側弾性支持部131が位置決めされる。
【0023】
レンズ収容部111aの上部(フランジ部111bよりも光軸方向受光側の部分)は、全体として八角形状を有する。レンズ収容部111aの上部は、部分的に径方向外側に膨出している(膨出部111f)。膨出部111fの外周面が、AF用コイル112と当接する。すなわち、レンズ収容部111aとAF用コイル112とは部分的に当接し、部分的に離間している(図5参照)。
【0024】
レンズ収容部111aの下部(フランジ部111bよりも光軸方向結像側の部分)は、全体として円筒形状を有する。レンズ収容部111aの下部は、光軸に関して点対称な4箇所が径方向外側に突出している(位置決め片111g)。位置決め片111gによって、ベース121との位置決めが行われる。レンズ収容部111aの下部は、ベース121の開口121aに遊嵌される。
【0025】
フランジ部111bは、AF用コイル112に対応する形状、すなわち平面視で概ね八角形状を有する。フランジ部111bは、複数の切欠部111h、111jを有する。これにより、レンズホルダー111の軽量化が図られている。このうちの2つの切欠部111jから、AF用コイル112の端部がベース121側(光軸方向結像側)に引き出される(以下「コイル引出部111j」と称する)。
【0026】
フランジ部111bの下面111kには、下側弾性支持部132が固定される(以下「下バネ固定部111k」と称する)。下バネ固定部111kは、ベース121側に突出する位置決め片111m及び位置決めボス111nを有する。位置決め片111m及び位置決めボス111nによって、上側弾性支持部131が位置決めされる。
【0027】
AF用コイル112は、ピント合わせ時に通電される空芯コイルである。AF用コイル112は、平面視で八角形状に巻線される。AF用コイル112は、レンズホルダー111のフランジ部111bに載置され、膨出部111fと当接する。AF用コイル112の端部は、レンズホルダー111のコイル引出部111jを介してベース側に引き出され、下側弾性支持部132の絡げ部132dと電気的に接続される。
【0028】
AF用コイル112は、好ましくはアルミニウム線材の周囲を銅で被覆した銅クラッドアルミ線で形成される。これにより、AF用コイル112を銅線で形成する場合に比較して、軽量化を図ることができる。
【0029】
ベース121は、平面視で正方形状の部材であり、レンズホルダー111の下部に対応する形状の開口121aを有する。カメラモジュールAにおいて、ベース121の光軸方向結像側に、撮像部(図示略)が配置される。
【0030】
ベース121の内部四隅121bには、下側弾性支持部132が固定される(以下「下バネ固定部121b」と称する)。下バネ固定部121bは、レンズホルダー111側(光軸方向受光側)に突出する位置決めボス121cを有する。位置決めボス121cによって、下側弾性支持部132が位置決めされる。
【0031】
2つの下バネ固定部121bの近傍には、端子金具121dが配置される。端子金具121dの一端部は、下側弾性支持部132と電気的に接続され、他端部は、イメージセンサー基板(図示略)の電源ライン(図示略)と電気的に接続される。
【0032】
ベース121は、周面に、ヨーク123を載置するヨーク取付片121e、121fを有する。ヨーク取付片121eによって、ヨーク123が位置決めされる。ヨーク123は、ヨーク取付片121e、121fに載置された状態で、例えば接着により固定される。
【0033】
ベース121の周縁四隅121gは、レンズホルダー111側に突出する(以下「内挿片121g」と称する)。内挿片121gの胴部は内側に凹んでおり、頂部が外側に張り出している。
【0034】
AF用マグネット部122は、4つの直方体状の永久磁石122A〜122Dで構成される(以下「AF用マグネット122A〜122D」と称する)。AF用マグネット122A〜122Dの厚さ(径方向の幅)は、0.35mm以下であることが好ましい。
【0035】
AF用マグネット122A〜122Dは、AF用コイル112に径方向に横切る磁界が形成されるように着磁される。例えば、永久磁石122A〜122Dは、内周側がN極、外周側がS極に着磁される。AF用マグネット122A〜122D及びAF用コイル112によって、AF用ボイスコイルモーターが構成される。
【0036】
ヨーク123は、AF用マグネット122A〜122Dを保持するとともに、AF用マグネット122A〜122Dとともに磁気回路を形成する。ヨーク123は、磁性材料からなる板材の絞り加工によって形成される。ヨーク123は、好ましくは冷間圧延鋼板で形成される。ヨーク123の板厚は、好ましくは0.1mm以下(例えば0.08mm)である。ヨーク123を冷間圧延鋼板で形成することにより、ヨーク123の板厚を0.05〜0.1mmとしても、レンズ駆動装置1の筐体としての機械的強度を確保することができる。
【0037】
ヨーク123は、四角形状の側枠123aと、側枠123aの上縁部から内側に張り出す天枠123bを有する。
【0038】
側枠123aには、AF用マグネット122A〜122Dが例えば接着により固定される。X方向に沿う2つの側枠123aの下部は、ベース121側(光軸方向結像側)に突出する突出片123cを有する。
【0039】
天枠123bは、カバー123の固定ボス124bが挿入される固定穴(符号略)を有する。天枠123bには、カバー124が例えば溶着により固定される。AF用マグネット122A〜122Dの上面(光軸方向受光側の面)は、天枠123bの下面(光軸方向結像側の面)と対向する(図6参照)。
【0040】
ヨーク123は、天枠123bの四隅を除く部分において、AF用コイル122A〜122Dの上方まで張り出す庇部123dを有する。庇部123dの長さは、それぞれの庇部123dに対応するAF用マグネット122A〜122Dの長さよりも短い。庇部123dの長さは、好ましくはAF用マグネット122A〜122Dの40%である。AF用マグネット122A〜122Dの長さ方向両端部に対応する部分まで庇部123dを延在させると、駆動力は大きくなるが、その分ヨーク123重量が重くなる。本実施の形態では、パワーウェイトレシオの観点から、庇部123dの長さが最適化されている。
【0041】
鉄製のヨーク123が構成要素の一つとなっている場合、総重量に占めるヨーク重量の割合が高いため、軽量化を図るためにはヨーク重量を軽くすればよい。しかしながら、筐体として必要な機械的強度とレンズ駆動に必要な駆動力を確保しつつ、ヨーク重量を低減することは容易ではない。本実施の形態では、ヨーク123の天枠123bの面積が、必要な駆動力を効率よく得ることができ、かつカバー124を溶着できる範囲で最小限に抑えられており、対向ヨーク部も省略されている。これにより、従来のヨーク(特許文献1、2参照)に比較して、格段に軽量化を図ることができる。
【0042】
また、ヨーク123をベース121に取り付けたとき、突出片123cがベース121のヨーク取付片121eと係合する。また、ベース123の内挿片121gはヨーク123内に深く入り込む。内挿片121gの頂部がヨーク123の四隅に当接することにより、内挿片121gとヨーク123との間に樹脂塗布用のスペースが形成される。これにより、ヨーク123の裾を短くすることができるので、軽量化を図ることができる。
【0043】
ヨーク123は、庇部123dができるだけ小さく形成され、対向ヨーク部も省略されているので、大きな駆動力を得るために有効な構造とはいえない。しかし、ヨーク123は、大幅に軽量化されているので、パワーウェイトレシオで考えると、従来よりも優れている。また、レンズホルダー111やAF用コイル112等を含め、AF可動部11がバランスよく軽量化されているので、小さな駆動力で従来と同等以上の駆動特性を確保することができる。
【0044】
カバー124は、平面視で正方形状の蓋体である。カバー124は、好ましくはポリカーボネート等の機械的強度の高い樹脂材料で形成される。カバー124は、レンズホルダー111のレンズ収容部111aに対応する形状の開口124aを有する。この開口124aからレンズ部2が外部に臨む。カバー124は、下面の四隅に、上バネ131を固定するための固定ボス124bを有する。なお、図3図4では、固定ボス124bがかしめられた状態で示されているが、組立前は上バネ131のヨーク固定部131bの固定穴(符号略)及びヨーク123の天枠123bの固定穴(符号略)に挿入可能となっている。
【0045】
上側弾性支持部131は、例えばベリリウム銅、ニッケル銅、ステンレス等からなる板バネである(以下「上バネ131」と称する)。上バネ131は、AF固定部12(ヨーク123及びカバー124)に対してAF可動部11(レンズホルダー111)を弾性支持する。上バネ131は、ヨーク123をカバー124に取り付けたときに、ヨーク123とカバー124とで挟持される。
【0046】
上バネ131は、例えば、一枚の板金を打ち抜いて成形される。上バネ131は、レンズホルダー固定部131a、ヨーク固定部131b、及びアーム部131cを有する。レンズホルダー固定部131aは、レンズホルダー111の上バネ固定部111dに沿う形状を有し、位置決め片111eに対応する位置が切り欠かれている。アーム部131cは、レンズホルダー固定部131aとヨーク固定部131bを連結する。アーム部131cは、湾曲形状を有し、AF可動部11が移動するときに弾性変形する。
【0047】
上バネ131は、レンズホルダー固定部131aの切欠部(符号略)が、レンズホルダー111の位置決め片111eに係合されることにより位置決めされ、固定される。従来は、隣接するヨーク固定部131bが連結部で連結されていたが、上バネ131は、この連結部を省略した軽量構造となっている。
【0048】
上バネ131は、ヨーク固定部131bの固定穴(符号略)及びヨーク123の固定穴(符号略)にカバー124の固定ボス124bが挿入されることにより位置決めされ、熱かしめにより固定される。AF可動部11が光軸方向に移動するとき、レンズホルダー固定部131aは、AF可動部11とともに変位する。
【0049】
下側弾性支持部132は、例えばベリリウム銅、ニッケル銅、ステンレス等からなる2つの板バネで構成される(以下「下バネ132A、132B」と称する)。下バネ132A、132Bは、AF固定部12(ベース121)に対してAF可動部11(レンズホルダー111)を弾性支持する。
【0050】
下バネ132A、132Bは、例えば、一枚の板金を打ち抜いて成形される。下バネ132A、132Bはほぼ同様の構成を有するので、下バネ132Aについて説明する。
【0051】
下バネ132Aは、レンズホルダー固定部132a、ベース固定部132b、及びアーム部132cを有する。レンズホルダー固定部132aは、レンズホルダー111のレンズ収容部111aの下部の外周面に沿う円弧形状を有する。アーム部132cは、レンズホルダー固定部132aとベース固定部132bを連結する。アーム部132cは、一部につづら折れ形状を有し、AF可動部11が移動するときに弾性変形する。
【0052】
下バネ132Aは、レンズホルダー固定部132aの固定穴(符号略)がレンズホルダー111の位置決め片111m又は位置決めボス111nに挿入されることにより位置決めされ、固定される。
【0053】
下バネ132Aは、レンズホルダー固定部132aの端部(一方のベース固定部132bの近傍)に、絡げ部132dを有する。絡げ部132dは、レンズホルダー111のコイル引出部111jから引き出されたAF用コイル112の端部と電気的に接続される。下バネ132Aは、一方のベース固定部132bから延在する端子接続部132eを有する。端子接続部132eは、ベース121に配置された端子金具121dと電気的に接続される。下バネ132A、132Bを介して、AF用コイル112への給電が行われる。
【0054】
下バネ132Aは、ベース固定部132bの固定穴(符号略)に、ベース121の位置決めボス121cが挿入されることにより位置決めされ、固定される。AF可動部11が光軸方向に移動するとき、レンズホルダー固定部132aは、AF可動部11とともに変位する。
【0055】
レンズ駆動装置1において自動ピント合わせを行う場合には、AF用コイル112に通電が行われる。AF用コイル112に通電すると、AF用マグネット部122の磁界とAF用コイル112に流れる電流との相互作用により、AF用コイル112にローレンツ力が生じる。ローレンツ力の方向は、AF用マグネット部122による磁界の方向とAF用コイル112に流れる電流の方向に直交する方向(Z方向)である。AF用マグネット部122は固定されているので、AF用コイル112に反力が働く。この反力がAF用ボイスコイルモーターの駆動力となり、AF用コイル112を有するAF可動部11が光軸方向に移動し、ピント合わせが行われる。
【0056】
ピント合わせを行わない無通電時には、AF可動部11は、例えば上側弾性支持部131及び下側弾性支持部132によって、無限遠位置とマクロ位置との間に吊られた状態(以下「基準状態」と称する)で保持される。すなわち、AF可動部11が、上側弾性支持部131及び下側弾性支持部132によって、AF固定部12に対して位置決めされた状態で、Z方向両側に変位可能に弾性支持される。ピント合わせを行うときには、AF可動部11を基準状態からマクロ位置側へ移動させるか、無限遠位置側に移動させるかに応じて、電流の向きが制御される。また、AF可動部11の移動距離に応じて、電流の大きさが制御される。
【0057】
このように、レンズ駆動装置1は、レンズ部2の周囲に配置されるAF用コイル112と、AF用コイル112に対して径方向に離間し、AF用コイルの四方を取り囲むように配置されるAF用マグネット122A〜122Dと、AF用マグネット122A〜122Dとともに磁気回路を形成するヨーク123とを有し、AF用コイル112とAF用マグネット122A〜122Dとで構成されるボイスコイルモーターの駆動力を利用して、AF用マグネット122A〜122D及びヨーク123を含むAF固定部12に対して、AF用コイル112を含むAF可動部11を光軸方向に移動させることにより自動的にピント合わせを行う。ヨーク123は、AF用マグネット122A〜122Dが固定される側枠123aと、側枠123aの上縁部から内側に張り出す天枠123bと、天枠123bの四隅を除く部分においてAF用コイル112の上方まで張り出す庇部123dとを有する。
【0058】
レンズ駆動装置1によれば、筐体として必要な機械的強度とレンズ駆動に必要な推力を確保しつつ、従来に比較してヨーク重量が格段に低減される。レンズ駆動装置1は、高いパワーウェイトレシオを有する軽量のレンズ駆動装置であるので、ウェアラブル端末にも適用することができる。例えば、レンズ駆動装置1のサイズが8.5mm角である場合、総重量を0.16g以下(現状の1/2以下)、高さを2.5mm以下とすることができる。
【0059】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0060】
例えば、実施の形態では、カメラモジュールAを備えるカメラ搭載装置の一例として、ウェアラブル端末を挙げて説明したが、本発明は、情報機器または輸送機器であるカメラ搭載装置に適用できる。情報機器であるカメラ搭載装置とは、カメラモジュールとカメラモジュールで得られた画像情報を処理する制御部を有する情報機器であり、例えばスマートフォン、カメラ付き携帯電話機、ノート型パソコン、タブレット端末、携帯型ゲーム機、webカメラ、カメラ付き車載装置(例えば、バックモニター装置、ドライブレコーダー装置)を含む。また、輸送機器であるカメラ搭載装置とは、カメラモジュールとカメラモジュールで得られた画像を処理する制御部を有する輸送機器であり、例えば自動車を含む。
【0061】
図7は、カメラモジュールVC(Vehicle Camera)を搭載するカメラ搭載装置としての自動車Cを示す図である。図7Aは自動車Cの正面図であり、図7Bは自動車Cの後方斜視図である。自動車Cは、車載用カメラモジュールVCとして、実施の形態で説明したカメラモジュールAを搭載する。図7に示すように、車載用カメラモジュールVCは、例えば前方に向けてフロントガラスに取り付けられたり、後方に向けてリアゲートに取り付けられたりする。この車載用カメラモジュールVCは、バックモニター用、ドライブレコーダー用、衝突回避制御用、自動運転制御用等として使用される。
【0062】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
1 レンズ駆動装置
2 レンズ部
11 AF可動部(オートフォーカス可動部)
111 レンズホルダー
112 AF用コイル(オートフォーカス用コイル)
12 AF固定部(オートフォーカス固定部)
121 ベース
122 AF用マグネット部
122A〜122D 永久磁石、AF用マグネット
123 ヨーク
123a 側枠
123b 天枠
123d 庇部
124 カバー
13 弾性支持部
131 上側弾性支持部、上バネ
132 下側弾性支持部
132A、132B 下バネ
W ウェアラブル端末(カメラ搭載装置)
A カメラモジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7