特許第6582605号(P6582605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6582605
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0525 20100101AFI20190919BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20190919BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20190919BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20190919BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20190919BHJP
   H01M 2/34 20060101ALI20190919BHJP
   H01M 2/04 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   H01M10/0525
   H01M10/0567
   H01M4/62 Z
   H01M2/02 A
   H01M2/26 A
   H01M2/34 A
   H01M2/04 A
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-126143(P2015-126143)
(22)【出願日】2015年6月24日
(65)【公開番号】特開2017-10819(P2017-10819A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104732
【弁理士】
【氏名又は名称】徳田 佳昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116078
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 浩希
(72)【発明者】
【氏名】南 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】藏冨 由香里
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】藤原 豊樹
(72)【発明者】
【氏名】中西 直哉
【審査官】 鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/157591(WO,A1)
【文献】 特表2011−528483(JP,A)
【文献】 特開2015−026625(JP,A)
【文献】 特開2008−066254(JP,A)
【文献】 特開2014−035897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0525
H01M 2/02
H01M 2/04
H01M 2/26
H01M 2/34
H01M 4/62
H01M 10/0567
H01M 10/0562
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質を含む正極板と、
負極活物質を含む負極板と、
前記正極板と前記負極板を含む電極体と、
非水電解質と、を備えた非水電解質二次電池であって、
前記正極板は炭酸リチウム及びリン酸リチウムを含有し、
前記非水電解質はフルオロスルホン酸リチウムを含有する非水電解質二次電池。
【請求項2】
開口部を有し前記電極体及び前記非水電解質を収納する外装体と、
前記開口部を封口する封口板と、
前記正極板又は前記負極板と電気的に接続され、前記封口板に取り付けられた端子を備え、
前記正極板又は前記負極板と前記端子の間の導電経路に、電池内部の内圧が所定値以上となったときに作動し、前記導電経路を切断し電流を遮断する電流遮断機構を備えた請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
開口部を有し前記電極体及び前記非水電解質を収納する外装体と、
前記開口部を封口する封口板と、
前記正極板又は前記負極板と電気的に接続され、前記封口板に取り付けられた端子を備え、
電池内部の内圧が所定値以上となったときに作動し、前記正極板と前記負極板を強制的に短絡させる短絡機構を備えた請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記正極板又は前記負極板と前記端子の間の導電経路に、前記短絡機構が作動し短絡電流が流れたときに溶断する溶断部を備えた請求項3に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記正極活物質はリチウム遷移金属複合酸化物であり、
前記負極活物質は炭素材料である請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
正極活物質を含む正極板と、
負極活物質を含む負極板と、
前記正極板と前記負極板を含む電極体と、
開口部を有し前記電極体及び前記非水電解質を収納する外装体と、
前記開口部を封口する封口板と、を備え、
前記正極板は炭酸リチウム及びリン酸リチウムを含有する非水電解質二次電池の製造方法であって、
フルオロスルホン酸リチウムを含有する非水電解質を前記外装体内に配置する工程を有する非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記正極板又は前記負極板と電気的に接続され、前記封口板に取り付けられた端子を備え、
前記正極板又は前記負極板と前記端子の間の導電経路に、電池内部の内圧が所定値以上となったときに作動し、前記導電経路を切断し電流を遮断する電流遮断機構を備えた請求項6に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項8】
前記正極板又は前記負極板と電気的に接続され、前記封口板に取り付けられた端子を備え、
電池内部の内圧が所定値以上となったときに作動し、前記正極板と前記負極板を強制的に短絡させる短絡機構を備えた請求項6に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項9】
前記正極板又は前記負極板と前記端子の間の導電経路に、前記短絡機構が作動し短絡電流が流れたときに溶断する溶断部を備えた請求項8に記載の非水電解質二次電池の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非水電解質二次電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高エネルギー密度を有する非水電解質二次電池は、ハイブリッド電気自動車(PHEV、HEV)や電気自動車(EV)の駆動用電源等に利用されている。このような駆動電源等に利用される非水電解質二次電池に対する高性能化の要求はますます高くなっている。
【0003】
下記の特許文献1には、非水電解質中にフルオロスルホン酸リチウムを含有させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−187440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低温出力特性及び高温保存特性に優れた非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態の非水電解質二次電池は、
正極活物質を含む正極板と、
負極活物質を含む負極板と、
前記正極板と前記負極板を含む電極体と、
非水電解質と、を備えた非水電解質二次電池であって、
前記正極板は炭酸リチウム及びリン酸リチウムを含有し、
前記非水電解質はフルオロスルホン酸リチウムを含有する。
【0007】
上記構成により低温出力特性及び高温保存特性に優れた非水電解質二次電池が得られる。
【0008】
本発明の一形態の非水電解質二次電池は、
開口部を有し前記電極体及び前記非水電解質を収納する外装体と、
前記開口部を封口する封口板と、
前記正極板又は前記負極板と電気的に接続され、前記封口板に取り付けられた端子を備え、
前記正極板又は前記負極板と前記端子の間の導電経路に、電池内部の内圧が所定値以上となったときに作動し、前記導電経路を切断し電流を遮断する電流遮断機構を備えることが好ましい。これにより過充電状態となった場合でも信頼性の高い非水電解質二次電池となる。
【0009】
本発明の一形態の非水電解質二次電池は、
開口部を有し前記電極体及び前記非水電解質を収納する外装体と、
前記開口部を封口する封口板と、
前記正極板又は前記負極板と電気的に接続され、前記封口板に取り付けられた端子を備
え、
電池内部の内圧が所定値以上となったときに作動し、前記正極板と前記負極板を強制的に短絡させる短絡機構を備えることが好ましい。これにより過充電状態となった場合でも信頼性の高い非水電解質二次電池となる。さらに、前記正極板又は前記負極板と前記端子の間の導電経路に、前記短絡機構が作動し短絡電流が流れたときに溶断する溶断部を備えることが好ましい。
【0010】
前記正極活物質はリチウム遷移金属複合酸化物であり、前記負極活物質は炭素材料であることが好ましい。リチウム遷移金属複合酸化物としては、遷移金属としてNi、Co及びMnから選ばれる少なくとも一つの元素を含むものが好ましい。炭素材料としては黒鉛、非晶質炭素等が好ましい。
【0011】
本発明の一形態の非水電解質二次電池の製造方法は、
正極活物質を含む正極板と、
負極活物質を含む負極板と、
前記正極板と前記負極板を含む電極体と、
開口部を有し前記電極体及び前記非水電解質を収納する外装体と、
前記開口部を封口する封口板と、を備え、
前記正極板は炭酸リチウム及びリン酸リチウムを含有する非水電解質二次電池の製造方法であって、
フルオロスルホン酸リチウムを含有する非水電解質を前記外装体内に配置する工程を有する非水電解質二次電池の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1Aは実施形態の非水電解質二次電池20の断面図であり、図1B図1AのIB−IBに沿った断面図である。
図2図1Bにおける電流遮断機構近傍の拡大図である。
図3】正極板の平面図である。
図4】負極板の平面図である。
図5図5Aは作動前の短絡機構の断面図であり、図5Bは作動後の短絡機構の断面図である。
図6】溶断部が形成された正極集電体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の例示であり、本発明はこの実施形態に限定するものではない。
【0014】
図1に示すように、非水電解質二次電池20は、正極板21と負極板22がセパレータを介して巻回された扁平状の巻回電極体1を有している。
【0015】
また、図3に示すように、正極板21はアルミニウム又はアルミニウム合金製の正極芯体21aの両表面に、幅方向の一方側の端部に長手方向に沿って正極芯体21aが帯状に露出した正極芯体露出部4が両面に形成されるように、正極活物質合剤層21bが形成されている。そして、正極活物質合剤層21cの端部近傍の正極芯体21a上には正極保護層21cが形成されている。なお、正極保護層21cを設けない形態とすることも可能である。
【0016】
また、図4に示すように、負極板22は、銅又は銅合金製の負極芯体22aの両表面に、幅方向の両端部に長手方向に沿って負極芯体22aが帯状に露出した負極芯体露出部5が両端に形成されるように、負極活物質合剤層22bが形成されている。なお、負極芯体
露出部5は、負極板22の幅方向の一方側の端部のみに設けるようにしてもよい。また、負極活物質合剤層22b上にセラミック粒子とバインダーを含む負極保護層22cを形成する。なお、負極保護層22cを設けない形態とすることも可能である。
【0017】
これらの正極板21及び負極板22をセパレータを介して巻回し、扁平状に成形することにより扁平状の巻回電極体1が作製される。このとき、扁平状の巻回電極体1の一方の端部に巻回された正極芯体露出部4が形成され、他方の端部に巻回された負極芯体露出部5が形成される。
【0018】
正極芯体露出部4は、正極集電体6を介して正極端子7に電気的に接続される。負極芯体露出部5は、負極集電体8を介して負極端子9に電気的に接続される。正極集電体6及び正極端子7はアルミニウム又はアルミニウム合金製であることが好ましい。負極集電体8及び負極端子9は銅又は銅合金製であることが好ましい。正極端子7は、鍔部7a及び鍔部7aの一方面に形成された挿入部7bを有する。そして、挿入部7bは、封口板3に設けられた端子取り付け孔に挿入される。負極端子9は、鍔部9a及び鍔部9aの一方面に形成された挿入部9bを有する。そして、挿入部9bは、封口板3に設けられた端子取り付け孔に挿入される。
【0019】
正極板21と正極端子7の間の導電経路には、電池内圧が所定値より大きくなった場合に作動し、正極板21と正極端子7の間の導電経路を切断し電流を遮断する電流遮断機構50が設けられている。
【0020】
正極端子7は、外部側絶縁部材11を介して封口板3に固定されている。負極端子9は外部側絶縁部材13を介して封口板3に固定されている。
【0021】
扁平状の巻回電極体1は、樹脂製の絶縁シート14により覆われた状態で角形外装体2内に収納されている。封口板3は、金属製の角形外装体2の開口部に当接され、封口板3と角形外装体2との当接部がレーザ溶接されている。
【0022】
封口板3は電解液注液孔15を有し、この電解液注液孔15から非水電解液が注液され、その後ブラインドリベット等の封止栓16により電解液注液孔15が封止される。封口板3には、電池内圧が電流遮断機構50の作動圧よりも大きな値となった場合に破断し、電池内部のガスを電池外部に排出するガス排出弁17が形成されている。
【0023】
次に、非水電解質二次電池20に設けられた電流遮断機構50の構成を図2を用いて説明する。図2は、非水電解質二次電池20の厚み方向に沿った電流遮断機構50近傍の拡大図である。
【0024】
正極端子7は、鍔部7a及び挿入部7bを備え、内部には貫通孔7xが形成されている。そして、正極端子7の挿入部7bは、外部側絶縁部材11、封口板3、第1絶縁部材10及び導電部材51にそれぞれ設けられた貫通孔に挿入され、挿入部7bの先端部が加締められている。これにより、正極端子7、外部側絶縁部材11、封口板3、第1絶縁部材10及び導電部材51が一体的に固定されている。
【0025】
導電部材51の筒状部の下端の周縁部には変形板52の周囲が溶接されている。この変形板52の中央部には、正極集電体6のベース部6aに形成された薄肉部6dがレーザ溶接により溶接され接続部54が形成される。以上の構成により、正極芯体露出部5は、正極集電体6、変形板52及び導電部材51を介して正極端子7と電気的に接続されている。なお、薄肉部6dには接続部54の周囲に環状の溝6eが形成されている。
【0026】
変形板52は、角形外装体2内の圧力が所定の値より大きくなると、中央部が封口板3側に反転するように変形する。そして、この変形板52の変形に伴い、正極集電体6の薄肉部6dに形成された環状の溝6eにおいて、薄肉部6dが破断し導電経路が切断される。
【0027】
正極端子7に形成された貫通孔7xは、端子栓18により封止される。なお、端子栓18は弾性部材18a及び金属板18bを有する。
【0028】
なお、ここでは正極側の導電経路に電流遮断機構を設ける形態を説明したが、負極側の導電経路に電流遮断機構を設けるようにしてもよい。
【0029】
次に、非水電解質二次電池20における正極板21、負極板22、扁平状の巻回電極体1及び非水電解質としての非水電解液の製造方法について説明する。
[正極板の作製]
正極活物質としてLi(Ni0.35Co0.35Mn0.300.995Zr0.005で表されるリチウム遷移金属極複合酸化物を用いる。この正極活物質と、導電剤としての炭素粉末と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、炭酸リチウムと、リン酸リチウムを、それぞれの質量比で87.2:7:2:2:1.8となるように秤量し、分散媒としてのN−メチルー2―ピロリドン(NMP)と混合して正極合剤スラリーを作製する。
【0030】
アルミナ粉末、PVdF、炭素粉末、及び分散媒としてのNMPを質量比で21:4:1:74の割合で混合して正極保護層スラリーを作製する。
【0031】
上述の方法で作製した正極合剤スラリー及び正極保護層スラリーを、正極芯体21aとしてのアルミニウム箔の両面にダイコーターにより塗布する。その後、極板を乾燥させて分散媒としてのNMPを除去し、ロールプレスによって所定厚さとなるように圧縮する。そして、正極板21の幅方向の一方の端部に長手方向に沿って両面に正極活物質合剤層21bが形成されていない正極芯体露出部4が形成されるように所定寸法に切断し正極板21とする。
【0032】
[負極板の作製]
負極活物質としての黒鉛粉末と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)と、結着剤としてのスチレン−ブタジエンゴム(SBR)とを、それぞれの質量比で98:1:1の割合で水に分散させ負極合剤スラリーを作製する。
【0033】
アルミナ粉末、結着剤(アクリル系樹脂)、及び分散媒としてのNMPを質量比で30:0.9:69.1の割合で混合し、ビーズミルにて混合分散処理を施した負極保護層スラリーを作製する。
【0034】
上述の方法で作製した負極合剤スラリーを、負極芯体22aとしての銅箔の両面にダイコーターにより塗布する。次いで、乾燥させて分散媒としての水を除去し、ロールプレスによって所定厚さとなるように圧縮する。その後、上述の方法で作製した負極保護層スラリーを負極活物質合剤層22b上に塗布した後、溶剤として使用したNMPを乾燥除去して、負極保護層22cを形成する。そして、負極板の幅方向の両端部に長手方向に沿って両面に負極活物質合剤層22bが形成されていない負極芯体露出部5が形成されるように所定寸法に切断し負極板22とする。
【0035】
[扁平状の巻回電極体の作製]
上述の方法で作製した正極板21と負極板22を、厚さ20μmのポリプロピレン製の
セパレータを介して巻回した後、扁平状にプレス成形して扁平状の巻回電極体1を作製する。このとき、扁平状の巻回電極体1の巻き軸方向の一方の端部には巻回された正極芯体露出部4が形成され、他方の端部には負極芯体露出部5が形成されるようにする。扁平状の巻回電極体1の最外周にはセパレータが位置する。
【0036】
[非水電解液の調整]
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DMC)とを体積比(25℃、1気圧)で3:3:4となるように混合した混合溶媒を作製する。この混合溶媒に、溶質としてLiPFを1mol/Lとなるように添加した。さらに、フルオロスルホン酸リチウムを非水電解液に対して1質量%となるように混合溶媒に添加する。
【0037】
[導電経路の作製]
電流遮断機構50を備えた正極側の導電経路の作製手順について説明する。まず、アルミニウム製の封口板3の上面に樹脂製の外部側絶縁部材11を配置し、封口板3の下面に樹脂製の第1絶縁部材10及びアルミニウム製の導電部材51を配置し、それぞれの部材に設けられた貫通孔にアルミニウム製の正極端子7の挿入部7bを挿通する。その後、挿入部7bの先端部を加締めることにより、正極端子7、外部側絶縁部材11、封口板3、第1絶縁部材10、及び導電部材51を一体的に固定する。その後、挿入部7bの先端部と導電部材51の接続部をレーザ溶接により溶接する。
【0038】
次いで、カップ状の導電部材51の筒状部の下端の周縁部に変形板52の周囲をレーザ溶接する。これにより、導電部材51の筒状部の下端を密閉する。なお、ここでは、変形板52としては薄いアルミニウム製の板を下部が突出するように成型処理したものを用いる。
【0039】
変形板52の下面側に樹脂製の第2絶縁部材53を配置し、第1絶縁部材10と第2絶縁部材53をラッチ固定する。次いで、アルミニウム製の正極集電体6のベース部6aに設けた貫通孔に第2絶縁部材53の下面に設けた突出部を挿入した後、この突出部の先端を加熱しながら拡径することにより、正極集電体6のベース部6aと第2絶縁部材53を固定する。そして、正極端子7の上方から貫通孔7x内に所定圧力のNガスを導入し、変形板52を正極集電体6のベース部6aに押し付けた状態とし、ベース部6aと変形板52をレーザ溶接によって溶接する。その後、正極端子7の貫通孔7xに端子栓18を挿入する。
【0040】
負極側の導電経路については、封口板3の上面に樹脂製の外部側絶縁部材13を配置し、封口板3の下面に樹脂製の内部側絶縁部材12及び負極集電体8を配置し、それぞれの部材に形成された貫通孔に負極端子9の挿入部9bを挿通する。その後、挿入部9bの先端部を加締めることにより、負極端子9、外部側絶縁部材13、封口板3、内部側絶縁部材12、及び負極集電体8を一体に固定する。その後、挿入部9bの先端部と負極集電体8の接続部をレーザ溶接により溶接する。
【0041】
[非水電解質二次電池の組み立て]
上記の方法で封口板3に固定された正極集電体6を巻回電極体1の正極芯体露出部4に抵抗溶接により接続する。また、上記の方法で封口板3に固定された負極集電体8を巻回電極体1の負極芯体露出部5に抵抗溶接により接続する。
【0042】
その後、巻回電極体1を箱状に曲げ加工した絶縁シート14で覆った状態で、アルミニウム製の角形外装体2に挿入する。そして、封口板3と角形外装体2の嵌合部をレーザ溶接する。そして、封口板3に設けられた電解液注液孔15から上述の方法で作製した非水
電解液を注液し、電解液注液孔15を封止栓16で封止し、非水電解質二次電池20とする。
【0043】
[実施例1]
上述の方法で作製した非水電解質二次電池20を実施例1の非水電解質二次電池とした。
【0044】
[比較例1]
正極活物質合剤層22bにリン酸リチウムが含有されず、非水電解質にフルオロスルホン酸リチウムが含有されない以外は、実施例1と同様の方法で非水電解質二次電池を作製し比較例1の非水電解質二次電池とした。
【0045】
[比較例2]
正極活物質合剤層22bにリン酸リチウムが含有されない以外は、実施例1と同様の方法で非水電解質二次電池を作製し比較例1の非水電解質二次電池とした。
【0046】
実施例1、比較例1及び比較例2に係る非水電解質二次電池の低温出力特性・高温保存特性及び過充電特性の測定を以下の方法で行った。
【0047】
<低温出力特性測定>
各非水電解質二次電池を25℃にて2Aの充電電流で充電深度が27%になるまで充電し、−30℃にて5時間放置した。その後、10A、20A、30A、40A、50A、60A、70A及び80Aの電流で10秒間放電を行い、それぞれの電池電圧を測定した。各電流値と電池電圧とをプロットして放電時におけるI−V特性から出力を算出し低温出力特性とした。なお、放電によりずれた充電深度は2Aの定電流で充電することにより元の充電深度に戻した。
【0048】
<高温保存特性測定>
各非水電解質二次電池を25℃にて4Aの電流で4.1Vまで定電流充電を行い、引き続き4.1Vで2時間の定電圧充電を行った。その後、4Aの電流で3Vまで定電流放電を行い、引き続き3Vで3時間の定電圧放電を行ったときの放電容量を測定し、この放電容量を初期の電池容量とした。
【0049】
次に25℃にて2Aの充電電流で充電深度が80%になるまで充電を行い、60℃にて100日放置した。その後、25℃にて4Aの電流で4.1Vまで定電流充電を行い、引き続き4.1Vで2時間の定電圧充電を行った。その後、4Aの電流で3Vまで定電流放電を行い、引き続き3Vで3時間の定電圧放電を行ったときの放電容量を測定し、高温保存後の電池容量とした。初期の電池容量に対する高温保存後の電池容量の割合を容量維持率として算出した。
【0050】
<過充電試験>
各非水電解質二次電池を25℃にて4Aの充電電流で充電深度が100%になるまで充電し、60℃で2時間放置した。その後、125Aの充電電流で電流遮断機構の作動等により通電停止するまで充電した。
【0051】
実施例1、比較例1及び比較例2に係る非水電解質二次電池の低温出力特性、高温保存特性及び過充電特性の測定結果を表1に示す。なお、表1に示す低温出力特性の測定結果は、実施例1の低温出力特性を100%とし、比較例1及び比較例2の低温出力特性を実施例1の低温出力特性に対する相対的な値で示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示すように、正極活物質合剤層に炭酸リチウム及びリン酸リチウムが含有され、且つ非水電解質にフルオロスルホン酸リチウムが含有される実施例1の非水電解質二次電池は、低温出力特性及び高温保存特性に優れると共に、過充電状態となっても異常な挙動が生じない信頼性の高い非水電解質二次電池となった。この結果は、以下のように考察される。
【0054】
フルオロスルホン酸リチウムが正極活物質および負極活物質に吸着することで低温での反応抵抗が低減され、また、電解液との反応による不可逆リチウムの生成が抑制されることから、低温出力特性が向上し、高温保存後の容量維持率が向上したと考えられる。そして、実施例1と比較例2の比較から分かるように、正極活物質合剤層にリン酸リチウムが含有されると、フルオロスルホン酸リチウムとの相乗効果により、低温出力特性がより向上した非電解質二次電池となる。また、正極活物質合剤層に炭酸リチウム及びリン酸リチウムが含有されることにより、電流遮断機構を即座に作動させることが可能となると共に、電池の発熱や異常反応を抑制することが可能となる。これは、炭酸リチウムにより電流遮断機構の作動に必要な量のガスが短時間で発生し、リン酸リチウムにより過充電状態での電解液の酸化分解が抑制され、電解液の酸化分解等に起因する発熱が抑制されるためと考えられる。
【0055】
以上、本発明によると低温特性及び高温保存特性に優れた非水電解質二次電池が得られる。
【0056】
正極活物質合剤層中に含有される炭酸リチウムの量は、正極活物質合剤層中に含有される正極活物質に対して0.1質量%〜5質量%とすることが好ましく、0.5質量%〜4質量%とすることがより好ましく、1質量%〜3質量%とすることがさらに好ましい。
【0057】
正極活物質合剤層中に含有されるリン酸リチウムの量は、正極活物質合剤層中に含有される正極活物質に対して0.1質量%〜5質量%とすることが好ましく、0.5質量%〜4質量%とすることがより好ましく、1質量%〜3質量%とすることがさらに好ましい。
【0058】
非水電解質に含有されるフルオロスルホン酸リチウムの量は非水電解質の総量に対して0.25質量%〜2.5質量%とすることが好ましく、0.5質量%〜2質量%とすることがより好ましく、0.75質量%〜1.5質量%とすることがさらに好ましい。なお、これらの量は、電池作製時の非水電解質中に含有されるフルオロスルホン酸リチウムの量とする。
【0059】
<感圧式の短絡機構>
感圧式の安全機構として、電流遮断機構50に代えて短絡機構を設けることも可能である。感圧式の短絡機構は、封口体近傍に設けられることが好ましい。図5Aは作動前の短絡機構80の断面図であり、図5Bは作動した後の短絡機構80の断面図である。
【0060】
図5Aに示すように、金属製の封口体103は、正極板に電気的に接続された反転部1
10を有する。この反転部110の外側には、負極板に電気的に接続された金属製の受け部品111が配置される。図5Aでは負極端子109に受け部品111が接続されている。負極端子109は負極集電体108を介して負極板に接続されている。受け部品111、負極端子109及び負極集電体108は絶縁部材113により封口体103と電気的に絶縁されている。なお、反転部110は封口板103に一体的に形成され、封口板103が正極板に電気的に接続されていることが好ましい。
【0061】
非水電解質二次電池が過充電状態となり電池内部の圧力が所定値以上となった場合、図5Bに示すように、反転部110が外側(図5中では上側)に反転するように変形し、受け部品111と接触する。反転部110は金属製で正極板に電気的に接続され、また受け部品111は負極板に電気的に接続されているため、反転部110と受け部品111が接触することにより正極板と負極板が電極体の外部で短絡した状態となる。これにより、過充電が進行することを防止できる。また、電極体内部のエネルギーが電極体外部で消費される。したがって、過充電に対して信頼性の高い非水電解質二次電池となる。
【0062】
なお、図6に示すように正極集電体106ないし負極集電体108等に、他の部分に比べて断面積の小さい部分を設け、溶断部81とすることができる。この溶断部81は、短絡機構80の作動により生じた短絡電流により溶断する。これにより、非水電解質二次電池の過充電が進行することをより確実に防止できる。
【0063】
本発明において正極活物質としてリチウム遷移金属複合酸化物を用いることが好ましい。例えば、コバルト酸リチウム(Li1+aCoO(0≦a≦0.2))、マンガン酸リチウム(Li1+aMn(0≦a≦0.2))、ニッケル酸リチウム(Li1+aNiO(0≦a≦0.2))、リチウムニッケルマンガン複合酸化物(Li1+aNi1−xMn(0≦a≦0.2))、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(Li1+aNi1−xCo(0≦a≦0.2、0<x<1))、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(Li1+aNiCoMn(0≦a≦0.2、0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1))等のリチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。また、上記のリチウム遷移金属複合酸化物にAl、Ti、Zr、Nb、B、W、Mg又はMo等を添加したものも使用し得る。例えば、Li1+aNiCoMn(M=Al、Ti、Zr、Nb、B、Mg及びMoから選択される少なくとも1種の元素、0≦a≦0.2、0.2≦x≦0.5、0.2≦y≦0.5、0.2≦z≦0.4、0≦b≦0.02、a+b+x+y+z=1)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。特に正極活物質としては、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物にZr及びWが添加されたものが好ましい。
【0064】
また、負極活物質としてはリチウムイオンの吸蔵・放出が可能な炭素材料を用いることができる。リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な炭素材料としては、黒鉛、難黒鉛性炭素、易黒鉛性炭素、繊維状炭素、コークス及びカーボンブラック等が挙げられる。これらの内、特に黒鉛が好ましい。さらに、非炭素系材料としては、シリコン、スズ、及びそれらを主とする合金や酸化物などが挙げられる。
【0065】
また、非水電解質の非水溶媒(有機溶媒)としては、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、ケトン類、エステル類等を使用することができ、これらの溶媒の2種類以上を混合して用いることができる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネートを用いることができる。特に、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒を用いることが好ましい。また、ビニレンカーボネート(VC)などの不飽和環状炭酸エステルを非水電解質に添加することもできる。
【0066】
非水電解質の電解質塩としては、従来のリチウムイオン二次電池において電解質塩として一般に使用されているものを用いることができる。例えば、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiAsF、LiClO、Li10Cl10、Li12Cl12、LiB(C、LiB(C)F、LiP(C、LiP(C、LiP(C)F等及びそれらの混合物が用いられる。これらの中でも、LiPFが特に好ましい。また、前記非水溶媒に対する電解質塩の溶解量は、0.5〜2.0mol/Lとするのが好ましい。特に、非水電解質にLiPF及びLiB(Cが含有されることが好ましい。
【0067】
また、セパレータとしては、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PP)などのポリオレフィン製の多孔質セパレータを用いることが好ましい。特にポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)の3層構造(PP/PE/PP、あるいはPE/PP/PE)を有するセパレータを用いることが好ましい。また、ポリマー電解質をセパレータとして用いてもよい。
【符号の説明】
【0068】
20・・・非水電解質二次電池
21・・・正極板
21a・・・正極芯体 21b・・・正極活物質合剤層 21c・・・正極保護層
22・・・負極板
22a・・・負極芯体 22b・・・負極活物質合剤層 22c・・・負極保護層

1・・・巻回電極体
2・・・角形外装体
3・・・封口板
4・・・正極芯体露出部
5・・・負極芯体露出部
6・・・正極集電体
7・・・正極端子
7a・・・鍔部 7b・・・挿入部 7x・・・貫通穴
8・・・負極集電体
9・・・負極端子
9a・・・鍔部
10・・・第1絶縁部材
11・・・外部側絶縁部材
12・・・内部側絶縁部材
13・・・外部側絶縁部材
14・・・絶縁シート
15・・・電解液注液孔
16・・・封止栓
17・・・ガス排出弁
18・・・端子栓
18a・・・弾性部材 18b・・・金属板

50・・・電流遮断機構
51・・・導電部材
52・・・変形板

53・・・第2絶縁部材
54・・・接続部































図1
図2
図3
図4
図5
図6