(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の電子時計1の機能構成を示すブロック図である。
この電子時計1は、世界時計機能を有する携帯型の電子時計であって、例えば、電子腕時計である。
電子時計1は、CPU(Central Processing Unit)41(地方時設定手段、地方時算出手段、位置取得制御手段、日時取得手段、表示制御手段)と、ROM(Read Only Memory)42と、RAM(Random Access Memory)43と、複数の指針44と、ステッピングモータ45と、駆動回路46と、操作受付手段としての操作部47と、発振回路48と、分周回路49と、計時手段としての計時回路50と、長波受信部51及びアンテナA1と、衛星電波受信処理部52及びアンテナA2と、UART53(Universal Asynchronous Receiver / Transmitter)と、電源部54などを備えている。
【0012】
CPU41は、各種演算処理を行い、電子時計1の全体動作を統括制御する。また、CPU41は、衛星電波受信処理部52から取得された日時データや長波受信部51から入力された信号に基づいて解読された日時データに基づいて計時回路50に信号を送り、計時回路50が保持する日時データを修正するとともに、設定されているホーム位置における日時(ホーム時計;HT)及び世界時計位置における日時(世界時計;WT)を計数する。
【0013】
ROM42には、電子時計1が各種動作を行うための種々のプログラムや初期設定データが格納されている。ROM42に格納されているプログラムには、ホーム都市及び世界都市の日時の計数、表示制御、長波受信部51による標準電波の受信タイミングや受信対象局の制御、及び衛星電波受信処理部52による受信対象及び受信タイミングの制御といった各種制御動作の制御用のプログラム421が含まれる。また、初期設定データには、本実施形態の電子時計1でユーザによりホーム都市や世界時計都市として設定選択可能な世界の都市と、当該都市が属するタイムゾーン、夏時間(Daylight Saving Time;DST)実施ルール及び標準電波の受信対象局に係る設定とがリスト記憶された都市設定情報422と、電子時計1で受信可能な全ての標準電波送信局(長波長電波送信局)の受信周波数や送信フォーマットに係る情報がリスト記憶された標準電波リスト423とが含まれる。
【0014】
RAM43は、CPU41に作業用のメモリ空間を提供し、各種一時データや上書き更新可能な設定データを記憶する。RAM43には、HT/WT設定記憶部431及び標準電波受信設定432が含まれる。
【0015】
HT/WT設定記憶部431は、ホーム位置に関する設定(主設定)として、設定されているホーム都市の位置、都市、タイムゾーン及び夏時間実施ルールと、世界時計位置に関する設定(世界時計設定)として、設定されている世界都市の位置、都市、タイムゾーン及び夏時間実施ルールとが記憶されている。これらの情報が参照されて、計時回路50により計数されている現在日時がホーム都市及び世界時計都市における地方時に換算され、利用、表示される。
【0016】
標準電波受信設定432は、長波受信部51により長波長帯で日時情報を送信している標準電波送信局からの標準電波の受信を行う場合における受信対象局の設定を記憶する。標準電波受信設定432に記憶される設定は、都市設定情報422又は地方時設定記憶部521により選択設定された受信対象局を特定する特定情報である。当該特定情報に基づいて標準電波リスト423が参照されることで、受信周波数や復号のためのフォーマット情報などが取得可能である。
【0017】
指針44は、ここでは、時針、分針及び秒針を含む時刻表示に用いられる指針であり、文字盤上に回転自在に設けられている。ステッピングモータ45は、歯車列である輪列機構を介してこれらの指針44を回転動作させるためのものであり、駆動回路46からの駆動電圧パルスの入力に応じて所定の角度、例えば、180度ロータが回転する。駆動回路46は、CPU41からの制御信号に基づいてステッピングモータ45に所定電圧及びパルス幅の駆動電圧パルスを出力し、ステッピングモータ45を駆動する。ここでは、例えば、ホーム都市(ホーム位置)の日時(地方時)を表示するための指針と、世界時計都市(世界時計位置)の日時(地方時)を表示するための指針がそれぞれ別個に設けられ、各々対応するステッピングモータ45により回転動作される構成とすることが出来る。
これら指針44、ステッピングモータ45及び駆動回路46により表示手段が構成される。
【0018】
操作部47は、複数のキーやボタンを備え、これらのキーやボタンが操作されると、操作内容を電気信号に変換して入力信号としてCPU41へ出力する。また、操作部47は、りゅうずやタッチセンサなどを備えていても良い。
【0019】
発振回路48は、所定の周波数、例えば、32kHzの発振信号を生成して出力する。この発振回路48は、特には限られないが、例えば、水晶発振器を含むものである。
【0020】
分周回路49は、発振回路48が生成した発振信号を分周し、必要な周波数信号を生成して出力する。分周回路49は、CPU41からの制御信号により、適宜に分周比を切り替えて異なる周波数の信号を出力させることが可能となっている。
【0021】
計時回路50は、分周回路49から入力された所定の周波数信号を計数し、初期設定日時に加算していくことで現在の日時を計数する。計数される日時は、特には限られないが、例えば、UTC日時やCPU41によりUTC日時に換算可能なカウント値である。この計時回路50の計数する日時は、CPU41からの信号で、測位衛星や標準電波から受信された電波により取得された日時データに基づいて書き換え修正される。
【0022】
長波受信部51は、長波長帯の電波を受信するアンテナA1を用いて受信した標準電波からタイムコード信号を復調する。標準電波は、長波長帯の振幅変調波(AM波)であり、本実施形態の長波受信部51では、特に限られないが、例えば、スーパーヘテロダイン方式により復調を行う。この長波受信部51は、CPU41からの制御信号により、標準電波を受信する際にのみ電源部54から電力が供給される構成となっている。また、アンテナA1による同調周波数は、長波受信部51における図示略の同調回路の設定を調整することによって変更することが可能となっている。
長波受信部51及びアンテナA1により長波受信手段が構成される。
【0023】
衛星電波受信処理部52は、L1帯(1.57542GHz)の送信電波を受信可能なアンテナA2を用いて測位衛星、例えば、米国のGPS(Global Positioning System)に係るGPS衛星からの送信電波を受信する受信部と、航法メッセージを復調、復号して日時情報や位置情報を出力する制御部とを備えるモジュールである。この衛星電波受信処理部52では、制御部は、取得されたGPS衛星の日時(GPS日時)をUTC日時に変換して出力することが出来る。また、衛星電波受信処理部52は、地方時設定記憶部521を有し、受信部による受信データから制御部が現在位置を算出する測位動作が行われると、制御部は、更に、地方時設定記憶部521を参照して取得された現在位置が属するタイムゾーンや当該現在位置における夏時間実施ルールを取得して、UTC日時を更に地方時に変換して標準電波の受信対象局に係る設定情報と共にCPU41に出力する。
衛星電波受信処理部52は、CPU41からの制御信号により、測位衛星からの電波受信、日時取得や測位に係る演算処理や、各種設定動作が行われる期間にのみ電源部54から電力が供給される。
衛星電波受信処理部52、アンテナA2及び操作部47により位置情報取得手段が構成される。
また、衛星電波受信処理部52及びアンテナA2により衛星電波受信手段及び測位手段が構成される。
【0024】
UART53は、衛星電波受信処理部52とCPU41との間でデータの入出力をパラレル/シリアル変換して適切にデータの送受信を行わせる。
【0025】
電源部54は、電子時計1の各部の動作に必要な電力を供給する。電源部54は、例えば、ボタン型一次電池によるバッテリを備え、このバッテリは、着脱交換可能に設けられる。このバッテリは、衛星電波受信処理部52による動作負荷に応じた電力を供給可能な一方で、主に、計時動作及び日時の表示動作に係る低消費電力での使用下で長時間継続的且つ安定的に運用可能な小型軽量なものが好ましい。
【0026】
図2は、本実施形態の電子時計1においてRAM43に記憶されるホーム時計及び世界時計の設定に係る記憶内容を説明する図である。
【0027】
この電子時計1では、ホーム時計(HT)及び世界時計(WT)に係る設定がHT/WT設定記憶部431に記憶される。HT/WT設定記憶部431の記憶内容としては、HT及びWTの各設定位置(ホーム位置、世界時計位置)を示す緯度経度情報、当該緯度経度と各々対応する都市情報(ホーム都市、世界時計都市)、これらのホーム位置(都市)や世界時計位置(都市)が属するタイムゾーンにおけるUTC日時からの時差情報、及び夏時間実施時における標準時間からのシフト時間に係る情報がそれぞれ含まれる。また、これに夏時間の実施期間に係る情報などが含まれていても良い。また、緯度経度情報と都市情報とは、少なくとも何れか一方が設定されていれば良い。
CPU41は、計時回路50が出力するUTC日時をこれらの設定内容に基づいて地方時に換算して、換算された日時を随時RAM43に記憶、更新する。
【0028】
例えば、
図2(a)に示すように、ホーム位置として北緯35.7度、東経139.7度が設定され、これに応じたホーム都市として東京が選択されている。また、このホーム位置が属するタイムゾーンの時差として、+9.0時間が設定され、夏時間の不実施を示すシフト時間+0.0時間が設定されている。また、一方で、世界時計位置として、北緯37.8度、西経122.4度が設定され、これに応じた世界時計都市としてサンフランシスコが選択されている。また、この世界時計位置が属するタイムゾーンの時差として、−8.0時間が設定され、夏時間実施時におけるシフト時間+1.0時間が設定されている。
【0029】
また、標準電波受信設定432として、ホーム都市である東京で受信可能な日本の標準電波局であるJJY60(登録商標:JJY)が設定されている。
【0030】
一方、
図2(b)に示すように、本実施形態の電子時計1では、ホーム位置(ホーム都市)や世界時計位置(世界時計都市)を示す情報として、実際の緯度経度や都市ではなく、UTC(協定世界時)(特定地点を示す情報)を選択することが可能となっている。ここでは、ホーム位置及びホーム都市を示す情報として、UTCが設定されている。この場合、標準電波受信設定432として、世界時計都市として設定されている東京で受信可能な標準電波送信局であるJJY60が設定されている。
【0031】
次に、本実施形態の電子時計1における地方時設定動作について説明する。
本実施形態の電子時計1では、予めホーム都市(例えば、電子時計1の販売地域の代表的な都市)及び世界時計都市(例えば、UTC)の初期設定がなされている。測位衛星からの電波を受信して測位が行われた場合には、ホーム位置の緯度経度及び/又は世界時計位置緯度経度が設定されると共に対応する都市が選択され、また、ユーザにより手動で都市設定が選択された場合には、設定モードに応じてホーム都市又は世界時計都市が更新される。そして、これら緯度経度情報や都市情報の更新に伴って関連する時差や夏時間実施ルールに係る設定が変更される。
【0032】
図3は、本実施形態の電子時計1で実行される地方時情報取得処理のCPU41による制御手順を示すフローチャートである。この地方時情報取得処理は、所定の条件、例えば、ユーザによって実行命令が入力操作された場合、図示略のセンサなどによってユーザ(電子時計1)の位置が大きく変化したことが検出された場合や、予めスケジュール設定されたタイミング(例えば1日1回など)に自動的に起動される。
【0033】
地方時情報取得処理が開始されると、CPU41は、HT及びWTが何れもUTC時刻であるか否かを判別する(ステップS101)。CPU41は、HT/WT設定記憶部431を参照して、ホーム都市(ホーム位置)及び世界時計都市(世界時計位置)を示す設定情報の何れもがUTCであるか否かを判別する。少なくとも何れかがUTCではないと判別された場合には(ステップS101で“NO”)、CPU41は、衛星電波受信処理部52を起動して測位要求を送信する(ステップS102)。CPU41は、衛星電波受信処理部52からの返答を待ち受けて、測位結果と現在の日時情報とを取得する。
【0034】
CPU41は、日時の取得に成功したか否かを判別する(ステップS103)。成功しなかったと判別された場合には(ステップS103で“NO”)、CPU41は、位置情報取得処理を終了する。成功したと判別された場合には(ステップS103で“YES”)、CPU41は、測位に成功したか否かを判別する(ステップS104)。測位に成功しなかったと判別された場合には(ステップS104で“NO”)、CPU41の処理は、ステップS108に移行する。
【0035】
測位に成功したと判別された場合には(ステップS104で“YES”)、CPU41は、ホーム都市を示す情報としてUTCが設定されているか否かを判別する(ステップS105)。UTCが設定されていると判別された場合には(ステップS105で“YES”)、CPU41は、取得された現在位置を世界時計位置として設定する(ステップS106)。また、CPU41は、衛星電波受信処理部52から併せて得られた現在位置の属するタイムゾーン及び夏時間実施ルールにより世界時計(WT)に係る地方時設定を行ってHT/WT設定記憶部431に記憶させる。それから、CPU41の処理は、ステップS107に移行する。
【0036】
ホーム都市を示す情報がUTCを示していないと判別された場合には(ステップS105で“NO”)、CPU41は、取得された現在位置をホーム位置として設定する(ステップS116)。また、CPU41は、衛星電波受信処理部52から併せて得られた現在位置の属するタイムゾーン及び夏時間実施ルールによりホーム時計(HT)に係る地方時設定を行ってHT/WT設定記憶部431に記憶させる。それから、CPU41の処理は、ステップS107に移行する。
【0037】
ステップS107の処理に移行すると、CPU41は、取得された現在位置に基づいて受信対象とする標準電波送信局の設定を行い、標準電波受信設定432として記憶させる(ステップS107)。CPU41は、衛星電波受信処理部52から当該設定情報が受信された場合には、そのままこの設定を用いて標準電波受信設定432として記憶させることが出来る。それから、CPU41の処理は、ステップS108に移行する。
【0038】
ステップS108の処理に移行すると、CPU41は、取得された現在日時(UTC日時)により計時回路50の日時を修正し、当該修正された計時回路50の日時と設定されているHT設定及びWT設定とに基づいて、ホーム時計及び世界時計として計数する日時を修正する(ステップS108)。そして、CPU41は、地方時情報取得処理を終了する。
【0039】
一方、ステップS101の判別処理で、HT及びWTが何れもUTC時刻であると判別された場合には(ステップS101で“YES”)、CPU41は、衛星電波受信処理部52を起動して、日時情報のみの取得を要求する(ステップS122)。CPU41は、衛星電波受信処理部52からの返答を待ち受けて、日時情報を取得する。
【0040】
CPU41は、日時情報の取得に成功したか否かを判別する(ステップS123)。成功したと判別された場合には(ステップS123で“YES”)、CPU41の処理は、ステップS108に移行する。成功しなかった(失敗した)と判別された場合には(ステップS123で“NO”)、CPU41は、地方時情報取得処理を終了する。
【0041】
図4は、本実施形態の電子時計で実行されるHT手動設定処理のCPU41による制御手順を示すフローチャートである。
このHT手動設定処理は、ユーザの操作部47への入力操作によりホーム都市の設定モードへの移行が検出された場合に開始される。
【0042】
HT手動設定処理が開始されると、CPU41は、ユーザによる設定の確定操作がなされたか否かを判別する(ステップS201)。確定操作がなされていないと判別された場合には(ステップS201で“NO”)、CPU41は、ステップS201の処理を繰り返す。
【0043】
確定操作がなされたと判別された場合には(ステップS201で“YES”)、CPU41は、設定されたホーム都市の情報を取得し、都市設定情報422を参照して、当該ホーム都市に対応するタイムゾーン情報及び夏時間実施ルールを取得する。CPU41は、これらホーム都市及びそのタイムゾーンの時差や夏時間実施ルールに係る情報をHT/WT設定記憶部431に記憶させる(ステップS202)。
【0044】
CPU41は、更新されたホーム都市を示す設定情報がUTCであるか否かを判別する(ステップS203)。UTCでないと判別された場合には(ステップS203で“NO”)、CPU41は、設定されたホーム都市を含む受信エリアを有する標準電波送信局を設定して標準電波受信設定432に記憶させる(ステップS225)。そして、CPU41は、HT手動設定処理を終了する。
【0045】
ホーム都市の設定情報がUTCを示していると判別された場合には(ステップS203で“YES”)、CPU41は、世界時計都市の設定情報がUTCを示しているか否かを判別する(ステップS204)。世界時計都市の設定情報がUTCを示していないと判別された場合には(ステップS204で“NO”)、CPU41は、都市設定情報422を参照して世界時計都市を含む受信エリアを有する標準電波送信局を設定して標準電波受信設定432に記憶させる(ステップS215)。そして、CPU41は、HT手動設定処理を終了する。
【0046】
世界時計都市の設定情報がUTCを示していると判別された場合には(ステップS204で“YES”)、CPU41は、受信対象とする標準電波送信局を「無し」に設定する(ステップS205)。そして、CPU41は、HT手動設定処理を終了する。
【0047】
図5は、本実施形態の電子時計で実行されるWT手動設定処理のCPU41による制御手順を示すフローチャートである。
このWT手動設定処理は、ユーザの操作部47への入力操作により世界時計都市の設定モードへの移行が検出された場合に開始される。
【0048】
WT手動設定処理が開始されると、CPU41は、ユーザによる設定の確定操作がなされたか否かを判別する(ステップS301)。確定操作がなされていないと判別された場合には(ステップS301で“NO”)、CPU41は、ステップS301の処理を繰り返す。
【0049】
確定操作がなされたと判別された場合には(ステップS301で“YES”)、CPU41は、設定された世界時計都市の情報を取得し、都市設定情報422を参照して当該世界時計都市に対応するタイムゾーン情報及び夏時間実施ルールを取得する。CPU41は、これら世界時計都市及びそのタイムゾーンの時差や夏時間実施ルールに係る情報をHT/WT設定記憶部431に記憶させる(ステップS302)。
【0050】
CPU41は、ホーム都市の設定情報がUTCを示しているか否かを判別する(ステップS303)。UTCでないと判別された場合には(ステップS303で“NO”)、CPU41は、そのままWT手動設定処理を終了する。これにより、現在設定されているホーム都市に応じた標準電波送信局の設定が維持される。
【0051】
ホーム都市の設定情報がUTCを示していると判別された場合には(ステップS303で“YES”)、CPU41は、更新された世界時計都市の設定情報がUTCを示しているか否かを判別する(ステップS304)。世界時計都市の設定情報がUTCを示していないと判別された場合には(ステップS304で“NO”)、CPU41は、都市設定情報422を参照して世界時計都市を受信エリアに含む標準電波送信局を設定して標準電波受信設定432に記憶させる(ステップS315)。そして、CPU41は、WT手動設定処理を終了する。
【0052】
世界時計都市の設定情報がUTCを示していると判別された場合には(ステップS304で“YES”)、CPU41は、受信対象とする標準電波送信局を「無し」に設定する(ステップS305)。そして、CPU41は、WT手動設定処理を終了する。
【0053】
以上のように、本実施形態の電子時計1は、現在日時を計数する計時回路50と、CPU41と、位置情報を取得するための衛星電波受信処理部52、及び操作部47と、を備える。
CPU41は、世界の一地点を地方時の算出に係るホーム位置に関する設定として定め、予め定められた数以内(ここでは1つ)の世界の地点を世界時計都市設定として定める地方時設定手段として動作し、また、計時回路50により計数されている日時をホーム位置に関する設定及び世界時計位置に関する設定として定められている世界の地点の地方時にそれぞれ変換する地方時算出手段として動作する。
また、地方時設定手段としてのCPU41は、新たな位置情報が取得されると、ホーム位置に関する設定として予め定められている特定地点が選択されている場合には、取得された位置により世界時計都市設定を更新し、ホーム位置に関する設定として特定地点が選択されていない場合には、取得された位置によりホーム位置(ホーム都市)を定める。
従って、ホーム位置(ホーム都市)に対してユーザが変更を希望しないような特定の設定がなされている場合、世界時計都市(世界時計位置)の設定を変更して現在位置をサブとして計数、利用することで、ユーザの意向を尊重しつつより柔軟に現在位置に反映した表示を行わせることが出来る。
【0054】
また、上記特定地点を示す情報には、UTC日時が含まれる。従って、このように具体的な位置に対応しない日時(時刻)であって特定の用途などで用いられる日時を表示可能であり、このような日時を優先しつつ取得された現在位置により世界時計都市(世界時計位置)を更新していくので、より柔軟に取得された現在位置に応じた表示などを行わせつつ、ユーザ設定を尊重したUTC日時の利用、表示を維持させることが出来る。
【0055】
また、位置情報取得手段として、GPS衛星などの測位衛星からの電波を受信し、測位手段として、当該受信された電波に基づいて復調、復号及び演算処理を行い、現在位置を算出する衛星電波受信処理部52及びアンテナA2を備える。従って、上空の視野が必要な範囲以上開けている限りにおいて、世界の何れの場所でも正しい位置情報を取得して、UTC時刻の表示設定などのユーザのホーム都市の設定を尊重しつつ現在位置を考慮した世界時計位置の設定を柔軟に行わせることが出来る。
【0056】
また、位置取得制御手段としてのCPU41は、衛星電波受信手段としての衛星電波受信処理部52及びアンテナA2に対し、電波を受信させて現在位置を取得させ、当該衛星電波受信処理部52は、ホーム位置に関する設定及び世界時計位置に関する設定情報の何れでもUTCが示されている場合に、現在位置の取得を中止させる。従って、ホーム位置及び世界時計の何れに対してもユーザが現在位置に応じた地方時への変更を望まない場合には、衛星電波受信処理部52及びアンテナA2により新たな位置情報を取得しない。これにより、意味の無い現在位置情報の取得動作を防ぎ、電力消費の効率化を図ることが出来る。
なお、世界時計設定が複数可能な場合、現在位置に対応する一つの世界時計位置(世界時計都市)のみを考慮するように定めることが出来る。或いは、予め定められた一つの世界時計位置がUTCであるか否かの判断のみを行っても良い。
【0057】
また、日時情報を送信する長波長帯の標準電波送信局からの電波を受信する長波受信部51及びアンテナA1を備え、CPU41は、これら長波受信部51及びアンテナA1により受信された日時情報を解読して取得する日時取得手段として動作する。
地方時設定手段としてのCPU41は、ホーム位置に関する設定として特定地点(UTC日時)を示す情報が定められている場合には、世界時計都市設定において予め定められた一つの地点が受信範囲として定められている標準電波送信局を受信対象とする。
従って、ホーム位置(ホーム都市)が現在位置と異なる場合に当該ホーム位置を基準することによる標準電波の受信困難を防ぎ、適切な標準電波設定を行って、正確な日時情報の維持を図ると共に、標準電波の受信失敗により無駄な電力消費が生じるのを抑える。
【0058】
また、ユーザによる操作を受け付ける操作部47を備え、地方時設定手段としてのCPU41は、操作部47によりホーム位置に関する設定が特定地点(UTC)を示すものに変更された場合には、世界時計都市設定において予め定められた一つの地点が受信範囲として定められている標準電波送信局を受信対象とし、操作部47によりホーム位置に関する設定が特定地点(UTC)を示すものから特定地点以外の地点(UTC以外の通常位置情報)に変更された場合には、ホーム位置に関する設定に係る地点が受信範囲として定められている標準電波送信局を受信対象とする。
これにより、ユーザ操作によるホーム位置(即ち、ホーム都市)に関する設定の変更に応じて標準電波の受信対象局をより現在位置に即して適切に設定し、受信及び時刻の修正を行うことが出来る。
【0059】
また、ホーム位置に関する設定に係る地点における地方時と、世界時計都市設定に係る地点の少なくとも一つにおける地方時とを同時に表示する表示手段としての指針44、ステッピングモータ45及び駆動回路46を備え、CPU41は、これら表示手段の表示内容を制御する表示制御手段として動作する。表示制御手段としてのCPU41は、ホーム位置に関する設定又は世界時計位置に関する設定が変更された場合には、当該変更された設定に係る地点の地方時を表示手段により表示させる。
このように、電子時計1において、ホーム都市(ホーム位置)や世界時計都市(世界時計位置)の変更に応じて速やかに表示する地方時を変更することで、ユーザは、ストレスなく必要な時刻情報を知得することが出来る。
【0060】
また、計時回路50を備え、世界時計機能を有する電子時計1において、上述の方法により、位置情報が取得された際の地方時設定を変更することで、ユーザの意向を尊重しつつ、より柔軟に計数、表示させる日時の設定を行うことが出来る。
【0061】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、UTCが設定されている場合にホーム位置及びホーム都市の更新が行われないこととしたが、通常の位置や都市が選択されている場合であっても、当該位置や設定が測位結果に応じて変更されない位置として予め設定されている場合や、ユーザが変更を望まないことを示す設定を行うことが可能な場合などには、当該ホーム位置及びホーム都市の設定の代わりに世界時計位置及び世界時計都市の設定が更新されても良い。
【0062】
また、上記実施形態では、測位衛星からの電波とユーザ操作とに基づいて位置情報が取得されることとしたが、その他の方法、例えば、携帯電話やスマートフォンなどから近距離無線通信を介して位置情報が取得されても良い。携帯電話やスマートフォンなどから取得される位置情報としては、例えば、緯度経度の情報や都市名などの情報であっても良い。
【0063】
また、上記実施の形態では、指針を用いて表示を行うアナログ電子時計を例に挙げて説明したが、デジタル表示画面を用いたデジタル電子時計であっても良い。また、ユーザ設定の場合には、予め定められた都市の中から選択する例を挙げて説明したが、手動操作により緯度や経度の入力が行われても良い。
【0064】
また、上記実施の形態では、世界時計として一つの地点のみが選択されて計数、表示されたが、複数地点が設定されても良い。この場合、複数地点の表示が同時に可能であっても良いし、ユーザ操作に応じて順次切り替えられても良い。また、各地点の情報は、ユーザ操作により要求された場合にのみ一時的に表示されても良いし、常時都市名などが表示されていても良い。
【0065】
また、複数の世界時計位置(世界時計都市)の設定が可能な場合、現在位置に対応するものが識別可能とされて、当該現在位置に応じて標準電波の受信対象局が選択される構成とされることが出来る。これら複数の世界時計位置には、番号や優先度などが付されても良く、ユーザ操作などに応じて当該番号を指定して設定変更可能であったり、測位が行われた場合に優先度の最も高いものが変更される形態であったりしても良い。
【0066】
また、上記実施の形態では、ホーム位置及び世界時計位置の何れにもUTCが設定された場合には、測位動作を中止することとしたが、標準電波の受信設定のためにのみ測位動作を行わせても良い。
【0067】
また、上記実施の形態では、衛星電波受信処理部52の地方時設定記憶部521と、ROM42の都市設定情報422とが別個に保持されたが、同一のメモリに保持されても良く、また、設定処理も全て一つのCPU(CPU41など)によって行われても良い。
その他、上記実施の形態で示した構成や制御内容などの具体的な細部は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0069】
[付記]
<請求項1>
現在日時を計数する計時手段と、
世界の一地点を地方時の算出に係る主設定として定め、予め定められた数以内の世界の地点を世界時計設定として定める地方時設定手段と、
前記計時手段により計数されている日時を前記地方時設定手段により前記主設定及び前記世界時計設定として定められている世界の地点の地方時にそれぞれ変換する地方時算出手段と、
位置情報取得手段と、
を備え、
前記地方時設定手段は、
前記位置情報取得手段により新たな位置情報が取得されると、主設定として予め定められた特定地点が選択されている場合には、前記位置情報取得手段により取得された位置を前記世界時計設定の一つとして追加又は入れ替えを行い、主設定として前記特定地点が選択されていない場合には、前記位置情報取得手段により取得された位置を主設定として定める
ことを特徴とする電子時計。
<請求項2>
前記特定地点を示す情報には、UTC日時が含まれることを特徴とする請求項1記載の電子時計。
<請求項3>
前記位置情報取得手段は、
測位衛星からの電波を受信する衛星電波受信手段と、
当該衛星電波受信手段により受信された電波に基づいて現在位置を算出する測位手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の電子時計。
<請求項4>
前記衛星電波受信手段により電波を受信させて前記測位手段により前記現在位置を取得させる位置取得制御手段を備え、
当該位置取得制御手段は、
前記主設定及び前記世界時計設定の何れにも前記特定地点が設定されている場合に、現在位置の取得を中止させる
ことを特徴とする請求項3記載の電子時計。
<請求項5>
日時情報を送信する長波長電波送信局からの電波を受信する長波受信手段と、
当該長波受信手段により受信された日時情報を解読して取得する日時取得手段と、
を備え、
前記地方時設定手段は、
前記主設定として前記特定地点が定められている場合には、前記世界時計設定において予め定められた一つの地点が受信範囲として定められている長波長電波送信局を受信対象とする
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の電子時計。
<請求項6>
ユーザによる操作を受け付ける操作受付手段を備え、
前記地方時設定手段は、前記操作受付手段により前記主設定が前記特定地点に変更された場合には、前記世界時計設定において予め定められた一つの地点が受信範囲として定められている長波長電波送信局を受信対象とし、前記操作受付手段により前記主設定が前記特定地点から前記特定地点以外の地点に変更された場合には、前記主設定に係る地点が受信範囲として定められている長波長電波送信局を受信対象とする
ことを特徴とする請求項5記載の電子時計。
<請求項7>
前記主設定に係る地点における地方時と、前記世界時計設定に係る地点の少なくとも一つにおける地方時とを同時に表示する表示手段と、
前記表示手段の表示内容を制御する表示制御手段と、
を備え、
前記表示制御手段は、
前記位置情報取得手段により前記主設定又は前記世界時計設定が変更された場合には、当該変更された設定に係る地点の地方時を前記表示手段により表示させる
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の電子時計。
<請求項8>
計時手段を備える電子時計において地方時の算出位置を設定する地方時の位置設定方法であって、
世界の一地点を地方時の算出に係る主設定として設定し、予め定められた数以内の世界の地点を世界時計設定として定める地方時設定ステップ、
前記計時手段により計数されている日時を前記地方時設定ステップで前記主設定及び前記世界時計設定として設定されている世界の地点の地方時にそれぞれ変換する地方時算出ステップ、
位置情報取得ステップ、
を含み、
前記地方時設定ステップは、
前記位置情報取得ステップで新たな位置情報が取得されると、主設定として予め定められた特定地点が選択されている場合には、前記位置情報取得ステップで取得された位置を前記世界時計設定の一つとして追加又は入れ替えを行い、前記主設定として前記特定地点が選択されていない場合には、前記位置情報取得ステップで取得された位置を前記主設定として定める
ことを特徴とする地方時の位置設定方法。