特許第6582638号(P6582638)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6582638
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】樹脂成形装置、樹脂成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/02 20060101AFI20190919BHJP
   B29C 49/04 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   B29C51/02
   B29C49/04
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-135670(P2015-135670)
(22)【出願日】2015年7月6日
(65)【公開番号】特開2017-13472(P2017-13472A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】相原 康佑
【審査官】 ▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−270627(JP,A)
【文献】 特開昭61−261021(JP,A)
【文献】 特開2008−302565(JP,A)
【文献】 特開平01−154725(JP,A)
【文献】 特開2011−073422(JP,A)
【文献】 特開昭54−112965(JP,A)
【文献】 特開2012−240361(JP,A)
【文献】 特開平2−251414(JP,A)
【文献】 特表2005−532200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00 − 49/80
B29C 51/00 − 51/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出スリットから樹脂シートを押し出して垂下させる押出装置と、前記樹脂シートの成形に用いられる成形型と、前記押出装置と前記成形型の間に配置されるローラを備え、
前記押出装置は、Tダイを有し、前記Tダイには、前記押出スリットが設けられ、
前記ローラは、前記樹脂シートの各高さ位置において前記樹脂シートの片側にのみ設けられ前記樹脂シートに当接して前記樹脂シートの軌道を変えるように設けられ
前記押出スリットにおける前記樹脂シートの押出方向は、鉛直方向に平行であり、
前記ローラの一部が、前記押出スリットの直下に位置するように設けられている、樹脂成形装置。
【請求項2】
前記ローラは、前記押出スリットにおける前記樹脂シートの押出速度よりも、速い回転速度で回転する、請求項1に記載の樹脂成形装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形方法であって、
前記ローラが前記樹脂シートを屈曲させない第1位置に前記ローラを退避させた状態で前記押出スリットから前記樹脂シートを押し出し、
前記ローラの一部が、前記押出スリットの直下に位置するときの前記ローラの位置を第2位置としたとき、前記樹脂シートが垂下されている状態で前記ローラを第1位置から第2位置へ移動させて前記樹脂シートの軌道を変える工程を備える、樹脂成形方法。
【請求項4】
前記ローラを回転させながら前記ローラを第1位置から第2位置へ移動させる、請求項3に記載の樹脂成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融状態の樹脂シートを成形型で成形して樹脂成形品を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形品を成形する方法として、押出装置から押し出された溶融状態の樹脂シートを分割金型の間に垂下し、その樹脂シートを分割金型で型締めしてブローあるいは真空成形する方法がある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。この方法は、押出装置から押し出された溶融状態の樹脂シートを分割金型の間に配置して型締めしているため、樹脂を再加熱することに起因する加熱の不均一性などの問題点を引き起こすことなく、樹脂成形品を容易に成形することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4902789号公報
【特許文献2】特開2013−49186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、特許文献1,2に開示されているように、押出装置から押し出された溶融状態の樹脂シートを延伸する延伸装置を一対のローラで構成している。そして、溶融状態の樹脂シートを、延伸装置を構成する一対のローラで挟み込んで押し潰し、一対のローラによる樹脂シートの送り出し速度や一対のローラの間隔を調整して樹脂シートを延伸して分割金型の間に垂下するようにしている。
【0005】
これらの技術は、溶融状態の樹脂シートに生じるドローダウン(主に中空成形で、押し出されたパリソンが自重とスウェリング現象のため、金型に挾まれる前に垂れ下り(縦方向に伸び)、パリソンの上部よりも下部か直径、肉厚ともに大きくなる現象)やネックイン(Tダイによるフィルムの成形において、Tダイの有効幅よりも押し出されたフィルムの幅の方がかなり小さくなる現象)により、樹脂シートの押出方向又は幅方向に金型による成形前の樹脂シートの厚みが不均一となることを防ぐための技術である。そのため、樹脂シートの成形中に、ドローダウンに応じて成形の進行に伴い樹脂シートの押出速度を増大するように変動させ、それにより成形終盤に相当する樹脂シートの上部ほど樹脂シートの厚みを厚肉化することを目的としているので、いずれの技術においても樹脂シートを挟み込んで押し潰し、送り速度を調整するための一対のローラは必須の構成とされていた。
【0006】
しかし、一対のローラで樹脂シートを延伸する際に、樹脂シートが一対のローラの一方に巻き付く現象が発生する場合がある。樹脂シートのローラへの巻き付きは、樹脂シートを薄くした場合(例えば、1mm程度)や、樹脂シートに粘り気がある場合などに顕著に発生する。樹脂シートがローラに巻き付いてしまうと、樹脂シートの成形ができなくなってしまう。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、樹脂シートを延伸しつつ樹脂シートのローラへの巻き付きを防止することができる成形装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、押出スリットから樹脂シートを押し出して垂下させる押出装置と、前記樹脂シートの成形に用いられる成形型と、前記押出装置と前記成形型の間に配置されるローラを備え、前記ローラは、前記樹脂シートの各高さ位置において前記樹脂シートの片側にのみ設けられ前記樹脂シートに当接して前記樹脂シートの軌道を変えるように設けられる、樹脂成形装置が提供される。
【0009】
従来技術において樹脂シートがローラに巻き付いてしまう原因について本発明者らが調査したところ、一対のローラで樹脂シートを挟み込んで押し潰す際に樹脂シートがローラに押し付けられてローラに貼り付いてしまうことが原因であると分かった。このような知見に基づいて、本発明者らは、樹脂シートのローラへの巻き付きを防ぐべく、一対のローラの一方を除去して、残りの一方のローラのみを用いて実験を行ってみたところ、樹脂シートのローラへの巻き付きは発生しなくなった。しかし、樹脂シートが適切に延伸されずに、ドローダウンによって樹脂シートの厚みが不均一になるという別の問題が生じてしまった。このような状況において本発明者らは、ローラによって樹脂シートの軌道が変えられるような位置にローラを配置すればローラと樹脂シートの接触面積が大きくなるので、樹脂シートの延伸が可能になるとの仮説を立てて実験を行ったところ、樹脂シートが適切に延伸されてドローダウンによって樹脂シートの厚みの不均一性が抑制されたという結果を得て、本発明の完成に到った。
【0010】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記ローラは、その一部が前記押出スリットの直下に位置するように設けられる。
好ましくは、前記樹脂成形装置を用いた樹脂成形方法であって、前記ローラが前記樹脂シートを屈曲させない位置に前記ローラを退避させた状態で前記押出スリットから前記樹脂シートを押し出し、前記樹脂シートが垂下されている状態で前記ローラを前記樹脂シートに向かって移動させて前記樹脂シートの軌道を変える工程を備える、樹脂成形方法が提供される。
好ましくは、前記樹脂成形方法は、前記ローラを回転させながら前記樹脂シートに向かって移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の成形装置の構成例を表す図である。
図2】(a)は図1の点線領域の部分拡大図、(b)は金型を型締めしたときの図である。
図3】本発明の成形装置を構成するローラの性質を表す図である。
図4】第1実施形態の成形装置を利用した成形方法を表す図であり、(a)はローラの移動前、(b)はローラの移動後、(c)はローラの移動後の他の例を表す図である。
図5】本発明の第2実施形態及び第3実施形態を表す図であり、(a)は第2実施形態の第1実施例、(b)は第3実施形態の第1実施例を表す図である。
図6】本発明の第2実施形態及び第3実施形態を表す図であり、(a)は第2実施形態の第2実施例、(b)は第3実施形態の第2実施例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0013】
図1を用いて第1実施形態の成形装置100の構成について説明する。図1に示されるように、成形装置100は、押出装置1と、押出装置1の下方に配置された金型21とを有し、押出装置1から押し出された溶融状態の樹脂シートP1及びP2を金型21に送り、金型21により樹脂シートP1及びP2を成形するようにしている。
【0014】
押出装置1は、ホッパ16が付設されたシリンダ15と、シリンダ15内に設けられた図示しないスクリューと、スクリューに連結された油圧モータ17と、シリンダ15と内部が連通したアキュムレータ13と、アキュムレータ13内に設けられたプランジャ14とを有し、ホッパ16から投入された樹脂ペレットが、シリンダ15内で油圧モータ17によるスクリューの回転により溶融、混練され、溶融状態の樹脂がアキュムレータ13に移送されて一定量貯留され、プランジャ14の駆動によりTダイ11に向けて溶融樹脂を送り、押出スリット12を通じて樹脂シートP1及びP2が押し出される。
【0015】
また、図の矢印方向(右側:反時計回り、左側:時計回り)に回転するローラ3aが押し出された樹脂シートの各高さ位置において樹脂シートの片側にのみ、樹脂シートに当接して樹脂シートの軌道を変えるように設けられる。本実施形態では、ローラ3aはその一部が押出スリット12の直下に位置するように設けられる。そして、ローラ3aを樹脂シートP1に向かって略水平方向に移動させる移動部材4aが設けられる。
【0016】
押し出された樹脂シートは、ローラ3aの側面と接触し、ローラ3aの側面との摩擦力により下方へ向かって送り出され、2つの金型21を型締めしたときに両金型21により形成される密閉空間に収まるように垂下される。
【0017】
金型21は、キャビティ23を有する。キャビティ23の表面には、樹脂シートP1及びP2から成形される成形品の外形及び表面形状に応じて凹凸部が設けられる。キャビティ23のまわりには、ピンチオフ部25a,25bが形成される。ピンチオフ部25a,25bは、キャビティ23のまわりに環状に形成され、対向する2つの金型21に向かって突出する。これにより、2つの金型21を型締めする際、ピンチオフ部25a,25bの先端部が当接し、2枚の溶融状態の樹脂シートP1及びP2は、その周縁にパーティングラインが形成されるように溶着される。なお、ピンチオフ部25a,25bは、いずれか一方の金型21にのみ設けてもよい。
【0018】
金型21は図示しない金型駆動装置により移動する。具体的には、両金型21の間に2枚の樹脂シートP1及びP2が配置可能な開位置と、両金型21のピンチオフ部25a,25bが互いに当接する閉位置との間を移動する。そして、樹脂シートP1及びP2を両金型21の間に配置し、金型21を開位置から閉位置へと移動させて樹脂シートP1及びP2を両金型21で挟み込み、その内側に気体を吹き込み、その圧力でキャビティ23に樹脂シートP1を押しつけてキャビティ23の表面に沿った形状に樹脂シートP1及びP2を成形する。他にも、金型21の内部にキャビティ23に連通する図示しない真空吸引孔を設け、真空吸引孔から真空吸引することでキャビティ23に向かって樹脂シートP1及びP2を吸着させて、キャビティ23の表面に沿った形状に樹脂シートP1及びP2を成形する手法も採用可能である。
【0019】
次に、図2(a)を用いて、樹脂シートP1とローラ3aとの間の作用について説明する。図2(a)は図1の点線領域の部分拡大図である。押出スリット12から押し出された樹脂シートP1は、押出スリット12の下方に設けられたローラ3aの側面と接触し、それにより自身の軌道が変えられる。樹脂シートP1とローラ3aはS地点〜E地点の間で接触しており、樹脂シートP1はS地点〜E地点においてローラ3aからの摩擦力を受ける。ローラ3aは押し出された樹脂シートP1との接触を開始する点(S地点)から接触を終了する点(E地点)へ向けて回転する。換言すると、樹脂シートP1に対して樹脂シートP1の進行方向に摩擦力がかかる方向に回転する。具体的には、図の矢印方向(反時計回り)に回転しており、樹脂シートP1の押出速度よりも速い回転速度で回転させることで、樹脂シートP1を延伸することが可能となる。図示しない回転速度調整装置により、ローラ3aの回転速度を押出開始時に最大にし、押出終了時に向けて回転速度を徐々に減少させていくことで、樹脂シートP1のドローダウンを解消させることができる。
【0020】
ここで、ローラ3aの回転速度は樹脂シートP1に対して空転しないように定められる。これは、空転すると樹脂シートP1が適切に延伸されなくなり、樹脂シートP1の厚みを適切に調整できなくなるためである。
【0021】
その後、樹脂シートP1及びP2が金型21の間に垂下され、図2(b)に示されるように金型21を型締めし、その内側に気体を吹き込み、その圧力により樹脂シートP1及びP2をキャビティ23に対して押し付けて、キャビティ23の凹凸表面に沿った形状に樹脂シートP1及びP2を成形する。そして、金型21の上下に発生する樹脂シートP1及びP2の湾曲部を図示しない切断刃で切断し、成形を終える。なお、単一の樹脂シートP1を成形する場合、分割金型を用いて金型同士を型締めする代わりに、単一の金型を用いて、かかる金型の側方に押し出された樹脂シートP1を配置し、型締めすることなく、樹脂シートP1と金型との間に形成された密閉空間を減圧したり、樹脂シートP1を金型に向かって加圧することによってキャビティ23に沿った形状に成形してもよい。
【0022】
このように、第1実施形態の成形装置100では、1つのローラにより樹脂シートを受け止め、接触面の摩擦力により樹脂シートの速度を変化させて樹脂シートの厚みを調整することができる。これにより、ローラが樹脂シートを挟み込むことがないので、樹脂シートのローラへの巻きつきを低減することが可能となる。さらに、従来技術のように一対のローラで樹脂シートを挟み込む場合には、樹脂シートを介してかかる圧力に耐えうるだけの強度がローラに要求されたが、本実施形態では、一つのローラと樹脂シート以外には圧力がかかる要素がないため、より強度が低い、つまりより安価な材料でローラを作成することが可能となる。さらに、従来技術では垂下される樹脂シートの軌道を変えないように一対のローラが配置されていたので、樹脂シートとローラとの接触面積を確保するために比較的大径のローラを用いていたが、本実施形態では、樹脂シートの軌道を変えるようにローラを配置しているので、ローラの径をより小さくすることができ、装置全体として小型化することが可能となる。
【0023】
次に、図3を用いて第1実施形態のローラ3aの材料について説明する。図3はアルミニウム合金(展伸材)の標準機械的性質をまとめたものであり、上段は従来技術の一対のローラの材料の性質を、下段は第1実施形態のローラ3aの材料の性質を示す。従来技術のローラの材料は「A7075(質別O)」というアルミ合金であり、引張強さが230N/mm2、縦弾性係数が7.3×1000kg/mm2であった。これに対し、本実施形態のローラ3aの材料は「A5052(質別O)」というアルミ合金であり、引張強さが195N/mm2、縦弾性係数が7.2×1000kg/mm2である。本発明のローラの材料は、引張強さが160N/mm2〜215N/mm2が好ましく、180N/mm2〜205N/mm2がさらに好ましい。
【0024】
なお、ローラ3aの回転速度は2cm/s〜7cm/s、好ましくは3cm/s〜6cm/sの範囲において良好な結果が得られた。さらに、上述の説明のように、従来技術の一対のローラでは樹脂シートを挟み込むために、ローラと樹脂シートとの接触面を確保すべく、ローラの径は約φ150mm必要とされていたが、第1実施形態では約60mmの径のローラ3aを利用しても良好な結果を得ることができた。本発明のローラの径は、40mm〜80mが好ましく、50mm〜70mmがさら好ましい。
【0025】
次に、図4を用いて第1実施形態の成形装置100を利用した成形方法について説明する。図4(a)に示されるように、ローラ3aが樹脂シートP1を屈曲させない位置にローラ3aを退避させた状態で押出スリット12から樹脂シートP1を押し出し、樹脂シートP1が垂下されている状態でローラ3aを樹脂シートP1に向かって樹脂シートP1の軌道を変えるようにローラ3aを移動させる。そして、図4(b)に示されるように所定の距離を移動した後に移動部材4aが停止することでローラ3aの位置が固定される。このとき、樹脂シートP1と接触した後にローラ3aが回転してもよく、また、ローラ3aを回転させながら樹脂シートP1に向かって移動させてもよい。
【0026】
樹脂シートP1が押し出される前から樹脂シートP1の押出方向にローラ3aを配置しておくと、ローラ3aと接触するときの衝撃で樹脂シートP1がはじけて変形してしまう虞れがあるが、垂下されている樹脂シートP1に対してローラ3aを押し当てることで、このような事態を回避することが可能となる。これにより、より好適に樹脂シートP1の厚みを調整することが可能となる。なお、はじけて変形しないように押出スリット12から押し出される樹脂シートP1の押出速度、樹脂シートP1の材料、押出スリット12とローラ3aとの距離、ローラ3aの材料等を調整し、予め樹脂シートP1の押出方向にローラ3aを配置しておき、ローラ3aにめがけて樹脂シートP1を押し出す構成としてもよい。
【0027】
また、他の例を図4(c)に示す。この例では、ローラ3aの全体が樹脂シートP1の押出方向である点線Lを超えるところまで、ローラ3aを移動させている。樹脂シートP1とローラ3aの間の摩擦により、押出スリット12から押し出された樹脂シートP1が図の左方向に引き伸ばされ、これにより樹脂シートP1の軌道が変えられる。
【0028】
次に、図5及び図6を用いて第2実施形態及び第3実施形態について説明する。図5(a)は第2実施形態の第1実施例を表す図である。本実施例では、押出装置1と金型21の間に2つのローラ3a,3bが設けられている。ローラ3bは、ローラ3aの下方に設けられている。そして、ローラ3aにはローラ3aを樹脂シートP1に向かって略水平方向に移動させる移動部材4aが、ローラ3bにはローラ3bを樹脂シートP1に向かって略水平方向に移動させる移動部材4bが設けられる。ローラ3aが設けられる高さ位置H1でも、ローラ3bが設けられる高さ位置H2でも、樹脂シートP1は、一対のローラによって挟まれていない。このように、本実施例では、2つのローラ3a,3bは、樹脂シートP1の各高さ位置H1,H2において樹脂シートP1の片側にのみ設けられている。また、ローラ3aは、樹脂シートP1に当接して樹脂シートP1の軌道を変えるように設けられている。このため、本実施例においても、樹脂シートのローラへの巻き付きを抑制しつつ樹脂シートの厚みが不均一になることが抑制されている。
【0029】
また、ローラ3bの回転方向はローラ3aと同じであり、何らかの事情で樹脂シートP1がローラ3aに巻き付きそうになった場合でも、ローラ3bにより樹脂シートP1をローラ3aから引き剥がすことができるので、樹脂シートのローラへの巻き付きがより一層抑制される。
【0030】
次に、図5(b)を用いて第3実施形態の第1実施例について説明する。本実施例では、ローラ3bをローラ3aの下方かつ樹脂シートP1を挟んだ反対側に設けている。ローラ3aが設けられる高さ位置H1でも、ローラ3bが設けられる高さ位置H2でも、樹脂シートP1は、一対のローラによって挟まれていない。従って、本実施例でも、2つのローラ3a,3bは、樹脂シートP1の各高さ位置H1,H2において樹脂シートP1の片側にのみ設けられている。このため、本実施例においても、樹脂シートのローラへの巻き付きを抑制しつつ樹脂シートの厚みが不均一になることが抑制されている。
【0031】
ローラ3bの回転方向はローラ3aと逆、つまり図の矢印の方向(時計回り)である。そして、第2実施形態の第1実施例と同様に、何らかの事情で樹脂シートP1がローラ3aに巻き付きそうになった場合でも、ローラ3bにより樹脂シートP1をローラ3aから引き剥がすことができる。
【0032】
図6(a)は第2実施形態の第2実施例を、図6(b)は第3実施形態の第2実施例を表す図である。第2実施形態及び第3実施形態の第1実施例では、ローラ3bは、樹脂シートP1がローラ3aに巻き付くことを抑制するための補助ローラとして設けられているが、第2実施例ではローラ3bにおいても樹脂シートP1の軌道が変えられるようにローラ3bを配置している。
【0033】
以上、種々の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されない。例えば、成形型として、金型の代わりに砂型、樹脂製の型、木製の型等を利用することができる。また、ローラ3bをさらに複数設けることもできる。
【符号の説明】
【0034】
1:押出装置、11:Tダイ、12:押出スリット、13:アキュムレータ、14:プランジャ、15:シリンダ、16:ホッパ、17:油圧モータ、21:金型、23:キャビティ、25:ピンチオフ部、3:ローラ、4:移動部材、100:成形装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6