(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ゴルファによりスウィングされたゴルフクラブのゴルフクラブヘッドがゴルフボールを打撃する直前におけるゴルフクラブヘッドの挙動に基づいて測定されたスウィングの特徴を表示装置に表示するゴルフクラブのスウィングの表示方法であって、
前記ゴルフボールの中心と目標とを結ぶ目標線を水平面と平行な平面に投影した基準線と、前記ゴルフボールを打撃する直前における前記ゴルフクラブヘッドの移動軌跡に対する接線を前記平面に投影した第1の直線とがなす角度を左右進入角とし、
前記左右進入角の正負は、前記基準線を中心としてゴルファの反対側を正の角度とし、ゴルファ側を負の角度とし、
前記基準線と前記ゴルフボールを打撃する直前における前記ゴルフクラブヘッドのフェース面の中心点を通る法線を前記平面に投影した第2の直線とがなす角度を打撃時フェース角とし、
前記打撃時フェース角の正負は、前記基準線を中心としてゴルファの反対側を正の角度とし、ゴルファ側を負の角度とし、
前記ゴルファによりスウィングされたゴルフクラブのゴルフクラブヘッドによって打撃されて打ち出された直後のゴルフボールの軌跡を前記平面に投影した線と前記基準線とがなす角度を左右打ち出し角とし、
前記左右打ち出し角の正負は、前記基準線を中心としてゴルファの反対側を正の角度とし、ゴルファ側を負の角度とし、
前記ゴルファによりスウィングされたゴルフクラブのゴルフクラブヘッドによって打撃されて打ち出された直後のゴルフボールの中心を通る鉛直線回りのスピン量をサイドスピン量として、
前記サイドスピン量の正負は、平面視時計回りを正とし、反時計回りを負とし、
前記左右進入角と前記打撃時フェース角との測定値から、前記左右打ち出し角および前記サイドスピン量を推定する推定ステップと、
前記推定された左右打ち出し角および前記サイドスピン量と、前記ゴルフボールのボール初速と、前記ゴルフボールの上下打ち出し角とに基いて前記ゴルフボールの移動軌跡をシミュレーションして前記基準線から着弾地点までの距離であるシフト量を算出するシミュレーションステップと、
前記推定ステップと前記シミュレーションステップとを繰り返すことで前記左右進入角と前記打撃時フェース角と前記シフト量とからなるデータを蓄積し、蓄積されたデータに基いて、前記左右進入角を示すX軸と、前記X軸に直交し前記打撃時フェース角を示すY軸とを備え、それらX軸、Y軸の交点を前記左右進入角および前記打撃時フェース角のゼロ度とした2次元座標上に、前記左右進入角と前記打撃時フェース角と前記シフト量とに基いて特定される球筋の傾向に応じて境界分けされた複数のエリアを規定した分類マップを作成する分類マップ作成ステップと、
前記表示装置の表示画面に、前記2次元座標軸を表示する座標軸表示ステップと、
前記表示画面に、前記分類マップに基いて複数のエリアを表示する各種エリア表示ステップと、
前記表示画面に、ゴルファがゴルフクラブを用いてゴルフボールを打った際に測定した前記左右進入角の値と前記打撃時フェース角の値とを示す座標点を測定点として表示する測定点表示ステップとを含む、
ことを特徴とするゴルフクラブのスウィングの表示方法。
前記推定ステップは、前記左右進入角と前記打撃時フェース角と前記左右打ち出し角との実測値に基いて作成され、前記左右進入角と前記打撃時フェース角とから前記左右打ち出し角を特定する第1の回帰式と、前記左右進入角と前記打撃時フェース角と前記サイドスピン量との実測値に基いて作成され、前記左右進入角と前記打撃時フェース角とから前記サイドスピン量を特定する第2の回帰式とを用いてなされる、
ことを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブのスウィングの表示方法。
前記シミュレーションステップによる前記ゴルフボールの移動軌跡のシミュレーションは、前記ボール初速と、前記上下打ち出し角としてゴルファの属性に対応して予め定められた固定値を用いる、
ことを特徴とする請求項1または2記載のゴルフクラブのスウィングの表示方法。
前記各種エリア表示ステップでは、前記ドローエリア、前記フェードエリア、前記ストレートエリアのうち、予め定められたシフト量以下に該当する部分を良い球筋のエリアとして表示する、
ことを特徴とする請求項6記載のゴルフクラブのスウィングの表示方法。
前記各種エリア表示ステップでは、前記ドローエリア、前記フェードエリア、前記ストレートエリアのうち、予め定められたサイドスピン量以下に該当する部分を良い球筋のエリアとして表示する、
ことを特徴とする請求項6または7記載のゴルフクラブのスウィングの表示方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のゴルフクラブのスウィングの表示方法が適用されるゴルフクラブの選定装置と、本発明のゴルフクラブのスウィングの表示図表について説明する。
初めに、
図1を参照してゴルファがスウィングしたゴルフクラブによって打撃されたゴルフボールの球筋に影響を与える要素について説明する。
ゴルフボールの中心と目標とを結ぶ目標線を水平面と平行な平面に投影した基準線とゴルフボールの着弾地点とを結ぶ最短距離をシフト量とすると、シフト量が低いほど球筋がよいものと評価することができる。
シフト量に影響を与える要素として、後述する左右打ち出し角、サイドスピン量、ボール初速、上下打ち出し角、バックスピン量が挙げられる。
また、左右打ち出し角およびサイドスピン量は、後述するゴルフクラブヘッドの左右進入角θ、打撃時フェース角φによって決定されると考えられる。なお、厳密にいうと、左右打ち出し角およびサイドスピン量は、フェース面上の打点の位置によっても影響されるが、本実施の形態では、打点がフェース面中心であるものとして扱う。
本発明は、左右打ち出し角が左右進入角および打撃時フェース角と相関関係があること、サイドスピン量が左右進入角および打撃時フェース角と相関関係がある点に着目してなされている。
すなわち、本発明は、左右進入角および打撃時フェース角の実測値に基いて、前記の相関関係から推定された左右打ち出し角およびサイドスピン量を用いてゴルフボールの移動軌跡をシミュレーションして着弾地点のシフト量を求め、このシフト量を考慮して球筋の良否を分類、評価するようにしたものである。
【0011】
本実施の形態のゴルフクラブの選定装置10の概略構成について説明する。
図2に示すようにゴルフクラブの選定装置10は、照射撮影部11と、制御部12と、コンピュータ14とを含んで構成されている。
照射撮影部11は、異なる2方向からステレオ撮影によりゴルフクラブヘッドを撮影するものである。本実施の形態では、照射撮影部11によって撮影部が構成されている。
制御部12は、照射撮影部11を制御し、照射撮影部11で生成された画像データをコンピュータ14に供給するものである。
コンピュータ14は、照射撮影部11で撮影された画像のデータを取り込み信号処理、画像処理および動作解析を行うともに、ゴルフスウィングをタイプに分類し、最適なゴルフクラブを選定するものである。
なお、
図2において符号Pはゴルファ、符号4はゴルフクラブを示す。
【0012】
次に、ゴルフクラブの選定装置10で計測対象とされるゴルフクラブヘッドについて説明する。
図3(a)はゴルフクラブの選定装置10で計測対象とされるアイアン系のゴルフクラブヘッド16Aを示し、
図3(b)はウッド系のゴルフクラブヘッド16Bを示す。
なお、以下では、アイアン系およびウッド系のゴルフクラブヘッドを区別せずに表す場合にはゴルフクラブ16と表記する。
図3(a)に示すように、アイアン系のゴルフクラブヘッド16Aでは、そのフェース面(打撃面)1602と接するゴルフクラブヘッド16の上端面およびホーゼル部にマーカ20a、20b、20cが設けられている。以下、マーカ20a、20b、20cを区別しない場合にはマーカ20と表記する。
また、
図3(b)に示されるように、ウッド系のゴルフクラブヘッド16Bのフェース面1602と接するクラウン部を成す上面の3箇所にマーカ20a、20b、20cが設けられている。
後述するカメラ26で撮影した際、マーカ20a、20b、20cの像が常時識別できるように、例えば、マーカ20a、20b、20cは、後述する照射光源22の照射光を反射する再帰反射機能を有する構成となっている。マーカ20a、20b、20cは、例えば、公知の再帰反射シートを所定の形状に切り取ったものである。
マーカ20は、ゴルフクラブヘッドに3箇所以上に設けられ、これらのマーカ20が三角形の頂点を成し、1つの直線上に載らないように配置位置が設定されている。
図3(a)の例では、3つの再帰反射マーカが1つの直線上に載らないように、ホーゼル部にマーカ20が1つ設けられている。
【0013】
本実施の形態においては、後述するようにマーカの位置を求めるため、例えば、マーカから求めた3つ以上のマーカ特徴点を用いる。マーカ特徴点は、マーカを特徴づける点である。
言い換えると、マーカは、ゴルフクラブヘッド16の表面に設けられ3つ以上のマーカ特徴点を有するものである。
例えば、
図3(c)に示すように、マーカ20a、20b、20cが円形形状を成す場合、その円形形状の中心点をマーカ特徴点21a〜21cとし、後述する画像処理部32においてその位置が抽出される。
【0014】
なお、本発明では、
図3(c)に示す本実施の形態の円形状のマーカ20a、20b、20cの形態のほかに、例えば、正三角形、または正方形などの正多角形等とすることができる。この場合、抽出されるマーカ特徴点の位置は各正多角形の場合、マーカの中心点(重心点)とすることができる。
また、各マーカの形状は同一にする必要は無く、前述の形状のものを自在に組み合せる
こともできる。この場合も各マーカの各マーカ特徴点は、例えば、マーカの中心点(重心
点)である。
また、マーカが例えば正三角形形状を成す場合、マーカの3つの頂点(3辺相互の交点)のそれぞれをマーカ特徴点としてもよい。
マーカの形状は特に限定されるものではなく、マーカを特徴付け、その位置が一義的に抽出できる1もしくは複数のマーカ特徴点を有する形状であればよい。
【0015】
次に、ゴルフクラブの選定装置10について具体的に説明する。
図4は照射撮影部11の斜視図、
図5は照射撮影部11の平面図である。
図4、
図5に示すように、照射撮影部11は、照射光源22と、ハーフミラー24と、カメラ26と、反射ミラー28と、ベース30とを含んで構成され、これら照射光源22、ハーフミラー24、カメラ26、反射ミラー28は、べース30上に設けられている。
照射光源22は、計測対象としてのゴルフクラブヘッド16を照射するものである。
本実施の形態では、照射光源22はハロゲン光源またはLED光源で構成され、時間的に連続した連続光を照射する。
照射光源22は、ハーフミラー24を介してゴルフクラブヘッド16のマーカ20に光を照射するように配されている。
ハーフミラー24は、光の透過率と反射率とがほぼ等しいミラーであり、ハーフミラー24の反射面(境界面)に入射した光の半分を透過させ残り半分の光を反射させるものである。
ハーフミラー24は、平面視した場合に、その反射面に対して照射光源22から照射される光の光路が略45度の入射角を形成するように設けられている。
カメラ26は、撮影レンズと、該撮影レンズで導かれた被写体像を撮像する撮像素子と、撮像素子で生成された撮像信号に基づいて画像信号を生成する信号処理部などを含んで構成されている。
カメラ26は、平面視した場合に、前記撮影レンズの光軸が照射光源22の光路とハーフミラー24の反射面とが交差する箇所を通り、かつ、前記撮影レンズの光軸が、照射光源22の光の光路と略90度の角度を形成するように設けられている。
反射ミラー28は、光を全反射する全反射面を有し、全反射面の反射方向(角度)および位置等の調整機能を有している。
反射ミラー28は、照射光源22から照射されハーフミラー24で反射された光を全反射面で反射してゴルフクラブヘッド16のマーカ20a、20b、20cに照射し、かつ、マーカ20a、20b、20cからの反射光を再び全反射面で反射しハーフミラー24を介してカメラ26に導くように全反射面の反射方向及び位置が調整されている。
【0016】
ここで、
図5に示すように、照射撮影部11は、照射光源22がハーフミラー24の反射面に向け、連続光を照射する。
ハーフミラー24の反射面に照射された光の半分は、反射面上の位置Shmを透過する透過光として計測対象であるゴルフクラブヘッドに設けられたマーカ20a、20b、20cに照射される照射光となる。
このマーカ20a、20b、20cからの反射光(以降、マーカ反射光1aとする)は、ハーフミラー24の反射面に向かう。
ここで、マーカ反射光1aは照射光源22からの照射光と逆向きに進み、かつ、マーカ反射光1aは照射光源22からの照射光と光路が一致した反射光である。したがって、ハーフミラー24の反射面を透過してマーカ20a、20b、20cへ照射される光がハーフミラー24の反射面と成す出射角度と、マーカ反射光1aがハーフミラー24の反射面へ入射する入射角度とは略一致する。
こうして、マーカ反射光1aは、ハーフミラー24の反射面で反射されてカメラ26の撮影レンズに導かれる。
【0017】
一方、
図5に示すように、ハーフミラー24の反射面に照射された光の残り半分は、ハーフミラー24の反射面で反射され反射ミラー28の全反射面に入射する。
ここで、全反射された光は、計測対象であるゴルフクラブヘッド16に設けられたマーカ20a、20b、20cに照射光として照射される。
この照射光のマーカ20a、20b、20cからの反射光(以降、マーカ反射光1bとする)は、反射ミラー28から全反射されてマーカ20a、20b、20cに照射する照射光の光路と重なり、反射ミラー28の全反射面に向かう。
そして、反射ミラー28の全反射面において、マーカ反射光1bはハーフミラー24方向へ向けて反射される。
ここで、ハーフミラー24の反射面で反射され反射ミラー28に向かう光がハーフミラー24の反射面となす反射角度(照射角)と、マーカ反射光1bがハーフミラー24の反射面へ入射する入射角度は略同一である。
さらに、ハーフミラー24を透過したマーカ反射光1bはハーフミラー24で反射されたマーカ反射光1aともにカメラ26の撮影レンズに入射する。
したがって、異なる2方向から照射した照射光の光路と略一致したマーカ20a、20b、20cからの2つの反射光によるマーカ20a、20b、20cの像がカメラ26で撮影される。
なお、本実施の形態では、異なる2方向からゴルフクラブヘッド16に向けて光を照射して、異なる2方向からゴルフクラブヘッド16の像を撮影する。
本発明では、2方向以上の方向からゴルフクラブヘッド16を撮影すればよく、例えば、周知のモションキャプチャーシステムを用い、3台以上のカメラでゴルフクラブヘッド16の像を、異なる方向からそれぞれ撮影することもできる。
【0018】
この場合、カメラ26によって撮影されるマーカ反射光1bによる像とマーカ反射光1aによる像とが重ならないように、反射ミラー28の位置および向きを予め微調整しておく。
具体的に説明すると、予め、カメラ26によって撮影される1枚の画像を上下方向に2分割して上領域と下領域との2つの領域として設定しておく。
そして、マーカ反射光1aによる像が前記の画像の上領域で撮影され、マーカ反射光1bによる像が前記の画像の下領域で撮影されるように、反射ミラー28の位置および向きが予め微調整しておく。
このようにして、1つのカメラ26でマーカ反射光1aによるマーカ20a、20b、20cの像と、マーカ反射光1bによるマーカ20a、20b、20cの像とを撮影するすることによって、ゴルフクラブヘッド16のマーカ20a、20b、20cの像をステレオ画像として撮影する。
そして、ゴルフクラブヘッド16がスウィングにより移動している状態で、カメラ26が多重露光により例えば1/2000秒間隔でマーカ20a、20b、20cの像を撮影する。
これにより、多数のマーカ20a、20b、20cのステレオ画像が1枚の画像としてカメラ26によって生成される。
【0019】
なお、ハーフミラー24の代わりに反射面において双方向に入射した光を反射および透過させる光学部材であれば、例えば、ハーフプリズムや各種ビームスプリッター等を用いることができる。ここで、反射面における反射率の比は特に限定されないが、略1対1とすることが好ましい。
【0020】
また、反射ミラーを以下の様に用いて構成することもできる。
図6は、照射撮影部11が構成する光路に反射ミラー28の他に反射ミラー28a、28bを配してマーカ反射光1aおよび1bの光路長を揃えた例を示す図である。
反射ミラー28a、28bをマーカ反射光1aの光路に設けることにより、マーカ反射光1aがマーカ20a、20b、20cからハーフミラー24に至る光路を長くして、マーカ反射光1bの光路の長さに揃えることができる。
つまり、
図6に示す構成を備えることで、マーカ反射光1aの光路長が
図5に示すものより長くなり、マーカ反射光1a、1bのカメラ26までの光路長を略揃えることができる。
このように光路長を近づけることにより、カメラ26は、マーカ反射光1a、1bによる各マーカの像をピントを合わせて撮影することができる。
【0021】
この場合においても、2つの異なる方向から照射する光がハーフミラー24の反射面から出射するときのそれぞれの出射角度は、マーカ20a、20b、20cから反射した2つの反射光(マーカ反射光1a、1b)がハーフミラー24の反射面に入射するときの対応する反射光の入射角度と略一致する。したがって、ゴルフクラブヘッド16に設けられたマーカ20a、20b、20cの2つの反射光の像をそれぞれ高いコントラストで撮影できる。
【0022】
制御部12は、
図2に示すように、検出器1202と、バッファメモリ1204とを含んで構成されている。
検出器1202は、
図5に示すように、ゴルフクラブ16の移動軌跡のうち、カメラ26の撮影範囲よりも手前側の位置でゴルフクラブ16が通過したか否かを検出する検出するものである。
検出器1202は、例えば、検出光が物体で反射された反射光を検出することにより物体の有無を検出する光反射型検出器など従来公知のさまざまな検出器を使用することができる。
バッファメモリ1204は、カメラ26から供給される前記の画像データを一時的に格納する記憶装置である。
制御部12は、検出器1202によってゴルフクラブ16の通過を検出すると、撮影動作を開始する制御指令をカメラ26に与えると共に、ゴルフクラブ16がカメラ26の撮影範囲から外れた時点で撮影動作を終了する制御指令をカメラ26に与える。
そして、制御部12は、カメラ26から供給される画像データをバッファメモリ1204に一時的に格納したのち、該画像データをコンピュータ14に供給する。
【0023】
コンピュータ14は、制御部12から供給される前記の画像データに基づいてゴルフクラブヘッド16の挙動を計測してゴルフクラブのスウィングを分類し、ゴルフクラブを選択する機能を有するものである。
また、コンピュータ14は、ゴルフクラブのスウィングの特徴を表示し、また、その特徴を示す表示図表を作成するものである。
図7はコンピュータ14の構成を示すブロック図である。
コンピュータ14は、CPU32と、不図示のインターフェース回路およびバスラインを介して接続されたROM34、RAM36、ハードディスク装置38、ディスク装置40、キーボード42、マウス44、ディスプレイ46、プリンタ48、入出力インターフェース50などを有している。
ROM34は制御プログラムなどを格納し、RAM36はワーキングエリアを提供するものである。
ハードディスク装置38はゴルフクラブヘッド16の挙動の計測、スウィングの分類、ゴルフクラブの選定などを行うための専用のプログラムを格納している。
ディスク装置40はCDやDVDなどの記録媒体に対してデータの記録および/または再生を行うものである。
キーボード42およびマウス44は、操作者による操作入力を受け付けるものである。
ディスプレイ46はデータを表示出力するものであり、プリンタ48はデータを印刷出力するものであり、ディスプレイ46およびプリンタ48によってデータを出力する。
本実施の形態では、ディスプレイ46によって特許請求の範囲の表示装置が構成されている。
入出力インターフェース50は、外部機器との間でデータの授受を行うものである。
【0024】
図8はコンピュータ14の機能ブロック図である。
コンピュータ14は、機能的には、信号処理部52、画像処理部54、解析部56、
推定部90、シミュレーション部92、分類マップ作成部94、分類部58、選定部60、出力部62、記憶部64、画像形成部80、画像出力部82などを含んで構成されている。
また、信号処理部52、画像処理部54、解析部56、分類部58、選定部60、出力部62、画像形成部80、画像出力部82は、CPU32が前記専用のプログラムを実行することで実現されるものであるが、これらの部分は、回路等のハードウェアで構成されたものであってもよい。
【0025】
記憶部64は、例えば、ハードディスク装置38あるいはRAM36によって構成され、ゴルフクラブヘッド16の3次元形状モデルのデータ(CADデータ)D1と、対応点位置情報D2と、分類マップD3と、選定情報D4と、ゴルフクラブ情報D5とを含む情報が格納される。
これらの情報D1乃至D5については後述する。
【0026】
信号処理部52は、画像内の各マーカ20a、20b、20cの像からマーカ特徴点21a、21b、21cがそれぞれ抽出できるように、例えば、各マーカ20a、20b、20cの部分のデータ値のみがそれ以外の部分のデータ値と区別されるように、所定の処理条件で画像データの明度補正、コントラスト補正を行い、さらに、所定の階調数の階調処理を行う部分である。
【0027】
画像処理部54は、ゴルフスイング中のゴルフクラブヘッド16の画像データからマーカ特徴点21a、21b、21cの位置を特定し、この特定した位置を用いてゴルフクラブヘッド16の挙動を算出する部分である。
画像処理部54は、各マーカ20a、20b、20cの各マーカ特徴点21a、21b、21cを特定して3次元座標系における位置を抽出する抽出部54aと、抽出された各マーカ特徴点の3次元座標位置を用いて、ゴルフクラブヘッド16の位置と向きの時系列データを算出する算出部54bとを有する。
【0028】
抽出部54aは、所定の階調数の階調処理がされた画像の中から各マーカ20a、20b、20cの像の部分を識別してその位置を抽出する。
照射撮像部11で撮影された、同時刻における異なる方向から撮影された各マーカ20a、20b、20cの像について、各マーカ特徴点21a、21b、21cの位置座標をそれぞれ求め、この求められた各マーカ特徴点21a、21b、21cの位置座標を用いてゴルフクラブヘッド16が通過する空間を定めた3次元座標系における位置座標を求め、各マーカ特徴点21a、21b、21cの3次元座標系における位置を抽出するように構成される。
【0029】
次に、同時刻にカメラ26で異なる方向から撮影された画像内における各マーカ20a、20b、20cの像について各マーカ特徴点21a、21b、21cの位置座標をそれぞれ求める。
この求められた各マーカ特徴点21a、21b、21cの位置座標を、マーカ20a、20b、20cの位置座標として、これを用いてゴルフクラブヘッド16が通過する空間を定めた3次元座標系における位置座標を求め、各マーカ特徴点21a、21b、21cの3次元座標系における位置を抽出するように構成される。
照射撮像部11の撮影方向が既知となっているので、これらの照射撮像部11によって撮影される画像における2次元位置座標の情報を求めることで、ゴルフクラブヘッド16が通過する空間を表した所定の3次元座標系における位置(3次元位置座標)を求めることができる。
【0030】
各マーカ20a、20b、20cの像が、所定の時間間隔、例えば、2000分の1秒の時間間隔で撮影される場合、2000分の1秒毎の各マーカ20a、20b、20cの像の各マーカ特徴点(マーカの中心点)21a、21b、21cの3次元位置座標の時系列データを求めることができる。
【0031】
本実施の形態においては、照射撮像部11を用いて、2方向から撮影しており、各方向から得られた各マーカ20a、20b、20cの像について各マーカ特徴点21a、21b、21cから3次元位置座標が求められる。
なお、本実施の形態では、ゴルフクラブヘッド16の表面に設けられたマーカを、2方向以上の異なる方向から連続的に撮影する構成として、
図4に示すように1台のカメラ26によってステレオ画像を撮像する照射撮影部11を用いた場合について説明した。
しかしながら、ゴルフクラブヘッド16の表面に設けられたマーカを、2方向以上の異なる方向から連続的に撮影する構成としては、2台以上のカメラを用いるなど、従来公知の様々な構成が使用可能である。
【0032】
算出部54bは、抽出部54aで求められた3次元位置座標からゴルフクラブモデルの位置および向きを時系列データとして算出する部分である。
具体的には、記憶部64には、3次元座標系において、ゴルフクラブヘッド16の3次元形状モデルのデータ(CADデータ)D1と、上記マーカ特徴点の配置位置に対応する、3次元形状モデル上の対応点の位置を示す対応点位置情報D2とが記憶されている。
言い換えると、3次元形状モデルのデータ(CADデータ)D1はゴルフクラブヘッドを再現した3次元形状モデルを構成し、対応点位置情報D2は3つ以上のマーカ特徴点に対応する前記3次元形状モデル上の対応点の位置を示す。
算出部54bは、このデータD1と情報D2を呼び出し、3次元形状モデル上の対応点の、上記3次元座標系における位置座標が、抽出部54aで抽出されたマーカ特徴点の3次元位置座標と一致するように、3次元形状モデルの位置および向きを算出し、この位置と向きをゴルフクラブヘッド16の位置および向きとして、ゴルフクラブヘッド16の位置および向きの時系列データを算出するように構成される。
【0033】
図9(a)は、マーカ特徴点の3次元位置座標から定まる、2000分の1秒の時間間隔のマーカの移動の時間履歴を示す模式図であり、(b)は、
図7(a)に示すマーカの移動の時間履歴に基づく、ゴルフクラブヘッドの挙動を示す模式図である。図中符号2はゴルフボールを示し、矢印aはゴルフクラブヘッドの移動方向(ゴルフボール2の打ち出し方向)を示す。なお、
図9(b)はゴルフクラブヘッドを上方から見た状態を示す。
図9(a)中、所定の位置を原点として、ゴルフボール2の打ち出し方向と平行する軸をX軸、X軸に直交し水平面(地面)に平行な軸をY軸、水平面に鉛直な軸をZ軸としたXYZ座標系を予め設定しておく。
図9(a)中、3つのマーカ20a、20b、20cを表す3つのプロット群M1、M2〜M10は、2000分の1秒の時間間隔で撮影されたマーカから抽出される3つのマーカ特徴点21a、21b、21cの位置を示す。
さらには、マーカを表す3つの各プロット群M1、M2〜M10にゴルフクラブヘッド16を対応させて、
図7(b)に示すように、ゴルフクラブヘッド16の移動を連続的に表示することにより、ゴルフクラブヘッド16の位置およびフェースの向きの変化を知ることができる。
なお、ゴルフクラブヘッド16の位置は、フェース面1602の中心位置における位置座標を、ゴルフクラブヘッド16の代表位置として表す。
また、ゴルフクラブヘッド16のフェースの向きは、フェース面1602の中心点を通る法線で表すものとする。
【0034】
解析部56は、算出されたゴルフクラブヘッド16の位置と向きの時系列データ、すなわち、マーカ20a、20b、20cの時系列データを用いて、ゴルフボール2を打撃する直前のゴルフクラブヘッド16の左右進入角と打撃時フェース角とを求めるものである。
図10は、ゴルフボール2を打撃する直前のゴルフクラブヘッド16を平面視した状態を示す平面図、
図11は左右進入角θの定義を説明する模式図、
図12は打撃時フェース角φを説明する模式図である。
なお、
図11、
図12において符号1610は、ゴルフクラブヘッド16のフェース面1602の中心位置を示す。
図10、
図11に示すように、ゴルフボール2の中心と目標とを結ぶ目標線を前記の平面に投影した直線を基準線L0とする。
ここで、基準線L0はX軸と平行するものとし、したがって、前記の平面はX軸およびY軸と平行しZ軸と直交する。
ゴルフボール2を打撃する直前におけるゴルフクラブヘッド16の移動軌跡の接線を水平面と平行な平面に投影した直線を第1の直線L1とする。
左右進入角θは基準線L0と第1の直線L1がなす角度である。
図12に示すように、ゴルフボール2を打撃する直前におけるゴルフクラブヘッド16のフェース面1602の中心点を通る法線を前記の平面に投影した直線を第2の直線L2とする。
打撃時フェース角φは基準線L0と第2の直線L2がなす角度である。
【0035】
すなわち、解析部56は、算出部56で算出された3次元形状モデルの位置および向きの時系列データから、基準線L0と第1の直線L1とがなす角度を左右進入角θとして求めると共に、基準線L0と第2の直線L2とがなす角度を打撃時フェース角φとして求める。
このことについて具体的に説明する。
ゴルフボール2の打撃直後、ゴルフクラブヘッド16の移動速度は低下するので、一定時間間隔のフェース面1602の中心位置1610の移動を表す位置座標の時系列データにおいて、打撃直前と打撃直後の位置座標の移動距離はそれ以前の各時点での移動距離に比べて急激に短くなる。
このことを利用して、
図11に示すように、ゴルフクラブヘッド16の位置座標を示す時系列データから、ゴルフボール2の打撃直前のゴルフクラブヘッド16の位置座標(中心位置1610)と、時系列データにおいて1つ前の位置座標とを特定することができる。
そして、この2つの位置座標を結ぶ直線L1がゴルフクラブヘッド16の移動軌跡の接線となる。
また、同様に上記のことを利用して、
図12に示すように、ゴルフクラブヘッド16の向きを示す法線を示す時系列データから、ゴルフボール2を打撃する直前におけるゴルフクラブヘッド16のフェース面1602の法線を特定することができる。
解析部56は、このようにしてゴルフボール2を打撃する直前におけるゴルフクラブヘッド16の移動軌跡の接線とフェース面1602の法線とを特定することにより、前記のような手順で左右進入角θおよび打撃時フェース角φを求める。
【0036】
ゴルフクラブヘッド16のヘッドスピードは通常30〜50m/秒であるため、カメラ26による撮影間隔である2000分の1秒の時間間隔δで、ゴルフクラブヘッド16は、15mm〜25mm移動する。
したがって、ゴルフボール2の中心からX軸方向に沿ってゴルフボール2の打ち出し方向と反対方向で50mm手前の範囲において2つの時系列データ(位置座標データ)が特定される。
そのため、本実施の形態では、ゴルフボール2の中心から手前50mmの範囲における時系列データに基づいて左右進入角θおよび打撃時フェース角φが求められることになる。
なお、カメラ26による撮影間隔は1/2000秒に限定されるものではなく、得られた時系列データに基づいて左右進入角θおよび打撃時フェース角φを求めることができればよいのであり、例えば、撮影間隔を1/10000秒〜1/500秒の間で設定するなど任意である。
また、本実施の形態では、左右進入角θは、基準線L0を中心としてゴルファの反対側を正(プラス)の角度とし、ゴルファ側を負(マイナス)の角度とする。
また、打撃時フェース角φについても同様に、基準線L0を中心としてゴルファの反対側を正(プラス)の角度とし、ゴルファ側を負(マイナス)の角度とする。
【0037】
推定部90は、左右進入角θと打撃時フェース角φとの測定値から、ゴルフボールの左右打ち出し角αおよびサイドスピン量Ssを推定するものである。
左右打ち出し角αは、ゴルファによりスウィングされたゴルフクラブのゴルフクラブヘッド16によって打撃されて打ち出された直後のゴルフボールの軌跡を平面に投影した線と基準線L0とがなす角度をいう。
左右打ち出し角αの正負は、基準線L0を中心としてゴルファの反対側を正の角度とし、ゴルファ側を負の角度とする。
図13は、横軸(X軸)に左右進入角θ、縦軸(Y軸)に打撃時フェース角φをそれぞれ0度から正負に0.5度単位で表示し、各座標点に左右打ち出し角αのデータを配置した場合の模式図である。
なお、データの具体的な数値は省略している。また、左右進入角θ、打撃時フェース角φの角度が0.5度単位で変化する場合について例示するが、角度の単位を0.5度よりも小さくするなど任意である。
ハッチング部分は左右打ち出し角αが0度に相当しており、ハッチング部分よりも上方の範囲は左右打ち出し角αが正(右方向)であり、ハッチング部分よりも下方の範囲は左右打ち出し角αが負(左方向)である(ゴルファが右利きの場合)。
【0038】
サイドスピン量Ssは、ゴルファによりスウィングされたゴルフクラブのゴルフクラブヘッド16によって打撃されて打ち出された直後のゴルフボール2のゴルフボール2の中心を通る鉛直線回りのスピン量をいう。
サイドスピン量Ssの正負は、平面視時計回りを正とし、反時計回りを負とする。
推定部90は、第1の回帰式に基いて左右進入角θと打撃時フェース角φとの測定値から左右打ち出し角αを特定すると共に、第2の回帰式に基いて左右進入角θと打撃時フェース角φとの測定値からサイドスピン量Ssを特定するものである。
図14は、横軸(X軸)に左右進入角θ、縦軸(Y軸)に打撃時フェース角φをそれぞれ0度から正負に0.5度単位で表示し、各座標点にサイドスピン量Ssのデータを配置した場合の模式図である。
なお、データの具体的な数値は省略している。また、
図13と同様に、角度の単位を0.5度よりも小さくするなど任意である。
ハッチング部分がサイドスピン量Ssがゼロに相当しており、ハッチング部分よりも上方の範囲はサイドスピン量Ssが正(スライス傾向)であり、ハッチング部分よりも下方の範囲はサイドスピン量Ssが負(フック傾向)である(ゴルファが右利きの場合)。
【0039】
第1の回帰式および第2の回帰式は、以下のようにして作成される。
実際にゴルファによりスウィングされたゴルフクラブのゴルフクラブヘッド16の左右進入角θと打撃時フェース角φとを上述のような手順により実測する。
そして、その際、ゴルフクラブヘッド16によって打撃されて打ち出された直後のゴルフボール2の左右打ち出し角αとサイドスピン量Ssとを基準計測器により測定する。このような基準計測器として、例えば、特許第4104384号に開示されているような従来公知の様々な測定装置が使用可能である。
このような測定を複数のゴルファにより複数回行なうことにより、左右進入角θ、打撃時フェース角φ、左右打ち出し角α、サイドスピン量Ssのデータを取得する。
そして、左右進入角θと打撃時フェース角φと左右打ち出し角αとの実測値に基いて左右進入角θと打撃時フェース角φとから左右打ち出し角αを特定する第1の回帰式を作成する。
また、左右進入角θと打撃時フェース角φとサイドスピン量Ssとの実測値に基いて左右進入角θと打撃時フェース角φとからサイドスピン量Ssを特定する第2の回帰式を作成する。
なお、第1の回帰式は例えば以下のように表現される。
左右打ち出し角α=左右進入角θ×係数a1+打撃時フェース角φ×係数b1+定数c1
また、第2の回帰式は例えば以下のように表現される。
サイドスピン量Ss=左右進入角θ×係数a2+打撃時フェース角φ×係数b2+定数c2
また、上記の係数a1、a2、b1、b2、定数c1、c2は、クラブヘッドのバルジ、ロールの有無(大小)、慣性モーメントの大きさによって異なる。
なお、第1、第2の回帰式の形態は例示されたものに限定されず、従来公知の様々な回帰式が採用可能である。
推定部90は、このような第1の回帰式および第2の回帰式を保持している。また、推定部90は、第1の回帰式および第2の回帰式に代えて、左右進入角θと打撃時フェース角φとから左右打ち出し角αを特定する第1のマップ、左右進入角θと打撃時フェース角φとからサイドスピン量Ssを特定する第2のマップを備えていてもよい。
【0040】
シミュレーション部92は、推定された左右打ち出し角αおよびサイドスピン量Ssと、ゴルフボール2のボール初速V0と、ゴルフボール2の上下打ち出し角βとに基いてゴルフボール2の移動軌跡(弾道)をシミュレーションして基準線L0から着弾地点までの距離であるシフト量ΔSを算出するものである。
上下打ち出し角βは、ゴルファによりスウィングされたゴルフクラブのゴルフクラブヘッド16によって打撃されて打ち出された直後のゴルフボール2の軌跡を基準線L0を含む鉛直面に投影した線と基準線L0とがなす角度をいう。
なお、ボール初速V0と上下打ち出し角βとしてゴルファの属性に対応して予め定められた固定値を用いることができる。ゴルファの属性とは、男子プロゴルフ、男子アマチュアゴルファ、女子プロゴルファ、女子アマチュアゴルファといった体格(筋力)や技量の高低で分類されるものである。
また、シミュレーションに際しては、ゴルファによりスウィングされたゴルフクラブのゴルフクラブヘッド16によって打撃されて打ち出された直後のゴルフボール2のバックスピン量Sbを考慮してもよく、バックスピン量Sbを考慮することでシミュレーションの精度を高める上で有利となる。
なお、ボール初速V0、上下打ち出し角β、バックスピン量Sbを固定値とせず、前記の基準測定器によって測定されたボール初速V0、上下打ち出し角β、バックスピン量Sbの実測値を用いてシミュレーションを行ってもよく、それら実測値を用いることでシミュレーションの精度を高める上で有利となる。
【0041】
分類マップ作成部94は、左右進入角θと打撃時フェース角φとシフト量ΔSとからなるデータを蓄積し、蓄積されたデータに基いて、左右進入角θを示すX軸と、X軸に直交し打撃時フェース角φを示すY軸と、それらX軸、Y軸の交点を左右進入角θおよび打撃時フェース角φのゼロ度とした2次元座標上に、左右進入角θと打撃時フェース角φとシフト量ΔSとに基いて特定される球筋の傾向に応じて境界分けされた複数のエリアを規定した分類マップD3を作成するものである。
分類マップD3は記憶部64に格納されている。なお、分類マップD3をどこに設けるかは任意である。
【0042】
左右進入角θおよび打撃時フェース角φと、ゴルフボール2の球筋との関係について説明する。
左右進入角θが負の値でその絶対値が大きくなるほど、ゴルフクラブヘッド16の軌道はアウトサイドイン傾向を示すため、打ち出されたゴルフボール2の打ち出し方向は左方向となる。
左右進入角θが正の値でその絶対値が大きくなるほどゴルフクラブヘッド16の軌道はインサイドアウト傾向を示すため、打ち出されたゴルフボール2の打ち出し方向は右方向となる。
打撃時フェース角φが負の値でその絶対値が大きくなるほど打ち出されたゴルフボール2は、上方から見て反時計方向回りのサイドスピンが掛かりやすくなる。
打撃時フェース角φが正の値でその絶対値が大きくなるほど打ち出されたゴルフボール2は、上方から見て時計方向回りのサイドスピンが掛かりやすくなる。
このように左右進入角θと打撃時フェース角φとの組み合わせによって、ゴルフボール2の打ち出し方向の左右とサイドスピンの掛かりやすさとが影響を受けることにより、打ち出されたゴルフボール2はスライス傾向、フェード傾向、ストレート傾向、ドロー傾向、フック傾向の球筋となる。
ここで、スライス傾向とは、右利きのゴルファがゴルフボール2を打ったときに、ゴルフボール2が右側に曲がるものをいう。左利きのゴルファの場合には左側に曲がるものをいう。
また、フェード傾向とは、コントロールされたスライス傾向をいい、目標線に対して左に打ち出されたゴルフボール2の着弾位置がほぼ目標線に戻ってくるものをいう。
また、フック傾向とは、右利きのゴルファがゴルフボール2を打ったときに、ゴルフボール2が左側に曲がるものをいう。左利きのゴルファの場合には右側に曲がるものをいう。
また、ドロー傾向とは、コントロールされたフック傾向をいい、目標線に対して右に打ち出されたゴルフボール2の着弾位置がほぼ目標線に戻ってくるものをいう。
また、ストレート傾向とは、打ち出されたゴルフボール2が曲がることなく直進していくものをいう。
このように、ゴルフボール2を打撃する直前のゴルフクラブヘッド16の挙動に応じてゴルフボール2の球筋(軌跡)は様々に異なっている。
さらに、シミュレーションにより求められたシフト量ΔSが小さいほど、着弾地点が基準線L0に近く好ましい球筋であり、シフト量ΔSが大きいほど、着弾地点が基準線L0から遠く好ましくない球筋であると評価される。
【0043】
分類マップD3は、左右進入角θをX座標の値とし、打撃時フェース角φをY座標の値として2次元座標上に示し、かつ、2次元座標で示される平面をゴルフボール2の球筋に対応する複数のエリア(領域)に区分して関連付けたものである。
言い換えると、分類マップD3は、左右進入角θを示すX軸と、X軸に直交し打撃時フェース角φを示すY軸とを備え、それらX軸、Y軸の交点を左右進入角θおよび打撃時フェース角φのゼロ度とした2次元座標軸で示される平面をゴルフボール2の球筋に対応する複数のエリア(領域)に区分して関連付けたものである。
複数のエリアは、左右進入角θと打撃時フェース角φとシフト量ΔSとに基いて特定される球筋の傾向に応じて境界分けされている。
分類部58によるゴルフクラブのスウィングの特定は分類マップD3を用いてなされる。
図15は、分類マップD3の構成を説明する模式図であり、横軸(X軸)に左右進入角θ、縦軸(Y軸)に打撃時フェース角φをそれぞれ0度から正負に0.5度単位で表示し、各座標点にシフト量ΔSのデータを配置している。図中、データの具体的な数値は省略している。なお、以下では、ゴルファが右利きである場合を前提としており、左利きの場合は正負が反対となる。
【0044】
具体的に説明すると、分類マップD3は、
図15に示すように、左右進入角θと打撃時フェース角φとの組み合わせに対応して、スライスエリアA1、フェードエリアA2、ストレートエリアA3、ドローエリアA4、フックエリアA5といったゴルフボール2の球筋に対応する5つのエリアがそれぞれ関連付けられている。
スライスエリアA1は球筋がスライス傾向となるエリアであり、フェードエリアA2は球筋がフェード傾向となるエリアであり、ストレートエリアA3は球筋がストレート傾向となるエリアであり、ドローエリアA4は球筋がドロー傾向となるエリアであり、フックエリアA5は球筋がフック傾向となるエリアである。
言い換えると、左右進入角θと打撃時フェース角φとの組み合わせがエリアA1〜A5の何れに該当するかによってゴルフクラブのスウィングのタイプが、スライスタイプ、フェードタイプ、ストレートタイプ、ドロータイプ、フックタイプの何れかのタイプに特定される。
すなわち、分類部58は、解析部58で得られた左右進入角θと打撃時フェース角φとに基づいて、ゴルフスウィングが分類マップD3に格納されている複数のタイプの何れのタイプに該当するかを特定する。
【0045】
なお、分類マップD3上におけるスライスエリアA1、フェードエリアA2、ストレートエリアA3、ドローエリアA4、フックエリアA5は、次のようにして決定する。
図16は、各エリア、境界線を説明する模式図である。
図16は、
図15と同様に、横軸(X軸)に左右進入角θ、縦軸(Y軸)に打撃時フェース角φをそれぞれ0度から正負に0.5度単位で表示し、各座標点にシフト量ΔSのデータを配置している。図中、データの具体的な数値は省略している。
符号LAで示すハッチング部分が、第1の境界線であり、着弾地点が基準線L0上に合致しており、シフト量ΔSがゼロとなっている。
さらに、符号M1で示すハッチング部分は、着弾地点が基準線L0に対して右側に位置し、シフト量ΔSが0より大きく10ヤード以下の範囲を示す。
符号M2で示すハッチング部分は、着弾地点が基準線L0に対して左側に位置し、シフト量ΔSが0以上10ヤード以下の範囲を示す。
符号LBで示す部分が、第2の境界線であり、サイドスピン量Ssが0rpm(ストレートエリアA3)に相当している。第2の境界線LBは、X軸およびY軸で示される2次元座標上において第1の境界線LAと交差し、かつ、第1の境界線LAよりも大きな正の傾きの傾斜を有している。
符号M3で示す部分が、サイドスピン量Ssが正の値であり0rpm以上500rpm以下の範囲を示す。
符号M4で示す部分が、サイドスピン量Ssが負の値であり0rpm以上500rpm以下の範囲を示す。
なお、シフト量ΔSの上限値、下限値、サイドスピン量Ssの上限値、下限値は、上記の数値に限定されるものではなく、任意に設定される。
【0046】
第1の境界線LAと第2の境界線LBで挟まれた2つの領域のうち、X軸およびY軸の正方向寄りに位置する領域がドローエリアA4である。
第1の境界線LAと第2の境界線LBで挟まれた2つの領域のうち、X軸およびY軸の負方向寄りに位置する領域がフェードエリアA2である。
ドローエリアA4およびフェード領域A2よりもY軸の正方向側に位置する領域がスライスエリアA1である。
ドローエリアA4およびフェード領域A2よりもY軸の負方向側に位置する領域がフックエリアA5である。
第2の境界線LBの部分がストレートエリアA3である。
【0047】
本実施の形態では、球筋を以上の5種類に分類することに加えて、球筋をシフト量ΔSによって評価している。
まず、シフト量ΔSが0ヤード±10ヤードの範囲を良い球筋とする。
したがって、
図16において、0ヤード±10ヤードの範囲内に合致する領域、すなわち、符号M1、LA、M2で示す領域が良い球筋として評価される。
【0048】
また、シフト量ΔSが±10ヤード以内であっても、サイドスピン量Ssが大きくしたがってゴルフボール2の移動軌跡が大きく湾曲している場合は、飛距離が低下することから、
図16において、符号M1、LA、M2で示す領域で、かつ、符号M3、M4で示す領域、すなわちシフト量ΔSが±10ヤード以内であって、サイドスピン量Ssが0rpm以上500rpm以下の範囲をより良い球筋として評価する。
【0049】
また、シフト量ΔSが±10ヤード以内で、スピン量が500rpm以下であっても、平面視した際のゴルフボール2の移動軌跡がいったん基準線L0の右側(左側)に凸状を描くように曲がって基準線L0を超えて反対側の左側(右側)の地点に着弾した場合は、基準線L0を超えないで着弾した場合に比較して、ゴルフ競技としての技術的な評価が低くなる。
そのため、平面視した際のゴルフボール2の移動軌跡がいったん基準線L0の右側(左側)に凸状を描くように曲がって基準線L0を超えることなく同じ右側(左側)の地点に着弾した場合は球筋の評価を良いものとする。
図16において、符号N1、N2で示す領域は、シフト量ΔSが0ヤード±10ヤードであり、かつ、サイドスピン量Ssが0rpm以上500rpm以下の範囲であるが、平面視した際のゴルフボール2の移動軌跡が基準線L0を超えて着弾する球筋に対応している。
したがって、
図16において符号M1、L1、M2で示す領域で、かつ、符号M3、M4で示す領域のうち、基準線L0を超える球筋となる領域N1、N2を除いた残りの領域O、P(太線で囲まれた領域)を最もよい球筋として評価する。
本実施の形態では、フェードエリアA2、ドローエリアA4、ストレートエリアA3のうちでも符号O、Pで示される領域が最も良い球筋であるものとして評価するものとする。
なお、以下に示す3種類の評価のどれを採用するかは任意であるが、1)、2)、3)の順番で良いと評価される球筋の、面積が分類マップD3上で占める面積が小さくなり、評価がより厳しくなる。
1)符号M1、L1、M2で示す領域(サイドスピン量Ssが0rpm以上500rpm以下の範囲)を良い球筋として評価する。
2)符号M1、L1、M2で示す領域で、かつ、符号M3、M4で示す領域(シフト量ΔSが±10ヤード以内であって、サイドスピン量Ssが0rpm以上500rpm以下の範囲)を良い球筋として評価する。
3)符号M1、L1、M2で示す領域で、かつ、符号M3、M4で示す領域のうち、基準線L0を超える球筋となる領域N1、N2を除いた残りの領域O、Pを良い球筋として評価する。
【0050】
図15について説明すると、フェードエリアA2、ドローエリアA4、ストレートエリアA3のうち球筋が良いとして評価される部分にハッチングを施している。なお、図面の簡略化を図るためストレートエリアA3は直線で示している。
なお、第1の境界線LA、第2の境界線LB、各エリアA2、A3、A4は、ゴルフクラブヘッド16の番手、ゴルファの属性などによって変化する。このことについて
図17〜
図22を参照して説明する。
図17〜
図22において第1の境界線LAの図示は省略している。
図17〜
図19は、ゴルフクラブがドライバーである場合の分類マップD3の例であり、
図18は男子プロゴルファー(初速V0:70m/s、上下打ち出し角β:13度、バックスピン量Sb:3000rpm)、
図19は男子アマチュア(初速V0:60m/s、上下打ち出し角β:15度、バックスピン量Sb:2500rpm)、
図20は女子アマチュア(初速V0:45m/s、上下打ち出し角β:17度、バックスピン量Sb:2200rpm)を示す。
【0051】
図20〜
図22は、ゴルフクラブが7番アイアンである場合の分類マップD3の例であり、
図20は男子プロゴルファー(初速V0:53m/s、上下打ち出し角β:18度、バックスピン量Sb:6000rpm)、
図21は男子アマチュア(初速V0:46m/s、上下打ち出し角β:19度、バックスピン量Sb:5000rpm)、
図22は女子アマチュア(初速V0:35m/s、上下打ち出し角β:20度、バックスピン量Sb:4000rpm)を示す。
図17〜
図22に示すように、ドライバーと7番アイアンとでは、各エリアの形状や面積が異なっていることがわかる。
また、ボール初速V0が速くなるほど、良い球筋として評価されるエリアの面積が狭くなっており、良い球筋を得るために必要な左右進入角θと打撃時フェース角φの範囲が狭くなる傾向であることがわかる。
【0052】
この他にも、選定装置10に起因する原因によって、分類マップD3上における各エリアの位置や面積は変化するため、分類マップD3は選定装置10に応じて作成されることになる。
また、厳密に言うと、第1、第2の境界線LA、LBの傾きは、ゴルフクラブヘッド16のフェース面1602のバルジとゴルフクラブヘッド16の慣性モーメントとの影響によって若干変化する。
【0053】
図23は、簡略化した分類マップD3の表示例を示す図である。
図23では、各エリアを視覚的に単純化して表示する都合上、フェードエリアA2、ドローエリアA4を楕円形状で示し、フェードエリアA2とドローエリアA4との一部が重なり、フェードエリアA2とドローエリアA4とが第1、第2の境界線LA、LBの外側にはみ出しているが、厳密には、前述した
図15に示すように、フェードエリアA2、ドローエリアA4、第1、第2の境界線LA、LBは互いに重なり合うことはない。
また、
図23の上部には、基準線L0に対するゴルフクラブヘッド16の移動方向を示す矢印F1が示されており、左右進入角θを模式的に示している。
また、
図23の左側には、ゴルフクラブヘッド16のフェース面1602の向きを示す矢印F2が示されおり、打撃時フェース角φを模式的に示している。
また、前述した3種類の評価のどれを採用するかに応じて、フェードエリアA2、ドローエリアA4、ストレートエリアA3の面積が増減することになる。
【0054】
分類部58は、左右進入角θと打撃時フェース角φとに基づいてゴルフクラブのスウィングが予め定められた複数のタイプのうちの何れのタイプに該当するかを、分類マップD3を用いて特定するものである。
【0055】
選定部60は、分類部58によって特定されたタイプに応じて最適なゴルフクラブを選定するものである。
本実施の形態では、ゴルフクラブのスウィングのタイプと該タイプに最適なゴルフクラブとが関連付けられた選定情報D4が予め用意されており、具体的には、選定情報D4は記憶部64に格納されている。なお、選定情報D4をどこに格納するかは任意である。
選定情報D4はゴルフクラブのスウィングのタイプと該タイプに最適なゴルフクラブとが関連付けられた情報である。
選定情報D4は、例えば、ゴルフクラブのスウィングのタイプと該タイプに最適なゴルフクラブとが関連付けられたデータテーブルで構成されるなどその形式は任意である。
すなわち、そのタイプに最適なゴルフクラブとは、そのタイプのスウィングでゴルフボール2を打撃したときの球筋を矯正する上で有利なゴルフクラブである。
選定部60は、分類部58で特定されたゴルフクラブのスウィングのタイプに基づいて選定情報D4から最適なゴルフクラブを選定する。
【0056】
選定部60により選定されるゴルフクラブ(言い換えると、選定情報D4においてゴルフクラブのスウィングのタイプに関連付けされたゴルフクラブ)としては、好適には、ゴルフクラブヘッド16の重心距離と重心角をさまざまに設定することにより得られるものが用いられる。
すなわち、前記の各タイプに最適なゴルフクラブヘッド16は、重心距離および重心角の少なくともいずれか一方が異なって構成されている。
【0057】
なお、ゴルフクラブヘッド16の重心距離とは、
図24に示すように、ゴルフクラブヘッド16の重心点Gから、ゴルフクラブシャフトの中心軸S(シャフト軸)または中心軸Sの延長線に至る最短直線を定めたとき、この最短直線の距離Lをいう。
重心角とは、ゴルフクラブヘッド16を、設定されるライ角通りに水平面上に載置し、前記最短直線とゴルフクラブシャフトの中心軸Sまたは中心軸Sの延長線を、鉛直方向から水平面に向かって投影したとき、前記最短直線とゴルフクラブシャフトの中心軸Sまたは中心軸Sの延長線との間で成す角αをいう。すなわち、重心角αは、前記最短直線の向きを表す角度である。
そして、前記の各タイプに応じて重心距離Lの値を大、小に変えることにより、前記の各タイプに適したものとすることができる。
言い換えると、スライスエリアA1に該当するタイプは重心距離Lが小さい(短い)ゴルフクラブヘッド16を選定し、フックエリアA5に該当するタイプは重心距離Lが大きい(長い)ゴルフクラブヘッド16を選定する。
なお、各ゴルフクラブヘッド16間の重心距離Lの違いの範囲を明確化する上で、各ゴルフクラブヘッド16間での重心距離Lの差は3mm〜10mmとするのが好ましい。
また、前記の各タイプに応じて重心角αの値を大、小に変えることにより、前記の各タイプに適したものとすることができる。
言い換えると、スライスエリアA1に該当するタイプは重心角αが大きいゴルフクラブヘッド16を選定し、フックエリアA5に該当するタイプは重心角αが小さいゴルフクラブヘッド16を選定する。
【0058】
上述の重心距離Lは、例えば以下のようにして求めることができる。
図25(a)に示すように、支点71を中心に矢印Uの方向に揺動可能なシーソー型の天秤計70によって測定される。
天秤計70には、ゴルフクラブヘッド16のホーゼル孔に対して隙間の無い嵌め合いを持つシャフトピン72を有し、ゴルフクラブヘッド16を装着しない状態では、アーム73が水平になるように釣り合っている。
ゴルフクラブヘッド16の重心Gのゴルフクラブシャフト軸からの重心距離Lの測定は、
図25(b)に示すように、シャフトピン72に質量Wのゴルフクラブヘッド16を装着し固定する。そして、アーム73が水平に釣り合うように所定の位置(L’)に精密秤を置き、天秤計70が吊り合うときの荷重を測る。
そして、この荷重が最大になるように、シャフトピン72に装着されるゴルフクラブヘッド16の向きを調整し、最大になるときの荷重W’を求める、この荷重W’に基づいて、釣り合いの式からL=(W’×L’)/Wを算出する。この算出値が重心距離Lである。
【0059】
以上、重心距離Lと重心角αを調整して前記の各タイプに最適なウッド系ゴルフクラブヘッド16を用意し選定する場合について説明したが、重心距離Lの替わりに、フェース面1602上における重心距離F
GLを用いることもできる。
【0060】
ここで、「フェース面1602上における重心距離F
GL」について説明する。
「フェース面1602上における重心距離F
GL」は、
図26(a)、(b)に示すように、重心Gを通るフェース面1602に垂直の垂線L1がフェース面1602と交わる点gと、ゴルフクラブシャフトの中心軸Sまたは中心軸Sの延長線をフェース面1602またはフェース面1602を延長した面に投影した線との間の最短距離をいう。
上記点gは、従来公知の重心測定器を用いて検出することができ、例えば、特許第4233886号の段落0028乃至0030に記載されている方法を用いることができる。要するに、上記点gは、重心Gを通るフェース面1602に垂直の垂線L1がフェース面1602と交わる点であればその検出方法は任意である。
そして、前記の各タイプに応じてフェース面1602上における重心距離F
GLの値を大、小に変えることにより、前記の各タイプに適したものとすることができる。
言い換えると、スライスエリアA1に該当するタイプはフェース面1602上における重心距離F
GLが小さい(短い)ゴルフクラブヘッド16を選定し、フックエリアA5に該当するタイプはフェース面1602上における重心距離F
GLが大きい(長い)ゴルフクラブヘッド16を選定する。
【0061】
さらに、特開2006−247045号公報に記載されるように、ゴルフクラブにおけるグリップ角度βを定めたとき、グリップ角度βを、重心角αの替わりに用いることもできる。
【0062】
ここで、「グリップ角度β」について説明する。
図27(a)はアイアン系のゴルフクラブ4の斜視図である。
ゴルフクラブ4は、ゴルフクラブシャフト5と、ゴルフクラブシャフト5の先端部に装着したゴルフクラブヘッド16と、ゴルフクラブシャフト5の後端部に装着したグリップ7とを有する。
図27(b)は、
図27(a)に示すX−X’線に沿って切断したときのゴルフクラブ4の断面図である。
ゴルフクラブシャフト5の周りを取り巻くように、グリップ7が設けられており、グリップ7の外周の一部には、部分的に突出した突部が設けられている。
この突部はゴルフクラブシャフト5の長手方向の同じ周上位置に設けられてバックライン7Aを形成する。
このバックライン7Aは、
図27(c)に示すように、装着前のグリップ7の内周面の一部分が平坦部7Bを成しており、ゴルフクラブシャフト5を装着することによってバックライン7Aが凸状に形成されるようになっている。
バックライン7Aは、グリップ7の、ゴルフクラブシャフト5への装着の際、装着向きを特定するための特定部位である。
グリップ角度βは、特定部位(バックライン7A)の、ゴルフクラブヘッド16のフェース面1602の向きに対する装着向きを示す情報である。
なお、特定部位は、バックライン7Aに限定されるものではなく、ゴルフクラブシャフト5の表面あるいはグリップ7の表面に形成された視認可能な指標であってもよい。
例えば、
図30(a)、(b)に示すように、グリップ7を握る際に左右の手の親指を当て付ける握り位置を表示する握り位置用マーク7Cがグリップ7の表面に形成されている場合、これら握り位置用マーク7Cが特定部位であってもよい。
【0063】
図28(a)はゴルフクラブ4を通常のアドレスポジションに設置した状態を説明する正面図、(b)は平面図である。
図29(a)、(b)、(c)は、グリップ角度βとゴルフクラブ4のフェース面1602の向きとの関係を説明する図である。
具体的に説明すると、グリップ角度βは、
図28(a)、(b)に示すように、ゴルフクラブ4をライ角度通りに水平な基準面B(水平面)上に置き、グリップ7及びゴルフクラブシャフト5を中心軸Sに垂直に切断したときの切断平面において、
図29(a)、(b)、(c)に示すように、バックライン7Aが設けられたゴルフクラブシャフト5周りの周上位置から中心軸Sを通る直線L2と、ゴルフクラブヘッド16のフェース面1602上の水平線(スコアラインに平行な直線)を前記の切断平面に投影したときの投影線H1とを定めたとき、直線L2の向きが投影線H1の向きに対して成す角度をいう。
したがって、直線L2と投影線H1とが平行をなす場合、グリップ角度βは0度となる。
【0064】
ゴルフクラブヘッド16のフェース面1602上の水平線とは、ゴルフクラブ4を通常のアドレスポジションに設置した(ライ角度通り設置した)状態における基準面Bと平行なフェース面1602上の直線を指す。
この水平線は、一般的にはスコアライン1630又はスコアライン1630に平行な直線で代用される。
スコアライン1630はフェース面1602の基準を示すように設定されているものである。
また、スコアライン1630が直線状でない等の場合には、通常のアドレスポジションに設置した状態において、フェース面1602上に基準面Bと平行になるような線を目印として付けてフェース面1602上の水平線とすることができる。
なお、ここで、ゴルフクラブ4を通常のアドレスポジションに設置するとは、ゴルフクラブヘッド16をライ角度通りに設置し、かつ、
図28(a)、(b)に示すように中心軸Sとリーディングエッジ1620とが互いに平行になるように、又スコアライン15と平行になるように設置することをいう。
また、スコアライン1630が直線状でない場合、中心軸Sとリーディングエッジ1620とが互いに平行になるとは、フェース角が0度の状態を示す。
【0065】
本実施の形態では、グリップ角βは、0度を中心としてフェース面1602が閉じる方向を負(マイナス)の角度とし、フェース面1602が開く方向を正(プラス)の角度とする。
前記の各タイプに応じてグリップ角度βの正負、および、その絶対値の大小を変えることにより、前記の各タイプに適したものとすることができる。
言い換えると、スライスエリアA1に該当するタイプはグリップ角βが負の(フェース面1602が閉じた)ゴルフクラブヘッド16を選定し、フックエリアA5に該当するタイプはグリップ角βが正の(フェース面1602が開いた)ゴルフクラブヘッド16を選定する。
ゴルファは、ゴルフクラブを把持するとき、グリップに表されている印や表示を基準にして把持するので、グリップ角度βを変えることにより、アドレス状態で、ゴルフクラブヘッド16のフェース面1602の向く向き、さらにはゴルフボール2打撃直前のフェース面1602の移動する向きは変化する。このため、前記の各タイプに応じて最適なゴルフクラブを提供することができる。
【0066】
また、選定部60により選定されるゴルフクラブとしては、好適には、ゴルフクラブヘッド16のフェースプログレッションをさまざまに設定することにより得られるものが用いられる。
図26に示すように、フェースプログレッションF
Pとは、中心軸Sからゴルフクラブヘッド16の最先端の位置Cまでの距離である。すなわち、フェースプログレッションF
Pは、中心軸Sからフェース面1602とソール部1604とが接する箇所であるリーディングエッジまでの距離である。
前記の各タイプに応じてフェースプログレッションF
Pを大小に変えることにより、前記の各タイプに適したものとすることができる。
言い換えると、スライスエリアA1に該当するタイプはフェースプログレッションF
Pが小さいゴルフクラブヘッド16を選定し、フックエリアA5に該当するタイプはフェースプログレッションF
Pが大きいゴルフクラブヘッド16を選定する。
なお、フェースプレグレッションが小さいゴルフクラブヘッド16はグースネック、あるいは、オフセットと呼ばれる。
【0067】
また、選定部60により選定されるゴルフクラブがウッド系である場合には、好適には、ゴルフクラブヘッド16のフェース角をさまざまに設定することにより得られるものが用いられる。
本実施の形態では、フェース角は、0度を中心としてフェース面1602が閉じる方向を負(マイナス)の角度とし、フェース面1602が開く方向を正(プラス)の角度とする。
すなわち、前記の各タイプに応じてゴルフクラブヘッド16のフェース角の正負、および、その絶対値の大小を変えることにより、前記の各タイプに適したものとすることができる。
言い換えると、スライスエリアA1に該当するタイプはフェース角が負の(フェース面1602が閉じた)のゴルフクラブヘッド16を選定し、フックエリアA5に該当するタイプはフェース角が正の(フェース面1602が開いた)のゴルフクラブヘッド16を選定する。
さらに言い換えると、スライスエリアA1に該当するタイプはフックフェースのゴルフクラブヘッド16を選定し、フックエリアA5に該当するタイプはスライスフェースのゴルフクラブヘッド16を選定するようにすればよい。
【0068】
また、選定部60により選定されるゴルフクラブがアイアン系である場合には、好適には、ゴルフクラブヘッド16のライ角をさまざまに設定することにより得られるものが用いられる。
言い換えると、スライスエリアA1に該当するタイプはライ角がアップライトなゴルフクラブヘッド16を選定し、フックエリアA5に該当するタイプはライ角がフラットなゴルフクラブヘッド16を選定する。
【0069】
また、選定部60により選定されるゴルフクラブとしては、ゴルフクラブのライ角をさまざまに設定することにより得られるものが用いられる。
具体的に説明すると、
図31は、ゴルフクラブのライ角を変化させた場合の打撃時フェース角φの変化を測定した線図であり、ゴルフクラブとして、ドライバ、5番アイアン、7番アイアン、9番アイアン、サンドウェッジについて測定している。
すなわち、ゴルフクラブヘッド16にはロフト角が設定されているため、ライ角が変化することによりフェース面1602の向き(フェース面1602の法線の向き)が左右に変化するのである。また、ロフト角の大きなクラブほどフェース面1602の法線の向きの変化が大きい。
このことから、ライ角が調整可能なゴルフクラブを用いる場合は、以下のような手順でライ角を調整して打撃時フェース角φを調整することにより、球筋を矯正できるゴルフクラブを選定することができる。
1)標準仕様のライ角のゴルフクラブで試打を行う。
2)
図23に示すように、分類マップD3上に測定点P1をプロットする。
この場合、測定点P1はフックエリアA5に該当しているため、測定点P1がドローエリアA4に移動できるように、打撃時フェース角φを+方向に調整すれば良い。
3)そのため、ライ角をトウ側に下がる方向に調整すると、ロフト角の関係でフェース面1602の法線が右側を向く、言い換えると、打撃時フェース角φを+方向に変化させることができる。
4)ライ角を調整したゴルフクラブで試打する。
再び、
図23に示すように、分類マップD3上にライ角調整後の測定点P2をプロットする。
球筋がドローエリアA4(最適弾道エリア)に入り、球筋が矯正されたことが確認される。
すなわち、上記の手順では、選定部60は、打撃時フェース角φを+方向(あるいは−方向)に調整して球筋を矯正するに足るライ角のゴルフクラブを選定する。
なお、
図23の上部には、ゴルフクラブヘッド16のライ角を調整した場合に、ライ角の調整度合いを示す模式図と、打撃時フェース角φの変化を測定点P1、P2の位置によって示す図が付加されている。
【0070】
また、これらのゴルフクラブには、前記の各タイプのいずれかに最適である旨の情報、すなわち、分類されるタイプの情報をゴルフクラブに貼着されるシールやタグ等の表示媒体に提示されていることが好ましい。ゴルファは、この表示媒体を目安に、多数のゴルフクラブの中から、自分のゴルフスウィングに適したゴルフクラブを選択することもできる。
【0071】
出力部62は、選定部60で選定されたゴルフクラブを特定するための情報、すなわちゴルフクラブ情報D5をディスプレイ46によって画面に表示し、あるいは、プリンタ48によって印刷媒体に印刷して出力する。あるいは、ゴルフクラブ情報D5をディスク装置40を介してディスク状記録媒体に出力し、あるいは、入出力インターフェース50を介して外部装置に出力する。
ゴルフクラブ情報D5は、予め記憶部64に格納されており、出力部62は、選定部60で選定されたゴルフクラブに基づいて該ゴルフクラブに対応するゴルフクラブ情報D5を記憶部64から読み出して出力する。なお、ゴルフクラブ情報D5をどこに格納しておくかは任意である。
前記のゴルフクラブの情報は、ゴルフクラブの製品名、製品番号、各種仕様、外観図、写真などのさまざまな情報を含むものである。
【0072】
画像形成部80は、記憶部64から読み出した分類マップD3のデータと、解析部56から供給される左右進入角θおよび打撃時フェース角φのデータである測定点のデータとに基づいてディスプレイ表示用の画像データを形成すると共に、プリンタ出力用の画像データを形成するものである。
なお、測定点は、1回の測定で得られた1つのデータであってもよいし、N回(Nは2以上の自然数)の測定で得られたN個データの平均値であってもよい。
測定点をN個データの平均値とすれば、測定点のばらつきを抑制する上で有利となる。
なお、このような平均値の算出は、解析部56あるいは画像形成部80で行えばよく、どこで行うかは任意である。
【0073】
画像出力部82は、画像形成部80から供給されるディスプレイ表示用の画像データをディスプレイ46に供給することによって、ディスプレイ46の表示画面に、ゴルフクラブのスウィングの特徴を表示させる。
また、画像出力部82は、画像形成部80から供給されるプリンタ出力用の画像データをプリンタ48に供給することによって、ゴルフクラブのスウィングの特徴を記録媒体としての用紙に印刷することにより、スウィングの表示図表を作成する。
【0074】
ここで、画像形成部80および画像出力部82によってディスプレイ46に表示される表示画面、および、プリンタ48によって作成される表示図表は、
図23に例示されるようなものである。
ディスプレイ46の表示画面およびプリンタ48によって作成される表示図表には、左右進入角θを示すX軸と、X軸に直交し打撃時フェース角φを示すY軸とを備える2次元座標軸と、第1の境界線LA、第2の境界線LBと、各種エリアA1乃至A5と、測定点とが表示される。
【0075】
次に、ゴルフクラブの選定装置10の動作について説明する。
選定装置10は、分類マップD3を作成する動作と、ゴルファによるゴルフクラブのスウィングの特徴をディスプレイによって表示する動作と、スウィングの特徴を示す表示図表を作成する動作と、ゴルフクラブの選定を行う動作とを行う。
以下、分類マップD3を作成する動作と、スウィングの特徴の表示動作および表示図表の作成動作と、ゴルフクラブの選定動作とについて順次説明する。
【0076】
まず、分類マップD3を作成する動作について説明する。
図32はゴルフクラブの選定装置10の分類マップD3の作成動作を説明するフローチャートである。
ゴルファが、ゴルフクラブをスウィングしてティーに載置されたゴルフボール2を打つと、制御部12が検出器1202によりゴルフクラブヘッド16を検出することによりカメラ26の撮影動作を実行させ、画像データがバッファメモリ1204に蓄積される(ステップS100:撮影ステップ)。
【0077】
画像データは信号処理部52を介して画像処理部54に供給され、抽出部54aによって前記の画像データから各マーカ特徴点が抽出される(ステップS102:抽出ステップ)。
【0078】
算出部54bは、記憶部64に格納されているゴルフクラブヘッド16を再現した3次元形状のデータD1(3次元形状モデル)と、3つ以上のマーカ特徴点に対応する3次元形状モデル上の対応点の位置を示す対応点位置情報D2とに基づいて、対応点の位置が、抽出部54aで抽出される3つ以上のマーカ特徴点の3次元座標系における位置と一致するように、3次元形状モデルの位置および向きを定めることで、ゴルフクラブヘッド16の挙動を再現した3次元形状モデルの位置および向きの時系列データを算出する(ステップS104:算出ステップ)。
【0079】
次いで解析部56が、3次元形状モデルの位置および向きの時系列データから左右進入角θと打撃時フェース角φを求める(ステップS106:解析ステップ)。
次いで推定部90が、左右進入角θと打撃時フェース角φとの測定値から、左右打ち出し角αおよびサイドスピン量Ssを推定する(ステップS108:推定ステップ)。
推定ステップによる左右打ち出し角αおよびサイドスピン量Ssの推定は、前述した左右進入角θと打撃時フェース角φとから左右打ち出し角αを特定する第1の回帰式と、左右進入角θと打撃時フェース角φとからサイドスピン量Ssを特定する第2の回帰式とを用いてなされる。
次いで、シミュレーション部92が、前記推定された左右打ち出し角αおよび前記サイドスピン量Ssと、ゴルフボール2のボール初速と、ゴルフボール2の上下打ち出し角とに基いて前記ゴルフボール2の移動軌跡をシミュレーションして前記基準線L0から着弾地点までの距離であるシフト量ΔSを算出する(ステップS110:シミュレーションステップ)。
【0080】
ステップS10からS20を繰り返して行なうことにより、左右進入角θと打撃時フェース角φとシフト量ΔSとからなるデータを蓄積する(ステップS112:分類マップD3作成ステップ)。
そして、左右進入角θを示すX軸と、X軸に直交し打撃時フェース角φを示すY軸とを備え、それらX軸、Y軸の交点を左右進入角θおよび打撃時フェース角φのゼロ度とした2次元座標軸を設定し、蓄積されたデータである左右進入角θと打撃時フェース角φとシフト量ΔSとに基いて特定される球筋の傾向に応じて境界分けされた複数のエリアA1〜A5を2次元座標軸上に設定することにより各種エリアが規定された分類マップD3を作成する(ステップS114:分類マップD3作成ステップ)。作成された分類マップD3は、記憶部64に格納される。
以上で分類マップD3の作成が終了する。
なお、分類マップD3の作成を、ゴルファの属性(男子プロゴルファ、男子アマチュア、女子プロゴルファ、女子アマチュア)毎に、また、ゴルフクラブの種類(ドライバ、アイアン、番手)毎に行うことにより、ゴルファの属性およびゴルフクラブの種類に対応した分類マップD3を作成することができる。
【0081】
次に、ゴルフクラブの選定装置10によるスウィングの特徴の表示動作および表示図表の作成動作を説明する。
図33はゴルフクラブの選定装置10によるスウィングの特徴の表示動作および表示図表の作成動作を説明するフローチャートである。
ステップS200〜S206は、
図32のステップS100〜S106と同様であるため、説明を省略する。
【0082】
ステップS208において、画像形成部80は、記憶部64から読み出した分類マップD3のデータと、解析部56から供給される測定点のデータ(左右進入角θおよび打撃時フェース角φのデータ)とに基づいてディスプレイ表示用の画像データを形成すると共に、プリンタ出力用の画像データを形成する(ステップS208)。
【0083】
画像出力部82は、画像形成部80から供給されるディスプレイ表示用の画像データに基づいて、ディスプレイ46の表示画面に、X軸およびY軸からなる2次元座標軸を表示する(ステップS210:座標軸表示ステップ)。
次いで、画像出力部82は、画像形成部80から供給されるディスプレイ表示用の画像データに基づいて、ディスプレイ46の表示画面に、第1の境界線LA、第2の境界線LBを表示させる(ステップS212:境界線表示ステップ)。
【0084】
次いで、画像出力部82は、画像形成部80から供給されるディスプレイ表示用の画像データに基づいて、ディスプレイ46の表示画面に、スライスエリアA1、フェードエリアA2、ストレートエリアA3、ドローエリアA4、フックエリアA5を表示させる(ステップS214:各種エリア表示ステップ)。言い換えると、画像出力部82は、球筋の傾向に応じて境界分けされた複数のエリアA1〜A5を表示させる。
【0085】
次いで、画像出力部82は、画像形成部80から供給されるディスプレイ表示用の画像データに基づいて、ディスプレイ46の表示画面に、測定点を表示させる(ステップS216:測定点表示ステップ)。
これにより
図23に示すように、スウィングの特徴がディスプレイ46の表示画面に表示される。
【0086】
次いで、画像出力部82は、画像形成部80から供給されるプリンタ出力用の画像データをプリンタ48に供給することによって、ゴルフクラブのスウィングの特徴を記録媒体に印刷させることによりスウィングの表示図表を作成する(ステップS218)。
これにより
図23に示すように、スウィングの特徴を示す表示図表が出力される。
なお、各エリアの表示、あるいは、表示図表の出力に際しては、予めゴルファの属性に応じて複数の分類マップD3を用意しておき、顧客の属性に対応した分類マップD3を選択して各エリアを表示させるようにすれば、顧客の属性を反映したスウィングの特徴を提示することができるため、顧客の満足度を確保する上で有利となる。
【0087】
次にゴルフクラブの選定動作について説明する。
図34はゴルフクラブの選定装置10の選定動作を説明するフローチャートである。
ステップS300〜S306は、
図32のステップS100〜S106と同様であるため、説明を省略する。
【0088】
ステップS308において、分類部58が、左右進入角θと打撃時フェース角φとに基づいてゴルフクラブのスウィングが予め定められた複数のタイプのうちの何れのタイプであるかを分類マップD3を用いて特定する(ステップS308:分類ステップ)。
【0089】
次いで、選定部60が、前記特定されたタイプに応じたゴルフクラブを選定情報D4を用いて選定する(ステップS310:選定ステップ)。
【0090】
次いで、出力部62が、選定されたゴルフクラブに対応するゴルフクラブ情報D5を記憶部64から読み出して出力する(ステップS312:出力ステップ)。
これにより、ゴルファのスウィングのタイプに適したゴルフクラブの選定がなされる。
【0091】
したがって、ゴルフボール2を打撃する直前におけるゴルフクラブヘッド16における左右進入角θと打撃時フェース角φとに基づいて、かつ、左右進入角θと打撃時フェース角φから推定されるシフト量ΔSを考慮して、ゴルフスウィングのタイプを分類するので、ゴルフボール2のフックやスライス等の球筋に影響を与えるゴルフスウィングのタイプをより的確に分類する上で有利となる。
そして、その分類結果に基づいてゴルフクラブを選定するので、ゴルファにとって最適なゴルフクラブを選定する上で有利となる。
【0092】
本実施の形態のゴルフクラブのスウィングの表示方法によれば、次のような作用効果が奏される。
ディスプレイ46の表示画面に、左右進入角θおよび打撃時フェース角φを示す2次元座標軸と、左右進入角θと打撃時フェース角φから推定されるシフト量ΔSを考慮してゴルフボール2の球筋の傾向に応じて境界分けされた複数のエリアと、ゴルファが実際にスウィングした際のゴルフクラブヘッド16の挙動を測定した測定点とが表示される。
したがって、測定点が、複数のエリアのうちのどのエリアに位置しているかに基づいてスライスやフックなどの球筋に影響を与えるスウィングの特徴を簡単にかつわかりやすく提供する上で有利となる。
【0093】
特に本実施の形態では、複数のエリアとして、スライスエリアA1、フェードエリアA2、ストレートエリアA3、ドローエリアA4、フックエリアA5が表示されるので、測定点がどのエリアに位置しているかに基づいてスライスやフックなどの球筋に影響を与えるスウィングの特徴を簡単にかつわかりやすく提供する上でより一層有利となる。
また、理想的なスウィングであるフェードエリアA2やドローエリアA4に対する測定点のずれを把握することにより、左右進入角θおよび打撃時フェース角φのそれぞれをどのように修正すればよいか、といったスウィングの改善点を理解する上で有利となる。
特に、ゴルフ練習場などにおける練習の成果を簡単にゴルファに提供することができるので、ゴルファの練習を効果的に行う上で有利となる。
また、ゴルフショップなどで複数種類のゴルフクラブを用いて測定を行えば、各ゴルフクラブの特徴を具体的に比較することができる。そのため、ゴルファがゴルフクラブを購入する際にゴルフクラブを的確に評価することができ、販売の促進を図る上で有利となる。
あるいは、ゴルフクラブの新製品の広報時に、従来品および新製品を用いて測定を行えば、新製品の改良点を従来品に比較して示すことができるため、広報の効果を高める上で有利となる。
【0094】
また、本実施の形態では、ドローエリアA4、フェードエリアA2、ストレートエリアA3のうち、予め定められたシフト量ΔS以下に該当する部分を良い球筋のエリアとして表示するので、スウィングの特徴を正確に提供する上で有利となる。
また、本実施の形態では、ドローエリアA4、フェードエリアA2、ストレートエリアA3のうち、予め定められたサイドスピン量Ss以下に該当する部分を良い球筋のエリアとして表示するので、スウィングの特徴を正確に提供する上で有利となる。
【0095】
また、本実施の形態では、推定ステップにおける左右打ち出し角αおよびサイドスピン量Ssの特定に際して、第1の回帰式、第2の回帰式を用いるため、左右打ち出し角αおよびサイドスピン量Ssの特定に要する処理を簡単に行なう上で有利となる。
【0096】
また、本実施の形態では、ゴルフボール2の移動軌跡のシミュレーションは、ゴルフボール2のバックスピン量を考慮してなされるので、移動軌跡のシミレーションの精度を高め、スウィングの特徴を正確に提供する上で有利となる。
【0097】
また、本実施の形態では、ゴルフボール2の移動軌跡のシミュレーションに際して、ボール初速と、上下打ち出し角としてゴルファの属性に対応して予め定められた固定値を用いるので、ボール初速と、上下打ち出し角とを実測する必要がなく、簡単にシミレーションを行なう上で有利となる。
【0098】
また、本実施の形態では、ゴルファによる打撃時に、ボール初速と、上下打ち出し角とを測定し、ゴルフボール2の移動軌跡のシミュレーションに際して、実測されたボール初速と、上下打ち出し角を用いるので、移動軌跡のシミレーションの精度を高め、スウィングの特徴を正確に提供する上で有利となる。
【0099】
また、本実施の形態のゴルフクラブのスウィングの表示図表によれば、次のような作用効果が奏される。
表示図表が、左右進入角θおよび打撃時フェース角φを示す2次元座標軸と、ゴルフボール2の球筋を示すエリアを有しているので、左右進入角θおよび打撃時フェース角φと、複数のエリアとの関係が簡単に理解でき、すなわち、スウィングの特徴を簡単に理解する上で有利となる。
【0100】
特に本実施の形態では、複数のエリアが、スライスエリアA1、フェードエリアA2、ストレートエリアA3、ドローエリアA4、フックエリアA5を含んでいるので、左右進入角θおよび打撃時フェース角φと、各エリアとの関係がより簡単に理解でき、すなわち、スウィングの特徴を簡単に理解する上でより一層有利となる。
また、媒体として持ち運び、あるいは、保管することができるため、ゴルファに提供するサービスの価値を高める上でより有利となる。
また、ゴルファが実際にスウィングした際のゴルフクラブヘッド16の挙動を測定し、この測定点を表示図表に表示させることにより、測定点が表示されるエリアに基づいてスウィングの特徴を簡単に理解する上で有利となる。
なお、2次元座標軸とエリアとを有する表示図表を予め用意しておき、測定点はプリンタ48によって後から印刷してもよい。
このようにすると、印刷時間の短縮化を図る上で有利となる。
【0101】
また、本実施の形態においては、ゴルフボール2の球筋に対応するエリアを、スライスエリアA1、フェードエリアA2、ストレートエリアA3、ドローエリアA4、フックエリアA5といった5つのエリアに区分した場合について説明した。
しかしながら、例えば、真直ぐ飛ぶか、右に曲がるか、左に曲がるかのいずれかに分類すべきと考えるのであれば、スライスエリアA1、ストレートエリアA3、フックエリアA5といった3つのエリア区分にしてもよい。
また、そもそも真直ぐ飛ぶという事は考え難く、右に曲がるか、左に曲がるかのいずれかに分類すべきと考えるのであれば、スライスエリアA1、フックエリアA5といった2つのエリア区分にしてもよい。
すなわち、各エリアは、当業者の考え方により適宜設定する事が可能である。
また、各エリアの範囲も例えば曲がりの許容差を大きくしてストレートエリアA3の範囲を大きくする等当業者の考え方により適宜設定する事が可能である。