(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガラスが、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、クリスタルガラスおよび石英ガラスから成る群から選択されるガラスである、請求項30に記載の物品。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の表面処理剤について説明する。
【0013】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素および水素を含む基であって、炭化水素から1個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、炭素数1〜20の炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つまたはそれ以上の環構造を含んでいてもよい。尚、かかる炭化水素基は、その末端または分子鎖中に、1つまたはそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有していてもよい。
【0014】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子;1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基、C
2−6アルキニル基、C
3−10シクロアルキル基、C
3−10不飽和シクロアルキル基、5〜10員のヘテロシクリル基、5〜10員の不飽和ヘテロシクリル基、C
6−10アリール基および5〜10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0015】
本明細書において用いられる場合、「有機基」とは、炭素を含有する基を意味する。有機基としては、特に限定されないが、炭化水素基であり得る。また、「2〜10価の有機基」とは、炭素を含有する2〜10価の基を意味する。かかる2〜10価の有機基としては、特に限定されないが、炭化水素基からさらに1〜9個の水素原子を脱離させた2〜10価の基が挙げられる。例えば、2価の有機基としては、特に限定されるものではないが、炭化水素基からさらに1個の水素原子を脱離させた2価の基が挙げられる。
【0016】
本発明の表面処理剤は、下記式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)および(C2):
【化2】
のいずれかで表される少なくとも1種のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物を含む。
【0017】
以下、上記式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)および(C2)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物について説明する。
【0018】
式(A1)および(A2):
【化3】
【0019】
上記式中、PFPEは、−(OC
4F
8)
a−(OC
3F
6)
b−(OC
2F
4)
c−(OCF
2)
d−であり、パーフルオロ(ポリ)エーテル基に該当する。ここに、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して0または1以上の整数であって、a、b、cおよびdの和は少なくとも1である。好ましくは、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して0以上200以下の整数、例えば1〜200の整数であり、より好ましくは、それぞれ独立して0以上100以下の整数である。また、好ましくは、a、b、cおよびdの和は5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。また、a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。これら繰り返し単位のうち、−(OC
4F
8)−は、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF(CF
3)CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF(CF
3))−、−(OC(CF
3)
2CF
2)−、−(OCF
2C(CF
3)
2)−、−(OCF(CF
3)CF(CF
3))−、−(OCF(C
2F
5)CF
2)−および−(OCF
2CF(C
2F
5))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−である。−(OC
3F
6)−は、−(OCF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2)−および−(OCF
2CF(CF
3))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2)−である。また、−(OC
2F
4)−は、−(OCF
2CF
2)−および−(OCF(CF
3))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2)−である。
【0020】
一の態様において、PFPEは、−(OC
3F
6)
b−(式中、bは1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数である)であり、好ましくは、−(OCF
2CF
2CF
2)
b−(式中、bは1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数である)または−(OCF(CF
3)CF
2)
b−(式中、bは1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数である)であり、より好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2)
b−(式中、bは1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数である)である。
【0021】
別の態様において、PFPEは、−(OC
4F
8)
a−(OC
3F
6)
b−(OC
2F
4)
c−(OCF
2)
d−(式中、aおよびbは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、cおよびdは、それぞれ独立して1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である)であり、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)
a−(OCF
2CF
2CF
2)
b−(OCF
2CF
2)
c−(OCF
2)
d−である。一の態様において、PFPEは、−(OC
2F
4)
c−(OCF
2)
d−(式中、cおよびdは、それぞれ独立して1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数であり、添字cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である)であってもよい。
【0022】
一の態様において、上記−(OC
4F
8)
a−(OC
3F
6)
b−(OC
2F
4)
c−(OCF
2)
d−において、dに対するcの比(以下、「c/d比」という)の下限は、0.2、好ましくは0.3であり、c/d比の上限は、1.5、好ましくは1.3、より好ましくは1.1、さらに好ましくは0.9であり得る。c/d比を1.5以下にすることにより、この化合物から得られる表面処理層の滑り性および摩擦耐久性がより向上する。c/d比がより小さいほど、表面処理層の滑り性および摩擦耐久性はより向上する。一方、c/d比を0.2以上にすることにより、化合物の安定性をより高めることができる。c/d比がより大きいほど、化合物の安定性はより向上する。
【0023】
さらに別の態様において、PFPEは、−(OC
2F
4−R
8)
n”−で表される基である。式中、R
8は、OC
2F
4、OC
3F
6およびOC
4F
8から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせである。OC
2F
4、OC
3F
6およびOC
4F
8から独立して選択される2または3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば−OC
2F
4OC
3F
6−、−OC
2F
4OC
4F
8−、−OC
3F
6OC
2F
4−、−OC
3F
6OC
3F
6−、−OC
3F
6OC
4F
8−、−OC
4F
8OC
4F
8−、−OC
4F
8OC
3F
6−、−OC
4F
8OC
2F
4−、−OC
2F
4OC
2F
4OC
3F
6−、−OC
2F
4OC
2F
4OC
4F
8−、−OC
2F
4OC
3F
6OC
2F
4−、−OC
2F
4OC
3F
6OC
3F
6−、−OC
2F
4OC
4F
8OC
2F
4−、−OC
3F
6OC
2F
4OC
2F
4−、−OC
3F
6OC
2F
4OC
3F
6−、−OC
3F
6OC
3F
6OC
2F
4−、および−OC
4F
8OC
2F
4OC
2F
4−等が挙げられる。上記n”は、2〜100の整数、好ましくは2〜50の整数である。上記式中、OC
2F
4、OC
3F
6およびOC
4F
8は、直鎖または分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、PFPEは、好ましくは、−(OC
2F
4−OC
3F
6)
n”−または−(OC
2F
4−OC
4F
8)
n”−である。
【0024】
上記式中、Rfは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表す。
【0025】
上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基における「炭素数1〜16のアルキル基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖の炭素数1〜6、特に炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくは直鎖の炭素数1〜3のアルキル基である。
【0026】
上記Rfは、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されている炭素数1〜16のアルキル基であり、より好ましくはCF
2H−C
1−15フルオロアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数1〜16のパーフルオロアルキル基である。
【0027】
該炭素数1〜16のパーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖の炭素数1〜6、特に炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖の炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、具体的には−CF
3、−CF
2CF
3、または−CF
2CF
2CF
3である。
【0028】
上記式中、R
1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜22のアルキル基、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0029】
上記式中、R
2は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表す。
【0030】
上記「加水分解可能な基」とは、本明細書において用いられる場合、加水分解反応により、化合物の主骨格から脱離し得る基を意味する。加水分解可能な基の例としては、−OR、−OCOR、−O−N=CR
2、−NR
2、−NHR、ハロゲン(これら式中、Rは、置換または非置換の炭素数1〜4のアルキル基を示す)などが挙げられ、好ましくは−OR(即ち、アルコキシ基)である。Rの例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が含まれる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。水酸基は、特に限定されないが、加水分解可能な基が加水分解して生じたものであってよい。
【0031】
上記式中、R
11は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表す。ハロゲン原子は、好ましくはヨウ素原子、塩素原子またはフッ素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。
【0032】
上記式中、R
12は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表す。低級アルキル基は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
【0033】
上記式中、nは、(−SiR
1nR
23−n)単位毎に独立して、0〜3の整数であり、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0である。ただし、式中、すべてのnが同時に0になることはない。換言すれば、式中、少なくとも1つはR
2が存在する。
【0034】
上記式中、X
1は、それぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表す。当該X
1は、式(A1)および(A2)で表される化合物において、主に撥水性および表面滑り性等を提供するパーフルオロポリエーテル部(即ち、Rf−PFPE部または−PFPE−部)と、基材との結合能を提供するシラン部(即ち、αを付して括弧でくくられた基)とを連結するリンカーと解される。従って、当該X
1は、式(A1)および(A2)で表される化合物が安定に存在し得るものであれば、いずれの有機基であってもよい。
【0035】
上記式中、αは1〜9の整数であり、α’は1〜9の整数である。これらαおよびα’は、X
1の価数に応じて変化し得る。式(A1)においては、αおよびα’の和は、X
1の価数と同じである。例えば、X
1が10価の有機基である場合、αおよびα’の和は10であり、例えばαが9かつα’が1、αが5かつα’が5、またはαが1かつα’が9となり得る。また、X
1が2価の有機基である場合、αおよびα’は1である。式(A2)においては、αはX
1の価数から1を引いた値である。
【0036】
上記X
1は、好ましくは2〜7価であり、より好ましくは2〜4価であり、さらに好ましくは2価の有機基である。
【0037】
一の態様において、X
1は2〜4価の有機基であり、αは1〜3であり、α’は1である。
【0038】
別の態様において、X
1は2価の有機基であり、αは1であり、α’は1である。この場合、式(A1)および(A2)は、下記式(A1’)および(A2’)で表される。
【化4】
【0039】
上記X
1の例としては、特に限定するものではないが、例えば、下記式:
−(R
31)
p’−(X
a)
q’−
[式中:
R
31は、単結合、−(CH
2)
s’−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、好ましくは−(CH
2)
s’−であり、
s’は、1〜20の整数、好ましくは1〜6の整数、より好ましくは1〜3の整数、さらにより好ましくは1または2であり、
X
aは、−(X
b)
l’−を表し、
X
bは、各出現においてそれぞれ独立して、−O−、−S−、o−、m−もしくはp−フェニレン基、−C(O)O−、−Si(R
33)
2−、−(Si(R
33)
2O)
m’−Si(R
33)
2−、−CONR
34−、−O−CONR
34−、−NR
34−および−(CH
2)
n’−からなる群から選択される基を表し、
R
33は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C
1−6アルキル基またはC
1−6アルコキシ基を表し、好ましくはフェニル基またはC
1−6アルキル基であり、より好ましくはメチル基であり、
R
34は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC
1−6アルキル基(好ましくはメチル基)を表し、
m’は、各出現において、それぞれ独立して、1〜100の整数、好ましくは1〜20の整数であり、
n’は、各出現において、それぞれ独立して、1〜20の整数、好ましくは1〜6の整数、より好ましくは1〜3の整数であり、
l’は、1〜10の整数、好ましくは1〜5の整数、より好ましくは1〜3の整数であり、
p’は、0または1であり、
q’は、0または1であり、
ここに、p’およびq’の少なくとも一方は1であり、p’またはq’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である]
で表される2価の基が挙げられる。ここに、R
31およびX
a(典型的にはR
31およびX
aの水素原子)は、フッ素原子、C
1−3アルキル基およびC
1−3フルオロアルキル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0040】
好ましくは、上記X
1は、−(R
31)
p’−(X
a)
q’−R
32−である。R
32は、単結合、−(CH
2)
t’−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、好ましくは−(CH
2)
t’−である。t’は、1〜20の整数、好ましくは2〜6の整数、より好ましくは2〜3の整数である。ここに、R
32(典型的にはR
32の水素原子)は、フッ素原子、C
1−3アルキル基およびC
1−3フルオロアルキル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0041】
好ましくは、上記X
1は、
C
1−20アルキレン基、
−R
31−X
c−R
32−、または
−X
d−R
32−
[式中、R
31およびR
32は、上記と同意義である。]
であり得る。
【0042】
より好ましくは、上記X
1は、
C
1−20アルキレン基、
−(CH
2)
s’−X
c−、
−(CH
2)
s’−X
c−(CH
2)
t’−
−X
d−、または
−X
d−(CH
2)
t’−
[式中、s’およびt’は、上記と同意義である。]
である。
【0043】
上記式中、X
cは、
−O−、
−S−、
−C(O)O−、
−CONR
34−、
−O−CONR
34−、
−Si(R
33)
2−、
−(Si(R
33)
2O)
m’−Si(R
33)
2−、
−O−(CH
2)
u’−(Si(R
33)
2O)
m’−Si(R
33)
2−、
−O−(CH
2)
u’−Si(R
33)
2−O−Si(R
33)
2−CH
2CH
2−Si(R
33)
2−O−Si(R
33)
2−、
−O−(CH
2)
u’−Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2−、
−CONR
34−(CH
2)
u’−(Si(R
33)
2O)
m’−Si(R
33)
2−、
−CONR
34−(CH
2)
u’−N(R
34)−、または
−CONR
34−(o−、m−またはp−フェニレン)−Si(R
33)
2−
[式中、R
33、R
34およびm’は、上記と同意義であり、
u’は1〜20の整数、好ましくは2〜6の整数、より好ましくは2〜3の整数である。]を表す。X
cは、好ましくは−O−である。
【0044】
上記式中、X
dは、
−S−、
−C(O)O−、
−CONR
34−、
−CONR
34−(CH
2)
u’−(Si(R
33)
2O)
m’−Si(R
33)
2−、
−CONR
34−(CH
2)
u’−N(R
34)−、または
−CONR
34−(o−、m−またはp−フェニレン)−Si(R
33)
2−
[式中、各記号は、上記と同意義である。]
を表す。
【0045】
より好ましくは、上記X
1は、
C
1−20アルキレン基、
−(CH
2)
s’−X
c−(CH
2)
t’−、または
−X
d−(CH
2)
t’−
[式中、各記号は、上記と同意義である。]
であり得る。
【0046】
さらにより好ましくは、上記X
1は、
C
1−20アルキレン基、
−(CH
2)
s’−O−(CH
2)
t’−、
−(CH
2)
s’−(Si(R
33)
2O)
m’−Si(R
33)
2−(CH
2)
t’−、
−(CH
2)
s’−O−(CH
2)
u’−(Si(R
33)
2O)
m’−Si(R
33)
2−(CH
2)
t’−、または
−(CH
2)
s’−O−(CH
2)
t’−Si(R
33)
2−(CH
2)
u’−Si(R
33)
2−(C
vH
2v)−
[式中、R
33、m’、s’、t’およびu’は、上記と同意義であり、vは1〜20の整数、好ましくは2〜6の整数、より好ましくは2〜3の整数である。]
である。
【0047】
上記式中、−(C
vH
2v)−は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、例えば、−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH
2−、−CH(CH
3)−、−CH(CH
3)CH
2−であり得る。
【0048】
上記X
1基は、フッ素原子、C
1−3アルキル基およびC
1−3フルオロアルキル基(好ましくは、C
1−3パーフルオロアルキル基)から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0049】
別の態様において、X
1基としては、例えば下記の基が挙げられる:
【化5】
【化6】
[式中、R
41は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、炭素数1〜6のアルキル基、またはC
1−6アルコキシ基、好ましくはメチル基であり;
Dは、
−CH
2O(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3−、
−CF
2O(CH
2)
3−、
−(CH
2)
2−、
−(CH
2)
3−、
−(CH
2)
4−、
−CONH−(CH
2)
3−、
−CON(CH
3)−(CH
2)
3−、
−CON(Ph)−(CH
2)
3−(式中、Phはフェニルを意味する)、および
【化7】
(式中、R
42は、それぞれ独立して、水素原子、C
1−6のアルキル基またはC
1−6のアルコキシ基、好ましくはメチル基またはメトキシ基、より好ましくはメチル基を表す。)
から選択される基であり、
Eは、−(CH
2)
n−(nは2〜6の整数)であり、
Dは、分子主鎖のPFPEに結合し、Eは、PFPEと反対の基に結合する。]
【0050】
上記X
1の具体的な例としては、例えば:
−CH
2O(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3−、
−CH
2O(CH
2)
6−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
2Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
3Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
10Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
20Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2−
−CH
2OCH
2(CH
2)
7CH
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2OCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
3−、
−(CH
2)
2−、
−(CH
2)
3−、
−(CH
2)
4−、
−(CH
2)
6−、
−CONH−(CH
2)
3−、
−CON(CH
3)−(CH
2)
3−、
−CON(Ph)−(CH
2)
3−(式中、Phはフェニルを意味する)、
−CONH−(CH
2)
6−、
−CON(CH
3)−(CH
2)
6−、
−CON(Ph)−(CH
2)
6−(式中、Phはフェニルを意味する)、
−CONH−(CH
2)
2NH(CH
2)
3−、
−CONH−(CH
2)
6NH(CH
2)
3−、
−CH
2O−CONH−(CH
2)
3−、
−CH
2O−CONH−(CH
2)
6−、
−S−(CH
2)
3−、
−(CH
2)
2S(CH
2)
3−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
2Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
3Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
10Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
20Si(CH
3)
2(CH
2)
2−
−C(O)O−(CH
2)
3−、
−C(O)O−(CH
2)
6−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−CH(CH
3)−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−(CH
2)
3−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−CH(CH
3)−CH
2−、
【化8】
などが挙げられる。
【0051】
さらに別の態様において、X
1は、式:−(R
16)
x−(CFR
17)
y−(CH
2)
z−で表される基である。式中、x、yおよびzは、それぞれ独立して、0〜10の整数であり、x、yおよびzの和は1以上であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。
【0052】
上記式中、R
16は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子、フェニレン、カルバゾリレン、−NR
26−(式中、R
26は、水素原子または有機基を表す)または2価の有機基である。好ましくは、R
16は、酸素原子または2価の極性基である。
【0053】
上記「2価の極性基」としては、特に限定されないが、−C(O)−、−C(=NR
27)−、および−C(O)NR
27−(これらの式中、R
27は、水素原子または低級アルキル基を表す)が挙げられる。当該「低級アルキル基」は、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピルであり、これらは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい。
【0054】
上記式中、R
17は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または低級フルオロアルキル基であり、好ましくはフッ素原子である。当該「低級フルオロアルキル基」は、例えば、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3のフルオロアルキル基、好ましくは炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、より好ましくはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、さらに好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0055】
この態様において、X
1は、好ましくは、式:−(O)
x−(CF
2)
y−(CH
2)
z−(式中、x、yおよびzは、上記と同意義であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である)で表される基である。
【0056】
上記式:−(O)
x−(CF
2)
y−(CH
2)
z−で表される基としては、例えば、−(O)
x’−(CH
2)
z”−O−[(CH
2)
z’’’−O−]
z””、および−(O)
x’−(CF
2)
y”−(CH
2)
z”−O−[(CH
2)
z’’’−O−]
z””(式中、x’は0または1であり、y”、z”およびz’’’は、それぞれ独立して、1〜10の整数であり、z””は、0または1である)で表される基が挙げられる。なお、これらの基は左端がPFPE側に結合する。
【0057】
別の好ましい態様において、X
1は、−O−CFR
13−(CF
2)
e−である。
【0058】
上記R
13は、それぞれ独立して、フッ素原子または低級フルオロアルキル基を表す。低級フルオロアルキル基は、例えば炭素数1〜3のフルオロアルキル基、好ましくは炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、より好ましくはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、更に好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0059】
上記eは、それぞれ独立して、0または1である。
【0060】
一の具体例において、R
13はフッ素原子であり、eは1である。
【0061】
さらに別の態様において、X
1基の例として、下記の基が挙げられる:
【化9】
[式中、
R
41は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、炭素数1〜6のアルキル基、またはC
1−6アルコキシ基好ましくはメチル基であり;
各X
1基において、Tのうち任意のいくつかは、分子主鎖のPFPEに結合する以下の基:
−CH
2O(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3−、
−CF
2O(CH
2)
3−、
−(CH
2)
2−、
−(CH
2)
3−、
−(CH
2)
4−、
−CONH−(CH
2)
3−、
−CON(CH
3)−(CH
2)
3−、
−CON(Ph)−(CH
2)
3−(式中、Phはフェニルを意味する)、または
【化10】
[式中、R
42は、それぞれ独立して、水素原子、C
1−6のアルキル基またはC
1−6のアルコキシ基、好ましくはメチル基またはメトキシ基、より好ましくはメチル基を表す。]
であり、別のTのいくつかは、分子主鎖のPFPEと反対の基(即ち、式(A1)および(A2)においては炭素原子、また、下記する式(B1)、(B2)、(C1)および(C2)においてはSi原子)に結合する−(CH
2)
n”−(n”は2〜6の整数)であり、存在する場合、残りは、それぞれ独立して、メチル基、フェニル基またはC
1−6アルコキシ基である。
【0062】
この態様において、X
1、X
5およびX
7は、それぞれ独立して、3〜10価の有機基であり得る。
【0063】
上記式中、tは、それぞれ独立して、1〜10の整数である。好ましい態様において、tは1〜6の整数である。別の好ましい態様において、tは2〜10の整数であり、好ましくは2〜6の整数である。
【0064】
上記式中、X
2は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表す。X
2は、好ましくは、炭素数1〜20のアルキレン基であり、より好ましくは、−(CH
2)
u−(式中、uは、0〜2の整数である)である。
【0065】
好ましい式(A1)および(A2)で示される化合物は、下記式(A1’)および(A2’):
【化11】
[式中:
PFPEは、それぞれ独立して、式:
−(OC
4F
8)
a−(OC
3F
6)
b−(OC
2F
4)
c−(OCF
2)
d−
(式中、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0〜200の整数であって、a、b、cおよびdの和は少なくとも1であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し;
R
1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜22のアルキル基を表し;
R
2は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R
11は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表し;
R
12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
nは、0〜2の整数であり、好ましくは0であり;
X
1は、−O−CFR
13−(CF
2)
e−であり;
R
13は、フッ素原子または低級フルオロアルキル基であり;
eは、0または1であり;
X
2は、−(CH
2)
u−であり;
uは、0〜2の整数であり;
tは、1〜10の整数である。]
で表される化合物である。
【0066】
式(B1)および(B2):
【化12】
【0067】
上記式(B1)および(B2)中、Rf、PFPE、R
1、R
2およびnは、上記式(A1)および(A2)に関する記載と同意義である。
【0068】
上記式中、X
5は、それぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表す。当該X
5は、式(B1)および(B2)で表される化合物において、主に撥水性および表面滑り性等を提供するパーフルオロポリエーテル部(Rf−PFPE部または−PFPE−部)と、基材との結合能を提供するシラン部(具体的には、−SiR
1nR
23−n)とを連結するリンカーと解される。従って、当該X
5は、式(B1)および(B2)で表される化合物が安定に存在し得るものであれば、いずれの有機基であってもよい。
【0069】
上記式中のβは、1〜9の整数であり、β’は、1〜9の整数である。これらβおよびβ’は、X
3の価数に応じて決定され、式(B1)において、βおよびβ’の和は、X
5の価数と同じである。例えば、X
5が10価の有機基である場合、βおよびβ’の和は10であり、例えばβが9かつβ’が1、βが5かつβ’が5、またはβが1かつβ’が9となり得る。また、X
5が2価の有機基である場合、βおよびβ’は1である。式(B2)において、βはX
5の価数の値から1を引いた値である。
【0070】
上記X
5は、好ましくは2〜7価、より好ましくは2〜4価、さらに好ましくは2価の有機基である。
【0071】
一の態様において、X
5は2〜4価の有機基であり、βは1〜3であり、β’は1である。
【0072】
別の態様において、X
5は2価の有機基であり、βは1であり、β’は1である。この場合、式(B1)および(B2)は、下記式(B1’)および(B2’)で表される。
【化13】
【0073】
上記X
5の例としては、特に限定するものではないが、例えば、X
1に関して記載したものと同様のものが挙げられる。
【0074】
中でも、好ましい具体的なX
5は、
−CH
2O(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3−、
−CH
2O(CH
2)
6−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
2Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
3Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
10Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
20Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2−
−CH
2OCH
2(CH
2)
7CH
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2OCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
3−、
−(CH
2)
2−、
−(CH
2)
3−、
−(CH
2)
4−、
−(CH
2)
6−、
−CONH−(CH
2)
3−、
−CON(CH
3)−(CH
2)
3−、
−CON(Ph)−(CH
2)
3−(式中、Phはフェニルを意味する)、
−CONH−(CH
2)
6−、
−CON(CH
3)−(CH
2)
6−、
−CON(Ph)−(CH
2)
6−(式中、Phはフェニルを意味する)、
−CONH−(CH
2)
2NH(CH
2)
3−、
−CONH−(CH
2)
6NH(CH
2)
3−、
−CH
2O−CONH−(CH
2)
3−、
−CH
2O−CONH−(CH
2)
6−、
−S−(CH
2)
3−、
−(CH
2)
2S(CH
2)
3−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
2Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
3Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
10Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
20Si(CH
3)
2(CH
2)
2−
−C(O)O−(CH
2)
3−、
−C(O)O−(CH
2)
6−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−CH(CH
3)−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−(CH
2)
3−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−CH(CH
3)−CH
2−、
【化14】
などが挙げられる。
【0075】
好ましい式(B1)および(B2)で示される化合物は、下記式(B1’)および(B2’):
[式中:
PFPEは、それぞれ独立して、式:
−(OC
4F
8)
a−(OC
3F
6)
b−(OC
2F
4)
c−(OCF
2)
d−
(式中、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0〜200の整数であって、a、b、cおよびdの和は少なくとも1であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し;
R
1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜22のアルキル基を表し;
R
2は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
nは、0〜2の整数であり、好ましくは0であり;
X
5は、−CH
2O(CH
2)
2−、−CH
2O(CH
2)
3−または−CH
2O(CH
2)
6−である]
で表される化合物である。
【0076】
式(C1)および(C2):
【化15】
【0077】
上記式(C1)および(C2)中、RfおよびPFPEは、上記式(A1)および(A2)に関する記載と同意義である。
【0078】
上記式中、X
7は、それぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表す。当該X
7は、式(C1)および(C2)で表される化合物において、主に撥水性および表面滑り性等を提供するパーフルオロポリエーテル部(Rf−PFPE部または−PFPE−部)と、基材との結合能を提供するシラン部(具体的には、−SiR
akR
blR
cm基)とを連結するリンカーと解される。従って、当該X
7は、式(C1)および(C2)で表される化合物が安定に存在し得るものであれば、いずれの有機基であってもよい。
【0079】
上記式中のγは、1〜9の整数であり、γ’は、1〜9の整数である。これらγおよびγ’は、X
7の価数に応じて決定され、式(C1)において、γおよびγ’の和は、X
7の価数と同じである。例えば、X
7が10価の有機基である場合、γおよびγ’の和は10であり、例えばγが9かつγ’が1、γが5かつγ’が5、またはγが1かつγ’が9となり得る。また、X
7が2価の有機基である場合、γおよびγ’は1である。式(C1)において、γはX
7の価数の値から1を引いた値である。
【0080】
上記X
7は、好ましくは2〜7価、より好ましくは2〜4価、さらに好ましくは2価の有機基である。
【0081】
一の態様において、X
7は2〜4価の有機基であり、γは1〜3であり、γ’は1である。
【0082】
別の態様において、X
7は2価の有機基であり、γは1であり、γ’は1である。この場合、式(C1)および(C2)は、下記式(C1’)および(C2’)で表される。
【化16】
【0083】
上記X
7の例としては、特に限定するものではないが、例えば、X
1に関して記載したものと同様のものが挙げられる。
【0084】
中でも、好ましい具体的なX
5は、−CH
2O(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3−、
−CH
2O(CH
2)
6−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
2Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
3Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
10Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
20Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2−
−CH
2OCH
2(CH
2)
7CH
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2OCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
3−、
−(CH
2)
2−、
−(CH
2)
3−、
−(CH
2)
4−、
−(CH
2)
6−、
−CONH−(CH
2)
3−、
−CON(CH
3)−(CH
2)
3−、
−CON(Ph)−(CH
2)
3−(式中、Phはフェニルを意味する)、
−CONH−(CH
2)
6−、
−CON(CH
3)−(CH
2)
6−、
−CON(Ph)−(CH
2)
6−(式中、Phはフェニルを意味する)、
−CONH−(CH
2)
2NH(CH
2)
3−、
−CONH−(CH
2)
6NH(CH
2)
3−、
−CH
2O−CONH−(CH
2)
3−、
−CH
2O−CONH−(CH
2)
6−、
−S−(CH
2)
3−、
−(CH
2)
2S(CH
2)
3−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
2Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
3Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
10Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
20Si(CH
3)
2(CH
2)
2−
−C(O)O−(CH
2)
3−、
−C(O)O−(CH
2)
6−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−CH(CH
3)−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−(CH
2)
3−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−CH(CH
3)−CH
2−、
【化17】
などが挙げられる。
【0085】
上記式中、R
aは、各出現においてそれぞれ独立して、−Z−SiR
71pR
72qR
73rを表す。
【0086】
式中、Zは、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表す。
【0087】
上記Zは、好ましくは、2価の有機基であり、式(C1)または式(C2)における分子主鎖の末端のSi原子(R
aが結合しているSi原子)とシロキサン結合を形成するものを含まない。
【0088】
上記Zは、好ましくは、C
1−6アルキレン基、−(CH
2)
g−O−(CH
2)
h−(式中、gは、1〜6の整数であり、hは、1〜6の整数である)または、−フェニレン−(CH
2)
i−(式中、iは、0〜6の整数である)であり、より好ましくはC
1−3アルキレン基である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基、およびC
2−6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0089】
式中、R
71は、各出現においてそれぞれ独立して、R
a’を表す。R
a’は、R
aと同意義である。
【0090】
R
a中、Z基を介して直鎖状に連結されるSiは最大で5個である。即ち、上記R
aにおいて、R
71が少なくとも1つ存在する場合、R
a中にZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子が2個以上存在するが、かかるZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数は最大で5個である。なお、「R
a中のZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数」とは、R
a中において直鎖状に連結される−Z−Si−の繰り返し数と等しくなる。
【0091】
例えば、下記にR
a中においてZ基を介してSi原子が連結された一例を示す。
【化18】
【0092】
上記式において、*は、主鎖のSiに結合する部位を意味し、…は、ZSi以外の所定の基が結合していること、即ち、Si原子の3本の結合手がすべて…である場合、ZSiの繰り返しの終了箇所を意味する。また、Siの右肩の数字は、*から数えたZ基を介して直鎖状に連結されたSiの出現数を意味する。即ち、Si
2でZSi繰り返しが終了している鎖は「R
a中のZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数」が2個であり、同様に、Si
3、Si
4およびSi
5でZSi繰り返しが終了している鎖は、それぞれ、「R
a中のZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数」が3、4および5個である。なお、上記の式から明らかなように、R
a中には、ZSi鎖が複数存在するが、これらはすべて同じ長さである必要はなく、それぞれ任意の長さであってもよい。
【0093】
好ましい態様において、下記に示すように、「R
a中のZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数」は、すべての鎖において、1個(左式)または2個(右式)である。
【化19】
【0094】
一の態様において、R
a中のZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数は1個または2個、好ましくは1個である。
【0095】
式中、R
72は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表す。
【0096】
上記「加水分解可能な基」とは、本明細書において用いられる場合、加水分解反応を受け得る基を意味する。加水分解可能な基の例としては、−OR、−OCOR、−O−N=C(R)
2、−N(R)
2、−NHR、ハロゲン(これら式中、Rは、置換または非置換の炭素数1〜4のアルキル基を示す)などが挙げられ、好ましくは−OR(アルコキシ基)である。Rの例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が含まれる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。水酸基は、特に限定されないが、加水分解可能な基が加水分解して生じたものであってよい。
【0097】
好ましくは、R
72は、−OR(式中、Rは、置換または非置換のC
1−3アルキル基、より好ましくはメチル基を表す)である。
【0098】
式中、R
73は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表す。該低級アルキル基は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0099】
式中、pは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;qは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;rは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数である。ただし、p、qおよびrの和は3である。
【0100】
好ましい態様において、R
a中の末端のR
a’(R
a’が存在しない場合、R
a)において、上記qは、好ましくは2以上、例えば2または3であり、より好ましくは3である。
【0101】
上記式(C1)および(C2)においては、少なくとも1つのR
72が存在する。
【0102】
上記式中、R
bは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表す。
【0103】
上記R
bは、好ましくは、水酸基、−OR、−OCOR、−O−N=C(R)
2、−N(R)
2、−NHR、ハロゲン(これら式中、Rは、置換または非置換の炭素数1〜4のアルキル基を示す)であり、好ましくは−ORである。Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が含まれる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。水酸基は、特に限定されないが、加水分解可能な基が加水分解して生じたものであってよい。より好ましくは、R
cは、−OR(式中、Rは、置換または非置換のC
1−3アルキル基、より好ましくはメチル基を表す)である。
【0104】
上記式中、R
cは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表す。該低級アルキル基は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0105】
式中、kは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;lは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;mは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数である。ただし、k、lおよびmの和は、3である。
【0106】
式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)および(C2)で表される化合物は、当業者であれば当該分野で公知の技術を用いて適宜製造することができる。
【0107】
例えば、式(A1)および(A2)で表される化合物は、特許文献1に記載の方法により合成することができる。
【0108】
例えば、式(B1)および(B2)で表される化合物は、特許文献2に記載の方法により合成することができる。
【0109】
例えば、式(C1)および(C2)で表される化合物は、特開2014−218639号に記載の方法により合成することができる。
【0110】
本発明の表面処理剤に含まれるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物の数平均分子量は、好ましくは5,000以上、より好ましくは6,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは30,000以下、さらに好ましくは10,000以下である。
【0111】
本発明の表面処理剤に含まれるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物におけるPFPE部分の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、好ましくは4,000〜30,000、より好ましくは5,000〜10,000であり得る。
【0112】
本発明において、「数平均分子量」は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)分析により測定される。
【0113】
本発明の表面処理剤は、さらに、下記式(S):
SiR
51nR
614−n (S)
で表される少なくとも1種のシラン化合物を含む表面処理剤を含む。
【0114】
R
51は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜20、好ましくは1〜10の有機基であり得る。また、R
51のうち2つのR
51は、=CR
572を構成してもよい。
【0115】
R
57は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜20の有機基であり、好ましくは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖であっても分枝鎖であってもよく、炭素数1〜3のアルキル基、例えばメチル基、エチル基またはプロピル基が好ましく、メチル基がより好ましい。R
57は、より好ましくは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基である。
【0116】
一の態様において、R
51は、それぞれ独立して、式:
R
52−R
53−R
54−R
55−
で表される基である。
【0117】
式中、R
52は、CH
3−、CH
2=CR
58−、NR
582−、SR
58−、
【化20】
である。
【0118】
hおよびiは、それぞれ独立して、0〜3の整数であり、好ましくはhおよびiは1である。R
58は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、好ましくは水素原子またはメチル基である。
【0119】
R
53は、単結合または炭素数1〜6のアルキレン基である。かかる炭素数1〜6のアルキレン基は、直鎖でも分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。好ましい炭素数1〜6のアルキレン基は、−CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH
2−または−CH
2−である。
【0120】
R
54は、単結合、−O−、−CO−、−O−CO−、−CO−O−、−NR
56−、−NR
56−CO−または−NR
56−CO−である。
【0121】
R
56は、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基であり、より好ましくは水素原子またはメチル基である。
【0122】
R
55は、単結合または炭素数1〜6のアルキレン基である。かかる炭素数1〜6のアルキレン基は、直鎖でも分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。好ましい炭素数1〜6のアルキレン基は、−CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH
2−または−CH
2−である。
【0123】
好ましい態様において、R
51は、炭素数1〜6のアルキル基(好ましくはエチル基またはメチル基、より好ましくはメチル基)、CH
2=CH−、HSCH
2CH
2CH
2、H
2NCH
2CH
2NHCH
2CH
2CH
2、CH
2=C(CH
3)C(O)OCH
2CH
2CH
2、
【化21】
である。
【0124】
上記式中、R
61は、それぞれ独立して、加水分解性基である。かかる加水分解性基としては、特に限定されないが、−OR
62、−OCOR
62、−O−N=CR
622、−ONR
2、−NR
622または−NR
62−CO−R
62が挙げられる。
【0125】
R
62は、水素原子または炭素数1〜6個のアルキル基である。かかる炭素数1〜6個のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、例えばメチル基、エチル基またはアルキル基である。R
62は、好ましくは、メチル基またはエチル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0126】
上記式中、nは0〜3の整数であり、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。
【0127】
式(S)で表されるシラン化合物の例としては、特に限定されないが、例えば、下記化合物が挙げられる:
Si(OC
2H
5)
4、
CH
2=CHSi(OCH
3)
3、
CH
2=CHCH
2Si(OCH
3)
3、
HSCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3、
H
2NCH
2CH
2NHCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3、
H
2NCH
2CH
2NHCH
2CH
2CH
2Si(CH
3)(OCH
3)
2、
CH
2=C(CH
3)C(O)OCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3、
CH
2=C(CH
3)C(O)OCH
2CH
2CH
2Si(OCH
2CH
2OCH
2)
3、
【化22】
【0128】
本発明の表面処理剤は、撥水性、撥油性、防汚性、防水性および高い摩擦耐久性を基材に対して付与することができ、特に限定されるものではないが、防汚性コーティング剤または防水性コーティング剤として好適に使用され得る。
【0129】
一の態様において、本発明の表面処理剤中、(1)式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)および(C2)のいずれかで表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物(以下、「パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物(1)」ともいう)と、(2)式(S)で表される含フッ素化合物(以下、「シラン化合物(2)」ともいう)との質量比(それぞれ、2種以上の場合にはそれらの合計、以下も同様)は、特に限定されないが、好ましくは10:1〜100000:1であり、より好ましくは100:1〜10000:1である。パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物(1)の割合を大きくすることにより、撥水性、撥油性等の機能をより高めることができ、シラン化合物(2)の割合を大きくすることにより、保存安定性をより向上させることができる。
【0130】
本発明の表面処理剤は、溶媒を含んでいてもよい。このような溶媒としては、特に限定するものではないが、含フッ素有機溶媒が好ましい。
【0131】
上記含フッ素有機溶媒としては、例えば:
パーフルオロカーボン:パーフルオロヘキサン、パーフルオロオクタン、パーフルオロジメチルシクロヘキサン、パーフルオロデカン
ハイドロフルオロカーボン:1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(ゼオローラH(商品名))、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタン(アサヒクリンAC6000(商品名))、CF
3CH
2CF
2CH
3、CF
3CHFCHFC
2F
5、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン、フロン134a、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン
ハイドロクロロフルオロカーボン:HCFC−225(アサヒクリンAK−225(商品名)等)、CF
3CF
2CHCl
2、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、1,2−ジクロロ−1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,1,2−トリクロロ―3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン
ハイドロフルオロエーテル:C
4F
9OCH
3(例えば、ノベックHFE−7100(商品名))、C
4F
9OC
2H
5(例えば、ノベックHFE−7200(商品名))、CF
3CH
2OCF
2CHF
2
パーフルオロアルキルエーテル:パーフルオロブチルテトラヒドロフラン
パーフルオロアルキルアミン:パーフルオロトリエチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロトリブチルアミン
含フッ素アルコール:パーフルオロアルキルエタノール、トリフルオロエタノール、HCF
2CF
2CH
2OH、ペンタフルオロプロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール
パーフルオロポリエーテル:クライトックス(商品名)、デムナム(商品名)、フォンブリン(商品名)等
パーフルオロアルキルエチレン
その他:パーフルオロアルキルブロミド、パーフルオロアルキルヨージド、メタクリル酸2−(パーフルオロアルキル)エチル、
アクリル酸2−(パーフルオロアルキル)エチル、ヘキサフルオロプロペンオリゴマー、キシレンヘキサフルオリド、
メチルペンタデカフルオロヘプチルケトン
からなる群から選択される溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、単独で、または、2種以上の混合物として用いることができる。
【0132】
中でも、ハイドロフルオロエーテルが、シラン化合物(2)に対する溶解度が高い点で好ましい。
【0133】
式(S)で表されるシラン化合物は、特に限定されないが、表面処理剤全体中、0.0001質量%〜1質量%、好ましくは0.001質量%〜0.1質量%、より好ましくは0.002質量%〜0.1質量%の濃度で存在する。このような濃度で存在することにより、保存安定性をより向上させることができる。
【0134】
本発明の表面処理剤は、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物(1)およびシラン化合物(2)に加え、他の成分を含んでいてもよい。かかる他の成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、含フッ素オイルとして理解され得る(非反応性の)フルオロポリエーテル化合物、好ましくはパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物(以下、「含フッ素オイル」と言う)、シリコーンオイルとして理解され得る(非反応性の)シリコーン化合物(以下、「シリコーンオイル」と言う)、触媒などが挙げられる。
【0135】
上記含フッ素オイルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の一般式(3)で表される化合物(パーフルオロ(ポリ)エーテル化合物)が挙げられる。
Rf
1−(OC
4F
8)
a’−(OC
3F
6)
b’−(OC
2F
4)
c’−(OCF
2)
d’−Rf
2 ・・・(3)
式中、Rf
1は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1−16のアルキル基(好ましくは、C
1―16のパーフルオロアルキル基)を表し、Rf
2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1−16のアルキル基(好ましくは、C
1−16のパーフルオロアルキル基)、フッ素原子または水素原子を表し、Rf
1およびRf
2は、より好ましくは、それぞれ独立して、C
1−3のパーフルオロアルキル基である。
a’、b’、c’およびd’は、ポリマーの主骨格を構成するパーフルオロ(ポリ)エーテルの4種の繰り返し単位数をそれぞれ表し、互いに独立して0以上300以下の整数であって、a’、b’、c’およびd’の和は少なくとも1、好ましくは1〜300、より好ましくは20〜300である。添字a’、b’、c’またはd’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。これら繰り返し単位のうち、−(OC
4F
8)−は、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF(CF
3)CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF(CF
3))−、−(OC(CF
3)
2CF
2)−、−(OCF
2C(CF
3)
2)−、−(OCF(CF
3)CF(CF
3))−、−(OCF(C
2F
5)CF
2)−および−(OCF
2CF(C
2F
5))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−である。−(OC
3F
6)−は、−(OCF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2)−および−(OCF
2CF(CF
3))−のいずれであってもよく、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2)−である。−(OC
2F
4)−は、−(OCF
2CF
2)−および−(OCF(CF
3))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2)−である。
【0136】
上記一般式(3)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物の例として、以下の一般式(3a)および(3b)のいずれかで示される化合物(1種または2種以上の混合物であってよい)が挙げられる。
Rf
1−(OCF
2CF
2CF
2)
b’’−Rf
2 ・・・(3a)
Rf
1−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)
a’’−(OCF
2CF
2CF
2)
b’’−(OCF
2CF
2)
c’’−(OCF
2)
d’’−Rf
2 ・・・(3b)
これら式中、Rf
1およびRf
2は上記の通りであり;式(3a)において、b’’は1以上100以下の整数であり;式(3b)において、a’’およびb’’は、それぞれ独立して0以上30以下、例えば1以上30以下の整数であり、c’’およびd’’はそれぞれ独立して1以上300以下の整数である。添字a’’、b’’、c’’、d’’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。
【0137】
上記含フッ素オイルは、1,000〜30,000の平均分子量を有していてよい。これにより、高い表面滑り性を得ることができる。
【0138】
本発明の表面処理剤中、含フッ素オイルは、上記パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物の合計100質量部(それぞれ、2種以上の場合にはこれらの合計、以下も同様)に対して、例えば0〜500質量部、好ましくは0〜400質量部、より好ましくは5〜300質量部で含まれ得る。
【0139】
一般式(3a)で示される化合物および一般式(3b)で示される化合物は、それぞれ単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。一般式(3a)で示される化合物よりも、一般式(3b)で示される化合物を用いるほうが、より高い表面滑り性が得られるので好ましい。これらを組み合わせて用いる場合、一般式(3a)で表される化合物と、一般式(3b)で表される化合物との質量比は、1:1〜1:30が好ましく、1:1〜1:10がより好ましい。かかる質量比によれば、表面滑り性と摩擦耐久性のバランスに優れた表面処理層を得ることができる。
【0140】
一の態様において、含フッ素オイルは、一般式(3b)で表される1種またはそれ以上の化合物を含む。かかる態様において、表面処理剤中のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物の合計と、式(3b)で表される化合物との質量比は、4:1〜1:4であることが好ましい。
【0141】
好ましい態様において、真空蒸着法により表面処理層を形成する場合には、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物の平均分子量よりも、含フッ素オイルの平均分子量を大きくしてもよい。このような平均分子量とすることにより、より優れた摩擦耐久性と表面滑り性を得ることができる。
【0142】
また、別の観点から、含フッ素オイルは、一般式Rf
3−F(式中、Rf
3はC
5−16パーフルオロアルキル基である。)で表される化合物であってよい。また、クロロトリフルオロエチレンオリゴマーであってもよい。Rf
3−Fで表される化合物およびクロロトリフルオロエチレンオリゴマーは、末端がC
1−16パーフルオロアルキル基である上記分子末端に炭素−炭素不飽和結合を有する含フッ素化合物で表される化合物と高い親和性が得られる点で好ましい。
【0143】
含フッ素オイルは、表面処理層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0144】
上記シリコーンオイルとしては、例えばシロキサン結合が2,000以下の直鎖状または環状のシリコーンオイルを用い得る。直鎖状のシリコーンオイルは、いわゆるストレートシリコーンオイルおよび変性シリコーンオイルであってよい。ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルを、アルキル、アラルキル、ポリエーテル、高級脂肪酸エステル、フルオロアルキル、アミノ、エポキシ、カルボキシル、アルコールなどにより変性したものが挙げられる。環状のシリコーンオイルは、例えば環状ジメチルシロキサンオイルなどが挙げられる。
【0145】
本発明の表面処理剤中、かかるシリコーンオイルは、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物の合計100質量部(2種以上の場合にはこれらの合計、以下も同様)に対して、例えば0〜300質量部、好ましくは0〜200質量部で含まれ得る。
【0146】
シリコーンオイルは、表面処理層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0147】
上記触媒としては、酸(例えば酢酸、トリフルオロ酢酸等)、塩基(例えばアンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等)、遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)等が挙げられる。
【0148】
触媒は、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物の加水分解および脱水縮合を促進し、表面処理層の形成を促進する。
【0149】
本発明の表面処理剤は、多孔質物質、例えば多孔質のセラミック材料、金属繊維、例えばスチールウールを綿状に固めたものに含浸させて、ペレットとすることができる。当該ペレットは、例えば、真空蒸着に用いることができる。
【0150】
次に、本発明の物品について説明する。
【0151】
本発明の物品は、基材と、該基材の表面に本発明の表面処理剤より形成された層(表面処理層)とを含む。この物品は、例えば以下のようにして製造できる。
【0152】
まず、基材を準備する。本発明に使用可能な基材は、例えばガラス、サファイアガラス、樹脂(天然または合成樹脂、例えば一般的なプラスチック材料であってよく、板状、フィルム、その他の形態であってよい)、金属(アルミニウム、銅、鉄等の金属単体または合金等の複合体であってよい)、セラミックス、半導体(シリコン、ゲルマニウム等)、繊維(織物、不織布等)、毛皮、皮革、木材、陶磁器、石材等、建築部材等、任意の適切な材料で構成され得る。好ましくは、基材は、ガラスまたはサファイアガラスである。
【0153】
上記ガラスとしては、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、クリスタルガラス、石英ガラスが好ましく、化学強化したソーダライムガラス、化学強化したアルカリアルミノケイ酸塩ガラス、および化学結合したホウ珪酸ガラスが特に好ましい。
樹脂としては、アクリル樹脂、ポリカーボネートが好ましい。
【0154】
例えば、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面を構成する材料は、光学部材用材料、例えばガラスまたは透明プラスチックなどであってよい。また、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面(最外層)に何らかの層(または膜)、例えばハードコート層や反射防止層などが形成されていてもよい。反射防止層には、単層反射防止層および多層反射防止層のいずれを使用してもよい。反射防止層に使用可能な無機物の例としては、SiO
2、SiO、ZrO
2、TiO
2、TiO、Ti
2O
3、Ti
2O
5、Al
2O
3、Ta
2O
5、CeO
2、MgO、Y
2O
3、SnO
2、MgF
2、WO
3などが挙げられる。これらの無機物は、単独で、またはこれらの2種以上を組み合わせて(例えば混合物として)使用してもよい。多層反射防止層とする場合、その最外層にはSiO
2および/またはSiOを用いることが好ましい。製造すべき物品が、タッチパネル用の光学ガラス部品である場合、透明電極、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛などを用いた薄膜を、基材(ガラス)の表面の一部に有していてもよい。また、基材は、その具体的仕様等に応じて、絶縁層、粘着層、保護層、装飾枠層(I−CON)、霧化膜層、ハードコーティング膜層、偏光フィルム、相位差フィルム、および液晶表示モジュールなどを有していてもよい。
【0155】
基材の形状は特に限定されない。また、表面処理層を形成すべき基材の表面領域は、基材表面の少なくとも一部であればよく、製造すべき物品の用途および具体的仕様等に応じて適宜決定され得る。
【0156】
かかる基材としては、少なくともその表面部分が、水酸基を元々有する材料から成るものであってよい。かかる材料としては、ガラスが挙げられ、また、表面に自然酸化膜または熱酸化膜が形成される金属(特に卑金属)、セラミックス、半導体等が挙げられる。あるいは、樹脂等のように、水酸基を有していても十分でない場合や、水酸基を元々有していない場合には、基材に何らかの前処理を施すことにより、基材の表面に水酸基を導入したり、増加させたりすることができる。かかる前処理の例としては、プラズマ処理(例えばコロナ放電)や、イオンビーム照射が挙げられる。プラズマ処理は、基材表面に水酸基を導入または増加させ得ると共に、基材表面を清浄化する(異物等を除去する)ためにも好適に利用され得る。また、かかる前処理の別の例としては、炭素−炭素不飽和結合基を有する界面吸着剤をLB法(ラングミュア−ブロジェット法)や化学吸着法等によって、基材表面に予め単分子膜の形態で形成し、その後、酸素や窒素等を含む雰囲気下にて不飽和結合を開裂する方法が挙げられる。
【0157】
またあるいは、かかる基材としては、少なくともその表面部分が、別の反応性基、例えばSi−H基を1つ以上有するシリコーン化合物や、アルコキシシランを含む材料から成るものであってもよい。
【0158】
次に、かかる基材の表面に、上記の本発明の表面処理剤の膜を形成し、この膜を必要に応じて後処理し、これにより、本発明の表面処理剤から表面処理層を形成する。
【0159】
本発明の表面処理剤の膜形成は、上記の表面処理剤を基材の表面に対して、該表面を被覆するように適用することによって実施できる。被覆方法は、特に限定されない。例えば、湿潤被覆法および乾燥被覆法を使用できる。
【0160】
湿潤被覆法の例としては、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティングおよび類似の方法が挙げられる。
【0161】
乾燥被覆法の例としては、蒸着(通常、真空蒸着)、スパッタリング、CVDおよび類似の方法が挙げられる。蒸着法(通常、真空蒸着法)の具体例としては、抵抗加熱、電子ビーム、マイクロ波等を用いた高周波加熱、イオンビームおよび類似の方法が挙げられる。CVD方法の具体例としては、プラズマ−CVD、光学CVD、熱CVDおよび類似の方法が挙げられる。
【0162】
更に、常圧プラズマ法による被覆も可能である。
【0163】
湿潤被覆法を使用する場合、本発明の表面処理剤は、溶媒で希釈されてから基材表面に適用され得る。本発明の表面処理剤の安定性および溶媒の揮発性の観点から、次の溶媒が好ましく使用される:C
5−12のパーフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサンおよびパーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン);ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、C
6F
13CH
2CH
3(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AC−6000)、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(例えば、日本ゼオン株式会社製のゼオローラ(登録商標)H);ハイドロフルオロカーボン(HFC)(例えば、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc));ハイドロクロロフルオロカーボン(例えば、HCFC−225(アサヒクリン(登録商標)AK225));ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(C
3F
7OCH
3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標名)7000)、パーフルオロブチルメチルエーテル(C
4F
9OCH
3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標名)7100)、パーフルオロブチルエチルエーテル(C
4F
9OC
2H
5)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標名)7200)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(C
2F
5CF(OCH
3)C
3F
7)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標名)7300)などのアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基およびアルキル基は直鎖または分枝状であってよい)、あるいはCF
3CH
2OCF
2CHF
2(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AE−3000))、1,2−ジクロロ−1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製のバートレル(登録商標)サイオン)など。これらの溶媒は、単独で、または、2種以上を組み合わせて混合物として用いることができる。さらに、例えば、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物(1)およびシラン化合物(2)の溶解性を調整する等のために、別の溶媒と混合することもできる。
【0164】
乾燥被覆法を使用する場合、本発明の表面処理剤は、そのまま乾燥被覆法に付してもよく、または、上記した溶媒で希釈してから乾燥被覆法に付してもよい。
【0165】
膜形成は、膜中で本発明の表面処理剤が、加水分解および脱水縮合のための触媒と共に存在するように実施することが好ましい。簡便には、湿潤被覆法による場合、本発明の表面処理剤を溶媒で希釈した後、基材表面に適用する直前に、本発明の表面処理剤の希釈液に触媒を添加してよい。乾燥被覆法による場合には、触媒添加した本発明の表面処理剤をそのまま蒸着(通常、真空蒸着)処理するか、あるいは鉄や銅などの金属多孔体に、触媒添加した本発明の表面処理剤を含浸させたペレット状物質を用いて蒸着(通常、真空蒸着)処理をしてもよい。
【0166】
触媒には、任意の適切な酸または塩基を使用できる。酸触媒としては、例えば、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸などを使用できる。また、塩基触媒としては、例えばアンモニア、有機アミン類などを使用できる。
【0167】
次に、必要に応じて、膜を後処理する。この後処理は、特に限定されないが、例えば、水分供給および乾燥加熱を逐次的に実施するものであってよく、より詳細には、以下のようにして実施してよい。
【0168】
上記のようにして基材表面に本発明の表面処理剤を膜形成した後、この膜(以下、「前駆体膜」とも言う)に水分を供給する。水分の供給方法は、特に限定されず、例えば、前駆体膜(および基材)と周囲雰囲気との温度差による結露や、水蒸気(スチーム)の吹付けなどの方法を使用してよい。
【0169】
前駆体膜に水分が供給されると、本発明の表面処理剤中のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物のSiに結合した加水分解可能な基に水が作用し、当該化合物を速やかに加水分解させることができると考えられる。
【0170】
水分の供給は、例えば0〜250℃、好ましくは60℃以上、さらに好ましくは100℃以上とし、好ましくは180℃以下、さらに好ましくは150℃以下の雰囲気下にて実施し得る。このような温度範囲において水分を供給することにより、加水分解を進行させることが可能である。このときの圧力は特に限定されないが、簡便には常圧とし得る。
【0171】
次に、該前駆体膜を該基材の表面で、60℃を超える乾燥雰囲気下にて加熱する。乾燥加熱方法は、特に限定されず、前駆体膜を基材と共に、60℃を超え、好ましくは100℃を超える温度であって、例えば250℃以下、好ましくは180℃以下の温度で、かつ不飽和水蒸気圧の雰囲気下に配置すればよい。このときの圧力は特に限定されないが、簡便には常圧とし得る。
【0172】
このような雰囲気下では、本発明のPFPE含有シラン化合物間では、加水分解後のSiに結合した基同士が速やかに脱水縮合する。また、かかる化合物と基材との間では、当該化合物の加水分解後のSiに結合した基と、基材表面に存在する反応性基との間で速やかに反応し、基材表面に存在する反応性基が水酸基である場合には脱水縮合する。その結果、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と基材との間で結合が形成される。
【0173】
上記の水分供給および乾燥加熱は、過熱水蒸気を用いることにより連続的に実施してもよい。
【0174】
過熱水蒸気は、飽和水蒸気を沸点より高い温度に加熱して得られるガスであって、常圧下では、100℃を超え、一般的には500℃以下、例えば300℃以下の温度で、かつ、沸点を超える温度への加熱により不飽和水蒸気圧となったガスである。本発明では、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物の分解を抑制する観点から、好ましくは、250℃以下、好ましくは180℃以下の過熱水蒸気が水分供給および乾燥加熱に用いられる。前駆体膜を形成した基材を過熱水蒸気に曝すと、まず、過熱水蒸気と、比較的低温の前駆体膜との間の温度差により、前駆体膜表面にて結露が生じ、これによって前駆体膜に水分が供給される。やがて、過熱水蒸気と前駆体膜との間の温度差が小さくなるにつれて、前駆体膜表面の水分は過熱水蒸気による乾燥雰囲気中で気化し、前駆体膜表面の水分量が次第に低下する。前駆体膜表面の水分量が低下している間、即ち、前駆体膜が乾燥雰囲気下にある間、基材の表面の前駆体膜は過熱水蒸気と接触することによって、この過熱水蒸気の温度(常圧下では100℃を超える温度)に加熱されることとなる。従って、過熱水蒸気を用いれば、前駆体膜を形成した基材を過熱水蒸気に曝すだけで、水分供給と乾燥加熱とを連続的に実施することができる。
【0175】
以上のようにして後処理が実施され得る。かかる後処理は、摩擦耐久性を一層向上させるために実施され得るが、本発明の物品を製造するのに必須でないことに留意されたい。例えば、本発明の表面処理剤を基材表面に適用した後、そのまま静置しておくだけでもよい。
【0176】
上記のようにして、基材の表面に、本発明の表面処理剤の膜に由来する表面処理層が形成され、本発明の物品が製造される。これにより得られる表面処理層は、高い摩擦耐久性を有する。また、この表面処理層は、高い摩擦耐久性に加えて、使用する表面処理剤の組成にもよるが、撥水性、撥油性、防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)、防水性(電子部品等への水の浸入を防止する)、表面滑り性(または潤滑性、例えば指紋等の汚れの拭き取り性や、指に対する優れた触感)などを有し得、機能性薄膜として好適に利用され得る。
【0177】
本発明によって得られる表面処理層を有する物品は、特に限定されるものではないが、光学部材であり得る。光学部材としては、例えば、下記の光学部材が挙げられる:例えば、陰極線管(CRT:例、TV、パソコンモニター)、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機薄膜ELドットマトリクスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)などのディスプレイまたはそれらのディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板、あるいはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの;眼鏡などのレンズ;携帯電話、携帯情報端末などの機器のタッチパネルシート;ブルーレイ(Blu−ray(登録商標))ディスク、DVDディスク、CD−R、MOなどの光ディスクのディスク面;光ファイバー;時計の表示面など。
【0178】
本発明によって得られる表面処理層を有する他の物品は、窯業製品、塗面、布製品、皮革製品、医療品およびプラスターなどを挙げることができる
【0179】
また、本発明によって得られる表面処理層を有する他の物品は、医療機器または医療材料であってもよい。
【0180】
表面処理層の厚さは、特に限定されない。光学部材の場合、表面処理層の厚さは、1〜50nm、好ましくは1〜30nm、より好ましくは1〜15nmの範囲であることが、光学性能、表面滑り性、摩擦耐久性および防汚性の点から好ましい。
【0181】
以上、本発明の表面処理剤を使用して得られる物品について詳述した。なお、本発明の表面処理剤の用途、使用方法ないし物品の製造方法などは、上記で例示したものに限定されない。
【実施例】
【0182】
本発明の表面処理剤について、以下の実施例を通じてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、以下に示される化学式はすべて平均組成を示す。
【0183】
実施例
パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物1として、以下の3種の化合物を準備した。
化合物A:
【化23】
(式中、lは20〜30の整数であり、mは1〜6の整数であり、平均分子量は約4000である(
19F−NMR値)。)
化合物B:
【化24】
(式中、lは20〜30の整数であり、平均分子量は約4000である(
19F−NMR値)。)
化合物C:
【化25】
(式中、Rfaは−CF
2(OC
2F
4)
p(OCF
2)
q−OCF
2−であり、p/qは0.9であり、p+qは約45であり、nは3である。尚、添字pまたはqを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。)
【0184】
また、式(S)で表されるシラン化合物2として、以下の3種の化合物を準備した。
化合物O:CH
2=CHSi(OCH
3)
3
化合物P:CH
2=CHSi(OCOCH
3)
3
化合物Q:CH
2=CHCH
2Si(OCH
3)
3
【0185】
上記化合物1および2を、表1に示す割合で混合して、No.1〜No.18の表面処理組成物を得た。この時、希釈溶剤としては、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標名)7200を使用した。尚、No.1〜15は本発明の実施例であり、No.16〜18は比較例である。
【0186】
【表1】
【0187】
上記No.1〜No.18の表面処理組成物20gをサンプル瓶に入れ、それぞれイオン交換水0.1gを添加し、70℃±5℃の恒温機に7日間保存したのち25℃に戻し、外観を目視で観察した。結果を表2に示す。
【0188】
【表2】
【0189】
上記の結果から明らかなように、式(S)で表されるシラン化合物を添加した本発明の表面処理組成物は、式(S)で表されるシラン化合物を含まない表面処理組成物と比較して、保存安定性が向上することが確認された。