(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を説明する前に、以下の用語を説明する。まず、粘着シート、粘着シートおよび粘着フィルムは同義語である。次に(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートを含む。またモノマーとは、エチレン性不飽和単量体を意味する。また、被着体は、粘着シートを貼り付ける相手方をいう。
【0012】
本発明の再剥離型粘着剤は、粘着剤層を備えた粘着シートに使用するものであり、
前記再剥離型粘着剤は、炭素数1または2のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(M)を10〜30重量%含むモノマー混合物を溶液重合してなる重合体(P)を含み、
前記重合体(P)の重量平均分子量と数平均分子量との比が、重量平均分子量/数平均分子量=5〜12で、
前記粘着剤層は、ステンレス(A)に対する粘着力(f
a)と、ポリプロピレン(B)に対する粘着力(f
b)との差が2N/25mm以下である。
【0013】
本発明の再剥離型粘着剤を使用して得た再剥離型粘着シートは、ステンレス板等の高極性被着体およびポリオレフィン等の低極性被着体について、ステンレス(A)に対する粘着力(f
a)と、ポリプロピレン(B)に対する粘着力(f
b)との差が2.0N/25mm以下と粘着力が被着体の極性に依存し難い。さらに前記粘着力は、重量平均分子量と数平均分子量との比が、重量平均分子量/数平均分子量=5〜12の重合体(P)を含むことで得られる。すなわち本発明の再剥離型粘着剤は、ステンレスに対する粘着力とポリオレフィン(特にポリプロピレン)に対する粘着力の格差が少ない(以下、被着体間格差という)ため、良好な再剥離性が得られる
【0014】
本発明において重合体(P)は、炭素数1または2のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(M)を10〜30重量%含むモノマー混合物を溶液重合することで得る。なお、炭素数1または2のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(M)のより好ましい割合は15〜25重量%である。
【0015】
炭素数1または2のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(M)は、例えば、メチル(メタ)アクレート、エチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0016】
炭素数1または2のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(M)と共に重合することができる他のモノマーは、以下の通りである。
n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレートおよびイソデシル(メタ)アクリレート等の、炭素数3以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;
ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のアミド基含有モノマー;
グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;
アミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;
(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等のリン酸基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有モノマーおよびその無水物;
(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン等の複素環含有モノマー;
2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート等のフッ素原子含有モノマー;
メトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびそのアルキレンオキサイド付加物;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のアリールオキシアルキル(メタ)アクリレートおよびそのアルキレンオキサイド付加物;
ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族系(メタ)アクリレート;
スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族系ビニルモノマー;
酢酸ビニル、酢酸プロピル等のビニルエステル系モノマー;
その他、ビニルエーテル化合物、α−オレフィン等が挙げられる。
【0017】
前記他のモノマーの中で2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートを使用すると高極性被着体の対する粘着力をより抑制できるため、再剥離性がより向上する。2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートは、モノマー混合物中に60〜90重量%含むことが好ましい。
【0018】
また前記他のモノマーの中でエポキシ基を有するモノマーおよびアミド基を有するモノマーも好ましい。エポキシ基を有するモノマーを使用して得られた重合体は内部架橋が可能であるため高い凝集力が得られる。また、アミド基を有するモノマーを使用して得られた重合体は、アミド基が架橋を促進する効果があるため高い凝集力が得られる。これらのモノマーの使用により凝集力が高く再剥離性をより向上できる。
なおエポキシ基を有するモノマーやアミド基を有するモノマーの好ましい使用量は0.1〜1重量%である。
【0019】
重合体(P)は、溶液重合で合成する。具体的には、任意の有機溶媒およびラジカル重合開始剤の存在下、モノマー混合物をラジカル重合する。重合開始剤は、公知の過酸化物、およびアゾ化合物を適宜選択して使用できる。
【0020】
重合体(P)は、2つ以上の重合体の混合物であっても良い。複数の重合体が混在することによって重合体(P)が形成されている場合、重合に使用したモノマーの比率の計算は次の手法による。
具体的には、各モノマーの比率は、各重合体を構成するすべてのモノマーの合計を基準として算定する。
例えば、メチルメタクリレート:10重量%、2−エチルヘキシルアクリレート:90重量%からなる重合体(A1)40重量部と、メチルメタクリレート:30重量%、2−エチルヘキシルアクリレート:70重量%からなる重合体(A2)60重量部との混合物によって重合体(P1)を形成している場合、重合体(P1)のメチルメタクリレートの割合は下記のように算出される。
(40×0.1+60×0.3)×100/100=22重量%
また、メチルメタクリレート:6重量%、2−エチルヘキシルアクリレート:94重量%からなる重合体(B1)70重量部と、メチルメタクリレート:40重量%、2−エチルヘキシルアクリレート:60重量%からなる重合体(B2)30重量部との混合物によって重合体(P2)を形成している場合、重合体(P2)のメチルメタクリレートの割合は下記のように算出される。
(70×0.06+30×0.4)×100/100=16.2重量%
上記の重合体(P1)および(P2)については、共に、「炭素数1または2のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを10〜30重量%」という、本発明の特定を満たすことになる。
仮に、単独で当該要件を満たす重合体(C1)と、単独で当該要件を満たさない重合体(C2)との混合物によって重合体(P3)を形成しており、上記に則した計算の結果、重合体(P3)として「炭素数1または2のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを10〜30重量%」に該当しない場合には、例え重合体(C1)を含有していたとしても、重合体(P3)は本発明における「重合体(P)」には該当しない。
【0021】
重合体(P)の重量平均分子量は、40〜120万であることが好ましく、60〜100万がより好ましい。重量平均分子量が40〜120万の範囲にあることで良好な凝集力が得易くなる。なお、重量平均分子量および数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による標準ポリスチレン換算の値である。
【0022】
重合体(P)は、重量平均分子量と数平均分子量との比が重量平均分子量/数平均分子量=5〜12であり、7〜10がより好ましい。重量平均分子量と数平均分子量との比が上記範囲にあれば、被着体に対する粘着剤層の濡れの向上、および凝集力が向上するため粘着力の被着体間格差がより減少する。
【0023】
重量平均分子量と数平均分子量との比が前記範囲の重合体(P)を得る方法について以下、(1)および(2)と例を挙げて説明する。しかし本発明が以下の例に限定されないことはいうまでもない。
例(1) 2つ以上の滴下槽に、互いに組成の異なるモノマーないしはモノマー混合物をそれぞれ仕込んでおき、それぞれの滴下槽から反応槽へ連続的にモノマーを供給して重合をおこなう。ただし、モノマーの供給速度を同一にせず、例えば2つの滴下槽(仮にそれぞれ「滴下槽(1)、滴下槽(2)」とする。)を使用する場合であれば、滴下槽(1)については、初めは反応槽への供給速度を遅くしておき、時間の経過と共に供給速度が早くなるように調整し、一方、滴下槽(2)については、初めは反応槽への供給速度を速くしておき、時間の経過と共に供給速度が遅くなるように調整しながら重合をおこなう。
あるいは、滴下槽(1)についてはモノマー供給速度を一定にしておき、滴下槽(2)
については、時間の経過と共に供給速度が早くなるように、または遅くなるように調整しながら重合をおこなう。
これらの方法によれば、重合の場に存在するモノマーの組成は刻々変化することになる。モノマーの重合性は、その組成に依存するため、生成する重合体の分子量は刻々と変化することになり、分子量分布の広い重合体を容易に得ることができる。
なお、上記例(1)では、あらかじめ反応槽にモノマーの一部を仕込んでおいてもよい。
【0024】
例(2) 平均分子量の異なる2種類以上の重合体をあらかじめ用意しておき、それらを混合することにより、重合体(P)を形成させる。この場合の重合体(P)のモノマー組成および平均分子量の取り扱いについは、前記したとおりである。
【0025】
本発明の再剥離型粘着剤は、硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤は、イソシアネート硬化剤、アジリジン硬化剤、エポキシ硬化剤、金属キレート硬化剤、カルボジイミド硬化剤等を用いることができるが、本発明においては、イソシアネート硬化剤またはアジリジン硬化剤が好ましく用いられる。硬化剤の使用量は、好ましくは重合体(P)100重量部に対して0.1〜2重量部である。
【0026】
本発明の再剥離型粘着剤は、必要に応じて他の樹脂、例えばポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などを含んでもよい。また、シランカップリング剤、粘着付与剤、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン等の充填剤、着色剤、軟化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、光安定剤、耐候安定剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、リン酸エステル等の添加剤を配合しても良い。
【0027】
本発明の再剥離型粘着シートは、基材、および前記再剥離型粘着剤を含む粘着剤層を備えている。
前記再剥離型粘着シートは、(1)剥離ライナーに再剥離型粘着剤を塗工して粘着剤層を形成した後、基材を貼り合わせる方法。または、(2)基材に再剥離型粘着剤を塗工して粘着剤層を形成した後、剥離ライナーを貼り合わせる方法で製造できる。前記(1)の方法で基材の代わりに剥離ライナーを貼り合わせるとキャスト粘着シートが製造できる。 また前記(2)の方法で、粘着剤層の形成後に基材の反対面の粘着剤層を形成すると両面粘着シートが製造できる。前記両面粘着シートの場合、一方の面に再剥離型粘着剤を使用し、他方の面に前記再剥離型粘着剤以外の粘着剤を使用しても良い。なお、粘着剤層は、再剥離型粘着シートを使用する直前まで剥離ライナーで保護されていることが通常である。また、本発明の再剥離型粘着シートは、再剥離用途に使用することが好ましいが、再剥離を必要としない用途に使用することを妨げない。
【0028】
再剥離型粘着剤の塗工は、例えばロールコーター法、コンマコーター法、リップコーター法、ダイコーター法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、グラビアコーター法等の公知の塗工方法が使用できる。塗工後は、熱風オーブン、赤外線ヒーター等で乾燥することができる。
【0029】
基材は、紙およびプラスチックフィルムが好ましい。プラスチックフィルムは、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリウレタンフィルム、ナイロンフィルム、ポリオレフィンフィルム等が挙げられる。
【0030】
粘着剤層の厚さは、通常0.1〜300μm程度であり、1〜100μmが好ましい。
【0031】
本発明の再剥離型粘着シートは、高極性被着体と低極性被着体に対して粘着力の格差が少ないことが特徴である。具体的には、高極性被着体であるステンレス(A)に対する粘着力(f
a)と、低極性被着体ポリプロピレン(B)に対する粘着力(f
b)との差が2N/25mm以下である。
【0032】
本発明の再剥離型粘着シートは、他の被着体としてポリ塩化ビニルも好適である。ポリ塩化ビニルの極性は、ステンレスとポリプロピレンとの間に位置しているので、ステンレスおよびポリプロピレンに対する再剥離性が良好であれば、ポリ塩化ビニルに対する再剥離性も良好となる。つまし、本発明の再剥離型粘着剤から形成される粘着剤層は、広範な種類の被着体に対して良好な再剥離性を示す。
【0033】
前記粘着力(f
a)は、1〜6N/25mmであることが好ましく、1〜3N/25mmがより好ましい。1〜6N/25mmであれば、粘着力が過剰にならず、被着体の極性によらず良好な再剥離性が得やすい。
【0034】
本発明の再剥離型粘着シートを使用する好ましい用途は、値札ラベル、キャンペーンラベル、ドラム缶ラベル、傷つき防止保護フィルム等の再剥離用途は元より、再剥離を必要としない用途でも使用できる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例によって、本発明をより具体的に説明する。なお例中、特に断りのない限り「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を表すものとする。また、表中の配合量は、重量部である。
また、「Mn」は数平均分子量を、「Mw」は重量平均分子量をそれぞれ表す。
【0036】
(合成例1)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に窒素雰囲気下、2−エチルヘキシルアクリレート50.0部、酢酸エチル50.0部、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(以下「AIBN」と記述する。)0.01部を仕込み、混合・溶解した。滴下装置1に2−エチルヘキシルアクリレート33.8部、酢酸エチル33.8部、AIBNを0.007部仕込み、滴下装置2にメチルアクリレート15.0部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.7部、メタアクリルアミド0.5部、酢酸エチル16.2部、AIBNを0.003部仕込み、それぞれ混合・溶解した。滴下装置1および2は同時に滴下することができ、また、滴下速度を任意に変えられる装置である。
反応容器中、撹拌しながら加熱を行い還流温度で重合反応の開始を確認後、滴下装置1および2からモノマー溶液の滴下を同時に開始した。滴下装置1については、滴下開始から30分で全量の1/2、次の30分で全量の1/4、次の1時間で残りの1/4、合計2時間で全量を滴下するよう、滴下速度を徐々に変えながら滴下を行なった。一方、滴下装置2については、滴下開始から1時間で全量の1/4、次の30分で全量の1/4、次の30分で全量の1/2、合計2時間で全量を滴下するよう、滴下速度を徐々に変えながら滴下を行なった。
滴下終了1時間後、AIBN 0.09部を反応容器に添加し6時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し酢酸エチル20.0部を加え、不揮発分46%、重量平均分子量が80万の重合体1の溶液を得た。
【0037】
(合成例2〜6)
モノマーの種類及び配合量を表1の記載に従った他は、合成例1と同様に行うことで合成例2〜6の重合体(重合体2〜6)を得た。
【0038】
(合成例7)
反応容器に窒素雰囲気下、2−エチルヘキシルアクリレート94.0部、メチルアクリレート5.0部、アクリル酸1.0部、酢酸エチル100.0部、AIBN0.01部を仕込み、混合・溶解した。反応容器中、撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、AIBN 0.03部を反応容器に添加し6時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し酢酸エチル20.0部を加え、重量平均分子量が83万の重合体7の溶液を得た。
【0039】
(合成例8〜10)
モノマーの種類及び配合量を表2の記載に従った他は、合成例7と同様に行うことで合成例8〜10の重合体(重合体8〜10)を得た。
【0040】
得られた重合体について、溶液の外観、数平均分子量、重量平均分子量を以下の方法に従って求めた。その結果を表1および表2に示す。
【0041】
<数平均分子量、重量平均分子量の測定>
平均分子量の測定は島津製作所製GPC「LC−GPCシステム」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、平均分子量はポリスチレン換算で行った。
・装置:島津製作所製、LC−GPCシステム「Prominence」
・カラム:東ソー(株)製GMHXL4本、東ソー(株)製HXL-H1本を直列に連結
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・カラム温度:40℃
・流量:1.0ml/min
【0042】
<溶液外観>
各重合体溶液の外観を目視で評価した。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
表1、2および3中の略号は、以下の通りである。
2EHA : 2-エチルヘキシルアクリレート
MA : メチルアクリレート
EA : エチルアクリレート
MMA : メチルメタクリレート
BA : n−ブチルアクリレート
AA : アクリル酸
GMA : グリシジルメタクリレート
HEA : 2−ヒドロキシエチルアクリレート
MAAm : メタアクリルアミド
【0046】
(ブレンド例1)
反応容器に窒素雰囲気下、合成例7の重合体7の溶液を不揮発分相当量で80部、合成例8の重合体8の溶液を不揮発分相当量で20部仕込み、40℃で30分攪拌し、重量平均分子量が75万の重合体(重合体11)の溶液を得た。
【0047】
(ブレンド例2〜5)
重合体の種類及び配合量を表3の記載に従った他は、ブレンド例1と同様に行うことでブレンド例2〜5の重合体(重合体12〜15)の溶液を得た。
【0048】
得られた重合体溶液について、溶液の外観、数平均分子量、重量平均分子量を上記と同様の方法に従って求めた。その結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
(合成例11)
容器1に2−エチルヘキシルアクリレート50.0部、水22.0部、反応性アニオン系乳化剤(第一工業製薬(株)製、商品名「アクアロンKH−10」)1.5部を配合した。また、容器2に2−エチルヘキシルアクリレート28.8部、水12.5部、アクアロンKH−10 0.86部を配合した。また、容器3にメチルアクリレート20.0部、アクリル酸1.0部、グリシジルメタクリレート0.2、水9.5部、アクアロンKH−10 0.64部を配合した後、ホモミキサーによりそれぞれ攪拌混合し、モノマーエマルションを調整した。
【0051】
次いで、滴下装置1に前記容器1の全量、重合開始剤(過硫酸アンモニウム)0.1部を仕込み、滴下装置2に前記容器2全量、過硫酸アンモニウム0.07部仕込み、滴下装置3に前記容器3全量、過硫酸アンモニウムを0.03部仕込み、それぞれ混合した。
反応容器中、水56.0部仕込み、80℃へ昇温後、過硫酸アンモニウム0.1部を仕込み、5分後に攪拌しながら滴下装置1からモノマー等を1時間かけて滴下した。
滴下装置1の滴下終了後、滴下装置2及び滴下装置3を2時間かけて同時滴下した。滴下装置2については、滴下開始から30分で全量の1/2、次の30分で全量の1/4、次の1時間で残りの1/4、合計2時間で全量を滴下するよう、滴下速度を徐々に変えながら滴下を行なった。一方、滴下装置3については、滴下開始から1時間で全量の1/4、次の30分で全量の1/4、次の30分で全量の1/2、合計2時間で全量を滴下するよう、滴下速度を徐々に変えながら滴下を行なった。滴下終了3時間後、30℃に冷却して、濃度10重量%のアンモニア水を加えてpH8に調整して重合体16のアクリルエマルション重合体水分散液(不揮発分51%)を得た。
【0052】
【表4】
【0053】
(実施例1)
合成例1で得られた重合体1の溶液中の重合体(不揮発分相当量)100部に対して、硬化剤としてコロネートL(トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、日本ポリウレタン社製)0.3部(不揮発分相当量)を配合し、更に溶剤として酢酸エチルを加えて不揮発分濃度を40%に調整して粘着剤を得た。
前記粘着剤を、厚さ38μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート製)上に、乾燥後の厚さが25μmになるようにコンマコーターで塗工を行い、100℃で2分間乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層に、厚さ50μmの基材(ポリエチレンテレフタレート製、以下、PETシートという)を貼り合せ、温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成することで「剥離性シート/粘着剤層/PETシート」という構成の粘着シートを得た。
【0054】
(実施例2〜13、比較例1〜4)
組成を表5、6の配合に従って変更した以外は実施例1と同様に行うことで実施例2〜13および比較例1〜4の粘着シートを得た。
【0055】
(比較例5)
合成例11で得られた重合体16のアクリルエマルション重合体水分散体の不揮発分100部に対して、エポキシ系架橋剤(1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、三菱ガス化学社製)0.8部を配合して、攪拌し、水分散型アクリル粘着剤を得た。前記粘着剤を実施例1と同様に塗工を行い、比較例5の粘着シートを得た。
【0056】
得られた粘着シートを以下の方法で評価した。結果を表5および表6に示す。
【0057】
(1)粘着力
得られた粘着シートを幅25mm・縦150mmの大きさに準備した。23℃、相対湿度50%の雰囲気下、前記粘着シートから剥離性シートを剥がしてステンレス(SUS)板に貼り付け、2kgロールで1往復圧着し、24時間放置した後に引張試験機を用いて180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす180°ピール試験において粘着力を測定した。
上記同様にポリプロピレン(PP)板に対して粘着力を測定した。
【0058】
(2)保持力
得られた粘着シートを幅25mm・縦150mmの大きさに準備した。前記粘着シートから剥離性シートを剥がして研磨した幅30mm・縦150mmのステンレス板の下端部幅25mm・横25mmの部分に粘着剤層を貼着し、2kgロールで1往復圧着した後、40℃雰囲気で1kgの荷重をかけ、7万秒放置することで保持力を測定した。評価は、粘着シート貼付面上端部が下にずれた長さを測定した。
評価基準
○:「粘着シートのずれた長さが0.5mm未満である。良好。」
×:「粘着シートのずれた長さが0.5mm以上である。実用不可」
【0059】
(3)再剥離性
得られた粘着シートを幅25mm・縦100mmの大きさに準備した。前記粘着シートから剥離性シートを剥がして研磨したステンレス板に貼着し試料とした。次いで、この試料を23℃50%RH、40℃90%RHおよび80℃の条件下に7日間放置し、23℃50%RHに冷却した後浮き・剥がれを確認した後、手で剥がし再剥離性を目視で観察した。
上記同様にポリ塩化ビニル(PVC)板、ポリプロピレン(PP)板に対する再剥離性を観察した。なお評価は、下記の3段階の評価基準に基づいて行った。
◎:「浮き・剥がれが全く認められず、剥離後、粘着剤の移行、基材破断あるいは被着 体汚染がなく、良好である」
○:「浮き、剥がれが部分的に認められるが、剥離後粘着剤の移行、基材破断あるいは 被着体汚染がなく、実用上問題がない」
×:「浮き、剥がれが著しい、または被着体の汚染が不良で、実用不可である」
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
表5および表6中の略号は、以下の通りである。
コロネートL :トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(日本ポリウレタン社製)
ケミタイトPZ-33 :2,2-ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート](日本触媒社製)
TETRAD−C :1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製)
【0063】
表5および表6の結果から実施例1〜13に示すように本発明の再剥離型粘着剤は、いずれの被着体においても再剥離性が優れていることがわかる。これに対し、比較例1〜5では、SUSあるいはPVCの再剥離性が不良となっており、実用上問題があったり、実用不可であったりすることがわかる。