特許第6582682号(P6582682)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6582682ガラス物品の製造装置及びガラス物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6582682
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】ガラス物品の製造装置及びガラス物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 17/06 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
   C03B17/06
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-148904(P2015-148904)
(22)【出願日】2015年7月28日
(65)【公開番号】特開2017-30981(P2017-30981A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中村 ▲隆▼英
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−265162(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101168469(CN,A)
【文献】 特表2009−520679(JP,A)
【文献】 特開2011−098884(JP,A)
【文献】 特開2015−105215(JP,A)
【文献】 特開平05−193964(JP,A)
【文献】 特開平05−124826(JP,A)
【文献】 特開平11−171568(JP,A)
【文献】 特開昭52−147618(JP,A)
【文献】 米国特許第03980028(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 17/00 − 17/06
C03B 25/00 − 25/12
C03B 15/00 − 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスを流下してガラスリボンを成形する成形部と、
前記ガラスリボンを第1ローラーと第2ローラーとにより挟持する挟持部と、
前記成形部及び前記挟持部を取り囲む断熱壁とを備え、
前記ガラスリボンを搬送してガラス物品を製造するガラス物品の製造装置であって、
前記第1ローラー及び前記第2ローラーの少なくとも一方のローラーを前記断熱壁の外方から視認可能に設けられた視認部を備え、
前記視認部は、前記断熱壁を貫通する貫通孔と、前記貫通孔を閉塞する閉塞部材とを有し、
前記視認部は、前記閉塞部材として、前記断熱壁の外面よりも外方に突出して設けられた閉塞部材を備えることを特徴とするガラス物品の製造装置。
【請求項2】
前記視認部は、前記第1ローラー、前記第2ローラー、及び前記ガラスリボンのいずれをも視認可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項3】
前記第1ローラー及び前記第2ローラーを回転駆動する駆動部を前記断熱壁の外方に備え、
前記駆動部は、
前記第1ローラーを回転駆動する第1駆動部と、前記第2ローラーを回転駆動する第2駆動部とを有し、
前記視認部は、前記第1駆動部と前記第2駆動部との間から前記第1ローラー、前記第2ローラー、及び前記ガラスリボンのいずれをも視認可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項4】
前記視認部は、前記閉塞部材として、前記貫通孔の開口を開閉可能に設けられた閉塞部材を備えることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項5】
前記断熱壁は、前記ガラスリボンの厚さ方向に沿って設けられる側壁を備え、
前記視認部は、前記側壁に設けられることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のガラス物品の製造装置を用いてガラス物品を製造することを特徴とするガラス物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス物品の製造装置及びガラス物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶融ガラスを流下してガラスリボンを成形する成形部と、ガラスリボンを第1ローラーと第2ローラーとにより挟持する挟持部とを備え、ガラスリボンを搬送してガラス物品を製造するガラス物品の製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。成形部としては、例えば、オーバーフローダウンドロー法等のダウンドロー法によってガラスリボンを成形する成形部が挙げられる。挟持部は、ガラスリボンを下方に牽引したり、ガラスリボンの形状を規制したりするために設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−051028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラス物品の製造装置において、ガラスリボンを成形する成形部及びガラスリボンを挟持する挟持部は、断熱壁で取り囲まれることで、適切な温度分布となるように管理される。これにより、ガラスリボンの品質が安定し易くなり、ガラス物品の品質も安定し易くなる。こうしたガラス物品の製造装置において、挟持部を構成するローラーについても、得られるガラス物品の形状や物性等の品質に影響を与える。従って、搬送中のガラスリボンを挟持するローラーの外観状態を確認することは、ガラス物品の品質を維持するうえで重要である。
【0005】
本発明の目的は、搬送中のガラスリボンを挟持するローラーの外観状態を確認する際にガラスリボンの品質への影響を抑えることのできるガラス物品の製造装置及びガラス物品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するガラス物品の製造装置は、溶融ガラスを流下してガラスリボンを成形する成形部と、前記ガラスリボンを第1ローラーと第2ローラーとにより挟持する挟持部と、前記成形部及び前記挟持部を取り囲む断熱壁とを備え、前記ガラスリボンを搬送してガラス物品を製造するガラス物品の製造装置であって、前記第1ローラー及び前記第2ローラーの少なくとも一方のローラーを前記断熱壁の外方から視認可能に設けられた視認部を備え、前記視認部は、前記断熱壁を貫通する貫通孔と、前記貫通孔を閉塞する閉塞部材とを有する。
【0007】
この構成によれば、ガラスリボンの搬送中に断熱壁の外方から視認部を通じてローラーを視認することが可能となる。ここで、断熱壁を貫通する貫通孔の開口が開放されている場合でも、ガラスリボンの搬送中に貫通孔を通じてローラーを視認することが可能である。ところが、この場合、断熱壁よりも内側に外気が流入し易く、断熱壁よりも内側の温度が不安定となったり、流入した外気により搬送中のガラスリボンが揺動したりするおそれがある。すなわち、上記貫通孔の開口が開放されていると、ガラスリボンの品質に影響を与え易い。これに対して、上記製造装置の視認部は、断熱壁を貫通する貫通孔を閉塞する閉塞部材を有するため、視認部から断熱壁よりも内側に外気が流入し難い。
【0008】
上記ガラス物品の製造装置において、前記視認部は、前記第1ローラー、前記第2ローラー、及び前記ガラスリボンのいずれをも視認可能に設けられていることが好ましい。
この構成によれば、第1ローラー及び第2ローラーに加えてガラスリボンも視認することにより、挟持部付近のガラスリボンの状態も考慮した工程管理を行うことができる。
【0009】
上記ガラス物品の製造装置において、前記第1ローラー及び前記第2ローラーを回転駆動する駆動部を前記断熱壁の外方に備え、前記駆動部は、前記第1ローラーを回転駆動する第1駆動部と、前記第2ローラーを回転駆動する第2駆動部とを有し、前記視認部は、前記第1駆動部と前記第2駆動部との間から前記第1ローラー、前記第2ローラー、及び前記ガラスリボンのいずれをも視認可能に設けられていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、第1ローラー及び第2ローラーに加えてガラスリボンも視認することにより、挟持部付近のガラスリボンの状態も考慮した工程管理を行うことができる。また、第1ローラー及び第2ローラーをより近い位置から視認することができる。
【0011】
上記ガラス物品の製造装置において、前記視認部は、前記閉塞部材として、前記断熱壁の外面よりも外方に突出して設けられた閉塞部材を備えることが好ましい。
この構成によれば、ガラスリボンからより離間した箇所で外気の流入が抑制されるため、ガラスリボンの周囲の温度が安定し易い。
【0012】
上記ガラス物品の製造装置において、前記視認部は、前記閉塞部材として、前記貫通孔の開口を開閉可能に設けられた閉塞部材を備えることが好ましい。
この構成によれば、一時的に貫通孔の開口を開放し、その貫通孔を通じて断熱壁よりも内側に配置されたローラーの状態を改善することが可能となる。
【0013】
上記課題を解決するガラス物品の製造方法は、上記ガラス物品の製造装置を用いてガラス物品を製造する。
この方法によれば、ガラス物品の製造中における工程管理が容易となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、搬送中のガラスリボンを挟持するローラーの外観状態を確認する際にガラスリボンの品質への影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態におけるガラス物品の製造装置を正面から見た部分断面図である。
図2】(a)は、ガラス物品の製造装置を側方から見た部分断面図であり、(b)は、要部を拡大して示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、ガラス物品の製造装置及びガラス物品の製造方法の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0017】
図1及び図2(a)に示すように、ガラス物品の製造装置11は、溶融ガラスMGを流下してガラスリボンGを成形する成形部12と、ガラスリボンGを第1ローラーR1と第2ローラーR2とにより挟持する挟持部13とを備えている。ガラス物品の製造装置11は、成形部12及び挟持部13を取り囲む断熱壁14をさらに備えている。
【0018】
本実施形態では、成形部12の一例として、ダウンドロー法の一種であるオーバーフローダウンドロー法を用いてガラスリボンGを成形する成形部12を示している。
図2(a)に示すように、ガラス物品の製造装置11における成形部12は、溶融ガラスMGをオーバーフローする溝12aと、オーバーフローした溶融ガラスMGの流下を案内する第1案内面12b及び第2案内面12cとを有している。第2案内面12cは、第1案内面12bの反対側に位置し、第1案内面12bと第2案内面12cとに沿って流下した溶融ガラスMGが成形部12の下端で融合されることによりガラスリボンGが成形される。なお、成形部12には、図示を省略するが、溶融ガラスMGを供給する供給管が接続され、溶融ガラスMGが連続的に供給される。
【0019】
なお、成形部12としては、溶融ガラスMGを流下して成形する成形部を適用することが可能であり、上述したオーバーフローダウンドロー法以外のダウンドロー法を用いてガラスリボンGを成形する成形部に変更することもできる。オーバーフローダウンドロー法以外のダウンドロー法としては、例えば、スロットダウンドロー法、及びリドロー法が挙げられる。
【0020】
図1及び図2(a)に示すように、ガラス物品の製造装置11は、成形部12の下方の搬送方向Yにおいて離間して配置される複数の挟持部13を備えている。各挟持部13は、ガラスリボンGの幅方向Xにおける一端側部分と、他端側部分とをそれぞれ第1ローラーR1と第2ローラーR2とにより挟持するように配置されている。
【0021】
ガラス物品の製造装置11は、挟持部13の第1ローラーR1及び第2ローラーR2を回転駆動する駆動部を断熱壁14の外方に備えている。駆動部は、第1ローラーR1を回転駆動する第1駆動部D1と、第2ローラーR2を回転駆動する第2駆動部D2とを有している。このように独立した駆動部である第1駆動部D1と第2駆動部D2とはガラスリボンGの厚さ方向において離間して配置されている。駆動部は、例えば、モーターを備えている。
【0022】
本実施形態では、各挟持部13において、ガラスリボンGの幅方向Xにおける一端側部分を挟持するローラーR1aと、同じく幅方向Xにおける他端側部分を挟持するローラーR1bとは、独立した回転軸でそれぞれ回転される。
【0023】
なお、ガラス物品の製造装置11は、搬送されるガラスリボンGに従動する、いわゆるフリーローラーにより構成された挟持部を備えていてもよい。また、ガラスリボンGの幅方向Xにおける一端側部分を挟持するローラーR1aと、同じく幅方向Xにおける他端側部分とを挟持するローラーR1bとが、共通の回転軸で連結及び回転される構成としてもよい。
【0024】
ガラス物品の製造装置11は、挟持部13を構成するローラー(第1ローラーR1及び第2ローラーR2)を断熱壁14の外方から視認可能に設けられた視認部15を備えている。
【0025】
図2(a)及び図2(b)に示すように、ガラス物品の製造装置11における視認部15は、第1駆動部D1と第2駆動部D2との間から第1ローラーR1、第2ローラーR2、及びガラスリボンGを視認可能に設けられている。
【0026】
ここで、断熱壁14について詳述すると、断熱壁14は、ガラスリボンGの面に沿って設けられる正面壁14a及び背面壁14bと、ガラスリボンGの厚さ方向に沿って設けられる一対の側壁14cと、天井部分となる天井壁14dとを備えている。断熱壁14の断面構造としては、例えば、一対の金属板の間に断熱材を配置した構造が挙げられる。このような断熱壁14で囲まれた内側は、断熱壁14を通じて視認することはできない。なお、断熱壁14の正面壁14a及び背面壁14bには、断熱壁14よりも内側の温度を調整する加熱機構が必要に応じて装備される。
【0027】
視認部15は、断熱壁14の側壁14cを貫通する貫通孔16と、貫通孔16を閉塞する閉塞部材17とを有している。貫通孔16の寸法は、挟持部13のローラーの視認性を高めるという観点からは、より大きい方が好ましいが、断熱壁14の断熱性を確保するという観点からは、より小さい方が好ましい。貫通孔16は、ガラスリボンGの厚さ方向に延在する形状を有することが好ましい。
【0028】
図2(a)に示すように、貫通孔16の幅寸法W1は、側壁14cの内側寸法における幅寸法W2を100%とした場合、10%以上であることが好ましく、より好ましくは、20%以上である。また、貫通孔16の幅寸法W1は、同じく側壁14cの内側寸法における幅寸法W2を100%とした場合、80%以下であることが好ましく、より好ましくは70%以下である。
【0029】
貫通孔16の高さ寸法H1は、貫通孔16の幅寸法W1を100%とした場合、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。また、貫通孔16の高さ寸法H1は、同じく貫通孔16の幅寸法W1を100%とした場合、90%以下であることが好ましく、より好ましくは80%以下である。
【0030】
視認部15の閉塞部材17は、断熱壁14の外面よりも外方に突出して設けられている。閉塞部材17は、貫通孔16の開口を開閉可能に設けられている。閉塞部材17は、例えば、断熱壁14に着脱可能な固定部材により断熱壁14に固定され、固定部材とともに閉塞部材17を取り外すことで、貫通孔16の開口が開放されるように設けられる。また、ヒンジ機構を介して閉塞部材17を断熱壁14に取り付けることで、閉塞部材17を回動させることで貫通孔16の開口を開閉可能に構成することもできる。
【0031】
図2(b)に示すように、閉塞部材17は、枠体17aと、枠体17aに取り付けられるとともに貫通孔16の開口と同等又は大きい寸法の透光部材17bとを有している。枠体17aは、例えば金属製であり、透光部材17bは、これに接する空気の温度に耐え得る耐熱性を有する材料から構成される。透光部材17bとしては、耐熱ガラス(結晶化ガラス)を用いることが好ましい。閉塞部材17は、断熱性を高めるという観点から、複層ガラス構造を有する透光部材17bを備えていてもよい。なお、閉塞部材17の枠体17aを省略し、閉塞部材17を透光部材17bのみから構成することもできる。また、貫通孔16の開口を取り囲むシール部材を断熱壁14(側壁14c)と閉塞部材17との間に設けてもよい。なお、上記は一例であり、透光部材17bの寸法は貫通孔16の開口より小さくてもよい。
【0032】
以上のガラス物品の製造装置11を用いたガラス物品の製造方法は、ガラスリボンGの成形工程と、ガラスリボンGの徐冷工程とを備えている。徐冷工程は、ガラスリボンGを下方に搬送しながらガラスリボンGの内部歪を減少させる工程である。ガラスリボンGの成形工程、及びガラスリボンGの徐冷工程は、断熱壁14で取り囲まれた部分で行われる。断熱壁14から搬出されたガラスリボンGは、室温付近の温度まで冷却された後、所定の寸法に切断される。これにより、ガラス物品としての板ガラスが連続的に得られる。
【0033】
次に、ガラス物品の製造装置11の主な作用について説明する。
ガラス物品の製造装置11の成形部12では、溶融ガラスMGが流下されることでガラスリボンGが成形される。成形されたガラスリボンGは、挟持部13により挟持されるとともに下方に牽引される。断熱壁14よりも内側は、ガラスリボンGの成形及び徐冷に適切な温度分布となるように管理されている。
【0034】
上述したガラス物品の製造装置11は、挟持部13のローラー(第1ローラーR1及び第2ローラーR2)を断熱壁14(側壁14c)の外方から視認可能に設けられた視認部15を備えている。この構成によれば、図2(b)に視認可能な部分を破線で示すように、ガラスリボンGの搬送中に断熱壁14の外方から視認部15を通じてローラーを視認することが可能となる。ここで、断熱壁14を貫通する貫通孔16の開口が開放されている場合でも、ガラスリボンGの搬送中に貫通孔16を通じてローラーを視認することが可能である。ところが、この場合、断熱壁14よりも内側に外気が流入し易く、断熱壁14よりも内側の温度が不安定となったり、流入した外気により搬送中のガラスリボンGが揺動したりするおそれがある。すなわち、上記貫通孔16の開口が開放されていると、ガラスリボンGの品質に影響を与え易い。これに対して、上記ガラス物品の製造装置11における視認部15は、断熱壁14(側壁14c)を貫通する貫通孔16を閉塞する閉塞部材17を有するため、視認部15から断熱壁14よりも内側に外気が流入し難い。
【0035】
また、本実施形態の視認部15の閉塞部材17は、断熱壁14(側壁14c)の外面よりも外方に突出して設けられている。この場合、ガラスリボンGからより離間した箇所で外気の流入が抑制されるため、ガラスリボンGの周囲の温度が安定し易い。
【0036】
本実施形態のガラス物品の製造装置11における視認部15は、第1駆動部D1と第2駆動部D2との間から第1ローラーR1、第2ローラーR2、及びガラスリボンGのいずれも視認可能に設けられている。この場合、第1ローラーR1及び第2ローラーR2に加えてガラスリボンGも視認することにより、挟持部13付近のガラスリボンGの状態も考慮した工程管理を行うことができる。また、第1ローラーR1及び第2ローラーR2をより近い位置から視認することができる。
【0037】
本実施形態の視認部15における閉塞部材17は、断熱壁14を貫通する貫通孔16における開口を開閉可能である。この場合、一時的に貫通孔16の開口を開放し、その貫通孔16を通じて断熱壁14よりも内側に配置されたローラーの状態を改善することが可能となる。例えば、視認部15を通じて視認されるローラーの外周面に異物が付着していた場合、貫通孔16における開口を一時的に開放し、貫通孔16を通じてローラーの外周面に付着している異物を除去することも可能である。
【0038】
以上詳述した実施形態によれば、次のような作用効果が発揮される。
(1)ガラス物品の製造装置11は、溶融ガラスMGを流下してガラスリボンGを成形する成形部12と、ガラスリボンGを第1ローラーR1と第2ローラーR2とにより挟持する挟持部13と、成形部12及び挟持部13を取り囲む断熱壁14とを備えている。ガラス物品の製造装置11は、ガラスリボンGを搬送してガラス物品を製造する。ガラス物品の製造装置11は、第1ローラーR1及び第2ローラーR2の少なくとも一方のローラーを断熱壁14の外方から視認可能に設けられた視認部15を備えている。視認部15は、断熱壁14を貫通する貫通孔16と、貫通孔16を閉塞する閉塞部材17とを有している。
【0039】
この構成によれば、ガラスリボンGの搬送中に断熱壁14の外方から視認部15を通じてローラーを視認することが可能となる。また、上記ガラス物品の製造装置11の視認部15は、断熱壁14を貫通する貫通孔16を閉塞する閉塞部材17を有するため、視認部15から断熱壁14よりも内側に外気が流入し難い。従って、搬送中のガラスリボンGを挟持するローラーの外観状態を確認する際にガラスリボンGの品質への影響を抑えることができる。
【0040】
(2)ガラス物品の製造装置11において、視認部15は、第1ローラーR1、第2ローラーR2、及びガラスリボンGのいずれをも視認可能に設けられている。この場合、第1ローラーR1及び第2ローラーR2に加えてガラスリボンGも視認することにより、挟持部13付近のガラスリボンGの状態も考慮した工程管理を行うことができる。これにより、例えば、ガラス物品の製造装置11において改善が必要な箇所の特定や、ローラーの状態を改善する必要性の判断が容易となる。従って、ガラス物品の歩留まりを高めることが可能となる。
【0041】
(3)ガラス物品の製造装置11は、第1ローラーR1及び第2ローラーR2を回転駆動する駆動部を断熱壁14の外方に備えている。駆動部は、第1ローラーR1を回転駆動する第1駆動部D1と、第2ローラーR2を回転駆動する第2駆動部D2とを有している。視認部15は、第1駆動部D1と第2駆動部D2との間から第1ローラーR1、第2ローラーR2、及びガラスリボンGのいずれをも視認可能に設けられている。この場合、上記(2)欄に記載の作用効果が得られる。また、第1ローラーR1及び第2ローラーR2をより近い位置から視認することができる。これにより、ローラーの外観状態の視認性を高めることができるため、より精度の高い工程管理が可能となる。
【0042】
(4)ガラス物品の製造装置11における視認部15は、閉塞部材17として、断熱壁14の外面よりも外方に突出して設けられた閉塞部材17を備えている。この場合、上述したように、ガラスリボンGの周囲の温度が安定し易くなるため、ガラスリボンGの品質への影響をより抑えることができる。
【0043】
(5)ガラス物品の製造装置11における視認部15は、閉塞部材17として、貫通孔16の開口を開閉可能に設けられた閉塞部材17を備えている。この場合、一時的に貫通孔16の開口を開放し、その貫通孔16を通じて断熱壁14の内部のローラーの状態を改善することが可能となる。従って、ローラーの状態を改善する際に、ローラーを取り外す手間を省くことが可能となる。
【0044】
(6)ガラス物品の製造方法は、上記ガラス物品の製造装置11を用いてガラス物品を製造する方法である。この方法によれば、ガラス物品の製造中における工程管理が容易となる。
【0045】
(変更例)
上記実施形態を次のように変更してもよい。
・ガラス物品の製造装置11において、視認部15における閉塞部材17は、例えば、貫通孔16の開口周囲の断熱壁14に接着して固定する等、開閉不能に設けることもできる。
【0046】
・ガラス物品の製造装置11において、視認部15における閉塞部材17は、貫通孔16の内部に設けることもできる。また、閉塞部材17は、断熱壁14の内面よりも内方に突出して設けることもできる。なお、上記実施形態の視認部15のように、閉塞部材17を断熱壁14の外面よりも外方に突出して設けた場合、その視認部15は、断熱壁14の内面よりも内方に突出して設けられた閉塞部材17や、貫通孔16の内部に設けられた閉塞部材17をさらに備えていてもよい。この場合であっても、上記(4)欄に記載の作用効果が得られる。
【0047】
・ガラス物品の製造装置11において、視認部15は、第1駆動部D1と第2駆動部D2との間から第1ローラーR1、第2ローラーR2、及びガラスリボンGを視認可能に設けられている。視認部15は、第1駆動部D1と第2駆動部D2との間からではなく、駆動部の上方から見下ろすことで第1ローラーR1、第2ローラーR2、及びガラスリボンGを視認可能に設けられてもよい。また、視認部15は、駆動部の下方から見上げることで第1ローラーR1、第2ローラーR2、及びガラスリボンGを視認可能に設けられてもよい。例えば、ガラス物品の製造装置11において、第1駆動部D1と第2駆動部D2と間隙を確保することが困難な場合や、第1ローラーR1及び第2ローラーR2を一つの駆動部で駆動させる場合、駆動部よりも上方、又は駆動部よりも下方に延在する視認部15を設けることができる。
【0048】
・ガラス物品の製造装置11における視認部15は、駆動部により回転駆動されるローラーを視認可能に設けられているが、駆動部に連結されずに、搬送されるガラスリボンGに従動するローラーを視認可能に設けられた視認部15のみから構成してもよい。また、ガラス物品の製造装置11における視認部15は、駆動部により回転駆動されるローラーを視認可能に設けられた視認部15と、駆動部に連結されずに搬送されるガラスリボンGに従動するローラーを視認可能に設けられた視認部15とを含んでいてもよい。
【0049】
・ガラス物品の製造装置11における視認部15は、断熱壁14により取り囲まれた複数の挟持部13のうち、少なくとも一つの挟持部13を構成するローラーを視認可能に設けることができる。また、視認部15は、挟持部13を構成する第1ローラーR1及び第2ローラーR2の少なくとも一方のローラーを視認可能に設けることもできる。また、視認部15は、ガラスリボンGの幅方向Xにおける一端側部分及び他端側部分の少なくとも一方の部分を挟持するローラーを視認可能に設けることもできる。
【0050】
・ガラス物品の製造装置11における視認部15は、断熱壁14の正面壁14a、背面壁14b、及び一対の側壁14cの少なくとも一つの壁部に設けることができる。但し、ガラスリボンGの主面における温度のばらつきを抑えるという観点から、一対の側壁14cの少なくとも一方に視認部15を設けることが好ましい。
【0051】
・ガラス物品の製造装置11における視認部15からローラーやガラスリボンGを視認する際には、ローラーやガラスリボンGに光を照射する光照射装置や、ローラーやガラスリボンGを撮像する撮像装置を用いてもよい。
【0052】
・前記ガラス物品(ガラスリボンG)を構成するガラスは、無アルカリガラスであってもよいし、アルカリ成分を含むガラスであってもよい。なお、ガラス物品の用途としては、例えば、ディスプレイ用途、タッチパネル用途、光電変換パネル用途、電子デバイス用途、窓ガラス用途、建材用途、及び車両用途が挙げられる。
【0053】
・前記ガラス物品の製造装置11は、板ガラス以外のガラス物品の製造装置11に変更することもできる。ガラス物品の製造装置11は、例えば、ガラスリボンG(ガラスフィルム)をロール状に巻き取る巻取機を備えることで、ロール状のガラス物品を製造するガラス物品の製造装置11として構成することもできる。
【符号の説明】
【0054】
11…ガラス物品の製造装置、12…成形部、13…挟持部、14…断熱壁、15…視認部、16…貫通孔、17…閉塞部材、R1…第1ローラー、R2…第2ローラー、D1…第1駆動部、D2…第2駆動部、G…ガラスリボン、MG…溶融ガラス。
図1
図2