(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
CF
2=CFOCF
2CF
2SO
3Naは、親水性の−SO
3Na基を有しており、吸湿性が高い。従って、CF
2=CFOCF
2CF
2SO
3Naを反応容器に投入する場合に、反応容器への水分の混入を回避することが容易でない。そして、五塩化リンは少量の水とも反応して塩酸ガスを発生させ、塩酸ガスが反応液を泡立させたり、反応液を反応容器から溢れ出させたりするおそれがある。また、CF
2=CFOCF
2CF
2SO
3Hは、五塩化リンと反応して、CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Clを生成するが、この反応では、水分が存在しなくても、塩酸ガスが発生する。しかしながら、いずれの場合も、五塩化リンは常温で固体であるので、塩酸ガスの発生量を制御することが困難である。
【0008】
従って、本発明の第1の課題は、五塩化リンを使用してCF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Clで示される塩化スルホニルアルキルビニルエーテルを製造する方法において、塩酸ガスの発生量を容易に制御する方法を提供することにある。
【0009】
また、CF
2=CFOCF
2CF
2SO
3Na、三塩化リン及び塩素ガスを使用する場合は、三塩化リンと塩素ガスとの反応により生成する五塩化リンが反応容器に付着する問題があった。
【0010】
従って、本発明の第2の課題は、三塩化リン及び塩素ガスを使用して、CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Clで示される塩化スルホニルアルキルビニルエーテルを製造する方法において、反応容器への五塩化リンの付着を抑制する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Clで示される塩化スルホニルアルキルビニルエーテル化合物を製造する方法であって、三塩化リン及び/又は溶媒(但し三塩化リンを除く)に五塩化リンが溶解した溶液を調製する工程、及び、上記溶液と、一般式:CF
2=CFOCF
2CF
2SO
3M(MはH又はアルカリ金属原子)で示されるビニルエーテルとを混合して、五塩化リンと上記ビニルエーテルとを反応させる工程を含むことを特徴とする製造方法である(以下、本発明の製造方法(1)ということがある)。
【0012】
製造方法(1)において、三塩化リン1モルに対して1モル未満の塩素ガスを反応させることにより、三塩化リンに五塩化リンが溶解した溶液を調製することが好ましい。上記反応では、飽和溶解度以下になるように五塩化リンを生成させることが好ましい。また、上記反応を60〜150℃で行うことが好ましい。
【0013】
本発明は、また、CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Clで示される塩化スルホニルアルキルビニルエーテル化合物を製造する方法であって、三塩化リンと、一般式:CF
2=CFOCF
2CF
2SO
3M(MはH又はアルカリ金属原子)で示されるビニルエーテルと、塩素ガスと、を反応容器に投入することにより、上記ビニルエーテルを塩素化する工程を含み、
(A)三塩化リンを還流させながら三塩化リンと塩素ガスとの反応を行う、
(B)三塩化リン1モルに対して塩素ガスの合計投入量を1モル未満とする、又は、
(C)上記塩素化を60〜150℃で行う
ことを特徴とする製造方法でもある(以下、本発明の製造方法(2)ということがある)。
【0014】
製造方法(2)において、三塩化リン及び塩素ガスを連続的に反応容器に投入することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法(1)は、上記構成からなるので、塩酸ガスの発生量を容易に制御しながら、五塩化リンを使用してCF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Clで示される塩化スルホニルアルキルビニルエーテル化合物を製造することができる。
【0016】
本発明の製造方法(2)は、上記構成からなるので、反応容器への五塩化リンの付着を抑制しながら、三塩化リン及び塩素ガスを使用して、CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Clで示される塩化スルホニルアルキルビニルエーテル化合物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の製造方法(1)は、第1の課題を解決する製造方法である。本発明の製造方法(1)は、CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Clで示される塩化スルホニルアルキルビニルエーテル化合物を製造する方法であり、三塩化リン及び/又は溶媒(但し三塩化リンを除く)に五塩化リンが溶解した溶液を調製する工程、及び、上記溶液と、一般式:CF
2=CFOCF
2CF
2SO
3M(MはH又はアルカリ金属原子)で示されるビニルエーテルとを混合して、五塩化リンと上記ビニルエーテルとを反応させる工程を含むことを特徴とする。
【0020】
三塩化リン及び/又は溶媒(但し三塩化リンを除く)に五塩化リンが溶解した溶液を調製する方法としては、五塩化リンを三塩化リン及び/又は溶媒(但し三塩化リンを除く)に溶解させる方法、三塩化リン1モルに対して1モル未満の塩素ガスを反応させる方法等が挙げられる。
【0021】
上記溶媒(但し三塩化リンを除く)としては、五塩化リンを溶解させる溶媒であれば限定されず、オキシ塩化リン、モノクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン等を挙げることができ、オキシ塩化リンが好ましい。五塩化リンを三塩化リン及び/又は溶媒(但し三塩化リンを除く)に添加して撹拌することで溶液が得られる。
【0022】
上記溶液中に五塩化リンの固体が存在すると、後述するビニルエーテルと反応させるために、上記溶液を反応容器に投入する際、五塩化リンの投入量及び投入の速度を制御しにくい。従って、上記溶液中の五塩化リンの濃度は、三塩化リン及び/又は溶媒(但し三塩化リンを除く)に対する五塩化リンの飽和溶解度以下であることが好ましい。下限は特に限定されないが、5重量%であってもよい。
【0023】
三塩化リン1モルに対して1モル未満の塩素ガスを反応させる方法では、反応によって五塩化リンが三塩化リンに溶解した溶液が得られる。三塩化リン1モルに対して塩素ガスが1モル以上になると、全ての三塩化リンが反応で消費されてしまい、所望の溶液を得ることができない。
【0024】
三塩化リンに対して生成する五塩化リンの量が三塩化リンに対する五塩化リンの飽和溶解度を上回ると、五塩化リンの固体が析出し、後述するビニルエーテルと反応させるために、上記溶液を反応容器に投入する際、五塩化リンの投入量及び投入の速度を制御しにくい。例えば、上記溶液だけが反応容器に投入され、固体の五塩化リンが投入されずに元の容器に残留したり、上記溶液を配管を通して反応容器に投入する場合には、固体の五塩化リンが上記配管を閉塞させたりするおそれがある。従って、上記反応では、三塩化リンに対する五塩化リンの飽和溶解度以下になるように五塩化リンを生成させることが好ましい。上記反応に供する塩素ガスの量を、三塩化リンに対する五塩化リンの飽和溶解度以下になるように五塩化リンを生成させる量とすることにより、生成する五塩化リンの量が飽和溶解度以下になるように調整できる。
【0025】
塩素ガスは、五塩化リンの投入量及び投入の速度の調整が一層容易になることから、三塩化リン1モルに対して0.85モル以下であることが好ましく、0.60モル以下であることがより好ましく、下限は特に限定されないが、後述するビニルエーテルとの反応の効率を考慮して、0.45モルであってよい。
【0026】
上記反応は、60〜150℃で行うことが好ましい。60℃未満で反応を行うと、五塩化リンの飽和溶解度が下がるため多量の三塩化リン及び/又は溶媒が必要になるおそれがある。上記反応温度は70℃以上がより好ましい。
上記反応は、通常常圧で行われるが、−0.05〜0.6MPaGで実施できる。
【0027】
上記ビニルエーテルは、吸湿性が高いことから、上記ビニルエーテルを反応容器に投入すると、空気中の水分も反応容器に投入されてしまうことがある。この場合、五塩化リンと水とが反応して塩酸ガスが発生し、塩酸ガスが反応液を泡立させたり、反応液を反応容器から溢れ出させたりするおそれがある。また、CF
2=CFOCF
2CF
2SO
3Hと五塩化リンとの反応でも塩酸ガスが発生する。従って、五塩化リン又は上記ビニルエーテルの投入量及び投入速度を制御して、塩酸ガスの発生量を制御することが好ましい。製造方法(1)は、三塩化リン及び/又は溶媒(但し三塩化リンを除く)に五塩化リンが溶解した溶液を調製する工程を含むことから、塩酸ガスの発生量を制御することが容易である。
【0028】
製造方法(1)では、上記溶液を反応容器に投入した後に上記ビニルエーテルを反応容器に徐々に投入する方法、上記ビニルエーテルを反応容器に投入した後に上記溶液を反応容器に徐々に投入する方法、上記溶液と上記ビニルエーテルとを反応容器に交互に徐々に投入する方法等が使用できる。
【0029】
五塩化リンと上記ビニルエーテルとの反応は、60〜150℃で実施することができる。上記反応は、通常常圧で行われるが、−0.05〜0.6MPaGで実施できる。上記反応は、反応容器内で行うことができ、三塩化リンを還流させながら行うことができる。
【0030】
上記反応容器には、上記ビニルエーテル1モルに対して1モル以上の五塩化リンを投入することが好ましい。これにより、上記ビニルエーテルを充分に塩素化させることができる。また、未反応の上記ビニルエーテルの量を低減し、反応液から上記ビニルエーテルを回収する工程を簡略化できるので、経済的にも有利である。
【0031】
上記反応容器には、上記ビニルエーテル1モルに対して2モル以下の五塩化リンを反応させることが好ましい。五塩化リンが多すぎると、添加量に見合った収量が得られないおそれがある。
【0032】
製造方法(1)は、
三塩化リン及び上記ビニルエーテルを反応容器1に投入する工程、
三塩化リンを加熱することにより反応容器1内の三塩化リンを気化させる工程、
気化した三塩化リンを反応容器1から凝縮器に供給して凝縮器中で液化する工程、
液化した三塩化リンを凝縮器から反応容器2に供給する工程、
反応容器2に塩素ガスを投入し、三塩化リンと反応させて、三塩化リンに五塩化リンが溶解した溶液を調製する工程、
上記溶液を反応容器2から反応容器1に供給し、上記溶液と上記ビニルエーテルとを反応容器1内で混合して、五塩化リンと上記ビニルエーテルとを反応させて、CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Clを生成させる工程、及び、
反応容器1からCF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Clを回収する工程、
を含むものであることが好適な態様の1つである。
【0033】
図1は、上記態様を説明するための概略図である。反応容器1に三塩化リン及び上記ビニルエーテルを投入した後、三塩化リンを加熱することにより気化させる。三塩化リン又は上記ビニルエーテルは、反応容器1に連続的に投入することができる。気化した三塩化リンは凝縮器3に移動し、凝縮器3で凝縮されて、液化した三塩化リンが生成する。凝縮器3には、冷却水を流通させておくことができる。液化した三塩化リンは反応容器2に移動する。反応容器2には、塩素ガスが投入されており、三塩化リンと反応して、五塩化リンを生成する。反応容器2には、連続的に凝縮器3から三塩化リンが供給されるので、五塩化リンは三塩化リンに溶解した状態で得られる。三塩化リンに五塩化リンが溶解した溶液は、反応容器1に移動する。反応容器1では、五塩化リンと上記ビニルエーテルと反応が進行し、目的とするCF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Clが生成する。生成したCF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Clは、最終的に又は連続的に反応容器1から回収できる。
【0034】
沸点に近い温度を有する三塩化リンを凝縮器3から反応容器2に供給することができ、高温の三塩化リンは比較的多くの五塩化リンを溶解させることができる。従って、反応容器2から反応容器1に、高濃度の五塩化リンの溶液を供給することができるので、反応容器1内で進行する五塩化リンと上記ビニルエーテルとの反応は効率が高い。
反応容器1内では、常に三塩化リンが沸騰していることから、反応容器1内の反応溶液の温度は一定に保たれており、反応容器1内での五塩化リンと上記ビニルエーテルとの反応は、極めて安定に進行する。
しかも、三塩化リン及び塩素ガスを反応容器2に投入する速度、及び、反応容器2から反応容器1に上記溶液を供給する速度を適切に調整することができる。従って、反応容器1への五塩化リンの供給量を制御して、反応容器1内での塩酸ガスの発生量を容易に制御でき、五塩化リンを析出させることもない。
【0035】
反応容器1又は2に、上記溶媒(但し三塩化リンを除く)を添加してもよい。また、上記溶媒は、五塩化リンと上記ビニルエーテルとの反応により生成したオキシ塩化リンであってもよい。
【0036】
本発明の製造方法(2)は、第2の課題を解決する製造方法である。本発明の製造方法(2)は、CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Clで示される塩化スルホニルアルキルビニルエーテル化合物を製造する方法であり、三塩化リンと、一般式:CF
2=CFOCF
2CF
2SO
3M(MはH又はアルカリ金属原子)で示されるビニルエーテルと、塩素ガスとを反応容器に投入することにより、上記ビニルエーテルを塩素化する工程を含む。上記工程では、三塩化リンと塩素ガスとが反応し、生成した五塩化リンが上記ビニルエーテルと反応する。
【0037】
上記工程では、三塩化リンが溶媒としても機能するので、三塩化リン以外の溶媒は必須でない。しかし、上記溶媒(但し三塩化リンを除く)を使用することもでき、上記溶媒(但し三塩化リンを除く)を使用することで、三塩化リンと塩素ガスとの反応により生成する五塩化リンが反応容器内で析出しにくくなる利点がある。上記溶媒(但し三塩化リンを除く)としては、五塩化リンを溶解させる溶媒であれば限定されず、オキシ塩化リン、モノクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン等を挙げることができ、オキシ塩化リンが好ましい。
【0038】
本発明の製造方法(2)は、上記工程において、
(A)三塩化リンを還流させながら三塩化リンと塩素ガスとの反応を行う、
(B)三塩化リン1モルに対して塩素ガスの合計投入量を1モル未満とする、又は、
(C)上記塩素化を60〜150℃で行う
ことを特徴とする。
【0039】
(A)について
上記工程において、三塩化リンを還流させながら三塩化リンと塩素ガスとの反応を行うことにより、反応中に生成する五塩化リンが反応容器に付着して各原料の供給口を閉塞させたり、付着した多量の五塩化リンが一度に脱落して反応を不安定にしたりする不利益を回避できる。上記還流は、フラスコ等の反応容器に還流冷却器を設置することにより実施できる。
【0040】
(B)について
上記工程において、三塩化リン1モルに対して塩素ガスの合計投入量を1モル未満とすることにより、塩素ガスとの反応により三塩化リンが消費され尽くすことがなく、反応容器内で溶媒として機能しつづける。従って、上記溶媒(但し三塩化リンを除く)を使用しなくても、反応中に生成する五塩化リンが反応容器に付着して各原料の供給口を閉塞させたり、付着した多量の五塩化リンが一度に脱落して反応を不安定にしたりする不利益を回避できる。
また、ビニル基に塩素が付加することによりCF
2Cl−CFCl−OCF
2CF
2SO
2Clを生成する副反応の進行も抑制できる。
【0041】
(C)について
上記工程において、上記塩素化を60〜150℃で行うことにより、反応中に生成する五塩化リンが反応容器に付着して各原料の供給口を閉塞させたり、付着した多量の五塩化リンが一度に脱落して反応を不安定にしたりする不利益を回避できる。上記塩素化の温度は、70℃以上であることが好ましく、140℃以下であることが好ましい。
また、ビニル基に塩素が付加することによりCF
2Cl−CFCl−OCF
2CF
2SO
2Clを生成する副反応の進行も抑制できる。
【0042】
五塩化リンの付着をより一層抑制できることから、上記(A)〜(C)を全て充足するように実施することが好ましい。
【0043】
上記反応容器には、上記ビニルエーテル1モルに対して1モル以上の塩素ガスを投入することが好ましい。これにより、上記ビニルエーテルを充分に塩素化させることができる。また、未反応の上記ビニルエーテルの量を低減し、反応液から上記ビニルエーテルを回収する工程を簡略化できるので、経済的にも有利である。
【0044】
上記反応容器には、上記ビニルエーテル1モルに対して2モル以下の塩素ガスを投入することが好ましい。塩素ガスが多すぎると、添加量に見合った収量が得られないおそれがある。また、過剰な五塩化リンを生成させ、廃棄物量が増えるおそれがある。
【0045】
製造方法(2)において、三塩化リン及び塩素ガスのいずれかを連続的に反応容器に投入することができ、三塩化リン及び塩素ガスの両方を連続的に反応容器に投入することができる。これにより、連続的にCF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Clを製造できることができる。
【0046】
また、五塩化リンが上記ビニルエーテルと反応する速度に合わせて、五塩化リンの生成速度を制御することが好ましい。これにより、五塩化リンが過剰に生成して、反応容器に付着して各原料の供給口を閉塞させたり、付着した多量の五塩化リンが一度に脱落して反応を不安定にしたりする不利益を回避できる。
【0047】
また、三塩化リンと塩素ガスとの投入比率を制御して、塩素ガスと三塩化リンとの反応容器内での存在比を制御することが好ましい。これにより、反応容器内に塩素ガスが過剰に存在して、上記ビニルエーテルのビニル基に塩素が付加することにより、CF
2Cl−CFCl−OCF
2CF
2SO
2Clを生成する副反応の進行も抑制できる。
【0048】
本発明の製造方法(1)又は(2)で得られたCF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Clを、公知の方法によりフッ素化して、CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Fを製造することができる。得られたCF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Fは、電解質膜又はイオン交換膜を構成するポリマーの原料モノマーとして有用な化合物である。
【0049】
電解質膜又はイオン交換膜は、例えば固体高分子電解質型燃料電池の電解質用膜、リチウム電池用膜、食塩電解用膜、水電解用膜、ハロゲン化水素酸電解用膜、酸素濃縮器用膜、湿度センサー用膜、ガスセンサー用膜等として使用できる。
【実施例】
【0050】
つぎに本発明を実験例をあげて説明する。
【0051】
実験例1
製造方法(1)の例を示す。
還流冷却器、温度計および攪拌機を備えた200mlのガラス容器に三塩化リン97.1g(0.706モル)を投入した。その後、撹拌しながらガラス容器をオイルバスにて90℃に加熱し、還流下で塩素ガス30.0g(0.423モル)を9時間にわたって供給した。生成した五塩化リンは三塩化リンに溶解し、固体状の五塩化リンのガラス容器壁面への付着は無かった。
一方、還流冷却器、温度計および攪拌機を備えた300mlのガラス容器にCF
2=CFOCF
2CF
2SO
3Na78.4g(0.261モル)を投入した。その後、撹拌しながら300mLガラス容器をオイルバスにて90℃に加熱し、上記の五塩化リンが三塩化リンに溶解した溶液の全量を2時間にわたって滴下した。この時、塩酸ガスの発生はあったが、滴下速度を調整しながら滴下したので、泡立ちによる反応液の溢れ出しはなかった。還流下で1時間保持した後、過剰の三塩化リンを抜き出した。その後、ガラス容器を140℃まで徐々に昇温し、105℃前後の留分を抜き出した。得られた留分を253gの冷水中に滴下して、2相に分かれた液の下部を抜き出し、CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Cl 57.9g(0.195モル)を得た。
【0052】
実験例2
製造方法(2)の例を示す。
還流冷却器、温度計および攪拌機を備えた100mlのガラス容器にCF
2=CFOCF
2CF
2SO
3Na10.0g(0.033モル)および三塩化リン40.0g(0.291モル)を投入した。その後、撹拌しながらガラス容器をオイルバスにて90℃に加熱し、還流下で塩素ガス4.0g(0.056モル)を1時間にわたって供給した。生成した五塩化リンは三塩化リンに溶解し、固体状の五塩化リンのガラス容器壁面への付着は無かった。
塩素ガスの供給後、還流下で1時間保持した後、過剰の三塩化リンを抜き出した。その後、ガラス容器を150℃まで徐々に昇温し、105℃前後の留分を抜き出した。得られた留分を30gの冷水中に滴下して、2相に分かれた液の下部を抜き出し、CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Cl 7.0g(0.024モル)を得た。
【0053】
実験例3
製造方法(1)の例を示す。
還流冷却器、温度計および攪拌機を備えた200mlのガラス容器に三塩化リン97.1g(0.706モル)を投入した。その後、撹拌しながらガラス容器をオイルバスにて90℃に加熱し、還流下で塩素ガス30.0g(0.423モル)を9時間にわたって供給した。生成した五塩化リンは三塩化リンに溶解し、固体状の五塩化リンのガラス容器壁面への付着は無かった。
一方、還流冷却器、温度計および攪拌機を備えた300mlのガラス容器にCF
2=CFOCF
2CF
2SO
3Na78.4g(0.261モル)およびオキシ塩化リン38.8gを投入した。その後、撹拌しながら300mLガラス容器をオイルバスにて90℃に加熱し、上記の五塩化リンが三塩化リンに溶解した溶液の全量を2時間にわたって滴下した。この時、塩酸ガスの発生はあったが、滴下速度を調整しながら滴下したので、泡立ちによる反応液の溢れ出しはなかった。還流下で1時間保持した後、過剰の三塩化リンを抜き出した。その後、ガラス容器を140℃まで徐々に昇温し、105℃前後の留分を抜き出した。得られた留分を300gの冷水中に滴下して、2相に分かれた液の下部を抜き出し、CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Cl 66.3g(0.224モル)を得た。
【0054】
実験例4
製造方法(2)の例を示す。
還流冷却器、温度計および攪拌機を備えた100mlのガラス容器にCF
2=CFOCF
2CF
2SO
3Na10.0g(0.033モル)、オキシ塩化リン6.0gおよび三塩化リン40.0g(0.291モル)を投入した。その後、撹拌しながらガラス容器をオイルバスにて90℃に加熱し、還流下で塩素ガス4.0g(0.056モル)を1時間にわたって供給した。生成した五塩化リンは三塩化リンに溶解し、固体状の五塩化リンのガラス容器壁面への付着は無かった。
塩素ガスの供給後、還流下で1時間保持した後、過剰の三塩化リンを抜き出した。その後、ガラス容器を150℃まで徐々に昇温し、105℃前後の留分を抜き出した。得られた留分を40gの冷水中に滴下して、2相に分かれた液の下部を抜き出し、CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Cl 8.1g(0.027モル)を得た。
【0055】
実験例5
製造方法(2)の例を示す。(B)及び(C)を実施する。
還流冷却器、温度計および攪拌機を備えた200mlのガラス容器にCF
2=CFOCF
2CF
2SO
3Na10.0g(0.033モル)、オキシ塩化リン34.0gおよび三塩化リン13.7g(0.100モル)を投入した。その後、撹拌しながらガラス容器をオイルバスにて70℃に加熱し、塩素ガス4.0g(0.056モル)を1時間にわたって供給した。生成した五塩化リンはオキシ塩化リンに溶解し、固体状の五塩化リンのガラス容器壁面への付着は無かった。
塩素ガスの供給後、90℃で1時間保持した後、ガラス容器を150℃まで徐々に昇温し、105℃前後の留分を抜き出した。得られた留分を65gの冷水中に滴下して、2相に分かれた液の下部を抜き出し、CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Cl 7.4g(0.025モル)を得た。
【0056】
実験例6
製造方法(2)の例を示す。(B)を実施する。
還流冷却器、温度計および攪拌機を備えた200mlのガラス容器にCF
2=CFOCF
2CF
2SO
3Na68.6g(0.229モル)、オキシ塩化リン34.0gおよび三塩化リン49.6g(0.361モル)を投入した。その後、撹拌しながらガラス容器を氷浴で冷却し、塩素ガス20.0g(0.282モル)を6時間にわたって供給した。その際ガラス容器壁面および還流冷却器は生成した五塩化リンの白色結晶で覆われた。塩素ガスの供給後、オイルバスにてガラス容器を90℃まで徐々に昇温し、還流下で1時間保持したところ、ガラス容器壁面の白色結晶は消失した。過剰の三塩化リンを抜き出した後、さらにガラス容器を150℃まで徐々に昇温し、105℃前後の留分を抜き出した。得られた留分を147gの冷水中に滴下して、2相に分かれた液の下部を抜き出し、CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Cl 14.8g(0.050モル)を得た。
【0057】
実験例7
製造方法(1)の例を示す。実験例1に比べてビニルエーテルに対する五塩化リンの投入量を減少させる。
還流冷却器、温度計および攪拌機を備えた200mlのガラス容器に三塩化リン97.1g(0.706モル)を投入した。その後、撹拌しながらガラス容器をオイルバスにて90℃に加熱し、還流下で塩素ガス18.4g(0.259モル)を9時間にわたって供給した。生成した五塩化リンは三塩化リンに溶解し、固体状の五塩化リンのガラス容器壁面への付着は無かった。
一方、還流冷却器、温度計および攪拌機を備えた300mlのガラス容器にCF
2=CFOCF
2CF
2SO
3Na 78.4g(0.261モル)を投入した。その後、撹拌しながら300mLガラス容器をオイルバスにて90℃に加熱し、上記の五塩化リンが三塩化リンに溶解した溶液の全量を2時間にわたって滴下した。還流下で1時間保持した後、過剰の三塩化リンを抜き出した。その後、ガラス容器を140℃まで徐々に昇温し、105℃前後の留分を抜き出した。得られた留分を253gの冷水中に滴下して、2相に分かれた液の下部を抜き出し、CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Cl 38.7g(0.131モル)を得た。
【0058】
実験例8
製造方法(2)の例を示す。(A)および(C)を実施する。
還流冷却器、温度計および攪拌機を備えた100mlのガラス容器にCF
2=CFOCF
2CF
2SO
3Na10.0g(0.033モル)、オキシ塩化リン34.0gおよび三塩化リン4.6g(0.033モル)を投入した。その後、撹拌しながらガラス容器をオイルバスにて90℃に加熱し、還流下で塩素ガス4.0g(0.056モル)を1時間にわたって供給した。三塩化リンが消費されるにつれて還流はなくなった。生成した五塩化リンはオキシ塩化リンに溶解し、固体状の五塩化リンのガラス容器壁面への付着は無かった。
塩素ガスの供給後、90℃で1時間保持した後、ガラス容器を150℃まで徐々に昇温し、105℃前後の留分を抜き出した。得られた留分を65gの冷水中に滴下して、2相に分かれた液の下部を抜き出し、CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Clを 4.9g(0.017モル)を得た。