特許第6582720号(P6582720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6582720
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20190919BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   G03G15/16 103
   G03G15/01 Y
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-161172(P2015-161172)
(22)【出願日】2015年8月18日
(65)【公開番号】特開2017-40717(P2017-40717A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】森崎 想
(72)【発明者】
【氏名】安藤 裕喜
【審査官】 三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−174992(JP,A)
【文献】 特開2014−081493(JP,A)
【文献】 特開2008−216532(JP,A)
【文献】 特開2013−246370(JP,A)
【文献】 特開平09−212003(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0270829(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 15/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる色のトナー像を保持する複数の像保持体と、
前記複数の像保持体からトナー像が転写されるとともに前記トナー像を記録媒体に転写する中間転写体と、
前記複数の像保持体に保持されたトナー像を前記中間転写体に転写する手段であって電源が共通化された複数の一次転写手段と、
画像形成モードを前記複数の像保持体に対応する色のトナー像を形成する第1のモードと、前記複数の像保持体のうち、単一の像保持体に対応する色のトナー像を形成する第2のモードに切り替える切替手段と、
複数の前記記録媒体に続けて画像を形成する連続した画像形成動作中に、複数の前記記録媒体のうち、一部の前記記録媒体に画像形成動作が終了した後に他の前記記録媒体に画像形成動作を実行するにあたり前記切替手段によって画像形成モードを切り替える際に、前記複数の一次転写手段の転写バイアス値を前記像保持体の電位上昇を抑制する第1の閾値以上であって、且つ前記像保持体から前記中間転写体へのトナー付着を抑制する第2の閾値以下に設定する設定手段と、
を具備する画像形成装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記複数の一次転写手段に供給する転写バイアスの電流値を画像形成時の1/5〜1/7に設定する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記複数の像保持体は、前記中間転写体を介して前記各一次転写手段により除電される請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記設定手段は、第1のモードから第2のモードへ切り替える際であって前記第1のモードの終了時に、前記複数の像保持体のうち、前記第2のモードで使用する前記像保持体に対応した前記一次転写手段の転写バイアス値を、前記第1の閾値以上であって且つ前記第2の閾値以下に設定する請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記設定手段は、第2のモードから第1のモードへ切り替える際に、前記複数の像保持体のうち、前記第2のモードで使用する前記像保持体に対応した前記一次転写手段の転写バイアス値を、前記第1の閾値以上であって且つ前記第2の閾値以下に設定する請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置としては、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の感光体ドラム上にそれぞれ形成されたトナー像を中間転写体に重ね合わせて一次転写した後、中間転写体上に一次転写されたトナー像を記録媒体に一括して二次転写することにより画像を形成するように構成したものがある。この画像形成装置では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー像を用いたフルカラーモードと、ブラック(K)色のトナー像のみを用いたモノクロモードとに切り替えられる。
【0003】
画像形成装置におけるモード切替に関連する技術としては、例えば、特許文献1等に記載されたものが既に提案されている。
【0004】
特許文献1は、像形成体、像形成手段及び1次転写手段を有する像形成部が中間転写体に対向して複数設けられるとともに、中間転写体に対向して2次転写手段が設けられ、複数の像形成部において形成したトナー像を中間転写体に転写した後に、中間転写体上のトナー像を2次転写手段により形成される2次転写位置に供給された記録材に転写する画像形成装置であって、
複数の画像形成部の全てにおいて形成されたトナー像を中間転写体に転写し、中間転写体から記録材に転写して、記録材に画像を形成する第1モード及び画像形成部の一部において形成されたトナー像を中間転写体に転写し、中間転写体から記録材に転写する第2モードを有する画像形成装置において、
第1モードと第2モードとの切り替えが連続動作中に行われ、且つ、第1モードから第2モードに移行する際に、画像形成部のそれぞれに設けられた1次転写圧着手段による圧着を、一旦全部解除した後に、画像形成が行われる画像形成部の1次転写圧着手段を作動させて第2モードに移行する制御を行う制御手段を有するように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−341399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、複数の記録媒体に続けて画像を形成する連続した画像形成動作中に、複数の記録媒体のうち、一部の記録媒体に画像形成動作が終了した後に他の記録媒体に画像形成動作を実行するにあたり画像形成モードを切り替える際に、切替前のモードを一旦全部解除した後に切替後のモードを実行する場合に比較して、モード切替に要する時間を短縮することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された発明は、互いに異なる色のトナー像を保持する複数の像保持体と、
前記複数の像保持体からトナー像が転写されるとともに前記トナー像を記録媒体に転写する中間転写体と、
前記複数の像保持体に保持されたトナー像を前記中間転写体に転写する手段であって電源が共通化された複数の一次転写手段と、
画像形成モードを前記複数の像保持体に対応する色のトナー像を形成する第1のモードと、前記複数の像保持体のうち、単一の像保持体に対応する色のトナー像を形成する第2のモードに切り替える切替手段と、
複数の前記記録媒体に続けて画像を形成する連続した画像形成動作中に、複数の前記記録媒体のうち、一部の前記記録媒体に画像形成動作が終了した後に他の前記記録媒体に画像形成動作を実行するにあたり前記切替手段によって画像形成モードを切り替える際に、前記複数の一次転写手段の転写バイアス値を前記像保持体の電位上昇を抑制する第1の閾値以上であって、且つ前記像保持体から前記中間転写体へのトナー付着を抑制する第2の閾値以下に設定する設定手段と、
を具備する画像形成装置である。
【0008】
請求項2に記載された発明は、前記設定手段は、前記複数の一次転写手段に供給する転写バイアスの電流値を画像形成時の1/5〜1/7に設定する請求項1に記載の画像形成装置である。
【0009】
請求項3に記載された発明は、前記複数の像保持体は、前記中間転写体を介して前記各一次転写手段により除電される請求項1又は2に記載の画像形成装置である。
【0010】
請求項4に記載された発明は、前記設定手段は、第1のモードから第2のモードへ切り替える際であって前記第1のモードの終了時に、前記複数の像保持体のうち、前記第2のモードで使用する前記像保持体に対応した前記一次転写手段の転写バイアス値を、前記第1の閾値以上であって且つ前記第2の閾値以下に設定する請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置である。
【0011】
請求項5に記載された発明は、前記設定手段は、第2のモードから第1のモードへ切り替える際に、前記複数の像保持体のうち、前記第2のモードで使用する前記像保持体に対応した前記一次転写手段の転写バイアス値を、前記第1の閾値以上であって且つ前記第2の閾値以下に設定する請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された発明によれば、複数の記録媒体に続けて画像を形成する連続した画像形成動作中に、複数の記録媒体のうち、一部の記録媒体に画像形成動作が終了した後に他の記録媒体に画像形成動作を実行するにあたり画像形成モードを切り替える際に、切替前のモードを一旦全部解除した後に切替後のモードを実行する場合に比較して、モード切替に要する時間を短縮することができる。
【0013】
請求項2に記載された発明によれば、複数の一次転写手段に供給する転写バイアスの電流値を画像形成時の1/5〜1/7に設定しない場合に比較して、像保持体の電位上昇及び中間転写体へのトナー付着を抑制することができる。
【0014】
請求項3に記載された発明によれば、複数の像保持体を、中間転写体を介して各一次転写手段により除電しない場合に比較して、除電手段が不要となる。
【0015】
請求項4に記載された発明によれば、第1のモードから第2のモードへ切り替える際であって前記第1のモードの終了時に、前記複数の像保持体のうち、前記第2のモードで使用する前記像保持体に対応した前記一次転写手段の転写バイアス値を、前記第1の閾値以上であって且つ前記第2の閾値以下に設定しない場合に比較して、像保持体の過剰帯電及び中間転写体へのトナー付着を抑制することができる。
【0016】
請求項5に記載された発明によれば、第2のモードから第1のモードへ切り替える際に、前記複数の像保持体のうち、前記第2のモードで使用する前記像保持体に対応した前記一次転写手段の転写バイアス値を、前記複数の像保持体の電位上昇を抑制する第1の閾値以上の値に設定しない場合に比較して、像保持体の過剰帯電及び中間転写体へのトナー付着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の実施の形態1に係る画像形成装置を示す全体構成図である。
図2】この発明の実施の形態1に係る画像形成装置のカラーモードにおける画像形成部を示す構成図である。
図3】この発明の実施の形態1に係る画像形成装置のモノクロモードにおける画像形成部を示す構成図である。
図4】画像形成装置の制御装置を示すブロック図である。
図5】一次転写装置の一次転写バイアス値と感光体ドラムの表面電位との関係を示すグラフである。
図6】一次転写装置の一次転写バイアス値と記録用紙の裏面先端汚れとの関係を示すグラフである。
図7】この発明の実施の形態1に係る画像形成装置の動作を示すタイミングチャートである。
図8】この発明の実施の形態1に係る画像形成装置の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
[実施の形態1]
図1はこの発明の実施の形態1に係る画像形成装置の全体の概要を示し、図2はその画像形成装置における要部(作像装置など)を拡大して示している。
【0020】
<画像形成装置の全体の構成>
実施の形態1に係る画像形成装置1は、例えばカラープリンタとして構成されたものである。この画像形成装置1は、現像剤4を構成するトナーで現像されるトナー像を形成する複数の作像装置10と、各作像装置10で形成されたトナー像をそれぞれ保持して最終的に記録媒体の一例としての記録用紙5に二次転写する二次転写位置まで搬送する中間転写装置20と、中間転写装置20の二次転写位置に供給すべき所要の記録用紙5を収容して搬送する給紙装置50と、中間転写装置20で二次転写された記録用紙5上のトナー像を定着させる定着装置40等を備えている。なお、図中の1aは画像形成装置1の本体を示し、この本体1aは支持構造部材、外装カバー等で形成されている。
【0021】
作像装置10は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー像をそれぞれ専用に形成する4つの作像装置10Y,10M,10C,10Kで構成されている。これらの4つの作像装置10(Y,M,C,K)は、本体1aの内部空間において傾斜した状態で1列に並べた状態となるよう配置されている。また、ブラック(K)の作像装置10Kは、中間転写装置20の中間転写ベルト21の移動方向に沿った最も下流側に配置されている。
【0022】
各作像装置10(Y,M,C,K)は、図1図2に示されるように、像保持体の一例としての回転する感光体ドラム11を備えており、この感光体ドラム11の周囲に、次のようなトナー像形成手段の一例としての各装置が主に配置されている。主な装置とは、感光体ドラム11の像形成が可能な周面(像保持面)を所要の電位に帯電させる帯電手段の一例としての帯電装置12と、感光体ドラム11の帯電された周面に画像の情報(信号)に基づく光を照射して電位差のある(各色用の)静電潜像を形成する静電潜像形成手段の一例としての露光装置13と、その静電潜像を対応する色(Y,M,C,K)の現像剤4のトナーで現像してトナー像にする現像手段の一例としての現像装置14(Y,M,C,K)と、その各トナー像を中間転写装置20に転写する一次転写手段の一例としての一次転写装置15(Y,M,C,K)と、一次転写後における感光体ドラム11の像保持面に残留して付着するトナー等の付着物を取り除いて清掃するドラム清掃装置16(Y,M,C,K)等である。なお、各作像装置10(Y,M,C,K)は、感光体ドラム11の表面を直接的に除電する除電手段を備えていない。
【0023】
感光体ドラム11は、接地処理される円筒状又は円柱状の基材の周面に感光材料からなる光導電性層(感光層)を有する像保持面を形成したものである。この感光体ドラム11は、図示しない回転駆動装置から動力が伝達されて矢印Aで示す方向に回転するように支持されている。
【0024】
帯電装置12は、感光体ドラム11に接触した状態で配置される接触型の帯電ロールで構成される。帯電装置12には後述する電源装置から帯電用電圧が供給される。帯電用電圧としては、現像装置14が反転現像を行うものである場合、その現像装置14から供給されるトナーの帯電極性(例えば、マイナス極性)と同じ極性の電圧又は電流が供給される。なお、帯電装置12としては、感光体ドラム11の表面に非接触状態で配置されるスコロトロン等の非接触型の帯電装置を用いてもよい。
【0025】
露光装置13は、画像形成装置1に入力される画像の情報に応じて構成される光を、帯電された後の感光体ドラム11の周面に対して照射して静電潜像を形成するものである。露光装置13には、潜像形成時になると画像形成装置1に任意の手段で入力される画像の情報(信号)が送信される。
【0026】
露光装置13は、感光体ドラム11の軸方向に沿って配列された複数の発光素子としてのLED(Light Emitting Diode)により感光体ドラム11に画像情報に応じた光を照射して静電潜像を形成するLEDプリントヘッドからなるものである。なお、露光装置13としては、画像情報に応じて構成されるレーザー光を感光体ドラム11の軸方向に沿って偏向走査するものを用いても良い。
【0027】
現像装置14(Y,M,C,K)はいずれも、図2に示されるように、開口部と現像剤4の収容室が形成された筐体140の内部に、現像剤4を保持して感光体ドラム11と向き合う現像領域まで搬送する現像ロール141と、現像剤4を攪拌しながら現像ロール141を通過させるよう搬送する2つのスクリューオーガー等の攪拌搬送部材142,143と、現像ロール141に保持される現像剤の量(層厚)を規制する層厚規制部材144などを配置して構成したものである。この現像装置14には、その現像ロール141と感光体ドラム11の間に現像用電圧が図示しない電源装置から供給される。また、現像ロール141や攪拌搬送部材142,143は、図示しない回転駆動装置からの動力が伝達されて所要の方向に回転する。さらに、上記4色の現像剤4(Y,M,C,K)としては、非磁性トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤が使用される。なお、4色の現像剤4(Y,M,C,K)としては、トナーのみからなる一成分現像剤を用いても良い。なお、現像剤4を構成する非磁性トナーと磁性キャリアは、現像装置14の筐体140の内部で撹拌され、トナーがマイナス極性でキャリアがプラス極性などのように互いに逆極性に帯電する。
【0028】
一次転写装置15(Y,M,C,K)は、感光体ドラム11の周囲に中間転写ベルト21を介して接触し回転するとともに一次転写用の転写バイアスが供給される一次転写ロールを備えた接触型の転写装置である。一次転写用の転写バイアスとしては、トナーの帯電極性と逆の極性を示す直流の電圧又は電流が後述する電源装置から供給される。一次転写装置15(Y,M,C,K)は、中間転写ベルト21を介して感光体ドラム11に接触し、感光体ドラム11を除電する作用を有している。
【0029】
ドラム清掃装置16は、図2に示されるように、一部が開口する容器状の本体160と、一次転写後の感光体ドラム11の周面に所要の圧力で接触するように配置されて残留トナー等の付着物を取り除いて清掃する清掃板161と、清掃板161で取り除いたトナー等の付着物を回収して図示しない回収システムに送り出すよう搬送するスクリューオーガー等の送出部材162等で構成されている。清掃板161としては、ゴム等の材料からなる板状の部材(例えばブレード)が使用される。
【0030】
中間転写装置20は、図1に示されるように、各作像装置10(Y,M,C,K)の上方の位置に存在するように配置される。この中間転写装置20は、感光体ドラム11と一次転写装置15(一次転写ロール)の間となる一次転写位置を通過しながら矢印Bで示す方向に回転する無端状のベルト部材(中間転写体)の一例である中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21をその内面から所望の状態に保持して回転自在に支持する複数のベルト支持ロール22〜26と、ベルト支持ロール25に支持されている中間転写ベルト21の外周面(像保持面)側に配置されて中間転写ベルト21上のトナー像を記録用紙5に二次転写させる二次転写手段の一例としての二次転写装置30と、二次転写装置30を通過した後に中間転写ベルト21の外周面に残留して付着するトナー、紙粉等の付着物を取り除いて清掃するベルト清掃装置27とで主に構成されている。
【0031】
中間転写ベルト21としては、例えばポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の合成樹脂にカーボンブラック等の抵抗調整剤などを分散させた材料で製作される無端状のベルトが使用される。また、ベルト支持ロール25は二次転写手段を構成するバックアップロール且つ図示しない駆動装置によって回転駆動される駆動ロールとして構成され、ベルト支持ロール22は中間転写ベルト21に張力を付与する張力付与ロールとして構成され、ベルト支持ロール23,24は中間転写ベルト21の走行位置などを保持する従動ロールとして構成され、ベルト支持ロール26はベルト清掃装置27により清掃される中間転写ベルト21の背面を支持する支持ロールとして構成されている。ベルト支持ロール23は、後述するように、画像形成モードに応じて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)のカラー用の一次転写装置15(Y,M,C)と共に感光体ドラム11と接触及び離間する方向にリトラクト可能に構成されている。
【0032】
二次転写装置30は、図1に示されるように、中間転写装置20におけるベルト支持ロール25に支持されている中間転写ベルト21の外周面部分である二次転写位置において、中間転写ベルト21の周面に接触して回転するとともに二次転写用電圧が供給される二次転写手段を構成する二次転写ロール31を備えた接触型の転写装置である。二次転写ロール31又は中間転写装置20の駆動ロール25には、トナーの帯電極性と逆極性又は同極性を示す直流の電圧が二次転写用電圧として供給される。
【0033】
ベルト清掃装置27は、図2に示されるように、ドラム清掃装置16と同様に構成され、一部が開口する容器状の本体270と、二次転写後の中間転写ベルト21の周面に所要の圧力で接触するように配置されて残留トナー等の付着物を取り除いて清掃する清掃板271と、清掃板271で取り除いたトナー等の付着物を回収して図示しない回収システムに送り出すよう搬送するスクリューオーガー等の送出部材272等で構成されている。清掃板271としては、ゴム等の材料からなる板状の部材(例えばブレード)が使用される。
【0034】
定着装置40は、表面温度が所要の温度に保持されるよう加熱手段によって加熱されるドラム形態又はベルト形態の加熱用回転体41と、この加熱用回転体41の軸方向にほぼ沿う状態で所定の圧力で接触して回転するドラム形態又はベルト形態の加圧用回転体42などを配置して構成されたものである。この定着装置40では、加熱用回転体41と加圧用回転体42が接触する接触部が所要の定着処理(加熱及び加圧)を行う定着処理部になる。
【0035】
給紙装置50は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の作像装置10(Y,M,C,K)の下方側の位置に存在するように配置される。給紙装置50は、所望のサイズ、種類等の記録用紙5を積載した状態で収容する単数(又は複数)の用紙収容体51と、用紙収容体51から記録用紙5を1枚ずつ送り出す送出装置52,53とで主に構成されている。用紙収容体51は、例えば、本体1aの正面(使用者が操作時に向き合う側面)側、図示例では左側面側に引き出すことができるように取り付けられている。
【0036】
記録用紙5としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタ等に使用される普通紙やOHPシート、あるいはトレーシングペーパーなどの薄紙が挙げられる。定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録媒体5の表面もできるだけ平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等の坪量が相対的に大きい所謂厚紙なども使用することができる。
【0037】
給紙装置50と二次転写装置30との間には、給紙装置50から送り出される記録用紙5を二次転写位置まで搬送する単数(又は複数)の用紙搬送ロール対54や搬送ガイド55等で構成される給紙搬送路56が設けられている。用紙搬送ロール対54は、例えば記録用紙5の搬送時期を調整するロール(レジストロール)として構成されている。また、二次転写装置30と定着装置40との間には、二次転写装置30の二次転写ロール31から送り出される二次転写後の記録用紙5を定着装置40まで搬送するための搬送ガイド57,58等が設けられている。さらに、本体1aに形成される用紙の排出口に近い部分には、定着装置40から送り出される定着後の記録用紙5を搬送ガイド59に沿って本体1aの上部に設けられた用紙排出部60に排出するための用紙排出ロール対61が配置されている。
【0038】
定着装置40と用紙排出ロール対61との間には、用紙搬送路を切り替える切替ゲート62を備えている。用紙排出ロール対61は、その回転方向が正転方向(排出方向)と逆転方向に切り替え可能に構成されている。記録用紙5の両面に画像を形成する場合には、片面に画像が形成された記録用紙5の後端が切替ゲート62を通過した後、用紙排出ロール対61の回転方向を正転方向(排出方向)から逆転方向に切り替える。用紙排出ロール対61によって逆転方向に搬送される記録用紙5は、切替ゲート62によって搬送経路が切り替えられ、略鉛直方向に沿うように形成された両面用搬送経路63へと搬送される。両面用搬送経路63は、表裏を反転させた状態で記録用紙5を用紙搬送ロール対54へと搬送する用紙搬送ロール対64と、搬送ガイド65〜68等を備えている。
【0039】
図1中、符号70は画像形成装置1の本体1aの正面(図中、左側面)に開閉自在に設けられた手差しトレイを示しており、手差しトレイ70と用紙搬送ロール対54との間には、手差しトレイ70に収容された記録用紙5を1枚ずつ送り出す送出装置71と、複数の用紙搬送ロール対72〜74や搬送ガイド75等で構成される手差し給紙搬送路76が設けられている。
【0040】
また、図1中符号145(Y,M,C,K)は、紙面に直交する方向に沿って複数配置され、対応する現像装置14(Y,M,C,K)に供給する少なくともトナーを含む現像剤を収容したトナーカートリッジをそれぞれ示している。
【0041】
また、図1中符号100は、画像形成装置1の動作を統括的に制御する制御装置を示している。制御装置100は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、あるいはこれらCPUやROM等を接続するバス、通信インターフェイスなどを備えている。制御装置100は、一次転写装置15(Y,M,C,K)に供給する転写バイアス値を設定する設定手段としての機能を兼ね備えている。
【0042】
画像形成装置1は、制御装置100に接続された切替手段の一例としてのユーザインターフェイス101(図4参照)又は図示しないプリンタドライバを操作することにより、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4つの作像装置10(Y,M,C,K)を用いた第1のモードの一例としてのカラーモードと、ブラック(K)の作像装置10Kのみを用いた第2のモードの一例としてのモノクロ(白黒)モードとに画像形成モードを切替可能に構成されている。
【0043】
カラーモード時は、図2に示されるように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4つの作像装置10(Y,M,C,K)の感光体ドラム11が中間転写ベルト21に接触している。
【0044】
一方、モノクロモード時は、図3に示されるように、ベルト支持ロール23及びイエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)のカラー用の一次転写装置15(Y,M,C)が、感光体ドラム11(Y,M,C)の表面から離間した退避位置に図示しないリトラクト機構によってリトラクト(移動)し、ブラック(K)の作像装置10Kの感光体ドラム11のみが中間転写ベルト21に接触した状態となる。カラーモードからモノクロモードへの切替時、図3に示されるように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4つの作像装置10(Y,M,C,K)の感光体ドラム11が中間転写ベルト21に接触した状態から、ブラック(K)の作像装置10Kの感光体ドラム11のみが中間転写ベルト21に接触した状態に切り替えられる。また、モノクロモードからカラーモードへの切替時、図2に示されるように、ブラック(K)の作像装置10Kの感光体ドラム11のみが中間転写ベルト21に接触した状態から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4つの作像装置10(Y,M,C,K)の感光体ドラム11が中間転写ベルト21に接触した状態に切り替えられる。
【0045】
<画像形成装置の動作>
以下、画像形成装置1による基本的な画像形成動作について説明する。
【0046】
ここでは、まず、前記4つの作像装置10(Y,M,C,K)を使用して、4色(Y,M,C,K)のトナー像を組み合わせて構成されるフルカラー画像を形成する動作について説明する。
【0047】
画像形成装置1は、ユーザインターフェイス101によって画像形成モードがカラーモードに切り替えられ、カラーモードにおける画像形成動作(プリント)の要求の指令情報を受けると、4つの作像装置10(Y,M,C,K)、中間転写装置20、二次転写装置30、定着装置40等が始動する。
【0048】
そして、各作像装置10(Y,M,C,K)においては、図1及び図2に示されるように、まず各感光体ドラム11が矢印Aで示す方向に回転し、各帯電装置12が各感光体ドラム11の表面を所要の極性(実施の形態1ではマイナス極性)及び電位にそれぞれ帯電させる。続いて、露光装置13が、帯電後の感光体ドラム11の表面に対し、画像形成装置1に入力される画像の情報を各色成分(Y,M,C,K)に変換して得られる画像の信号に基づいて発光される光を照射し、その表面に所要の電位差で構成される各色成分の静電潜像をそれぞれ形成する。
【0049】
続いて、各作像装置10(Y,M,C,K)が、感光体ドラム11に形成された各色成分の静電潜像に対し、所要の極性(マイナス極性)に帯電された対応する色(Y,M,C,K)のトナーを現像ロール141からそれぞれ供給して静電的に付着させて現像を行う。この現像により、各感光体ドラム11に形成された各色成分の静電潜像は、その対応する色のトナーでそれぞれ現像された4色(Y,M,C,K)のトナー像として顕像化される。
【0050】
続いて、各作像装置10(Y,M,C,K)の感光体ドラム11上に形成された各色のトナー像が一次転写位置まで搬送されると、一次転写装置15が、その各色のトナー像を中間転写装置20の矢印Bで示す方向に回転する中間転写ベルト21に対して順番に重ね合わされるような状態で一次転写させる。
【0051】
また、一次転写が終了した各作像装置10では、ドラム清掃装置16が付着物を掻き取るように除去して感光体ドラム11の表面を清掃する。これにより、各作像装置10は、次の作像動作が可能な状態にされる。
【0052】
続いて、中間転写装置20では、中間転写ベルト21の回転により一次転写されたトナー像を保持して二次転写位置まで搬送する。一方、給紙装置50では、作像動作に合わせて所要の記録用紙5を給紙搬送路56に送り出す。給紙搬送路56では、レジストロールとしての用紙搬送ロール対54が記録用紙5を転写時期に合わせて二次転写位置に送り出して供給する。
【0053】
二次転写位置においては、二次転写装置30の二次転写ロール31が、中間転写ベルト21上のトナー像を記録用紙5に一括して二次転写させる。また、二次転写が終了した中間転写装置20では、ベルト清掃装置27が、二次転写後の中間転写ベルト21の表面に残留したトナー等の付着物を取り除いて清掃する。
【0054】
続いて、トナー像が二次転写された記録用紙5は、中間転写ベルト21と二次転写ロール31から剥離された後に搬送ガイド57,58を介して定着装置40まで搬送される。定着装置40では、回転する加熱用回転体41と加圧用回転体42との間の接触部に二次転写後の記録用紙5を導入して通過させることにより、必要な定着処理(加熱及び加圧)をして未定着のトナー像を記録用紙5に定着させる。最後に、定着が終了した後の記録用紙5は、その片面への画像の形成を行うだけの画像形成動作のときは、用紙排出ロール対61により、例えば、本体1aの上部に設置された用紙排出部60に排出される。
【0055】
また、記録用紙5の両面に画像を形成するときは、片面に画像が形成された記録用紙5を用紙排出ロール対61により用紙排出部60に排出せずに、用紙排出ロール対61が記録用紙5の後端を保持している間に当該用紙排出ロール対61の回転方向を逆転方向に切り替える。用紙排出ロール対61により逆転方向に搬送される記録用紙5は、切替ゲート62の上部を通過した後、用紙搬送ロール対64や搬送ガイド65〜68等を備えた両面用搬送経路63を介して表裏が反転された状態で用紙搬送ロール対54へと搬送される。用紙搬送ロール対54は、記録用紙5を転写時期に合わせて二次転写位置に送り出して供給し、記録用紙5の裏面に画像を形成して用紙排出ロール対61により本体1aの上部に設置された用紙排出部60に排出する。
【0056】
以上の動作により、4色のトナー像を組み合わせて構成されるフルカラー画像が形成された記録用紙5が出力される。
【0057】
次に、画像形成装置1において、ブラック色(K)の作像装置10Kを使用し、ブラック色(K)のトナー像からなるモノクロ画像を形成するときの画像形成動作を説明する。
【0058】
画像形成装置1は、ユーザインターフェイス101によって画像形成モードがモノクロモードに切り替えられ、モノクロモードにおける画像形成動作(プリント)の要求の指令情報を受けると、作像装置10K、転写装置20、定着装置40等が始動する。また、これに先立って、画像形成装置1は、図3に示されるように、ベルト支持ロール23及びイエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)のカラー用の一次転写装置15(Y,M,C)がカラー用の感光体ドラム11(Y,M,C)から離間する方向にリトラクト(移動)し、ブラック(K)の作像装置10Kの感光体ドラム11のみが中間転写ベルト21に接触した状態となる。
【0059】
そして、作像装置10Kにおいては、まず感光体ドラム11が矢印Aで示す方向に回転し、帯電装置12が感光体ドラム11の表面を所要の極性(実施の形態1ではマイナス極性)及び電位に帯電させる。続いて、露光装置13が、帯電後の感光体ドラム11の表面に対し、画像形成装置1に入力されるモノクロ画像の信号に基づいて発光される光を照射し、その表面に所要の電位差で構成される静電潜像を形成する。
【0060】
続いて、ブラック(K)の現像装置14が、感光体ドラム11に形成された静電潜像に対し、所要の極性(マイナス極性)に帯電されたブラック(K)のトナーを供給して静電的に付着させて現像を行う。この現像により、感光体ドラム11に形成された静電潜像は、ブラック(K)色のトナーで現像されたトナー像として顕像化される。
【0061】
続いて、作像装置10Kの感光体ドラム11上に形成されたブラック(K)色のトナー像が一次転写位置まで搬送されると、一次転写装置15Kが、そのトナー像を中間転写装置20の矢印Bで示す方向に回転する中間転写ベルト21に対して一次転写させる。
【0062】
また、一次転写が終了した作像装置10Kでは、ドラム清掃装置16が付着物を掻き取るように除去して感光体ドラム11の表面を清掃する。これにより、作像装置10Kは、次の作像動作が可能な状態にされる。
【0063】
続いて、中間転写装置20では、中間転写ベルト21の回転により一次転写されたブラック(K)色のトナー像を保持して二次転写位置まで搬送する。一方、給紙装置50では、作像動作に合わせて所要の記録用紙5を給紙搬送路56に送り出す。給紙搬送路56では、レジストロールとしての用紙搬送ロール対54が記録用紙5を転写時期に合わせて二次転写位置に送り出して供給する。
【0064】
二次転写位置においては、二次転写装置30の二次転写ロール31が、中間転写ベルト21上のトナー像を記録用紙5に二次転写させる。また、二次転写が終了した中間転写装置20では、ベルト清掃装置27が、二次転写後の中間転写ベルト21の表面に残留したトナー等の付着物を取り除いて清掃する。
【0065】
続いて、トナー像が二次転写された記録用紙5は、中間転写ベルト21と二次転写ロール31から剥離された後に搬送ガイド57,58を介して定着装置40まで搬送される。定着装置40では、回転する加熱用回転体41と加圧用回転体42との間の接触部に二次転写後の記録用紙5を導入して通過させることにより、必要な定着処理(加熱及び加圧)をして未定着のトナー像を記録用紙5に定着させる。最後に、定着が終了した後の記録用紙5は、その片面への画像の形成を行うだけの画像形成動作のときは、用紙排出ロール対61により、例えば、本体1aの上部に設置された用紙排出部60に排出される。
【0066】
以上の動作により、モノクロの画像が片面に形成された記録用紙5が出力される。なお、記録用紙5の両面にモノクロの画像を形成する動作も、カラーモードにおいて説明した動作と同様に行われる。
【0067】
<画像形成装置の要部の構成>
画像形成装置1は、図4に示されるように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各作像装置10(Y,M,C,K)の一次転写装置15(Y,M,C,K)に一次転写バイアスを供給する共通の一次転写用電源102を備えている。一次転写用電源102は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)のカラー用の一次転写装置15(Y,M,C)と、ブラック(K)のモノクロ用の一次転写装置15Kとに共通して一次転写用の転写バイアス電圧又は電流を供給する。ただし、一次転写用電源102は、カラー用の一次転写装置15(Y,M,C)とモノクロ用の一次転写装置15Kとで個別に一次転写バイアスの供給の有無を切替可能に構成されている。
【0068】
また、画像形成装置1は、二次転写装置30に二次転写バイアスを供給する二次転写用電源103と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各作像装置10(Y,M,C,K)の帯電装置12(Y,M,C,K)に帯電バイアスを供給する帯電用電源104と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各作像装置10(Y,M,C,K)の現像装置14(Y,M,C,K)に現像バイアスを供給する現像用電源105とを備えている。なお、図4においては、便宜上、帯電用電源104と現像用電源105を1つのみ図示しているが、これらの帯電用電源104及び現像用電源105は、カラー用の電源とモノクロ用の電源がそれぞれ別個に構成されている。
【0069】
これらの電源102〜105は、制御装置100から出力される制御信号により各バイアスの印加タイミング及びバイアス値が制御される。また、制御装置100は、ユーザインターフェイス101によって切り替えられた画像形成モードに応じて、各バイアスの印加タイミング及びバイアス値を設定する。
【0070】
ところで、この実施の形態に係る画像形成装置1では、連続した画像形成動作において、カラーモードで任意の枚数の記録用紙5にカラーの画像を形成した後、連続してモノクロモードで任意の枚数の記録用紙5にモノクロの画像を形成する動作が実行される場合がある。同様に、画像形成装置1では、連続した画像形成動作において、モノクロモードで任意の枚数の記録用紙5にモノクロ画像を形成した後、連続してフルカラーモードで任意の枚数の記録用紙5にフルカラーの画像を形成する動作が実行される場合がある。ここで、連続した画像形成動作とは、1つの画像形成動作を終了して、画像形成動作の終了動作を実行した後、画像形成動作の開始動作を実行した上で次の画像形成動作を実行するのではなく、1つの画像形成動作を終了した後に、画像形成動作の終了動作を実行せずに引き続き、次の画像形成動作を実行することを意味している。ユーザインターフェイス101が複数の画像形成動作を受け付け可能に構成されている場合は勿論のこと、多数枚の画像形成動作を実行中に次の画像形成動作が指定された場合などが挙げられる。
【0071】
その際、画像形成装置1は、図4に示されるように、一次転写用電源102がカラー用の一次転写装置15Y〜15Cとモノクロ用の一次転写装置15Kとで共通に構成されている。そのため、一次転写用電源102は、カラー用の一次転写装置15Y〜15Cとモノクロ用の一次転写装置15Kとで互いに異なる値の一次転写バイアスを異なるタイミングで供給することができない。ただし、一次転写用電源102は、カラー用の一次転写装置15Y〜15Cとモノクロ用の一次転写装置15Kとで一次転写バイアスの値が同じであれば、一次転写バイアスを異なるタイミングでオン・オフして供給することは可能に構成されている。
【0072】
画像形成装置1は、カラー用とモノクロ用の2つの一次転写用電源を備えていれば、例えば、連続した画像形成動作において、カラーモードからモノクロモードに切り替える際に、モノクロ用の一次転写装置15Kの一次転写バイアスを常時オン状態とするとともに、カラー用の一次転写装置15(Y,M,C)の一次転写バイアスを階段状に電圧を降下させてオフにするという動作を行うことができる。しかしながら、本実施の形態では、一次転写用電源102を1つのみしか備えておらず、上記の動作を行うことができない。
【0073】
そのため、カラーモードからモノクロモードへの切替時に、一次転写用電源102の動作をブラック(K)の一次転写装置15Kに合わせて一次転写バイアスを継続して通電した場合には、カラー用の一次転写装置15(Y,M,C)の一次転写バイアスを階段状に電圧を降下させてオフにする動作が行えず、カラー用の一次転写装置15(Y,M,C)においてもブラック(K)の一次転写装置15Kと同様に一次転写バイアスが供給されたままとなる。すると、カラー用の一次転写装置15(Y,M,C)は、カラー用の感光体ドラム11(Y,M,C)が中間転写ベルト21から離間するまでの間、カラー用の感光体ドラム11(Y,M,C)の表面に付着したオフセットトナー等のトナーが中間転写ベルト21に一次転写され、中間転写ベルト21に転写されたトナーが二次転写装置30に付着して記録用紙5の裏面汚れの要因となる。
【0074】
一方、カラーモードからモノクロモードへの切替時に、一次転写用電源102の動作をカラー用の一次転写装置15(Y,M,C)に合わせた場合には、ブラック(K)の一次転写装置15Kの一次転写バイアスがカラー用の一次転写装置15(Y,M,C)と同様に階段状に電圧を降下させてオフとなってしまい、ブラック(K)の一次転写装置15Kの一次転写バイアスをオン状態にすることができないばかりか、ブラック(K)の作像装置10Kの感光体ドラム11が過剰帯電を起こす虞れがある。
【0075】
更に説明すると、画像形成モードをカラーモードからモノクロモードに切り替える際、ブラック(K)の作像装置10Kでは、感光体ドラム11を帯電する帯電装置12が切替動作の前後を通してオン状態のままとなっている。そのため、ブラック(K)の感光体ドラム11は、帯電装置12により帯電されて表面電位が上昇するのにもかかわらず、ブラック(K)の一次転写装置15の一次転写バイアスがオフ状態となり、一次転写装置15によって感光体ドラム11を除電することができず、感光体ドラム11の帯電電位が異常に上昇する過剰帯電を引き起こす虞れがある。感光体ドラム11の過剰帯電を引き起こした場合には、感光体ドラム11の表面電位が異常に上昇し、現像装置14の現像剤4のうち、トナーと逆極性に帯電したキャリアが感光体ドラム11の表面に静電的に付着する所謂BCO(Bead Carry Over)と呼ばれるディフェクトを発生する虞れが生じる。
【0076】
逆に、画像形成装置1は、連続した画像形成動作中に、画像形成モードをモノクロモードからカラーモードへ切り替える際、カラー用とモノクロ用の2つの一次転写用電源を備えていれば、ブラック(K)の一次転写装置15Kの一次転写バイアスをオン状態としたまま、カラー用の一次転写装置15(Y,M,C)の一次転写バイアスをオフ状態から階段状に電圧を上昇させてオン状態にすることができる。しかしながら、本実施の形態では、一次転写用電源102を1つのみしか備えていないため、上記の動作を行うことができない。
【0077】
そのため、カラー用とモノクロ用で共通化された一次転写用電源102の動作をブラック(K)の一次転写装置15Kに合わせた場合には、カラー用の一次転写装置15(Y,M,C)の一次転写バイアスがオン状態のままとなり階段状に電圧を上昇させてオン状態に移行することができない。すると、カラー用の作像装置10(Y,M,C)では、モノクロモードからカラーモードへの切替時、帯電装置12(Y,M,C)の電圧を階段状に上昇させてオン状態に移行する動作が行われているため、帯電装置12(Y,M,C)による感光体ドラム11の電位上昇と合致しないこととなる。その結果、カラー用の作像装置10(Y,M,C)では、感光体ドラム11が過剰帯電を引き起こす虞れがある。感光体ドラム11(Y,M,C)が過剰帯電を引き起こすと、感光体ドラム11(Y,M,C)の表面電位が異常に上昇して、現像装置14中のトナーと逆極性に帯電したキャリアが感光体ドラム11の表面に静電的に付着する所謂BCOと呼ばれるディフェクトが発生する虞れがある。
【0078】
一方、共通化された一次転写用電源102の動作をカラー用の一次転写装置15(Y,M,C)に合わせた場合には、ブラック(K)の一次転写装置15Kをカラー用の一次転写装置15(Y,M,C)とともに一次転写バイアスを階段状に電圧を上昇させてオン状態となり、帯電装置12Kによる感光体ドラム11の電位上昇と合致せずに、モノクロ用の作像装置10Kの感光体ドラム11が過剰帯電を引き起こす虞れがある。
【0079】
そこで、この実施の形態では、連続した画像形成動作中にユーザインターフェイス101によって画像形成モードを切り替える際、一次転写用電源102の転写バイアス値を感光体ドラム11の過剰帯電を抑制する第1の閾値以上であって、且つ感光体ドラム11から中間転写ベルト21へのトナー付着に起因した記録用紙5の裏汚れを抑制する第2の閾値以下に設定している。
【0080】
更に説明すると、この実施の形態では、連続した画像形成動作中に、画像形成モードをカラーモードからモノクロモードに切り替える際、図4に示されるように、制御装置100によって一次転写装置15(Y,M,C,K)に一次転写バイアスを供給する一次転写用電源102を制御し、一次転写用電源102から供給される一次転写用の転写バイアスの電流値を通常の画像形成時の値である10〜12μAの1/5〜1/7の値である2〜4μAに切り替えるように構成している。
【0081】
一次転写用の転写バイアス電流値は、図5に示されるように、連続した画像形成動作中に、画像形成モードをカラーモードからモノクロモードに切り替える際、カラーの作像装置10(Y,M,C)に合わせて一次転写装置15(Y,M,C,K)の一次転写バイアス電流値をオフ状態(ゼロ)とした場合、BCOが発生する表面電位の下限値VBCOに近い値にカラーの作像装置10(Y,M,C)の感光体ドラム11の表面電位が上昇してしまうこととなる。そのため、一次転写装置15(Y,M,C,K)には、感光体ドラム11の過剰帯電を抑制するため、第1の閾値I以上の一次転写バイアス電流値を供給することが望ましい。ここで、第1の閾値Iは、画像形成装置1のプロセススピードや感光体ドラム11の帯電電位等の種々の要因によって異なるが、本発明者らの研究によれば、通常の画像形成時に一次転写装置15(Y,M,C,K)に供給する一次転写バイアスの電流値である10〜12μAに対して、1/5〜1/7に相当する2μA以上の値に設定することが望ましいことが判明している。
【0082】
また、この実施の形態では、連続した画像形成動作中に、画像形成モードをモノクロモードからフルカラーモードに切り替える際、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各作像装置10(Y,M,C,K)の一次転写装置15(Y,M,C,K)に一次転写バイアスを供給する一次転写用電源102を制御装置100によって制御し、一次転写用電源102の一次転写用の転写バイアス電流値を感光体ドラム11から中間転写ベルト21へのトナー付着を抑制する第2の閾値以下に設定されている。
【0083】
一次転写用の転写バイアス電流値は、図6に示されるように、連続した画像形成動作中に、画像形成モードをモノクロモードからカラーモードに切り替える際、モノクロの作像装置10Kに合わせて一次転写装置15(Y,M,C)の一次転写バイアス電流値を通常の画像形成時と同様の値に設定した場合、カラー用の感光体ドラム11(Y,M,C)が中間転写ベルト21に接触すると、カラー用の感光体ドラム11(Y,M,C)の表面に付着したオフセットトナー等のトナーが中間転写ベルト21に転写されてしまい、中間転写ベルト21から二次転写ロール31に付着して記録用紙5の裏面汚れの原因となる。そのため、一次転写装置15(Y,M,C,K)には、中間転写ベルト21へのトナー付着を抑制するため、第2の閾値I以下の一次転写バイアス電流値を供給することが望ましい。ここで、第2の閾値Iは、画像形成装置1のプロセススピードや中間転写ベルト21の抵抗値などの種々の要因によって異なるが、本発明者らの研究によれば、通常の画像形成時に一次転写装置15(Y,M,C,K)に供給する一次転写バイアスの電流値である10〜12μAに対して、1/5〜1/7に相当する4μA以下の値に設定することが望ましいことが判明している。
【0084】
<画像形成装置の動作>
この実施の形態1に係る画像形成装置1では、連続した画像形成動作中に画像形成モードが切り替えられた場合、次のようにして各作像装置10(Y,M,C,K)の一次転写装置15(Y,M,C,K)に供給される一次転写用の転写バイアス値が切り替えられる。
【0085】
画像形成装置1では、連続した画像形成動作中に画像形成モードがカラーモードからモノクロモードに切り替えられる際、図7に示されるように、フルカラーモードの終了時、カラーの帯電装置12(Y,M,C)の帯電電圧を階段状に降下させてオフ状態に移行させるとともに、モノクロの帯電装置12Kの帯電電圧をオン状態としたまま維持する。同様に、画像形成装置1は、フルカラーモードの終了時、カラーの現像装置14(Y,M,C)の現像バイアス電圧を階段状に降下させてオフ状態とするとともに、モノクロの現像装置14Kの現像バイアス電圧をオン状態としたまま維持する。
【0086】
一方、画像形成装置1は、フルカラーモードの終了時、カラーの一次転写装置15(Y,M,C)に供給される一次転写用の転写バイアス値を、カラーの帯電装置12(Y,M,C)の帯電電圧が第2の値に低下した後のタイミングt1において2〜4μAの値に切り替えた後にオフ状態とする。
【0087】
また、モノクロの一次転写装置15Kは、一次転写用の転写バイアス値をタイミングt1において2〜4μAの値に切り替えた後、リトラクト動作を開始するタイミングt2までの間にわたり同じ値を維持する。また、モノクロの一次転写装置15Kは、一次転写用の転写バイアス値をリトラクト動作中だけオフ状態とした後、リトラクト動作終了と同時に画像形成時の値である10〜12μAの値に立ち上げる。
【0088】
そのため、この実施の形態に係る画像形成装置1では、連続した画像形成動作中に画像形成モードが切り替えられる際に、それまで実行されていたカラーモードを終了する画像形成終了動作を実行した後、画像形成動作の立ち上げを実行してモノクロモードに切り替える必要がなく、連続して次のモノクロモードに移行することができるので、モード切替に要する時間が短縮される。また、画像形成装置1では、連続した画像形成動作中に画像形成モードがフルカラーモードからモノクロモードに切り替えられる際に、モノクロの一次転写装置15Kに供給する一次転写用の転写バイアス値をカラーの一次転写装置15(Y,M,C)に合わせてオフ状態とした場合のように、ブラック(K)の感光体ドラム11の帯電電位が過剰に上昇することを回避乃至抑制することができ、感光体ドラム11の過剰帯電に起因したBCO等のディフェクトの発生が回避される。
【0089】
また、この実施の形態に係る画像形成装置1では、連続した画像形成動作中に画像形成モードがフルカラーモードからモノクロモードに切り替えられる際に、カラーの一次転写装置15(Y,M,C)にモノクロの一次転写装置15Kと同様に一次転写用の転写バイアス値が供給されることがなく、カラー用の感光体ドラム11(Y,M,C)のオフセットトナー等が中間転写ベルト21に転写されて記録用紙5の裏汚れが発生することを抑制することができる。
【0090】
一方、画像形成装置1では、連続した画像形成動作中に画像形成モードがモノクロモードからカラーモードに切り替えられると、図8に示されるように、モノクロモードの終了時、カラーの帯電装置12(Y,M,C)の帯電電圧を階段状に上昇させてオン状態に移行させるとともに、モノクロの帯電装置12Kの帯電電圧をオン状態としたまま維持する。同様に、画像形成装置1は、モノクロモードの終了時、カラーの現像装置14(Y,M,C)の現像バイアス電圧を階段状に上昇させてオン状態とするとともに、モノクロの現像装置14Kの現像バイアス電圧をオン状態としたまま維持する。
【0091】
画像形成装置1は、モノクロモードの終了時、オフ状態とされていたカラーの一次転写装置15(Y,M,C)の一次転写用の転写バイアス値を、リトラクト動作中に2〜4μAの値に立ち上げる。その後、カラーの帯電装置12(Y,M,C)の帯電電圧が立ち上げられた後に、カラーの一次転写装置15(Y,M,C)の一次転写用の転写バイアス値を通常の画像形成時の値である10〜12μAまで立ち上げる。
【0092】
また、画像形成装置1は、モノクロモードの終了時、モノクロの一次転写装置15Kの一次転写用の転写バイアス値を2〜4μAの値に維持した後、リトラクト動作中、一次転写用の転写バイアス値をオフ状態(ゼロ)とする。その後、画像形成装置1は、制御装置100によりリトラクト動作の終了に同期させてモノクロの一次転写装置15Kの一次転写用の転写バイアス値を2〜4μAの値に立ち上げた後、カラーの一次転写装置15(Y,M,C)と同じタイミングt3で一次転写用の転写バイアス値を通常の画像形成時の値である10〜12μAに立ち上げる。
【0093】
そのため、この実施の形態に係る画像形成装置1では、連続した画像形成動作中に画像形成モードがモノクロモードからカラーモードに切り替えられる際に、カラーの一次転写装置15(Y,M,C)に供給する一次転写用の転写バイアス値を、モノクロの一次転写装置15Kに合わせた場合のように、帯電装置12(Y,M,C)による感光体ドラム11の電位上昇と合致せずに、カラー用の作像装置10Kの感光体ドラム11(Y,M,C)が過剰帯電を引き起こす虞れが回避乃至抑制される。
【符号の説明】
【0094】
1…画像形成装置
1a…装置本体
10…作像装置
11…感光体ドラム
12…帯電装置
13…露光装置
14…現像装置
15…一次転写装置
20…中間転写装置
21…中間転写ベルト
100:制御装置
101…ユーザインターフェイス
102:一次転写用電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8