【文献】
古沢 聡 他,波長可変型WDM/TDM−PONにおける映像信号混在時の無瞬断波長切替動作検証,電子情報通信学会2015年総合大会講演論文集 通信2,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2015年 2月24日,p.306
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の加入者側終端装置のいずれかと経路切替が可能に接続されると共に接続された前記加入者側終端装置との間でパケットを送受信して通信経路を構成し、かつ上位通信網と接続される局側終端装置であって、
パケットを一時的に蓄積させるスルーキューと1以上の切替キューとを含むバッファ部と、前記通信経路において経路切替が発生した場合に、切替対象の加入者側終端装置宛のユニキャストパケット、及び切替対象の全加入者側終端装置宛パケットを前記切替キューに蓄積させ、非切替対象の加入者側終端装置宛のユニキャストパケット、及び非切替対象の全加入者側終端装置宛パケットを前記スルーキューに蓄積させる加入者側終端装置振分部と、前記バッファ部に蓄積されたパケットを読み出すと共に接続された前記加入者側終端装置に向けて出力するスケジューラ部と、を各々備える複数の終端装置、及び、
前記上位通信網から受け取ったユニキャストパケットを当該ユニキャストパケットの宛先の加入者側終端装置が登録されている前記終端装置に送り、前記上位通信網から受け取った全加入者側終端装置宛パケットを当該パケットで指定された1以上の前記終端装置に複製して送る終端装置振分部を含み、
前記全加入者側終端装置宛パケットは、全加入者側終端装置宛パケットのそれぞれを識別する識別子を有し、
前記終端装置振分部は、前記上位通信網から受け取った全加入者側終端装置宛パケットを、前記識別子により指定された1以上の前記終端装置に複製して送り、
前記局側終端装置は、全加入者側終端装置宛パケットが有する前記識別子と、前記識別子が指定する送り先の終端装置とを対応付けたテーブルを有する
局側終端装置。
前記終端装置振分部は、前記経路切替により切替対象の加入者側終端装置が登録される終端装置が切替元の終端装置から切替先の終端装置に変更されるに際し、切替対象の加入者側終端装置宛のユニキャストパケットの送り先を前記切替元の終端装置から前記切替先の終端装置に変更すると共に、全加入者側終端装置宛パケットのうち前記切替元の終端装置と前記切替先の終端装置の両方に送られるパケットを前記切替対象の全加入者側終端装置宛パケットとしてマーキングする
請求項1に記載の局側終端装置。
前記加入者側終端装置振分部は、切替対象の加入者側終端装置と切替キューとを対応付け、かつ切替対象の全加入者側終端装置宛パケットと切替キューとを対応付ける学習テーブルを参照して蓄積先のキューを決定し、
ユニキャストパケットの宛先の加入者側終端装置が非切替対象の加入者側終端装置である場合は、当該パケットを前記スルーキューに蓄積させ、
ユニキャストパケットの宛先の加入者側終端装置が切替対象の加入者側終端装置であり、かつ、当該ユニキャストパケットを蓄積させるための切替キューが学習テーブルに登録されている場合は、当該ユニキャストパケットを登録されている前記切替キューに蓄積させ、
ユニキャストパケットの宛先の加入者側終端装置が切替対象の加入者側終端装置であり、かつ、当該ユニキャストパケットを蓄積させるための切替キューが学習テーブルに登録されていない場合は、当該ユニキャストパケットを未使用の前記切替キューに蓄積させると共に当該切替キューを学習テーブルに登録し、
パケットが全加入者側終端装置宛パケットであり、切替対象の加入者側終端装置の切替元の終端装置、及び、切替対象の加入者側終端装置の切替先の終端装置のいずれかが、当該パケットの宛先に指定された1以上の前記終端装置に含まれていない場合は、当該全加入者側終端装置宛パケットを非切替対象とすると共に前記スルーキューに蓄積させ、
パケットが全加入者側終端装置宛パケットであり、切替対象の加入者側終端装置の切替元の終端装置、及び、切替対象の加入者側終端装置の切替先の終端装置のいずれもが、当該パケットの宛先に指定された1以上の前記終端装置に含まれ、かつ、当該パケットを蓄積させるための切替キューが学習テーブルに登録されている場合は、当該全加入者側終端装置宛パケットを切替対象とすると共に登録されている前記切替キューに蓄積させ、
パケットが全加入者側終端装置宛パケットであり、切替対象の加入者側終端装置の切替元の終端装置、及び、切替対象の加入者側終端装置の切替先の終端装置のいずれもが、当該パケットの宛先に指定された1以上の前記終端装置に含まれ、かつ、当該パケットを蓄積させるための切替キューが学習テーブルに登録されていない場合は、当該全加入者側終端装置宛パケットを切替対象とすると共に未使用の前記切替キューに蓄積させ、かつ当該切替キューを学習テーブルに登録する
請求項1又は請求項2に記載の局側終端装置。
前記終端装置振分部は、加入者側終端装置と当該加入者側終端装置が登録されている終端装置とを対応付ける第1のテーブルを参照して受け取ったユニキャストパケットの送り先の終端装置を決定し、かつ全加入者側終端装置宛パケットの送り先を指定した第2のテーブルを参照して受け取った全加入者側終端装置宛パケットの1以上の送り先の終端装置を決定し、
切替対象の加入者側終端装置を切替元の終端装置から登録解除する指示、及び、切替対象の加入者側終端装置を切替先の終端装置へ登録する指示を前記終端装置の各々に行うと共に前記第1のテーブルの書替を行う局側終端装置制御部をさらに備える
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の局側終端装置。
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の局側終端装置において、切替対象の加入者側終端装置の登録先を切替元の終端装置から切替先の終端装置に変更する経路切替方法であって、
前記終端装置振分部が、切替対象の加入者側終端装置宛のユニキャストパケットの送り先を切替元の終端装置から切替先の終端装置に変更するステップと、
前記切替先の終端装置が備える加入者側終端装置振分部が学習テーブルを参照し、切替対象の加入者側終端装置宛のユニキャストパケットの切替キューが学習済みである場合は、当該加入者側終端装置宛のユニキャストパケットを学習済みの切替キューに蓄積させ、切替対象の加入者側終端装置宛のユニキャストパケットの切替キューが未学習である場合は、当該加入者側終端装置宛のユニキャストパケットを未使用の切替キューに蓄積させると共に当該切替キューを学習テーブルに登録し、切替対象の全加入者側終端装置宛パケットの切替キューが学習済みである場合は、当該全加入者側終端装置宛パケットを学習済みの切替キューに蓄積させ、切替対象の全加入者側終端装置宛パケットの切替キューが未学習である場合は、当該全加入者側終端装置宛パケットを未使用の切替キューに蓄積させると共に当該切替キューを学習テーブルに登録するステップと、
前記切替元の終端装置が備える加入者側終端装置振分部が学習テーブルを参照し、切替対象の全加入者側終端装置宛パケットの切替キューが学習済みである場合は、当該全加入者側終端装置宛パケットを学習済みの切替キューに蓄積させ、切替対象の全加入者側終端装置宛パケットの切替キューが未学習である場合は、当該全加入者側終端装置宛パケットを未使用の切替キューに蓄積させると共に当該切替キューを学習テーブルに登録するステップと、
前記切替元の終端装置に蓄積されている切替対象の加入者側終端装置宛のパケットの量が0になった後、切替先の終端装置が切替対象の加入者側終端装置宛のパケットの送信、及び切替対象の全加入者側終端装置宛パケットの送信を開始すると共に、切替元の終端装置が切替対象の全加入者側終端装置宛パケットの送信を開始するステップと、
前記切替先の終端装置の前記切替キューに蓄積されている切替対象の加入者側終端装置宛のユニキャストパケットの量が0になった後、切替対象の加入者側終端装置宛のユニキャストパケットの切替キューを学習テーブルから解放し、切替対象の加入者側終端装置宛のユニキャストパケットを前記スルーキューを介して送信するステップと、
前記切替先の終端装置の前記切替キューに蓄積されている切替対象の全加入者側終端装置宛パケットの量が0になった後、切替対象の全加入者側終端装置宛パケットの切替キューを学習テーブルから解放し、切替対象の全加入者側終端装置宛パケットを、前記スルーキューを経て送信するステップと、
を含む経路切替方法。
光ファイバ伝送路を介した前記通信経路を構成するための波長が各々割り当てられると共に当該割り当てられた波長により所定のサービスを提供する請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の局側終端装置の複数の終端装置のいずれかに接続され、前記通信経路を介して受信したパケットにより接続された終端装置の波長に応じたサービスをユーザ端末に中継する加入者側終端装置であって、
前記ユーザ端末からの前記サービスの要求を受け付けると共に受け付けた前記サービスに割り当てられた波長を特定する特定部と、
前記特定部により特定された波長が波長の変更を要する場合には、波長の切替を要求する波長切替要求メッセージを前記接続された終端装置に送信する送信部と、
前記通信経路を介して受信する波長を切替可能に構成された受信部と、
を含む加入者側終端装置。
【背景技術】
【0002】
近年、一般個人宅へ高速・広帯域なブロードバンドサービスを提供する目的で、伝送路に光ファイバを用いたFTTH(Fiber To The Home)と呼ばれるサービスが普及してきている。FTTHによるブロードバンドサービスの提供には、受動型光加入者ネットワーク(PON:Passive Optical Network)と呼ばれる光アクセスネットワークが多く利用されている。
【0003】
PONは、1つの局側終端装置(OLT:Optical Line Terminal)と、複数の加入者側終端装置(ONU:Optical Network Unit)とを、光スプリッタ(光カプラ)と呼ばれる光受動素子を用いて1本の光ケーブルを分岐させることにより、1対多に接続して構成される。PONでは、光ファイバやOLTなどを複数の加入者で共有することにより、経済的にFTTHサービスを提供することができる。
【0004】
PONには、10G−EPON(10 Gigabit Ethernet(登録商標)PON)と呼ばれるものがある(例えば、非特許文献1参照)。この非特許文献1に記載されているPONでは、ONUからOLTへ向かう通信(上り通信)には、TDMA(Time Division Multiple Access)技術が用いられ、各ONUからの信号の衝突を回避している。このTDMA技術を用いるPONは、TDM−PONとも呼ばれる。
【0005】
さらに、将来の光アクセスネットワークにおける通信需要の増大に応えるため、伝送レートが10Gbpsを超える次世代のPONとして、複数のTDM−PONをWDM(Wavelength Division Multiplexing)技術で1つのPONインフラストラクチャー(PONインフラ)上に構築する、WDM/TDM−PON(TWDM−PON)に関する研究開発が進展している(例えば、特許文献1参照)。TWDM−PONを用いることにより、PONインフラにおける伝送容量を増大させることができる。
【0006】
図6に、特許文献1に開示されたTWDM−PONの概要を示す。
図6に示すように、TWDM−PON1は、OLT2及び複数のONU6−1ないしONU6−m(mは2以上の整数)を含んで構成されている。OLT2は、TWDM−PON1を制御する制御装置3と、複数のOSU(Optical Subscriber Unit)4(4−1〜4−n:nは2以上の整数)と、OSU4の各々と接続された複数の光送受信器5(5−1〜5−n)と、を含んで構成されている。各光送受信器5は、複数のONU6と光スプリッタ7を介して接続されている。
【0007】
上り通信に関しては、OLT2の各光送受信器5の受信波長が重ならないように、OLT2の各光送受信器5の受信波長を固定的に割り付けている。この場合、ONU6の光送受信器(図示省略)の送信波長を変更することで、OLT2の各光送受信器5とONU6との接続を動的に切り替えることができる。OLT2からONU6に向かう通信(下り通信)に関しても、上り通信と同様に、OLT2の各光送受信器5の送信波長を固定的に割り付け、ONU6の光送受信器の受信波長を変更することで、OLT2の各光送受信器5とONU6との接続を動的に切り替えることができる。このため、TWDM−PON1には、広帯域化だけでなく、トラフィック変動に応じた負荷分散、障害時の経路切替による高信頼化、低負荷時における光送受信器やデバイス回路のスリープによる省電力化などの利点がある。
【0008】
ここで、TWDM−PON1において、例えば下り通信に関するOLT2とONU6との接続を動的に切り替える際には、OLT2の光送受信器5の切替と、ONU6の受信波長の切替が行われる。ONU6の受信波長が切替前波長から切替後波長に切り替わるまでの切替時間中は、ONU6では下り通信のパケット(以下、単に「下りパケット」とも称する)を受信できない。しかし、マルチメディアアプリケーションなどでは、サービス品質上、切替時間中にパケットロスが発生しないことが望ましく、無瞬断での切替処理が要求される。
【0009】
このため、切替時間中における下り通信のパケットロスを回避するために、切替時間中は、OLT2で切替対象のONU6宛のパケットをバッファリングする必要がある。入力されたパケットをバッファリングしつつ、通信経路を切り替える手段として、経路を切り替えるスイッチの前段にバッファをもち、入力されたパケットの宛先に応じてスイッチで経路を切り替える技術が、提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
一方、非特許文献2には、上記のようなTWDM−PONシステムにおいて、ONU6の送受信波長を動的に変更するための手順である波長切替シーケンスが規定されている。
【0011】
具体的には以下のような手順により実行される。すなわち、
図6において、OSU4−1に接続された光送受信器5−1の波長をλ1、OSU4−2に接続された光送受信器5−2の波長をλ2とする。また、ONU6−1の光送受信器の波長がλ1に指定されており、ONU6−1がOSU4−1に接続されている状態からOSU4−2に接続を変更する場合を考える。
【0012】
このとき、OLT2は、OSU4−1を介しONU6−1に対して、波長をλ2に切り替える指示を収容した波長切替制御メッセージを送信する。波長切替制御メッセージを受信したONU6−1は,波長切替応答メッセージをOSU4−1へ返信すると共に、自身の光送受信器の波長をλ2に変更する。波長変更完了後,ONU6−1は波長切替完了メッセージをOSU4−2へ送信し、波長切替完了メッセージを受信したOLT2は,ONU6−1の波長切替が完了したことを認識する。その後、OLT2は制御装置3におけるONU6−1宛の下りトラフィックの出力方路をOSU4−1からOSU4−2へ切り替え、ONU6−1の信号導通を再開させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ここで、TWDM−PONでは、OLTが、下りパケットをONU単位で識別し、その時点でのONUの受信波長に該当する送信波長が割り当てられている光送受信器にパケットを振り分けている。
【0016】
TWDM−PONにおいて無瞬断での経路切替を行うために、上述の特許文献2に開示されている構成を適用する場合、スイッチ前段のバッファを、TWDM−PONに収容されるONUの台数分搭載する必要がある。このため、収容されるONUの台数が多い場合、回路規模が増大する。また、各バッファにおいて、切替時間分のパケットを保持できる容量が必要なので、切替に要する時間が長い場合は、大きなバッファ量が必要になる。回路規模やバッファ量の増大は、装置実現性の面で課題となる。
【0017】
また、バッファを共有する共有バッファ方式を適用すると、収容されるONUの台数の増加に伴い、アドレス管理情報が増大する。このため、収容されるONUの台数が多い場合は、アドレス管理用に、大きなメモリが必要となり、装置実現性の面で課題となる。
【0018】
一方、一般個人宅へ提供されるブロードバンドサービスには放送型のブロードキャストサービスも含まれ、ブロードキャストサービスの提供中において、パケットロスなどのサービス品質の劣化を発生させずに波長切替動作を実施できることが必要となる。
【0019】
そのようなブロードキャストサービスの一例として、近年、VOD(Video On Demand)による超高精細4k映像配信サービスが開始されており、今後は,TWDM−PONシステムの広帯域性を利用した4k映像ブロードキャスト配信サービスなどの提供も想定されている。例えば、多チャンネルの4k映像を配信する際、波長λ1で1ch〜100ch、波長λ2で101ch〜200chを配信し、ONU側で受信したい波長及びチャンネルを選択して映像を受信するといった映像配信サービスも考えられる。
【0020】
しかしながら、このような4k映像配信サービスを提供するTWDM−PONシステムにおいて、例えば、波長λ1のONU配下の加入者から101chの視聴要求が発生した場合,非特許文献2に記載される波長切替シーケンスでは、OLTの裁量の下、OLTからの制御による波長切替制御であるため、ONUの波長切替を実施できず、希望のチャンネルが視聴できない。また、ONUが勝手に波長切替を実施すると、映像配信サービス以外の、それまで受けられていたインターネットデータ通信などのサービスが切断してしまうという課題がある。
【0021】
この発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものである。この発明の目的は、収容されるONUの台数が多い場合であっても、パケットロスを発生させることなくONUとの接続を動的に変更可能なOLTと、ONUとOLTとの接続を変更する経路切替方法とを、回路規模を増大させることなく提供することにある。また、この発明の目的は、ブロードキャストサービスの提供中においても、パケットロスを発生させることなくONUとの接続を動的に変更可能なOLTと、ONUとOLTとの接続を変更する経路切替方法とを提供することにある。さらに、本発明の目的は、従来のOLTの裁量の下、OLTからの制御による波長切替に加え、ONUの裁量の下、ONUからの要求により波長切替を実施可能なONU、TWDM−PONシステム、及び波長切替方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上述した目的を達成するために、本発明に係る局側終端装置は、複数の加入者側終端装置のいずれかと経路切替が可能に接続されると共に接続された前記加入者側終端装置との間でパケットを送受信して通信経路を構成し、かつ上位通信網と接続される局側終端装置であって、パケットを一時的に蓄積させるスルーキューと1以上の切替キューとを含むバッファ部と、前記通信経路において経路切替が発生した場合に、切替対象の加入者側終端装置宛のユニキャストパケット、及び切替対象の全加入者側終端装置宛パケットを前記切替キューに蓄積させ、非切替対象の加入者側終端装置宛のユニキャストパケット、及び非切替対象の全加入者側終端装置宛パケットを前記スルーキューに蓄積させる加入者側終端装置振分部と、前記バッファ部に蓄積されたパケットを読み出すと共に接続された前記加入者側終端装置に向けて出力するスケジューラ部と、を各々備える複数の終端装置、及び、前記上位通信網から受け取ったユニキャストパケットを当該ユニキャストパケットの宛先の加入者側終端装置が登録されている前記終端装置に送り、前記上位通信網から受け取った全加入者側終端装置宛パケットを当該パケットで指定された1以上の前記終端装置に複製して送る終端装置振分部を含
み、前記全加入者側終端装置宛パケットは、全加入者側終端装置宛パケットのそれぞれを識別する識別子を有し、前記終端装置振分部は、前記上位通信網から受け取った全加入者側終端装置宛パケットを、前記識別子により指定された1以上の前記終端装置に複製して送り、前記局側終端装置は、全加入者側終端装置宛パケットが有する前記識別子と、前記識別子が指定する送り先の終端装置とを対応付けたテーブルを有するものである。
【0023】
上述した目的を達成するために、本発明に係る経路切替方法は、上記の局側終端装置において、切替対象の加入者側終端装置の登録先を切替元の終端装置から切替先の終端装置に変更する経路切替方法であって、前記終端装置振分部が、切替対象の加入者側終端装置宛のユニキャストパケットの送り先を切替元の終端装置から切替先の終端装置に変更するステップと、前記切替先の終端装置が備える加入者側終端装置振分部が学習テーブルを参照し、切替対象の加入者側終端装置宛のユニキャストパケットの切替キューが学習済みである場合は、当該加入者側終端装置宛のユニキャストパケットを学習済みの切替キューに蓄積させ、切替対象の加入者側終端装置宛のユニキャストパケットの切替キューが未学習である場合は、当該加入者側終端装置宛のユニキャストパケットを未使用の切替キューに蓄積させると共に当該切替キューを学習テーブルに登録し、切替対象の全加入者側終端装置宛パケットの切替キューが学習済みである場合は、当該全加入者側終端装置宛パケットを学習済みの切替キューに蓄積させ、切替対象の全加入者側終端装置宛パケットの切替キューが未学習である場合は、当該全加入者側終端装置宛パケットを未使用の切替キューに蓄積させると共に当該切替キューを学習テーブルに登録するステップと、前記切替元の終端装置が備える加入者側終端装置振分部が学習テーブルを参照し、切替対象の全加入者側終端装置宛パケットの切替キューが学習済みである場合は、当該全加入者側終端装置宛パケットを学習済みの切替キューに蓄積させ、切替対象の全加入者側終端装置宛パケットの切替キューが未学習である場合は、当該全加入者側終端装置宛パケットを未使用の切替キューに蓄積させると共に当該切替キューを学習テーブルに登録するステップと、前記切替元の終端装置に蓄積されている切替対象の加入者側終端装置宛のパケットの量が0になった後、切替先の終端装置が切替対象の加入者側終端装置宛のパケットの送信、及び切替対象の全加入者側終端装置宛パケットの送信を開始すると共に、切替元の終端装置が切替対象の全加入者側終端装置宛パケットの送信を開始するステップと、前記切替先の終端装置の前記切替キューに蓄積されている切替対象の加入者側終端装置宛のユニキャストパケットの量が0になった後、切替対象の加入者側終端装置宛のユニキャストパケットの切替キューを学習テーブルから解放し、切替対象の加入者側終端装置宛のユニキャストパケットを前記スルーキューを介して送信するステップと、前記切替先の終端装置の前記切替キューに蓄積されている切替対象の全加入者側終端装置宛パケットの量が0になった後、切替対象の全加入者側終端装置宛パケットの切替キューを学習テーブルから解放し、切替対象の全加入者側終端装置宛パケットを、前記スルーキューを経て送信するステップと、を含むものである。
【0024】
上述した目的を達成するために、本発明に係る経路切替プログラムは、コンピュータに、上記の経路切替方法の各ステップを実行させるためのものである。
【0025】
上述した目的を達成するために、本発明に係る加入者側終端装置は、光ファイバ伝送路を介した前記通信経路を構成するための波長が各々割り当てられると共に当該割り当てられた波長により所定のサービスを提供する上記の局側終端装置の複数の終端装置のいずれかに接続され、前記通信経路を介して受信したパケットにより接続された終端装置の波長に応じたサービスをユーザ端末に中継する加入者側終端装置であって、前記ユーザ端末からの前記サービスの要求を受け付けると共に受け付けた前記サービスに割り当てられた波長を特定する特定部と、前記特定部により特定された波長が波長の変更を要する場合には、波長の切替を要求する波長切替要求メッセージを前記接続された終端装置に送信する送信部と、前記通信経路を介して受信する波長を切替可能に構成された受信部と、を含むものである。
【0026】
上述した目的を達成するために、本発明に係る光通信システムは、上記の局側終端装置と、前記局側終端装置と光ファイバ伝送路で接続された光スプリッタと、前記光スプリッタに接続された複数の光ファイバ伝送路に各々接続された複数の上記加入者側終端装置と、を含むものである。
【0027】
上述した目的を達成するために、本発明に係る波長切替方法は、前記局側終端装置が局側終端装置制御部をさらに含
み、前記加入者側終端装置にユーザ端末が接続され、前記加入者側終端装置から前記終端装置へ波長切替要求メッセージが送信される上記の光通信システムにおいて、前記波長切替要求メッセージを送信した切替対象の加入者側終端装置の波長を波長切替元の終端装置に割り当てられた波長から波長切替先の終端装置に割り当てられた波長に変更する波長切替方法であって、前記波長切替元の終端装置が前記波長切替要求メッセージを受信した場合に、前記局側終端装置制御部が、波長切替元の終端装置と波長切替先の終端装置とに波長切替指示メッセージを送信するステップと、前記局側終端装置制御部から前記波長切替指示メッセージを受信した切替元の終端装置が、切替対象の加入者側終端装置に波長切替制御メッセージを送信するステップと、前記波長切替制御メッセージを受信した切替対象の加入者側終端装置が、前記受信部の波長を切り替えた後、第1の波長切替完了メッセージを前記波長切替先の終端装置に送信するステップと、前記波長切替先の終端装置が前記第1の波長切替完了メッセージを受信した場合に、前記局側終端装置制御部が、前記波長切替元の終端装置及び波長切替先の終端装置に第1の切替完了メッセージを送信するステップと、前記第1の切替完了メッセージを受信した波長切替先の終端装置が、切替対象の加入者側終端装置に第2の波長切替完了メッセージを送信するステップと、前記第2の波長切替完了メッセージを受信した切替対象の加入者側終端装置が、前記ユーザ端末に第2の切替完了メッセージを送信するステップと、を含むものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るOLT及び経路切替方法によれば、同時に切替処理を行うONUの台数を制限し、切替処理中のパケットを保持する切替キューの数を収容されるONUの台数より少なくすることができる。その結果キュー数が削減されるため、バッファのアドレス管理に必要なメモリ量も削減できる。これにより、収容されるONUの台数が多い場合であっても、パケットロスを発生させることなくONUとの接続を動的に変更可能な、すなわち無瞬断切替可能なOLTと、ONUとOLTとの接続を動的に変更する経路切替方法を経済的に提供することが可能となる。
【0029】
また、本発明に係るOLT及び経路切替方法によれば、ブロードキャストサービスの提供中においても、パケットロスを発生させることなくONUとの接続を動的に変更可能なOLTと、ONUとOLTとの接続を変更する経路切替方法とを提供することが可能となる。
【0030】
すなわち、本発明に係るOLT及び経路切替方法によれば、ONUの経路切替を行っている間、切替元のOSU及び切替先のOSUの両方に送られるブロードキャストパケットを切替キューに蓄積し、切替完了後、蓄積されたパケットの送信を開始するため、例えば、切替元のOSU及び切替先OSUに配信されている映像チャンネルの提供を瞬断無く継続しつつ、切替先OSUで配信される新規の映像チャンネルを新たに提供することが可能になる。また、このとき、切替元のOSU及び切替先のOSUの両方に送られるブロードキャストパケット以外は切替キューに蓄積しないため、バッファを有効に利用することができる。
【0031】
さらに、この発明のONU、光通信システム、及び波長切替方法によれば、TWDM−PONシステムにおいて、ONUの裁量の下、ONUからの要求により波長切替を実施することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各図は、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0034】
図1を参照して、本実施の形態に係るOLT及びONUを備えるTWDM−PONの構成例について説明する。
図1は、後述する本実施の形態に係る経路切替方法を説明するためのTWDM−PONの要部構成図である。
【0035】
TWDM−PONは、PONシステムを用いた光アクセスネットワークである。TWDM−PON(光通信システム)では、OLT(局側終端装置)からONU(加入者側終端装置)に向かう下り信号と、ONUからOLTに向かう上り信号が送受信される。また、上り信号と下り信号には、OLTに接続されている上位ネットワーク(図示を省略する)とONUに接続されているユーザ端末等(
図4参照)のと間で送受信されるデータ信号、及びPONリンクを確立させるために用いられる制御信号がある。ここでは、下り信号に含まれるデータ信号(下りパケット)に関して説明し、上り信号及び下り信号に含まれる制御信号に関する説明を省略することもある。
【0036】
TWDM−PON10は、1つのOLT100と、複数のONU300−1〜m(mは2以上の整数)と、光受動素子である光スプリッタ400とを備えている。OLT100と光スプリッタ400との間、及び、ONU300−1〜mと光スプリッタ400の間は、それぞれ光ファイバで接続される。
【0037】
OLT100は、LLID識別部110、OSU振分部(終端装置振分部)120、複数のOSU(終端装置)200−1〜n(nは2以上の整数)、複数の光送信器130−1〜n、及びOLT制御部(局側終端装置制御部)140を備えて構成される。
【0038】
LLID識別部110は、OSU振分部120と接続されている。LLID識別部110は、上位ネットワークから入力された下りパケットの識別情報に基づいて、宛先のONUを識別する。下りパケットの識別情報として、例えば、イーサネット(登録商標)のパケット(フレーム)に含まれるVLAN ID(VID)を用いることができる。LLID識別部110は、VIDと論理リンク識別子(LLID:Logical Link ID)を対応付けるLLID識別テーブル112を有している。下りパケットが、特定のONU宛のユニキャストパケットである場合には、基本的に、LLIDは、接続されたONUに1対1に割り付けられる。このため、LLID識別部110は、LLID識別テーブル112を用いて、ユニキャストパケットのVIDから宛先のONU300を識別できる。LLID識別部110は、宛先のONU300に割り付けられたLLIDをユニキャストパケットに付加して、OSU振分部120に送る。
【0039】
一方、下りパケットが、全ONU宛のブロードキャストパケット(全加入者側終端装置宛パケット)である場合には、例えば、下りパケットはブロードキャストサービスに対応付けられた特定のVIDを有している。LLID識別部110は、そのVIDを有する下りパケットを、ブロードキャストパケットと識別できる。LLID識別テーブル112は、ブロードキャストサービスに対応付けられた特定のVIDに対して、当該ブロードキャストパケットを送るべき1以上のOSUを識別する情報を具備する。LLID識別部110は、ブロードキャストLLID(BC−LLID)をブロードキャストパケットに付加して、OSU振分部120に送る。
【0040】
OSU振分部120は、複数のOSU200−1〜nと接続されている。TWDM−PON10では、各ONU300−1〜mは、複数のOSU200−1〜nのいずれかに登録される。OSU振分部120は、LLIDとOSUを対応付けるLLID割当テーブル122を有している。OSU振分部120は、LLID割当テーブル122を用いて、受け取った下りパケットのLLIDから、宛先のONU300が登録されているOSU200を識別する。OSU振分部120は、識別したOSU200にユニキャストパケットを送る。また、OSU振分部120は、受け取ったパケットにBC−LLIDが付加されている場合には、そのパケットがブロードキャストパケットであることを認識する。そして、受け取ったブロードキャストパケットのVIDでLLID識別テーブル112を参照し、受け取ったブロードキャストパケットを指定された1以上のOSU200−1〜nにコピーしてそれぞれ送る。
【0041】
OSU200−1〜nは、光送信器130−1〜nと1対1に接続されている。また、光送信器130−1〜nにはそれぞれ異なる波長(λ1〜λn)が固定的に割り当てられている。光送信器130−1〜nは、光スプリッタ400を経てONU300−1〜mと接続されている。
【0042】
OSU200に入力された下りパケットは、接続されている光送信器130を経て、当該光送信器130に割り当てられた波長で、宛先のONU300に送られる。ここで、OSU200−1〜nは、光送信器130−1〜nと1対1に接続されているので、下りパケットの送信波長は、宛先のONUが登録されたOSUで定まる。従って、以下の説明では、あるOSU200−1〜nに接続されている光送信器130−1〜nに割り当てられた波長を、OSU200−1〜nに割り当てられた波長と表現することもある。
【0043】
各OSU200−1〜nは、それぞれ、ONU振分部(加入者側終端装置振分部)210、バッファ部220、スケジューラ部250及び制御信号生成部260を備えて構成される。バッファ部220は、1つのスルーキュー222、1以上の切替キュー224−1〜k(kは1以上の整数)を並列に備えている。なお、切替キュー224の数kは、同時に行える経路切替数に対応する。従って、切替キュー224は、複数設けられるのが良い。一方、切替キュー224の数kが多くなると、回路規模の増大につながる。そこで、切替キュー224の数kを、各OSU200に登録可能なONU300の台数よりも少なくし、回路規模の増大を抑えるのが良い。
【0044】
ONU振分部210は、特定のONU宛のユニキャストパケットをスルーキュー222又は切替キュー224−1〜kに送る。パケットの宛先のONUが非切替対象であるときは、当該パケットを、スルーキュー222に送る。また、ONU振分部210は、パケットの宛先のONUが切替対象であるときは、当該パケットを、切替キュー224−1〜kのいずれかに送る。ONU振分部210が、切替対象のONU宛のパケットを、複数の切替キューのいずれに送るかは、学習テーブル212を参照して決定される。
【0045】
ONU振分部210は、切替対象のONUが未学習である場合、すなわち、切替対象のONU宛のユニキャストパケットの識別子(LLID)が学習テーブルに登録されていない場合、未使用の切替キュー224のいずれかに送る。このとき、ONU振分部210は、パケットを送った先の切替キュー224、及び当該パケットの識別子を学習テーブル212に登録し、学習済みとする。ONU振分部210は、切替対象のONU宛のユニキャストパケットの識別子(LLID)が学習済みである場合、学習テーブル212に登録された切替キュー224にパケットを送る。
【0046】
一方、ONU振分部210は、全ONU宛のブロードキャストパケットをスルーキュー222又は切替キュー224−1〜kに送る。ブロードキャストパケットが非切替対象であるときは、当該パケットを、スルーキュー222に送る。また、ONU振分部210は、ブロードキャストパケットが切替対象であるときは、当該パケットを、切替キュー224−1〜kのいずれかに送る。ONU振分部210が、切替対象のブロードキャストパケットを、複数の切替キューのいずれに送るかは、学習テーブル212を参照して決定される。なお、ONU振分部210に係る処理の説明において「切替対象のブロードキャストパケット」と言う場合、これは、少なくとも切替対象のONUが収容される切替元のOSU及び切替先のOSUの両方に送られるブロードキャストパケットのことを指す。
【0047】
ONU振分部210は、切替対象のブロードキャストパケットが未学習である場合、すなわち、切替対象のブロードキャストパケットの識別子が学習テーブルに登録されていない場合、未使用の切替キュー224のいずれかに送る。このとき、ONU振分部210は、パケットを送った先の切替キュー224、及び当該パケットの識別子を学習テーブル212に登録し、学習済みとする。ONU振分部210は、切替対象のブロードキャストパケットの識別子が学習済みである場合、学習テーブル212に登録された切替キュー224にパケットを送る。
【0048】
制御信号生成部260は、PONリンクを確立するのに用いられる、ゲートパケットなどの制御信号を生成する。ONUにおける受信波長の切替指示は、この制御信号を用いて行うことができる。
【0049】
スルーキュー222及び複数の切替キュー224−1〜kは、パケットが入力されると、スケジューラ部250に対して送信要求を出す。スケジューラ部250は、各キュー222、224−1〜kからの下りパケットの送信要求や、制御信号生成部260からの制御信号の送信要求に応じて出力を調整し、光送信器130−1〜nを経て各ONU300に下り信号を送る。
【0050】
OLT制御部140は、OLT100全体と、OLT100に搭載されるOSU200を制御する。例えば、OLT制御部140は、LLID識別テーブル112及びLLID割当テーブル122の書替を行う。また、OLT100を通過するトラフィックの監視を行い、経路切替の時期及び内容を決定する。また、各OSU200のスケジューラ部250からの読出しについても監視する。
【0051】
また、OLT制御部140は、切替対象のONUの登録先のOSUを変更するに当たり、切替元のOSUからの解除、切替先のOSUへの登録、切替先のOSUに対しての切替対象のONUの通知を行う。なお、この通知については、OLT制御部140が直接OSUに指示しても良いし、各OSUに送られるパケットにその旨付加して送っても良い。
【0052】
ONU300は、下りパケットを受信する光受信器330を備えている。光受信器の受信波長は可変であり、登録されたOSUに割り当てられた波長の下りパケットを受信できるように設定される。
【0053】
上述した以外の構成については、公知のTWDM−PONと同様に構成することができる。
【0054】
次に、
図2及び
図3を参照して、本実施の形態に係る経路切替方法について説明する。
図2は、本実施の形態に係る経路切替方法を説明するための模式図であり、経路切替に伴う各テーブル及び各キューの内容の変遷を示している。ここでは、第1のONU(ONU300−1)のLLIDを10、第2のONU(ONU300−2)のLLIDを20、第3のONU(ONU300−3)のLLIDを30とし、LLID識別テーブル112には、VID=10がLLID=10、VID=20がLLID=20、VID=30がLLID=30に割り付けられている。また、VID=100、101、及び102をブロードキャストサービスに対応付けられた特定VIDとし、VID=100のブロードキャストパケットは第1のOSU(OSU200−1)に、VID=101のブロードキャストパケットは第2のOSU(OSU200−2)に、VID=102のブロードキャストパケットは第1のOSU及び第2のOSUに、それぞれ送信される割り付けがされている。
【0055】
図3は、上位ネットワークからSNI(Service Node Interface)を介して送られる下りパケットが第1のONUに受信されるまでの流れを示すタイミングチャートである。ここでは、第1のONU宛てのユニキャストパケットをUで、VID=100のブロードキャストパケットをAで、VID=101のブロードキャストパケットをBで、VID=102のブロードキャストパケットをCで、それぞれ示す。なお、
図3において、「PON出力」とは、光送信器130における光出力を意味しており、「PON受信」とは、光受信器330における光受信を意味している。
【0056】
時刻Iでは、第1のONU及び第2のONUは、第1のOSUに登録されている。また、第3のONUは、第2のOSUに登録されている。すなわち、LLID割当テーブル122では、LLID=10及びLLID=20に、OSU=1が割り付けられている。また、LLID=30に、OSU=2が割り付けられている。従って、OSU振分部120は、第1のONU宛のパケットUを第1のOSUに送る。これらのパケットは、第1のOSUのスルーキュー、スケジューラ部、光送信器130−1を経て、波長λ1の下り信号として第1のONUに送られる。
【0057】
一方、OSU振分部120は、ブロードキャストパケットAを第1のOSUに、ブロードキャストパケットBを第2のOSUに、それぞれ送る。また、OSU振分部120は、ブロードキャストパケットCをコピーし、第1のOSU及び第2のOSUにそれぞれ送る。ブロードキャストパケットは、各第1のOSU及び第2のOSUのスルーキュー、スケジューラ部、光送信器130−1及び130−2を経て、各第1のOSU及び第2のOSUに割り当てられた波長で送信される。ここでは、第1のOSUが、ブロードキャストパケットA及びCを、波長λ1の下り信号として第1のONU及び第2のONUに送る。また、第2のOSUが、ブロードキャストパケットB及びCを、波長λ2の下り信号として第3のONUに送る。第1のOSU及び第2のOSUから送信されるブロードキャストパケットは、光スプリッタ400で分岐されることによってコピーされ、全ONUに送られる。光スプリッタ400におけるパケットのコピーは、例えばSCB(Single Copy Broadcast)として、10G−EPON(非特許文献1参照)で定義されている。第1のONU、第2のONU、及び第3のONUは、各々登録されたOSUに割り当てられた波長のブロードキャストパケットを受信する。
【0058】
第1のOSU及び第2のOSUから送信されるパケットには、LLID識別子が付与される。各ONU300(第1のONU、第2のONU、第3のONU)は、受信したパケットのLLID識別子によって、そのパケットが自分宛であるか否かを判断する。
図3の例では、各ONU300に割り付けられたLLIDに対応して、第1のONU宛のパケットUにLLID識別子=10が付与される。また、ブロードキャストパケットA、B、及びCには、全ONU300宛であることを示すLLID識別子=Bが付与される。パケットへのLLID識別子の付与は、例えば図示しないLLID識別子付与部で行われる。
図3に示す例では、LLID識別子は、バッファ部220とスケジューラ部250との間においてパケットに付与される。バッファ部220の後段でLLID識別子をパケットに付与する場合には、LLID識別子の容量によって各キューの空容量が消費されるのを防止できる。
【0059】
なお、本実施の形態では、非切替対象のONU宛のユニキャストパケットは、全てスルーキュー222から出力される。従って、バッファ部220の後段でLLID識別子を付与する場合には、スルーキュー222から出力されるパケットのVIDをLLID識別子付与部が読み取り、そのVIDに対応するLLID識別子をパケットに付与する必要がある。
【0060】
それに対し、ONU振分部210とバッファ部220との間で、LLID識別子をパケットに付与することもできる。その場合には、LLID識別子付与部をONU振分部210の後段に設ける。そして、ONU振分部210が各キューへパケットを振り分ける際に参照したLLIDに基づいて、LLID識別子付与部がLLID識別子を各パケットに付与する。その結果、バッファ部220の後段で再度LLIDを読み取る必要がないため、通信のスループットの観点で有利である。
【0061】
ここで、本実施の形態に係る経路切替の一例として、第1のONUの登録先を、第1のOSUから第2のOSUに切り替える場合を考える。この切替は、例えば、通信負荷の分散などの目的により行われる。
図3に示す例では、時刻Iから時刻IIまではTWDM−PON10において通常の通信が行われており、時刻IIにおいて切替が発生している。
【0062】
この場合、
図2に示すように、時刻IIにおいて、OLT制御部140が、LLID割当テーブル122を書き替えて、LLID=10に、OSU=2を割り付ける。このLLID割当テーブル122を書き替えた後に上位ネットワークからOLT100に送られた第1のONU宛のパケットは、第2のOSUに送られる。
【0063】
この時点では、第1のONUは受信波長がλ1であるため、第2のOSUからの波長λ2の下り信号を受信できない。そこで、第1のOSUは、第1のONUに対して、受信波長をλ2に切り替える旨指示する必要がある。しかしながら、第1のOSUに第1のONU宛のパケットが未送信の状態で蓄積されている可能性がある。また、第1のONUでの受信波長の切替に時間がかかる場合もある。
【0064】
そこで、第1のONUの波長切替に必要な時間と、第1のOSUに蓄積されている第1のONU宛のパケットがなくなるまでの時間を考慮して、第1のONUに対し、波長切替とそのタイミングを併せて指示するのがよい。この指示は、第1のONUに制御パケットXSを送ることによって行われる(
図3参照)。制御パケットXSには、波長切替の通知、切替後の波長及び切替のタイミングの情報が含まれる。制御パケットXSは、OLT制御部140の指示に基づいて、制御信号生成部260(
図1参照)で生成される。
【0065】
時刻II以降、第2のOSUは、第1のONU宛のパケットを受け取ると、第1のONUが切替対象のONUであるか否かを判定する。時刻IIにおいて、LLID割当テーブル122を書き替える際に、第1のONUが切替対象のONUである旨、OLT制御部140から第2のOSUに通知される。ONU振分部210は、この通知により、第1のONUが切替対象のONUであることを認識する。
【0066】
つづいて、時刻IIIにおいて、第2のOSUのONU振分部210は、学習テーブル212に第1のONUが学習済みであるか未学習であるかを判定する。ここでは、第1のONUが登録されていないので、第1のONUが未学習であると判定される。ONU振分部210は、未学習のONU宛のパケットを、未使用の切替キューの1つに送り、その切替キューを学習テーブルに学習させる。ここでは、未使用の切替キューとして、第1の切替キューを選択する。この切替キューの選択は、未使用の切替キューを選択すればよく、番号の小さい順に選択するなどしても良いし、無作為に選択するなどしても良い。
【0067】
第1の切替キューが選択された後、第1のONU宛のパケットは、第1の切替キューに送られ、学習テーブル212のLLID欄に第1のONUのLLID識別子10、キュー欄に1が登録される。この結果、第1のONUが学習済みとなる(
図2参照)。第1のONUが学習済みとなった後は、第2のOSUのONU振分部210は、学習テーブル212を参照することにより、第1のONU宛のパケットを第1の切替キューに送る。
【0068】
一方、時刻II以降、OSU振分部120は、切替元のOSU及び切替先のOSUの両方に送られるブロードキャストパケットを切替対象のブロードキャストパケットとして認識しマーキングする。
図3の例では、ブロードキャストパケットCが切替対象であり、C2以降のパケットがマーキングされる。
【0069】
つづいて、マーキングされた切替対象のブロードキャストパケットC2を受信する時刻Vにおいて、切替元である第1のOSUのONU振分部210は、学習テーブル212にブロードキャストパケットの識別子が学習済みであるか未学習であるかを判定する。ここでは、ブロードキャストパケットの識別子が登録されていないので、ブロードキャストパケットの識別子が未学習であると判定される。
【0070】
第1のOSUのONU振分部210は、マーキングされた切替対象のブロードキャストパケットC2を、未使用の切替キューの1つに送り、その切替キューを学習テーブルに学習させる。ここでは、未使用の切替キューとして、第1の切替キューを選択する。第1の切替キューが選択された後、マーキングされた切替対象のブロードキャストパケットC2は、第1の切替キューに送られ、学習テーブル212のLLID欄にBC、キュー欄に1が登録される(
図2参照)。この結果、ブロードキャストパケットの識別子が学習済みとなる。ブロードキャストパケットの識別子が学習済みとなった後は、第1のOSUのONU振分部210は、学習テーブル212を参照することにより、マーキングされた切替対象のブロードキャストパケットCを第1の切替キューに送る。ブロードキャストパケットAは非切替対象のためスルーキューへ送られる。
【0071】
また、マーキングされた切替対象のブロードキャストパケットC2を受信する時刻Vにおいて、切替先である第2のOSUのONU振分部210は、学習テーブル212にブロードキャストパケットの識別子が学習済みであるか未学習であるかを判定する。ここでは、ブロードキャストパケットの識別子が登録されていないので、ブロードキャストパケットの識別子が未学習であると判定される。ONU振分部210は、マーキングされた切替対象のブロードキャストパケットC2を、未使用の切替キューの1つに送り、その切替キューを学習テーブルに学習させる。ここでは、未使用の切替キューとして、第2の切替キューを選択する。第2の切替キューが選択された後、マーキングされた切替対象のブロードキャストパケットC2は、第2の切替キューに送られ、学習テーブル212のLLID欄にBC、キュー欄に2が登録される(
図2参照)。この結果、ブロードキャストパケットの識別子が学習済みとなる。
【0072】
ブロードキャストパケットの識別子が学習済みとなった後は、第2のOSUのONU振分部210は、学習テーブル212を参照することにより、マーキングされた切替対象のブロードキャストパケットCを第2の切替キューに送る。ブロードキャストパケットBは非切替対象のためスルーキューへ送られる。
【0073】
次に、時刻IVにおいて、第1のONUの受信波長の切替が開始される。第1のOSUに蓄積されている第1のONU宛のパケットが、この時刻IVまでに無くなるように、波長切替のタイミングが調整される。時刻VIにおいて第1のONUで受信波長の切替が完了した後、第2のOSUから第1のONUに向けて、ゲート信号などの制御信号が送られ、第1のONUから応答を受信する。これにより、第2のOSUと第1のONUのリンクが確立する。
【0074】
その後、第1のOSUのスケジューラ部250は、第1の切替キューに蓄積されているブロードキャストパケットを第2のONUに送信する。一方、第2のOSUのスケジューラ部250は、第1の切替キューに蓄積されている第1のONU宛のユニキャストパケットを第1のONUに、また、第2の切替キューに蓄積されているブロードキャストパケットを第1のONU及び第3のONUに送信する。
【0075】
時刻VIIにおいて、第1のOSUの第1の切替キューに蓄積されているブロードキャストパケットが無くなり(送信が完了し)、学習エントリーが解放される。学習エントリーの開放は、学習テーブルから識別子BCと第1の切替キューを削除することで行われる(
図2参照)。
【0076】
つづいて、時刻VIIIにおいて、第2のOSUの第2の切替キューに蓄積されているブロードキャストパケットが無くなり(送信が完了し)、学習エントリーが解放される。
学習エントリーの開放は、学習テーブルから識別子BCと第2の切替キューを削除することで行われる。
【0077】
つづいて、時刻IXにおいて、第2のOSUの第1の切替キューに蓄積されているパケットが無くなり(送信が完了し)、学習エントリーが解放される。学習エントリーの開放は、学習テーブルから第1のONU宛てのパケットの識別子10と第1の切替キューを削除することで行われる(
図2参照)。また、第1のONUを非切替対象とする。
【0078】
時刻Vにおいて、すでに第1のONUで受信波長の切替が完了し、第2のOSUと第1のONUのリンクが確立している場合には、第1のOSU及び第2のOSUにおける切替対象のブロードキャストパケットに対する切替キューの選択・学習処理及び切替キューへの蓄積処理は行わず、切替対象のブロードキャストパケットをスルーキューに送る。切替対象のブロードキャストパケットへのマーキング処理は、時刻VIII以降停止してもよいし、次の切替発生まで継続してもよい。
【0079】
ここで、
図3では、時刻VI以降、第2のOSUのスケジューラ部250が、第1の切替キュー、第2の切替キュー、及びスルーキューから、パケットを順次に読み出す例を示している。しかし、例えば、スケジューラ部250が第1及び第2の切替キューから優先的に読み出しを行うこともできる。その場合には、第1の切替キューに蓄積されているパケットが速やかに無くなるため、学習エントリーを早期に解放することができる。さらに、スケジューラ部250が、第1の切替キューのみならず、スルーキューからも優先的に読み出しを行うこともできる。その場合には、学習エントリーを早期に解放し、かつスルーキューのパケットの遅延を解消することができる。
【0080】
第2のOSUにおいて学習エントリーが解放され、第1のONUが非切替対象となった後は、第1のONU宛のパケットは、第2のOSUのスルーキュー、スケジューラ部250を経て光送信器130−2に送られる。
【0081】
なお、本実施の形態においては、第1のONUの経路切替を行う際に、同時に第2のONUの登録先を、第1のOSUから第2のOSUに変更する場合も、上述のステップにより経路切替を行うことができる。
【0082】
また、本実施の形態に係るOLT制御部140は、未使用の切替キュー数を鑑みて、同時に波長切替を行うONUの数を、未使用の切替キュー数以下に制限する。
【0083】
以上詳述したように、本実施の形態に係るOLT及び経路切替方法によれば、同時に切替処理を行うONUの台数を制限し、切替処理中のパケットを保持する切替キューを、収容されるONUの台数分より少なくすることができる。また、キュー数が削減されるため、バッファのアドレス管理に必要なメモリ量が削減できる。これにより、無瞬断切替可能なOLTを経済的に提供することができる。
【0084】
また、本実施の形態に係るOLT及び経路切替方法によれば、ONUの経路切替を行っている間に、ブロードキャストパケットを切替キューに蓄積することができる。そのため、ブロードキャストサービスの提供中においても、ブロードキャストパケットを廃棄することなくONUの経路切替を行うことができる。
【0085】
より詳細には、ONUの経路切替を行っている間に、切替元のOSU及び切替先のOSUの両方に送られるブロードキャストパケットを切替キューに蓄積し、それ以外のブロードキャストパケットはスルーキューに送ることができる。そのため、例えば、上位ネットワークに存在する映像配信サーバXから提供される1〜50チャンネルの映像は第1のOSUから波長λ1で各ONUに配信され、映像配信サーバYから提供される101〜150チャンネルの映像は第2のOSUから波長λ2で各ONUに配信され、映像配信サーバZから提供される201〜250チャンネルの映像は第1のOSU及び第2のOSUから各々波長λ1及びλ2で各ONUに配信され、第1のONU配下の加入者が1チャンネルと201チャンネルを同時視聴しているときに1チャンネルから101チャンネルへの視聴変更要求が発生した場合、本実施の形態に係る経路切替方法に従って第1のONUの接続先を第1のOSUから第2のOSUに切り替えることで、それまで視聴していた201チャンネルの視聴を瞬断すること無く、1チャンネルから101チャンネルへ視聴を切り替えることができる。このとき、映像配信サービス以外のインターネットデータ通信なども切断なくサービス提供を継続することができる。また、切替元のOSU及び切替先のOSUの両方に送られるブロードキャストパケット以外は切替キューに蓄積しないため、バッファを有効に利用することができる。
【0086】
なお、上記実施の形態では、1つの切替対象のONUについて1つの切替キューを使用する例を説明したが、これに限定されない。例えば、波長切替時間が等しい複数のONUの経路切替を、1つの切替キューを用いて行うことも可能である。
【0087】
また、上記実施の形態では、本発明に係るOLT及び経路切替方法をTWDM−PONに適用した形態を例示して説明したが、これに限られず、本発明に係るOLT及び経路切替方法は、一般的なネットワークにおいて、負荷分散のための経路切替や、障害発生時の冗長経路への無瞬断切替にも適用することができる。
【0088】
次に、
図4及び
図5を参照して、本実施の形態に係る波長切替方法について説明する。
以下で説明する波長切替方法は、ONUの裁量の下、ONUからの要求により波長切替を実行する形態である。
【0089】
上述した経路切替方法は、切替要求の要因、あるいは切替要求の要求元等は特に限定されず、トラフィック変動に応じた負荷分散目的、あるいは、障害時の経路切替目的等、汎用的に適用される経路切替、及び該経路切替に伴う波長切替方法である。本実施の形態は、そのようなさまざまな経路切替のひとつとして、ONUからの要求により経路切替を実行する形態を例示したものである。以下では、主として本実施の形態に係る波長切替方法について説明するが、各キューを使用した無瞬断経路切替の具体的手順は上記と同様なので、説明を省略する。
【0090】
図4は、本実施の形態に係る波長切替方法を説明するための、TWDM−PON10の要部構成図である。なお,一般にPONシステムでは,OLTとONU間の通信路を確立するための制御情報や、通信路確立後の上りデータ送信制御用情報を、OLTとONU間で送受信する機能が必要であるが、ここでは波長切替制御に必要となる機能についてのみ説明する。
【0091】
OLT100は、OSU振分多重部124、複数の光送受信器132(132−1〜132−n)、複数のOSU200(200−1〜200−n)、及びOLT制御部140を含んで構成されている。各光送受信器132と各OSU200とは1対1に接続され、OSU200−1から出力された信号は、光送受信器132−1に入力され,光送受信器132−1に割り付けられた送信波長で出力される。また光送受信器132−1に入力された光信号は、光送受信器132−1に割り付けられた受信波長のみが受信され、電気信号に変換された後,OSU200−1へ出力される。
【0092】
OSU振分多重部124は、SNIから入力されるデータの宛先がどのONU宛か、また、そのONUがどのOSUに接続されているかを識別し、該当するOSUへ振り分けて出力する。すなわち、OSU振分多重部124は、
図2におけるLLID識別部110の機能とOSU振分部120の機能とを併せもっている。例えば、入力データが映像配信データの場合は、そのデータをどのOSUへ配信するかを識別し、該当するOSUへ振り分けて出力する。また各OSUから出力される上りデータを多重してSNIへ出力する。
【0093】
OSU200は,下り制御信号送信部202、上り制御信号受信部204を含んで構成されている。
【0094】
下り制御信号送信部202は、OLT制御部140からの切替指示通知により、波長切替制御メッセージを生成し、OSU振分多重部124から出力されるデータと多重して光送受信器132へ出力する。上り制御信号受信部204は、光送受信器132から出力される信号を受信し、その受信データから、波長切替要求メッセージを抽出して、OLT制御部140へ切替要求を通知する。また、その受信データから、波長切替応答メッセージを抽出して、OLT制御部140へ切替完了を通知する。それ以外のデータはOSU振分多重部124へ出力する。
【0095】
OLT制御部140は、各ONU300の波長割当を管理し、下り制御信号送信部202及び上り制御信号受信部204を介して、波長切替制御メッセージ、波長切替応答メッセージ、波長切替要求メッセージをONU300と送受信することで、波長切替制御を実行する。
【0096】
ONU300は、上り制御信号受信部304、上り制御信号送信部306、下り制御信号受信部308、下り制御信号送信部310、ONU制御部302、波長切替制御部312、及び波長可変光送受信器314を含んで構成されている。
【0097】
上り制御信号受信部304は、UNI(User Network Interface)から入力されるSTB(Set Top Box)500からのチャンネル切替要求メッセージを抽出し、ONU制御部302へ通知する。それ以外のデータは上り制御信号送信部306へ出力する。
【0098】
上り制御信号送信部306は、ONU制御部302の指示により、波長切替応答メッセージおよび波長切替要求メッセージを生成し、上り制御信号受信部304から出力されるデータと多重して波長可変光送受信器314へ出力する。
【0099】
下り制御信号受信部308は、波長可変光送受信器314から出力される信号を受信し、その受信データから、波長切替制御メッセージを抽出して、ONU制御部302へ通知する。それ以外のデータは下り制御信号送信部310へ出力する。
【0100】
下り制御信号送信部310は、ONU制御部302の指示により、チャンネル切替完了メッセージを生成し、下り制御信号受信部308から出力されるデータと多重して、UNIから出力する。
【0101】
ONU制御部302は、OLT100から切替要求を示す波長切替制御メッセージを受信した場合、指定される波長を波長切替制御部312へ通知する。また、波長切替制御部312での波長切替完了後、波長切替応答メッセージを、上り制御信号送信部306を介してOLT100に通知する。一方、STB500からチャンネル切替要求メッセージを受信した場合は、要求チャンネル番号から切替するべき波長を解析し、切替要求する波長情報を含んだ波長切替要求メッセージを、上り制御信号送信部306を介してOLT100に通知する。また、OLT100から切替完了を示す波長切替制御メッセージを受信した場合は、チャンネル切替完了メッセージを、下り制御信号送信部310を介してSTB500に通知する。
【0102】
波長切替制御部312は、波長可変光送受信器314の動作波長が、ONU制御部302より通知された波長になるよう、波長可変光送受信器314の波長設定制御を行う。波長可変光送受信器314は、上り制御信号送信部306から出力された信号を、波長切替制御部312により制御された上り波長にて出力する。また、波長可変光送受信器314に入力された光信号から、波長切替制御部312において制御された下り波長のみを受信し、電気信号に変換した後、下り制御信号受信部308へ出力する。
【0103】
OLT100の各光送受信器132は、光スプリッタ400を介して、各ONU300の波長可変光送受信器314に接続されている。
【0104】
次に
図5を参照して、本実施の形態に係る波長切替方法の波長切替シーケンスについて説明する。ここでは、OSU200−1が波長λ1、OSU200−2が波長λ2に設定されており、波長λ1で1ch〜100ch、波長λ2で101ch〜200chの映像が配信されているものとする。また、以下では、ONU300−1がOSU200−1に接続されている状態において、ONU300−1配下の加入者がSTB500に対して101chの視聴リクエストをした場合の動作例を説明する。なお、以下の説明において、[1]等の記載は、
図5中に示された符号[1]等に対応している。また、以下の説明では、ONU300−1をONU1と、OSU200−1をOSU1と、OSU−2をOSU2と、各々表記する。
【0105】
ONU1配下の加入者が、STB500に対して101chの視聴リクエストを行うと、STB500はONU1に対して、[1]チャンネル切替要求メッセージ(101ch)を送信する。
【0106】
上り制御信号受信部304を介して、[1]チャンネル切替要求メッセージ(101ch)を受信したONU1のONU制御部302は、切替要求されたチャンネルがどの波長に属しているかを解析する。この場合、結果はλ2でありONU1の現在の波長λ1と一致しないため、上り制御信号送信部306を介して、[2]波長切替要求メッセージ(λ2)をOSU1に送信する。なお、解析結果がONU1の現在の波長と一致する場合は、波長切替要求メッセージは送信せず、チャンネル切替完了メッセージ(101ch)をSTB500に通知する。
【0107】
[2]波長切替要求メッセージ(λ2)を受信したOSU1の上り制御信号受信部204は、OLT制御部140に[3]切替要求(ONU1,λ2)を通知する。
【0108】
[3]切替要求(ONU1,λ2)を受信したOLT制御部140は,OSU1およびOSU2に対して、[4]切替指示(ONU1,λ2)を通知する。
【0109】
[4]切替指示(ONU1,λ2)を受信したOSU1は、下り制御信号送信部202からONU1宛に、[5]波長切替制御メッセージ(要求,λ2)を送信すると共に、
図2には示していないが、波長切替応答メッセージ用グラントを周期的にONU1に送信する。なお、「グラント」とは、送信許可を示す信号である。
【0110】
[4]切替指示(ONU1,λ2)を受信したOSU2は、
図2には示していないが、波長切替応答メッセージ用グラントをONU1に周期的に送信する。
【0111】
[5]波長切替制御メッセージ(要求,λ2)を受信したONU1のONU制御部302は、上り制御信号送信部306を介して、OSU1に、[6]波長切替応答メッセージ(応答)を送信すると共に、波長切替制御メッセージ(要求,λ2)の指示に従い、波長切替制御部312に対して、波長λ2への波長切替を指示する。波長切替制御部312は、波長可変光送受信器314の波長をλ2に変更する。
【0112】
波長可変光送受信器314の波長切替が完了し、波長がλ2に変更されたONU1は、OSU2からの波長切替応答メッセージ用グラントを受信すると、上り制御信号送信部306を介して、[7]波長切替応答メッセージ(完了)をOSU2へ送信する。
【0113】
[7]波長切替応答メッセージ(完了)を受信したOSU2は、OLT制御部140に、[8]切替完了(ONU1)を通知する。
【0114】
[8]切替完了(ONU1)を受信したOLT制御部140は、OSU1及びOSU2に対して、[9]切替完了(ONU1)を通知する。
【0115】
[9]切替完了(ONU1)を受信したOSU2は、下り制御信号送信部202から[10]波長切替制御メッセージ(完了)をONU1へ送信し、ONU1への波長切替応答メッセージ用グラントの送信を停止する。同様に、[9]切替完了(ONU1)を受信したOSU1は、ONU1への波長切替応答メッセージ用グラントの送信を停止する。
【0116】
[10]波長切替制御メッセージ(完了)を受信したONU1は、[11]チャンネル切替完了(101ch)をSTB500に通知する。
【0117】
[11]チャンネル切替完了(101ch)を受信したSTB500は、チャンネルを101に変更し映像を受信する。
【0118】
以上に示す波長切替手順を実行することにより、波長ごとに多チャンネルの4k映像配信サービスを提供するTWDM−PONシステムにおいて、ONU配下の加入者からの視聴リクエストをトリガ(契機)として、それまで受けていたデータ通信等のサービスを中断することなく、異なる波長で配信される映像チャンネルを受信することが可能となる。
【0119】
ここで、
図5に示す波長切替シーケンスと、
図3に示す経路切替のタイミングチャートとの関係は、以下のようになっている。すなわち、
図3における制御パケットXSの送信が
図5における[5]波長切替制御メッセージ(要求,λ2)に相当し、
図3における時刻VIにおいて波長切替が完了した時点が、
図5における[9]切替完了(ONU1)の送信時点に相当する。従って、
図5における[1]チャンネル切替要求メッセージ(101ch)から[4]切替指示(ONU1,λ2)までは、
図3に示す時刻Iから時刻IIの間に送信されている。
【0120】
以上詳述したように、本実施の形態に係る波長切替方法によれば、ONUの波長切替制御を、OLTの裁量の下、OLTからの制御により波長切替制御を実施できるだけでなく、ONUの裁量の下、ONUからの要求により波長切替制御を開始できる。そのため、例えば、波長毎に異なるチャンネル群を配信するような映像配信サービスを提供するTWDM−PONシステムにおいて、ONU配下の加入者が、そのときのONUの波長とは別の波長で提供されるチャンネルを受信したい場合においても、ONUから波長切替要求を通知することで、それまで受けていた他のデータ通信等のサービスを中断することなく、希望する映像チャンネルを受信することが可能となる。
【0121】
なお、上記実施の形態では、加入者からの視聴リクエストをトリガとして波長切替要求メッセージを送信しているが、ONUからの波長切替要求メッセージ送信要因はこれに限られない。また、OSU1とOSU2での波長切替を例示して説明したが、切替の組み合わせはこれに限られない。さらに、ONU1のみの波長切替動作を示したが、同時に複数のONUの波長切替が実施されてもよい。