(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
n側半導体層と、前記n側半導体層の上方であって前記n側半導体層の一部の領域に設けられた活性層と、前記活性層上に設けられたp側半導体層と、を有する半導体積層体と、
前記n側半導体層の上方であって前記p側半導体層が設けられた領域と異なる領域に設けられ、前記n側半導体層と電気的に接続されるnパッド電極と、
前記p側半導体層の上面の略全体を被覆し、前記p側半導体層と電気的に接続される透光性電極と、
前記透光性電極の上面の一部の領域に、前記透光性電極と電気的に接続されるpパッド電極と、
前記半導体積層体の側面のうち、前記nパッド電極の側面と対向する第1側面に接して設けられ、前記透光性電極の上面及び側面を被覆する第1透光性膜と、
前記半導体積層体の側面のうち、前記第1側面と異なる第2側面に接して設けられる第2透光性膜と、を備え、
前記第1透光性膜の前記活性層からの光の波長に対する屈折率をn1とし、前記半導体積層体が発する光の真空中での波長をλとすると、前記第1透光性膜の膜厚が、λ/(4・n1)の2倍以上であり、
前記第2透光性膜の前記活性層からの光の波長に対する屈折率をn2とし、前記半導体積層体が発する光の真空中での波長をλとすると、前記第2透光性膜の膜厚が、λ/(4・n2)であり、
前記第1透光性膜の前記活性層からの光の波長に対する屈折率は、前記透光性電極の前記活性層からの光の波長に対する屈折率よりも低く、
前記第2透光性膜の前記活性層からの光の波長に対する屈折率は、前記半導体積層体の屈折率よりも低く、前記第1透光性膜の前記活性層からの光の波長に対する屈折率よりも高く、
前記第2透光性膜の端部は、前記第1透光性膜のうち前記透光性電極の側面を被覆する端部と重なるように設けられている発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る発光素子及び発光装置について説明する。
なお、以下の説明において参照する図面は、実施形態を概略的に示したものであるため、各部材のスケールや間隔、位置関係などが誇張、あるいは、部材の一部の図示が省略されている場合がある。また、平面図とその断面図において、各部材のスケールや間隔が一致しない場合もある。また、以下の説明では、同一の名称及び符号については原則として同一又は同質の部材を示しており、詳細な説明を適宜省略することとする。
【0012】
また、各実施形態に係る発光素子及び発光装置において、「上」、「下」、「左」及び「右」などは、状況に応じて入れ替わるものである。本明細書において、「上」、「下」などは、説明のために参照する図面において構成要素間の相対的な位置を示すものであって、特に断らない限り絶対的な位置を示すことを意図したものではない。
【0013】
<第1実施形態>
[発光装置の構成]
第1実施形態に係る発光素子及びその発光素子を用いた発光装置の構成について、
図1A〜
図3を参照して説明する。
本実施形態に係る発光素子1は、
図1Aに示すように、平面視で略正方形に形成され、基板11と、半導体積層体12と、n電極13と、透光性電極14と、p電極15と、絶縁膜16と、第1透光性膜17と、第2透光性膜18とを備えて構成されている。発光素子1は、基板11上に、半導体積層体12と、半導体積層体12の一方の面側にn電極13、透光性電極14及びp電極15とを備え、フェイスアップ型の実装に適した構造を有している。
また、本実施形態に係る発光装置100は、
図2に示すように、発光素子1が実装基板2に実装され、発光素子1が封止部材4によって被覆されて構成されている。
なお、
図1Aに示した平面図において、第1透光性膜17及び第2透光性膜18の外形線は省略している。
【0014】
基板11は、半導体積層体12を支持するものである。また、基板11は、半導体積層体12をエピタキシャル成長させるための成長基板であってもよい。基板11としては、例えば、半導体積層体12に窒化物半導体を用いる場合、サファイア(Al
2O
3)基板を用いることができる。
【0015】
半導体積層体12は、基板11の上面である一方の主面上に、n側半導体層12nと、n側半導体層12nの上方であってn側半導体層12nの一部の領域に設けられたp側半導体層12pと、が積層されてなる。半導体積層体12は、n側半導体層12nの上方であってp側半導体層12pが設けられた領域と異なる領域に設けられ、かつn側半導体層12nと電気的に接続されたn電極13と、p側半導体層12pの上方に設けられ、かつp側半導体層12pと電気的に接続されたp電極15との間に電流を通電することにより発光するようになっている。半導体積層体12は、n側半導体層12nとp側半導体層12pとの間に活性層12aを備えることが好ましい。
なお、発光領域(本実施形態では、活性層12aがこれに相当する)を基準として、n電極13が接続される側の半導体がn側半導体層12nであり、p電極15が接続される側の半導体がp側半導体層12pである。
【0016】
半導体積層体12には、p側半導体層12p及び活性層12aが部分的に存在しない領域、すなわちp側半導体層12pの表面から凹んで、上面側にn側半導体層12nが露出した領域が形成されている。n側半導体層12nが露出した領域は、n電極13を設けるための第1領域121と、半導体積層体12の外縁を含む第2領域122と、が含まれている。
なお、第1領域121及び第2領域122のそれぞれの底面及び側面は、完成した発光素子1においては、n電極13、第1透光性膜17、第2透光性膜18などによって被覆されているが、本明細書において半導体積層体12の構成を説明する際に、便宜的に「露出」していると言うことがある。
【0017】
第1領域121は、平面視において半導体積層体12の中央領域に略C字形状に設けられている。第1領域121の底面には、その略C字形状に沿ってn電極13が設けられている。また、第2領域122は、平面視において半導体積層体12の略正方形の外縁に沿って設けられており、ウエハ状態の発光素子1を個々に区画する境界線に沿った領域である境界領域(いわゆる、ダイシングストリート)に設けられる。
第1領域121の側面121a及び第2領域122の側面122aは、何れも半導体積層体12の側面であって、p側半導体層12p及び活性層12aが露出した端面である。このような半導体積層体12の側面のうち、第1領域121の側面(第1側面)121aには第1透光性膜17が接して設けられ、第1領域121の側面121aと異なる側面である第2領域122の側面(第2側面)122aには第2透光性膜18が接して設けられている。
【0018】
第1領域121の側面121aは、第1領域121の底面に設けられたn電極13の側面と対向している。n電極13は、金属材料を用いて構成され、比較的に光の吸収率が高い。このため、側面121aに、屈折率が比較的低い第1透光性膜17を設けることで、半導体積層体12と第1透光性膜17との界面である側面121aが光反射面として機能するように構成されている。これによって、側面121aからn電極13に向けて出射する光量が低減され、n電極13での光吸収による光量損失を低減することができる。
【0019】
第2領域122にはn電極13のような光取り出しの障害となる部材が設けられていない。このため、側面122aから良好に光が取り出されるように、第1透光性膜17に代えて、半導体積層体12よりも屈折率が低く、かつ、第1透光性膜17よりも屈折率が高い材料を用いた第2透光性膜18を設けている。これによって、第2透光性膜18と半導体積層体12との屈折率差が、第1透光性膜17と半導体積層体12との屈折率差よりも小さくなり、第2透光性膜18と半導体積層体12との界面における光反射を低減することができる。言い換えれば、第2透光性膜18の光の透過率を、第1透光性膜17の透過率よりも高くすることができる。
なお、第1透光性膜17及び第2透光性膜18による光の透過率の詳細については、後記する。
【0020】
半導体積層体12を構成するn側半導体層12n、活性層12a及びp側半導体層12pの材料としては、例えば、In
XAl
YGa
1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y<1)で表される窒化物半導体を用いることができる。
【0021】
透光性電極14は、p側半導体層12pの上面の略全面を覆うように設けられ、p電極15を介して外部から供給される電流を、p側半導体層12pの全面に拡散させるための電流拡散層としての機能を有するものである。ここで略全面とは、p側半導体層12pの上面において、第1領域121に沿った内縁の領域及び第2領域122に沿った外縁の領域以外の領域をいう。例えば、透光性電極14は、p側半導体層12pの上面のうち90%以上の面に設けられているのが好ましい。
なお、p電極15が配置された領域の直下領域及びその近傍領域においては、p側半導体層12pの上面に絶縁膜16が配置されており、透光性電極14は絶縁膜16を介してp側半導体層12p上に設けられている。
【0022】
発光素子1がフェイスアップ実装型である場合、半導体積層体12が発光した光は、主として、透光性電極14を介して上面側から外部に取り出される。このため、透光性電極14は、半導体積層体12が発する光の波長に対して良好な透光性を有することが好ましい。
透光性電極14に用いられる透光性導電材料としては、金属薄膜や導電性金属酸化物を挙げることができる。更に、導電性金属酸化物としては、Zn(亜鉛)、In(インジウム)、Sn(スズ)、Ga(ガリウム)及びTi(チタン)からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含む酸化物が挙げられる。なかでも、ITO(SnドープIn
2O
3)は、可視光(可視領域)において高い透光性を有し、導電率の高い材料であることから、p側半導体層12p上の上面の略全面を覆うのに好適な材料である。
【0023】
n電極13は、半導体積層体12の第1領域121において、n側半導体層12nと電気的に接続されるように設けられ、発光素子1に外部からの電流を供給するためのパッド電極(nパッド電極)である。n電極13は、ワイヤボンディングなどによる外部との接続に適するように、例えば、Cu、Pt、Au又はこれらの何れかの金属を主成分とする合金を用いることができる。また、n電極13の最下層(n側半導体層12n側)として、光反射性の良好な金属材料を用いた光反射層を設けるようにしてもよい。光反射性の良好な金属材料としては、Al、Ru、Ag、Ti、Ni又はこれらの何れかの金属を主成分とする合金を有するものを挙げることができる。
なお、n電極13は、外部接続部13a及び延伸部13bが、ともに同じ材料で構成されている。
【0024】
また、n電極13は、平面視において略C字形状の第1領域121の形状に倣って設けられている。n電極13は、当該C字形状の中央部近傍に円形状に形成された外部接続部13aと、外部接続部13aから円弧状に延伸する延伸部13bと、から構成されている。外部接続部13aは、外部と接続するための領域であり、延伸部13bは、外部接続部13aから供給される電流を、n側半導体層12nの全領域に効率的に拡散させるための機能を有する。
【0025】
p電極15は、発光素子1に外部からの電流を供給するためのパッド電極(pパッド電極)であり、透光性電極14の上面の一部に設けられている。p電極15は、透光性電極14を介してp側半導体層12pと電気的に接続されており、平面視で略円形状に形成された外部接続部15aと、外部接続部15aから延伸して、平面視でp側半導体層12p上の広範囲に配置された延伸部15bと、から構成されている。外部接続部15aは、外部と接続するための領域であり、延伸部15bは、外部接続部15aから供給される電流を、透光性電極14の全領域に効率的に拡散させるための機能を有する。
なお、延伸部15bは、平面視で、n電極13を囲むように円弧状に延伸した部分と、当該円弧の途中から分岐して直線状に延伸する部分と、外部接続部15aからn電極13の外部接続部13aに向かって直線状に延伸する部分とを有している。また、n電極13の外部接続部13aとp電極15の外部接続部15aとは、平面視で略正方形である発光素子1の一方の対角線上に離間して配置されている。
また、前記したように、平面視でp電極15が配置された領域の直下領域及びその近傍領域において、p側半導体層12pと透光性電極14の間に絶縁膜16が設けられている。
【0026】
p電極15は、外部接続部15aが、前記したn電極13の外部接続部13aと同様に、ワイヤボンディングなどによる外部との接続に適するように、例えば、Cu、Au又はこれらの何れかの金属を主成分とする合金を用いることができる。また、p電極15は、前記したn電極13と同様に、最下層(透光性電極14側)として、光反射層を設けるようにしてもよい。
なお、p電極15は、外部接続部15a及び延伸部15bが、ともに同じ材料で構成されている。
【0027】
絶縁膜16は、p側半導体層12p上であって、p電極15が配置された領域の直下領域及びその近傍領域に、平面視でp電極15を包含するように設けられている。絶縁膜16がp側半導体層12pと透光性電極14との間に設けられることにより、p電極15の直下領域のp側半導体層12pに流れる電流を抑制し、当該領域での発光を低減させることができる。そして、p電極15に向かって伝播する光量を低減させることでp電極15によって吸収される光量を低減し、その結果として、半導体積層体12全体の発光量に対する光取り出し効率を高めることができる。
【0028】
また、絶縁膜16は、透光性を有する材料で構成されることが好ましく、更に半導体積層体12よりも屈折率が低いことがより好ましい。このような材料を用いた絶縁膜16をp側半導体層12p上に設けることにより、p側半導体層12pと絶縁膜16との界面で、半導体積層体12内を上方に伝播する光を、屈折率差に基づく界面反射に加えて、スネルの法則に基づいて全反射させることができる。従って、絶縁膜16をp電極15の直下領域及びその近傍領域に設け、p電極15に向かう光を手前で効率的に反射させることにより、p電極15による光吸収を低減させることができる。
絶縁膜16としては、例えば、SiO
2、TiO
2、Al
2O
3などの酸化物、Si
3N
4などの窒化物、MgF
2などのフッ化物を好適に用いることができる。これらの中で、屈折率が低いSiO
2をより好適に用いることができる。
なお、絶縁膜16は設けないようにしてもよい。
【0029】
第1透光性膜17は、絶縁性を有し、n電極13及びp電極15が設けられた領域を除く透光性電極14の上面及び側面、並びに、第1領域121の上面及び側面121aを被覆するように設けられている保護膜である。
また、第1透光性膜17は、特に第1領域121の側面121aにおいて、半導体積層体12との界面が、第2透光性膜18と比較して高効率な光反射面として機能するように設けられる。そのために、第1透光性膜17は、半導体積層体12よりも屈折率が低く、更に第2透光性膜18よりも屈折率の低い材料が用いられる。
【0030】
また、第1透光性膜17の屈折率を半導体積層体12よりも低くすることで、半導体積層体12との界面を、スネルの法則に基づく全反射面として機能させることができる。
このため、第1透光性膜17は、半導体積層体12との界面がスネルの法則に基づく全反射面として機能するのに十分な膜厚で形成することが好ましく、発光素子1が発する光の真空中での波長をλ、第1透光性膜17の屈折率をnとすると、第1透光性膜17の膜厚は、λ/(4・n)の2倍以上とすることが好ましく、3倍以上とすることが更に好ましい。
【0031】
ここで、屈折率の異なる2つの媒体A,Bの界面に垂直に入射する光の反射率Rは、2つの媒体A,Bの屈折率をn
A,n
Bとすると、式(1)によって算出することができる。
R={(n
A−n
B)/(n
A+n
B)}
2 ・・・(1)
すなわち、屈折率差が大きいほど、光の反射率を高くすることができる。
また、半導体積層体12との屈折率差が大きいほど、スネルの法則に基づく全反射の臨界角が小さくなり、様々な角度で界面に入射する光の内で、全反射される割合を高くすることができる。
従って、第1透光性膜17の屈折率を第2透光性膜18よりも低くすることで、第2透光性膜18よりも光の反射率を高くすることができる。
第1透光性膜17としては、前記した絶縁膜16と同様の材料を用いることができるが、透光性が良好で、かつ、屈折率が比較的低いSiO
2を好適に用いることができる。
【0032】
また、第1透光性膜17は、前記したように透光性電極14を被覆している。このため、発光素子1の上面側からは、半導体積層体12、透光性電極14及び第1透光性膜17を透過して光が取り出される。このとき、半導体積層体12、透光性電極14、第1透光性膜17の順で、外側ほど屈折率が低くなるように材料を選択することが好ましい。このような組み合わせとして、例えば、半導体積層体12にGaN、透光性電極14にITO、第1透光性膜17にSiO
2を用いることができる。これによって、発光素子1の上面側からの光取り出し効率を向上させることができる。
【0033】
ここで、前記した発光素子1の上面側の光取り出し効率の向上について説明する。半導体積層体12から外部までの光取り出しの経路において、GaNとSiO
2との界面のような屈折率差の大きな界面を有すると光透過率が低下する。反対に、界面の数が増加しても、各界面での屈折率差を小さくすることで、全経路の光透過率を高くすることができる。例えば、GaN/ITO/SiO
2が積層された発光素子1の上面側の光取り出し経路は、GaN/SiO
2が積層された第1領域121の側面の光取り出し経路よりも、光透過率を高くすることができる。
【0034】
第2透光性膜18は、絶縁性を有し、半導体積層体12の第2領域122の側面122a及び上面を被覆するように設けられる保護膜である。第2透光性膜18は、半導体積層体12よりも屈折率が低く、かつ、第1透光性膜17よりも屈折率の高い材料が用いられる。これによって、半導体積層体12との屈折率差が小さくなるため、半導体積層体12との界面での光反射が低減される。すなわち、第2透光性膜18の光の透過率が第1透光性膜17よりも高くなるように構成されている。
第2領域122において、第1透光性膜17よりも光の透過率が高い第2透光性膜18を設けることで、側面122aにおける半導体積層体12からの光取り出しを効率よく行うことができる。
【0035】
なお、第2透光性膜18の端部は、第1透光性膜17の端部を外側から被覆するように設けられている。第1透光性膜17と第2透光性膜18との境界で、これらの膜が重なるように設けることで、保護膜としてのバリア機能が低下しないようにすることができる。
【0036】
また、第2透光性膜18は、AR(Anti-Reflection;反射防止)膜とすることが好ましい。第2透光性膜18の膜厚を、次のようにして定められる膜厚とすることでAR膜とすることができる。
第2透光性膜18の屈折率をn、発光素子1が発する光の真空中での波長をλとすると、膜厚tは、式(2)で定められる。
t = λ/(4・n) ・・・(2)
式(2)に示すように、第2透光性膜18中を伝播する際の光の波長の4分の1の膜厚とすることで、波長λの光の反射率を最小とすることができる。
【0037】
また、第2透光性膜18は、単一層に限らず、
図3に示したように、屈折率の異なる透光性材料を2層以上を積層した多層膜とすることもできる。
図3に示した例では、第2透光性膜18は、膜厚t
1、屈折率n
1の第1層181と、膜厚t
2、屈折率n
2の第2層182と、が積層された2層膜である。
この場合、第1層181の膜厚t
1及び第2層182の膜厚t
2は、それぞれ式(2−1)及び式(2−2)に基づいて、
t
1 = λ/(4・n
1) ・・・(2−1)
t
2 = λ/(4・n
2) ・・・(2−2)
のように定められる。
3層以上であっても同様にして膜厚を定めることができる。
なお、第2透光性膜18を多層膜で構成する場合は、各膜の屈折率は互いに異なる材料が用いられる。また、第2透光性膜18を多層膜で構成する場合は、外側の層ほど順次に屈折率が低くなるように構成することが好ましい。これによって、多層膜内の各界面での屈折率差を小さくできるため、多層膜全体としての光反射を抑制することができる。その結果として、第2透光性膜18の光の透過率を高くすることができる。
【0038】
また、
図2に示した発光装置100のように、発光素子1を透光性の封止部材4を用いて封止して用いる場合は、第2透光性膜18は、封止部材4より屈折率が高いことが好ましい。これによって、半導体積層体12と第2透光性膜18との屈折率差、及び第2透光性膜18と封止部材4との屈折率差の何れもが大きくならないため、これらの界面での光反射が抑制される。その結果として、封止部材4を設けた際の、第2透光性膜18の光の透過率を高くすることができる。
【0039】
更に、第2透光性膜18を1層構成のAR膜とする場合に、その屈折率をn
1、半導体積層体12の屈折率をn
s、第2透光性膜18が外側で接する媒質(封止部材4や空気など)の屈折率をn
0とすると、これらの屈折率が式(3−1)の関係を満足するように屈折率n
1を定めることが好ましい。これによって、理論上は当該波長λの光の反射率を0%、すなわち光の透過率を100%とすることができる。但し、第2透光性膜18の媒質(材料)による光の吸収は無視するものとする。
n
1・n
1=n
0・n
s ・・・(3−1)
但し、n
0<n
1<n
s を満たすものとする。
【0040】
同様に、2層構成のAR膜の場合は、外側の層から順に屈折率をn
1,n
2とすると、式(3−2)の関係を満足するように屈折率n
1,n
2を定めることが好ましい。また、3層構成のAR膜の場合は、外側の層から順に屈折率をn
1,n
2,n
3とすると、式(3−3)の関係を満足するように屈折率n
1,n
2,n
3を定めることが好ましい。
n
2・n
2・n
0=n
1・n
1・n
s ・・・(3−2)
n
1・n
3=n
2・√(n
0・n
s) ・・・(3−3)
但し、n
0<n
1<n
2<n
3<n
s を満たすものとする。
【0041】
(透過率のシミュレーション)
ここで、第2透光性膜18及び第1透光性膜17の光の透過率について、
図4を参照して説明する。
図4において、「保護膜」が第1透光性膜17に対応し、「AR膜」が第2透光性膜18に対応する。
なお、
図4は、外側に透光性の封止部材4を設けた場合に、半導体積層体12と、AR膜(第2透光性膜18)又は保護膜(第1透光性膜17)との界面に垂直に入射した光の、当該AR膜及び保護膜の光の透過率の波長依存性をシミュレーションによって算出した結果を示すものである。
図4において、1〜3層構成のAR膜及び屈折率の異なる2種類の材料を用いた保護膜についてのシミュレーション結果を示している。また、参考のため、AR膜及び保護膜の何れも設けない場合(保護膜なし)について、半導体積層体12と封止部材4との界面を透過する光の透過率のシミュレーション結果も示している。
【0042】
各膜のシミュレーション条件を以下に示す。
(各膜のシミュレーション条件)
「膜の名称」:材料:屈折率:膜厚[nm]
「AR膜(1層)」:材料(NSO):屈折率(1.94):膜厚(58.6)
「AR膜(2層)」:材料(NSO(内側)/SiON(外側)):屈折率(2.08/1.67):膜厚(54.7/68.2)
「AR膜(3層)」:材料(NSO(内側)/SiON/SiON(外側)):屈折率(2.08/1.72/1.6):膜厚(54.7/66.2/71.1)
「保護膜(SiO
2)」:材料(SiO
2):屈折率(1.49)/膜厚(215)
「保護膜(SiON)」:材料(SiON):屈折率(1.65)/膜厚(140)
「保護膜なし」:材料なし
【0043】
(その他のシミュレーション条件)
半導体積層体:材料(GaN):屈折率(2.42)
封止部材:材料(シリコーン樹脂):屈折率(1.55)
真空中での光の波長λ(設計波長):455[nm]
【0044】
但し、材料「NSO」は、Nb
2O
5とSiO
2の混合物を示し、材料「SiON」は、SiO
2とSi
3N
4との混合物を示す。また、それぞれの混合物は組成が可変であり、混合物の組成を適宜に変更することで、「NSO」は1.5〜2.4程度の範囲で、「SiON」は1.5〜2.1程度の範囲で、それぞれ屈折率を調整することができる。
なお、AR膜の各層の膜厚tは、各層の屈折率をn
i、光の真空中での波長をλとした場合に、t=λ/(4・n
i)で定められる厚さである。また、AR膜の各層の屈折率は、前記した式(3−1)〜式(3−3)を満足するように設定している。
【0045】
(シミュレーション結果)
図4に示すように、従来の保護膜を設けた場合(「保護膜(SiO
2)」、「保護膜(SiON)」)や保護膜を設けない場合(「保護膜なし」)よりも、AR膜を設けた場合(「AR膜(1層)」、「AR膜(2層)」、「AR膜(3層)」)の方が、透過率が高いことが分かる。特に、媒質による光の吸収を無視すれば、発光素子の発光のピーク波長を想定した設計波長である455nmにおける透過率は100%である。また、AR膜を設けた場合は、設計波長よりも短波長側及び長波長側においても、保護膜を設けた場合及び保護膜なしの場合よりも、高い透過率を有していることが分かる。
【0046】
また、AR膜は、短波長側において透過率の低下がやや大きくなるが、屈折率の異なる膜の積層数を増やすほど、455nmよりも長波長側における透過率が高く維持されることが分かる。従って、発光装置の構成として、例えば波長変換物質(蛍光体)を含有する封止部材を備え、発光素子が発する光の一部を長波長側に光に波長変換する場合には、多層のAR膜を設けることが好ましい。波長変換物質が波長変換した光の一部は、発光素子に入射されるが、多層のAR膜を設けることで、発光素子内に入射した長波長光を、当該発光素子の外へ取り出し易くすることができる。
【0047】
図1A〜
図3に戻って、第1実施形態に係る発光装置100の構成について説明する。
実装基板2は、発光素子1を実装するための基板である。そのために、実装基板2は、絶縁性の基体21と、基体21の上面に発光素子1を実装するための上部配線22と、基体21の下面に他の回路基板などに2次実装するための下部配線23と、上部配線22及び下部配線23を電気的に接続するために基体21を厚さ方向に貫通するビア24と、を備えている。
発光素子1は、実装基板2の上面にダイボンドされ、n電極13及びp電極15が、それぞれ対応する極性の上部電極112とワイヤ3を用いて電気的に接続されている。また、実装基板2の上面には、発光素子1を被覆する略半球状の封止部材4が設けられている。
【0048】
なお、実装基板2は一例を示したものであり、これに限定されるものではなく、発光素子1を実装し、発光素子1が封止部材4で封止可能な形態であればよい。例えば、実装基板2は、発光素子1を搭載するキャビティを備え、当該キャビティに封止部材を充填することで発光素子1を封止する構成のセラミックパッケージや樹脂パッケージであってもよい。また、一対のリードフレームに発光素子1を実装し、リードフレームの外部接続部を除いて、全体を樹脂などで封止する構成のものであってもよい。
【0049】
封止部材4は、実装基板2の上面に実装された発光素子1及びワイヤ3などを、外部環境から保護するための透光性を有する部材である。
封止部材4の材料としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂などを好適に用いることができる。また、このような樹脂材料には、適宜に、波長変換物質(蛍光体)、着色剤、光拡散性物質、その他のフィラーを含有させてもよい。
また、封止部材4は樹脂材料に限定されず、ガラスなどの耐光性に優れた無機材料を用いることもできる。
【0050】
波長変換物質である蛍光体材料としては、例えば、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体、LAG(ルテチウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体、KSF(K
2SiF
6:Mn)系蛍光体などの当該分野で公知のものを使用することができる。
【0051】
なお、封止部材4は、発光素子1と接するように設けられることに限らず、空気、窒素ガス、その他の不活性ガスなどの気体又は真空の層を介して発光素子1を気密封止するカバー部材であってもよい。この場合において、第2透光性膜18としてAR膜を用いるときは、AR膜の外側と接する空気層などの媒質との間で、前記した式(3−1)〜式(3−3)などの関係を満足するように材料を選択することが好ましい。従って、第2透光性膜18の外側と接する媒質が空気などのように低屈折率の場合には、第2透光性膜18は、その外側と接する媒質よりも高い屈折率を有する材料を用いればよい。
【0052】
[発光装置の動作]
次に、第1実施形態に係る発光装置100の動作について、
図1A〜
図2を参照して説明する。
発光素子1は、実装基板2及びワイヤ3を介して外部接続部13a及び外部接続部15aに外部電源が接続されると、n側半導体層12n及びp側半導体層12p間に電流が供給されて活性層12aが発光する。
発光素子1の活性層12aが発した光は、半導体積層体12内を伝播して、透光性電極14及び第1透光性膜17を通って、又は第2透光性膜18を通って、発光素子1の上面又は側面から出射する。発光素子1から出射した光は、更に封止部材4を通って、発光装置100の外部に取り出される。
【0053】
より詳細には、半導体積層体12の第1領域121の側面121aに入射した光は、一部は、第1透光性膜17を透過してn電極13の側面に照射されるが、他の部分は、反射率の高い第1透光性膜17で反射されて半導体積層体12内に戻される。半導体積層体12に戻された光は、上面や他の領域の側面を通って発光素子1から取り出される。
また、半導体積層体12の第2領域122の側面122aに入射した光は、一部は第2透光性膜18で反射されて半導体積層体12内に戻されるが、他の部分は、透過率の高い第2透光性膜18を透過し、更に封止部材4を通って外部に取り出される。
このようにn電極13が設けられていない第2領域122の側面122aからは光を出射し易くするように第2透光性膜18を配置するとともに、光を吸収し易いn電極13が設けられている第1領域121の側面121aではより多くの光を反射して半導体積層体12に戻すように第1透光性膜17を配置することで、光の外部への取り出し効率を高めることができる。
【0054】
また、封止部材4に波長変換物質が含有されている場合は、発光素子1から取り出された光の少なくとも一部は、波長変換物質によって長波長側の光に波長変換される。波長変換され光は、封止部材4を通って外部に取り出されるが、一部は発光素子1内に入射される。従って、波長変換された光についても、その一部が半導体積層体12の側面から取り出されることになる。
第2領域122の側面122aに、第2透光性膜18として、好ましくはAR膜を設けることで、より好ましくは多層のAR膜を設けることで、発光素子1の発光波長よりも長い波長の光を、高い透過率で透過させることができる。その結果、発光装置100からの光取り出し効率を高めることができる。
【0055】
[発光装置の製造方法]
次に、発光装置100の製造方法について、
図5を参照して説明する。
本実施形態に係る発光装置100の製造方法は、発光素子製造工程S10と、発光装置製造工程S20と、が含まれている。
発光素子製造工程S10には、半導体積層体形成工程S101と、n側半導体層露出工程S102と、絶縁膜形成工程S103と、透光性電極形成工程S104と、第1透光性膜形成工程S105と、第2透光性膜形成工程S106と、第1透光性膜開口形成工程S107と、パッド電極形成工程S108と、個片化工程S109と、が含まれている。
発光装置製造工程S20には、発光素子実装工程S201と、封止工程S202と、が含まれている。
以下、各工程について、
図6A〜
図7Bを参照(適宜
図1A〜
図3及び
図5参照)して詳細に説明する。
【0056】
(発光素子製造工程S10)
まず、半導体積層体形成工程S101において、
図6Aに示すように、基板11上に半導体積層体12を形成する。
この工程では、例えば、サファイアからなる基板11の一方の主面上に、前記した窒化物半導体材料を用いて、MOCVD法によりn側半導体層12n、活性層12a及びp側半導体層12pを順次に積層することで、半導体積層体12を形成する。
なお、発光素子製造工程S10の各工程は、1枚の基板11のウエハ上に、複数の発光素子1が形成されるウエハレベルプロセスで行われる。すなわち、基板11上に複数の発光素子1が1次元又は2次元に配列するように形成される。
【0057】
次に、n側半導体層露出工程S102において、
図6Bに示すように、n電極13を形成するための第1領域121と、複数の発光素子1を区画する仮想線である境界線BDに沿った領域、すなわち個々の発光素子1の外縁を含む領域である第2領域122とに、n側半導体層12nが露出した領域を形成する。
第2領域122は、後記する個片化工程S109において発光素子1を切断する際の境界領域(ダイシングストリート)である。
第1領域121及び第2領域122は、例えば、フォトリソグラフィ法により、第1領域121及び第2領域122を形成する領域に開口部を有するレジストパターンを形成した後、当該レジストパターンをエッチングマスクとして、半導体積層体12を上面側からn側半導体層12nが露出するまでエッチングすることで形成することができる。
【0058】
次に、絶縁膜形成工程S103において、
図6Cに示すように、p側半導体層12p上の、p電極15を配置する予定領域及びその近傍領域に、絶縁膜16を形成する。
絶縁膜16は、例えば、半導体積層体12の表面全体に、SiO
2などの材料を用いて、スパッタリング法により成膜し、その後にリフトオフ法によりパターニングすることで形成することができる。
【0059】
次に、透光性電極形成工程S104において、
図6Dに示すように、p側半導体層12p及び絶縁膜16の上面の略全領域を被覆するように透光性電極14を形成する。透光性電極14は、例えば、ITOなどの材料を用いて、スパッタリング法により成膜し、その後にフォトリソグラフィ法で形成したエッチングマスクを用いてエッチングすることで形成することができる。
【0060】
次に、第1透光性膜形成工程S105において、
図6Eに示すように、SiO
2などの材料を用いて、スパッタリング法や蒸着法などにより、第1透光性膜17を形成する。第1透光性膜17のパターニングは、フォトリソグラフィ法によって形成されるマスクを用いたエッチング法によって行うことができる。
なお、この工程では、第1透光性膜17は、第2領域122を被覆しないように形成する。
【0061】
次に、第2透光性膜形成工程S106において、
図6Fに示すように、NSO、SiONなどの材料を用いて、スパッタリング法や蒸着法などにより、第2透光性膜18を形成する。第2透光性膜18のパターニングは、リフトオフ法により行うことができる。
第2透光性膜18は、第2領域122を被覆するように設けられるが、その端部が第1透光性膜17と重なるように設けることが好ましく、更に第1透光性膜17の上面にまで延在するように設けるようにしてもよい。第2透光性膜18の端部が、第1透光性膜17と重なるように設けることで、保護膜としてのバリア性を高めることができる。
【0062】
次に、第1透光性膜開口形成工程S107において、
図6Gに示すように、第1領域121にn側半導体層12nを露出させる開口部17nを形成するとともに、透光性電極14の上面に、透光性電極14を露出させる開口部17pを形成する。
この工程では、フォトリソグラフィ法によって第1領域121の底面及び透光性電極14上に、n電極13及びp電極15を設けるための領域に開口を有するマスクを形成し、当該マスクの開口内の第1透光性膜17をエッチングにより除去する。これによって、第1領域121の底面にn側半導体層12nを露出させるとともに、透光性電極14の上面の一部を露出させる。
【0063】
次に、パッド電極形成工程S108において、
図6Hに示すように、開口部17nにn側半導体層12nと接続するn電極13を、開口部17pに透光性電極14と接続するp電極15を、それぞれ形成する。
この工程では、第1透光性膜開口形成工程S107でエッチングに用いたマスクを除去せずに、n電極13及びp電極15として、前記した金属材料を用いて、スパッタリング法、蒸着法などにより金属膜を成膜する。そして、マスクを除去することで、すなわち、リフトオフ法により金属膜をパターニングすることでn電極13及びp電極15を形成することができる。
なお、n電極13とp電極15とに同じ材料を用いる場合は、同時に形成することができる。また、n電極13とp電極15とに異なる材料を用いる場合には、それぞれ別の工程で行うようにすればよい。
【0064】
次に、個片化工程S109において、
図6Iに示すように、第2領域122上に設定された境界線BDに沿って、ダイシング法やスクライビング法などにより切断することで、発光素子1を個片化する。
なお、ウエハを切断する前に、基板11の裏面を研磨して薄肉化するようにしてもよい。また、個片化する前に、又は個片化した後で、基板11の裏面側に金属やDBR(分布ブラッグ反射鏡)膜などからなる反射層を設けるようにしてもよい。
以上の工程を行うことによって、発光素子1を形成することができる。
【0065】
(発光素子製造工程S10の変形例)
パッド電極形成工程S108は、第1透光性膜形成工程S105の前に行うようにしてもよい。すなわち、先にn電極13及びp電極15を形成し、その後に第1透光性膜17及び第2透光性膜18を形成するようにしてもよい。なお、この場合は、第1透光性膜形成工程S105において、パッド電極であるn電極13及びp電極15が露出するように第1透光性膜17をパターニングする。
【0066】
(発光装置製造工程S20)
次に、発光素子実装工程S201において、
図7Aに示すように、実装基板2に、発光素子1を実装する。この工程において、発光素子1は、実装基板2の所定位置に、樹脂や半田などのダイボンド部材を用いて接合される。そして、n電極13及びp電極15の外部接続部13a,15aは、それぞれ実装基板2の対応する極性の上部配線22と、ワイヤ3を用いて電気的に接続される。
【0067】
次に、封止工程S202において、
図7Bに示すように、封止部材4を用いて、発光素子1及びワイヤ3を封止する。封止部材4には、波長変換物質である蛍光体の粒子が含有されていてもよく、光反射性物質、光拡散性物質、着色剤、その他のフィラーが含有されていてもよい。
封止部材4の基材としては、好適には樹脂材料を用いることができる。樹脂材料として熱可塑性樹脂を用いる場合は射出成形法を、熱硬化性樹脂を用いる場合はトランスファーモールド法を用いて封止部材4を形成することができる。また、ポッティング法、スプレー法、インクジェット法、スクリーン印刷法など、各種の塗布法を用いて封止部材4を形成することもできる。
以上の工程を行うことによって、発光装置100を製造することができる。
【0068】
<第2実施形態>
[発光素子の構成]
第2実施形態に係る発光素子について、
図8A及び
図8Bを参照して説明する。
第2実施形態に係る発光素子1Aは、平面視で横長の矩形形状を有しており、当該矩形の2辺(
図8Aにおいて、左辺及び下辺)に沿って、第1領域121が設けられている。すなわち、n電極13は、半導体積層体12に囲まれた領域ではなく、発光素子1Aの外縁部の一部に沿った領域に設けられている。発光素子1Aの外縁部の内で、n電極13が設けられる領域が第1領域121(
図8Bにおいて、右上がりのハッチングを施した領域)であり、第1領域121を除く領域が第2領域122(
図8Bにおいて、右下がりのハッチングを施した領域)である。
半導体積層体12の第1領域121における側面121aは、第1透光性膜17が設けられ、第2領域122における側面122aは、第2透光性膜18が設けられている。
なお、
図8Aに示した平面図において、第1透光性膜17及び第2透光性膜18の外形線は省略している。
【0069】
発光素子1Aは、第1実施形態に係る発光素子1とは、その外形、並びに、n電極13及びp電極15の配置場所及び形状が異なるが、発光素子1Aの各部材は、発光素子1と同様の材料を用いて構成される。このため、発光素子1Aの各部材についての詳細な説明、発光素子1Aの動作及び製造方法についての説明は省略する。
また、前記した発光装置100は、発光素子1に代えて、発光素子1Aを用いても構成することができる。その際に、実装基板2や封止部材4の形状を、発光素子1Aの形状に合わせて形成することで、発光装置100を構成することができる。
【実施例】
【0070】
実施例1として、第2透光性膜として単層のAR膜を設けた
図1Aに示した形状の発光素子を作製し、その発光出力Poと順方向電圧Vfとを測定した。また、比較例1として、第2透光性膜の代わりに第2領域の側面にも第1透光性膜を設けた実施例1と同形状の発光素子を作製し、その発光出力Poと順方向電圧Vfとを測定した。
同様に、実施例2及び比較例2として、
図7Aに示した形状の発光素子を作製し、それぞれの発光出力Poと順方向電圧Vfとを測定した。
【0071】
各サンプルの作製条件を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
また、表1に示した条件の他に、実施例1,2及び比較例1,2に共通の条件として、n電極、p電極及び絶縁膜の作製条件を以下に示す。
<実施例1,2、比較例1,2に共通の条件>
・n電極
材料:下層側からAl系多層膜/Cr−Rh系合金/Pt/Auを積層
但し、Al系多層膜は、下層側からTi/Al−Cu系合金/Ti/Ruを積層したものである。
・p電極
材料:下層側からCr−Rh系合金/Pt/Auを積層
・絶縁膜
材料:SiO
2(屈折率1.49)
膜厚:215nm
【0074】
<測定結果>
各サンプルの測定結果を表2に示す。
なお、実施例1及び比較例1について、測定時にサンプルに印加する順方向電流は65mAである。また、実施例2及び比較例2について、測定時にサンプルに印加する順方向電流は20mAである。
【0075】
【表2】
【0076】
実施例1は比較例1に対して、発光出力Poが、0.27%向上することを確認した。
実施例2は比較例2に対して、発光出力Poが、0.48%向上することを確認した。
また、実施例1,2ともに、それぞれに対応する比較例1,2に対して、順方向電圧Vfが同等であることを確認した。
すなわち、第2領域に、第1領域に設ける第1透光性膜よりも屈折率の高い第2透光性膜を設けることで、発光出力Poを向上させる効果があることを確認できた。
【0077】
以上、本発明に係る発光素子及び発光装置について、発明を実施するための形態により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変などしたものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。