特許第6582743号(P6582743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6582743
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】切断ツールおよび刃物
(51)【国際特許分類】
   B26D 1/04 20060101AFI20190919BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20190919BHJP
   B26D 7/26 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   B26D1/04 Z
   B26D3/00 601B
   B26D7/26
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-167381(P2015-167381)
(22)【出願日】2015年8月27日
(65)【公開番号】特開2017-42872(P2017-42872A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】井村 淳史
【審査官】 山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−176094(JP,U)
【文献】 特開2000−326291(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0201958(US,A1)
【文献】 中国実用新案第201493876(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/04 − 1/10
B26D 7/26
B26D 3/00
B41J 11/66 − 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダと、
前記ホルダに装着される板状の刃物と、
前記刃物を係止するためのピンと、
前記刃物の側面を押さえる押さえ部材と、を備え、
前記ホルダは、
前記刃物が挿入される溝と、
前記溝を貫通して前記ピンが挿入される孔と、を備え、
前記刃物は、
当該刃物の側縁に設けられ、前記孔に挿入された前記ピンに当接する傾斜部と、
当該刃物の上縁に設けられ、前記溝の底面に当接する当接部と、を備え、
前記刃物が前記溝に挿入され、前記当接部が前記溝の底面に当接し、且つ、前記孔に挿入された前記ピンに前記傾斜部を当接させた状態で、前記押さえ部材によって前記刃物の側面が押さえられている、
ことを特徴とする切断ツール。
【請求項2】
請求項1に記載の切断ツールにおいて、
前記傾斜部は、切断動作時に前記刃物にかかる力が、前記当接部を前記溝の底面に押し付ける方向の力として作用するように傾斜している、
ことを特徴とする切断ツール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の切断ツールにおいて、
前記刃物は、前記傾斜部の前記ピンに当接する位置の上側において前記傾斜部に繋がるように設けられ、前記押さえ部材による押さえが解除されて前記刃物が変位すると前記ピンが係合する受け部をさらに備える、
ことを特徴とする切断ツール。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の切断ツールにおいて、
前記当接部が、前記刃物の上縁に2つ設けられている、
ことを特徴とする切断ツール。
【請求項5】
請求項4に記載の切断ツールにおいて、
前記2つの当接部は、それぞれ、先端に向かうに従って幅が狭くなっている、
ことを特徴とする切断ツール。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の切断ツールにおいて、
前記押さえ部材は、前記ホルダの側面から前記溝へと続く孔に圧入されている
ことを特徴とする切断ツール。
【請求項7】
請求項6に記載の切断ツールにおいて、
前記押さえ部材は、球形状である、
ことを特徴とする切断ツール。
【請求項8】
溝と前記溝を貫通してピンが挿入される孔とを備える切断ツールのホルダに、前記ピンと押さえ部材とを用いて取り付けられる板状の刃物であって、
当該刃物の側縁に設けられ、前記孔に挿入された前記ピンに当接する傾斜部と、
当該刃物の上縁に設けられ、前記溝の底面に当接する当接部と、を備える、
ことを特徴とする刃物。
【請求項9】
請求項8に記載の刃物において、
前記傾斜部は、切断動作時に当該刃物にかかる切断方向と反対側の方向の力が、前記当接部を前記溝の底面に押し付ける方向の力として作用するように傾斜している、
ことを特徴とする刃物。
【請求項10】
請求項8または9に記載の刃物において、
前記傾斜部の前記ピンに当接する位置に対して下端の刃先から離れる方向に前記傾斜部に繋がるように設けられ、前記刃物が下方向へ変位すると前記ピンが係合する受け部をさらに備える、
ことを特徴とする刃物。
【請求項11】
請求項8ないし10の何れか一項に記載の切断ツールにおいて、
前記当接部が、前記刃物の上縁に2つ設けられている、
ことを特徴とする刃物。
【請求項12】
請求項11に記載の刃物において、
前記2つの当接部は、それぞれ、先端に向かうに従って幅が狭くなっている、ことを特徴とする刃物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属や有機材料等により形成された変形可能なフィルム状部材を切断するための切断ツール、および、この切断ツールに用いる刃物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属や有機材料等により形成された変形可能なフィルム状部材の切断は、たとえばカッターホイールをフィルム状部材に押し付けながら、カッターホイールとフィルム状部材を相対的に移動させることにより行われていた。たとえば、特許文献1に、カッターホイールを用いてフィルム状部材を切断するための構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−166169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された構成では、カッターホイールに形成された孔にピンを挿入してカッターホイールがホルダに取り付けられるため、孔とピンとの間に僅かな隙間が生じると、切断時にカッターホイールにブレが生じることが起こり得る。カッターホイールの刃先は鋭利であるため、このようにカッターホイールにブレが生じると、刃先が損傷し、切断動作に不具合が生じることが起こり得る。
【0005】
かかる課題に鑑み、本発明は、フィルム状部材の切断に用いる刃物をブレなく取り付けることが可能な切断ツール、および、この切断ツールに用いる刃物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、切断ツールに関する。本態様に係る切断ツールは、ホルダと、前記ホルダに装着される板状の刃物と、前記刃物を係止するためのピンと、前記刃物の側面を押さえる押さえ部材と、を備える。前記ホルダは、前記刃物が挿入される溝と、前記溝を貫通して前記ピンが挿入される孔と、を備える。また、前記刃物は、当該刃物の側縁に設けられ、前記孔に挿入された前記ピンに当接する傾斜部と、当該刃物の上縁に設けられ、前記溝の底面に当接する当接部と、を備える。前記刃物が前記溝に挿入され、前記当接部が前記溝の底面に当接し、且つ、前記孔に挿入された前記ピンに前記傾斜部を当接させた状態で、前記押さえ部材によって前記刃物の側面が押さえられている。
【0007】
本態様に係る切断ツールによれば、傾斜部とピンとの当接および当接部と溝底面との当接によって、刃物の面に平行な方向に刃物がホルダに位置決めされる。また、押さえ部材によって刃物の面が押さえられることにより、刃物が溝の側面に押し付けられ、刃物の面に垂直な方向に刃物がホルダに位置決めされる。したがって、刃物は、面方向および面に垂直な方向に確実に位置決めされる。このとき、刃物は、傾斜部とピンとの当接および当接部と溝底面との当接によって面方向に位置決めされるため、特許文献1に記載の孔にピンを通す構成のようなブレが生じることがない。よって、本態様によれば、確実に、刃物をホルダに取り付けることができる。
【0008】
本態様に係る切断ツールにおいて、前記傾斜部は、切断動作時に前記刃物にかかる力が、前記当接部を前記溝の底面に押し付ける方向の力として作用するように傾斜することが好ましい。こうすると、万一、押さえ部材による押さえが緩んで刃物が変位し得る状態となったとしても、切断動作時に刃物にかかる力によって当接部が溝の底面に押し付けられて、刃物が正規の位置に位置決めされるため、被切断面と刃先との角度が適正に保たれる。よって、切断動作を適正に行うことができる。
【0009】
本態様に係る切断ツールにおいて、前記刃物は、前記傾斜部の前記ピンに当接する位置の上側において前記傾斜部に繋がるように設けられ、前記押さえ部材による押さえが解除されて前記刃物が変位すると前記ピンが係合する受け部をさらに備える構成とされ得る。こうすると、何らかの要因によって押さえ部材による押さえが解除された場合にも、ピンが受け部に係合することにより、刃物がホルダから脱落することを抑止できる。
【0010】
本態様に係る切断ツールは、前記当接部が、前記刃物の上縁に2つ設けられるよう構成され得る。この場合、2つの当接部の両方を前記溝の底面に当接させ、且つ、前記孔に挿入された前記ピンに前記傾斜部を当接させた状態で、前記押さえ部材によって前記刃物の側面を押さえて、前記刃物が前記ホルダに取り付けられる。こうすると、一つの当接部を刃物の上縁に直線状に設けて当接部を溝の底面に当接させる場合に比べて、当接部をがたつきなく溝の底面に当接させやすくなる。よって、より確実に、刃物をホルダに位置決めできる。
【0011】
この場合、前記2つの当接部は、それぞれ、先端に向かうに従って幅が狭くなっていることが好ましい。こうすると、溝の底面に対する各当接部の接触領域を小さくできるため、当接部を、よりがたつきなく溝の底面に当接させやすくなる。
【0012】
本態様に係る切断ツールにおいて、前記押さえ部材は、前記ホルダの側面から前記溝へと続く孔に圧入されて、前記刃物の側面に当接するものであることが好ましい。こうすると、押さえ部材の取り付け作業を簡易化できる。なお、この場合、押さえ部材として、たとえば球形状の剛球を用いることができる。
【0013】
本発明の第2の態様は、溝と前記溝を貫通してピンが挿入される孔とを備える切断ツールのホルダに、前記ピンと押さえ部材とを用いて取り付けられる板状の刃物に関する。本態様に係る刃物は、当該刃物の側縁に設けられ、前記孔に挿入された前記ピンに当接する傾斜部と、当該刃物の上縁に設けられ、前記溝の底面に当接する当接部と、を備える。
【0014】
本態様に係る刃物によれば、上記第1の態様に係る切断ツールに用いることにより、第1の態様について述べたと同様の効果が奏され得る。
【発明の効果】
【0015】
以上のとおり、本発明によれば、フィルム状部材の切断に用いる刃物をブレなく取り付けることが可能な切断ツール、および、この切断ツールに用いる刃物を得ることができる。
【0016】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(a)は、実施の形態に係る切断装置の構成を模式的に示す側面図、図1(b)は、実施の形態に係るヘッドの構成を示す斜視図である。
図2図2は、実施の形態に係る切断ツール構成を示す分解斜視図である。
図3図3(a)、(b)は、実施の形態に係る刃物の構成を示す斜視図である。
図4図4(a)、(b)は、実施の形態に係る切断ツールの構成を示す斜視図である。
図5図5(a)〜(c)は、実施の形態に係る切断ツールの構成を示す側面図である。
図6図6(a)、(b)は、実施の形態に係る切断ツールの装着方法を模式的に示す図である。
図7図7(a)、(b)は、実施の形態に係る切断ツールの効果を説明する断面図である。
図8図8(a)は、変更例に係る刃物の構成を示す斜視図であり、図8(b)は他の変更例に係る切断ツールの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図には、適宜、互いに直交するX、Y、Z軸と、上下左右前後を示す矢印が付記されている。しかしながら、これらは、説明の便宜上、付記されたものであって、特許請求の範囲を何ら限定するものではない。
【0019】
<切断装置>
図1(a)は、実施の形態に係る切断装置1の構成を模式的に示す側面図である。
【0020】
図1(a)を参照して、切断装置1は、支持台11と、支柱12a、12bと、ガイド13a、13bと、摺動ユニット14と、ヘッド2を備える。
【0021】
支持台11は、切断対象物であるフィルム状部材Fを支持する。フィルム状部材Fは、金属や有機材料等の変形可能な材料からなっている。フィルム状部材Fは、フィルム状部材Fよりも硬度の高い基板等のフィルム支持体に一体に積層されていてもよい。支持台11は、図示しない移送機構によってY軸方向およびX軸方向に移送される。支持台11は、フィルム状部材Fまたはフィルム状部材Fが積層されたフィルム支持体を吸着する構成を備えていてもよい。
【0022】
支柱12a、12bは、切断装置1のベースに支持台11を挟んで垂直に設けられている。ガイド13a、13bは、それぞれ、X軸方向に平行となるように、支柱12a、12bの間に架設されている。摺動ユニット14は、ガイド13a、13bに摺動自在に設けられている。ガイド13a、13bには、所定の駆動機構が設けられており、この駆動機構により、摺動ユニット14がX軸方向に移動される。
【0023】
摺動ユニット14には、ヘッド2が装着されている。ヘッド2には、フィルム状部材Fに対向するように切断ツール30(図1(b)参照)が取り付けられている。切断ツール30に保持された刃物がフィルム状部材Fの表面に押し付けられた状態でヘッド2がX軸方向に移動する。これにより、フィルム状部材Fが切断される。
【0024】
<ヘッド>
図1(b)は、実施の形態に係るヘッド2の構成を示す斜視図である。
【0025】
図1(b)を参照して、ヘッド2は、昇降機構21と、ツール保持機構22と、ベースプレート23と、トッププレート24と、ボトムプレート25と、サーボモータ26とを備える。
【0026】
昇降機構21は、サーボモータ26の駆動軸に連結された円筒カム21aと、昇降部21bの上面に形成されたカムフォロア21cとを備える。昇降部21bは、スライダー(図示せず)を介してベースプレート23に上下方向に移動可能に支持され、バネ21dによってZ軸正方向に付勢されている。バネ21dの付勢により、カムフォロア21cは円筒カム21aの下面に押し付けられている。
【0027】
昇降部21bは、ツール保持機構22に連結されている。サーボモータ26により円筒カム21aが回動すると、円筒カム21aのカム作用によって昇降部21bが昇降し、これに伴い、ツール保持機構22が昇降する。図示しないカバーが、円筒カム21a、昇降部21bおよびカムフォロア21cを覆うように、ベースプレート23、トッププレート24およびボトムプレート25に装着される。ツール保持機構22の下端に、切断ツール30が装着される。
【0028】
<切断ツール>
図2は、切断ツール30の構成を示す分解斜視図である。
【0029】
切断ツール30は、ホルダ31と、刃物32と、ピン33と、押さえ部材34とを備える。
【0030】
ホルダ31は、強磁性体からなっている。ホルダ31は、たとえば、フェライト系のSUSからなる。ホルダ31は、円柱状の胴部31aと、胴部31aの下面から上方向に設けられた溝31bと、胴部31aの左側から溝31bを貫通して右側面へと至る円形の孔31cと、胴部31aの左側から溝31bへと至る円形の孔31dとが形成されている。また、胴部31aの前側には、側面が切り欠かれることによって傾斜面31eが形成されている。傾斜面31eは、前後方向と上下方向とに平行な面内方向に、水平方向から所定の角度だけ傾いている。
【0031】
溝31bは、胴部31aの左右方向中央位置に設けられている。溝31bは、前後方向に平行に設けられ、胴部31aの前側面から後側面へと至っている。溝31bの左右方向の幅は刃物32の厚みよりも僅かに大きい。溝31bの底面311は、上下方向に垂直な平面となっている。溝31bに、刃物32が挿入される。刃物32の構成については、追って、図3(a)、(b)を参照して説明する。
【0032】
孔31c、31dは、胴部31aの左側面が平面状に切り欠かれて形成された凹部31fから右方向に延びている。胴部31aの右側面にも同様に凹部31f(図示せず)が形成されている。これら2つの凹部31fは、左右対称にホルダ31に形成されている。
【0033】
孔31cの径は、ピン33の径と同じである。孔31cはその右側の端部において径が小さくされており、ピン33の右端の端部と接触する。孔31cの左側の端部は、面取りされることにより、やや径が大きくなっている。
【0034】
孔31dの径は、凹部31fの底面位置から所定の深さ位置までは、右に進むに従って徐々に小さくなり、その後、一定となっている。径が一定である孔31dの部分の径は、球状の押さえ部材34の径よりも僅かに小さくなっている。孔31dの径が一定である部分に押さえ部材34が圧入される。
【0035】
ピン33は、円柱形状を有し、剛性の高い金属材料からなっている。ピン33の右端は、尖頭形状となっている。ピン33の長さは、ピン33の右端が孔31cの右端に当接するまでピン33を孔31cに挿入した状態において、ピン33の左端が凹部31fの底面と左右方向において同じ位置となるように設定されている。
【0036】
押さえ部材34は、球形状を有し、ホルダ31よりも剛性の高い金属材料からなっている。押さえ部材34は、たとえば、SUJ2(高炭素クロム)からなる。押さえ部材34の径は、後述のように押さえ部材34を孔31dに圧入して刃物32の側面を押さえた状態において、押さえ部材34の左端が凹部31fの底面と左右方向において同じ位置となるように設定されている。
【0037】
<刃物>
図3(a)、(b)は、刃物32の構成を示す斜視図である。
【0038】
図3(a)、(b)を参照して、刃物32は、左右方向の厚みが一定の板状の部材の下部に、刃先32aと刃先32bが形成された構成となっている。刃物32は、たとえば合金工具鋼、炭素工具鋼、超硬合金または焼結ダイヤモンド等の素材からなっている。刃物32は、支持台11またはフィルム支持体よりも硬度が低く、かつフィルム状部材Fよりも高い硬度を有することが好ましい。また、少なくとも刃先32a及び32bのフィルム状部材Fに食い込む範囲に摩耗を防止したり摩擦を低減させるための公知のコーティングが施されていてもよい。
【0039】
刃先32aは稜線を有し、刃先32bには刃物32の後側縁に向かって幅が広くなる面P1(図3(b)参照)が形成されている。刃先32bの面P1は、前後方向に平行であり、刃先32aの稜線は、刃先32bから離れる方の端部が上に持ち上げられるようにして、前後方向から所定の角度だけ傾いている。切断時には、刃先32aの刃先32b側と刃先32bがフィルム状部材Fに押し付けられ、刃先32bの面P1が支持台11またはフィルム支持体と接触させられた状態で刃物32がフィルムに対して相対移動させられる。刃物32は支持台11またはフィルム支持体よりも硬度が低く、また支持台11またはフィルム支持体とは面接触することから、支持台11またはフィルム支持体を傷つけることがない。
【0040】
また、刃物32の後側縁には、傾斜部32cと、受け部32dが形成されている。傾斜部32cは、水平面から所定角度だけ傾斜した平面である。傾斜部32cは、上下方向に緩やかに湾曲する曲面であってもよい。受け部32dは、傾斜部32cの上端に繋がっている。受け部32dは、図2に示すピン33と略同径の円弧状の曲面となっている。
【0041】
さらに、刃物32の上縁中央に凹部32eが設けられ、これにより、2つの当接部32f、32gが形成されている。当接部32f、32gは、水平な平面であり、互いに同じ高さとなっている。当接部32f、32gは、円弧状に面取りされることにより、先端に向かうに従って前後方向の幅が狭くなっている。
【0042】
刃物32は、たとえば、ワイヤー放電加工により切り出される。刃物32の傾斜部32cおよび当接部32f、32gは、面精度が高い平面となっている。ワイヤー放電加工により刃物32を切り出す場合、傾斜部32cおよび当接部32f、32gの部分は、面精度を確保するため、ワイヤーの移動が低速に設定される。
【0043】
<組立>
図2を参照して、切断ツール30の組立工程について説明する。
【0044】
まず、ピン33を孔31cに挿入して、ピン33を胴部31aに装着する。次に、刃物32を溝31bに挿入して、刃物32の傾斜部32cをピン33に当接させ、さらに、刃物32の当接部32f、32gを溝31bの底面311に当接させる。この状態で、押さえ部材34を孔31dに圧入して、刃物32の左側面を押さえ部材34により押さえる。これにより、刃物32の右側面が溝31bの右側の内側面に圧接される。これにより、刃物32がホルダ31に取り付けられる。その後、ピン33の抜けを防止するため、孔31cの周辺に目打ちをし、ピン33に対するカシメを行う。カシメは、ピン33を孔31cに挿入した直後に行われてもよい。こうして、切断ツール30の組立が完成する。
【0045】
図4(a)、(b)は、組立後の切断ツール30の構成を示す斜視図、図5(a)〜(c)は、それぞれ、組立後の切断ツール30の構成を示す左側面、正面図および右側面図である。
【0046】
刃物32は、刃先32a、32bのみが下方に突出する状態でホルダ31に装着されている。刃先32bの稜線は、前後方向に平行である。切断動作時には、刃先32bがフィルム状部材Fに押し付けられた状態で、切断ツール30が前方向に移動される。より詳細には、切断ツール30が、図1(b)のヘッド2のツール保持機構22に装着された状態で、サーボモータ26が駆動され、さらに、ヘッド2が図1のX軸正方向に送られる。これにより、刃先32aの刃先32b側と刃先32bがフィルム状部材Fに押し付けられ、刃先32bの面P1が支持台11またはフィルム支持体と接触させられた状態で切断ツール30が前方向に移動され、刃先32aおよび刃先32bによりフィルム状部材Fが切断される。
【0047】
<ヘッドへの装着>
図6(a)、(b)は、ツール保持機構22に対する切断ツール30の取り付け方法を模式的に示す図である。図6(a)、(b)では、ツール保持機構22の内部が透視された状態が示されている。
【0048】
ツール保持機構22の下端には、切断ツール30を保持する保持部221が設けられ、この保持部221に、切断ツール30を挿入可能な穴222が形成されている。穴222の底には磁石224が設置され、穴222の中間位置にピン223が設けられている。上記のように、切断ツール30のホルダ31は強磁性体からなっている。
【0049】
ツール保持機構22に切断ツール30を取り付ける場合、切断ツール30のホルダ31が保持部221の穴222に挿入される。ホルダ31の上端が磁石224に接近するとホルダ31が磁石224に吸着される。このとき、ホルダ31の傾斜面31eがピン223に当接し、ホルダ31が正規の位置に位置決めされる。こうして、図6(b)に示すように、切断ツール30がツール保持機構22の下端に装着される。
【0050】
切断ツール30がツール保持機構22に装着された後、上記のようにヘッド2が移動されて、フィルム状部材Fに対する切断動作が行われる。
【0051】
<実施形態の効果>
本実施の形態によれば、以下の効果が奏される。
【0052】
図7(a)、(b)は、切断ツール30を上下方向および前後方向の平行な平面によって左右方向の中央位置で切断した断面図である。便宜上、図7(a)、(b)には、押さえ部材34が破線で示されている。
【0053】
図7(a)に示すように傾斜部32cとピン33との当接と、当接部32f、32gと溝31bの底面311との当接とによって、刃物32の面に平行な方向(左右方向に垂直な方向)に刃物32がホルダ31に位置決めされる。また、押さえ部材34によって刃物32の側面が押さえられることにより、刃物32が溝31bの右側の内側面に押し付けられ、刃物32の面に垂直な方向(左右方向)に刃物32がホルダ31に位置決めされる。したがって、刃物32は、面方向および面に垂直な方向に確実に位置決めされる。このとき、刃物32は、傾斜部32cとピン33との当接および当接部32f、32gと溝31bの底面311との当接によって面方向に位置決めされるため、上記特許文献1に記載された孔にピンを通して刃物を位置決めする構成のようなブレが生じることがない。よって、本実施の形態によれば、確実に、刃物32をホルダ31に取り付けることができる。
【0054】
また、本実施の形態において、傾斜部32cは、切断動作時に刃物32にかかる力が、当接部32f、32gを溝31bの底面311に押し付ける方向の力として作用するように傾斜している。すなわち、図7(a)に示すように、刃先32bは、切断動作時に、上方向の力と後方向の力を受ける。これらの力によって、刃物32は、傾斜部32cがピン33に押し付けられつつ、当接部32f、32gが溝31bの底面311に押し付けられる作用を受ける。したがって、万一、押さえ部材34による押さえが緩んで刃物32が変位し得る状態となったとしても、切断動作時に刃先32bを介して刃物32にかかる力によって、傾斜部32cがピン33に押し付けられつつ、当接部32f、32gが溝31bの底面311に押し付けられて、刃物32が正規の位置に位置決めされ、フィルム状部材Fと刃先32aとの角度が適正に保たれる。よって、切断動作を適正に行うことができる。
【0055】
また、図7(a)に示すように、刃物32は、傾斜部32cのピン33に当接する位置の上側において傾斜部32cに繋がるように、受け部32dを備えている。これにより、何らかの要因によって押さえ部材34による押さえが解除された場合にも、図7(b)に示すようにピン33が受け部32dに係合し、当接部32fが溝31bの底面311に当接することにより、刃物32がホルダ31から脱落することが抑止される。
【0056】
また、図7(a)に示すように、刃物32の上縁には、2つの当接部32f、32gが設けられ、これら2つの当接部32f、32gの両方を溝31bの底面311に当接させることにより、刃物32の位置決めがなされる。このように2つの当接部32f、32gを底面311に2ヶ所で接触させる場合、溝31bの底面311に多少の起伏があったとしても、当接部32f、32gをがたつきなく溝31bの底面311に当接させやすくなる。
【0057】
たとえば、凹部32eを省略し、一つの当接部を刃物32の上縁に直線状に設けて当接部を溝31bの底面311に当接させる場合を想定する。この場合、たとえば、溝31bの底面311が長手方向の中央付近において僅かに隆起していると、当接部を底面311に押し付けた場合に、隆起により、当接部の長手方向の何れか一方の端部が底面311から浮いた状態となり、刃物32に面方向のがたつきが生じやすい。これに対し、上記実施の形態では、2つの当接部32f、32gが設けられているため、溝31bの底面311が長手方向の中央付近において僅かに隆起していても、2つの当接部32f、32gの両方を溝31bの底面311に適正に押し付けることができる。このため、刃物32を溝31b内の所定の位置により確実に位置決めすることができる。
【0058】
なお、本実施の形態では、図3(a)、(b)に示すように、2つの当接部32f、32gは、それぞれ、円弧状に面取りされることにより、先端に向かうに従って前後方向の幅が狭くなっている。これにより、溝31bの底面311に対する当接部32f、32gの接触領域を小さくでき、当接部32f、32gが溝31bの底面311の起伏に係りにくくなる。このため、当接部32f、32gを、よりがたつきなく溝31bの底面311に当接させやすくなる。
【0059】
このように、当接部32f、32gを、よりがたつきなく溝31bの底面311に当接させるためには、当接部32f、32gの上面の前後方向の幅をなるべく小さくすることが望ましい。たとえば、図8(a)に示すように、当接部32f、32gの上面を省略し、当接部32f、32gの上端には、左右方向の稜線のみが残るようにしてもよい。こうすると、当接部32f、32gは、それぞれ、溝31bの底面311に線接触するため、より一層がたつきなく当接部32f、32gを溝31bの底面311に当接させることができる。なお、当接部32f、32gが球面であってもよい。こうすると、当接部32f、32gを、それぞれ、溝31bの底面311に点接触させることができ、さらにがたつきなく当接部32f、32gを溝31bの底面311に当接させることができる。
【0060】
また、本実施の形態では、図2に示すように、球状の押さえ部材34が、ホルダ31の側面から溝31bへと続く孔31dに圧入されて、刃物32の側面を押さえる構成となっているため、押さえ部材34の取り付け作業を簡易に行えるとの効果も奏され得る。
【0061】
<変更例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記以外に種々の変更が可能である。
【0062】
たとえば、上記実施の形態では、球状の押さえ部材34が孔31dに圧入されて、刃物32の側面を押さえる構成となっていたが、図8(b)に示すように、円柱状の押さえ部材34が孔31dに圧入される構成であってもよい。この場合、たとえば、押さえ部材34の右端は尖頭形状や球面となっており、孔31dの径は、押さえ部材34の径よりも僅かに小さくなっている。また、孔31dの径を押さえ部材34の径と同じに設定し、押さえ部材34を孔31dに挿入した後に、孔31dの周縁を目打ちして、押さえ部材34に対するカシメを行ってもよい。この他、押さえ部材34が周面にネジ山を有し、孔31dが押さえ部材34のネジ山と噛み合うネジ溝を有する構成であってもよい。この場合、押さえ部材34を孔31dにネジ留めすることによって、押さえ部材34の先端により刃物32の側面が押さえられる。
【0063】
また、上記実施の形態では、図6(a)、(b)に示すように、磁石224の吸着力により切断ツール30がツール保持機構22に装着されたが、ヘッド2に切断ツール30を装着する構成はこれに限られるものではない。たとえば、ホルダ31の上部に円周方向に溝を設け、この溝にボールプランジャ等の弾性体や、ピンを係合させることにより、切断ツール30がツール保持機構22に装着される構成であってもよく、ホルダ31がボルト等により直接ヘッド2に固定される構成であってもよい。
【0064】
この他、ホルダ31の外形や材質等は、上記実施の形態に示すものに限定されるものではなく、他の外形や材質に適宜変更され得る。また、切断ツール30は、フィルム状部材Fに限らず、他の被切断物の切断にも適宜用いられ得る。
【0065】
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
30 … 切断ツール
31 … ホルダ
31b … 溝
31c … 孔
31d … 孔
311 … 底面
32 … 刃物
32a、32b … 刃先
32c … 傾斜部
32d … 受け部
32f、32g … 当接部
33 … ピン
34 … 押さえ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8