(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電源端子及び接地間に直列に接続された第1スイッチ素子及び第2スイッチ素子をさらに備え、前記第1スイッチ素子及び第2スイッチ素子の接続点が前記電圧駆動型半導体素子の制御端子に接続され、前記第2スイッチ素子及び接地間に前記抵抗値切換回路が接続されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体素子の駆動装置。
電源端子及び接地間に直列に接続された第1スイッチ素子及び第2スイッチ素子をさらに備え、前記第1スイッチ素子及び第2スイッチ素子の接続点が前記電圧駆動型半導体素子の制御端子に接続され、前記接続点と前記電圧駆動型半導体素子の制御端子間に前記抵抗値切換回路が接続されている
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体素子の駆動装置。
前記抵抗値切換回路は、第1抵抗と該第1抵抗と並列に接続された第2抵抗及び前記遅延回路の遅延信号によってオン・オフ制御されるスイッチ素子の直列回路とを備えていることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の半導体素子の駆動装置。
前記抵抗値切換回路は、第3抵抗と、該第3抵抗と直列に接続された第4抵抗と、前記第3抵抗及び前記第4抵抗の何れかと並列に接続された前記遅延回路の遅延信号によってオン・オフ制御されるスイッチ素子とを備えていることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の半導体素子の駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の一実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
また、以下に示す実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
以下、本発明の一の実施の形態に係る半導体素子の駆動装置について図面を参照して説明する。本実施形態では、半導体素子として電圧駆動型半導体素子を例にとり、半導体素子の駆動装置として半導体素子のゲート駆動装置を例にとって説明する。なお、以下、電圧駆動型半導体素子のゲート駆動装置を「半導体素子のゲート駆動装置」又は「ゲート駆動装置」と略記する場合がある。まず、本実施形態による半導体素子のゲート駆動装置1を備えたインバータ(電力変換回路)50について
図1を用いて説明する。
【0012】
図1に示すように、インバータ50は、三相交流電源17に接続されている。インバータ50は、三相交流電源17から入力する三相交流電力を全波整流する整流回路18と、整流回路18で整流された電力を平滑化する平滑用コンデンサ19とを有している。図示は省略するが、整流回路18は、6つのダイオードをフルブリッジ接続して構成するかまたは6つのスイッチング素子をフルブリッジ接続している。整流回路18の正極出力端子に正極側ラインLpが接続され、負極出力端子に負極側ラインLnが接続されている。これら正極側ラインLp及び負極側ラインLn間に平滑用コンデンサ19が接続されている。
【0013】
また、インバータ50は、正極側ラインLpに接続されたアーム部を構成する半導体モジュール2a,2c,2eと、負極側ラインLnに接続されたアーム部を構成する半導体モジュール2b,2d,2fとを有している。
半導体モジュール2a及び半導体モジュール2bは、ラインLpと負極側ラインLnとの間に直列に接続されて出力アームを構成している。半導体モジュール2c及び半導体モジュール2dは、正極側ラインLpと負極側ラインLnとの間に直列に接続されて出力アームを構成している。半導体モジュール2e及び半導体モジュール2fは、正極側ラインLpと負極側ラインLnとの間に直列に接続されて出力アームを構成している。
【0014】
そして、半導体モジュール2a及び半導体モジュール2bの接続部と、半導体モジュール2c及び半導体モジュール2dの接続部と、半導体モジュール2e及び半導体モジュール2fの接続部は、誘導性負荷となるモータ20にそれぞれ接続されている。
半導体モジュール2aは、N型のMOSFET(半導体素子の一例)3aと、MOSFET3aに逆並列接続された還流用ダイオード4aとを有してアーム部を構成している。MOSFET3aのドレイン端子Dに還流用ダイオード4aの陰極が接続され、MOSFET3aのソース端子Sに還流用ダイオード4aの陽極が接続されている。
【0015】
半導体モジュール2bは、N型のMOSFET(半導体素子の一例)3bと、MOSFET3bに逆並列接続された還流用ダイオード4bとを有してアーム部を構成している。MOSFET3bのドレイン端子Dに還流用ダイオード4bの陰極が接続され、MOSFET3bのソース端子Sに還流用ダイオード4bの陽極が接続されている。
半導体モジュール2cは、N型のMOSFET(半導体素子の一例)3cと、MOSFET3cに逆並列接続された還流用ダイオード4cとを有してアーム部を構成している。MOSFET3cのドレイン端子Dに還流用ダイオード4cの陰極が接続され、MOSFET3cのソース端子Sに還流用ダイオード4cの陽極が接続されている。
【0016】
半導体モジュール2dは、N型のMOSFET(半導体素子の一例)3dと、MOSFET3dに逆並列接続された還流用ダイオード4dとを有してアーム部を構成している。MOSFET3dのドレイン端子Dに還流用ダイオード4dの陰極が接続され、MOSFET3dのソース端子Sに還流用ダイオード4dの陽極が接続されている。
半導体モジュール2eは、N型のMOSFET(半導体素子の一例)3eと、MOSFET3eに逆並列接続された還流用ダイオード4eとを有してアーム部を構成している。MOSFET3eのドレイン端子Dに還流用ダイオード4eの陰極が接続され、MOSFET3eのソース端子Sに還流用ダイオード4eの陽極が接続されている。
【0017】
半導体モジュール2fは、N型のMOSFET(半導体素子の一例)3fと、MOSFET3fに逆並列接続された還流用ダイオード4fとを有してアーム部を構成している。MOSFET3fのドレイン端子Dに還流用ダイオード4fの陰極が接続され、MOSFET3fのソース端子Sに還流用ダイオード4fの陽極が接続されている。
MOSFET3a〜3fは、ユニポーラ型のパワー半導体素子であり、双方向性を有している。ここで、アーム部を構成するスイッチング素子としては、MOSFET3a〜3fのようなSi系の半導体素子だけでなく、炭化ケイ素、窒化ガリウム及びダイアモンドの少なくとも1つを主材料とするワイドバンドギャップ半導体素子であってもよい。また、還流用ダイオード4a〜4fもSi系の半導体素子だけでなく、炭化ケイ素、窒化ガリウム及びダイアモンドの少なくとも1つを主材料とするワイドバンドギャップ半導体素子であってもよい。ワイドバンドギャップ半導体素子はSi素子よりも高温,高電圧動作に優れ、低損失であるとともに、スイッチング速度がSi素子よりも速い。なお、還流用ダイオード4a〜4fとして、MOSFET3a〜3fのボディダイオードを利用してもよい。
【0018】
また、インバータ50は、半導体モジュール2aのスイッチング動作を制御するゲート駆動装置(GDU)1aと、半導体モジュール2bのスイッチング動作を制御するゲート駆動装置(GDU)1bと、半導体モジュール2cのスイッチング動作を制御するゲート駆動装置(GDU)1cと、半導体モジュール2dのスイッチング動作を制御するゲート駆動装置(GDU)1dと、半導体モジュール2eのスイッチング動作を制御するゲート駆動装置(GDU)1eと、半導体モジュール2fのスイッチング動作を制御するゲート駆動装置(GDU)1fとを有している。
【0019】
各ゲート駆動装置1a〜1fの出力端子は、MOSFET3a〜3fの制御端子となるゲート端子Gに接続されている。
半導体モジュール2a及び半導体モジュール2bは、例えばU相アームを構成し、半導体モジュール2c及び半導体モジュール2dは、例えばV相アームを構成し、半導体モジュール2e及び半導体モジュール2fは、例えばW相アームを構成している。
したがって、インバータ50は、これらのU相アーム、V相アーム及びW相アームが並列接続された三相フルブリッジ回路と、U相アームのスイッチング動作を制御するゲート駆動装置1a,1bと、V相アームのスイッチング動作を制御するゲート駆動装置1c,1dと、W相アームのスイッチング動作を制御するゲート駆動装置1e,1fとを有している。半導体モジュール2a,2c,2eはハイサイドスイッチングアームを構成し、半導体モジュール2b,2c,2fはローサイドスイッチングアームを構成する。
【0020】
次に、本実施形態による駆動装置についてゲート駆動装置1bを例にとり、
図1を参照しつつ
図2から
図6を用いて説明する。なお、ゲート駆動装置1a,1c,1d,1e,1fは、ゲート駆動装置1bと同様の構成を有している。
図2に示すように、ゲート駆動装置1bは、外部からMOSFET3bをオン・オフ制御する制御信号CS(b)が入力されるインターフェイス回路(インターフェイス部の一例)5と、このインターフェイス回路5から出力される内部制御信号によってMOSFET3bをオン・オフ制御するゲート駆動回路6とを備えている。
【0021】
ゲート駆動回路6は、例えば10〔V〕の正極電源P1が供給される電源端子T1と接地との間に接続されており、オン抵抗Rg(on)と、NPN型バイポーラトランジスタで構成される第1スイッチ素子7と、PNP型バイポーラトランジスタで構成される第2スイッチ素子8と、後述するオフ抵抗値切換回路15とが直列に接続されている。そして、第1スイッチ素子7は、コレクタがオン抵抗Rg(on)を介して電源端子T1に接続され、エミッタが第2スイッチ素子8のエミッタに接続され、ベースがインターフェイス回路5に接続されている。
【0022】
第2スイッチ素子8は、エミッタが第1スイッチ素子7のエミッタに接続され、コレクタがオフ抵抗値切換回路15を介して接地に接続され、ベースがインターフェイス回路5に接続されている。
したがって、第1スイッチ素子7はインターフェイス回路5から出力される内部制御信号がハイレベルであるときにオン状態となり、ローレベルであるときにオフ状態となる。逆に第2スイッチ素子8はインターフェイス回路5から出力される内部制御信号がハイレベルであるときにオフ状態となり、ローレベルであるときにオン状態となる。
そして、第1スイッチ素子7と第2スイッチ素子との接続点がMOSFET3bのゲートに接続されている。
【0023】
また、ゲート駆動装置1bは、
図2に示すように、MOSFET3b及び還流用ダイオード4bで構成されるアーム部に流れるドレイン電流(主電流の一例)Id(b)を検出する電流検出器(電流検出部の一例)10と、電流検出器10で検出したドレイン電流Id(b)の電流値を検出する電流値検出回路(電流検出部の一例)11と、電流値検出回路11で検出されたドレイン電流Id(b)の電流値の極性を判別する極性判別回路(極性判別部の一例)12と、極性判別回路12で判別された判別結果に応じてMOSFET3bのオフ抵抗値を切換えるオフ抵抗値選択回路(オフ抵抗値選択部の一例)13とを有している。
【0024】
極性判別回路12は、電流値検出回路11で検出したドレイン電流Id(b)が負(Id(a)<0)であるときにローレベルとなり、ドレイン電流Id(b)が零を含む正(Id(a)≧0)であるときにハイレベルとなる判別信号SDを出力する。
オフ抵抗値選択回路13は、極性判別回路12から入力される判別信号S1が供給される遅延回路14と、遅延回路14から出力される遅延信号S2が入力されるゲート駆動回路6の第スイッチ素子8と接地との間に接続されたオフ抵抗値切換回路15とを備えている。
【0025】
遅延回路14は、極性判別回路12から入力される判別信号S1をMOSFET3bのターンオン時のスイッチング時間以上に設定された遅延時間Ta分遅延させた遅延信号S2を出力する。
オフ抵抗値切換回路15は、通常のオフ抵抗値よりも大きな抵抗値に設定された第1オフ抵抗Rg1(off)と、この第1オフ抵抗Rg1(off)と並列に接続された例えばNPN型バイポーラトランジスタで構成されるスイッチ素子16及び第2オフ抵抗Rg2(off)の直列回路とで構成されている。
【0026】
このオフ抵抗値切換回路15では、スイッチ素子16がオフ状態であるときには第1オフ抵抗Rg1(off)のみが第2スイッチ素子8と接地との間に接続され、スイッチ素子16がオン状態であるときには第1オフ抵抗Rg1(off)と第2オフ抵抗Rf2(off)との並列抵抗が第2スイッチ素子8と接地との間に接続される。
したがって、スイッチ素子16がオフ状態であるときには第1オフ抵抗Rg1(off)のみの比較的大きな抵抗値となり、スイッチ素子16がオン状態であるときには第1オフ抵抗Rg1(off)及び第2オフ抵抗Rg1(off)の合成抵抗値で表される第1オフ抵抗Rg1(off)より小さい通常動作時のオフ抵抗値となる。
【0027】
次に、インバータ50の一相分(例えばU相アーム)について、ゲート駆動装置1bを適用したときの動作について説明する。なお、以下で説明する一相以外の他の2つの相(例えばV相及びW相)もこの一相と同様に動作する。インバータ50の一相分の整流動作は、モードMD1、モードMD2、モードMD3及びモードMD4の4つの動作に区分される。
モードMD1の動作では、ハイサイドアーム側のゲート駆動装置1aに入力される制御信号CS(a)が
図3(A)に示すようにハイレベルであり、ローサイドアーム側のゲート駆動装置1bに入力される制御信号CS(b)が
図3(B)に示すようにローレベルとなっている。このためMOSFET3aのゲートソース間電圧Vgs(a)は、
図3(C)に示すように、電源電圧P1と同電圧となり、MOSFET3bのゲートソース間電圧Vgs(b)は、負電圧N1と同電圧となる。
このため、MOSFET3aはオン状態となり、MOSFET3bはオフ状態となり、MOSFET3aのドレイン電流Id(a)が出力電流Iuとしてモータ20(
図1参照)のU相コイルに流れる。このため、MOSFET3aのドレイン電流Id(a)が
図3(G)に示すように、増加するとともに、出力電流Iuも
図3(E)に示すように徐々に増加する。また、出力電流Iuは正の値となる。
【0028】
モードMD1では、
図4(A)に示すように、MOSFET3bは、オフ状態であってドレイン電流Id(b)の値は、
図3(I)に示すように、0〔A〕となる。このため、電流値検出回路11は、電流検出器10で検知されたドレイン電流Id(b)に基づいてドレイン電流Id(b)の電流値を0〔A〕と検出し、検出結果を極性判別回路12に出力する。極性判別回路12は、ドレイン電流Id(b)の電流値が0〔A〕であってドレイン電流Id(b)の極性が正方向であることを判別し、
図3(J)に示すように、判別結果であるハイレベルの判別信号S1をオフ抵抗値選択回路13に出力する。
【0029】
オフ抵抗値選択回路13は、遅延回路14で判別信号S1を遅延させるが、モードMD1では、遅延回路14の遅延信号S2は
図3(K)に示すようにハイレベルを維持する。この遅延信号S2がオフ抵抗値切換回路15のスイッチ素子16のベースに供給されるので、このスイッチ素子16がオン状態となり、オフ抵抗値切換回路15の抵抗値は、第1オフ抵抗Rg1(off)及び第2オフ抵抗Rg2(off)の合成抵抗である通常動作時の抵抗値となる。
【0030】
次いで、時点t2でインバータ50の一相分の整流動作がモードMD1からモードMD2に切り替わる。モードMD2は、MOSFET3a及びMOSFET3bが同時にオン状態になってMOSFET3a及びMOSFET3b間に貫通電流が流れるのを防止するデッドタイムを形成するために、MOSFET3aをオン状態からオフ状態に切り替えて、MOSFET3a,3bを両方ともオフ状態にするモードである。
【0031】
モードMD2の動作では、MOSFET3aのゲートソース間電圧Vgs(a)及びMOSFET3bのゲートソース間電圧Vgs(b)は、
図3(C)及び(D)に示すように、負電圧N1と同電圧となる。このため、
図4(B)に示すように、MOSFET3aはオン状態からオフ状態に切り替わり、MOSFET3bはオフ状態を維持する。
このため、MOSFET3a,3bは、両方ともオフ状態になる。このとき、
図4(B)で破線矢印で示すように、半導体モジュール2bに内蔵された還流用ダイオード4bを介してモータ20から還流電流が出力電流Iuとしてモータ20に流れる。この還流電流は、モータ20に充電されていた電荷の放電に基づく電流であるため、
図3(E)に示すように、出力電流Iuは正の値は維持しつつ徐々に低下する。また、モードMD2では、MOSFET3aはオフ状態となるため、
図3(G)に示すように、MOSFET3aのドレイン電流Id(a)は、0〔A〕まで減少する。
【0032】
一方、
図3(I)及び
図4(B)に示すように、還流電流は、還流用ダイオード4bを介してMOSFET3bのソース端子Sからドレイン端子Dに向かって流れる負の電流である。このため、電流値検出回路11は、電流検出器10で検知されるドレイン電流Id(b)に基づいてドレイン電流Id(b)の電流値を負の値(Id(b)<0〔A〕)として検出し、検出結果を極性判別回路12に出力する。
極性判別回路12は、ドレイン電流Id(b)の電流値が負の値であってドレイン電流Id(b)の極性が負方向であると判別し、判別信号S1が
図3(J)に示すように、時点t2でハイレベルからローレベルは反転する。この判定信号S1がオフ抵抗値選択回路13の遅延回路14に供給されるので、この遅延回路14では、判別信号S1をMOSFET3bのターンオン時におけるスイッチング時間以上の遅延時間Taだけ遅延させて、
図3(K)に示すように、時点t2′でオン状態からオフ状態に反転する遅延信号S2を出力する。
【0033】
この遅延信号S2がオフ抵抗値切換回路15のスイッチ素子16のベースに入力されるので、このスイッチ素子16が時点t2′でオン状態からオフ状態に移行し、オフ抵抗値切換回路15の抵抗値が第1オフ抵抗Rg1(off)のみの通常動作時の抵抗値より大きな抵抗値となる。
このとき、ローサイドアーム側のゲート駆動装置1bに供給される制御信号CS(b)は、
図3(B)に示すように、ローレベルを維持しており、MOSFET3bはオフ状態を維持している定常状態であるので、オフ抵抗値切換回路15の抵抗値が通常動作時の抵抗値からこれより大きい抵抗値に切り換わってもインバータ動作には影響を与えることがない。
【0034】
その後、時点t3でインバータ50の一相分の整流動作がモードMD2からモードMD3に切り替わる。モードMD3は、MOSFET3bがオフ状態からオン状態に切り替わり、還流電流がMOSFET3b及び還流用ダイオード4bに並列に流れるモードである。
モードMD3では、インターフェイス回路5に入力される制御信号CS(b)が
図3(B)に示すように、ローレベルからハイレベルに反転し、第1スイッチ素子7をオン状態にするためのオン信号としてインターフェイス回路5からゲート駆動回路6に入力される。
【0035】
これにより、モードMD3では、MOSFET3bがオン状態となって、還流電流は並列接続されたMOSFET3b及び還流用ダイオード4bに流れる。このため、モードMD3における半導体モジュール2bは、MOSFET3bのオン抵抗と還流用ダイオード4bのオン抵抗が並列に接続されることになり、還流電流が還流用ダイオード4bのみを流れるモードMD2と比較して低抵抗となる。なお、モードMD3では、MOSFET3aはオフ状態を維持する。
【0036】
このモードMD3では、時点t3でインターフェイス回路5に入力する制御信号CS(b)が
図3(B)に示すように、ハイレベルとなって、第1スイッチ素子7をオン状態とするオン信号に切り替わる。
また、このオン信号は、第2スイッチ素子8をオフ状態とするためのオフ信号となる。これにより、第2スイッチ素子8はオフ状態に切り替わる。
MOSFET3bのゲート端子Gに電源電圧P1が印加され、ソース端子Sに基準電位Mが印加されるので、MOSFET3bのゲートソース間電圧Vgs(b)は電源電圧P1となる。これにより、
図3(D)に示すように、MOSFET3bのゲートソース間電圧Vgs(b)には順バイアス電圧が出力されるので、MOSFET3bはオフ状態からオン状態に切り替わる。
【0037】
したがって、
図4(C)に示すように、還流電流は、MOSFET3b及び還流用ダイオード4bを介してMOSFET3bのソース端子Sからドレイン端子Dに向かって流れる。
なお、
図4(C)では、還流電流は破線矢印によって図示されている。このため、モードMD3においても、電流値検出回路11は、電流検出器10で検知されるドレイン電流Id(b)に基づいてドレイン電流Id(b)の電流値を負の値(Id(b)<0〔A〕)として検出し、検出結果を極性判別回路12に出力する。
【0038】
極性判別回路12は、ドレイン電流Id(b)の電流値が負の値であってドレイン電流Id(b)の極性が負方向であることを判別し、引き続きローレベルの判定信号S1を判別結果としてオフ抵抗値選択回路13の遅延回路14に出力する。
このモードMD3では、判定信号S1が反転しないので、遅延回路14から出力される遅延信号S2も、
図3(K)に示すように、ローレベルを維持し、オフ抵抗値切換回路15の抵抗値は第1オフ抵抗Rg1(off)のみによる通常動作時より高い抵抗値を維持する。
モードMD3における還流電流は、モードMD2の場合と同様に、モータ20に充電されていた電荷の放電に基づく電流であるため、
図3(I)に示すように、還流電流の電流値は徐々に0(A)に近付く。これに伴い、
図3(E)に示すように、出力電流Iuは正の値を維持しつつ徐々に低下する。
【0039】
その後、時点t4でモードMD3からモードMD4に切り替わる。モードMD4は、前述したモードMD2と同様に、MOSFET3a及びMOSFET3bが同時にオン状態になってMOSFET3a及びMOSFET3b間に貫通電流が流れるのを防止するデッドタイムを形成するために、MOSFET3bをオン状態からオフ状態に切り替えて、MOSFET3a,3bを両方ともオフ状態にするモードである。
モードMD4の動作では、MOSFET3aのゲートソース間電圧Vgs(a)及びMOSFET3bのゲートソース間電圧Vgs(b)は、
図3(C)及び(D)に示すように、負電圧Veeと同電圧となる。このため、
図4(D)に示すように、MOSFET3aはオン状態からオフ状態に切り替わり、MOSFET3bはオフ状態を維持する。
【0040】
このため、MOSFET3a,3bは、両方ともオフ状態になる。このとき、
図4(D)で破線矢印で示すように、半導体モジュール2bに内蔵された還流用ダイオード4bを介してモータ20から還流電流が出力電流Iuとしてモータ20に流れる。この還流電流は、モータ20に充電されていた電荷の放電に基づく電流であるため、
図3(E)に示すように、出力電流Iuは正の値は維持しつつ徐々に低下する。また、モードMD4では、MOSFET3aはオフ状態となるため、
図3(G)に示すように、MOSFET3aのドレイン電流Id(a)は、0〔A〕を維持する。
【0041】
一方、
図3(I)及び
図4(D)に示すように、還流電流は、還流用ダイオード4bを介してMOSFET3bのソース端子Sからドレイン端子Dに向かって流れる負の電流である。このため、電流値検出回路11は、電流検出器10で検知されるドレイン電流Id(b)に基づいてドレイン電流Id(b)の電流値を負の値(Id(b)<0〔A〕)として検出し、これを検出結果として極性判別回路12に出力する。
【0042】
極性判別回路12は、ドレイン電流Id(b)の電流値が負の値であってドレイン電流Id(b)の極性が負方向であると判別し、判別信号S1が
図3(J)に示すように、ローレベルを維持する。この判定信号S1がオフ抵抗値選択回路13の遅延回路14に供給されるので、この遅延回路14では、判別信号S1をMOSFET3bのターンオン時におけるスイッチング時間以上の遅延時間Taだけ遅延させるが、判定信号S1がローレベルを維持するので、
図3(K)に示すように、ローレベルを維持する。
【0043】
この遅延信号S2がオフ抵抗値切換回路15のスイッチ素子16のベースに入力されるので、このスイッチ素子16がオフ状態を継続し、オフ抵抗値切換回路15の抵抗値が第1オフ抵抗Rg1(off)のみの通常動作時の抵抗値より大きな抵抗値を維持する。
その後、時点t5でモードMD4からモードMD1に切り替わる。このモードMD1では、前述したようにハイサイドアーム側のMOSFET3aがオン状態となり、ローサイドアーム側のMOSFET3bがオフ状態を維持する。
【0044】
このモードMD1では、ハイサイドアーム側のゲート駆動装置1aに入力される制御信号CS(a)が
図3(A)に示すように、ローレベルからハイレベルに反転し、ローサイドアーム側のゲート駆動装置1bに入力される制御信号CS(b)が
図3(B)に示すように、ローレベルを維持する。
このため、ハイサイドアーム側のMOSFET3aがオフ状態からオン状態に切り換わり、MOSFET3aのドレイン−ソース間電圧Vds(a)が
図3(F)に示すように、電源電圧P1から“0”に低下し、ドレイン電流Id(a)は
図3(G)に示すように、“0”から正方向に増加する。
【0045】
一方、ローサイドアーム側のアーム部では、MOSFET3bがオフ状態を継続しているが、ハイサイドアーム側のMOSFET3aがターンオンすることにより、ドレイン電流Id(a)が
図3(G)に示すように急峻に増加するので、MOSFET3bに高dv/dtが発生し、高dv/dtによる電流がMOSFET3bの
図2で点線図示の帰還容量Crssを通じてゲート側に流れてゲート電圧Vgs(b)が変動させようとする。
【0046】
しかしながら、本実施形態では、時点t5でモードMD4からモードMD1に切り換わったときに、MOSFET3bのドレイン電流Id(b)が
図3(I)に示すように、負の値から“0”を超えて正値となる。このドレイン電流Id(b)が電流検出器10で検知されて電流値検出回路11で検出されるので、極性判別回路12の判別信号S1が
図3(J)に示すようにローレベルからハイレベルに反転し、この判別信号S1が判別結果としてオフ抵抗値選択回路13の遅延回路14に供給される。
【0047】
この遅延回路14では、判別信号S1をMOSFET3bのターンオン時のスイッチング時間以上となる遅延時間Taだけ遅延させるので、遅延信号S2は、
図3(K)に示すように、判別信号S1がオン状態に反転してから遅延時間Taだけ遅れた時点t5′でローレベルからハイレベルに反転する。
したがって、時点t5でモードMD1となってから時点t5′までは遅延信号S2がローレベルを維持するので、オフ抵抗値切換回路15のスイッチ素子16はオフ状態を継続し、オフ抵抗値切換回路15の抵抗値は通常動作時より高い抵抗値に維持される。
【0048】
このため、前述したように、時点t5でモードMD4からモードMD1に切り換わってハイサイドアーム側のMOSFET3aがターンオン状態となったときに、ローサイドアーム側のMOSFET3bに高dv/dtが発生して、帰還容量Crssを介してゲート側に電流が流れようとする。しかしながら、この時点t5では、ローサイドアーム側のゲート駆動装置1bに入力される制御信号CS(b)が、
図3(B)に示すように、ハイレベルからローレベルに切り換わる。このため、ゲート駆動回路6の第2スイッチ素子8がオン状態となっており、オフ抵抗値切換回路15が通常動作時より高い抵抗値となっているので、帰還容量Crssを介してゲート側に流れようとする電流がオフ抵抗値切換回路15の高抵抗値によって抑制される。このため、MOSFET3bのゲート電圧Vg(b)は、
図3(D)に示すように、僅かに増加するが、閾値電圧Vgs(th)に達することは防止される。したがって、MOSFET3aがターンオンするモード1でMOSFET3bが誤点弧して短絡電流が流れることを確実に阻止することができ、電力損失の増加を抑制できるとともに、素子破壊に至ることを確実に防止することができる。
【0049】
因みに、比較例としての従来の半導体素子のゲート駆動装置について
図1及び
図4を参照しつつ
図5及び
図6を用いて説明する。なお、従来のインバータは、ゲート駆動装置の構成が異なる点を除いて、本実施形態におけるインバータ50と同様の構成を有しているため、以下、
図1に示すインバータ50の参照符号を用いつつ説明する。
図5に示すように、従来のゲート駆動装置101は、電流検出器10、電流値検出回路11、極性判別回路12、オフ抵抗値選択回路13を有さず、1つのオフ抵抗Rg(off)を有する点を除いて、ゲート駆動装置1bと同様の構成を有している。ゲート駆動装置101は、電源電圧P1が入力する第1スイッチ素子107と、第1スイッチ素子107に接続された第2スイッチ素子108と、第1及び第2スイッチ素子107,108のスイッチング動作を制御する制御信号が入力するインターフェイス回路105とを有している。
【0050】
第1スイッチ素子107は、例えばNPNバイポーラトランジスタで構成され、第2スイッチ素子108は、例えばPNPバイポーラトランジスタで構成されている。第1スイッチ素子107のコレクタ端子Cは、電源電圧P1が入力する端子に接続されている。第1スイッチ素子107のエミッタ端子Eは、第2スイッチ素子108のエミッタ端子Eに接続されている。第1スイッチ素子107のベース端子Bは、第2スイッチ素子108のベース端子B及びインターフェイス回路105の出力端子に接続されている。
【0051】
第2スイッチ素子108のコレクタ端子Cは、通常動作時の比較的小さい抵抗値に設定されたオフ抵抗Rg(off)を通じて接地電位Veeに接地されている。
ゲート駆動装置101は、第1及び第2スイッチ素子107,108の接続点が直接MOSFET3bのゲートに接続されている。また、ゲート駆動装置101において、MOSFET3bのソース端子S及び還流用ダイオード4bの陽極は基準電位Mが入力する端子に接続されている。
【0052】
次に、従来のインバータの一相分(例えばU相アーム)について、ゲート駆動装置101を適用し、電圧駆動型半導体素子のスイッチング速度が比較的遅い場合の動作について説明する。従来のインバータの一相分の整流動作は、本実施形態におけるインバータ50と同様に、モードMD1、モードMD2、モードMD3及びモード4の4つの動作に区分される。
時点t11〜時点t12間のモードMD1の動作では、
図6(A)及び(B)に示すように、MOSFET3aのゲート駆動装置101に入力される制御信号CS(a)がハイレベルとなり、MOSFET3bのゲート駆動装置101に入力される制御信号CS(b)がローレベルとなる。
【0053】
このため、MOSFET3aのゲートソース間電圧Vgs(a)は、
図6(C)に示すように、電源電圧P1と同電圧となり、MOSFET3bのゲートソース間電圧Vgs(b)は、
図6(D)に示すように、負電位の接地電圧Veeと同電圧となる。このため、
図4(A)に示すように、MOSFET3aはオン状態となり、MOSFET3bはオフ状態となり、MOSFET3aのドレイン電流Id(a)が出力電流Iuとしてモータ20(
図1参照)のU相コイルに流れる。このため、MOSFET3aのドレイン電流Id(a)が
図6(F)に示すように増加するとともに、出力電流Iuは
図6(E)に示すように徐々に増加する。また、出力電流Iuは正の値となる。
【0054】
モードMD1では、MOSFET3bのゲート駆動装置101に入力される制御信号CS(b)が
図6(B)に示すようにローレベルとなるので、第1スイッチ素子107はオフ状態となり、第2スイッチ素子108はオン状態となる。これにより、MOSFET3bのゲート端子Gには、負電位の接地電圧Veeが印加される。MOSFET3bのソース端子Sには基準電位M(例えば0(V))が印加されているため、MOSFET3bのゲートソース間電圧Vgs(b)は
図6(D)に示すように負電位の接地電圧Veeとなる。このため、MOSFET3bのゲートソース間電圧Vgs(b)に順バイアス電圧が出力されず、MOSFET3bはオフ状態を維持する。
【0055】
その後、時点t12でインバータの一相分の整流動作がモードMD1からモードMD2に切り替わる。モードMD2は、MOSFET3a及びMOSFET3bが同時にオン状態になってMOSFET3a及びMOSFET3b間に貫通電流が流れるのを防止するデッドタイムを形成するために、MOSFET3aをオン状態からオフ状態に切り替えてMOSFET3a,3bを両方ともオフ状態にするモードである。このとき、MOSFET3aのゲート駆動装置101に入力される制御信号CS(a)は
図6(A)に示すようにハイレベルからローレベルに切換えられ、MOSFET3bのゲート駆動装置101に入力される制御信号CSbは
図6(B)に示すようにローレベルを維持する。
【0056】
モードMD2の動作では、MOSFET3aのゲートソース間電圧Vgs(a)及びMOSFET3bのゲートソース間電圧Vgs(b)は、
図6(C)及び(D)に示すように、負電位の接地電圧Veeと同電圧となる。このため、
図4(B)に示すように、MOSFET3aはオン状態からオフ状態に切り替わり、MOSFET3bはオフ状態を維持する。このため、MOSFET3a,3bは、両方ともオフ状態になる。
【0057】
このとき、
図4(B)において破線矢印で示すように、半導体モジュール2bに内蔵された還流用ダイオード4bを介してモータ20から還流電流が出力電流Iuとしてモータ20に流れる。この還流電流は、モータ20のコイルに充電されていた電荷の放電に基づく電流であるため、
図6(G)に示すように、還流電流の電流値Id(b)は徐々に0(A)に近付く。これに伴い、
図6(E)に示すように、出力電流Iuの電流値は徐々に低下する。また、モードMD2では、MOSFET3aはオフ状態となるため、
図6(F)に示すように、MOSFET3aのドレイン電流Id(a)は0(A)となる。
【0058】
モードMD2では、MOSFET3bのゲート駆動装置101に入力される制御信号CS(b)が
図6(B)に示すようにローレベルであるので、第1スイッチ素子107はオフ状態となり、第2スイッチ素子108はオン状態となるので、MOSFET3bのゲート端子Gには、負電位の接地電圧Veeが印加される。
MOSFET3bのソース端子Sには基準電位M(例えば0(V))が印加されているため、MOSFET3bのゲートソース間電圧Vgs(b)に順バイアス電圧は出力されず、MOSFET3bは、モードMD1からモードMD2を通してオフ状態を維持する。モードMD2における還流電流は、モータ20に充電されていた電荷の放電に基づく電流であるため、
図6(E)に示すように、出力電流Iuは正の値を維持しつつ徐々に低下する。
【0059】
インバータ50の一相分の整流動作が時点t13でモードMD2からモードMD3に切り替わる。モードMD3は、MOSFET3bがオフ状態からオン状態に切り替わり、還流電流がMOSFET3b及び還流用ダイオード4bに並列に流れるモードである。
このモードMD3では、MOSFET3aのゲート駆動装置101に入力される制御信号CS(a)が
図6(A)に示すようにローレベルを維持し、MOSFET3bのゲート駆動装置101に入力される制御信号CS(b)が
図6(B)に示すようにローレベルからハイレベルに切換わる。
したがって、モードMD3では、MOSFET3bがオン状態となって、還流電流が並列接続されたMOSFET3b及び還流用ダイオード4bに流れる。このため、モードMD3における半導体モジュール2bは、還流電流が還流用ダイオード4bのみを流れるモードMD2と比較して低抵抗となる。なお、モードMD3では、MOSFET3aはオフ状態を維持する。
【0060】
すなわち、MOSFET3bのゲート駆動装置101の第1スイッチ素子107がオン状態となり、第2スイッチ素子108はオフ状態となるので、
図6(D)に示すように、MOSFET3bのゲート端子Gには、電源電圧P1が印加される。また、MOSFET3bのソース端子Sには基準電位M(例えば0(V))が印加されている。これにより、MOSFET3bのゲートソース間電圧Vgs(b)に順バイアス電圧が出力されるので、MOSFET3bはオフ状態からオン状態に切り替わる。
【0061】
したがって、
図6(G)及び
図4(C)に示すように、還流電流は、MOSFET3b及び還流用ダイオード4bを介してMOSFET3bのソース端子Sからドレイン端子Dに向かって流れる。
インバータ50の一相分の整流動作が時点t14でモードMD3からモードMD4に切り替わる。モードMD4は、モードMD2と同様にMOSFET3a及びMOSFET3bをともにオフ状態としてデッドタイムを形成し、還流電流が還流用ダイオード4bのみを通って流れるモードである。
【0062】
このモードMD4では、MOSFET3aのゲート駆動装置101に入力される制御信号CS(a)が
図6(A)に示すようにローレベルを維持し、MOSFET3bのゲート駆動装置101に入力される制御信号CSbが
図6(B)に示すようにハイレベルからローレベルに切換わる。
したがって、モードMD4では、MOSFET3bがオフ状態となって、還流電流が還流用ダイオード4bのみを通って流れる。なお、モードMD4では、MOSFET3aはオフ状態を維持する。
【0063】
すなわち、MOSFET3bのゲート駆動装置101の第1スイッチ素子107がオフ状態となり、第2スイッチ素子108はオン状態となるので、
図6(D)に示すように、MOSFET3bのゲート端子Gには、負電位の接地電圧Veeが印加される。これにより、MOSFET3bはオン状態からオフ状態に切り替わる。
したがって、
図6(G)及び
図4(D)に示すように、還流電流は、還流用ダイオード4bのみを介してMOSFET3bのソース端子Sからドレイン端子Dに向かって流れる。
【0064】
インバータ50の一相分の整流動作が時点t15でモードMD4からモードMD1に切り替わる。モードMD1は、前述したようにMOSFET3aをオン状態と、MOSFET3bをオフ状態とするモードである。
このモードMD1では、
図6(A)及び(B)に示すように、MOSFET3aのゲート駆動装置101に入力される制御信号CS(a)がハイレベルとなり、MOSFET3bのゲート駆動装置101に入力される制御信号CS(b)がローレベルとなる。
【0065】
このため、MOSFET3aのゲートソース間電圧Vgs(a)は、
図6(C)に示すように、電源電圧P1と同電圧となり、MOSFET3bのゲートソース間電圧Vgs(b)は、
図6(D)に示すように、負電位の接地電圧Veeと同電圧となる。このため、
図4(A)に示すように、MOSFET3aはオン状態となり、MOSFET3bはオフ状態となり、MOSFET3aのドレイン電流Id(a)が出力電流Iuとしてモータ20(
図1参照)のU相コイルに流れる。
【0066】
このとき、MOSFET3aのスイッチング速度が遅いため、ドレイン電流Id(a)が
図6(F)に示すように比較的緩やかに増加するとともに、出力電流Iuは
図6(E)に示すように徐々に増加する。また、出力電流Iuは正の値となる。
MOSFET3aがターンオンしたときのドレイン電流Id(a)の増加が比較的緩やかであるので、還流用ダイオード4bを流れる還流電流によるドレイン電流Id(b)が
図6(I)に示すように比較的緩やかに減少して“0”を超えて正値側となる。
【0067】
そして、MOSFET3aのドレイン電流Id(a)が所定値まで上昇すると、ドレイン−ソース間電圧Vds(a)が緩やかに減少を開始し、逆にMOSFET3bのドレイン−ソース間電圧Vds(b)が緩やかに増加を開始する。
このため、MOSFET3bに発生するdv/dtは小さなものとなり、MOSFET3bの帰還容量Crssを通じてゲートGに流れる電流も少なくなり、ゲート電圧Vgs(b)は
図6(D)に示すように略接地電圧Veeを維持する。したがって、MOSFET3bが誤点弧されることはない。
【0068】
しかしながら、上記
図5の従来例において、インバータ50を構成する電圧駆動型半導体素子として、炭化珪素、窒化ガリウム及びダイアモンド等を主材料とするワイドバンドギャップ半導体素子を適用した場合には、シリコンを主材料とするMOSFETに比較してスイッチング速度が格段に速くなる。
このため、
図7に示すように、モードMD4からモードMD1に切り換わる時点t15で、半導体スイッチング素子Q2がオフ状態にあって、還流用ダイオードDbに還流電流が流れている状態で、MOSFET3aがターンオンすると、MOSFET3bに高dv/dtが発生する。
【0069】
このとき、モードMD1では、ローサイドアーム側のMOSFET3bのゲート駆動装置1bで第2スイッチ素子108がオン状態となり、MOSFET3bのゲートが第2スイッチ素子108及び通常動作時の比較的小さい抵抗値のオフ抵抗Rg(off)を通じて接地されている。
したがって、高dv/dtによる電流がMOSFET3bの帰還容量Crssを通じてゲート側に流れることを阻止することはできず、MOSFET3bのゲート電圧Vgs(b)が、
図7(D)に示すように、閾値電圧Vgs(th)以上となって、MOSFET3bが誤点弧(セルフターンオン)されてしまう。
【0070】
このようにMOSFET3bが誤点弧されると、MOSFET3aがターンオンしてドレイン電流が
図7(G)に示すように急峻に増加しているので、MOSFET3a及びMOSFET3bに短絡電流が流れる。この短絡電流により電力損失が増加し、場合によっては素子破壊に至る可能がある。
しかしながら、本実施形態では、前述したように、モードMD4からモードMD1に切り換わったときに、ローサイドアーム側のゲート駆動装置1bの極性判別回路12でドレイン電流Id(b)の極性が正極性となって、判別信号S1がローレベルからハイレベルに反転したときに、遅延回路14によって判別信号S1をMOSFET3bのスイッチング時間以上の遅延時間Ta分遅らせるので、この間オフ抵抗値切換回路15の抵抗値を通常動作時の抵抗値より高い抵抗値に保持することができる。このため、高dv/dtによる電流が帰還容量Crssを介してゲートGに流れることを抑制することができる。したがって、MOSFET3bのゲート電圧Vgs(b)の変動を抑制してMOSFET3bの誤点弧を確実に防止することができる。
【0071】
しかも、オフ抵抗値切換回路15の抵抗値切換えのタイミングすなわち通常動作時の抵抗値から高抵抗値への切換時及びその逆への切換時がMOSFET3bのスイッチング動作と重なることがない定常状態で行われるので、インバータ動作への影響を確実に防止することができる。
なお、MOSFETの誤点弧は、インバータ50の出力電圧が負の場合に、MOSFET3bがターンオンする際にMOSFET3aで発生し、この場合でも、MOSFET3aのゲート駆動装置1aがMOSFET3bのゲート駆動装置1bと同じ構成を有するので、極性判別回路12の判別信号S1を遅延回路14でMOSFET3aのスイッチング時間T2以上に設定された遅延時間T2分遅らせることにより、MOSFET3aの誤点弧を防止することができる。
【0072】
次に、本発明に係る半導体素子の駆動装置の第2の実施形態について
図8を用いて説明する。この第2の実施形態でも、半導体素子として電圧駆動型半導体素子を例にとり、半導体素子の駆動装置として半導体素子のゲート駆動装置を例にとって説明する。
この第2の実施形態では、ゲート駆動装置1bが、
図9に示すように、構成されている。すなわち、
図8に示すゲート駆動装置1bは、前述した第1の実施形態におけるオフ抵抗値選択回路13がゲート駆動回路6の第2スイッチ素子8及び接地間に代えてゲート駆動回路6の第1スイッチ素子7及び第2スイッチ素子の接続点とMOSFET3bのゲートとの間に接続され、さらにオン抵抗Rg(on)も接続点及びMOSFET3bのゲート間に接続されていることを除いては前述した第1の実施形態と同様の構成を有し、
図2との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0073】
この第2実施形態では、ゲート駆動装置1bは、
図8に示すように、オン抵抗Rg(on)の一端がゲート駆動回路6の第1スイッチ素子7及び第2スイッチ素子8の接続点に接続され、他端がダイオード21のアノードに接続され、ダイオード21のカソードがMOSFET3bのゲートGに接続されている。
また、オフ抵抗値切換回路15の第1オフ抵抗Rg1(off)とスイッチ素子16のコレクタとの接続点がダイオード22のカソードに接続され、ダイオード22のアノードがダイオード21とMOSFET3bのゲートとの間に接続され、第1オフ抵抗Rg1(off)及び第2オフ抵抗Rg2(off)の接続点がオン抵抗Rg(on)と第1スイッチ素子7及び第2スイッチ素子8の接続点との間に接続されている。
【0074】
すなわち、オン抵抗Rg(on)とダイオード21の直列回路とオフ抵抗値切換回路15及びダイオード22の直列回路とが並列に接続されている。
そして、オフ抵抗値切換回路15のスイッチ素子16のベースに遅延回路14が接続されている。
この第2の実施形態によると、MOSFET3bをターンオンさせる際には、制御信号CS(b)をローレベルからハイレベルに反転させてゲート駆動回路6の第1スイッチ素子7をオン状態とし、第2スイッチ素子8をオフ状態とする。これにより、電源電圧P1が第1スイッチ素子7、オン抵抗Rg(on)、ダイオード21を介してMOSFET3bのゲートに供給されることにより、MOSFET3bがターンオンされる。
【0075】
このMOSFET3bをターンオフさせる際には、制御信号CS(b)をハイレベルからローレベルに反転させてゲート駆動回路6の第1スイッチ素子7をオフ状態とし、第2スイッチ素子8をオン状態とする。これにより、MOSFET3bのゲートGをダイオード22、オフ抵抗値切換回路15及び第2スイッチ素子8を介して接地に接続し、ゲートに蓄積された電荷を接地に放電することによりターンオフさせる。
【0076】
この第2の実施形態でも、オフ抵抗値切換回路15のスイッチ素子16が遅延回路14の遅延信号S2によってオン・オフ制御される。したがって、前述した第1の実施形態と同様に、極性判別回路12から出力される判別信号S1が
図3(J)に示すように時点t2でモードMD1からモードMD2への切換タイミングでハイレベルからローレベルに反転し、その後時点t5でモードMD4からモードMD1への切換タイミングでローレベルからハイレベルに反転する。
【0077】
この判別信号S1が遅延回路14によってMOSFET3bのスイッチング時間以上に設定された遅延時間Taだけ遅延されることにより、遅延信号S2が、
図3(K)に示すように、時点t1から時点t2′までの間でハイレベルとなり、オフ切換回路15の抵抗値が通常作動時の比較的小さい抵抗値に設定され、時点t2′から時点t5′までの間でローレベルとなり、オフ抵抗値切換回路15の抵抗値が通常作動時の抵抗値より大きな抵抗値に設定され、時点t5′以降でハイレベルとなり、オフ抵抗値切換回路15の抵抗値が通常作動時の抵抗値に復帰される。
【0078】
したがって、第1の実施形態と同様に、モードMD4からモードMD1に切り換わる時点t5でオフ抵抗値切換回路15の抵抗値を通常作動時の抵抗値より大きな抵抗値とすることができる。このため、MOSFET3a及びMOSFET3bをともにスイッチング速度が速い炭化珪素、窒化ガリウム及びダイアモンドの少なくとも1つを主材料とするワイドバンドギャップ半導体素子とした場合であっても、MOSFET3bがオフ状態であって、還流用ダイオード4bを通じて負荷となるモータ20からの還流電流が流れている状態で、時点t5でMOSFET3aがターンオンされたときに、MOSFET3bに高dv/dtが発生して、この高dv/dtによる電流が帰還容量Crssを通じてゲートGに流れようとしたときに、オフ抵抗値切換回路15の抵抗値が通常動作時の抵抗値より大きい抵抗値に切換えられているので、高dv/dtによる電流がオフ抵抗値切換回路15によって抑制されることになる。
【0079】
したがって、MOSFET3bのゲート電圧Vgs(a)が、
図3(D)に示すように、僅かに増加するだけで済み、閾値電圧Vgs(th)に達することを確実に阻止することができるので、MOSFET3aの電力損失の低下を抑制するとともに、誤点弧を確実に防止することができる。
この第2の実施形態でも、インバータ50の出力電圧が負の場合に、MOSFET3bがターンオンする際にMOSFET3aで発生する誤点弧についても、MOSFET3aのゲート駆動装置1aがMOSFET3bのゲート駆動装置1bと同じ構成を有するので、極性判別回路12の判別信号S1を遅延回路14でMOSFET3aのスイッチング時間T2以上に設定された遅延時間T2分遅らせることにより、MOSFET3aの誤点弧を防止することができる。
【0080】
なお、上記実施形態においては、オフ抵抗値切換回路を、第1オフ抵抗Rg1(off)と、この第1オフ抵抗Rg1(off)と並列に第2オフ抵抗Rg2(off)及びスイッチ素子16の直列回路と接続して構成する場合について説明した。しかしながら、本願発明は上記構成に限定されるものではなく、
図9に示すように、第1オフ抵抗Rg1(off)と、第2オフ抵抗Rg2(off)とを直列に接続し、第1オフ抵抗Rg1(off)及び第2オフ抵抗Rg2(off)の何れか一方と並列に例えばPNP型バイポーラトランジスタで構成されるスイッチ素子16を接続し、このスイッチ素子16を遅延信号S2でオン・オフ制御するようにしてもよい。この場合も、第1オフ抵抗Rg1(off)と第2オフ抵抗Rg2(off)との直列抵抗による通常動作時の抵抗値よる高い抵抗値と、第1オフ抵抗Rg1(off)又は第2オフ抵抗Rg2(off)の何れかの抵抗値による通常動作時の抵抗値とを選択することができ、上記各実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0081】
また、上記各実施形態においては、電圧駆動型半導体素子としてMOSFETを適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)やその他の電圧駆動型半導体素子を適用することができる。
また、抵抗値選択部としては、遅延回路を適用する場合に限らず、極性判別回路12の判別信号S1と制御信号SC(b)の立ち下がり時点とに基づいてモードMD4からモードMD1に切り換わるタイミングを含むパルス幅のパルスを形成してオフ抵抗値を通常動作時の抵抗値より高い抵抗値に切換えるようにしてもよい。
【0082】
さらに、各種スイッチ素子はバイポーラトランジスタで構成する場合に代えて電界効果トランジスタで構成するようにしてもよく、また、NPNバイポーラトランジスタ及びPNPバイポーラトランジスタをそれぞれPNPバイポーラトランジスタ及びNPNバイポーラトランジスタに置換することもできる。この場合には、ベースに供給する制御信号をハイレベルからローレベルに、ローレベルからハイレベルに反転するようすればよい。
【0083】
本発明の技術的範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の技術的範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。