(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
投入された硬貨を通過させて識別手段により該硬貨の真贋を識別させる識別通路の下流側に、識別通路を通過した硬貨を偽貨通路及び正貨通路のいずれか一方に案内する態様で揺動可能に設けられ、かつ偽貨通路を開放して正貨通路を閉塞する第1姿勢と、偽貨通路を閉塞して正貨通路を開放する第2姿勢とに切り替わる硬貨振分ゲートと、
前記硬貨振分ゲートに連係して第1位置と第2位置との間でスライド可能に設けられ、かつ常態においては第1位置にて前記硬貨振分ゲートを第1姿勢にさせる一方、第2位置にスライドした場合には前記硬貨振分ゲートを第2姿勢にさせる硬貨振分レバーと
を備えた硬貨処理装置において、
前記硬貨振分レバーに一体的に設けられ、かつ該硬貨振分レバーが第1位置にいる場合には前記正貨通路に進出する一方、該硬貨振分レバーが第2位置にスライドした場合には前記正貨通路から退避する防止爪部を備えたことを特徴とする硬貨処理装置。
前記防止爪部は、前記正貨通路に進出する場合には、先端部が前記硬貨振分ゲートに形成された孔部に進入して該硬貨振分ゲートと噛合状態になることを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る硬貨処理装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態である硬貨処理装置を示す正面図であり、
図2は、
図1に示した硬貨処理装置の要部の内部構造を正面から示す説明図である。
【0015】
ここで例示する硬貨処理装置は、例えば自動販売機等に適用されるもので、筐体である装置本体10を備えている。
【0016】
この装置本体10は、硬貨識別部20、硬貨振分部40、硬貨収納部50及び硬貨払出部60を備えて構成してある。
【0017】
硬貨識別部20は、装置本体10に形成された硬貨投入口11より投入された硬貨を識別するものであり、識別通路21及び識別センサ22を備えている。識別通路21は、硬貨投入口11より投入された硬貨を通過させる通路である。識別センサ22は、識別通路21の近傍に設けてあり、該識別通路21を通過する硬貨の真贋及び金種を識別するものである。この識別センサ22での識別結果は、識別信号として図示せぬ制御部に与えられる。
【0018】
硬貨振分部40は、硬貨識別部20の下方側に設けてある。この硬貨振分部40は、硬貨識別部20の識別センサ22にて正貨として識別された硬貨を、該識別センサ22の金種の識別結果に応じて振り分けるもので、振分通路41及び振分レバー部材42を備えている。
【0019】
振分通路41は、硬貨識別部20にて正貨と識別された硬貨が通過するものである。この振分通路41の上流側部分の近傍には、硬貨通過センサ43が設けてある。硬貨通過センサ43は、硬貨識別部20から硬貨振分部40に硬貨が通過したことを検出して、その検出信号を制御部に与えるものである。
【0020】
振分レバー部材42は、振分通路41に対して進退移動する態様で設けてある。これら振分レバー部材42は、硬貨を、該硬貨の金種に応じた硬貨収納部50や外部に導くためのもので、図示せぬソレノイドにより駆動する。
【0021】
このような硬貨識別部20と硬貨振分部40との間には、振分ゲート機構30が設けてある。
図3は、
図2に示した振分ゲート機構30を示す斜視図であり、
図4は、
図3に示した振分ゲート機構30の右側面図である。これら
図3及び
図4に示すように、振分ゲート機構30は、硬貨振分ゲート31と硬貨振分レバー32とを備えて構成してある。
【0022】
硬貨振分ゲート31は、識別通路21の下流側に設けてあり、該識別通路21を通過した硬貨を正貨通路R1及び偽貨通路R2のいずれかに振り分けるものである。正貨通路R1は、硬貨振分部40の振分通路41に連通しており、偽貨通路R2は、所定の返却口に連通している。
【0023】
この硬貨振分ゲート31は、ゲート軸部311を備えている。ゲート軸部311は、左右方向に沿って延在する長尺状部材であり、その両端部が装置本体10により軸支される。このゲート軸部311には、ゲート本体部312及びゲート連係部313が設けてある。
【0024】
ゲート本体部312は、ゲート軸部311の中央部分より僅かに右方側に偏った部分から上方に向かいつつ後方に向けて湾曲する部位である。このゲート本体部312の先端部には、複数(図示の例では4つ)の孔部312aが左右方向に沿って並ぶように形成してある。
【0025】
ゲート連係部313は、ゲート軸部311におけるゲート本体部312よりも右方側の部分より下方に向けて延在する平板状部位である。このゲート連係部313の下端部には、右方に向けて突出する連係突部313aが形成してある。
【0026】
硬貨振分レバー32は、レバー基部321を備えている。レバー基部321は、左右方向が長手方向となる長尺状平板部材である。このレバー基部321には、振分用ソレノイド33に吸引可能な振分用プランジャ34が連結してある。また、レバー基部321と、振分用ソレノイド33を収容するソレノイド収容部35との間には、振分用プランジャ34を巻回する態様で振分レバースプリング36が設けてあり、この振分レバースプリング36により、硬貨振分レバー32は、ソレノイド収容部35から離隔するよう前方に向けて付勢されている。そのため、硬貨振分レバー32は、振分レバースプリング36の付勢力のみが作用する常態においては、ソレノイド収容部35から離隔した第1位置に位置している。
【0027】
このようなレバー基部321には、レバー連結部322及び防止爪部323が設けてある。レバー連結部322は、レバー基部321の右端部より前方に向けて延在する態様で設けてある。このレバー連結部322の前端部には、上端が開口した連結溝部322aが形成してあり、かかる連結溝部322aにゲート連係部313の連係突部313aが進入している。
【0028】
そして、硬貨振分レバー32が第1位置に位置する場合、連係突部313aがゲート軸部311よりも前方側に位置していることで、硬貨振分ゲート31は、偽貨通路R2を開放して正貨通路R1を閉塞する第1姿勢となっている。つまり、硬貨振分レバー32は、常態においては第1姿勢となっており、識別通路21を通過した硬貨を偽貨通路R2に案内することになる。
【0029】
防止爪部323は、レバー基部321の上部より前方に向けて延在した後に上方に向けて延在し、その後に前方に向けて延在して形成してある。この防止爪部323は、硬貨振分レバー32が第1位置に位置する場合に、先端部323aが正貨通路R1に進出しつつ、ゲート本体部312の孔部312aに進入して該ゲート本体部312と噛合状態になっている。
【0030】
このような振分ゲート機構30においては、識別センサ22により識別通路21を通過する硬貨が正貨と識別されることにより制御部から駆動指令が与えられた振分用ソレノイド33が通電状態となると、振分用プランジャ34を吸引する。
【0031】
これにより、硬貨振分レバー32は、振分レバースプリング36の付勢力に抗して第1位置から後方に向けてスライドする。このように硬貨振分レバー32が後方に向けてスライドすることで、硬貨振分ゲート31は、ゲート軸部311の中心軸回りに揺動、すなわち前方に向けて揺動する。
【0032】
そして、
図5に示すように、硬貨振分レバー32がソレノイド収容部35に最も近接した第2位置にスライドすると、連係突部313aがゲート軸部311よりも僅かに後方側に位置することで、硬貨振分ゲート31は、正貨通路R1を開放して偽貨通路R2を閉塞する第2姿勢となっている。
【0033】
このように硬貨振分レバー32が第2位置までスライドすると、防止爪部323の先端部323aは、正貨通路R1から退避している。
【0034】
以上説明した振分ゲート機構30では、硬貨振分ゲート31が、識別通路21を通過した硬貨を偽貨通路R2及び正貨通路R1のいずれか一方に案内する態様で揺動可能に設けてあり、偽貨通路R2を開放して正貨通路R1を閉塞する第1姿勢と、偽貨通路R2を閉塞して正貨通路R1を開放する第2姿勢とに切り替わるものである。また、硬貨振分レバー32が、硬貨振分ゲート31に連係して第1位置と第2位置との間でスライド可能に設けてあり、常態においては第1位置にて硬貨振分ゲート31を第1姿勢にさせる一方、第2位置にスライドした場合には硬貨振分ゲート31を第2姿勢にさせるものである。更に、硬貨振分レバー32に一体的に設けられた防止爪部323が、硬貨振分レバー32が第1位置にいる場合には正貨通路R1に進出する一方、硬貨振分レバー32が第2位置にスライドした場合には正貨通路R1から退避するものである。
【0035】
図6は、
図1に示した硬貨収納部50を示すものであり、(a)は、硬貨収納部50を前方から見た斜視図であり、(b)は、硬貨収納部50の前面パネルの裏面側を示す斜視図である。
【0036】
ここで例示する硬貨収納部50は、硬貨振分部40にて振り分けられた硬貨を収納するものであり、硬貨振分部40の下方側に設けてある。この硬貨収納部50は、収納本体51を備えている。
【0037】
収納本体51は、例えば樹脂材により構成されたもので、複数(図示の例では5つ)の保留筒部511を有している。これら保留筒部511は、収納対象となる硬貨のうち最大径を有する硬貨を収納することが可能な内径寸法を有している。この収納本体51は、収納本体部51aと、複数(図示の例では2つ)の収納扉体51bとを有している。
【0038】
収納本体部51aは、収納本体51の主要部である。各収納扉体51bは、下端部が収納本体部51aの下端部に揺動可能に連結されており、これにより収納本体部51aに対して開閉可能となっている。これら収納扉体51bを開くように動作させることで、
図7に示すように保留筒部511が開放される。
【0039】
任意の上記保留筒部511には、
図8に示すように、スペーサ部材52が着脱可能に設けてある。スペーサ部材52は、収納本体51と同様に例えば樹脂材により構成されている。かかるスペーサ部材52は、
図9の(a)及び(b)に示すように、下端部分521は保留筒部511の下部に嵌合するよう横断面が円環状の形態を成しており、上端部分522は横断面が三日月状の形態を成している。このスペーサ部材52の外周面は、保留筒部511の内周面に適合するよう該内周面に等しい曲率を有している。一方、スペーサ部材52の径方向の厚みはスペーサ部材52毎に異なるもので、これによりスペーサ部材52の内周面の曲率はスペーサ部材52毎に異なる。このようなスペーサ部材52の外周面における上部には、外方に向けて突出するフック部523が形成してある。
【0040】
かかるスペーサ部材52は、収納扉体51bを開くように移動させた状態で対象となる保留筒部511に挿入し、該スペーサ部材52の下端部分521を保留筒部511の下端部に嵌合させつつ、フック部523を保留筒部511の内周面に形成されたスリットに進入させることで該保留筒部511に装着される。
【0041】
このようにスペーサ部材52を保留筒部511に装着することで、該保留筒部511の内面との間で形成される内径寸法を該保留筒部511が収納対象とする硬貨の進入を許容する大きさに調整することができる。また、スペーサ部材52は、
図10に示すように各保留筒部511に対して該保留筒部511の硬貨の収納状態を磁気にて検出するエンプティセンサS1が設置される側の内面(検出面)511aに硬貨を寄せるように装着させている。
【0042】
図11は、
図1に示した硬貨払出部60を示す斜視図であり、
図12は、
図11に示した硬貨払出部60の要部を示す斜視図である。ここで例示する硬貨払出部60は、硬貨収納部50の下方側に設けてある。硬貨払出部60は、制御部から与えられる指令に応じて、硬貨収納部50に収納されている硬貨を払い出すものである。この硬貨払出部60は、複数(図示の例では5つ)の払出ユニット60aを備えている。
【0043】
図13及び
図14は、それぞれ
図11及び
図12に示した払出ユニット60aを示すものであり、
図13は縦断面図であり、
図14は要部の分解斜視図である。これら
図13及び
図14に示すように、払出ユニット60aは、駆動力伝達部材61と、払出機構70とを備えて構成してある。
【0044】
図15は、
図13及び
図14に示した駆動力伝達部材61を示す斜視図である。この
図15にも示すように、駆動力伝達部材61は、円環状の形態を成す駆動力伝達基部611と、この駆動力伝達基部611の外周縁部より上方に向けて延在する円筒状の駆動力伝達周壁部612とを有している。このような駆動力伝達部材61は、駆動力伝達基部611を貫通する払出軸部63の中心軸回りに回転可能なものである。
【0045】
払出軸部63は、前後方向に沿って延在する円筒状部材であり、下端部は平板状部材に連結されている。この払出軸部63は、円環状の払出用ソレノイド65を貫通し、かつ該払出用ソレノイド65を収容する払出用ソレノイド収容部66の上面の貫通孔66aを貫通している。かかる払出軸部63の上端部には溝部631が形成してある。
【0046】
尚、払出軸部63と駆動力伝達部材61との間には、円筒状のカラー62が設けてある。カラー62は、内径が払出軸部63の外径よりも大きく、払出用ソレノイド収容部66の上面に払出軸部63に挿通された状態で載置されている。また、カラー62の外径は、駆動力伝達部材61の駆動力伝達基部611の内径に適合している。このカラー62の上端部にも払出軸部63と同様に溝部621が形成してある。
【0047】
払出用ソレノイド65は、制御部から与えられる駆動指令により通電状態となる場合には、払出軸部63の中空部に存在する払出用プランジャ67を下方に向けて吸引するものである。かかる払出用プランジャ67は図示せぬプランジャスプリングにより常時上方に向けて付勢されており、払出用ソレノイド65が通電状態とならない場合には、該払出用プランジャ67から上方に向けて変位した位置にいる。
【0048】
上記駆動力伝達部材61は、駆動力伝達周壁部612の外周面に第1伝達ギア部612aが形成してあるとともに、駆動力伝達基部611の上面に第2伝達ギア部611aが形成してある。第1伝達ギア部612aは、
図12に示すように、複数の連係ギア80に噛合している。これら連係ギア80は、他の払出ユニット60aの駆動力伝達部材61とも噛み合っており、駆動源であるモータ81の駆動力を各払出ユニット60aに伝達するものである。
【0049】
このように第1伝達ギア部612aが連係ギア80に噛合していることで、駆動力伝達部材61にモータ81の駆動力が伝達され、該駆動力伝達部材61は、払出軸部63の中心軸回りに回転している。つまり、駆動力伝達部材61は、他の払出ユニット60aの駆動力伝達部材61や複数の連係ギア80とともに、モータ81の駆動力を払出機構70のそれぞれに伝達可能な駆動力伝達手段を構成している。
【0050】
払出機構70は、
図13及び
図14に示すように、払出クラッチ71、払出カム72及び払出レバー73を備えて構成してある。
【0051】
図16は、
図13及び
図14に示した払出クラッチ71を示すものであり、(a)は上方から見た斜視図であり、(b)は下方から見た斜視図である。
【0052】
払出クラッチ71は、円環状の形態を成しており、下面にクラッチギア部711aが形成してある。このクラッチギア部711aは、駆動力伝達部材61の第2伝達ギア部611aと噛合可能なものである。また、払出クラッチ71の上面には、円筒状に突出する態様で設けられた第1突部712の周面に径外方向に延在する複数(図示の例では6つ)の第2突部713が放射状に形成されることで周方向に6つのクラッチ噛合部711bが形成してある。
【0053】
このような払出クラッチ71にも払出軸部63が貫通しており、これにより払出クラッチ71は、払出軸部63の中心軸回りに回転可能である。また、払出クラッチ71の上面のうち第1突部712の内方部分には、払出用プランジャ67に形成されたプランジャ貫通孔67aを貫通するロッド671の両端部が接している。更に、払出クラッチ71には、補強部材74が取り付けてある。補強部材74は、円環状の補強基部741と、この補強基部741に設けた複数(図示の例では3つ)の補強係合部742とを有している。このような補強部材74は、補強係合部742が6つのクラッチ噛合部711bのうち3つのクラッチ噛合部711bに進入して該払出クラッチ71に係合して取り付けられており、補強基部741が第1突部712の上部及び内部を被覆している。
【0054】
図17は、
図13及び
図14に示した払出カム72を下方から斜視図である。ここで例示する払出カム72は、円板状の形態を成しており、下面にはカム円筒部721が形成してあるとともに、該カム円筒部721の周囲に該カム円筒部721の中心軸を中心として複数の円弧状のカム噛合部722が形成してある。このような払出カム72は、カム円筒部721に払出軸部63の上端部が挿入することで該カム円筒部721の中心軸と払出軸部63の中心軸とが一致した状態で該払出軸部63の中心軸回りに回転可能なものである。また、払出カム72は、カム噛合部722が、クラッチ噛合部711bのうち補強係合部742に進入されていないものに進入して払出クラッチ71と噛み合っている。
【0055】
払出レバー73は、異形状の長孔731を有しており、かかる長孔731には、払出カム72の上面の周縁部に形成された払出突起723が進入している。この払出レバー73は、払出カム72が払出軸部63の中心軸回りに回転する場合に、払出突起723が長孔731の内部を相対的に変位し、上方に突出するレバー突起732が該払出レバー73の上部にあるカバー部材90のスリット91に沿って直線上に移動するものである。かかる払出レバー73のレバー突起732が直線上に移動することで、対応する保留筒部511の最下位にある硬貨を所定の払出口より払い出すことができる。
【0056】
以上のような払出ユニット60aにおいては、常態、すなわち払出用ソレノイド65が非通電状態である場合には、払出用プランジャ67が払出用ソレノイド65から上方に向けて変位しているので、
図13に示すように、駆動力伝達部材61と払出クラッチ71とは互いに離隔している。そのため、モータ81の駆動力が駆動力伝達部材61に伝達されて駆動力伝達部材61が払出軸部63の中心軸回りに回転しても、この回転駆動力が払出クラッチ71には伝達されない。
【0057】
ところで、当該払出ユニット60aの払出用ソレノイド65に制御部から駆動指令が与えられて該払出用ソレノイド65が通電状態になると、
図18に示すように、払出用プランジャ67がプランジャスプリングの付勢力に抗して下方に吸引される。払出用プランジャ67が下方に吸引されると、払出クラッチ71は、ロッド671に押圧されて払出用プランジャ67とともに下方に移動する。このとき、補強部材74も払出クラッチ71と一体的に下方に移動する。これにより、払出クラッチ71のクラッチギア部711aが駆動力伝達部材61の第2伝達ギア部611aと噛み合う。
【0058】
ところで、払出クラッチ71が下方に移動すると、払出カム72との離間距離が大きくなる。しかしながら、払出カム72のカム噛合部722は、上下方向の寸法が十分に確保されているので、払出カム72が下方に移動しても、クラッチ噛合部711bとの噛合状態を維持している。
【0059】
クラッチギア部711aが第2伝達ギア部611aに噛み合うことで払出クラッチ71は、払出軸部63の中心軸回りに回転し、これにより払出カム72も払出軸部63の中心軸回りに回転する。この結果、払出レバー73が直線上に移動して対応する保留筒部511の最下位の硬貨を払い出すことができる。
【0060】
その後、払出用ソレノイド65が通電状態から非通電状態になると、払出用プランジャ67は、プランジャスプリングの付勢力で上方に変位する。このように払出用プランジャ67が上方に変位すると、補強部材74の補強基部741がロッド671に押圧されて、払出クラッチ71も上方に向けて移動する。この結果、払出クラッチ71は駆動力伝達部材61から離隔して払出軸部63の中心軸回りの回転を停止し、これにより払出カム72を通じての払出レバー73の移動も停止して元の待機状態に戻る(
図13参照)。
【0061】
以上説明した硬貨処理装置の振分ゲート機構30においては、防止爪部323が、硬貨振分レバー32が第1位置にいる場合には正貨通路R1に進出する一方、硬貨振分レバー32が第2位置にスライドした場合には正貨通路R1から退避するので、次のような作用効果を奏する。
【0062】
硬貨投入口11より、糸を括り付けた正貨(以下、糸吊り硬貨ともいう)が投入された場合、かかる糸吊り硬貨は、硬貨識別部20にて正貨と識別される。硬貨識別部20にて正貨と識別されると、振分ゲート機構30では、硬貨振分レバー32が第1位置から第2位置にスライドし、硬貨振分ゲート31が第2姿勢となり、糸吊り硬貨は正貨通路R1を経て振分通路41に至る。振分通路41を通過する糸吊り硬貨は、硬貨通過センサ43により検出される。この硬貨通過センサ43により検出されることで糸吊り硬貨が硬貨処理装置に取り込まれたと制御部が判断し、振分用ソレノイド33の通電状態を停止して非通電状態にする。これにより、振分ゲート機構30では、硬貨振分レバー32が第2位置から第1位置にスライドすることで、硬貨振分ゲート31が第1姿勢となり、防止爪部323が正貨通路R1に進出する。
【0063】
その一方、糸吊り硬貨を投入した悪意のある者も硬貨処理装置が硬貨を取り込んだことを認識した後に該糸吊り硬貨を引き抜こうとする。そして、振分通路41を通過中の糸吊り硬貨を引き抜こうとしても、既に防止爪部323が正貨通路R1に進出しているので、糸吊り硬貨が硬貨投入口11より引き抜かれることを防止することができる。
【0064】
そして、本実施の形態である硬貨処理装置によれば、防止爪部323が硬貨振分レバー32に一体的に形成されているので、糸吊り硬貨の引き抜き防止のための専用の部品を必要とせず、部品点数の増大させることがない。従って、製造コストの増大化を抑制することができるとともに糸吊り硬貨の引き抜きを防止することができる。
【0065】
上記硬貨処理装置によれば、防止爪部323が正貨通路R1に進出する場合には、先端部323aが硬貨振分ゲート31の孔部312aに進入して該硬貨振分ゲート31と噛合状態になり、糸吊り硬貨の引き抜きを防止するとともに、硬貨振分ゲート31が第1姿勢となることを防止爪部323が阻害させてしまうことを防止することができる。
【0066】
硬貨処理装置の硬貨収納部50においては、収納本体51の複数の保留筒部511が収納対象となる硬貨のうち最大径を有する硬貨を収納することが可能な内径寸法を有しており、これら保留筒部511に着脱可能に設けられたスペーサ部材52が、該当する保留筒部511に装着される場合に、該保留筒部511の内面との間で形成される内径寸法を該保留筒部511が収納対象とする硬貨の進入を許容する大きさに調整するので、従来のように工場等でコインチューブの交換等を行う必要がなく、設置されたロケーションにおいてスペーサ部材52を交換することで、種々の硬貨に対応することができる。
【0067】
従って、本実施の形態である硬貨処理装置によれば、種々の硬貨を良好に収納することができて汎用性を有するものにすることができる。
【0068】
上記硬貨収納部50によれば、スペーサ部材52がエンプティセンサS1が設置される側の検出面511aに硬貨を寄せるように装着させているので、該エンプティセンサS1により検出を良好に行わせることができる。
【0069】
上記硬貨収納部50によれば、スペーサ部材52は横断面が三日月状の形態を成しているので、湾曲する内面にて硬貨の外周面に接することになって、該硬貨が引っかかって姿勢を乱して収納されてしまうことを抑制できる。
【0070】
硬貨処理装置の硬貨払出部60においては、払出対象となる硬貨を収納する保留筒部511に対応した払出ユニット60aの払出用ソレノイド65を通電状態にさせることで、モータ81からの駆動力を駆動力伝達部材61から払出機構70に伝達させることができ、これにより払出機構70の払出レバー73が直線上に移動して該保留筒部511の最下位の硬貨を払い出すことができる。
【0071】
このように本実施の形態である硬貨処理装置によれば、硬貨払出部60がモータ81の駆動力を任意の保留筒部511に対応する払出機構70に伝達することで該保留筒部511から硬貨の払い出しを行っているので、いずれかの保留筒部511で硬貨詰まりや払出機構70の動作不良といった不具合が生じても、他の払出機構70を動作させることができ、その他の硬貨の払い出しを行うことができる。
【0072】
従って、いずれかの保留筒部511の硬貨の払い出しが困難でも、その他の硬貨の払い出しを良好に行うことができる。
【0073】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0074】
本発明においては、
図13に示すように、払出カム72の近傍に払出カム72の位置を検出するカムセンサS2を設けてもよい。これによれば、カムセンサS2からの検出結果に応じて、払出カム72の位置を制御するようにし、払出機構70の動作を良好に行うことができる。