(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、冷却水との間で熱交換を行って吸気を冷却する水冷式インタークーラが公知である。このインタークーラに冷却水を送るべく、第2冷却回路を追加して設けることが考えられる。この場合、第2冷却回路の構成として、第1ウォータポンプの出口側から分岐される入口部、入口部の下流側に配置された第2ラジエータ、および第2ラジエータの下流側に配置され第1ウォータポンプの入口側に合流される出口部を有するものが考えられる。
【0005】
こうした構成を採用した場合、第2冷却回路を流れる冷却水の流量を、第1冷却回路を流れる冷却水の流量より少なくするのが有効である。なぜなら、第2ラジエータにおける冷却水の滞留時間を長くし、第2ラジエータから排出される冷却水の温度を第1冷却回路の冷却水の温度より低下させ、水冷インタークーラの冷却性能を向上できるからである。また、より低温の冷却水を第1冷却回路に合流させ、エンジン内流路に流し、エンジンの冷却性能をも向上できるからである。このように第2冷却回路は、第1冷却回路の冷却性能をアシストするアシスト効果を有する。
【0006】
しかし、以上の構成を採用した場合、次のような問題がある。すなわち、第2冷却回路を流れる冷却水の流量を増加すると、低温の冷却水がより多く第1冷却回路に合流されるようになり、エンジンの冷却性能を向上できる。しかしその一方で、第2ラジエータにおける冷却水の滞留時間が短くなり、インタークーラの冷却性能が低下し、吸気温度が上昇する。つまり、第2冷却回路を流れる冷却水の流量に対し、エンジンの冷却性能と吸気温度はトレードオフの関係にある。
【0007】
そこで本発明は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、エンジンの冷却性能を向上し、同時に吸気温度も低下させることができるエンジンの冷却システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様によれば、
第1ウォータポンプ、前記第1ウォータポンプの下流側に配置されたエンジン内流路、および前記エンジン内流路の下流側に配置された第1ラジエータを有する第1冷却回路であって、前記第1ウォータポンプから冷却水を前記エンジン内流路および前記第1ラジエータに順次送り、その後前記第1ウォータポンプに戻すように構成された第1冷却回路と、
前記第1ウォータポンプの出口側から分岐される入口部、前記入口部の下流側に配置された第2ラジエータ、および前記第2ラジエータの下流側に配置され前記第1ウォータポンプの入口側に合流される出口部を有する第2冷却回路と、
前記第1および第2冷却回路から独立された第3冷却回路であって、第3ウォータポンプ、ならびに前記第3ウォータポンプの下流側に配置された水冷式インタークーラおよび第3ラジエータを有し、前記第3ウォータポンプから冷却水を前記インタークーラおよび前記第3ラジエータに送り、その後前記第3ウォータポンプに戻すように構成された第3冷却回路と、
を備えたことを特徴とするエンジンの冷却システムが提供される。
【0009】
好ましくは、前記第3冷却回路を流れる冷却水の流量が前記第2冷却回路を流れる冷却水の流量より少なくされる。
【0010】
好ましくは、前記第2ラジエータと前記第3ラジエータが一体化されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エンジンの冷却性能を向上し、同時に吸気温度も低下させることができるという優れた効果が発揮される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0014】
まず便宜上、本発明の実施形態を説明する前に、本発明の着想前に想定された比較例を説明する。
【0015】
図1は、比較例に係るエンジンの冷却システムを示す概略構成図である。かかる冷却システムは、車両に搭載されたエンジンに適用される。
【0016】
図示するように、冷却システム1は、ともにエンジン冷却水が流通ないし循環される第1冷却回路Xと第2冷却回路Yを備える。第1冷却回路Xは、主にエンジン2の冷却を行うための回路であり、第2冷却回路Yは、主に水冷式のインタークーラ3に冷却水を送り、インタークーラ3を通過する吸気の冷却を行うための回路である。インタークーラ3は、吸気入口3Aから導入した吸気Iの熱を冷却水に伝達させ、これによって温度低下した吸気Iを吸気出口3Bから排出する。なおエンジン2はターボチャージャ(図示せず)を有し、ターボチャージャの過給によって温度上昇した吸気がインタークーラ3を通過する際に冷却させられる。
【0017】
第1冷却回路Xは、第1ウォータポンプ(W/P)4と、第1ウォータポンプ4の下流側に配置されたエンジン内流路5と、エンジン内流路5の下流側に配置された高温ラジエータ(HT RAD)としての第1ラジエータ6とを有し、第1ウォータポンプ4から冷却水をエンジン内流路5および第1ラジエータ6に順次送り、その後第1ウォータポンプ4に戻すように構成されている。
【0018】
具体的には、第1ウォータポンプ4は、エンジン2に設置されてクランクシャフトにより駆動されると共に、エンジン内部に形成されたループ状のエンジン内流路5の上流端に配置されている。そして駆動時、エンジン内流路5に冷却水を吐出する。エンジン内流路5の下流側にはサーモスタット(T/S)7が設けられ、その開弁時に、エンジン冷却後に高温となった冷却水を第1ラジエータ6に送るようになっている。サーモスタット7は入口配管8を介して第1ラジエータ6の入口に接続される。第1ラジエータ6の出口は出口配管9を介して第1ウォータポンプ4の入口に接続される。第1冷却回路Xを流れる冷却水Aの流れ方向を図中矢印で示す。
【0019】
第2冷却回路Yは、第1ウォータポンプ4の出口側から分岐される入口部11と、入口部11の下流側に配置された低温ラジエータ(LT RAD)としての第2ラジエータ12と、第2ラジエータ12の下流側に配置された前述のインタークーラ3と、インタークーラ3の下流側に配置され第1ウォータポンプ4の入口側に合流される出口部13とを有する。入口部11の分岐点をP1で示し、出口部13の合流点をP2で示す。第2冷却回路Yを流れる冷却水Bの流れ方向を図中矢印で示す。
【0020】
なお、「第1ウォータポンプ4の出口側」とは、第1ウォータポンプ4の出口またはその付近の流路位置であって、冷却水がエンジン2から受熱して実質的に温度上昇させられる手前の流路位置をいう。従ってそれには、図示の如きエンジン内流路5の上流側ないし上流端部が含まれる。また第1ウォータポンプ4とエンジン内流路5が直接ではなく配管を介して接続される場合、こうした配管内の流路も「第1ウォータポンプ4の出口側」に含まれる。また、「第1ウォータポンプ4の入口側」とは、第1ウォータポンプ4の入口またはその上流側であって、かつ第1ラジエータ6の出口より下流側の流路位置をいう。従ってそれには前述の出口配管9内の流路が含まれる。
【0021】
第2ラジエータ12の入口は、入口配管14を介して、エンジン内流路5の上流端部、特にその分岐点P1に接続される。それ故入口配管14の上流端部が前述の入口部11をなす。また第2ラジエータ12の出口は、出口配管15を介してインタークーラ3の冷却水入口に接続される。インタークーラ3の冷却水出口は、配管16を介して、出口配管9、特にその合流点P2に接続される。それ故配管16の下流端部が前述の出口部13をなす。
【0022】
この比較例の構成において、サーモスタット7の開弁時、第1ウォータポンプ4が駆動されると、冷却水は第1ウォータポンプ4からエンジン内流路5、サーモスタット7、入口配管8、第1ラジエータ6、出口配管9を順に流れて第1ウォータポンプ4に戻る。つまり冷却水は第1冷却回路X内を循環される。この過程で、エンジン内流路5においてエンジン2から受熱して高温となった冷却水は、第1ラジエータ6を通過する際に外気と熱交換を行い、冷却される。
【0023】
他方、分岐点P1においてエンジン内流路5から入口配管14に分岐された冷却水は、入口配管14、第2ラジエータ12、インタークーラ3、配管16を順に流れ、合流点P2において出口配管9に合流される。この過程で冷却水は、第2ラジエータ12を通過する際に外気と熱交換を行い冷却され、その冷却された冷却水がインタークーラ3内の吸気と熱交換を行って吸気を冷却する。
【0024】
ここで、第2冷却回路Yを流れる冷却水Bの流量が第1冷却回路Xを流れる冷却水Aの流量より少なくなるよう、第2冷却回路Yは構成されている。なおここでいう第1冷却回路Xとは、第1冷却回路Xのうち、冷却水流れ方向における合流点P2から分岐点P1までの間の部分(途中に第1ウォータポンプ4がある)を除く部分をいう。
【0025】
こうすると、第2冷却回路Yの冷却水Bの第2ラジエータ12における滞留時間が長くなり、第2ラジエータ12から排出される冷却水の温度が、第1冷却回路Xの冷却水Aの温度よりも低下する。この温度低下した冷却水がインタークーラ3に送られるので、インタークーラ3の冷却性能を向上し、インタークーラ3から排出される吸気の温度を低下させることができる。これは吸気の充填効率向上に有利である。
【0026】
また、インタークーラ3内において若干温度が上昇するものの、このように温度低下した冷却水が第1冷却回路Xに合流されるので、第1冷却回路Xを流れる冷却水Aの温度も低下される。具体的には、第1ウォータポンプ4の入口側で、温度低下した第2冷却回路Yの冷却水Bが第1冷却回路Xに合流され、第1冷却回路Xの冷却水Aの温度が低下される。この温度低下した冷却水Aを第1ウォータポンプ4がエンジン内流路5に供給することにより、エンジンの冷却性能を向上できる。このように第2冷却回路Yは、第1冷却回路Xないし第1ラジエータ6の冷却性能をアシストするアシスト効果を有する。なお、こうした第2冷却回路Yを用いることで、これを用いない場合に比べ、エンジン内流路5から出る冷却水の温度(エンジン出口温度という)、および第1ラジエータ6に流入する冷却水の温度(第1ラジエータ入口温度という)も低下する。総じて、第2冷却回路Yの冷却水Bの温度は、第1冷却回路Xの冷却水Aの温度より低下する。
【0027】
しかし、この比較例には次のような問題がある。すなわち、第2冷却回路Yを流れる冷却水Bの流量を増加すると、低温の冷却水がより多く第1冷却回路Xに合流されるようになり、エンジンの冷却性能を向上できる。しかしその一方で、第2ラジエータ12における冷却水Bの滞留時間が短くなり、第2ラジエータ12から排出される冷却水Bの温度が上昇する。その結果、インタークーラ3の冷却性能が低下し、吸気温度が上昇する。つまり、第2冷却回路Yを流れる冷却水Bの流量に対し、エンジンの冷却性能と吸気温度はトレードオフの関係にある。
【0028】
このトレードオフの関係を
図2に示す。グラフの横軸は、第2冷却回路Yを流れる冷却水Bの流量QBであり、縦軸は温度である。図中、線aは第1ラジエータ入口温度THを示し、線bは吸気温度Taを示す。なお第1冷却回路Xの冷却水Aの流量は一定であるとする。図示するように、第2冷却回路Yの流量QBが増加するにつれ、第1ラジエータ入口温度THは低下する傾向にあるが、吸気温度Taは上昇する傾向にある。エンジン冷却性能の観点からすれば、多い流量QB2とするのが好ましいが、吸気温度の観点からすれば、逆に少ない流量QB1とするのが好ましい。このように両者の要求は相容れず、両者を両立させようとすれば比較例の構成は必ずしも好ましくない。
【0029】
そこで、かかる問題を解決するため、本発明者は本発明を着想するに至った。以下、本発明の実施形態を説明する。
【0030】
図3は、本発明の実施形態に係るエンジンの冷却システムを示す概略構成図である。かかる冷却システムは、比較例の冷却システムをベースとしている。以下の説明において、比較例と同様の部分には図中同一符号を付して説明を割愛し、比較例との相違点を中心に説明する。
【0031】
本実施形態に係る冷却システム1も、第1冷却回路Xおよび第2冷却回路Yを備えている。但し第2冷却回路Yの構成が異なり、インタークーラ3および配管16は設けられておらず、出口配管15が第1冷却回路Xの出口配管9、特にその合流点P2に接続されている。それ故出口配管15の下流端部が第2冷却回路Yの出口部13をなす。
【0032】
他方、本実施形態に係る冷却システム1は、第1冷却回路Xおよび第2冷却回路Yから独立された第3冷却回路Zを備えている。第3冷却回路Zは、第3ウォータポンプ21と、第3ウォータポンプ21の下流側に配置された前述の水冷式インタークーラ3と、インタークーラ3の下流側に配置された低温ラジエータ(LT RAD)としての第3ラジエータ22とを有し、第3ウォータポンプ21から冷却水をインタークーラ3および第3ラジエータ22に順次送り、その後第3ウォータポンプ21に戻すように構成されている。第3冷却回路Zを流れる冷却水Cの流れ方向を図中矢印で示す。なお第2冷却回路Yにウォータポンプはないので、便宜上、第2ウォータポンプというものは存在しない。
【0033】
本実施形態において、第3ウォータポンプ21は、エンジン回転数とは無関係に吐出流量が可変の電動式ウォータポンプとされている。この第3ウォータポンプ21の出口は配管23を介してインタークーラ3の冷却水入口に接続され、インタークーラ3の冷却水出口は配管24を介して第3ラジエータ22の入口に接続され、第3ラジエータ22の出口は配管25を介して第3ウォータポンプ21の入口に接続される。
【0034】
第3ウォータポンプ21が駆動されると、冷却水Cは第3ウォータポンプ21から配管23、インタークーラ3、配管24、第3ラジエータ22、配管25を順に通過して第3ウォータポンプ21に戻される。冷却水Cがインタークーラ3を通過する際に吸気と熱交換を行って吸気を冷却する点、および第3ラジエータ22を通過する際に外気と熱交換を行って冷却される点は、前記同様である。
【0035】
本実施形態では、第3冷却回路Zが第1および第2冷却回路X,Yから独立されているため、第3冷却回路Zの流量を、第1および第2冷却回路X,Yの流量とは無関係に設定できる。制御部または制御ユニットをなす電子制御ユニット(ECU)100により、第3ウォータポンプ21の駆動量を制御することにより、第3冷却回路Zの流量を任意に制御可能である。
【0036】
本実施形態では、第2ラジエータ12と第3ラジエータ22が一体化されている。これによりシステム全体をコンパクトにすることができる。
図4はこうした一体形ラジエータ30の一例を示す。本実施形態においてラジエータ30は、冷却水を水平方向に流す所謂クロスフロー式とされているが、冷却水を上から下に流す所謂ダウンフロー式とされてもよい。
【0037】
ラジエータ30は、左右のヘッダ31,32とこれらを連結するラジエータコア33とを備える。ラジエータコア33は周知のように、左右のヘッダ31,32に連通接続された複数のチューブと、各チューブに取り付けられた冷却フィンとを有する。左右のヘッダ31,32は、隔壁34,35により上下に仕切られる。これにより実質的に、ラジエータ30の上側部分が第2ラジエータ12を形成し、ラジエータ30の下側部分が第3ラジエータ22を形成する。ラジエータ30の上側部分におけるヘッダ31,32の一方に入口36が設けられ、他方に出口37が設けられる。同様に、ラジエータ30の下側部分におけるヘッダ31,32の一方に入口38が設けられ、他方に出口39が設けられる。本実施形態において、入口および出口の配置は上側部分と下側部分とで左右逆であり、第2ラジエータ12を流れる冷却水Bと第3ラジエータ22を流れる冷却水Cとの向きは互いに逆とされている。しかしながら、入口および出口の配置を左右同じとし、流れの向きを同じとしてもよい。
【0038】
さて、本実施形態において、第3冷却回路Zを流れる冷却水Cの流量は、第2冷却回路Yを流れる冷却水Bの流量より少なくされる。具体的にはそうした冷却水Cの流量が得られるよう第3ウォータポンプ21が制御される。すると、前述のトレードオフの問題を解消することができる。
【0039】
すなわち、
図2を参照して、エンジン冷却性能向上のため、第2冷却回路Yを流れる冷却水Bの流量は、例えば比較的多いQB2とされる。比較例だとこの流量QB2では吸気温度Taの上昇を招くが、本実施形態では第2冷却回路Yにインタークーラ3がないので、吸気温度Taの上昇を招かないで済む。第2冷却回路Yにより、第1冷却回路Xのアシスト効果のみが得られる。他方、第3冷却回路Zを流れる冷却水Cの流量は、例えば比較的少ないQB1と等しい値とされる。これにより、第3ラジエータ22における冷却水Cの滞留時間を長くし、吸気温度Taを低下させることができる。総じて、第3冷却回路Zの冷却水Cの温度は、第2冷却回路Yの冷却水Bの温度より低下される。このように本実施形態によれば、エンジンの冷却性能を向上し、同時に吸気温度も低下させることが可能となる。
【0040】
なお、本実施形態においては、第1ウォータポンプ4がエンジンにより駆動されるので、エンジンの運転状態に応じて第1冷却回路Xおよび第2冷却回路Yの流量が増減し、例えばエンジン回転数が増加するほど第1冷却回路Xおよび第2冷却回路Yの流量は増加する。本実施形態においては、この流量の増減に合わせて、第3ウォータポンプ21の駆動量ひいては第3冷却回路Zの流量をECU100により増減することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態を詳細に述べたが、本発明の実施形態は他にも様々なものが考えられる。例えば本発明は車両用以外の冷却システムにも適用可能である。第1ウォータポンプ4は電動式であってもよい。第3ウォータポンプ21は電動式に限らず、エンジン2により駆動される機械式であってもよい。第3冷却回路Zにおいて、インタークーラ3と第3ラジエータ22の配置は逆でもよく、第3ウォータポンプ21を起点として、第3ラジエータ22の下流側にインタークーラ3を配置してもよい。
【0042】
本発明の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に含まれる。従って本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。