(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態を列記して説明する。
本発明の実施形態に係る光ファイバの製造方法は、
(1) 光ファイバ裸線に紫外線硬化型樹脂を塗布した後の光ファイバに半導体発光素子を用いて紫外線を照射する工程を含む光ファイバの製造方法であって、
前記工程は、
前記半導体発光素子が複数個並べられた発光部を三台以上の奇数台、前記光ファイバの周囲に配置し、前記発光部を前記光ファイバの走行方向に垂直な面上に射影したときに前記発光部は前記光ファイバを中心として放射状に同じ角度を成すように配置し、
前記発光部の対面に、前記光ファイバを挟んで、反射面を前記光ファイバの走行方向に垂直な面上に射影した時に前記反射面が曲線に見える反射鏡を配置して、前記反射鏡により前記発光部からの紫外線を反射させ、
不活性ガスが流れている透明管の内部に前記光ファイバを通す際に、前記透明管を通して前記光ファイバに前記発光部および前記反射鏡からの紫外線を照射する。
【0010】
発光部を光ファイバの走行方向に垂直な面上射影したときに、光ファイバを中心として放射状に略同じ角度を成すように三台以上の奇数台の発光部を配置すると、各発光部の対面の位置には発光部が配置されない(なお、偶数台の場合は、略同じ角度を成すように各発光部を配置すると、対面の位置に発光部が配置されてしまう。もしくは円対称形状にならず、不均一に照射されてしまう。)。このため、反射鏡を各発光部の対面に無理なくそれぞれ配置することができる。発光部および反射鏡をこのような配置とすることにより、異なる複数の方向から、光ファイバに対して紫外線が照射および反射されるので、光ファイバの周囲に均等に紫外線硬化型樹脂を硬化させることができる。
【0011】
(2) (1)の光ファイバの製造方法において、前記奇数台を五台とする。
上記(1)のように配置する発光部の台数を多くする程、より均等に周囲から紫外線を照射することができるが、透明管,発光部および反射鏡等の実際のサイズを考慮すると五台が限度と考えられる。このように五台の発光部を配置することにより、光ファイバの周囲にできる限り均等に、紫外線硬化型樹脂を硬化させることができる。
【0012】
(3) (1)または(2)の光ファイバの製造方法において、三台以上の奇数台の前記発光部とその対面に配置される前記反射鏡の組み合わせを前記光ファイバの走行方向に沿った同位置に配置したものを一段とし、前記走行方向に前記組み合わせを複数段配置する。
発光部と反射鏡との組み合わせを、光ファイバの走行方向に複数段にわたって配置するので、光ファイバの走行方向の上下の広い範囲に亘って紫外線を照射することができる。
【0013】
(4) (1)から(3)のいずれか一の光ファイバの製造方法において、出射される紫外線の中心波長が10nm以上異なる前記半導体発光素子を二種類以上使用する。
照射される紫外線の中心波長が10nm以上異なる半導体発光素子を二種類以上の使用することにより、照射する紫外線の波長をある程度幅があるようにすることができる。紫外線硬化型樹脂に含まれる光重合開始剤の吸収波長範囲は、ある程度幅を持っているので、紫外線硬化型樹脂に効率よく紫外線を吸収させて、硬化を促進させることができる。
【0014】
(5) (4)の光ファイバの製造方法において、一つの前記発光部に含まれる前記半導体発光素子は、出射される紫外線の中心波長が同じ種類の前記半導体発光素子を使用し、
異なる種類の前記半導体発光素子をそれぞれ使用して出射される紫外線の中心波長が10nm以上異なる複数の前記発光部を含む。
一つの発光部に含まれる半導体発光素子の中心波長は同じであるが、複数の発光部のうちに、異なる種類の半導体発光素子をそれぞれ使用して中心波長が10nm以上異なる紫外線を出射する発光部があるので、紫外線を照射する工程において、照射する紫外線の波長をある程度幅があるようにすることができる。
【0015】
(6) (5)の光ファイバの製造方法において、前記光ファイバの走行方向に沿った同位置に配置される一つの段に含まれる三台以上の奇数台の前記発光部のうちに、出射される紫外線の中心波長が10nm以上異なる複数の前記発光部を含む。
光ファイバの走行方向に沿った同位置に配置される一つの段に含まれる発光部から出射される紫外線に中心波長が10nm以上異なるものが含まれるので、異なる複数の方向から照射する紫外線の波長を幅があるようにすることができる。
【0016】
(7) (5)または(6)の光ファイバの製造方法において、前記発光部と前記反射鏡の組が前記光ファイバの走行方向に複数段配置され、一つの前記発光部とその下に配置される前記発光部とで出射される紫外線の中心波長が10nm以上異なる。
一つの発光部とその下に配置される発光部とで出射される紫外線の中心波長が10nm以上異なるので、光ファイバの走行方向に沿って、照射する紫外線の波長を幅があるようにすることができる。例えば上段で紫外線を浴びた光ファイバの部分が下段では中心波長が10nm以上異なる紫外線を浴びるので、光ファイバの走行方向の上下で均等に紫外線を照射することができる。
【0017】
(8) (1)から(7)のいずれか一の光ファイバの製造方法において、前記発光部から出射される紫外線をレンズで集光して、対面の前記反射鏡で反射させ、その反射紫外線を前記光ファイバの走行位置付近で集光する。
反射紫外線を光ファイバの走行位置付近で集光するので、光ファイバに照射される紫外線量を多くでき、紫外線硬化型樹脂を十分硬化させることができる。
【0018】
(9) (8)の光ファイバの製造方法において、前記発光部から出射される紫外線と前記反射鏡で反射される反射紫外線との合計の紫外線強度が、最大強度に対し80%以上である領域の光ファイバの走行方向に垂直な断面における径が1mm以上20mm以下である。上記径が20mm以上では、強度が低くなりすぎ、線速を上げることができずに生産性が著しく低下する。
(10) 上記(9)の光ファイバの製造方法において、光の有効利用の観点から上記径は1mm以上3mm以下が望ましい。
上記(9)、(10)の光ファイバの製造方法によれば、光ファイバの走行位置の振れ幅が上記領域の範囲内であれば、光ファイバの走行位置がぶれても当たる紫外線の強度のばらつきを抑制することができる。
【0019】
(11) (1)から(10)のいずれか一の光ファイバの製造方法において、前記半導体発光素子の周囲の気体を交換して前記半導体発光素子を冷却する。
これにより、半導体発光素子の温度が過度に上昇することを防ぎ、半導体発光素子の寿命を長くすることができる。
【0020】
(12) (1)から(11)のいずれか一の光ファイバの製造方法において、前記透明管が、その一側から300nmから450nmまでの波長の光を照射して、前記透明管の他側で透過した前記光を測定したときの透過率が80%以上である。
透明管を透過する紫外線の割合が大きくなるので、光ファイバに照射される紫外線の量を多くすることができる。
【0021】
(13) (12)の光ファイバの製造方法において、前記透過率が90%以上である。
透明管を透過する紫外線の割合がより大きくなるので、光ファイバに照射される紫外線の量をより多くすることができる。
【0022】
(14) (12)の光ファイバの製造方法において、前記透過率が95%以上である。
透明管を透過する紫外線の割合がさらに大きくなるので、光ファイバに照射される紫外線の量をさらに多くすることができる。
【0023】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る光ファイバの製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0024】
まず、本実施形態に係る光ファイバの製造方法により製造される光ファイバについて説明する。
本実施形態により製造される光ファイバは、光ファイバ裸線と、光ファイバ裸線の表面を被覆する被覆層とから構成されている。光ファイバ裸線は、例えば石英ガラスを主成分とする光ファイバ母材(プリフォーム)を線引きして形成されたガラスファイバである。被覆層は、紫外線が照射されると硬化する紫外線硬化型樹脂からなり、ガラスファイバの表面を保護する機能を有している。なお、被覆層は、ガラスファイバの周囲に直接被覆された内層(プライマリ樹脂層)と、その内層の周囲に被覆された外層(セカンダリ樹脂層)の二層または三層以上から構成されていてもよい。
【0025】
図1は、光ファイバを製造するための製造装置10を説明する図である。
まず、石英ガラスを主成分とする光ファイバ母材4が線引炉20にセットされる。光ファイバ母材4の一方の端部(本例においては下端部)が、線引炉20が有するヒータ21により加熱・溶融され、光ファイバ母材4は線引きされる。
【0026】
光ファイバ母材4が線引きされて形成されたガラスファイバ2は、ガラスファイバ2の走行方向(
図1中の矢印Aの方向)において線引炉20の下流に設けられた冷却装置25を通過する。冷却装置25は、ガラスファイバ2を充分に冷却するためにガラスファイバ2の走行方向に沿って所定の長さを備えている。
【0027】
次に、冷却されたガラスファイバ2は、冷却装置25の下流に設けられた塗布器(ダイス)30を通過する。塗布器30には、液状の紫外線硬化型樹脂31が溜められている。そのため、ガラスファイバ2が塗布器30を通過することにより、ガラスファイバ2の外周に紫外線硬化型の樹脂が塗布される。なお、
図1には1つの塗布器30が示されているが、被覆層を内層および外層の2層構造とする場合には、塗布器30を2つ備えるか(いわゆる Wet-on-Dry法)、または2層を同時に塗布する(いわゆる Wet-on-Wet法)機能を有する塗布器を備えるとよい。
【0028】
次に、樹脂が塗布されたガラスファイバ2は、走行方向において塗布器30の下流に設けられている紫外線照射装置40を通過する。紫外線照射装置40は、ガラスファイバ2の表面に塗布された樹脂に紫外線を照射して樹脂を硬化させ、光ファイバ1を形成する。
【0029】
紫外線照射装置40を通過することによって形成された光ファイバ1は、ガイドローラ50および引取り手段51を経て巻取りドラム52に巻き取られる。
【0030】
本実施形態に係る光ファイバの製造方法で使用する紫外線照射装置の一例として、紫外線照射装置40について詳細に説明する。
図2は、線引き時の光ファイバ1の走行方向に沿った紫外線照射装置40の縦断面図であり、
図3は
図2に示した紫外線照射装置40のB−B線断面図である。
【0031】
図2に示すように、紫外線照射装置40は、透明管41、発光部42、レンズ43、反射鏡44を備えている。半導体発光素子42bが複数個並べられて発光部基台42aに固定されて発光部42が構成されている。透明管41は、その長手方向が光ファイバ1の走行方向に一致するように配置されている。そして、光ファイバ1が透明管41の中心または中心近傍に通され、透明管41の中心軸に沿って移動する。
【0032】
透明管41は、紫外線に対して透光性を有している。例えば石英管(例えば、外径は10mm以上25mm以下、内径は8mm以上23mm以下)が好適に用いられる。透明管41内を冷却するため、透明管41内に不活性ガス(使用温度でほぼ不活性なガス)が矢印G
INで示すように導入され、透明管41内を通って、矢印G
OUTで示されるように透明管41から排気される。
透明管41の上部に位置する塗布器30側の端部には、不活性ガスを矢印G
INの方向に導入するためのガス導入管46が接続されている。また、ガス導入管46が接続されている端部と反対側の透明管41の端部には、ガス排出管47が接続されている。なお、ガス導入管46およびガス排出管47の周囲は封止されていてもよいが、封止されていなくてもよい。
【0033】
不活性ガスとしては、例えば窒素ガスが用いられる。紫外線硬化型樹脂が硬化するときに雰囲気中の酸素濃度が一定量(例えば0.5vol%)以上となると、紫外線硬化型樹脂の硬化が不十分となる。したがって、本実施形態においては、光ファイバ1の周囲の酸素濃度を下げるために、光ファイバ1の周囲が石英ガラス等からなる透明管41で覆われるとともに、透明管41内に窒素ガスなどの不活性ガスが導入される。不活性ガスに含まれる酸素含有率は0.5vol%未満であり、これにより、樹脂表面の硬化阻害作用が抑制される。なお、酸素により硬化が阻害される樹脂は、アシルフォスフィンオキサイド系、チタノセン系等の光重合開始剤を含むラジカル重合系樹脂である。
【0034】
また、紫外線を照射すると紫外線硬化型樹脂に含まれる低分子量成分が硬化時の熱で揮発する。この揮発成分が透明管41の内面に付着して硬化すると、透明管41の内面が曇り、紫外線が遮られてしまう傾向がある。紫外線照射装置40においては、透明管41内に窒素ガスなどの不活性ガスを導入することで、ガス排出管47を介して透明管41内の揮発成分を排出することができる。これにより、透明管41内面が曇ってしまうことがなく、曇りによる紫外線の遮蔽を防止することができる。
【0035】
紫外線UVを出射する半導体発光素子42bとしては、紫外線レーザダイオード(UV−LD)または紫外線発光ダイオード(UV−LED)が用いられる。
【0036】
図3に示すように、紫外線照射装置40内には、透明管41の周囲に、光ファイバ1の走行方向に垂直な面上に射影したときに、光ファイバ1を中心として放射状に略同じ角度をなすように三台以上の奇数台(
図3に示す例では、五台)の発光部42が配置されている。そして、各発光部42と透明管41との間には、円柱形のレンズ43が配置されている。これにより、発光部42の半導体発光素子42bから出射される紫外線UVは、円柱形のレンズ43を透過することによって略平行光となり、透明管41を透過して光ファイバ1に照射される。レンズ43が円柱形レンズであり、光ファイバ1の走行方向に垂直に見たときにほぼ円形であるので、半導体発光素子42bから光ファイバ1までの距離が短くても紫外線UVを集光して光ファイバに当たる紫外線量を多くすることができる。
【0037】
透明管41および光ファイバ1を挟んだ、発光部42の対面には、反射面が凹面となっている反射鏡44が配置されている。反射鏡44の反射面の曲率は、反射した反射紫外線RUVが透明管41内に集光する所定の曲率に設定されている。これにより、透明管41の反対側に出た略平行光の紫外線UVは、反射鏡44の反射面によって反射し、透明管41内で集光する。アルミニウムは、UVA領域の紫外線に対し、比較的高い反射率を有するので、反射鏡44は、例えばアルミニウム製とすることが好ましい。ところが、アルミニウムは酸化を受けたり、傷がつきやすいため、反射鏡44に保護コート(例えば、フッ化マグネシウム)を施すことが望ましい。
【0038】
また、紫外線照射装置40において照射する紫外線は、紫外線硬化型樹脂に含まれる光重合開始剤の吸収波長に合わせることが望ましい。光重合開始剤の吸収波長範囲は、ある程度幅を持っている。また、プライマリ樹脂用,セカンダリ樹脂用,プライマリ樹脂とセカンダリ樹脂両用のものなど、吸収波長範囲の異なる複数の光重合開始剤を使用する場合がある。このため、使用する光重合開始剤の吸収波長範囲は、ある程度幅を持っているので、照射する紫外線の波長にもある程度幅があるようにする。
【0039】
このため、異なる発光特性を有する二種類以上の半導体発光素子42bを使用するとよい。例えば、照射される紫外線UVの中心波長が10nm以上異なる発光特性の半導体発光素子42bを使用するとよく、紫外線の中心波長が約365nm、385nm、395nmである各半導体発光素子42bを適宜組み合わせるなどして使用するとよい。
【0040】
図2に示す紫外線照射装置40では、
図3に示した五台(三台以上の奇数台)の発光部42,レンズ43および反射鏡44の組み合わせを構造体Sとすると、構造体Sは、光ファイバ1の走行方向に沿った同位置に一段で配置されている。
なお、紫外線照射装置内に設置する上記構造体Sは、一段に限定されるものではなく、後述する紫外線照射装置の変形例(
図6参照)のように、光ファイバ1の走行方向に沿って複数段配置するようにしてもよい。
【0041】
上記のような、紫外線照射装置40内に設置する複数の発光部42に含まれる半導体発光素子42bとして、上記のような異なる発光特性を有する二種類以上の半導体発光素子42bを使用する場合においては、以下のような構成としてもよい。
【0042】
一つの発光部42に含まれる半導体発光素子42bは、出射される紫外線の中心波長が同じ種類の半導体発光素子42bを使用し、紫外線照射装置40は、異なる種類の半導体発光素子42bをそれぞれ使用して出射される紫外線の中心波長が10nm以上異なる複数の発光部42を含む構成にしてもよい。
上記構成では、一つの発光部42に含まれる半導体発光素子42bの中心波長は同じであるが、複数の発光部42のうちに、異なる種類の半導体発光素子42bをそれぞれ使用して中心波長が10nm以上異なる紫外線を出射する発光部42があるので、紫外線を照射する工程において、照射する紫外線の波長をある程度幅があるようにすることができる。
【0043】
また、上記構造体Sの一段(光ファイバ1の走行方向に沿った同位置に配置される一つの段)に含まれる三台以上の奇数台の発光部42のうちに、出射される紫外線の中心波長が10nm以上異なる複数の発光部42を含むようにしてもよい。
上記構成では、光ファイバ1の走行方向に沿った同位置に配置される一つの段に含まれる発光部42から出射される紫外線に中心波長が10nm以上異なるものが含まれるので、異なる複数の方向から照射する紫外線の波長を幅があるようにすることができる。
【0044】
次に、発光部42に対する放熱手段について
図4にその一例を挙げて説明する。
発光部42は、発光している半導体発光素子42bに発熱が生じる。その放熱のため、半導体発光素子42bの周囲の気体を強制的に交換させることが好ましい。例えば、
図4に示すように、半導体発光素子42bの後方にファン45を置く。そして、ファン45を回転させて周囲の気体を半導体発光素子42bに送って、半導体発光素子42bから発生する熱を逃がす。さらに、
図4に示すように、発光部基台42aに放熱フィン42cを付けるとより効果的である。半導体発光素子42bの温度が過度に上昇せず、半導体発光素子42bの寿命を長くできて好ましい。
【0045】
次に、本実施形態における光ファイバ1の製造方法について説明する。
塗布器30により紫外線硬化型樹脂が塗布された光ファイバ1(の中心)を、紫外線照射装置40の透明管41の中心、または中心近傍(
図3の断面において透明管41の中心から5mm以内の箇所)に通す。各半導体発光素子42bから出射された紫外線UVを光ファイバ1の表面の紫外線硬化型樹脂に照射して、紫外線硬化型樹脂を硬化する。このようにして、ガラスファイバ2の表面に紫外線硬化型樹脂が被覆された光ファイバ1を製造する。
【0046】
次に、紫外線照射装置40における紫外線照射について、さらに詳細に説明する。
図5は、紫外線照射装置40における配光を示す図である。
図5に示すように、半導体発光素子42bから出射され、レンズ43を透過した紫外線UVは、透明管41を透過する際には略平行光となるように透明管41内に照射される。そして、透明管41の反対側の管壁を透過して透明管41の外に出た紫外線UVは、反射鏡44により反射される。反射鏡44の反射面は凹面となっているので、反射された反射紫外線RUVは透明管41内に向けて集光され、光ファイバ1に対して効果的に反射紫外線RUVを照射するためには、反射鏡44の曲率半径Rを適切な値に設定する必要がある。
【0047】
光ファイバ1は、透明管41の中を走行する際に、走行方向に直交する方向への振れが生じる。このため、光ファイバ1の走行位置は、光ファイバ1の直径(例えば、ガラス径が0.125mmなど)よりも広い範囲となってしまう。また、線引き時に光ファイバ母材の先端が振れることにより、光ファイバ1が透明管41に入線する位置が移動する。これらの影響により、光ファイバ1の走行位置の振れ幅は、数mm程度になる。このため、光ファイバ1の走行位置の振れ幅を考慮に入れて、反射した反射紫外線RUVの照射幅を調整する必要がある。
半導体発光素子42bから出射された紫外線をレンズで光ファイバ1の位置に集光させるよりも、
図5に示したように出射された紫外線UVを一旦反射させて、その反射紫外線RUVを光ファイバ1付近で集光させる方が、光ファイバ1に照射される紫外線量を多くできて紫外線硬化型樹脂31を十分硬化させることができる。
【0048】
反射紫外線RUVの強度は、反射鏡44の曲率半径Rを小さくする程大きくなる。しかし、反射鏡44の曲率半径Rを小さくする程、反射幅は狭くなり、紫外線UVの照射方向(
図5に示すX方向)に対する反射強度のばらつきも大きくなる。したがって、光ファイバ1の走行位置の振れ幅を考慮に入れて、反射鏡44の曲率半径Rを設定する必要がある。
【0049】
反射鏡44の曲率半径Rを適宜設定すれば、
図3で示した紫外線照射装置40の構造体Sの構成において、反射鏡44で反射される反射紫外線RUVの反射強度の位置(光ファイバ1の走行方向に直交する方向の位置)によるばらつき(強度分布)を調整することができる。これにより、発光部42から出射される紫外線UVと反射鏡44で反射される反射紫外線RUVとの合計の紫外線強度分布を調整することができる(発光部42から出射される紫外線UVの強度を変えてもよい)。
【0050】
上記の紫外線強度分布は、中心位置へ焦点を絞って狭くすると、中心位置の近傍から離れると強度が大きく減衰し、光ファイバ1の走行位置の振れが大きい場合、光ファイバ1に紫外線がほとんど照射されず紫外線硬化型樹脂が未硬化となってしまう。逆に、紫外線強度分布を広げ過ぎると、紫外線強度の最大値が小さくなるので、十分な照射量を得られず紫外線硬化型樹脂が硬化しにくくなり、確実に硬化させるには光ファイバ1の線速を遅くする必要がある。
【0051】
以上のことから、上記紫外線強度分布を適正なものにすることが好ましい。例えば、発光部42から出射される紫外線UVと反射鏡44で反射される反射紫外線RUVとの合計の紫外線強度分布をその最大強度に対し80%以上の領域E(
図3参照)の
図3における径が1mm以上20mm以下となるようにするとよい(好ましくは、上記領域の
図3における径が1mm以上3mm以下となるようにするとよい)。これにより、光ファイバ1の走行位置の振れ幅が上記領域の範囲内であれば、十分な照射量を得ることができ、紫外線硬化型樹脂を確実に硬化させることができる。
【0052】
また、透明管41は、紫外線硬化型樹脂31を効率よく硬化させるために紫外線の透過率がよいもの(あるいは吸光係数が小さいもの)を用いることが好ましい。このため、透明管41の一側から300nmから450nmまでの波長の光を照射して、透明管41の他側で透過した光を測定したときの透過率が80%以上であることが好ましい。より好ましくは上記透過率を90%以上とし、さらに好ましくは上記透過率を95%以上とすると良い。これにより、透明管41を透過する紫外線の割合が大きくなるので、光ファイバ1に照射される紫外線の量を多くすることができる。
上記の透過率は次のように定義するものである。ある波長において、透明管41を通った時の光強度I(光が透明管41の中心に向かって入って、透明管41の中を通過し、また透明管41から出た後の光強度)と透明管41が無いときの光強度I
0(レファレンス)を使い、I/I
0を透過率と定義する。
【0053】
次に、本実施形態に係る光ファイバの製造方法で使用する紫外線照射装置の変形例について説明する。
図6は、変形例である紫外線照射装置140の断面図である。
図6に示す変形例の紫外線照射装置140は、
図1において紫外線照射装置40の代わりに用いられる。紫外線照射装置140は、発光部42,レンズ43とその対面に配置される反射鏡44の組み合わせを一組とし、これを複数組光ファイバの走行方向に沿った同位置に配置したもの(
図3に示した構造体S)を一段とし、複数段(例えば、
図6では二段)配置されている。このように、構造体Sを複数段とすることで、光ファイバ1の走行方向の上下の広い範囲に亘って紫外線を照射することができる。
【0054】
そして、上記複数段の配置は、例えば、
図6に示すように、上段と下段における発光部42,レンズ43と反射鏡44との位置が、光ファイバの走行方向から見て入れ替わるように配置されていてもよい。
例えば、
図6のように配置すると、発光部42の長さがレンズ43や反射鏡44よりも長い場合に、上下の各組の距離を短くでき、省スペース化を実現できる。また、発光部42の配置位置を均等にしやすいので、より均等に周囲から紫外線を照射することができる。
【0055】
また、紫外線照射装置140において、出射される紫外線の中心波長が10nm以上異なる半導体発光素子42bを二種類以上使用して、一つの発光部42とその下に配置される発光部42とで出射される紫外線の中心波長が10nm以上異なるようにしてもよい。
一つの発光部42とその下に配置される発光部42とで出射される紫外線の中心波長が10nm以上異なるので、光ファイバ1の走行方向に沿って、照射する紫外線の波長を幅があるようにすることができる。例えば上段で紫外線を浴びた光ファイバ1の部分が下段では中心波長が10nm以上異なる紫外線を浴びるので、光ファイバ1の走行方向の上下で均等に紫外線を照射することができる。
【0056】
以上、詳述した本実施形態の光ファイバの製造方法によれば、発光部42を三台以上の奇数台、光ファイバ1の周囲に配置するので、反射鏡44を各発光部42の対面に無理なくそれぞれ配置することができる。
これにより、異なる複数の方向から、光ファイバ1に対して紫外線が照射および反射されるので、光ファイバ1の周囲に均等に紫外線硬化型樹脂を硬化させることができる。
【0057】
また、上記奇数台の発光部42の台数を五台とすることにより、光ファイバ1の周囲にできる限り均等に、紫外線硬化型樹脂を硬化させることができる。
【0058】
また、出射される紫外線の中心波長が10nm以上異なる発光特性を有する二種類以上の半導体発光素子42bを使用することにより、照射する紫外線の波長をある程度幅があるようにすることができる。紫外線硬化型樹脂に含まれる光重合開始剤の吸収波長範囲は、ある程度幅を持っているので、紫外線硬化型樹脂に効率よく紫外線を吸収させて、硬化を促進させることができる。例えば、発光部42を光ファイバ1の走行方向に沿って二台並べる場合、上段の五台の発光部42のうち365nmの中心波長の紫外線を発光するものを三台とし、390nmの中心波長の紫外線を発光するものを二台とする。下段の五台の発光部42のうち365nmの中心波長の紫外線を発光するものを二台とし、390nmの中心波長の紫外線を発光するものを三台とする。365nmの中心波長の紫外線を発光する発光部の下に、390nmの中心波長の紫外線を発光する発光部を配する。上段で365nmの中心波長の紫外線を浴びた光ファイバ1の部分が下段では異なる波長(この場合は390nmの中心波長)の紫外線を浴びる。これにて二台の発光部42を通じて均等に紫外線を光ファイバ1に照射することができる。