(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1凝縮回収装置から排出された前記第1キャリアガスを低温の状態から高温の状態にする温度調節装置を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機溶剤回収システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、蒸留装置は排水のすべてを水と有機溶剤との共沸点まで加温する必要があり、そのために膨大な熱エネルギーを必要とする。例えば、イソプロピルアルコールを含有する排水を蒸留する場合、共沸点は80.1℃であり、排水のすべてを共沸点温度まで加温しなければならない。
【0007】
さらに、水とイソプロピルアルコールの共沸点において平衡にある水相と気相のイソプロピルアルコール組成は87〜88wt.%であり、単純な水−イソプロピルアルコール二成分系の蒸留ではイソプロピルアルコール濃度が88wt.%以下の凝縮液でしか回収できない。
【0008】
また、分離膜精製装置においては、排水の有機溶剤濃度が低い場合、非常に大きな膜面積が必要になり、装置の大型化や熱エネルギーおよび電力が膨大となる傾向にある上、排水中に高沸点の有機化合物や界面活性剤、微生物が存在する場合、分離膜が劣化してしまい、頻繁な分離膜の交換を余儀なくされる。
【0009】
また、曝気処理を利用する場合、特に高濃度の有機溶剤を揮発させるには、安全面を考慮して第1キャリアガスとして不活性ガスを使用することが好ましい。しかしその場合、不活性ガスの排出について検討する必要がある。
【0010】
そこで、本願発明は上記課題に鑑みなされ、その目的は、従来技術に対して、省エネルギーを図りつつ有機溶剤を高濃度で回収する有機溶剤回収システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、ついに本発明を完成するに到った。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0012】
本発明に係る有機溶剤回収システムは、有機溶剤を含有する排水から当該有機溶剤を回収する有機溶剤回収システムであって、導入された第1キャリアガスを用いた曝気処理により前記排水から前記有機溶剤を揮発させ、当該有機溶剤を含有する前記第1キャリアガスを排出する曝気槽と、前記曝気槽から排出された前記第1キャリアガスから前記有機溶剤を凝縮回収し、未凝縮の前記有機溶剤を含有する前記第1キャリアガスを排出する第1凝縮回収装置と、前記第1凝縮回収装置から排出された前記第1キャリアガスを清浄化し、前記曝気槽に導入する前記第1キャリアガスの少なくとも一部として前記曝気槽に戻すガス処理装置と、を備えている。
また、本発明に係る有機溶剤回収システムでは、上記構成に加え、前記ガス処理装置は、前記第1凝縮回収装置から排出された前記第1キャリアガスから前記有機溶剤を吸着除去することで前記
清浄化を行うのが好ましい。
また、本発明に係る有機溶剤回収システムでは、上記構成に加え、前記ガス処理装置は、前記有機溶剤の吸着と脱着とを行う第1吸脱着素子を有し、当該第1吸脱着素子に吸着された前記有機溶剤を第2キャリアガスにて脱着して排出する第1吸脱着処理装置と、前記第1吸脱着処理装置に導入される前記第2キャリアガスを高温の状態にする第1温度調節手段と、前記第1吸
脱着処理装置から排出された前記第2キャリアガスから前記有機溶剤を凝縮回収する第2凝縮回収装置と、を備え手いるのが好ましい。
また、本発明に係る有機溶剤回収システムは、上記構成に加え、前記第2凝縮回収装置から排出された前記第2キャリアガスを高温の状態にする第2温度調節手段と、
前記第2温度調節手段に接続され、前記第2凝縮回収装置から排出された前記第2キャリアガスに含有された前記有機溶剤の吸着と脱着とを行う第2吸脱着素子を含む第2吸脱着処理装置と、を備え、
前記第1温度調節手段は、前記第2吸脱着処理装置から排出された前記第2キャリアガスを高温の状態にして前記第1吸脱着処理装置に導入し、
前記第2吸脱着処理装置は、前記第2凝縮回収装置から排出された前記第2キャリアガスを高温の状態にして導入する第1経路と、前記第1吸脱着装置から排出された前記第2キャリアガスを前記第2凝縮回収装置を経由させずに直接導入する第2経路とに接続され、前記第1経路から導入された前記第2キャリアガスと前記第2経路から導入された前記第2キャリアガスとを時間的に交互に前記第2吸
脱着素子に接触させることにより、前記有機溶剤をより高温の状態にある前記第1経路から導入された前記第2キャリアガスに移動させ、
また、前記第2吸脱着処理装置は、前記第1吸脱着素子から前記有機溶剤を脱着する脱着処理期間の始めの段階において、前記第1経路から高温の状態にある前記第2キャリアガスを導入し、前記脱着処理期間の終わりの段階において、前記第2経路から前記第2キャリアガスを導入するのが好ましい。
また、本発明に係る有機溶剤回収システムでは、上記構成に加え、前記第1キャリアガスは不活性ガスであるのが好ましい。
また、本発明に係る有機溶剤回収システムでは、上記構成に加え、前記第2キャリアガスは不活性ガスであるのが好ましい。
また、本発明に係る有機溶剤回収システムでは、上記構成に加え、前記第1吸脱着素子は活性炭素繊維であるのが好ましい。
また、本発明に係る有機溶剤回収システムでは、上記構成に加え、前記第2吸脱着素子は活性炭素繊維であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1キャリアガスを用いた曝気処理により排水から有機溶剤を揮発させ、当該有機溶剤を凝縮回収することで、排水中よりも高濃度にて有機溶剤を回収することができる。また、曝気処理を用いることで、従来よりもエネルギーを省エネルギーにて有機溶剤を回収することが可能となる。また、第1キャリアガスを清浄化し曝気槽に戻すことで、曝気処理効率が向上し、有機溶剤の回収量が増加する。さらに、第1キャリアガスを清浄化し曝気槽に戻すことで、第1キャリアガスがシステム外に排出されることが無いため、例えば第1キャリアガスとして不活性ガスを用いた場合でも、排出規制を考慮したシステムとして設計することができる。
【0014】
つまり、本発明によれば、排水中の有機溶剤を省エネルギーにて高濃度で含有する凝縮液を回収できる有機溶剤回収システムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する構成、部分、材料等について図中同一の符号とし、その説明は繰り返さない。
【0017】
〔実施の形態1〕
図1は、本発明の実施の形態1における有機溶剤回収システム10の構成図である。以下においては、
図1を参照して、本実施の形態1における有機溶剤回収システム10の構成について説明する。
【0018】
図1に示すように、有機溶剤回収システム10は、曝気槽100と、第1凝縮回収装置200と、ガス処理システム(ガス処理装置)300とを主として備えている。これらは、第1キャリアガスを循環させる第1循環路上に配置される。
【0019】
曝気槽100は、第1キャリアガスの気泡を発生させる曝気装置101を備え、曝気装置101からの気泡により水中の有機溶剤を揮発させて水中から排出させる曝気処理を行うものである。
【0020】
曝気槽100には、通液ラインW1から有機溶剤を含有する排水が導入され、通気ラインL1から第1キャリアガスが導入され、この排水が第1キャリアガスにて曝気処理される。曝気処理により排水から有機溶剤を揮発させることで、排水中の有機溶剤を低減する。排水中の有機溶剤が低減された処理水は、曝気槽100に接続する通液ラインW2から系外に排出される。曝気処理により排水から揮発された有機溶剤を含有する第1キャリアガス(曝気ガス)は、通気ラインL2に導入される。
【0021】
排水および第1キャリアガスの導入量および導入速度は、それぞれ適切に設定される。
【0022】
有機溶剤回収システム10で回収する対象は、揮発性有機溶剤が挙げられ、具体例として、イソプロピルアルコール、エタノール、テトラヒドロフラン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
第1キャリアガスには、空気や不活性ガス等の様々な種類のガスを利用することが可能である。ただし、曝気ガスには高濃度の有機溶剤が含まれる場合があるため、特に不活性ガスを利用すると、有機溶剤回収システム10をより安全に構成できる。
【0024】
なお、通気ラインL1には、第1キャリアガスを第1循環経路外から導入する導入ラインが設けられている。この導入ラインは、有機溶剤回収システム10の初期設置時において第1キャリアガスを第1循環経路に導入したり、メンテナンス時等において必要に応じて第1キャリアガスを第1循環経路に補充したりするために用いられる。
【0025】
第1凝縮回収装置200は、第1コンデンサ201および第1回収タンク202を備えている。第1コンデンサ201は、曝気槽100から排出された第1キャリアガスを低温の状態に温度調節することによって第1キャリアガスに含有された有機溶剤を冷却凝縮させる装置である。また、第1回収タンク202は、通液ラインW3から第1コンデンサ201にて凝縮された有機溶剤である凝縮液Aを回収して貯留する容器である。
【0026】
第1凝縮回収装置200には、通気ラインL2と通気ラインL3とが接続されている。通気ラインL2は、曝気槽100から排出された第1キャリアガスを第1コンデンサ201に導入する。通気ラインL3は、第1コンデンサ201内に残留する未凝縮の有機溶剤を含む低温の状態にある第1キャリアガスを300にガス処理システム300に導入する。
【0027】
第1コンデンサ201は低温の一定の設定温度に保たれており、第1コンデンサ201からは該当設定温度の飽和蒸気濃度の有機溶剤を含む第1キャリアガスが排出され、通気ラインL3に導入される。すなわち、第1凝縮回収装置200では第1コンデンサ201に導入される第1キャリアガス中の有機溶剤の濃度と、コンデンサ201から排出される第1キャリアガス中の有機溶剤の濃度との差分が回収される。
【0028】
ここで、有機溶剤および水の組成について、排水中に含まれる有機溶剤の重量比率が、水と有機溶剤との共沸点において平衡にある水相と気相の有機溶剤の重量比率より低い場合、曝気ガス中に含まれる有機溶剤の重量比率は、曝気処理する前の排水中に含まれる有機溶剤の重量比率より高くなる。そのため、第1凝縮回収装置200の第1回収タンク202は、凝縮液Aにおける有機溶剤の重量比率を、排水における有機溶剤の重量比率よりも高い状態で、凝縮液Aを回収することができる。
【0029】
ガス処理システム300は、通気ラインL3から導入された有機溶剤を含有する第1キャリアガスから有機溶剤を除去し、清浄化された第1キャリアガス(清浄化ガス)として生成するものである。ガス処理システム300には、有機溶剤が除去された清浄化ガスを排出する為の通気ラインL4が接続されている。
【0030】
通気ラインL4は通気ラインL1に接続しており、有機溶剤が除去された清浄化ガスは、曝気槽100に導入される第1キャリアガスの少なくとも一部として曝気槽100に再び導入される。ガス処理システム300にて第1キャリアガスを清浄化することにより、曝気槽100の曝気処理効率が向上し、処理水に含まれる有機溶剤の濃度を低減でき、有機溶剤の回収量が増加する。
【0031】
ガス処理システム300は、第1凝縮回収装置200から排出された第1キャリアガスから有機溶剤を除去し、清浄化ガスを生成するものであればどのような手段でも構わない。例として、第1キャリアガスを高温に加熱して有機溶剤を分解させて無害化するシステムや、有機溶剤を吸着する吸着素子を用いて第1キャリアガスから有機溶剤を吸着除去するシステムなどが挙げられる。
【0032】
ここで、第1キャリアガスを高温に加熱して有機溶剤を分解させて無害化するシステム場合、有機溶剤の副生成物が生成しやすく、それが第1凝縮回収装置200の第1回収タンク202の凝縮液Aに混入する可能性がある。それを防ぐために、ガス処理システム300としては、第1キャリアガスから有機溶剤を吸着除去し、清浄化ガスを排出するシステムが好適である。
【0033】
そこで、ガス処理システム300として用いられる、第1キャリアガスから有機溶剤を吸着除去し清浄化ガスを排出するシステムの一例について、
図2を用いて説明する。以下では、この一例のシステムを、ガス処理システム300と称することにする。
【0034】
図2は、ガス処理システム300の構成を示す図である。
図2に示すように、ガス処理システム300は、第1吸脱着処理装置310、第2凝縮回収装置320、および第2吸脱着処理装置330を備えている。これらは、第2キャリアガスを循環させる第2循環経路上に配置される。また、第2循環経路上には循環送風機340が配置される。
【0035】
ここで、第2循環経路は、図中に示す通気ラインL5〜L9によって主として構成されている。循環送風機340は、当該第2循環経路中において第2キャリアガスを通流させるための送風手段である。なお、第2キャリアガスとしては、水蒸気、加熱空気、高温に加熱した不活性ガス等、様々な種類のガスを利用することが可能である。ただし、特に水分を含まないガスである不活性ガスを利用すれば、ガス処理システム300をより簡素に構成できる。
【0036】
第1吸脱着処理装置310は、第1吸脱着槽A311、第1吸脱着槽B312、および第1吸脱着素子脱着用ヒーター315を備えている。第1吸脱着槽A311には第1吸脱着素子A313が内蔵され、第1吸脱着槽B312には第1吸脱着素子B314が内蔵されている。
【0037】
第1吸脱着素子脱着用ヒーター315は、第1吸脱着素子で吸着された有機溶剤を第2キャリアガスにて脱着するために、第2キャリアガスを高温の状態に温度調整する加熱手段である。第1吸脱着素子脱着用ヒーター315は、初めに系に導入される第2キャリアガスに加え、第2吸脱着処理装置330から排出されて循環送風機340を経由した第2キャリアガスも高温の状態に温度調節する。
【0038】
第1吸脱着素子A313および第1吸脱着素子B314は、通気ラインL3から導入された第1キャリアガスを接触させることで第1キャリアガスに含有された有機溶剤を吸着する。これにより第1凝縮回収装置200から排出された第1キャリアガスは、有機溶剤が吸着除去され、清浄化されて第1吸脱着槽A311および第1吸脱着槽B312から排出される。排出された清浄化ガスは通気ラインL4に導入される。
【0039】
また、第1吸脱着素子A313および第1吸脱着素子AB314は、通気ラインL5から導入された高温の状態にある第2キャリアガスを接触させることで吸着した有機溶剤を脱着する。したがって、第1吸脱着処理装置310においては、有機溶剤を含有する第2キャリアガスが第1吸脱着槽A311および第1吸脱着槽B312から排出され、通気ラインL6に導入される。
【0040】
ここで、通気ラインL5には、第2キャリアガスを第2循環経路外から導入する導入ラインが設けられている。この導入ラインは、ガス処理システム10の初期設置時において第2キャリアガスを第2循環経路に導入したり、メンテナンス時等において必要に応じて第2キャリアガスを第2循環経路に補充したりするために用いられる。
【0041】
第1吸脱着素子A313および第1吸脱着素子B314は、粒状活性炭、活性炭素繊維、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナおよび多孔性有機化合物のいずれかを含む吸着材から構成される。好ましくは活性炭素繊維から構成される。活性炭素繊維は、繊維構造のため外表面積が非常に大きく、繊維表面にミクロポアが直接開孔しているため、ガスとの接触効率が高く、他の吸着材よりも高い吸脱着効率を発揮する。
【0042】
第1吸脱着処理装置310には、通気ラインL3〜L6がそれぞれ接続されており、バルブによって第1吸脱着槽A311および第1吸脱着槽B312に対する接続/非接続状態が切り替えられる。これにより、第1キャリアガスと、第1吸脱着素子脱着用ヒーター315にて高温の状態に温度調節された第2キャリアガスとが、時間的に交互に導入される。これにより、第1吸脱着槽A311および第1吸脱着槽B312は、時間的に交互に吸着槽および脱着槽として機能することになる。これにより、有機溶剤が第1キャリアガスから高温の状態にある第2キャリアガスに移動されることになる。
【0043】
第2凝縮回収装置320は、第2コンデンサ321および第2回収タンク322を備えでいる。コンデンサ321は、第2キャリアガスを低温の状態に温度調節することによって通気ラインL6から導入された第2キャリアガスに含有された有機溶剤を冷却凝縮させるものである。また、第2回収タンク322は、第2コンデンサ321にて液化された凝縮液Bを通液ラインW3を介して回収して貯留するものである。
【0044】
ガス処理システム300が第1吸脱着処理装置310および第2凝縮回収装置320を備えていることにより、第1凝縮回収装置200から排出される第1キャリアガスに含有する有機溶剤を凝縮液Bとして回収することができる。よって、有機溶剤回収システム10全体における有機溶剤の回収効率が向上する。
【0045】
また、第1吸脱着処理装置310の第1吸脱着素子A313および第1吸脱着素子B314に活性炭素繊維などの疎水性吸着素子を使用することにより、水よりも有機溶剤を第1キャリアガスから選択的に吸着回収できる。そのため、第2凝縮回収装置200の第2回収タンクで回収される凝縮液Bは非常に高濃度の有機溶剤を含んだ状態で回収できる。
【0046】
第2凝縮回収装置320は、第2コンデンサ321内に残留する未凝縮の有機溶剤を含む低温の状態にある第2キャリアガスを第2コンデンサ321から排出するための通気ラインが接続されている。
【0047】
第2吸脱着処理装置330は、第2吸脱着素子332が内蔵された第2吸脱着槽331、第2吸脱着素子脱着用ヒーター334と、経路切替装置333とを主に備えている。
【0048】
第2吸脱着素子脱着用ヒーター334は、第2凝縮回収装置320から排出された低温の状態の第2キャリアガスを高温の状態に温度調節する加熱手段である。高温の状態に温度調節された第2キャリアガスは、通気ラインL8により第2吸脱着槽331に導入される。
【0049】
第2吸脱着処理装置330は、第1吸脱着処理装置310から排出された第2キャリアガスを第2凝縮回収装置320および第2吸脱着素子脱着用ヒーター334を経由させず、直接第2吸脱着処理装置330に導入するためのバイパスラインL7を有する。
【0050】
第2吸脱着処理装置330は、通気ラインL8から排出される高温の状態の第2キャリアガスと、バイパスラインL7から排出される第2キャリアガスとのいずれかを第2吸脱着処理装置330に時間的に交互に導入するための経路切替装置333を有する。
【0051】
第2吸脱着処理装置330は、第2吸脱着槽331に内蔵された第2吸脱着素子332に、第2吸脱着素子脱着用ヒーター334から排出されて高温の状態にある第2キャリアガスを接触させることで有機溶剤を脱着し、有機溶剤を含有する第2キャリアガスを排出する。また、第2吸脱着処理装置330は、第2吸脱着素子脱着用ヒーター334から排出されて高温の状態にある第2キャリアガスより低温の状態にある第2キャリアガスを接触させることで有機溶剤を吸着し、有機溶剤が除去された第2キャリアガスを第2吸脱着処理槽331から排出する。
【0052】
第2吸脱着素子332は、粒状活性炭、活性炭素繊維、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナおよび多孔性有機化合物のいずれかを含む吸着材から構成される。好ましくは活性炭素繊維から構成される吸着材である。活性炭素繊維は、繊維構造のため外表面積が非常に大きく、繊維表面にミクロポアが直接開孔しているため、ガスとの接触効率が高く、他の吸着材よりも高い吸脱着効率を発揮する。
【0053】
第2吸脱着処理装置330から排出された第2キャリアガスは、通気ラインL9から循環送風機340に導入され、第1吸脱着処理装置用ヒーター315にて高温の状態に温度調節され、再び第1吸脱着処理装置310の第1吸脱着槽A311または第1吸脱着槽B312に導入される。
【0054】
第1吸脱着処理装置310の脱着処理期間の初めの段階においては、経路切替装置333は第2吸脱着素子脱着用ヒーター334から排出される高温の状態の第2キャリアガスを通気ラインL8から第2吸脱着槽331に導入するように設定される。他方、脱着処理期間の終わりの段階においては、経路切替装置333はバイパスラインL7から排出される第2キャリアガスを第2吸脱着槽331に導入するように設定される。
【0055】
第1吸脱着処理装置310の脱着処理期間の終わりの段階において、第2吸脱着処理装置330からは有機溶剤が除去された第2キャリアガスが排出され、第1吸脱着処理装置用ヒーター315にて高温の状態に温度調節され、再び第1吸脱着槽A311または第1吸脱着槽B312に導入される。これにより、第1吸脱着処理装置310の第1吸脱着素子A313または第1吸脱着素子B314からの脱着がさらに促進され、第1吸脱着素子A313または第1吸脱着素子B314の浄化能力が向上し、有機溶剤の回収効率もまた向上する。
【0056】
〔実施の形態2〕
図3は、本発明の実施の形態2における有機溶剤回収システム10Aの概念図である。有機溶剤回収システム10Aは、実施の形態1にて説明した有機溶剤回収システム10に加え、第1凝縮回収装置200とガス処理システム300とを接続している通気ラインL3上に、第1キャリアガスを高温の状態に温度調節する温度調節装置400を備えている。これ以外の構成は、有機溶剤回収システム10と同様である。
【0057】
温度調節装置400は、ガス処理システム300に導入される第1キャリアガスを第1凝縮回収装置200の第1コンデンサ201における設定温度よりも高温の状態に調節する。これにより、ガス処理システム300に導入される第1キャリアガスの相対湿度を下げることができる。
【0058】
ガス処理システム300に導入される第1キャリアガスの相対湿度を下げることにより、ガス処理システム300の第1吸脱着処理装置310の第1吸脱着素子A313および第1吸脱着素子B314で吸着回収される水分が減少し、有機溶剤を高濃度で含有する凝縮液Bをガス処理システム300から得る事ができる。
【実施例】
【0059】
上記説明した有機溶剤回収システム10,10Aを用いて有機溶剤の回収を以下のように実施した。
【0060】
<実施例1>
有機溶剤回収システム10を用いた。イソプロピルアルコール50wt.%を含有する排水(30℃)を1900kg/hrにて曝気槽100に導入した。曝気槽100にて排水を60℃に加温しながら、第1キャリアガスとして窒素ガスを使用し、これを10Nm
3/minで曝気装置101に導入し、排水をバブリングして排水からイソプロピルアルコールを除去した。
【0061】
揮発したイソプロピルアルコールを含む第1キャリアガス(曝気ガス)は、10℃に設定した第1凝縮回収装置200の第1コンデンサ201に導入された。第1コンデンサ201にてイソプロピルアルコールが冷却凝縮され、第1回収タンク202に凝縮液Aが回収された。
【0062】
第1凝縮回収装置200の第1コンデンサ201から排出された未凝縮のイソプロピルアルコール(15,000ppm)を含有する第1キャリアガスは、ガス処理システム300に導入された。ガス処理システム300では、第1吸脱着素子A313、第1吸脱着素子B314として比表面積が1500m
2/gの活性炭素繊維を使用し、第2吸脱着素子332として比表面積が2000m
2/gの活性炭素繊維を使用した。第2キャリアガスとして120℃の窒素ガスを使用し、第2凝縮回収装置320の第2コンデンサ321を10℃に設定した。第1吸脱着処理装置310にてイソプロピルアルコールは、第1キャリアガスから第2キャリアガスへと移動し、さらに第2凝縮回収装置320の第2コンデンサ321で冷却凝縮され、第2回収タンク322に凝縮液Bが回収された。
【0063】
<実施例2>
第1凝縮回収装置200とガス処理システム300とを接続している通気ラインL3上に第1キャリアガスを高温の状態に温度調節する温度調節装置400を備えた有機溶剤回収システム10Aを用いた。この有機溶剤回収システム10Aにおいて、温度調節装置400を20℃に設定したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
【0064】
<比較例1>
比較例1として、蒸留装置を用いた有機溶剤の回収を行った。イソプロピルアルコール50wt.%を含有する排水(30℃)を、1900L/hにて単蒸留装置に導入した。排水を81℃に加熱して排水からイソプロピルアルコールを除去し、揮発したイソプロピルアルコールおよび水を10℃まで冷却し、凝縮液Aを得た。
【0065】
実施例1,2および比較例1から得られた結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1から、実施例1および実施例2はいずれも比較例1より熱エネルギー使用量が大幅に削減されていることがわかる。つまり、本発明の有機溶剤回収システムを用いることで、排水中から有機溶剤を高効率に除去でき、かつ熱エネルギー使用量を大幅に削減することで省エネルギー運転が可能であることが確認できた。
【0068】
また、比較例1にて回収された凝縮液Aに対して、実施例1および実施例2においては凝縮液Aに加え、さらに高濃度のイソプロピルアルコールを含む凝縮液Bを回収できたことがわかる。特に実施例2の凝縮液A,B中のイソプロピルアルコール濃度は高いことがわかる。また、実施例1および実施例2の凝縮液Bのイソプロピルアルコール濃度は、水―イソプロピルアルコール二成分系の蒸留では達成できない良好な値である。
【0069】
なお、上記開示した各実施の形態および各実施例はすべて例示であり制限的なものではない。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって有効であり、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内のすべての変更・修正・置き換え等を含むものである。