(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一または同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。図面には、必要に応じてXYZ座標系が示されている。Z軸方向はたとえば鉛直方向、X軸方向およびY軸方向はたとえば水平方向である。
【0017】
図1は、実施形態に係る電極組立体を備える蓄電装置の断面図である。
図2は、
図1のII−II線に沿った蓄電装置の断面図である。
図1および
図2に示される蓄電装置1は、たとえばリチウムイオン二次電池といった非水電解質二次電池または電気二重層キャパシタである。
【0018】
図1および
図2に示されるように、蓄電装置1は、たとえば略直方体形状をなす中空のケース2と、ケース2内に収容された電極組立体3とを備えている。ケース2は、たとえばアルミニウムなどの金属によって形成されている。ケース2は、一方側において開口した本体部2aと、本体部2aの開口を塞ぐ蓋部2bとを有している。ケース2の内壁面上には、絶縁フィルム(図示せず)が設けられる。ケース2の内部には、たとえば非水系(有機溶媒系)の電解液が注液されている。本体部2aは、上部開口の略直方体形状をなす。蓋部2bは、本体部2aの開口部分を覆うように本体部2aに固定される。蓋部2bは、たとえば本体部2aに溶接されることによって、本体部2aに固定される。電極組立体3では、後述する正極11の正極活物質層15、負極12の負極活物質層18、セパレータ13が多孔質をなしており、その空孔内に、電解液が含浸されている。ケース2の蓋部2bには、正極端子5と負極端子6とが互いに離間して配置されている。正極端子5は、絶縁リング7を介してケース2に固定され、負極端子6は、絶縁リング8を介してケース2に固定されている。
【0019】
電極組立体3は、積層型の電極組立体である。電極組立体3は、複数の正極11(電極)と、複数の負極12(電極)と、正極11と負極12との間に配置された袋状のセパレータ13とによって構成されている。セパレータ13内には、たとえば正極11が収容されている。セパレータ13内に正極11が収容された状態で、複数の正極11と複数の負極12とがセパレータ13を介して交互に積層されている。
【0020】
正極11は、たとえばアルミニウム箔からなる金属箔14と、金属箔14の両面に形成された正極活物質層15と、を有している。正極11の金属箔14は、矩形状の本体14aと、本体14aの一端から突出する矩形状のタブ14bと、を含む。正極活物質層15は、正極活物質とバインダとを含んで形成されている多孔質の層である。正極活物質層15は、本体14aの両面において、少なくとも本体14aの中央部分に正極活物質が担持されて形成されている。
【0021】
タブ14bは、本体14aの上縁部から上方に延び、集電板16(導電部材)を介して正極端子5に接続されている。集電板16はタブ14bと正極端子5との間に配置されている。集電板16は、たとえば、正極11の金属箔14と同一の材料から矩形平板状に構成される。積層された複数のタブ14bは、集電板16と、集電板16よりも薄い保護板23(導電部材)との間に配置される(
図3参照)。保護板23は、たとえば、正極11の金属箔14と同一の材料から平板状に構成される。保護板23の形状は、対応するタブ14bの部分の形状に合わせた形状とされる。
【0022】
負極12は、たとえば銅箔からなる金属箔17と、金属箔17の両面に形成された負極活物質層18と、を有している。負極12の金属箔17は、正極11の金属箔14と同様に、矩形状の本体17aと、本体17aの一端から突出する矩形状のタブ17bと、を含む。負極活物質層18は、本体17aの両面において、少なくとも本体17aの中央部分に負極活物質が担持されて形成されている。負極活物質層18は、負極活物質とバインダとを含んで形成される多孔質の層である。
【0023】
負極活物質としては、たとえば黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素等が挙げられる。ここでは、一例として、タブ17bには、負極活物質が担持されていない。ただし、タブ17bにおける本体17a側の基端部分には、活物質が担持されている場合もある。
【0024】
タブ17bは、本体17aの上縁部から上方に延び、集電板19(導電部材)を介して負極端子6に接続されている。集電板19は、タブ17bと負極端子6との間に配置されている。集電板19は、たとえば、負極12の金属箔17と同一の材料から矩形平板状に構成される。積層された複数のタブ17bは、集電板19と、集電板19よりも薄い保護板27(導電部材)との間に配置される(
図3参照)。保護板27は、たとえば、負極12の金属箔17と同一の材料から平板状に構成される。保護板27の形状は、対応するタブ17bの部分の形状に合わせた形状とされる。
【0025】
セパレータ13は、正極11を収容している。セパレータ13は、正極11および負極12の積層方向からみて矩形状である。セパレータ13は、たとえば、一対の長尺シート状のセパレータ部材を互いに溶着して袋状に形成される。セパレータ13の材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロースなどからなる織布または不織布などが例示される。
【0026】
図3は、実施形態に係る電極組立体の斜視図である。
図4は、Z軸方向から見た
図3の電極組立体の一部を模式的に示す図である。なお、以後、図面において、ケース2の蓋部2bおよびその周辺の構造等の図示が省略される場合がある。
図3に示される電極組立体3は、セパレータ13を介して互いに積層された複数の正極11および複数の負極12を含む。複数の正極11のそれぞれは、XY平面に延在する本体14aと、本体14aの一端からX軸方向(後述の側面Sに対して直交する方向)に突出するタブ14bとを含む。複数の負極12のそれぞれは、XY平面に延在する本体17aと、本体17aの一端からX軸方向に突出するタブ17bとを含む。本体14a,17aは、互いに積層され、全体として電極本体20を構成する。電極本体20は側面Sを有する。側面Sは、積層された本体14a,17aの一端によって構成される。タブ14b,17bは、互いに積層されてタブ積層体21,25をそれぞれ構成する。すなわち、電極組立体3は、Z軸方向に積層された複数の本体14a,17aを有する電極本体20と、Z軸方向に積層された複数のタブ14bを有するタブ積層体21と、Z軸方向に積層された複数のタブ17bを有するタブ積層体25とを備える。タブ積層体21,25は、電極本体20の側面SからX軸方向に突出する。タブ積層体21,25は、Y軸方向において、互いに離間して配置される。
【0027】
まず、タブ積層体21およびその周辺の構造について説明する。タブ積層体21は、タブ積層体21の積層方向(Z軸方向)およびタブ積層体21の突出方向(X軸方向)に沿って延在する端面21a,21bを備える。端面21a,21bは、タブ積層体21の積層方向(Z軸方向)および突出方向(X軸方向)に沿って延在している。
図3および
図4に示される例では、端面21bは、XZ平面に平行な面である。端面21aは、タブ積層体21の基端部分に、XZ平面に平行な平行面21a1を有し、タブ積層体21の先端部に、XZ平面に対して傾斜する傾斜面21a2を有する。傾斜面21a2は、後述の溶接部Wの外表面を含む。端面21aおよび端面21bはタブ積層体21の先端に至り、タブ積層体21の先端で接続されている。タブ積層体21の先端から電極本体20側に向かうにつれて、端面21aの傾斜面21a2と、端面21bとの離間距離は大きくなっている。このような傾斜面21a2を含む端面21aを有するタブ積層体21は、たとえば、タブ14bが積層される前に、各タブの一部を切断加工等することによって予め形成されてもよいし、タブ14bが積層された後に、タブ積層体21の一部を切断加工することによって形成されてもよい。
【0028】
タブ積層体21は、Z軸方向において、集電板16と保護板23との間に配置される。タブ積層体21は、Z軸方向において、集電板16上に配置される。タブ積層体21は、Z軸方向において、保護板23上に配置されるとも言える。保護板23と集電板16とは接触しておらず、タブ積層体21を積層方向に挟んで離間している。タブ積層体21は、保護板23よりも厚く、集電板16は保護板23よりも厚い。タブ積層体21の積層方向(Z軸方向)から見て、保護板23は、タブ積層体21の先端部分に位置している。保護板23の形状は、タブ積層体21の先端部分の形状に合わせた形状とされる。
【0029】
集電板16のY軸方向における長さは、タブ積層体21のY軸方向における長さ(端面21a,21b間の最大距離)よりも大きくなっている。Y軸方向において、集電板16のY軸方向における外側端部の位置は、本体14aのY軸方向における端部の位置と一致している。保護板23のY軸方向における長さは、タブ積層体21のY軸方向における長さと略同じである。前述のように、保護板23の形状は、対応するタブ14b(あるいはタブ積層体21)の部分の形状に合わせた形状とされる。この例では、保護板23は、傾斜面21a2を有するタブ積層体21の先端部の形状に合わせた形状とされる。
【0030】
タブ積層体21は、タブ積層体21の端面21aの傾斜面21a2から内側に位置する溶接部Wを有する。溶接部Wは、傾斜面21a2に隣接する集電板16および保護板23の内部まで延びている。傾斜面21a2は、溶接部Wの外表面を含む。
図3および
図4に示される例では、傾斜面21a2全体が溶接部Wの外表面である。
【0031】
上述のように、端面21aは、XZ平面に対して傾斜する傾斜面21a2を有する。より具体的に、
図4に示されるように、溶接部Wの外表面(傾斜面21a2)を含む面を第1平面H1とし、電極本体20の側面Sを含む面を第2平面H2とする。また、第1平面H1を挟んでタブ積層体21の反対側に位置するとともに、第2平面H2を挟んで電極本体20の反対側に位置する領域を、領域Rとする。この場合、電極組立体3では、領域Rにおいて、第1平面H1と、第2平面H2とのなす角度θが、90度よりも大きく180度よりも小さくなっている。このため、溶接部Wの外表面(つまり傾斜面21a2)は、電極本体20の側面Sに面していない。また、この例では、第1平面H1は、側面Sと交差していない。
【0032】
角度θは上述の範囲において適宜設定される。好ましくは、角度θは、105°よりも大きく165°よりも小さい。さらに好ましくは、角度θは、120°よりも大きく150°よりも小さい。
【0033】
次に、タブ積層体25およびその周辺の構造について説明する。タブ積層体21と同様に、タブ積層体25は、タブ積層体25の積層方向(Z軸方向)に沿って延在するタブ積層体25の端面25a,25bを備える。端面25a,25bは、タブ積層体25の積層方向(Z軸方向)および突出方向(X軸方向)に沿って延在している。
図3および
図4に示される例では、端面25bは、XZ平面に平行な面である。端面25aは、タブ積層体25の基端部分に、XZ平面に平行な平行面25a1を有し、タブ積層体21の先端部に、XZ平面に対して傾斜する傾斜面25a2を有する。傾斜面25a2は、後述の溶接部Wの外表面を含む。端面25aおよび端面25bはタブ積層体25の先端に至り、タブ積層体25の先端で接続されている。タブ積層体25の先端から電極本体20側に向かうにつれて、端面25aの傾斜面25a2と、端面25bとの離間距離は大きくなっている。このような傾斜面25a2を含む端面25aを有するタブ積層体21は、タブ17bが積層される前に、各タブの一部を加工することによって予め形成されてもよいし、タブ17bが積層された後に、タブ積層体25の一部を加工することによって形成されてもよい。加工の手法は、タブ14b、タブ積層体21の場合と同様であってよい。
【0034】
タブ積層体25は、Z軸方向において、集電板19と保護板27との間に配置される。タブ積層体25は、Z軸方向において、集電板19上に配置される。タブ積層体25は、Z軸方向において、保護板27上に配置されるとも言える。保護板27と集電板19とは接触しておらず、タブ積層体25を積層方向に挟んで離間している。タブ積層体25は、保護板27よりも厚く、集電板19は保護板27よりも厚い。タブ積層体25の積層方向(Z軸方向)から見て、保護板27は、タブ積層体25の先端部分に位置している。保護板27の形状は、タブ積層体25の先端部分の形状に合わせた形状とされる。
【0035】
集電板19のY軸方向における長さは、タブ積層体25のY軸方向における長さ(端面25a,25b間の最大距離)よりも大きくなっている。保護板27のY軸方向における長さは、タブ積層体25のY軸方向における長さと略同じである。前述のように、保護板27の形状は、対応するタブ17b(あるいはタブ積層体25)の部分の形状に合わせた形状とされる。この例では、保護板27は、傾斜面25a2を有するタブ積層体25の先端部の形状に合わせた形状とされる。
【0036】
タブ積層体25は、タブ積層体25の端面25aの傾斜面25a2から内側に位置する溶接部Wを有する。溶接部Wは、傾斜面25a2に隣接する集電板19および保護板27の内部まで延びている。傾斜面25a2は、溶接部Wの外表面を含む。
図3および
図4に示される例では、傾斜面25a2全体が溶接部Wの外表面である。
【0037】
上述のように、端面25aはXZ平面に対して傾斜する傾斜面25a2を有する。より具体的に、先に説明した端面21aの場合と同様に、溶接部Wの外表面(傾斜面25a2)を含む面を第1平面H1とし、第1平面H1を挟んでタブ積層体25の反対側に位置するとともに、第2平面H2を挟んで電極本体20の反対側に位置する領域を、領域Rとする。この場合も、領域Rにおいて、第1平面H1と、第2平面H2とのなす角度は、90度よりも大きく180度よりも小さくなっている。このため、溶接部Wの外表面(つまり傾斜面25a2)は、電極本体20の側面Sに面していない。この例では、第1平面H1は、側面Sと交差していない。
【0038】
図5は、実施形態に係る電極組立体の製造方法の一工程を示す図である。
図3に示される電極組立体3は、たとえば以下の方法により製造される。
【0039】
(タブ積層体の準備工程)
まず、
図5(A)に示されるように、複数のタブ積層体21,25を準備する。
図5(A)は、Z軸方向から見たタブ積層体21,25を示す図である。たとえば、まず、集電板16,19上にそれぞれタブ14b,17bを積層することによりタブ積層体21,25を形成する。その後、タブ積層体21,25上にそれぞれ保護板23,27を載置する。タブ積層体21,25は、保護板23,27を介して押圧されるが、押圧されなくてもよい。
【0040】
(溶接部の形成工程)
次に、
図5(B)に示されるように、タブ積層体25の端面25aの傾斜面25a2にエネルギービームBを照射する。
図5(B)はZ軸方向から見たタブ積層体21,25を示す図である。エネルギービームBは、照射装置30からタブ積層体25の端面25aの傾斜面25a2に向けて照射される。つまり、タブ積層体25の端面25aの傾斜面25a2は、エネルギービームBが照射される照射面Aを有する。この例では、傾斜面25a2全体が照射面Aとされる。ただし、傾斜面25a2の一部が照射面Aであってもよい。照射装置30は、たとえばレンズおよびガルバノミラーを含むスキャナヘッドである。スキャナヘッドにはファイバを介してビーム発生装置が接続される。照射装置30は、たとえばプリズム等の屈折式の光学系から構成されてもよい。
【0041】
エネルギービームBは、溶接を行うことができる高エネルギービームである。エネルギービームBは、たとえばレーザビームまたは電子ビームである。エネルギービームBの照射は、図示しないノズルから供給される不活性ガスの雰囲気中で行われる。
【0042】
エネルギービームBは、たとえば治具により集電板19および保護板27を介してタブ積層体25をZ軸方向に押圧した状態でタブ積層体25の照射面Aに照射される。
【0043】
タブ積層体25の端面25aと同様に、タブ積層体21の照射面AにもエネルギービームBを照射する。この例では、端面21aの傾斜面21a2全体が照射面Aとされる。ただし、傾斜面21a2の一部が照射面Aであってもよい。
【0044】
上述のように照射面AにエネルギービームBを照射することによって、先に説明した
図4に示されるように、タブ積層体21の端面21a(の傾斜面21a2)、タブ積層体25の端面25a(の傾斜面25a2)から内側に溶接部Wがそれぞれ形成される。端面21aの傾斜面21a2および端面25aの傾斜面25a2は、先に説明した溶接部Wの外表面を含む面となる。
【0045】
上記工程を経ることによって、電極組立体3が製造される。その後、タブ積層体21,25を折り曲げた電極組立体3をケース2に収容し、蓄電装置1を製造することができる。
【0046】
以上説明したように、実施形態の電極組立体の製造方法では、タブ積層体21,25の端面21a,25aが有する照射面AにエネルギービームBを照射することによって、端面21a,25aの内側に溶接部Wが形成される。ここで、照射面AにエネルギービームBが照射されると、照射面Aにおいてスパッタ粒子が発生し得る。その場合、発生したスパッタ粒子が飛散することによって、電極組立体3の特性の変化が変化する可能性があるが、上述の電極組立体の製造方法によれば、スパッタ粒子の発生による電極組立体3の特性の変化を抑制することができる。具体的に、
図6を参照して説明する。
【0047】
図6は、スパッタ粒子の飛散方向を説明するための図である。
図6(A)は、実施形態の電極組立体におけるスパッタ粒子の飛散方向を説明するための図である。
図6(B)は、検討例の電極組立体におけるスパッタ粒子の飛散方向を説明するための図である。
図6(B)に示される検討例の電極組立体では、タブ積層体35が、タブ積層体35の積層方向(Z軸方向)およびタブ積層体35の突出方向(X軸方向)に沿って延在する端面35a,35bを備える。端面35a,35bは、互いに対向配置されている。端面35a,35bは、XZ平面に平行な面である。X軸方向において、端面35aの先端と、端面35bの先端とは同じ位置にある。端面35cは、端面35a,35b間に設けられる。端面35cは、YZ平面に平行な面である。
【0048】
ここで、エネルギービームBの照射によって発生したスパッタ粒子Pの飛散方向は、照射面に対して垂直な方向を中心に広がる傾向がある。
図6(A)に示される例では、照射面は、端面25aの傾斜面25a2が有する照射面Aである。
図6(B)に示される例では、照射面は、端面35aである。
図6(B)に示される検討例の電極組立体のように、照射面(端面35a)を含む平面が電極本体20の側面Sを含む平面に直交する場合(角度θ
1=90度の場合)には、照射面(端面35a)に対して垂直な方向から広がって飛散したスパッタ粒子Pが電極本体20の側面Sに付着し、電極組立体の特性が変化してしまう可能性がある。
【0049】
これに対し、実施形態の電極組立体の製造方法では、
図6(A)に示されるように、電極本体20の側面Sから突出するタブ積層体25の端面25aが有する照射面Aを含む第1平面H1を挟んでタブ積層体25の反対側に位置するとともに、電極本体20の側面Sを含む第2平面H2を挟んで電極本体20の反対側に位置する領域Rにおいて、第1平面H1と第2平面H2とのなす角度は90度よりも大きく180度よりも小さい。この場合、照射面Aを含む第1平面H1は、電極本体20の側面Sを含む第2平面H2に直交していない。また、照射面Aを含む第1平面H1は、電極本体20の側面Sを含む第2平面H2に面してもいない。そのため、照射面Aにおいて発生し照射面Aに対して垂直な方向から広がって飛散したスパッタ粒子Pの電極本体20の側面Sへの付着が抑制される。このことは、タブ積層体21の端面21aが有する照射面Aにおいて発生したスパッタ粒子Pについても同様である。よって、上述の実施形態の電極組立体の製造方法によれば、スパッタ粒子Pの発生による電極組立体3の特性の変化を抑制することができる。
【0050】
また、上記実施形態では、タブ積層体21,25は、電極本体20の側面Sに対して直交する方向に突出し、タブ積層体21,25の端面21a,25aは、タブ積層体21,25の先端部分に照射面Aを有している。これにより、たとえばタブ積層体21,25を、側面Sに対して直交する方向(X軸方向)に対して傾斜する方向に突出した構成とする場合よりも電極組立体3をコンパクトにできる可能性がある。
【0051】
また、上記実施形態では、タブ積層体21、25は、タブ積層体21,25の積層方向(Z軸方向)およびタブ積層体21,25の突出方向(X軸方向)に沿って延在し且つタブ積層体21,25の先端に至る別の端面21b,25bを有する。照射面Aは、タブ積層体21,25の先端から電極本体20側に向かって延在している。これにより、タブ積層体21,25が電極本体20の側面Sに対して直交する方向(X軸方向)に突出する構成において、照射面Aを得ることができる。
【0052】
また、上記実施形態では、タブ積層体21,25の端面21b,25bは、照射面Aを有さず、タブ積層体21,25の突出方向(X軸方向)と同じ方向に延在する。タブ積層体21の先端から電極本体20に向かうにつれて、端面21aの照射面Aと端面21bとの離間距離が大きくなっている。また、タブ積層体25の先端から電極本体20に向かうにつれて、端面25aの照射面Aと端面25bとの離間距離が大きくなっている。この場合、タブ積層体21では、端面21aおよび端面21bのうち一方の端面、つまり端面21aが照射面Aを有していればよいので、たとえば端面21aおよび端面21bの各々が照射面Aを有する場合よりも、タブ積層体21の準備が容易となる。同様に、タブ積層体25では、端面25aおよび端面25bのうち一方の端面、つまり端面25aが照射面Aを有していればよいので、たとえば端面25aおよび端面25bの各々が照射面Aを有する場合よりも、タブ積層体25の準備が容易となる。よって、電極組立体3の製造が容易となる可能性が高まる。
【0053】
また、先に説明した
図6(B)に示される検討例の電極組立体においては、端面35cにエネルギービームBを照射して溶接を行うことも考えられる。この場合、上述の電極組立体の製造方法によれば、次に説明するように、スパッタ粒子の発生による蓋部2bの特性の変化を抑制することができる。これについて、次に
図7を参照して説明する。
【0054】
図7は、スパッタ粒子の飛散方向を説明するための図である。
図7(A)は、実施形態の電極組立体におけるスパッタ粒子の飛散方向を説明するための図である。
図7(B)は、検討例の電極組立体におけるスパッタ粒子の飛散方向を説明するための図である。
図7(B)に示される例では、照射面は、端面35cであるとする。
【0055】
たとえば、電極組立体の上方(この例では、X軸負方向)には、ケース2の蓋部2bが位置し、蓋部2bの内面が、YZ平面に平行な面となっていることがある。
図7(B)に示される検討例の電極組立体のように、端面35cがYZ平面に平行な面であると、照射面(端面35c)がケース2の蓋部2bに平行になる。この場合、照射面(端面35c)に対して垂直な方向から広がって飛散したスパッタ粒子Pがケース2の蓋部2bにおける負極端子6および絶縁リング8に付着する可能性がある。スパッタ粒子Pが付着して負極端子6および絶縁リング8の電気特性が変化すると、蓋部2bの特性が変化し得る。
【0056】
これに対し、実施形態の電極組立体の製造方法では、
図7(A)に示されるように、端面25aが有する照射面Aを含む第1平面H1は、ケース2の蓋部2bの内面と平行ではない。照射面Aを含む第1平面H1は、蓋部2bの内面に対し交差している。そのため、照射面Aが蓋部2bの内面に対して平行な面である場合よりも、照射面Aにおいて発生し照射面Aに対して垂直な方向から広がって飛散したスパッタ粒子Pの負極端子6および絶縁リング8への付着が抑制される。このことは、タブ積層体21の端面21cが有する照射面Aにおいて発生したスパッタ粒子Pについても同様である。タブ積層体21の場合には、たとえば、スパッタ粒子Pの正極端子5および絶縁リング8への付着が抑制される。よって、実施形態の電極組立体の製造方法によれば、スパッタ粒子Pの発生による蓋部2bの特性の変化を抑制することができる。なお、X軸方向における照射面Aと蓋部2bの内面との距離を適切に設定することで、照射面Aにおいて発生し照射面Aに対して垂直な方向から広がって飛散したスパッタ粒子Pのケース2の蓋部2b全体への付着も抑制できる。
【0057】
また、先に
図3および
図4を参照して説明したように、電極組立体3では、領域Rにおいて、電極本体20の側面Sから突出するタブ積層体21,25の端面21a,25aから内側に位置する溶接部Wの外表面を含む第1平面H1と、電極本体20の側面Sを含む第2平面H2とのなす角度θが90度よりも大きく180度よりも小さい。そのため、たとえば、エネルギービームBの照射によって溶接部Wが形成された場合にスパッタ粒子Pが発生して飛散したとしても、先に
図6を参照して説明したように、スパッタ粒子Pの電極本体20の側面Sへの付着が抑制される。よって、電極組立体3では、スパッタ粒子Pの発生による電極組立体3の特性の変化が抑制されている。また、先に
図7を参照して説明したように、スパッタ粒子Pのケース2の蓋部2b(たとえば正極端子5、負極端子6および絶縁リング7,8)への付着が抑制され得る。そのため、スパッタ粒子Pの発生による蓋部2bの特性の変化も抑制され得る。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0059】
たとえば上記実施形態では、各タブ積層体の端面が一つの照射面を有する構成について説明したが、各タブ積層体の端面が複数の照射面を有する構成であってもよい。
図8および
図9は、そのような変形例に係る電極組立体の一部を模式的に示す図である。
【0060】
図8は、溶接部Wが形成される前の状態の電極組立体の一部をZ軸方向から見た図である。
図8に示される例では、端面21bも、端面21aと同様に、タブ積層体21の基端部分に、XZ平面に平行な平行面21b1を有し、タブ積層体21の先端部分に、XZ平面に対して傾斜する傾斜面21b2を有する。傾斜面21b2は、照射面Aを有する。この照射面Aを含む第1平面H1を挟んでタブ積層体21の反対側に位置するとともに、電極本体20の側面Sを含む第2平面H2を挟んで電極本体20の反対側に位置する領域Rにおいて、第1平面H1と、第2平面H2とのなす角度は、上述の角度θである。端面21aが有する照射面Aと、端面21bが有する照射面Aとは、XZ平面を挟んで面対称な位置にある。タブ積層体21の先端から電極本体20に向かうにつれて、両照射面Aの離間距離は大きくなっている。
【0061】
また、端面25bも、端面25aと同様に、タブ積層体25の基端部分に、XZ平面に平行な平行面25b1を有し、タブ積層体25の先端部分に、XZ平面に対して傾斜する傾斜面25b2を有する。傾斜面25b2は、照射面Aを有する。この照射面Aを含む第1平面H1を挟んでタブ積層体25の反対側に位置するとともに、第2平面H2を挟んで電極本体20の反対側に位置する領域Rにおいて、第1平面H1と、第2平面H2とのなす角度は、上述の角度θである。端面25aが有する照射面Aと、端面25bが有する照射面Aとは、XZ平面を挟んで面対称な位置にある。タブ積層体25の先端から電極本体20側に向かうにつれて、両照射面Aの離間距離は大きくなっている。
【0062】
図9は、溶接部Wが形成された後の状態の電極組立体の一部をZ軸方向から見た図である。
図9に示されるように、タブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25b(の傾斜面21a2,21b2,25a2,25b2)から内側に溶接部Wがそれぞれ形成されている。領域Rにおいて、第1平面H1と、第2平面H2とのなす角度は、上述の角度θである。
【0063】
このように、タブ積層体21の端面21a,21bの各々が有する照射面AにエネルギービームBを照射して溶接部Wを形成することで、たとえば端面21a,21bの一方の端面が有する照射面AにのみエネルギービームBを照射して溶接部Wを形成する場合よりも、確実に溶接を行うことができる。たとえば、タブ積層体21において、各タブ14bがY軸方向にずれて積層されている場合、端面21a,21bの一方の端面の溶接のみでは、一方の端面において全てのタブ14bが十分に溶接されない可能性がある。この場合、他方の端面も溶接することで、すべてのタブ14bを確実に溶接することが可能になる。同様に、タブ積層体25の端面25a,25bの各々が有する照射面AにエネルギービームBを照射して溶接部Wを形成することで、たとえば端面25a,端面25bの一方の端面が有する照射面AにのみエネルギービームBを照射して溶接部Wを形成する場合よりも、確実に溶接を行うことができる。
【0064】
なお、上記のようにタブ積層体21,25の各々における2つの照射面Aに溶接部Wを形成して溶接するのではなく、タブ積層体21,25の端面21b,25bにおけるXZ平面に平行な面(
図8に示される例では端面21b,25bにおける平行面21b1,25b1)にエネルギービームBを照射して溶接部Wを形成することも考えられる。しかしながら、この場合、端面21bの平行面21b1と端面25bの平行面25b1とが平行であるので、端面21b,25bのうち一方の端面で発生したスパッタ粒子が飛散して他方の端面に付着し、電極組立体の特性が変化してしまう可能性がある。これに対し、端面21b,25bの傾斜面21b2,25b2が有する照射面AにエネルギービームBを照射して溶接部Wを形成すれば、端面21b,25bのうち一方の端面の照射面Aは、他方の端面と平行ではなくなる。よって、端面21b,25bのうち一方の端面の照射面Aにおいて発生して飛散したスパッタ粒子の他方の端面への付着が抑制される。
【0065】
端面21b,端面25bのうち一方の端面の照射面Aで発生して飛散したスパッタ粒子の他方の端面への付着を抑制するために設定される上述の角度θは、Y軸方向におけるタブ積層体21,25間の距離を考慮して設定されてもよい。たとえば、端面21b,端面25bのうち一方の端面が有する照射面Aに対して垂直な方向(照射面Aの正面方向)に向かって照射面Aを投影した場合に、投影された面と、他方の端面とが重ならないように、角度θが設定されてよい。
【0066】
また、電極組立体において、電極本体の側面から突出するタブ積層体の端面全体がXZ平面に対して傾斜していてもよい。
図10および
図11は、そのような変形例に係る電極組立体の一部を模式的に示す図である。
【0067】
図10は、溶接部Wが形成される前の状態の電極組立体の一部をZ軸方向から見た図である。
図10に示される例では、タブ積層体21においてZ軸方向およびX軸方向に沿って延在する端面21c,21dが、いずれもXZ平面に対して傾斜している。端面21cと端面21dとは平行な面であってよい。端面21eは、端面21c,21d間に設けられる。端面21eは、YZ平面に平行な面であってよい。端面21cは、タブ積層体21の先端部分に、照射面Aを有する。この照射面Aを含む第1平面H1を挟んでタブ積層体21の反対側に位置するとともに、電極本体20の側面Sを含む第2平面H2を挟んで電極本体20の反対側に位置する領域Rにおいて、第1平面H1と、第2平面H2とのなす角度は、上述の角度θである。同様に、タブ積層体25においてZ軸方向およびX軸方向に沿って延在する端面25c,25dが、いずれもXZ平面に対して傾斜している。端面25cと端面25dとは平行な面であってよい。端面25eは、端面25c,25d間に設けられる。端面25eは、YZ平面に平行な面であってよい。端面25cは、タブ積層体25の先端部分に、照射面Aを有する。この照射面Aを含む第1平面H1を挟んでタブ積層体25の反対側に位置するとともに、電極本体20の側面Sを含む第2平面H2を挟んで電極本体20の反対側に位置する領域Rにおいて、第1平面H1と、第2平面H2とのなす角度は、上述の角度θである。
【0068】
図11は、溶接部Wが形成された後の状態の電極組立体の一部をZ軸方向から見た図である。
図11に示されるように、タブ積層体21,25の端面21c,25cから内側に溶接部Wがそれぞれ形成されている。領域Rにおいて、溶接部Wの外表面を含む第1平面H1と、電極本体20の側面Sを含む第2平面H2とのなす角度は、上述の角度θである。