(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
高度成長時代以来建築・土木関連など多くの産業でコンクリートが使用されてきた。コンクリートと他の部材との接着は、釘、ボルトなどが用いられていた。これらの方法は、比較的作業が簡単であるが、点で接着しているため、力が一点に集中してしまう。力を分散させるためには面での接着が望ましかった。また、接合部に突起や肉盛りが表れるため、美観が損なわれる問題が発生していた。これらの問題を解決するためにコンクリートとの接着には、エポキシ系接着剤が使用されている。しかし、エポキシ系接着剤は、接着剤が硬化するまでに時間を要するために、コンクリートに他の基材を貼り合わせた後、長時間固定しなくてはならなかったり、固定しなかった場合、剥がれ落ちる等の問題を抱えていた。
【0003】
一方、近年、電磁誘導加熱方式を用いた接着剤の溶融装置や電磁誘導加熱接着シート(特許文献1、2)などが開発されている。電磁誘導加熱とは、電磁誘導加熱装置のコイルに高周波の交流電流を流すことにより交流磁界を発生させて、磁界中の導電物質の金属内に渦電流を発生させて、この渦電流に基づくジュール熱で導電物質を発熱させる加熱方法である。コイルに流す交流の周波数を高くする程、磁界の変化が速くなり、それに基づく渦電流が大きくなって、加熱時間を短くすることが出来る。
この電磁誘導加熱方式により、厚さ6〜200μmの金属(発熱)層の両面にホットメルト(熱可塑性)接着剤を塗布することにより製造したテープ(シート)を、接着すべき被着体に介在させた後、電磁誘導加熱装置により短時間で金属層を加熱し、ホットメルト接着剤を溶融させることができ、電磁誘導加熱装置を止めることによりホットメルト接着剤が固化して、ホットメルト接着テープを介して被着体同士を接着することができる。
また、再度電磁誘導装置を用いて接着剤層を加熱させホットメルト接着テープ(シート)を再加熱させて、ホットメルト接着剤層が固化する前に被着体同士を引き剥がすことで、解体(剥離)することが出来る(特許文献3)。
さらに、コンクリートに対する電磁誘導加熱接着用途において、ポリアミド系ホットメルト接着剤やポリエステル系ホットメルト接着剤を用いることで強固に接着した積層部材、解体方法が提案されている(特許文献4)。
しかしながら、これらの特許文献で提案されている電磁誘導加熱用接着シートの金属層は、取扱いの面から主にアルミ箔が選択されている。アルミ箔は化学的に非常に活性な金属であり、酸、アルカリ、海水等の耐食性に劣るため、アルミ箔を用いた従来の接着シートでは、近年環境問題となっている酸性雨や海水に晒される屋外での使用や、コンクリート等の強アルカリ性被着体への使用において、アルミニウムの腐食が進行し、接着力が著しく低下するという問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
<金属層(A)>
本発明の金属層とは、電磁誘導加熱装置により高周波磁束によって渦電流が誘導され、ジュール熱が発生することにより、熱可塑性ホットメルト接着層を軟化ないし溶融させ、熱可塑性ホットメルト接着層とコンクリート等の被着体とを接着させるためのものである。本発明の金属層(A)は、少なくとも鉄、クロム、及びニッケルを含むステンレス鋼であることを特徴とする。金属層にステンレス鋼を用いることで、効率よく電磁誘導加熱を行うことが出来る。また、少なくとも鉄、クロム、及びニッケルを含むステンレス鋼を用いることで、優れた耐酸腐食性、耐アルカリ腐食性、及び耐塩水腐食性を付与することができる。特に、被着体がコンクリート類である場合、セメントが硬化時に発生する水酸化カルシウム等のアルカリ成分により、金属層が腐食する懸念もあるため、金属層に耐アルカリ性を付与することが重要である。
ステンレス鋼は、鉄にクロムを添加することで、表面に非常に薄い酸化皮膜(不動態皮膜)を形成し、周辺環境との反応を抑えるため、耐食性が向上する。さらに、ニッケルを含むことで、特に酸に対する耐食性が向上する。つまり、オーステナイト系のステンレス鋼を用いることが好ましい。金属層に含まれる成分として、鉄、クロム及びニッケル以外にも、マンガン、亜鉛、錫、鉛、マグネシウム、銅、チタン、ジルコニウム、シリコンなどが適宜含まれていても良く、マンガンが含まれることがより好ましい。
【0018】
これら金属層は、フィルム状にしたものを好適に用いることができる。本発明の金属層の厚みは、1μm以上1000μm以下が好ましく、10μm以上500μm以下がより好ましく、さらに好ましくは20μm以上100μm以下である。1μm未満又は1000μmよりも厚い場合、電磁誘導による加熱が不足したり、加熱に時間がかかることで、熱可塑性ホットメルト層が溶融する温度にならず、接着しない場合がある。
【0019】
<熱可塑性ホットメルト接着剤層(C1)(C2)>
本発明の熱可塑性ホットメルト接着剤層とは、ABS、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン、プロピレン−エチレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/オクテン共重合体などのポリオレフィン、シクロペンタジエンとエチレン及び/又はプロピレンとの共重合体などの環状ポリオレフィン、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体などの極性基が導入されたポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、アクリル酸変性ポリプロピレン、スチレン系エラストマー、ゴムなどの酸変性ポリプロピレンなどがあげられる。好ましくは、ポリアミドである。
【0020】
本発明の熱可塑性ホットメルト接着剤には、接着性を向上させる為に粘着付与剤などを添加しても良い。主な粘着付与剤は、特に限定されないがフェノール樹脂、変性フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、キシレンフェノール樹脂、シクロペンタジエン−フェノール樹脂、キシレン樹脂、脂肪族系、脂環族系、芳香族系等の石油樹脂、水素添加された脂肪族系、脂環族系、芳香族系等の石油樹脂、フェノール−変性石油樹脂、ロジンエステル樹脂、水素添加されたロジンエステル樹脂、低分子量ポリスチレン系樹脂、テルペン樹脂、水素添加されたテルペン樹脂などの粘着付与樹脂が含まれていることが好ましい。粘着付与樹脂は、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
本発明の熱可塑性ホットメルト接着剤は、低粘度化するなどの目的でワックスなどを添加しても良い。主なワックスは、特に限定されないが、カルナバワックス、キャンデリアワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、これらのワックスの酸化物、エチレンーアクリル酸共重合体、エチレンーメタクリル酸共重合体等が挙げられる。ワックスは、単独もしくは2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0022】
本発明の熱可塑性ホットメルト接着剤層は、フィルム状にしたものを好適に用いることができる。本発明の熱可塑性ホットメルト接着剤層の厚さは、10μm以上500μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは20μm以上300μm以下である。熱可塑性ホットメルト接着剤層の厚さが10μm未満又は500μmより厚い場合は、接着不良が発生する場合がある。
【0023】
熱可塑性ホットメルト接着剤層の添加剤として、必要により各種のものが使用可能である。例えば、着色剤、ブロッキング防止剤、無機フィラー、酸化防止剤、充填剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤や重金属不活性化剤などである。
【0024】
着色剤としては、赤、青、緑、黄などの慣用公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよく、例えば、モノアゾ系、ジズアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系、フタロシアニン系、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント、ペリレン系、モノアゾ系、縮合アゾ系、イソインドリノン系、酸化チタン、カーボンなどが挙げられる。
【0025】
ブロッキング防止剤としてはシリコーン、エルカ酸アミドやオレイン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド、ステアリン酸アミドやベヘニン酸アミドなどの飽和脂肪酸アミドなどが挙げられる。
【0026】
無機フィラーとしては、金属、金属酸化物及び金属水酸化物など粒子、繊維状などが挙げられる。具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、珪酸カルシウム、チタン酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム繊維、フレーク状ガラス、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ワラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、アルミナ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、カーボンナノチーブ、グラファイト、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリナイト、アパタイトなどが挙げられる。
【0027】
酸化防止剤としては、高分子量ヒンダード多価フェノール、トリアジン誘導体、高分子量ヒンダード・フェノール、ジアルキル・フェノール・スルフィド、2,2−メチレン−ビス−(4−メチル−6−第三−ブチルフェノール)、4,4−メチレン−ビス−(2,6−ジ−第三−ブチルフェノール)、2,6−ジ−第三−ブチルフェノール−p−クレゾール、2,5−ジ−第三−ブチルヒドロキノン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノン、ジブチル・ジチオカルバミン酸ニッケル、1−オキシ−3−メチル−4−イソプロピルベンゼン、4,4−ブチリデンビス−(3−メチル−6−第三−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
【0028】
充填剤としては、湿式シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、モンモリロナイト、マイカ、スメクタイト、有機化モンモリロナイト、有機化マイカ、有機化スメクタイト等が挙げられる。
【0029】
難燃剤としては、燐含有化合物系難燃剤、ハロゲン含有化合物系難燃剤、スルホン酸金属塩系難燃剤、珪素含有化合物系難燃剤等が挙げられる。
【0030】
可塑剤としては、フタル酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、脂肪族一塩基酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、テトラヒドロフタル酸エステル系可塑剤、グリコール系可塑剤、及びビスフェノールAアルキレンオキサイド誘導体などが挙げられる。
【0031】
帯電防止剤としては、プラスチックの帯電防止剤として汎用されているものでよく、具体的には、非イオン界面活性剤(例えば、多価アルコールの脂肪酸エステル、アルキルアミンのエチレンオキサイド付加物、及びアルキルアミンのエチレンオキサイド付加物の脂肪酸エステルなど)、陰イオン界面活性剤(例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩など)、陽イオン界面活性剤(例えば、脂肪族アミン塩、4級アンモニウム塩など)、両性界面活性剤(例えばイミダゾリン型、ベタイン型など)が挙げられる。
【0032】
光安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物及びベンゾエイト系化合物などが挙げられる。
【0033】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0034】
重金属不活性化剤としては、サリチル酸誘導体、ヒドラジド誘導体又はシュウ酸アミド誘導体などが挙げられる。
【0035】
上記添加剤は、1種を単独で、又は必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。
【0036】
<熱硬化した接着剤層(B)>
本発明の電磁誘導加熱用ホットメルト接着シートは、金属層(A)と熱可塑性ホットメルト接着剤層(C1)との間、及び/又は、金属層(A)と熱可塑性ホットメルト接着剤層(C2)との間に、膜厚や組成等について各々独立に、熱硬化した接着剤層(B)を有していてもよい。熱硬化した接着剤層(B)を有することで、製造時に金属層(A)に皺が発生することなく製造できる、第2の熱可塑性ホットメルト接着剤層(C2)を作製時にバックアップロールに貼り付くことがない、金属層(A)に直接接着することが出来なかったオレフィンなどを熱可塑性ホットメルト接着剤層(C1)(C2)として利用できるなどの効果がある。
本発明では、金属層(A)と熱可塑性ホットメルト接着剤層(C1)との間に有する熱硬化した接着剤層(B)を熱硬化した接着剤層(B1)とし、金属層(A)と第2の熱可塑性ホットメルト接着剤層(C2)との間に有する熱硬化した接着剤層(B)を熱硬化した接着剤層(B2)とする。
【0037】
本発明の熱硬化した接着剤層は、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂等の官能基を有する主剤と、硬化剤とをベース樹脂とした熱硬化性接着剤により形成されることが好ましい。
【0038】
(主剤)
ポリエステル樹脂として、モノマー組成の酸成分としては、例えばジメチルテレフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸などの芳香族二塩基性酸や、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、ピメリン酸、1,6−ヘキサンジカルボン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸などの脂肪族二塩基性酸と、グルコール成分としては、エチレングリール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタジオール、1,5−ペンタジオール、3−メチルペンタジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのグリコールもしくはその残基形成誘導体もしくはカプロラクトンなどのα,ω−オキシ酸もしくはその残基形成誘導体よりなる飽和二官能性モノマーとを適宜選択して常法により共重合して得ることが可能である。
【0039】
ポリウレタン樹脂としては、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリマーポリオール等のポリオールとポリイソシアネートからなるイソシアネート化合物を上記ポリオール過剰で反応させて得られるが、上記エーテル系ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、エチレンジアミン、ブチレンジアミン等のアミン類等からなる活性水素2個以上を有する低分子量活性水素化合物の1種又は2種以上の存在下に、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドの1種又は2種以上を開環重合させて得られる重合体が挙げられる。
【0040】
上記ポリエステル系ポリオールとしては、例えばアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸等の多塩基性酸と、例えばビスフェノールA、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、又、例えば、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン等のラクトンの重合体、又、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等のヒドロキシカルボン酸と上記多価アルコールなどの縮合物が挙げられる。
【0041】
上記ポリマーポリオールとしては、例えば前記ポリエーテル系ポリオールないしはポリエステル系ポリオールにアクリロニトリル、スチレン、メチル(メタ)アクリレートなどのエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させたものや、1,2−もしくは1,4−ポリブタジエンポリオール、又はこれらの水素添加物が挙げられる。
【0042】
上記ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート類、又、上記ジイソシアネート類の3量体、トリフェニルメタントリイソシアネート等のトリイソシアネート類、又、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等の混合物であるクルードMDIなどが挙げられる。これらのポリイソシアネートは1種類で使用されてもよいが、2種類以上を併用してもよい。
上記水酸基末端ポリウレタンポリマーの水酸基1に対し、イソシアネート化合物のイソシアネート基2〜8となるように配合されて上記接着剤として使用される。
【0043】
エポキシ樹脂としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有するものであればよく、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレートエポキシ樹脂、アクリル酸変性エポキシ樹脂(エポキシアクリレート)、リン含有エポキシ樹脂及びこれらハロゲン樹脂(臭素化エポキシ樹脂など)や水素添加物などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。臭素化エポキシ樹脂などは、接着剤に難燃性が要求される場合に、特に有効である。アクリル酸変性エポキシ(エポキシアクリレート)は、感光性を有するため、エポキシ系樹脂組成物に光硬化性を付与するのに有効である。
【0044】
(硬化剤)
硬化剤としては、主剤の硬化に用い得るものであれば、特に制限なく使用することが可能であるが、例えば、イソシアネート系硬化剤、脂肪族アミン系硬化剤、脂環式アミン系硬化剤、芳香族アミン系硬化剤、酸無水物硬化剤、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素アミン錯塩、イミダゾール化合物などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。硬化剤の配合量は主剤に応じて定めることができる。
【0045】
熱硬化接着剤層の添加剤としてはシランカップリング剤、酸化防止剤等などが挙げられる。
【0046】
シランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセチルシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトエチルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシランなどが挙げられる。
【0047】
酸化防止剤としては、上記記載の熱可塑性ホットメルト接着剤層に用いられる酸化防止剤が用いられる。
【0048】
本発明の熱硬化性接着剤は、各種の溶剤を含有しても良い。例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトンなどのケトン系化合物、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソランなどの環状エーテル系化合物、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系化合物、トルエン、キシレンなどの芳香族系化合物、カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレンコールモノメチルエーテルなどのアルコール系化合物などが挙げられる。これらは、単独でも使用しても、2種類以上を併用しても良い。
【0049】
熱硬化した接着剤層(B)の形成方法としては、熱硬化性接着剤を、フィルム状の金属層(A)又はフィルム状の熱可塑性ホットメルト接着剤層に塗工し、乾燥、熱硬化させることが好ましい。また、金属層(A)に皺が発生することを防ぐ観点から、熱硬化性接着剤は熱可塑性ホットメルト接着剤フィルムに塗工して形成することが好ましい。
熱硬化性接着剤を塗工するための装置としては、コンマコーター、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター等が挙げられる。熱硬化性接着剤の塗布量は、乾燥膜厚で1〜50μm程度であることが好ましく、2〜25μmがより好ましく、さらに好ましくは2〜10μmである。
【0050】
熱硬化した接着剤層(B)としては、金属層(A)や熱可塑性ホットメルト接着剤層への密着性、耐熱性、耐水性の面より、主剤としてポリエステル樹脂を用いることが好ましい。また、硬化剤として芳香族系ポリイソシアネート硬化剤を用いることがより好ましい。
【0051】
<被着体(F1)(F2)>
本発明の被着体は、厚みが1mm以上であれば特に限定されず、コンクリート、プラスチック、紙、紙とプラスチックの複合体、金属板、タイル、舗装材、木材、布、皮革、ゴム、ガラス等を適宜用いることができる。
【0052】
被着体にコンクリート層を用いた場合について説明する。コンクリート層とは、セメントに水を加えて塗り混ぜたペーストを、時間をかけて固めた塊であり、骨材として砂などの細骨材、砂利などの粗骨材を含有してもよい。コンクリートは、セメントの溶解析出反応で硬化する。セメントは、カルシウム、珪素、アルミニウム、鉄などの元素から構成されている。水と接すると、カルシウムイオンが溶けだして、水溶液中のカルシウムイオンが増加する。主成分である珪酸(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)は、それぞれのイオンがお互いに重合しあった安定な物質(ポリマー)として存在し、カルシウムイオンとは反応しない。しかし、セメントの中では、珪酸イオンとアルミのイオン(アルミナ−イオン)は比較的反応し易く、単量体で存在し、周りのカルシウムイオンが溶脱したことにより、溶液中に溶け出して、カルシウムイオンや水分子と反応して、水に溶けにくいセメント水和物(C−S−H:エトリンガイト)を生成し、余ったカルシウムイオンは、水酸化カルシウムとして析出する(この時発生する水酸化カルシウムが、金属層を劣化させる)。水和物粒子は互いに結合して硬化が始まる。
粒子間の結合は、分子間引力や水素結合で保持されていると考えられ、C−S−Hは、水酸化カルシウムと異なり、0.1μm以下の微細な結合であり、単位体積当たりの粒子同士の結合面積が著しく大きいため、高い結合力を発揮し、硬化体の強度を発揮する。
【0053】
本発明の被着体の厚みは、1mm以上であるが、さらに望ましくは2mm以上である。また、金属層を効果的に発熱させ、熱可塑性ホットメルト接着剤層を十分に溶融させるためには、電磁誘導加熱により加熱する側の被着体の厚みは500mmよりも薄いことが好ましく、150mm以下であることがより好ましい。
【0054】
<接着構造物の製造方法、剥離方法>
本発明の接着構造物は、少なくとも鉄、クロム、及びニッケルを含むステンレス鋼である金属層(A)と、熱可塑性ホットメルト接着剤層(C1)と、を有する電磁誘導加熱用ホットメルト接着シートの熱可塑性ホットメルト接着剤層(C1)と、厚みが1mm以上の被着体(F1)と、が接着した構造物であり、金属層(A)の一方の面に、第2の熱可塑性ホットメルト接着剤層(C2)を介して、第2の被着体(F2)が接着していてもよい。
本発明の接着構造物は、金属層(A)および熱可塑性ホットメルト接着剤層(C1)を有する片面ホットメルト接着シートのホットメルト接着剤層と、被着体(F1)と、を張り合わせ、被着体(F1)または金属層(A)の外側から電磁誘導加熱装置で加熱、接着することで得ることができる。もしくは、金属層(A)の片面に熱可塑性ホットメルト接着剤層(C1)を有し、もう一方の面に第2の熱可塑性ホットメルト接着剤層(C2)を有する両面ホットメルト接着シートを、被着体(F1)および(F2)で挟み、被着体(F1)または被着体(F2)の外側から電磁誘導加熱装置で加熱、接着することで得ることができる。また、得られた接着構造物について、被着体(F1)または(F2)の外側から電磁誘導加熱装置で加熱し、軟化ないし溶融した状態で力を加えることで、被着体(F1)と被着体(F2)とを剥がすことができる。金属層(A)と、接着剤層(C1)または(C2)と、の間には、熱硬化した接着剤層(B)が存在してもよい。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例中、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ表す。
【0056】
<金属層(フィルム)>
用いた金属層(A)中の成分について下記方法にて分析を行った。表1に用いた金属層の一覧と組成を示す。
(金属層の組成分析方法)
金属層をフェノールで分解後、0.1μm孔のフィルターを用いてろ過し、ろ液をICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析装置内に導入し、ネブライザーで露上にして小さなミストのみプラズマ内に吹き込み、質量分析を行った。
【0057】
【表1】
【0058】
<熱可塑性ホットメルトフィルムの調整>
熱可塑性ホットメルト接着剤層として、押出しラミネーターを用いて、下記表2の樹脂1〜6を離型処理したPETフィルム(厚み:25μm)に積層し、巻取部で巻取り、巻物にして使用した。以下に加工条件を示した。
《加工条件》
押出しラミネーター:ムサシノキカイ製400M/MテストEXTラミネーター
ダイ直下樹脂温度:140〜240℃(樹脂1〜6のMFR等により適宜調整した)
加工速度:30m/分
Tダイ幅:400mm
冷却ロール表面温度:20℃
【0059】
【表2】
【0060】
<熱硬化性接着剤の製造方法>
(熱硬化性接着剤1の調整)
主剤TM−K55と硬化剤CAT-10Lとを質量比17/3の割合で配合し、固形分が30%になるように酢酸エチルで希釈した。
・主剤:TM−K55(ポリエステル樹脂 不揮発分30% 東洋モートン(株)社製)
・硬化剤:CAT-10L(芳香族系ポリイソシアネート 不揮発分52.5% 東洋モートン(株)社製)
【0061】
(熱硬化性接着剤2の調整)
主剤LIS−073−50Uと硬化剤CR−001とを質量比17/3の割合で配合し、固形分が30%になるように酢酸エチルで希釈した。
・主剤:LIS−073−50U(ウレタン樹脂 不揮発分30% 東洋モートン(株)社製)
・硬化剤:CR−001(脂肪族系ポリイソシアネート 不揮発分70% 東洋モートン(株)社製)
【0062】
<被着体>
【表3】
【0063】
<接着シート及び接着構造物の製造>
[実施例1]
(構造物1の製造)
熱可塑性ホットメルト接着剤層であるアドマーSE810(樹脂1)フィルムのコロナ処理面に、熱硬化性接着剤1を塗工量が3〜10g/m
2(Dry)になるようにグラビアコーターで塗工、乾燥した。この時、接着剤の温度は30〜45℃程度に加熱した。乾燥条件は80℃1分であった。アドマーSE810(樹脂1)フィルム上の接着剤層とNSS305M1(金属1)とを圧着ロール(60℃に加熱)を用いて圧着した。同様にして、アドマーSE810(樹脂1)フィルムに接着剤1層を形成し、接着剤1層とNSS305M1(金属1)のもう1方の面とを圧着した。その後、40℃4日間の環境下でエージングを行い、接着剤1を硬化し、両面ホットメルト接着シート1を得た。
得られた両面ホットメルト樹脂シート1を、被着体1(コンクリート)と被着体1(コンクリート)との間に挟み、電磁誘導加熱装置(アキレス社製、オールオーバー接着装置)を被着体1に押し当て、100kHzで3秒間加熱した。加熱終了後、熱可塑性ホットメルト接着剤層が室温に戻るまで、5分間放置した。
【0064】
[実施例2〜24]
(構造物2〜24の製造)
表4に記載の構成、材料に変更した以外は実施例1と同様にして、接着構造物2〜24を製造した。
【0065】
[実施例25]
(構造物25の製造)
熱可塑性ホットメルト接着剤層であるアドマーSE810(樹脂1)フィルムのコロナ処理面に、接着剤1(製造方法は上記)を塗工量が3〜10g/m
2(Dry)になるようにグラビアコーターで塗工、乾燥した。この時、接着剤の温度は30〜45℃程度に加熱した。乾燥条件は80℃1分であった。アドマーSE810(樹脂1)フィルム上の接着剤層とNSS305M1(金属1)とを圧着ロール(60℃に加熱)を用いて圧着した。その後、40℃4日間の環境下でエージングを行い、ホットメルト接着シート25を得た。
得られた片面ホットメルト樹脂シート25の熱可塑性ホットメルト接着剤層を、被着体1(コンクリート)に貼り付け、電磁誘導加熱装置(アキレス社製、オールオーバー接着装置)を被着体1に押し当て、100kHzで3秒間加熱した。加熱終了後、熱可塑性ホットメルト接着剤層が室温に戻るまで、5分間放置した。
【0066】
[実施例26]
(構造物26の製造)
熱可塑性ホットメルト接着剤層であるアドマーSE810(樹脂1)フィルムのコロナ処理面と、NSS305M1(金属1)とを圧着ロール(200℃に加熱)を用いて圧着した。同様にして、別のアドマーSE810(樹脂1)フィルムと、アルノーブルZR(金属1)のもう1方の面とを圧着した。その後、熱可塑性ホットメルト接着剤層が室温に戻るまで、5分間放置し、両面ホットメルト接着シート26を得た。
得られた両面ホットメルト樹脂シート26を、被着体1(コンクリート)と被着体1(コンクリート)との間に挟み、電磁誘導加熱装置(アキレス社製、オールオーバー接着装置)を被着体1に押し当て、100kHzで3秒間加熱した。加熱終了後、熱可塑性ホットメルト接着剤層が室温に戻るまで、5分間放置した。
【0067】
[実施例27、比較例1〜2]
(構造物27〜29の製造)
表4に記載の構成、材料に変更した以外は実施例26と同様にして、接着構造物27〜29を製造した。
ただし、実施例26、27は参考例である。
【0068】
<接着構造物の評価>
得られた構造物1〜24、26〜29について、接着力(通常試験)、耐腐食性(耐酸、耐塩水)、耐腐食性(耐アルカリ)、剥離性の評価を下記の方法で行った。結果を表5に示す。
【0069】
[接着力(通常試験)]
接着強度は、引張り試験機(株式会社エー・アンド・エー社製、商品名RTA−100)を用いて、剥離速度300mm/分でせん断強度を測定し(測定温度:23℃、湿度50%)、以下の基準で評価した。評価「D」以外であれば、実際の使用時に特に問題はない。
「A」: 15N/25mm以上(基材破壊含む)
「B」: 10N/25mm以上〜15N/25mm未満
「C」: 5N/25mm以上〜10N/25mm未満
「D」: 5N/25mm未満
【0070】
[接着力(耐酸腐食性)]
接着構造物の端部の金属層及び被着体にカッター等で、各々2mm程度の傷を付けた後、塩酸水溶液(塩酸:10質量%)に浸漬し、23℃で3日間保持した後、上記接着力(通常試験)と同様に接着力を評価した。
【0071】
[接着力(耐塩水腐食性)]
接着構造物の端部の金属層及び被着体にカッターで、各々2mm程度の傷を付けた後、食塩水(食塩:3質量%)に浸漬し、35℃で3日間保持した後、上記接着力(通常試験)と同様に接着力を評価した。
【0072】
[接着力(耐アルカリ腐食性)]
接着構造物の端部の金属層及び被着体にカッターで、各々2mm程度の傷を付けた後、水酸化カルシウム溶液(水酸化カルシウム:5質量%)に浸漬し、23℃で3日間保持した後、上記接着力(通常試験)と同様に接着力を評価した。
【0073】
[剥離性]
被着体(F1)の外側から電磁誘導加熱により加熱し、固体状態にある熱可塑性ホットメルト接着剤層を軟化ないし溶融させ、被着体と第2の被着体とを剥がす。非常に綺麗に剥がれる場合を「A」、綺麗に剥がれる場合を「B」、なんとか剥がれる場合を「C」、綺麗に剥がれない場合を「D」とした。評価「D」以外であれば、実際の使用時に特に問題ない。
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
本発明の電磁誘導加熱用ホットメルト接着シートを使用した場合は、表5に示すように、耐酸性、耐海水性、及び耐アルカリ性に優れ、屋外での使用やコンクリート被着体への使用においても優れた接着力、剥離性を示した(実施例1〜24、26〜27)。また、ステンレス鋼がマンガン含む場合は、特に優れた耐アルカリ腐食性を示した(実施例1、3〜24、26)。これに対して、本発明以外の電磁誘導加熱用ホットメルト接着シートを使用した場合は、腐食性試験後の接着力に難があり、使用困難であることが分かる(比較例1、2)。