(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
帯状のインナーライナーのそれぞれの側縁部にチェーファーを貼り合わせるチェーファーインナーアッセンブル工程において用いられるインナーライナーのセンタリング装置であって、
搬送中の前記インナーライナーが架け渡された一対のガイドローラーと、
前記一対のガイドローラーの間に設けられており、搬送中の前記インナーライナーの幅方向の位置を調整して前記インナーライナーをセンタリングするセンタリング板と、
前記センタリング板の下方に設けられており、前記センタリング板上を搬送される前記インナーライナーに下方からエアーを吹き付ける送風機とを備えていることを特徴とするセンタリング装置。
前記ガイドローラーの上端が前記センタリング板の上面より60〜100mm高い位置となるように、前記ガイドローラーが配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のセンタリング装置。
搬送中のインナーライナーをセンタリング装置でセンタリングした後、センタリングされた前記インナーライナーとチェーファーとを貼り合わせてチェーファーインナーアッセンブル材料を製造するチェーファーインナーアッセンブル装置であって、
前記センタリング装置に、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のセンタリング装置が用いられていることを特徴とするチェーファーインナーアッセンブル装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した工程において製造されたアッセンブル材料に波打ちが発生することがある。このような波打ちが発生したアッセンブル材料を用いると、次工程であるタイヤ成形工程においてジョイント不良が生じて製造設備が停止したり、ディフェクト(欠陥)が発生してタイヤがスクラップとなったりする恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、波打ちの発生が十分に抑制されたアッセンブル材料を製造し、タイヤ成形工程におけるジョイント不良の発生を防止する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、以下に記載する発明により、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
請求項1に記載の発明は、
帯状のインナーライナーのそれぞれの側縁部にチェーファーを貼り合わせるチェーファーインナーアッセンブル工程において用いられるインナーライナーのセンタリング装置であって、
搬送中の前記インナーライナーが架け渡された一対のガイドローラーと、
前記一対のガイドローラーの間に設けられており、搬送中の前記インナーライナーの幅方向の位置を調整して前記インナーライナーをセンタリングするセンタリング板と、
前記センタリング板の下方に設けられており、前記センタリング板上を搬送される前記インナーライナーに下方からエアーを吹き付ける送風機とを備えていることを特徴とするセンタリング装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、
前記送風機が、前記センタリング板の中央部分の下方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のセンタリング装置である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、
前記送風機の風量が、0.088〜0.177m
3/secであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセンタリング装置である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、
前記ガイドローラーの上端が前記センタリング板の上面より60〜100mm高い位置となるように、前記ガイドローラーが配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のセンタリング装置である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、
前記一対のガイドローラーの間隔が、400〜800mmであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のセンタリング装置である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、
搬送中のインナーライナーをセンタリング装置でセンタリングした後、センタリングされた前記インナーライナーとチェーファーとを貼り合わせてチェーファーインナーアッセンブル材料を製造するチェーファーインナーアッセンブル装置であって、
前記センタリング装置に、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のセンタリング装置が用いられていることを特徴とするチェーファーインナーアッセンブル装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、波打ちの発生が十分に抑制されたアッセンブル材料を製造し、タイヤ成形工程におけるジョイント不良の発生を防止する技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.発明に至る経緯
本発明者は、製造後のアッセンブル材料に波打ちが発生する原因について検討し、貼り合わされたチェーファーとインナーライナーがシュリンクする(縮む)量がそれぞれ異なり、シュリンク量の大きい方のゴム部材が起点となって波打ちが発生していると考えた。
【0016】
そして、一般に、ゴム部材のシュリンクは、高温のゴム部材が冷却された際や搬送中のゴム部材に抵抗が掛かって引き伸ばされた後に生じる。本発明者は、これらの原因のどちらが、チェーファーとインナーライナーを貼り合わせたアッセンブル材料に波打ちを生じさせているのか検討した。
【0017】
先ず、ゴム部材の冷却によるシュリンクについて検討したが、この冷却によるシュリンクはアッセンブル材料の波打ちには大きくは関係していなかった。
【0018】
具体的には、チェーファーは、トッピング(TOP)工程で熱入れされた後、電離放射線照射(EBR)工程、チェーファーカッティング工程を経てチェーファーインナーアッセンブル工程に供給されており、アッセンブル時には既に十分に冷却されてシュリンクしているため、貼り合わせ後においてさらにシュリンクする余地は殆どない(シュリンクのポテンシャルがない)ことが分かった。
【0019】
一方、インナーライナーについても同様に、インナーライナーカレンダーリング工程に配置されたクーリングドラムにより、アッセンブル時には既に十分に冷却されてシュリンクしているため、やはり、貼り合わせ後においてさらにシュリンクする余地は殆どない(シュリンクのポテンシャルがない)ことが分かった。
【0020】
このことから、本発明者は、アッセンブル材料の波打ちは、冷却によるシュリンクではなく、チェーファーもしくはインナーライナーに抵抗が掛かって引き伸ばされることにより生じたシュリンクが原因となっていると考えた。
【0021】
そして、チェーファーやインナーライナーに大きな抵抗が掛かる箇所を調べた結果、チェーファーの作製過程においては抵抗がほとんど掛からない一方で、インナーライナーの作製過程においては、貼り合わせ前にインナーライナーの位置合わせを行うセンタリング装置でインナーライナーに大きな抵抗が掛かっていることが分かった。
【0022】
即ち、
図4に示すように、このセンタリング装置1では、一対のガイドローラー11a、11bの間に配置されたセンタリング板12と呼ばれる鉄板の上にインナーライナーIを接触させながら搬送し、このセンタリング板12によりインナーライナーIのセンタリングを行う。このとき、センタリング板12との接触によりインナーライナーIに大きな抵抗が掛かり、この状態で搬送することによりインナーライナーIが引き伸ばされる。そして、このようにして引き伸ばされたインナーライナーIがチェーファーと貼り合わされてしまうと、貼り合せ後のインナーライナーに大きなシュリンクが発生して、アッセンブル材料に波打ちを生じさせていることが分かった。
【0023】
そこで、本発明者は、インナーライナーとセンタリング板との接点を少なくすることができれば、貼り合わせ後のシュリンクを小さくして波打ちの発生を防止できると考え、鋭意検討を行った結果、本発明のセンタリング装置を完成させるに至った。
【0024】
即ち、本発明のセンタリング装置は、センタリング板上を搬送されるインナーライナーに下方からエアーを吹き付ける送風機が設けられていることを特徴としており、このエアーの吹き付けにより、インナーライナーの一部をセンタリング板から浮き上がらせてインナーライナーのセンタリング板との接点を少なくすることができるため、センタリング中のインナーライナーに大きな抵抗が発生せず、貼り合わせ後におけるシュリンクの発生を防止することができる。
【0025】
2.センタリング装置
次に、本発明の一実施の形態に係るセンタリング装置を説明する。
図1は本実施の形態のセンタリング装置の模式的な斜視図である。
図1中の1はセンタリング装置、11a、11bはガイドローラー、12はセンタリング板、13は通風孔、14は送風機である。なお、Iはインナーライナーである。
【0026】
ガイドローラー11a、11bは、所定の間隔を隔てて設置されており、このガイドローラー11a、11bの間にセンタリング板12が設けられている。なお、ガイドローラー11a、11bの間隔は400〜800mmが好ましく、450〜600mmであればより好ましく、例えば500mmに設定される。
【0027】
インナーライナーIは、中央部が垂れ下がってセンタリング板12に接触するようにガイドローラー11a、11bに架け渡されており、センタリング板12がインナーライナーIの幅方向に沿って移動することによりインナーライナーIのセンタリングを行う。
【0028】
本実施の形態に係るセンタリング装置は、センタリング板12に通風孔13が設けられ、通風孔13の下方に送風機14が設置されている点において従来と異なる。送風機14は上方に向けて送風し、センタリング板12とインナーライナーIとの間にエアーを吹き込むことができる。
【0029】
本実施の形態によれば、送風機14がセンタリング板12とインナーライナーIとの間にエアーを吹き込むことにより、センタリング板12とインナーライナーIとの接点を少なくすることができるため、搬送中のインナーライナーIに大きな抵抗が掛かって引き伸ばされることを防止することができる。この結果、チェーファーと貼り合わされた後のインナーライナーIが大きくシュリンクすることがなく、アッセンブル材料の波打ちの発生を適切に防止することができる。
【0030】
なお、送風機14は、センタリング板12の中央部に設けられていることが好ましい。上記したように、インナーライナーIは、中央部が垂れ下がるようにガイドローラー11a、11bに架け渡されているため、この中央部において最もセンタリング板12と接触し易い。そこで、この位置に送風機14を設置してエアーを吹き込むことにより、効果的にインナーライナーIとセンタリング板12との接触を抑制することができる。
【0031】
そして、このようにセンタリング板12の中央部に送風機14を設けた場合、送風機14を1機設けるのみで、センタリング板12とインナーライナーIとの接点を十分に少なくすることができるため、設備コストや運転コストの軽減に貢献することができる。
【0032】
また、送風機14の風量は、インナーライナーIの搬送状況を考慮しながら調整することが好ましく、具体的には通常のインナーライナーの場合、0.088〜0.177m
3/secに設定する。0.100〜0.150m
3/secであればより好ましい。
【0033】
上記した送風機の設置に加えて、ガイドローラーの上端からセンタリング板の上面までの距離を従来よりも長くすることが好ましい。
【0034】
図2はこの実施の形態に係るセンタリング装置の模式的な斜視図である。本実施の形態においては、
図2に示すように、ガイドローラー11a、11bの下側に設けられた支持部材15a、15bを従来よりも高くして、ガイドローラー11a、11bがセンタリング板12の上面よりも60〜100mm高い位置、好ましくは75〜90mm高い位置に配置されるようにしている。
【0035】
これにより、インナーライナーIが搬送される位置を高くして、センタリング板12とインナーライナーIとの接点をさらに少なくすることができるため、インナーライナーIに掛かる抵抗をより小さくすることができる。
【0036】
例えば、センタリング板12の上面の高さが20mmの場合、ガイドローラー11a、11bの直径を300mm程度、支持部材15a、15bの高さを100mm程度にすることが好ましい。
【0037】
3.チェーファーインナーアッセンブル装置
次に、上記したセンタリング装置を備えたチェーファーインナーアッセンブル装置について説明する。
図3は本実施の形態に係るチェ−ファーインナーアッセンブル装置を説明する正面図である。
【0038】
図3に示すように、このアッセンブル装置100は、インナーライナー巻き出し機構2から巻き出されたインナーライナーIをセンタリング装置1に搬送し、センタリング装置1においてセンタリングする。
【0039】
そして、センタリングされた後のインナーライナーIと、チェーファー巻き出し機構3から巻き出されたチェーファーCとを、アッセンブル機構4において貼り合わせることによりアッセンブル材料CIを製造し、製造されたアッセンブル材料CIを巻き取り機構5で巻き取る。
【0040】
本実施の形態に係るアッセンブル装置100においては、センタリング装置1においてインナーライナーIをセンタリングする際に、インナーライナーIとセンタリング板12との間にエアーを吹き込んで接点を少なくしているため、インナーライナーIが引き伸ばされた状態でチェーファーCと貼り合わされることがない。このため、貼り合わされた後のアッセンブル材料CIにおいてもシュリンクが発生せず、波打ちが生じない。
【実施例】
【0041】
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明する。
【0042】
1.実施例および比較例
(1)実施例1
実施例1では、
図1に示すようなセンタリング板12の中央部に送風機14が設けられたセンタリング装置1を備えたチェーファーインナーアッセンブル装置を用いて、アッセンブル材料を100m分製造した。
【0043】
なお、製造するアッセンブル材料はPC、LT、ST用タイヤのアッセンブル材料であり、インナーライナーとして幅400mmのブチルゴムを用い、チェーファーとして幅50mmの天然ゴムと合成ゴムの混合物とポリアミド6を圧延したものを用いた。
【0044】
(2)実施例2
実施例2では、実施例1の構成に加えて、支持部材15a、15bを高くしてガイドローラー11a、11bの上端をセンタリング板12の上面よりも400mm高い位置にした
図2に示すようなセンタリング装置1を用いて、実施例1と同様にしてアッセンブル材料を製造した。
【0045】
(3)比較例
比較例では、従来のセンタリング装置を用いたことを除いて、実施例1と同じ条件でアッセンブル材料を成形した。
【0046】
2.評価
(1)スクラップ発生率
製造したアッセンブル材料をタイヤ成形工程に供給して1000本の生タイヤを成形し、アッセンブル材料の波打ちによるジョイント不良が発生してスクラップになったタイヤの本数を計測し、スクラップの発生率を算出した。結果を表1に示す。
【0047】
(2)インナーライナー伸び率
インナーライナー巻き出し機構2から巻き出された直後のインナーライナーIと、巻き取り機構5に巻き取られたアッセンブル材料CIとを比較して、センタリング装置においてインナーライナーIが伸びた程度(インナーライナー伸び率)を測定した。
【0048】
具体的には、巻き出し直後のインナーライナーIに500mm分のマーキングを施し、アッセンブル材料CIの製造を行い、巻き取られた後のアッセンブル材料CIに施されたマーキングの長さBを測定した。そして、以下の式に基づいてインナーライナー伸び率を算出した。
インナーライナー伸び率(%)=(B−500)/500×100
【0049】
【表1】
【0050】
表1より、実施例1および実施例2のいずれにおいても、タイヤ成形工程におけるスクラップ発生率やインナーライナー伸び率が比較例よりも小さくなっていた。このことから、センタリング装置に送風機を設けて、センタリング板とインナーライナーとの接点を少なくすることにより、インナーライナーの伸びを抑制して、アッセンブル材料の波打ちの発生を防止できることが確認できた。
【0051】
さらに、実施例1と実施例2を比較すると、ガイドローラーの上端を高くしてセンタリング板とインナーライナーをより接触させにくくした実施例2では、インナーライナーの伸びを確実に抑制できることが確認できた。
【0052】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。