(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態を説明する。
<ピアサミル軸芯測定システムの構成>
図1は、ピアサミル軸芯測定システムの構成の一例を示す図である。具体的に
図1(a)は、ピアサミル軸芯測定システムの全体構成の一例を示す図である。
図1(b)は、ビレット20のパスラインPLに沿う方向(
図1(a)に示す白抜き矢印線の方向)から見た場合の芯金13と2次元レーザ変位計15との位置関係の一例を示す図である。本実施形態では、穿孔機(ピアサミル)10を用いて、素材の一例であるビレット20に対し、穿孔および圧延を行い、中空素管を製造する場合を例に挙げて説明する。
【0021】
穿孔機10は、一対の傾斜ロール11a、11bと、プラグ12と、芯金13と、ガイド14と、を有する。尚、穿孔機10は、これらの他に、ピアサミルとして必要な公知の構成を有する。例えば、穿孔機10は、芯金13を保持するために軸方向に配備された複数の保持ロールも有する。
傾斜ロール11a、11bは、パスラインPLを介して相互に間隔を有して対向する位置に配置される。傾斜ロール11a、11bは、ピアサミル出側から入側に向けて傾斜した状態になっている。傾斜ロール11a、11bは、ビレット20を、周方向に(即ち、ビレット20の長手方向の軸を回転軸として)回転させ、プラグ12と共にビレット20を圧延する。
図1(a)に示すように、ビレット20のトップ側の端面の中心部には、プラグ12の位置を、ビレット20の中心に誘導するための凹部であるセンタリングポンチ穴21が形成されている。
【0022】
尚、傾斜ロール11a、11bは、コーン型であってもよいし、バレル型であってもよい。
図1では、穿孔機10が、一対の傾斜ロール11a、11bを備える2ロール式である場合を例に挙げて示す。しかしながら、穿孔機10は、2ロール式に限定されない。例えば、パスラインPLに沿う方向から見た場合に、パスラインPLを軸とする回転対称の位置関係になるように、パスラインPLの周りに配置された3つ以上の傾斜ロールを穿孔機10が備えてもよい。
【0023】
プラグ12は、一対の傾斜ロール11a、11bの間の位置であって、且つ、プラグ12の長手方向の軸がパスラインPL(の軸芯)と一致する位置を目標位置として配置される。プラグ12は、その横断面の形状が円形状であり、且つ、その外径は、プラグ12の先端から後端に向かって大きくなる。このように、プラグ12の形状は、略砲弾状である。
【0024】
プラグ12は、ビレット20を穿孔および圧延するときに、ビレット20のトップ側の端面(つまり、プラグ12と対向する端面)の中央部に押し込まれ、ビレット20を穿孔する。
【0025】
芯金13は、パスラインPL(の軸芯)の方向に延在する部材であり、プラグ12を所定の位置に配置するための部材である。芯金13の先端は、プラグ12の基端面と結合される。例えば、プラグ12の基端面は軸方向に凹んだ結合部を有し、芯金13の先端部は、当該結合部に挿入され、固定される。このとき、プラグ12の長手方向の軸と芯金13の長手方向の軸とが一致するようにする(即ち、プラグ12と芯金13が同軸になるようにする)。前述したように、プラグ12の目標位置は、プラグ12の長手方向の軸がパスラインPLと一致する位置である。従って、芯金13の目標位置も、芯金13の長手方向の軸がパスラインPLと一致する位置である。尚、以下の説明では、プラグ12の長手方向の軸、芯金13の長手方向の軸を、必要に応じて、プラグ12の軸芯、芯金13の軸芯と略称する。
【0026】
ガイド14は、傾斜ロール11a、11bの前方(Z軸の正の方向側)に配置される。ガイド14は、ビレット20の振動を抑制する。ビレット20の振動とは、例えば、側面視または平面視でパスラインPLに垂直な方向にビレット20が往復移動することである。
【0027】
2次元レーザ変位計15は、芯金13の水平方向(X軸方向)および測定方向(Y/sinθ軸方向)の変位をオンラインで測定するためのものである。測定方向は、2次元レーザ変位計15の視野方向(光軸方向)である。即ち、測定方向は、
図1(a)の一点鎖線に沿う方向であって、2次元レーザ変位計15から芯金13に向かう方向である。
【0028】
本実施形態では2次元レーザ変位計15は、光切断法により測定を行う。即ち、2次元レーザ変位計15は、ライン状のレーザ光を対象物に照射して、その反射光を高さデータとして取得し、2次元レーザ変位計15と対象物との測定方向(光軸方向)の距離を、三角測量に基づいて測定する。以下の説明では、この距離を必要に応じて測定距離Lと称する(
図1(a)を参照)。これにより、芯金13の測定方向の位置が測定される。
【0029】
尚、2次元レーザ変位計15は、測定対象からの反射光から測定対象までの距離を2次元で測定する技術である為、本実施形態に記載の芯金13を測定した場合には、円弧状の反射光の測定データとして取得されることになるが、以下では、そうして取得された円弧状の測定値を、ビームプロファイルと称することとする。
また、反射光を受光する受光センサの画素が、芯金13の水平方向(X軸方向)に並ぶように2次元レーザ変位計15を配置する。これにより、受光したビームプロファイルのピーク位置が芯金13までの距離となり、受光センサの水平方向の画素の値から、芯金13の水平方向(X軸方向)の位置が測定される。尚、2次元レーザ変位計15自体は、公知の技術で実現することができる。
【0030】
本実施形態では、レーザ光の波長λを405[nm]とする。ただし、芯金13は熱間材ではないため、レーザ光の波長λは制限されない。
図1(a)に示すように、2次元レーザ変位計15は、穿孔機10の出側に設置される。2次元レーザ変位計15は、パスラインPLに対して角度θ、水平方向(X軸方向)に対して角度φを設けて設置される。また、本実施形態では、水平方向(X軸方向)において芯金13を中心とする100[mm]の領域を、2次元レーザ変位計15の水平方向(X軸方向)における視野幅とする。ただし、2次元レーザ変位計15の視野内に、芯金13の最上端(Y軸の負の方向の端部)を含む数mmの領域が含まれていれば、2次元レーザ変位計15の水平方向(X軸方向)における視野幅は、このようなものに限定されない。
【0031】
芯金13の径は多岐に亘り、種々の径を有する芯金13が使用される。本実施形態では、説明を簡単にするため、2次元レーザ変位計15と芯金13との光軸方向における最短距離が400[mm]になる位置に2次元レーザ変位計15を設置する。即ち、本実施形態では、前述した測定距離Lの基準値は400[mm]になる。また、本実施形態では、2次元レーザ変位計15の受光センサの測定分解能は、測定距離Lの基準値(=400[mm])において、0.3[mm/pixel]であるものとする。尚、以下の説明では、この測定分解能を、必要に応じて、基準分解能と称する。2次元レーザ変位計15の受光センサの測定分解能は、受光センサの画素配列に応じて、任意に設定することが可能である。尚、2次元レーザ変位計15の受光センサの測定分解能は、受光センサの1画素当たりの実空間における距離であり、この測定分解能を用いることにより、画素の数から、実空間における距離が得られる。
【0032】
また、本実施形態では、芯金13の径が変わっても、測定距離Lの基準値が400[mm]となるように、2次元レーザ変位計15の位置を変えるようにする場合を例に挙げて説明する。ただし、測定距離Lの基準値を400[mm]に維持すると、2次元レーザ変位計15と設備の干渉等が生じる場合には、測定距離Lの基準値を変更することになる。
【0033】
また、
図1(a)に示すように、本実施形態では、角度θを45[°]にする。ただし、穿孔機10による操業を阻害しない範囲であれば、角度θは45[°]に限定されない。また、
図1(b)に示すように、本実施形態では、2次元レーザ変位計15は、水平方向(X軸方向)に対する角度φが90[°]となるように設置される。即ち、本実施形態では、2次元レーザ変位計15は、鉛直方向(Y軸方向)に沿うように設置される。
尚、以上の条件の下、穿孔機10による操業を阻害しない範囲で可及的に芯金13に近くなるように、2次元レーザ変位計15を設置するのが好ましい。
【0034】
図1(a)および
図13において、先端検知器16は、ガイド14に沿って、図示しない搬送機構によってZ軸の負の方向に搬送されてくるビレット20のトップ側の端面(Z軸の負の方向側の端面)を検知すると、測定開始トリガ信号1301を送信する。この時点では測定自体はまだ開始されてはいないが、測定開始トリガ信号1301に起因して、所定のオフセット時間OTのタイマーが開始される。尚、
図13において、上下方向にのびる破線は、時刻t1〜t4において、ビレット20のトップ側の端面が到達する位置の一例を示す。
本実施形態では、時刻t1においてビレット20のトップ側の端面が検知されて以後、オフセット時間OTを通じて搬送され続けるビレット20のトップ側の端面が、オフセット時間OTが経過した時点で、正規の測定開始位置(測定開始時刻t2のところで上下方向にのびる破線の位置)に位置するように、先端検知器16の位置が定められる。
尚、前記正規の測定開始位置は、例えば、ビレット20のトップ側の端面とプラグ12の先端とが僅かに間隔を有する位置である。
【0035】
そして、オフセット時間OTの経過後に、正規の測定開始位置を通過したビレット20のトップ側の端面に対し、後述する測定が実際に開始されることとなり、所定の時間にわたってずれ量の測定が行われる。
即ち、ビレット20のトップ側の端面がプラグ12の先端に接触するまでに、測定が開始されてから更なる時間が掛かるため(測定開始時刻t2から、ビレット20のトップ側の端面がプラグ12の先端に接触する時刻t3までの時間PTを参照)、所定の測定時間MTを当該時間より長く定めておくことで、ビレット20の穿孔開始前(ビレット20の穿孔を開始すると想定される時刻t3よりも前)の芯金13の変位と穿孔開始後(ビレット20の穿孔を開始すると想定される時刻t3よりも後)の芯金13の変位とを、両方とも取得することが可能となる。そして、所定の測定時間MTが経過し時刻t4になると、測定を終了する。
【0036】
先端検知器16は、例えば、投光器と受光器とを有する。例えば、投光器から投光された光が受光器で受光されなくなると、ビレット20のトップ側の端面を検知するように先端検知器16を構成することができる。先端検知器16自体は、公知の技術で実現することができる。尚、穿孔機10による中空素管の製造ラインに既存のものを先端検知器16として利用してもよいし、専用の先端検知器16を新たに設置してもよい。
【0037】
軸芯ズレ演算装置100は、先端検知器16から送信された測定開始トリガ信号1301を受信してから所定のオフセット時間が経過すると、そのタイミングから所定の測定時間MTにおける2次元レーザ変位計15の測定結果に基づいて、パスラインPLと芯金13の軸芯との、水平方向(X軸方向)および鉛直方向(Y軸方向)のそれぞれにおけるずれ量を演算する。所定の測定時間MTは、例えば、ビレット20のトップ側の端面にプラグ12が接触する直前と直後を含む一定期間のみにおいて、2次元レーザ変位計15による測定結果が得られるように予め定められる。例えば、所定の測定時間MTは、0.01[s]以上0.5[s]以下の範囲の中から定められる。
尚、以下の説明では、パスラインPLと芯金13の軸芯とのずれを必要に応じて軸芯ズレと称する。また、軸芯ズレ演算装置100は、軸芯ズレによるずれ量と、軸芯ズレの方向を演算する。また、先端検知器16の配置に応じて前述した所定のオフセット時間が決まるので、先端検知器16の配置によっては、前述した所定のオフセット時間は0(ゼロ)になることもある。
【0038】
図2は、軸芯ズレの一例を概念的に説明する図である。具体的に
図2(a)は、軸芯ズレが生じていない場合を示し、
図2(b)は、軸芯ズレが生じている場合を示す。
図2(a)に示すように、プラグ12および芯金13の軸芯とパスラインPLとが一致している場合、軸芯ズレは生じていないことになる。
【0039】
一方、
図2(b)に示す例では、プラグ12および芯金13の軸芯とパスラインPLとが一致せず、ずれ量AGの軸芯ズレが生じていることを示す。尚、
図2(b)では、表記の都合上、鉛直方向(Y軸方向)における軸芯ズレを示すが、軸芯ズレは、水平方向(X軸方向)の成分と鉛直方向(Y軸方向)の成分とを含む。前述した軸芯ズレによるずれ量の絶対値(総合的なずれ量)は、水平方向(X軸方向)の成分の2乗と、鉛直方向(Y軸方向)の成分の2乗との和の平方根で表される。
【0040】
尚、以下の説明では、軸芯ズレによるずれ量を必要に応じて移動量と称し、水平方向(X軸方向)の軸芯ズレによる芯金13のずれ量を必要に応じて水平方向移動量と称し、鉛直方向(Y軸方向)の軸芯ズレによる芯金13のずれ量を必要に応じて鉛直方向移動量と称する。
軸芯ズレ演算装置100は、これら水平方向移動量および鉛直方向移動量の少なくとも何れか一方の絶対値が、夫々に対して予め設定されている閾値を上回るか否かを判定する。
【0041】
出力装置200は、軸芯ズレ演算装置100により、水平方向移動量および鉛直方向移動量の少なくとも何れか一方が、夫々に対して予め設定されている閾値を上回ると判定されると、そのときの水平方向移動量、鉛直方向移動量、軸芯ズレによるずれ量、および軸芯ズレの方向の情報を出力する。出力の形態は、例えば、コンピュータディスプレイへの表示、外部装置への送信、および記憶媒体への記憶の少なくとも何れか1つを採用することができる。
【0042】
<軸芯ズレ演算装置100>
次に、軸芯ズレ演算装置100の一例について詳細に説明する。
軸芯ズレ演算装置100のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、および各種のインターフェースを備える情報処理装置、または、専用のハードウェアを用いることにより実現される。
図3は、軸芯ズレ演算装置100の機能的な構成の一例を示す図である。以下に、軸芯ズレ演算装置100が有する機能の一例を説明する。
【0043】
[先端検知判定部101]
先端検知判定部101は、先端検知器16により、ビレット20のトップ側の端面が検知されたか否かを判定する。前述したように、先端検知器16は、ビレット20のトップ側の端面を検知すると、測定開始トリガ信号1301を送信する。従って、先端検知判定部101は、測定開始トリガ信号1301を受信すると、先端検知器16により、ビレット20のトップ側の端面が検知されたと判定し、所定のオフセット時間OTの計時用のタイマーの起動を開始する。
【0044】
[ビームプロファイル作成部102]
ビームプロファイル作成部102は、先端検知判定部101により、ビレット20のトップ側の端面が検知されたと判定されてから所定のオフセット時間OTが経過すると、そのタイミングから所定の測定時間MTが経過するまでの間、2次元レーザ変位計15の測定結果に基づいて、ビームプロファイルを、所定のサンプリング周期で繰り返し作成する。本実施形態では、ビームプロファイルは、2次元レーザ変位計15から見た場合の、芯金13の水平方向(X軸方向)および測定方向の位置を示す情報である。前述したように、測定方向は、2次元レーザ変位計15の視野方向(光軸方向)である(
図1(a)の一点鎖線を参照)。また、前述したように、所定の測定時間MTは、例えば、ビレット20のトップ側の端面にプラグ12が接触する直前と直後の期間のみにおいて、2次元レーザ変位計15による測定結果が得られるように予め定められる。前述したように、所定の測定時間MTは、例えば、0.01[s]以上0.5[s]以下の時間である。また、所定のサンプリング周期は、例えば1[ms]である。
【0045】
図4は、ビームプロファイルの一例を概念的に示す図である。
前述したように、2次元レーザ変位計15の受光センサの画素は、芯金13の水平方向(X軸方向)に並ぶように配置される。従って、
図4において、X軸の値は、2次元レーザ変位計15の受光センサの画素の位置に対応する。また、Y/sinθ軸の値は、2次元レーザ変位計15により測定される測定距離Lに対応する。尚、以上のことは、後述する
図5、
図11、
図12においても同じである。
【0046】
尚、ここで、ビームプロファイルについて注釈を記載すると、
図1に記載の説明図でいえば、2次元レーザ変位計15と芯金13との間で計測されるビームプロファイルは、芯金13に反射したレーザ変位計15のレーザ光の反射像を意味するため、2次元レーザ変位計15に向かって上側半円状のビームプロファイルとなる。即ち、半円状のビームプロファイルのピーク位置が2次元レーザ変位計15の最近傍点となる。
しかしながら、
図4以降においては、グラフ表記の都合上、2次元レーザ変位計15から遠ざかる方向をY軸の正の方向、言い換えればY軸上方向となるように上下反転して記載している。即ち、半円状のビームプロファイルのピーク点が、2次元レーザ変位計15の最近傍点となるように、即ち、グラフ上同一プロファイル中の最下点となるように記載している。尚、このことは、後述する
図5、
図11、
図12においても同様である。
【0047】
このようなビームプロファイル400が所定のサンプリング周期で繰り返し作成される。本実施形態では、ビームプロファイル作成部102は、所定のサンプリング周期で繰り返し作成されるビームプロファイル400の移動平均をとり、各サンプリング周期におけるビームプロファイルを作成する。例えば、所定のサンプリング周期が1[ms]であり、5[ms]ごとに移動平均をとる場合、5つのビームプロファイル400の移動平均をとる。そして、その移動平均後の値を、当該5つのビームプロファイル400の作成時刻のうちの最先の作成時刻におけるビームプロファイルとする。以下の説明では、特に断らない限り、ビームプロファイルと称する場合には、この移動平均後のビームプロファイルであるものとする。
【0048】
[ピーク位置抽出部103]
前述したように本実施形態では、光切断法を用いるため、ビームプロファイルにおけるピークの位置から、2次元レーザ変位計15と芯金13との間の距離が導出される。そこで、ピーク位置抽出部103は、ビームプロファイル作成部102により作成されるビームプロファイルのそれぞれからピークの位置を抽出する。本実施形態では、ピーク位置抽出部103は、8画素ごとに(1つの)ビームプロファイルの移動平均をとり、その移動平均後のビームプロファイルのピークの位置を抽出する。尚、以下の説明では、特に断らない限り、ビームプロファイルのピークと称する場合には、このようにして抽出されるピークであるものとする。
【0049】
図5は、ビームプロファイルと、そのピークの一例を概念的に示す図である。
具体的に
図5(a)は、ビレット20の穿孔開始前の芯金13の軸芯の位置と、穿孔開始後の芯金13の軸芯の位置の変化が小さい場合のビームプロファイル501、502の関係と、そのピーク501a、502aの関係を示す図である。一方、
図5(b)は、ビレット20の穿孔開始前の芯金13の軸芯の位置と、穿孔開始後の芯金13の軸芯の位置の変化が大きい場合のビームプロファイル501、503の関係と、そのピーク501a、503aの関係を示す図である。
【0050】
プラグ12および芯金13の軸芯が、ビレット20のトップ側の端面の中心(即ち、パスラインPL)から大きくずれていなければ、2次元レーザ変位計15と芯金13との距離は、穿孔開始前と穿孔開始直後とで大きくずれない。このため、
図5(a)に示すように、穿孔開始前と穿孔開始直後とで、ビームプロファイル501、502は大きく異ならない。ここで、このビームプロファイル501、502は、穿孔開始前と穿孔開始直後のあるタイミングのビームプロファイルの一例である。
【0051】
一方、前述したように本実施形態では、ビレット20のトップ側の端面の中心部に、ビレット20の中心に誘導するためのセンタリングポンチ穴21が形成されている。従って、プラグ12および芯金13の軸芯が、ビレット20のトップ側の端面の中心(即ち、パスラインPL)から大きくずれた状態で、穿孔が開始されると、プラグ12および芯金13は、センタリングポンチ穴21の方向に誘導される。このため、
図5(b)に示すように、穿孔開始前と穿孔開始直後とで、ビームプロファイル501、503は大きく異なる。ここで、このビームプロファイル501、503は、穿孔開始前と穿孔開始直後のあるタイミングのビームプロファイルの一例である。
【0052】
[座標変換部104]
座標変換部104は、測定開始時のビームプロファイルと、測定開始後の各ビームプロファイルのピークの位置に基づいて、水平方向(X軸方向)と鉛直方向(Y軸方向)のそれぞれにおけるピークの位置の距離差を導出する。
尚、前述したように、ここでいう測定開始時とは、先端検知判定部101により、ビレット20のトップ側の端面が検知されたと判定され所定のオフセット時間OTが経過したタイミングであり、その際の測定では、穿孔開始前のピーク位置が取得されることになる。また、ここでいう測定開始後とは、測定開始時よりも後のタイミングであるため、その際の測定では、穿孔開始前のピーク位置と穿孔開始後のピーク位置とが取得されることになる。
【0053】
ここで、測定開始時のビームプロファイルの測定方向(Y/sinθ軸方向)におけるピークの位置をY0とする。また、測定開始後のビームプロファイルの測定方向(Y/sinθ軸方向)におけるピークの位置をY´とする。例えば、
図5(a)および
図5(b)において、測定開始時のビームプロファイルがビームプロファイル501であるとすると、測定開始時のビームプロファイルの測定方向(Y/sinθ軸方向)におけるピークの位置Y0は、ピーク501aのY/sinθ軸の値になる。また、測定開始後の各ビームプロファイルの測定方向(Y/sinθ軸方向)におけるピークの位置Y´は、ピーク502a、503aのY/sinθ軸の値になる。
【0054】
尚、以下の説明では、測定開始時のビームプロファイルのピークの位置(穿孔開始前のピーク位置)を、必要に応じて、基準ピーク位置と称する。また、測定開始後の各ビームプロファイルのピークの位置を、必要に応じて、測定ピーク位置と称する。
【0055】
座標変換部104は、測定方向(Y/sinθ軸方向)における測定ピーク位置Y´の、測定方向(Y/sinθ軸方向)における基準ピーク位置Y0に対する距離差ΔY´を導出する(ΔY´=Y0−Y´)。尚、以下の説明では、この距離差ΔY´を、必要に応じて、Y軸方向の距離差ΔY´と称する。そして、座標変換部104は、Y軸方向の距離差ΔY´と、パスラインPLに対する2次元レーザ変位計15の角度θとに基づいて、鉛直方向(Y軸方向)における測定ピーク位置の、鉛直方向(Y軸方向)における基準ピーク位置に対する距離差ΔY´_tを導出する。
【0056】
図6は、鉛直方向(Y軸方向)における測定ピーク位置の、鉛直方向(Y軸方向)における基準ピーク位置に対する距離差ΔY´_tを導出する方法の一例を説明する図である。
図6において、測定開始時のビームプロファイルの測定方向(Y/sinθ軸方向)におけるピークの位置Y0は、2次元レーザ変位計15と、測定開始時の芯金13の表面15aとの最短距離になる。また、測定開始後のビームプロファイルの測定方向(Y/sinθ軸方向)におけるピークの位置Y´は、2次元レーザ変位計15と、測定開始後の芯金13の表面15bとの最短距離になる。
【0057】
図6に示すように、鉛直方向(Y軸方向)における測定ピーク位置の、鉛直方向(Y軸方向)における基準ピーク位置に対する距離差ΔY´_tは、以下の(1)式で表される。
ΔY´_t=(Y0−Y´)×sinθ ・・・(1)
従って、座標変換部104は、(1)式の計算を行って、鉛直方向(Y軸方向)における測定ピーク位置の、鉛直方向(Y軸方向)における基準ピーク位置に対する距離差ΔY´_tを導出する。
本実施形態では、鉛直方向(Y軸方向)における測定ピーク位置の、鉛直方向(Y軸方向)における基準ピーク位置に対する距離差ΔY´_tが、前述した鉛直方向移動量になる。
【0058】
また、座標変換部104は、以下の(2)式の計算を行って、X軸方向における測定ピーク位置の、X軸方向における基準ピーク位置に対する距離差ΔX´を導出する。
ΔX´=(X0−X´)×αi ・・・(2)
(2)式において、X0は、X軸方向における基準ピーク位置であり、X´は、X軸方向における測定ピーク位置であり、αiは、2次元レーザ変位計15の受光センサの測定分解能である。
本実施形態では、X軸方向における測定ピーク位置の、X軸方向における基準ピーク位置に対する距離差ΔX´が、前述した水平方向移動量になる。
【0059】
尚、以下の説明では、2次元レーザ変位計15の受光センサの測定分解能αiを、必要に応じて、測定分解能αiと略称する。
測定距離Lの基準値をLsとし、測定距離Lの測定値をLmとし、基準分解能をαsとすると、測定分解能αiは、以下の(3)式により計算される。
αi=αs×Lm/Ls ・・・(3)
本実施形態では前述したように、測定距離Lの基準値Lsは、400[mm]であり、基準分解能αsは、0.3[mm/pixel]である。また、測定距離Lの測定値Lmは、以下の(4)式により計算される。
Lm=Y´ ・・・(4)
【0060】
[判定部105]
判定部105は、座標変換部104により導出された水平方向移動量ΔX´の絶対値が予め設定されている閾値を上回るか否かを判定する。また、判定部105は、座標変換部104により導出された鉛直方向移動量ΔY´_tの絶対値が予め設定されている閾値を上回るか否かを判定する。尚、水平方向移動量ΔX´の絶対値に対する閾値と、鉛直方向移動量ΔY´_tの絶対値に対する閾値は、個別に設定される。
【0061】
[移動量・移動方向演算部106]
移動量・移動方向演算部106は、判定部105により、水平方向移動量ΔX´の絶対値又は、鉛直方向移動量ΔY´_tの絶対値が予め設定されている閾値を越えた場合に、座標変換部104により導出された、水平方向移動量ΔX´と、鉛直方向移動量ΔY´_tとに基づいて、軸芯ズレによるずれ量Dと、軸芯ズレの方向ηとを導出する。本実施形態では、移動量・移動方向演算部106は、以下の(5)式の計算を行うことにより、軸芯ズレによるずれ量Dを導出する。また、移動量・移動方向演算部105は、以下の(6)式の計算を行うことにより、軸芯ズレの方向ηを導出する。
D={(ΔX´)
2+(ΔY´_t)
2}
1/2 ・・・(5)
η=tan
-1(ΔY´_t/ΔX´) ・・・(6)
【0062】
[出力部107]
出力部107は、水平方向移動量ΔX´の絶対値が閾値を上回る場合と、鉛直方向移動量ΔY´_tの絶対値が閾値を上回る場合の少なくとも何れか一方の場合に、当該水平方向移動量ΔX´と、当該鉛直方向移動量ΔY´_tと、当該水平方向移動量ΔX´および当該鉛直方向移動量ΔY´_tから導出される軸芯ズレによるずれ量Dおよび軸芯ズレの方向とを出力装置200に出力する。
【0063】
<動作フローチャート>
次に、
図7のフローチャートを参照しながら、本実施形態の軸芯ズレ演算装置100の動作の一例を説明する。
まず、ステップS701において、先端検知判定部101は、先端検知器16により、ビレット20のトップ側の端面(先端)が検知されるまで待機する。そして、先端検知器16により、ビレット20のトップ側の端面(先端)が検知されると、ステップS702に進む。
【0064】
ステップS702に進むと、ビームプロファイル作成部102は、所定のオフセット時間OTが経過するまで待機する。そして、所定のオフセット時間が経過すると、ステップS703に進む。
ステップS703に進むと、ビームプロファイル作成部102は、2次元レーザ変位計15の測定結果に基づいて、ビームプロファイルを作成する。前述したように、ビームプロファイルは、所定のサンプリング周期で繰り返し作成され、このようにして作成された複数のビームプロファイルの所定の時間における移動平均値が、最終的なビームプロファイルになる。
【0065】
次に、ステップS704において、ピーク位置抽出部103は、ステップS703で作成されたビームプロファイルのピークの位置を抽出する。前述したように、ピーク位置抽出部103は、ビームプロファイルの所定の画素における移動平均値から、当該ビームプロファイルのピークの位置を抽出する。
次にステップS705に進む。ステップS705に進むと、ピーク位置抽出部103は、所定の測定時間MTが経過したか否かを判定する。この判定の結果、所定の測定時間MTが経過した場合には、ステップS706へ進む。一方、所定の測定時間MTが経過していない場合には、ステップS703に戻り、次のタイミングにおけるビームプロファイルの作成、ピークの位置の抽出を行う。そして、所定の測定時間MTが経過するまで、ステップS703〜S705の処理を繰り返し行う。
次に、ステップS706において、座標変換部104は、(1)式の計算を行うことにより、鉛直方向移動量ΔY´_tを導出すると共に、(2)式および(3)式の計算を行うことにより、水平方向移動量ΔX´を導出する。
【0066】
次に、ステップS707において、判定部105は、水平方向移動量ΔX´の絶対値が閾値を上回るか否かと、鉛直方向移動量ΔY´_tの絶対値が閾値を上回るか否かを判定する。この判定の結果、水平方向移動量ΔX´の絶対値と、鉛直方向移動量ΔY´_tの絶対値との少なくとも何れか一方が閾値を上回る場合には、ステップS708に進む。
次に、ステップS708に進むと、移動量・移動方向演算部106は、(5)式の計算を行うことにより、軸芯ズレによるずれ量Dを導出すると共に、(6)式の計算を行うことにより、軸芯ズレの方向ηを導出する。
次に、ステップS709に進み、出力部107は、当該水平方向移動量ΔX´と、当該鉛直方向移動量ΔY´_tと、当該水平方向移動量ΔX´および当該鉛直方向移動量ΔY´_tから導出される軸芯ズレによるずれ量Dおよび軸芯ズレの方向ηとを出力装置200に出力する。そして、
図7のフローチャートによる処理を終了する。
【0067】
一方、ステップ707において、水平方向移動量ΔX´の絶対値と、鉛直方向移動量ΔY´_tの絶対値との何れもが閾値を上回らない場合には、ステップS709に進み、
図7のフローチャートによる処理を終了する。
なお、
図7のフローと異なるが、水平方向移動量ΔX´の絶対値と、鉛直方向移動量ΔY´_tの絶対値との何れもが閾値を上回らない場合であっても、ステップS708およびS709へと進み、前述したように、当該水平方向移動量ΔX´と、当該鉛直方向移動量ΔY´_tと、軸芯ズレによるずれ量Dおよび軸芯ズレの方向ηとを出力し、
図7のフローチャートによる処理を終了するようにしても良い。
【0068】
図8は、本実施形態の軸芯ズレ演算装置100により導出された鉛直方向移動量801と水平方向移動量802の一例を示す図である。尚、前述したように本実施形態では、所定の測定時間MTは、0.01[s]以上0.5[s]以下の範囲の中から定められるが、
図8では、説明および表記の都合上、長期間にわたって、鉛直方向移動量801と水平方向移動量802を導出した結果を示す。
図8に示す例では、時刻tにおいて、鉛直方向移動量801が約2[mm]、水平方向移動量802が約1[mm]となり、それぞれ閾値を上回った。したがって、この時刻tにおいて、穿孔が開始したと判定することができる。
本実施形態の軸芯ズレ演算装置100では、最終的に、閾値を上回るずれ量について導出している(S708、S709)ため、(閾値の設定にもよるが、)
図8における、時刻t以降のデータが、ずれ量として得られることになり、結果として、ずれを是正するための芯金13又はパスラインの移動方向や量を把握することができるようになる。
【0069】
<まとめ>
以上のように本実施形態では、2次元レーザ変位計15による測定の結果に基づいて、水平方向(X軸方向)の軸芯ズレによる芯金13のずれ量(水平方向移動量ΔX´)と、鉛直方向(Y軸方向)の軸芯ズレによる芯金13のずれ量(鉛直方向移動量ΔY´_t)を導出する。従って、水平方向(X軸方向)と鉛直方向(Y軸方向)の双方の方向における芯金13のずれを測定することができる。従って、芯金13の軸芯をどの方向にどれだけ動かせば、ビレット20の偏芯偏肉が生じている場合に、ビレット20の偏熱やピアサミルに生じるガタによる芯金13の振れ回りを除き、芯金13とビレット20の軸芯ズレのみを抽出し、芯金13の軸芯とパスライン20とのずれが生じた場合に、芯金13又はパスラインの軸芯をどの方向に動かせばビレット20の偏芯偏肉が低減するのかをオンラインで特定することができる。
【0070】
図9は、芯金13の軸芯の調整前後におけるビレット20の振れ回り量の一例を概念的に示す図である。具体的に
図9(a)は、本実施形態の手法の場合を示し、
図9(b)は、従来の(特許文献2〜4に記載の)手法の場合を示す。
図9(a)に示すように本実施形態では、水平方向移動量ΔX´と鉛直方向移動量ΔY´_tとを導出するので、軸芯ズレによるずれ量Dと、軸芯ズレの方向ηとを導出することができる(
図9(a)の実線の矢印線902が、軸芯ズレによるずれ量Dと、軸芯ズレの方向ηとを表す)。従って、これを相殺するように、芯金13の軸芯の位置を調整すればよい(
図9(a)の破線の矢印線901が、芯金13の軸芯の位置の調整量と調整方向を表す)。このように芯金13の軸芯の位置を調整することによって、ビレット20の振れ回りを、実線の楕円903から、破線の楕円904のように抑制させることができる。
【0071】
一方、
図9(b)に示すように従来の手法では、シェル又は、芯金13の振れ周り量のみにおいて導出されるに過ぎない。従って、
図9(b)の矢印線に示すように、この方向については、芯金13又はシェルの振れ周り方向であって、芯金とパスラインの軸芯ズレとは、必ずしも一致しない。言い換えれば、この方向に芯金又はパスラインの調整を行うことは、軸芯ズレの修正にはならない。
【0072】
また、
図9(b)に示すように、従来の手法では、芯金13又はシェルの振れ回り量を示すこの測定値が、芯金13の軸芯とパスラインPLとのずれによるものなのか、それとも前述したようなその他の要因であるのかを特定することができない。
これに対し、本発明者らは、芯金13とビレット20の軸芯とのズレが、プラグ12がビレット20に接触し最初にズレを生じた際のズレ量と方向に相関があることを突き止めた。そこで、本実施形態では、所定の測定時間MTにおける2次元レーザ変位計15の測定結果に基づいて、水平方向移動量ΔX´と鉛直方向移動量ΔY´_tを導出する。例えば、ビレット20のトップ側の端面の温度分布に偏りが生じている場合や、穿孔機10にガタが生じている場合には、それらの影響による軸芯ズレは、穿孔を開始してからある程度の時間が経過してから生じる。従って、芯金13の先端部(トップ側)を測定することで、穿孔開始直前から直後までの微小な移動量を捉えることが可能となり、温度分布に偏りが生じている場合の移動量や、穿孔機10に生じたガタによる移動量が発生する時間になるまでの、2次元レーザ変位計15の測定結果に基づいて、水平方向移動量ΔX´と鉛直方向移動量ΔY´_tを導出することにより、芯金13の軸芯とパスラインPLとのずれのみを可及的に抽出し、軸芯ズレの量とその方向を把握することができる。
【0073】
さらに、1台の2次元レーザ変位計15による簡単な構成で、2つの方向(X軸方向およびY軸方向)の軸芯ズレによる芯金13のずれ量をオンラインで高速に且つ高精度に検出することができる。
従って、軸芯ズレが生じている場合の、芯金13の調整方向および調整量が明確になり、シェルの振れ回りを的確に且つ迅速に抑制することが可能になる。
また、2次元レーザ変位計15の、芯金13の周方向における設置位置の制限がないことから、2次元レーザ変位計15と設備とが干渉することを抑制することができる。
【0074】
<変形例>
本実施形態のように、1台の2次元レーザ変位計15を用いれば、構成が簡単になると共に、設備との干渉を容易に抑制することができるので好ましい。しかしながら、2次元レーザ変位計の数は1台に限定されない。例えば、芯金13の水平方向(X軸方向)の変位を光学的に測定するセンサと、芯金13の鉛直方向(Y軸方向)の変位を光学的に測定するセンサとを個別に設けてもよい。また、芯金13の変位を測定する方向は、水平方向(X軸方向)と鉛直方向(Y軸方向)に限定されず、相互に異なる2つの方向であれば、どの方向であってもよい。その他、2次元センサではなく3次元センサを用いてもよい。
【0075】
また、本実施形態では、水平方向移動量と鉛直方向移動量を導出する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、芯金13のずれ量を導出する方向は、水平方向(X軸方向)および鉛直方向(Y軸方向)に限定されず、芯金13の軸芯に垂直な相互に異なる2つの方向であれば、どの方向であってもよい。
【0076】
また、本実施形態では、水平方向移動量ΔX´と、鉛直方向移動量ΔY´_tと、軸芯ズレによるずれ量Dと、軸芯ズレの方向ηとを出力する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、水平方向移動量ΔX´および鉛直方向移動量ΔY´_tから、軸芯ズレの方向ηと軸芯ズレによるずれ量Dが得られる。従って、水平方向移動量ΔX´および鉛直方向移動量ΔY´_tを出力する場合には、軸芯ズレの方向ηと軸芯ズレによるずれ量Dの少なくとも何れか一方を出力しなくてもよい。また、軸芯ズレによるずれ量Dと軸芯ズレの方向ηから、水平方向移動量ΔX´および鉛直方向移動量ΔY´_tが得られる。従って、軸芯ズレによるずれ量Dと軸芯ズレの方向ηを出力する場合には、水平方向移動量ΔX´および鉛直方向移動量ΔY´_tを出力しなくてもよい。即ち、軸芯ズレによるずれ量Dと軸芯ズレの方向ηを特定する情報が出力されるようにしていればよい。また、水平方向移動量ΔX´の絶対値と、鉛直方向移動量ΔY´_tの絶対値との少なくとも何れか一方が閾値を上回るか否かに関わらず、これらの情報を出力してもよい。
【0077】
また、本実施形態では、水平方向移動量ΔX´の絶対値と、鉛直方向移動量ΔY´_tの絶対値との少なくとも何れか一方が閾値を上回ると判定された後に、当該水平方向移動量ΔX´および当該鉛直方向移動量ΔY´_tから、軸芯ズレによるずれ量Dおよび軸芯ズレの方向ηの導出を行う場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、水平方向移動量ΔX´および鉛直方向移動量ΔY´_tの導出に続けて、軸芯ズレによるずれ量Dおよび軸芯ズレの方向ηの導出をしてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、水平方向移動量ΔX´の絶対値および水平方向移動量ΔX´の絶対値が閾値を上回っているか否かを判定する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、これに代えてまたは加えて軸芯ズレによるずれ量Dが閾値を上回っているか否かを判定してもよい。
【0079】
また、本実施形態では、(6)式に示すように、軸芯ズレの方向ηを、水平方向(X軸方向)からの角度で表す場合を例に挙げて説明した。ただし、軸芯ズレの方向を示す情報であれば、必ずしも(6)式により、軸芯ズレの方向を導出する必要はない。
【0080】
また、本実施形態では、所定のオフセット時間OTを設ける場合を例に挙げて説明したが、所定のオフセット時間OTを設けなくてもよい。
【0081】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を説明する。第1の実施形態では、水平方向(X軸方向)に対する角度φが90[°]になるように、2次元レーザ変位計15を配置する場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、2次元レーザ変位計15の水平方向(X軸方向)に対する角度φが90[°]以外の角度である場合について説明する。このように本実施形態と第1の実施形態は、2次元レーザ変位計15の配置が異なることによる構成および処理の一部が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、
図1〜
図9に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0082】
図10は、ピアサミル軸芯測定システムの構成の一例を示す図である。具体的に
図10(a)は、ピアサミル軸芯測定システムの全体構成の一例を示す図であり、
図1(a)に対応する図である。
図10(b)は、パスラインPLに沿う方向(
図10(a)に示す白抜き矢印線の方向)から見た場合の芯金13と2次元レーザ変位計15との位置関係の一例を示す図であり、
図1(b)に対応する図である。
【0083】
図1(b)と
図10(b)を比べると明らかなように、本実施形態では、2次元レーザ変位計15は、水平方向(X軸方向)に対する角度φとして45[°]の角度を設けて設置される。本実施形態のピアサミル軸芯測定システムのその他の構成は、第1の実施形態と同じである。
【0084】
図11は、ビームプロファイル1100の一例を概念的に示す図である。第1の実施形態で説明した
図4に示すようにしてX軸、Y/sinθ軸を定めた場合、
図11に示す向きでビームプロファイル1100が作成される。
図12は、ビームプロファイルと、そのピークの一例を概念的に示す図である。具体的に
図12(a)は、ビレット20の穿孔開始前の芯金13の軸芯の位置と、穿孔開始後の芯金13の軸芯の位置の変化が小さい場合のビームプロファイル1201、1202と、そのピーク1201a、1202aを示す図であり、
図5(a)に対応する図である。一方、
図12(b)は、ビレット20の穿孔開始前の芯金13の軸芯の位置と、穿孔開始後の芯金13の軸芯の位置の変化が大きい場合のビームプロファイル1201、1203と、そのピーク1201a、1203aを示す図であり、
図5(b)に対応する図である。
【0085】
第1の実施形態では、(1)式により計算される、鉛直方向(Y軸方向)における測定ピーク位置の、鉛直方向(Y軸方向)における基準ピーク位置に対する距離差ΔY´_tが鉛直方向移動量になる。また、(2)式および(3)式により計算される、X軸方向における測定ピーク位置の、X軸方向における基準ピーク位置に対する距離差ΔX´が水平方向移動量になる。
【0086】
これに対し、本実施形態では、鉛直方向移動量ΔYYは、以下の(7)式により計算され、水平方向移動量ΔXXは、以下の(8)式により計算される。
ΔYY=ΔY´_t×cosφ−ΔX´×sinφ ・・・(7)
ΔXX=ΔY´_t×sinφ+ΔX´×cosφ ・・・(8)
【0087】
従って、移動量・移動方向演算部105は、(7)式の計算を行うことにより、鉛直方向移動量ΔYYを導出し、(8)式の計算を行うことにより、水平方向移動量ΔXXを導出する。
【0088】
そして、移動量・移動方向演算部105は、(5)式、(6)式に代えて、以下の(9)式、(10)式の計算を行うことにより、軸芯ズレによるずれ量Dと軸芯ズレの方向ηを導出する。
D={(ΔXX)
2+(ΔYY)
2}
1/2 ・・・(9)
η=tan
-1(ΔYY/ΔXX) ・・・(10)
【0089】
以上のように、2次元レーザ変位計15の水平方向(X軸方向)に対する角度φが90[°]以外の角度であっても、前述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、2次元レーザ変位計15の水平方向(X軸方向)に対する角度φを調整することにより、2次元レーザ変位計15と設備とが干渉することを抑制することができる。
また、本実施形態においても第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0090】
(その他の実施形態)
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0091】
(請求項との関係)
以下に、請求項と実施形態との関係の一例を示す。尚、本発明が前述した実施形態に限定されないことは、変形例等において説明した通りである。
<請求項1、5、12、13>
プラグは、例えば、プラグ12を用いることにより実現される。
芯金は、例えば、芯金13を用いることにより実現される。
素材は、例えば、ビレット20を用いることにより実現される。
傾斜ロールは、例えば、傾斜ロール11a、11bを用いることにより実現される。
測定手段は、例えば、2次元レーザ変位計15を用いることにより実現される。
少なくとも相互に異なる2つの方向は、例えば、X軸方向とY/sinθ軸方向(測定方向)を用いることにより実現される。
第1の導出手段は、例えば、ビームプロファイル作成部102、ピーク位置抽出部103、および座標変換部104を用いることにより実現される。
芯金の長手方向の軸に垂直な相互に異なる2つの方向は、例えば、X軸方向とY軸方向を用いることにより実現される。
芯金の移動量は、例えば、X軸方向における測定ピーク位置の、X軸方向における基準ピーク位置に対する距離差ΔX´と、鉛直方向(Y軸方向)における測定ピーク位置の、鉛直方向(Y軸方向)における基準ピーク位置に対する距離差ΔY´_tにより実現される。
<請求項2、3>
検知手段は、例えば、先端検知器16を用いることにより実現される。
<請求項4>
穿孔開始前は、例えば、先端検知判定部101により、ビレット20のトップ側の端面が検知されたと判定され所定のオフセット時間OTが経過してから、ビレット20のトップ側の端面がプラグ12の先端に接触するまでのタイミングにより実現される。穿孔開始後は、ビレット20のトップ側の端面がプラグ12の先端に接触した後(より好ましくは接触した直後)のタイミングにより実現される。
<請求項6>
前記第2の測定方向における前記芯金の移動量は、例えば、Y軸方向の距離差ΔY´により実現される。また、前記パスラインに対する前記測定手段の角度は、例えば、角度θにより実現される。また、前記第2の移動量導出方向における前記芯金の移動量は、鉛直方向(Y軸方向)における測定ピーク位置の、鉛直方向(Y軸方向)における基準ピーク位置に対する距離差ΔY´_t((1)式)により実現される。
<請求項7>
前記芯金の長手方向の軸に垂直な水平方向に対する前記測定手段の角度は、例えば、角度φにより実現される((7)式も参照)。
<請求項8>
前記測定手段により、穿孔開始前と穿孔開始後とする異なるタイミングで測定された、前記第1の測定方向における前記芯金の位置は、例えば、2次元レーザ変位計15の計測結果(ビームプロファイル)に基づいて得られるX軸方向における測定ピーク位置X´により実現される。
1つの前記画素当たりの実空間における距離である基準分解能は、例えば、基準分解能αsにより実現される。
前記第2の測定方向における前記測定手段と前記芯金との間の基準距離は、例えば、測定距離Lの基準値Ls(本実施形態の例では400[mm])により実現される。
前記測定手段により測定された前記第2の測定方向における前記芯金の位置に基づき定まる前記第2の測定方向における前記測定手段と前記芯金との間の測定距離は、測定距離Lの測定値Lm((4)式)により実現される。
前記第1の移動量導出方向における前記芯金の移動量は、例えば、X軸方向における測定ピーク位置の、X軸方向における基準ピーク位置に対する距離差ΔX´((2)式)により実現される。
<請求項9>
前記芯金の長手方向の軸に垂直な水平方向に対する前記測定手段の角度は、例えば、角度φにより実現される((8)式も参照)。
<請求項10>
軸芯の総合的な移動量は、例えば、軸芯ズレによるずれ量D((5)式)により実現される。
軸芯の移動方向は、例えば、軸芯ズレの方向η((6)式)により実現される。
第2の導出手段は、例えば、移動量・移動方向演算部105を用いることにより実現される。
<請求項11>
判定手段は、例えば、判定部106を用いることにより実現される。
出力手段は、例えば、出力部107および出力装置200を用いることにより実現される。