特許第6582973号(P6582973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6582973
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】回転電機およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/28 20060101AFI20190919BHJP
   H02K 15/085 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   H02K3/28 K
   H02K15/085
【請求項の数】12
【全頁数】63
(21)【出願番号】特願2015-255439(P2015-255439)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-118802(P2017-118802A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 昌史
【審査官】 小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/091609(WO,A1)
【文献】 特開2014−036468(JP,A)
【文献】 特開昭59−053050(JP,A)
【文献】 特開昭61−236338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/28
H02K 15/085
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットが形成されている固定子鉄心と、
前記複数のスロットのうちの一対のスロット間で巻装されており、前記一対のスロットに収容される一対のコイルサイドと前記一対のコイルサイドと一体に形成され前記一対のコイルサイドの同一側端部をそれぞれ接続する一対のコイルエンドとを有する単位コイルを複数含む固定子コイルと、
を備える固定子と、
前記固定子に対して移動可能に支持されている可動子鉄心と、
前記可動子鉄心に設けられている少なくとも一対の可動子磁極と、
を備える可動子と、
を具備する毎極毎相スロット数の小数点以下が0.5となる分数スロット構成の回転電機であって、
前記固定子コイルに含まれる前記複数の単位コイルは、前記少なくとも一対の可動子磁極のうちの同一極性の可動子磁極に対向するように、前記一対の可動子磁極に対向するスロット単位で集約されており、
前記一対の可動子磁極に対向するスロット単位で集約された複数の前記単位コイルは、前記一対のコイルサイド間のコイルピッチが異なる複数の前記単位コイルが同心状に巻装され、電気的に直列接続されて極コイルが構成されており、
前記固定子コイルは、一つの前記極コイル、または、直列接続および並列接続のうちの少なくとも一方により電気的に接続されている複数の前記極コイルを有する相コイルを複数備え、
前記複数の相コイルを構成する各前記極コイルは、前記複数のスロットの占有状態に関して、一の前記単位コイルの前記一対のコイルサイドが前記一対のスロットに収容されたときに当該一対のコイルサイドが当該一対のスロットの全体を占有するフルコイルと、
一の前記単位コイルの前記一対のコイルサイドが前記一対のスロットに収容されたときに当該一対のコイルサイドのうちの一方のコイルサイドが当該一対のスロットのうちの一方のスロットの半分を占有し当該一対のコイルサイドのうちの他方のコイルサイドが当該一対のスロットのうちの他方のスロットの半分を占有するハーフコイルと、
の二種類の前記単位コイルを備え、
各前記極コイルは、一つの前記ハーフコイルを備える回転電機。
【請求項2】
前記ハーフコイルの前記一対のコイルサイド間のコイルピッチは、前記極コイルを構成する前記複数の単位コイルの中で最小である請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記固定子に対する前記可動子の移動方向を第一方向とし、前記スロットの深さ方向を第二方向とし、前記第一方向および前記第二方向のいずれの方向に対しても直交する方向を第三方向とするとき、
前記固定子コイルに含まれる前記複数の単位コイルの前記一対のコイルエンドは、前記第三方向の両端部において、前記第二方向または前記第三方向に前記相コイル毎にそれぞれ配設されており、多層に形成されている請求項1または請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記スロットの深さ方向を第二方向とし、前記第二方向のうちのスロット開口部側からスロット底部側に向かう方向を第二方向スロット底部側とするとき、
各前記極コイルを構成する前記複数の単位コイルの各巻進行方向は、いずれも前記第二方向スロット底部側である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項5】
各前記極コイルを構成する前記複数の単位コイルは、前記一対のコイルサイド間のコイルピッチが最大の前記単位コイルから前記一対のコイルサイド間のコイルピッチが最小の前記単位コイルへ連続して巻進められており、最も近接する前記単位コイル同士が電気的に接続されている請求項4に記載の回転電機。
【請求項6】
各前記極コイルは、巻始めの前記単位コイルの一の前記コイルサイドから引き出される第一コイル引出部と、巻終りの前記単位コイルの一の前記コイルサイドから引き出される第二コイル引出部とからなる一対のコイル引出部を備え、
前記固定子に対する前記可動子の移動方向を第一方向とし、前記第一方向のうちの前記第二コイル引出部側から前記第一コイル引出部側に向かう方向を第一方向第一コイル引出部側とし、前記第一方向のうちの前記第一コイル引出部側から前記第二コイル引出部側に向かう方向を第一方向第二コイル引出部側とするとき、
前記第一コイル引出部は、当該極コイルを構成する前記複数の単位コイルのうちの前記一対のコイルサイド間のコイルピッチが最大の前記単位コイルの前記第一方向第一コイル引出部側の前記コイルサイドから引き出され、
前記第二コイル引出部は、当該極コイルを構成する前記複数の単位コイルのうちの前記一対のコイルサイド間のコイルピッチが最小の前記単位コイルの前記第一方向第二コイル引出部側の前記コイルサイドから引き出されている請求項5に記載の回転電機。
【請求項7】
前記スロットの深さ方向を第二方向とし、前記第二方向のうちのスロット底部側からスロット開口部側に向かう方向を第二方向スロット開口部側とするとき、
各前記極コイルを構成する前記複数の単位コイルの各巻進行方向は、いずれも前記第二方向スロット開口部側である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項8】
各前記極コイルを構成する前記複数の単位コイルは、前記一対のコイルサイド間のコイルピッチが最小の前記単位コイルから前記一対のコイルサイド間のコイルピッチが最大の前記単位コイルへ連続して巻進められており、最も近接する前記単位コイル同士が電気的に接続されている請求項7に記載の回転電機。
【請求項9】
各前記極コイルは、巻始めの前記単位コイルの一の前記コイルサイドから引き出される第一コイル引出部と、巻終りの前記単位コイルの一の前記コイルサイドから引き出される第二コイル引出部とからなる一対のコイル引出部を備え、
前記固定子に対する前記可動子の移動方向を第一方向とし、前記第一方向のうちの前記第二コイル引出部側から前記第一コイル引出部側に向かう方向を第一方向第一コイル引出部側とし、前記第一方向のうちの前記第一コイル引出部側から前記第二コイル引出部側に向かう方向を第一方向第二コイル引出部側とするとき、
前記第一コイル引出部は、当該極コイルを構成する前記複数の単位コイルのうちの前記一対のコイルサイド間のコイルピッチが最小の前記単位コイルの前記第一方向第一コイル引出部側の前記コイルサイドから引き出され、
前記第二コイル引出部は、当該極コイルを構成する前記複数の単位コイルのうちの前記一対のコイルサイド間のコイルピッチが最大の前記単位コイルの前記第一方向第二コイル引出部側の前記コイルサイドから引き出されている請求項8に記載の回転電機。
【請求項10】
前記ハーフコイルの前記一対のコイルサイドのうちの一方のコイルサイドであって前記スロット底部側に配設される前記コイルサイドが占有するスロットの半分に相当する部位を第一ハーフスロット部位とし、当該一対のコイルサイドのうちの他方のコイルサイドであって前記スロット開口部側に配設される前記コイルサイドが占有するスロットの半分に相当する部位を第二ハーフスロット部位とし、前記第一ハーフスロット部位および前記第二ハーフスロット部位の両方を備える前記ハーフコイルを両側占有ハーフコイルとし、
各前記極コイルを構成する前記複数の単位コイル間をそれぞれ接続する各渡り線の一端側の端部であって前記スロット底部側に配設される端部を第一渡り線端部とし、当該渡り線の他端側の端部であって前記スロット開口部側に配設される端部を第二渡り線端部とするとき、
前記両側占有ハーフコイルの前記第一ハーフスロット部位内の一点を始点とし前記第二ハーフスロット部位内の一点を終点とする第一ベクトルと、各前記渡り線の前記第一渡り線端部を始点とし前記第二渡り線端部を終点とする第二ベクトルとのなす角が、いずれも機械角90°より小さい鋭角である請求項6または請求項9に記載の回転電機。
【請求項11】
請求項6に従属する請求項10に記載の回転電機の製造方法であって、
前記複数の相コイルを前記第一方向第二コイル引出部側に順に位相が遅れるように相順に配設するときに、
前記複数の相コイルのうちの一の前記相コイルを前記複数のスロットに装着する第一装着工程と、
前記複数の相コイルのうちの残りの一の前記相コイルであって前記第一装着工程で装着された前記相コイルと比べて、電気角360°を相数で除した相間最小位相差分、位相が遅れる前記相コイルを、前記第一装着工程で装着された前記相コイルに対して、前記相間最小位相差分、前記第一方向第二コイル引出部側にずらして、前記複数のスロットに装着する第二遅相装着工程と、
前記複数の相コイルがすべて前記複数のスロットに装着されるまで、直近で装着した前記相コイルと比べて前記相間最小位相差分、位相が遅れる前記相コイルを、前記直近で装着した前記相コイルに対して、前記相間最小位相差分、前記第一方向第二コイル引出部側にずらして、前記複数のスロットに装着する第三遅相装着工程と、
を備える回転電機の製造方法。
【請求項12】
請求項9に従属する請求項10に記載の回転電機の製造方法であって、
前記複数の相コイルを前記第一方向第二コイル引出部側に順に位相が遅れるように相順に配設するときに、
前記複数の相コイルのうちの一の前記相コイルを前記複数のスロットに装着する第一装着工程と、
前記複数の相コイルのうちの残りの一の前記相コイルであって前記第一装着工程で装着された前記相コイルと比べて、電気角360°を相数で除した相間最小位相差分、位相が進む前記相コイルを、前記第一装着工程で装着された前記相コイルに対して、前記相間最小位相差分、前記第一方向第一コイル引出部側にずらして、前記複数のスロットに装着する第二進相装着工程と、
前記複数の相コイルがすべて前記複数のスロットに装着されるまで、直近で装着した前記相コイルと比べて前記相間最小位相差分、位相が進む前記相コイルを、前記直近で装着した前記相コイルに対して、前記相間最小位相差分、前記第一方向第一コイル引出部側にずらして、前記複数のスロットに装着する第三進相装着工程と、
を備える回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同心状に巻装された固定子コイルを備える回転電機およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記回転電機に係る発明の一例として、特許文献1に記載の発明が挙げられる。特許文献1に記載の回転電機は、固定子鉄心の径方向外側に設けられる単位コイルの周方向長と比べて、固定子鉄心の径方向内側に設けられる単位コイルの周方向長が短く設定されている。これにより、特許文献1に記載の回転電機は、単位コイルの周方向長がすべて同じ場合と比べて、複数の単位コイルを含むコイル群のコイルエンドの全長を低減しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−035836号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】竹内寿太郎 原著、「大学課程 電機設計学(改訂2版)」株式会社オーム社、平成5年2月25日(改訂2版第1刷)発行、43頁〜44頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、4極24スロット構成、4極36スロット構成、4極48スロット構成などの三相回転電機を対象としている。つまり、特許文献1に記載の発明は、毎極毎相スロット数が整数である整数スロット構成の回転電機を対象とするものであり、特許文献1に記載の発明は、毎極毎相スロット数が整数でない分数スロット構成の回転電機を対象とするものではない。分数スロット構成の回転電機は、整数スロット構成の回転電機と比べて、トルクリップルが小さく、起磁力分布は正弦波に近くなる。そのため、分数スロット構成の回転電機は、整数スロット構成の回転電機と比べて、回転電機の高性能化を図ることができる。
【0006】
しかしながら、分数スロット構成の回転電機では、非特許文献1に記載の三相電機子巻線のように、固定子コイルを二層重巻で巻装したものが多い。二層重巻で巻装された固定子コイルは、固定子鉄心に組み付ける際に、スロットに挿通されるコイルサイドの組み付け順序を調整する必要があり、固定子コイルの組み付け作業が煩雑になる。このように、従来の分数スロット構成の回転電機は、同心状に巻装された固定子コイルのように相コイル単位で固定子コイルを組み付けることが困難であり、固定子コイルの組み付け作業の作業効率が低下する。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、同心状に巻装された固定子コイルを備える分数スロット構成の回転電機およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る回転電機は、複数のスロットが形成されている固定子鉄心と、前記複数のスロットのうちの一対のスロット間で巻装されており、前記一対のスロットに収容される一対のコイルサイドと前記一対のコイルサイドと一体に形成され前記一対のコイルサイドの同一側端部をそれぞれ接続する一対のコイルエンドとを有する単位コイルを複数含む固定子コイルと、を備える固定子と、前記固定子に対して移動可能に支持されている可動子鉄心と、前記可動子鉄心に設けられている少なくとも一対の可動子磁極と、を備える可動子と、を具備する毎極毎相スロット数の小数点以下が0.5となる分数スロット構成の回転電機であって、前記固定子コイルに含まれる前記複数の単位コイルは、前記少なくとも一対の可動子磁極のうちの同一極性の可動子磁極に対向するように、前記一対の可動子磁極に対向するスロット単位で集約されており、前記一対の可動子磁極に対向するスロット単位で集約された複数の前記単位コイルは、前記一対のコイルサイド間のコイルピッチが異なる複数の前記単位コイルが同心状に巻装され、電気的に直列接続されて極コイルが構成されており、前記固定子コイルは、一つの前記極コイル、または、直列接続および並列接続のうちの少なくとも一方により電気的に接続されている複数の前記極コイルを有する相コイルを複数備え、前記複数の相コイルを構成する各前記極コイルは、前記複数のスロットの占有状態に関して、一の前記単位コイルの前記一対のコイルサイドが前記一対のスロットに収容されたときに当該一対のコイルサイドが当該一対のスロットの全体を占有するフルコイルと、一の前記単位コイルの前記一対のコイルサイドが前記一対のスロットに収容されたときに当該一対のコイルサイドのうちの一方のコイルサイドが当該一対のスロットのうちの一方のスロットの半分を占有し当該一対のコイルサイドのうちの他方のコイルサイドが当該一対のスロットのうちの他方のスロットの半分を占有するハーフコイルと、の二種類の前記単位コイルを備え、各前記極コイルは、一つの前記ハーフコイルを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る回転電機によれば、固定子コイルに含まれる複数の単位コイルが、少なくとも一対の可動子磁極のうちの同一極性の可動子磁極に対向するように、一対の可動子磁極に対向するスロット単位で集約されており、極コイルが構成されている。また、複数の相コイルを構成する各極コイルは、複数のスロットの占有状態に関して、フルコイルとハーフコイルとの二種類の単位コイルを備えている。さらに、各極コイルは、一つのハーフコイルを備えている。これらにより、本発明に係る回転電機は、毎極毎相スロット数の小数点以下が0.5となる分数スロット構成の回転電機において、同心状に巻装された固定子コイルを備えることができる。そのため、本発明に係る回転電機では、固定子コイルを相コイル単位で組み付けることが可能であり、二層重巻で巻装された固定子コイルを備える回転電機と比べて、固定子コイルの組み付け作業の作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第一実施形態に係り、第三方向(矢印Z方向)に垂直な平面で、回転電機100を切断した端面の一部を示す切断部端面図である。
図2】第一実施形態に係り、第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット開口部11b側から視た極コイル31の構成例を模式的に示す図である。
図3】第一実施形態に係り、U相コイル33uの構成例を模式的に示す図である。
図4】第一実施形態に係り、三相の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)の構成例を模式的に示す図である。
図5】第一変形形態に係り、U相コイル33uの他の構成例を模式的に示す図である。
図6A】第一実施形態に係り、第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット開口部11b側から視たU相コイル33uの結線の一例を示す結線図である。
図6B】第一実施形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た図6Aに示すU相コイル33uが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図7A】第一実施形態に係り、第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット開口部11b側から視た三相の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)の結線の一例を示す結線図である。
図7B】第一実施形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た図7Aに示す三相の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)が複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図8】第一実施形態に係り、三相の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)のうちの一の相コイル33が、コイル挿入機3Iによって、複数のスロット11に装着される様子を模式的に示す模式図である。
図9】第一実施形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た図2に示す極コイル31が複数(6つ)のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図10】第二変形形態に係り、第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット開口部11b側から視た極コイル31の構成例を模式的に示す図である。
図11】第二変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た図10に示す極コイル31が複数(6つ)のスロット11に装着された状態の一例を模式的に示す図である。
図12】第三変形形態に係り、第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット開口部11b側から視た極コイル31の構成例を模式的に示す図である。
図13】第三変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た図12に示す極コイル31が複数(4つ)のスロット11に装着された状態の一例を模式的に示す図である。
図14】第四変形形態に係り、第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット開口部11b側から視た極コイル31の構成例を模式的に示す図である。
図15】第四変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た図14に示す極コイル31が複数(4つ)のスロット11に装着された状態の一例を模式的に示す図である。
図16A】第一実施形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たU相コイル33uが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図16B】第一実施形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たV相コイル33vが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図16C】第一実施形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たW相コイル33wが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図16D】第一実施形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た三相の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)の各ハーフコイル23hが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図16E】第一実施形態に係り、第一ベクトル35aと、第二ベクトル35b,35bとのなす角φa1,φa2を模式的に示す図である。
図17A】第五変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たU相コイル33uが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図17B】第五変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たW相コイル33wが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図17C】第五変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たV相コイル33vが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図17D】第五変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た三相の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)の各ハーフコイル23hが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図17E】第五変形形態に係り、第一ベクトル35aと、第二ベクトル35b,35bとのなす角φb1,φb2を模式的に示す図である。
図18A】第三変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たU相コイル33uが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図18B】第三変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たV相コイル33vが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図18C】第三変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たW相コイル33wが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図18D】第三変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た三相の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)の各ハーフコイル23hが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図19A】第六変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たU相コイル33uが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図19B】第六変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たW相コイル33wが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図19C】第六変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たV相コイル33vが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図19D】第六変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た三相の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)の各ハーフコイル23hが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図20】第一実施形態に係り、複数のスロット11の相配置の一例を示す図である。
図21】参考形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部832f,832s側から視た二層重巻の極対コイル832を模式的に示す図である。
図22】参考形態に係り、図21に示す二層重巻における複数のスロット11の相配置の一例を示す図である。
図23】第七変形形態に係り、第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット開口部11b側から視た極コイル31の構成例を模式的に示す図である。
図24A】第一実施形態に係り、第二方向(矢印Y方向)に沿って固定子40を切断して、相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)毎に各単位コイル20の一対のコイルエンド22,22が配設された状態の一例を模式的に示す切断部端面図である。
図24B】第一実施形態に係り、第二方向(矢印Y方向)に沿って固定子40を切断して、相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)毎に各単位コイル20の一対のコイルエンド22,22が配設された状態の他の一例を模式的に示す切断部端面図である。
図25】第二実施形態に係り、第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット開口部11b側から視た極コイル31の構成例を模式的に示す図である。
図26】第二実施形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た図25に示す極コイル31が複数(6つ)のスロット11に装着された状態の一例を模式的に示す図である。
図27】第八変形形態に係り、第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット開口部11b側から視た極コイル31の構成例を模式的に示す図である。
図28】第八変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た図27に示す極コイル31が複数(6つ)のスロット11に装着された状態の一例を模式的に示す図である。
図29】第九変形形態に係り、第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット開口部11b側から視た極コイル31の構成例を模式的に示す図である。
図30】第九変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た図29に示す極コイル31が複数(4つ)のスロット11に装着された状態の一例を模式的に示す図である。
図31】第十変形形態に係り、第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット開口部11b側から視た極コイル31の構成例を模式的に示す図である。
図32】第十変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た図31に示す極コイル31が複数(4つ)のスロット11に装着された状態の一例を模式的に示す図である。
図33A】第二実施形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たU相コイル33uが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図33B】第二実施形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たW相コイル33wが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図33C】第二実施形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たV相コイル33vが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図33D】第二実施形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た三相の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)の各ハーフコイル23hが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図34A】第十一変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たU相コイル33uが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図34B】第十一変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たV相コイル33vが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図34C】第十一変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たW相コイル33wが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図34D】第十一変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た三相の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)の各ハーフコイル23hが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図35A】第九変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たU相コイル33uが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図35B】第九変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たW相コイル33wが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図35C】第九変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たV相コイル33vが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図35D】第九変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た三相の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)の各ハーフコイル23hが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図36A】第十二変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たU相コイル33uが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図36B】第十二変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たV相コイル33vが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図36C】第十二変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視たW相コイル33wが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図36D】第十二変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た三相の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)の各ハーフコイル23hが複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図である。
図37】第十三変形形態に係り、第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット底部11a側から視た極コイル31の構成例を模式的に示す図である。
図38】第十三変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た図37に示す極コイル31が複数(6つ)のスロット11に装着された状態の一例を模式的に示す図である。
図39】第十四変形形態に係り、第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット底部11a側から視た極コイル31の構成例を模式的に示す図である。
図40】第十四変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た図39に示す極コイル31が複数(6つ)のスロット11に装着された状態の一例を模式的に示す図である。
図41】第十五変形形態に係り、第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット開口部11b側から視た極コイル31の構成例を模式的に示す図である。
図42】第十五変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た図41に示す極コイル31が複数(6つ)のスロット11に装着された状態の一例を模式的に示す図である。
図43】第十六変形形態に係り、第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット開口部11b側から視た極コイル31の構成例を模式的に示す図である。
図44】第十六変形形態に係り、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た図43に示す極コイル31が複数(6つ)のスロット11に装着された状態の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図面は、各実施形態および各変形形態について、共通する箇所には共通の符号が付されており、本明細書では、重複する説明が省略されている。また、一の実施形態で既述されていることは、他の実施形態および各変形形態についても適宜適用することができる。なお、図面は、概念図であり、細部構造の寸法まで規定するものではない。
【0012】
<第一実施形態>
(回転電機100の概要)
図1に示すように、本実施形態の回転電機100は、固定子40と可動子70とを具備している。固定子40は、複数のスロット11が形成されている固定子鉄心10と、複数の単位コイル20を含む固定子コイル30とを備えている。可動子70は、固定子40に対して移動可能に支持されている可動子鉄心50と、可動子鉄心50に設けられている少なくとも一対の可動子磁極61,62とを備えている。
【0013】
本実施形態では、固定子鉄心10には、60個のスロット11が形成されており、固定子コイル30は、三相の各相12個、合計36個の単位コイル20を含んでいる。また、本実施形態では、可動子鉄心50には、四組の一対の可動子磁極61,62を備えている。このように、本実施形態の回転電機100は、8極60スロット構成の三相回転電機(可動子70の磁極数が2極、固定子40のスロット数が15スロットを基本構成とする三相回転電機)であり、毎極毎相スロット数は2.5である。つまり、本実施形態の回転電機100は、毎極毎相スロット数の小数点以下が0.5となる分数スロット構成の回転電機100である。また、本実施形態の回転電機100は、固定子40および可動子70が同軸に配設されるラジアル空隙型の円筒状回転電機である。さらに、可動子70は、固定子40の内方(回転電機100の軸心側)に設けられている。
【0014】
ここで、固定子40に対する可動子70の移動方向を第一方向(矢印X方向)とする。また、スロット11の深さ方向を第二方向(矢印Y方向)とする。さらに、第一方向(矢印X方向)および第二方向(矢印Y方向)のいずれの方向に対しても直交する方向を第三方向(矢印Z方向)とする。円筒状回転電機では、第一方向(矢印X方向)は、回転電機100の周方向に沿った方向に相当し、可動子70の回転方向に相当する。第二方向(矢印Y方向)は、回転電機100の径方向に沿った方向に相当し、第三方向(矢印Z方向)は、回転電機100の軸線方向に沿った方向に相当する。
【0015】
固定子鉄心10は、薄板状の電磁鋼板(例えば、ケイ素鋼板)が第三方向(矢印Z方向)に、複数積層されて形成されている。固定子鉄心10は、バックヨーク部10aと、バックヨーク部10aと一体に形成される複数(本実施形態では、60個)の固定子磁極部10bとを備えている。バックヨーク部10aは、第一方向(矢印X方向)に沿って形成されており、各固定子磁極部10bは、バックヨーク部10aから第二方向(矢印Y方向)(回転電機100の軸心方向)に突出するように形成されている。
【0016】
第一方向(矢印X方向)に隣接する固定子磁極部10b,10bの間には、スロット11が形成されており、固定子鉄心10には、複数(60個)のスロット11が形成されている。複数(60個)のスロット11のうちの一対のスロット11,11には、単位コイル20が巻装されている。後述するように、複数(三相の各相12個、合計36個)の単位コイル20の各々が巻装される一対のスロット11,11の組み合わせは、それぞれ異なっている。なお、各固定子磁極部10bの先端部10cは、第一方向(矢印X方向)に幅広に形成されている。
【0017】
図1に示すように、第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット開口部11b側からスロット底部11a側に向かう方向を第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)とする。また、第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット底部11a側からスロット開口部11b側に向かう方向を第二方向スロット開口部側(矢印Y2方向)とする。さらに、スロット11のうち、固定子コイル30が装着される部位のスロット面積を第二方向(矢印Y方向)に略二等分するように、第一方向(矢印X方向)に沿って延びる部位をスロット中央部11cとする。
【0018】
可動子70は、可動子鉄心50を備えている。可動子鉄心50は、薄板状の電磁鋼板(例えば、ケイ素鋼板)が第三方向(矢印Z方向)に、複数積層されて円柱状に形成されている。可動子鉄心50には、シャフト(図示略)が設けられており、シャフトは、可動子鉄心50の軸心を第三方向(矢印Z方向)に貫通している。シャフトの第三方向(矢印Z方向)両端部は、軸受部材(図示略)によって、回転可能に支持されている。これにより、可動子鉄心50は、固定子40に対して移動可能(回転可能)になっている。
【0019】
可動子鉄心50には、四組の一対の可動子磁極61,62が埋設されている。具体的には、可動子鉄心50には、第一方向(矢印X方向)に等間隔で、複数の磁石収容部(図示略)が設けられている。複数の磁石収容部には、所定磁極対分(本実施形態では四磁極対分)の永久磁石が埋設されている。可動子70は、永久磁石と、固定子40に発生する回転磁界とによって、固定子40に対して移動可能(回転可能)になっている。
【0020】
永久磁石は、例えば、公知のフェライト系磁石や希土類系磁石を用いることができる。また、永久磁石の製法は、限定されない。永久磁石は、例えば、樹脂ボンド磁石や焼結磁石を用いることができる。樹脂ボンド磁石は、例えば、フェライト系の原料磁石粉末と樹脂などを混合して、射出成形などによって可動子鉄心50に鋳込めて形成される。焼結磁石は、例えば、希土類系の原料磁石粉末を磁界中で加圧成形して、高温で焼き固めて形成される。なお、一対の可動子磁極61,62は、各固定子磁極部10bの先端部10cと対向する可動子鉄心50の表面(外周表面)に永久磁石を設ける表面磁石形とすることもできる。また、本明細書では、一対の可動子磁極61,62のうち、一方の極性(例えば、N極)を備える可動子磁極を可動子磁極61で示し、他方の極性(例えば、S極)を備える可動子磁極を可動子磁極62で示している。
【0021】
固定子コイル30は、複数(三相の各相12個、合計36個)の単位コイル20を含んでいる。各単位コイル20は、銅などの導体(コイル)が巻き回されて形成されており、導体表面がエナメルなどの絶縁層で被覆されている。各単位コイル20の断面形状は、限定されるものではなく、任意の断面形状とすることができる。例えば、各単位コイル20は、断面円形状の丸線、断面多角形状の角線などの種々の断面形状の導体(コイル)を用いることができる。また、各単位コイル20は、複数のより細いコイル素線を組み合わせた並列細線を用いることもできる。並列細線を用いる場合、単線の場合と比べて各単位コイル20に発生する渦電流損が低減され、回転電機100の効率が向上する。また、コイル成形に要する力を低減することができるので、コイルの成形性が向上してコイル製作が容易になる。
【0022】
図2に示すように、各単位コイル20は、一対のコイルサイド21,21と、一対のコイルエンド22,22とを有している。各単位コイル20は、複数(60個)のスロット11のうちの一対のスロット11,11間で巻装されており、一対のコイルサイド21,21と、一対のコイルエンド22,22とは、一体に形成されている。一対のコイルサイド21,21は、一の単位コイル20のうちの一対のスロット11,11に収容される部位をいう。また、一対のコイルエンド22,22は、一の単位コイル20のうちの当該一対のコイルサイド21,21の同一側端部をそれぞれ接続する部位をいう。なお、同図では、3つの単位コイル20が図示されており、一対の可動子磁極61,62が併せて図示されている。
【0023】
固定子コイル30に含まれる複数(三相の各相12個、合計36個)の単位コイル20は、少なくとも一対の可動子磁極61,62(本実施形態では、四組の一対の可動子磁極61,62)のうちの同一極性の可動子磁極(図2では、N極の可動子磁極61)に対向するように、一対の可動子磁極61,62に対向するスロット単位で集約されている。本実施形態の回転電機100は、8極60スロット構成の三相回転電機であるので、15スロット単位で、複数(一相あたり3つ)の単位コイル20が集約されている。
【0024】
また、一対の可動子磁極61,62に対向するスロット単位(15スロット単位)で集約された複数(一相あたり3つ)の単位コイル20は、極コイル31を構成している。各極コイル31は、一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが異なる複数(3つ)の単位コイル20が同心状に巻装され、電気的に直列接続されている。極コイル31を構成する3つの単位コイル20を第一単位コイル20a、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cとする。また、単位コイル20,20同士を電気的に接続する部位を単位コイル間接続部31cとする。本実施形態では、第一単位コイル20a、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cは、2つの単位コイル間接続部31c,31cを介して、電気的に直列接続されている。
【0025】
図2に示すように、第一単位コイル20aの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチCP1は、9スロットピッチ(9sp)に設定されている。第二単位コイル20bの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチCP2は、7スロットピッチ(7sp)に設定されている。第三単位コイル20cの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチCP3は、5スロットピッチ(5sp)に設定されている。このように、コイルピッチCP1〜CP3は、それぞれ異なっている。
【0026】
各極コイル31は、第一コイル引出部32fと第二コイル引出部32sとからなる一対のコイル引出部32f,32sを備えていると好適である。第一コイル引出部32fは、巻始めの単位コイル20(第一単位コイル20a)の一のコイルサイド21から引き出される。当該コイルサイド21を第一コイルサイド21aとする。また、第二コイル引出部32sは、巻終りの単位コイル20(第三単位コイル20c)の一のコイルサイド21から引き出される。当該コイルサイド21を第二コイルサイド21bとする。同図では、極コイル31の巻始め部32aから巻終り部32bまでの巻順を数字で示している。なお、各極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20は、同心状に巻装されるので、各単位コイル20の一対のコイルサイド21,21には、同一の数字が付されている。
【0027】
図3に示すように、複数(4つ)の極コイル31は、各一対のコイル引出部32f,32sを介して電気的に並列接続されており、U相コイル33uが形成されている。具体的には、各極コイル31の巻始め部32a同士が電気的に接続され、第一相端子3T1に接続されている。また、各極コイル31の巻終り部32b同士が電気的に接続され、第二相端子3T2に接続されている。V相コイル33vおよびW相コイル33wは、U相コイル33uと同様に形成することができる。
【0028】
固定子コイル30は、複数(3つ)の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)を備えている。本実施形態の回転電機100は、三相回転電機であり、U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33wは、電気角で120°ずつ位相がずれている。本明細書では、U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33wは、この順に位相が遅れているものとする。
【0029】
図2に示すように、第一方向(矢印X方向)のうちの第二コイル引出部32s側から第一コイル引出部32f側に向かう方向を第一方向第一コイル引出部側(矢印X1方向)とする。また、第一方向(矢印X方向)のうちの第一コイル引出部32f側から第二コイル引出部32s側に向かう方向を第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)とする。三相の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)の相順方向は、第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)とする。
【0030】
図4に示すように、三相の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)は、Y結線で電気的に接続することができる。同図では、U相の相端子は、U相端子3TUで示され、V相の相端子は、V相端子3TVで示され、W相の相端子は、W相端子3TWで示されている。相端子(U相端子3TU、V相端子3TVおよびW相端子3TW)は、第一相端子3T1および第二相端子3T2のうちの一方に相当し、中性点3Nは、第一相端子3T1および第二相端子3T2のうちの他方に相当する。本明細書の実施形態および変形形態では、後述するハーフコイル23hが相端子(U相端子3TU、V相端子3TVおよびW相端子3TW)側に配設されるように、三相の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)が、電気的に接続されている。なお、三相の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)は、Δ結線で電気的に接続することもできる。
【0031】
各相コイル33は、電気的に直列接続されている複数(4つ)の極コイル31によって形成することもできる。また、図5に示すように、U相コイル33uは、複数(4つ)の極コイル31のうちの第一方向(矢印X方向)に隣接または二磁極対分おきに存在する複数(2つ)の極コイル31,31を直列接続し、残りの第一方向(矢印X方向)に隣接または二磁極対分おきに存在する複数(2つ)の極コイル31,31を直列接続して、これらを並列接続することもできる(第一変形形態)。これらのことは、V相コイル33vおよびW相コイル33wについても同様である。つまり、各相コイル33は、直列接続および並列接続の両方によって電気的に接続されている複数(4つ)の極コイル31を備えることもできる。
【0032】
このように、三相の各相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)は、直列接続および並列接続のうちの少なくとも一方により電気的に接続されている複数(4つ)の極コイル31によって構成することができる。各相コイル33の極コイル31の数は、可動子70の極対数に対応している。本実施形態の可動子70は、磁極数が8極であり、極対数は4である。そのため、各相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)は、4つの極コイル31によって構成されている。なお、可動子70の磁極数が2極の回転電機の場合は、各相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)は、1つの極コイル31によって構成される。
【0033】
本実施形態の回転電機100によれば、各極コイル31は、第一コイル引出部32fと、第二コイル引出部32sとからなる一対のコイル引出部32f,32sを備えている。さらに、各相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)は、各一対のコイル引出部32f,32sを介して、当該相コイル33を構成する複数(4つ)の極コイル31が電気的に接続されている。そのため、本実施形態の回転電機100は、各極コイル31間の接続(特に、並列接続や直列接続と並列接続との混在)が容易である。
【0034】
(単位コイル20の種類)
次に、単位コイル20の種類について説明する。図6Aおよび図6Bは、U相コイル33uを構成する各極コイル31が複数のスロット11に装着された状態を示しており、各極コイル31は、電気的に並列接続されている。図6Aおよび図6Bでは、U相コイル33uの四磁極分(二磁極対分)の極コイル31,31が示されている。また、図6Aでは、極コイル31は、説明の便宜上、<U8>および<U2>の符号が付されている。(U1)および(U3)は、一対の可動子磁極61,62に対向するスロット単位(15スロット単位)で、複数(3つ)の単位コイル20が集約された結果、単位コイル20が存在しない領域を示している。
【0035】
なお、図6Bでは、2つの単位コイル間接続部31c,31cおよび一対のコイル引出部32f,32s(第一コイル引出部32fおよび第二コイル引出部32s)の記載が省略されている。また、図6Bでは、各単位コイル20の巻方向が「丸印にクロス」および「丸印にドット」で示されている。「丸印にクロス」は、コイル(コイルサイド21)が第三方向(矢印Z方向)のうちの紙面手前側から紙面奥側に向かって巻き回されていることを示している。「丸印にドット」は、コイル(コイルサイド21)が第三方向(矢印Z方向)のうちの紙面奥側から紙面手前側に向かって巻き回されていることを示している。図6Aおよび図6Bについて既述したことは、後述する図7Aおよび図7Bについても同様である。また、各単位コイル20の巻方向の図示の方法は、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た極コイル31が複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図において同様である。
【0036】
例えば、図6Aに示す<U2>の第一単位コイル20aは、第一コイル引出部32fが引き出されるスロット番号9のスロット開口部11b側から巻始められる。そして、第一単位コイル20aは、一対のスロット11,11(スロット番号9および18)間で巻き回され、単位コイル間接続部31cの一端側のスロット番号18のスロット底部11a側で巻終わる。このときの第一単位コイル20aの巻進行方向W1は、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)であり、第一単位コイル20aの巻進行方向W1から視た第一単位コイル20aの巻方向は、反時計回りになる。上記単位コイル間接続部31cは、スロット番号18のスロット底部11a側からスロット番号10のスロット開口部11b側に引き回されている。
【0037】
<U2>の第二単位コイル20bは、上記単位コイル間接続部31cの他端側のスロット番号10のスロット開口部11b側から巻始められる。そして、第二単位コイル20bは、一対のスロット11,11(スロット番号10および17)間で巻き回され、上記単位コイル間接続部31cとは異なる単位コイル間接続部31cの一端側のスロット番号17のスロット底部11a側で巻終わる。このときの第二単位コイル20bの巻進行方向W2は、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)であり、第二単位コイル20bの巻進行方向W2から視た第二単位コイル20bの巻方向は、反時計回りになる。上述の単位コイル間接続部31cは、スロット番号17のスロット底部11a側からスロット番号11のスロット中央部11cに引き回されている。
【0038】
<U2>の第三単位コイル20cは、上述の単位コイル間接続部31cの他端側のスロット番号11のスロット中央部11cから巻始められる。そして、第三単位コイル20cは、一対のスロット11,11(スロット番号11および16)間で巻き回され、第二コイル引出部32sが引き出されるスロット番号16のスロット底部11a側で巻終わる。このときの第三単位コイル20cの巻進行方向W3は、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)であり、第三単位コイル20cの巻進行方向W3から視た第三単位コイル20cの巻方向は、反時計回りになる。なお、これらの巻順は、図2の数字で示す巻順と一致している。
【0039】
U相コイル33uを構成する各極コイル31は、複数のスロット11の占有状態に関して、フルコイル23fとハーフコイル23hとの二種類の単位コイル20を備えている。第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bは、フルコイル23fであり、第三単位コイル20cは、ハーフコイル23hである。図6Aでは、フルコイル23fは、実線の六角形で示され、ハーフコイル23hは、細破線の六角形で示されている。
【0040】
フルコイル23fは、一の単位コイル20(例えば、第一単位コイル20a)の一対のコイルサイド21,21が一対のスロット11,11(例えば、スロット番号9および18)に収容されたときに、当該一対のコイルサイド21,21が当該一対のスロット11,11(スロット番号9および18)の全体を占有する単位コイル20をいう。このことは、第一単位コイル20aが一対のスロット11,11(スロット番号54および3)に収容されたときについても同様であり、図示されていない残りの四磁極分(二磁極対分)の極コイル31,31についても同様である。
【0041】
また、第二単位コイル20bについても同様であり、第二単位コイル20bは、一対のスロット11,11(スロット番号10および17)の全体を占有する。このことは、第二単位コイル20bが一対のスロット11,11(スロット番号55および2)に収容されたときについても同様であり、図示されていない残りの四磁極分(二磁極対分)の極コイル31,31についても同様である。
【0042】
一方、ハーフコイル23hは、一の単位コイル20(本実施形態では、第三単位コイル20c)の一対のコイルサイド21,21が一対のスロット11,11(例えば、スロット番号11および16)に収容されたときに、当該一対のコイルサイド21,21のうちの一方のコイルサイド21が当該一対のスロット11,11(スロット番号11および16)のうちの一方のスロット11(スロット番号11)の半分を占有する。また、当該一対のコイルサイド21,21のうちの他方のコイルサイド21が当該一対のスロット11,11(スロット番号11および16)のうちの他方のスロット11(スロット番号16)の半分を占有する。このことは、第三単位コイル20cが一対のスロット11,11(スロット番号56および1)に収容されたときについても同様であり、図示されていない残りの四磁極分(二磁極対分)の極コイル31,31についても同様である。
【0043】
なお、図6Bでは、スロット11の占有状態が長方形の大きさで示されている。大きい長方形は、フルコイル23fのコイルサイド21が当該スロット11の全体を占有していることを示している。一方、小さい長方形は、ハーフコイル23hのコイルサイド21が当該スロット11の半分を占有していることを示している。これらの図示の方法は、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た極コイル31が複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図において同様である。
【0044】
図7Aおよび図7Bに示すように、U相コイル33uを構成する各極コイル31について既述したことは、V相コイル33vおよびW相コイル33wについても同様に言える。図7Aは、図6Aと同様に図示されており、図7Bは、図6Bと同様に図示されている。このように、複数(3つ)の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)を構成する各極コイル31は、複数のスロット11の占有状態に関して、フルコイル23fとハーフコイル23hとの二種類の単位コイル20を備えている。
【0045】
ここで、ハーフコイル23hの一対のコイルサイド21,21のうちの一方のコイルサイド21であってスロット底部11a側に配設されるコイルサイド21が占有するスロット11の半分に相当する部位を第一ハーフスロット部位11dとする。また、当該一対のコイルサイド21,21のうちの他方のコイルサイド21であってスロット開口部11b側に配設されるコイルサイド21が占有するスロット11の半分に相当する部位を第二ハーフスロット部位11eとする。V相コイル33vのハーフコイル23hは、第一ハーフスロット部位11dおよび第二ハーフスロット部位11eの両方を備えている。このように、第一ハーフスロット部位11dおよび第二ハーフスロット部位11eの両方を備えるハーフコイル23hを両側占有ハーフコイル23h1とする。
【0046】
一方、U相コイル33uは、第一ハーフスロット部位11dを備えているが、第二ハーフスロット部位11eを備えていない。W相コイル33wは、第二ハーフスロット部位11eを備えているが、第一ハーフスロット部位11dを備えていない。このように、第一ハーフスロット部位11dおよび第二ハーフスロット部位11eのうちの一方を備えるハーフコイル23hを片側占有ハーフコイル23h2とする。
【0047】
なお、図7Aでは、ハーフコイル23hの一対のコイルサイド21,21および一対のコイルエンド22,22のうち、スロット底部11a側に配設される部位を細破線で示している。また、ハーフコイル23hの一対のコイルサイド21,21および一対のコイルエンド22,22のうち、スロット開口部11b側に配設される部位を細実線で示している。V相コイル33vのハーフコイル23hは、細実線および細破線の両方で示される六角形で表されている。また、U相コイル33uのハーフコイル23hは、すべて細破線で示される六角形で表されている。さらに、W相コイル33wのハーフコイル23hは、すべて細実線で示される六角形で表されている。
【0048】
(各単位コイル20の巻進行方向)
まず、本実施形態の固定子コイル30の組み付け方法について説明し、次に、本実施形態の各単位コイル20の巻進行方向について説明する。図8に示すように、固定子コイル30の組み付け(スロット11への装着)は、公知のコイル挿入機(インサータ治具)を用いることができる。コイル挿入機3Iは、相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)単位で、複数(本実施形態では、4つ)の極コイル31を複数(本実施形態では、24個)のスロット11に装着することができる。
【0049】
本実施形態では、各極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20は、一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最大の単位コイル20(第一単位コイル20a)から一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最小の単位コイル20(第三単位コイル20c)へ連続して巻進められて、最も近接する単位コイル20,20同士(第一単位コイル20aと第二単位コイル20bおよび第二単位コイル20bと第三単位コイル20c)が電気的に接続されていると好適である。
【0050】
具体的には、巻枠(図示略)を用いて、各極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20(第一単位コイル20a、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20c)を巻装する。複数(3つ)の単位コイル20は、第一単位コイル20a、第二単位コイル20b、第三単位コイル20cの順に巻装する。なお、巻枠の巻ピッチは、各単位コイル20のコイルピッチCP1〜CP3に相当する巻ピッチに設定する。各単位コイル20のコイルピッチCP1〜CP3は、それぞれ異なるので、巻枠は、三種類必要になる。また、巻ピッチが異なる複数の巻枠を同軸に配設した巻枠を用いることもできる。
【0051】
図8に示すように、巻枠から取り外された各極コイル31は、第一コイル引出部32fが引き出される第一コイルサイド21aが紙面奥側(下側)になり、第二コイル引出部32sが引き出される第二コイルサイド21bが紙面手前側(上側)になる。このとき、第一単位コイル20aの巻進行方向W1から視た第一単位コイル20aの巻方向は、反時計回りになっている。また、第二単位コイル20bの巻進行方向W2から視た第二単位コイル20bの巻方向は、反時計回りになっている。さらに、第三単位コイル20cの巻進行方向W3から視た第三単位コイル20cの巻方向は、反時計回りになっている。
【0052】
同図に示すように、コイル挿入機3Iは、固定子コイル30を把持するインサータブレード3Bを備えている。インサータブレード3Bは、スロット11,11間のスロットピッチが反映されたクシ歯状の複数の支持部3B1を備えている。U相コイル33uを構成する(4つ)の極コイル31は、インサータブレード3Bの支持部3B1に落とし込まれて、U相コイル33uを構成する(4つ)の極コイル31が把持される。そして、インサータブレード3Bが固定子鉄心10の内方に挿入されて、U相コイル33uを構成する(4つ)の極コイル31は、一度に各スロット11内に挿入される。
【0053】
各極コイル31の第一単位コイル20aがスロット11,11に装着されたときに、第一単位コイル20aの巻進行方向W1は、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)になる。このとき、第一単位コイル20aの巻進行方向W1から視た第一単位コイル20aの巻方向は、反時計回りになる。また、第二単位コイル20bの巻進行方向W2から視た第二単位コイル20bの巻方向は、反時計回りになる。さらに、第三単位コイル20cの巻進行方向W3から視た第三単位コイル20cの巻方向は、反時計回りになる。なお、各極コイル31の巻始め部32aは、スロット開口部11b側に設けられ、各極コイル31の巻終り部32bは、スロット底部11a側に設けられる。
【0054】
以上のことは、V相コイル33vを構成する複数(4つ)の極コイル31についても同様であり、W相コイル33wを構成する複数(4つ)の極コイル31についても同様である。このように、本実施形態では、各極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20(第一単位コイル20a、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20c)の各巻進行方向(矢印W1方向、矢印W2方向および矢印W3方向)は、いずれも第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)になる。
【0055】
なお、本実施形態では、後述するように、固定子コイル30は、U相コイル33u、V相コイル33v、W相コイル33wの順に、組み付けられる。そして、極コイル31間の接続が行われ、相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)が形成される。この際、各相端子(3TU,3TV,3TW)および中性点3Nの接続なども行われる。また、各単位コイル20の一対のコイルエンド22,22、複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31cおよび一対のコイル引出部32f,32s(第一コイル引出部32fおよび第二コイル引出部32s)のレーシング結束が行われた後、ワニスの含浸、樹脂モールド等によって固定子コイル30が固定子鉄心10に固定される。
【0056】
本実施形態の回転電機100によれば、各極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20(第一単位コイル20a、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20c)の各巻進行方向(矢印W1方向、矢印W2方向および矢印W3方向)は、いずれも第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)である。よって、本実施形態の回転電機100は、コイル挿入機(インサータ治具)を用いて、相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)単位で、複数(4つ)の極コイル31を複数(24個)のスロット11に装着することができる。具体的には、各相コイル33を構成する複数(4つ)の極コイル31を、インサータブレード3Bの支持部3B1に落とし込んで、当該複数(4つ)の極コイル31を把持して、当該複数(4つ)の極コイル31を一度に各スロット11内に挿入し、装着することができる。つまり、本実施形態の回転電機100は、上記装着方法が難しい二層重巻と比べて、固定子コイル30の組み付けに要する作業工数を短縮することができる。
【0057】
また、本実施形態の回転電機100によれば、各極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20は、一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最大の単位コイル20(第一単位コイル20a)から一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最小の単位コイル20(第三単位コイル20c)へ連続して巻進められており、最も近接する単位コイル20,20同士(第一単位コイル20aと第二単位コイル20bおよび第二単位コイル20bと第三単位コイル20c)が電気的に接続されている。そのため、各極コイル31を構成する単位コイル20の各々を同心状に巻装した後に、別途、単位コイル20間を接続する場合と比べて、単位コイル20間の接続が簡素になり、固定子コイル30の巻装作業の作業性が向上する。なお、各相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)を構成する複数(4つ)の極コイル31を直列接続する場合は、複数(4つ)の極コイル31を連続して巻進めて、各相コイル33を形成することもできる。
【0058】
(一対のコイル引出部32f,32sの配置)
次に、各極コイル31における一対のコイル引出部32f,32sの好適な配置について説明する。図2および図9に示すように、本実施形態では、各極コイル31の第一コイル引出部32fは、当該極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最大の単位コイル20(第一単位コイル20a)の第一方向第一コイル引出部側(矢印X1方向)のコイルサイド21(第一コイルサイド21a)から引き出されていると好適である。また、各極コイル31の第二コイル引出部32sは、当該極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最小の単位コイル20(第三単位コイル20c)の第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)のコイルサイド21(第二コイルサイド21b)から引き出されていると好適である。
【0059】
図9は、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た図2に示す極コイル31が複数(6つ)のスロット11に装着された状態を示している。図9は、図6Bおよび図7Bと同様に図示されている。ただし、図9では、複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31cおよび一対のコイル引出部32f,32s(第一コイル引出部32fおよび第二コイル引出部32s)が図示されている。なお、図9では、第一コイル引出部32fは、最もスロット開口部11b側から引き出されており、第二コイル引出部32sは、最もスロット底部11a側から引き出されている。
【0060】
図9に示すように、本実施形態では、複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31cは、いずれも一対のコイル引出部32f,32sと交差していない。従って、近接部位の干渉回避が容易である。具体的には、これらの部位は、所要距離を確保して引き回せばよい。所要距離は、例えば、これらの部位における近接部位間の印加電圧から導出することができ、近接部位間の電気的な絶縁を確保できるように設定される。以上のことは、極コイル31の各渡り線と一対のコイル引出部32f,32sとが交差していない形態において同様に言える。なお、第一コイル引出部32fは、第一単位コイル20aのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を渡らせることができる。また、第一単位コイル20aと第二単位コイル20bとを接続する単位コイル間接続部31cは、第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bの各コイルエンド22,22間に収容することができる。第二単位コイル20bと第三単位コイル20cとを接続する単位コイル間接続部31cは、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cの各コイルエンド22,22間に収容することができる。
【0061】
図10および図11に示すように、一対のコイル引出部32f,32sの配置は、第二変形形態の配置にすることもできる。第二変形形態では、各極コイル31の第一コイル引出部32fは、当該極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最小の単位コイル20(第一単位コイル20a)の第一方向第一コイル引出部側(矢印X1方向)のコイルサイド21(第一コイルサイド21a)から引き出されている。また、各極コイル31の第二コイル引出部32sは、当該極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最大の単位コイル20(第三単位コイル20c)の第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)のコイルサイド21(第二コイルサイド21b)から引き出されている。なお、図11では、第一コイル引出部32fは、スロット中央部11cから引き出されており、第二コイル引出部32sは、最もスロット底部11a側から引き出されている。
【0062】
本変形形態においても、第一単位コイル20aの巻進行方向W1、第二単位コイル20bの巻進行方向W2および第三単位コイル20cの巻進行方向W3は、いずれも第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)である。また、第一単位コイル20aの巻進行方向W1から視た第一単位コイル20aの巻方向は、反時計回りである。さらに、第二単位コイル20bの巻進行方向W2から視た第二単位コイル20bの巻方向は、反時計回りである。また、第三単位コイル20cの巻進行方向W3から視た第三単位コイル20cの巻方向は、反時計回りである。なお、第一単位コイル20aは、ハーフコイル23hであり、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cは、フルコイル23fである。
【0063】
図11に示すように、本変形形態では、最も内側に第一単位コイル20aが配設され、第一単位コイル20aの外側に第二単位コイル20bが配設される。また、第二単位コイル20bの外側に第三単位コイル20cが配設される。第一単位コイル20a、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cが、この順に連続して巻進められて、コイル挿入機3I(インサータ治具)を用いて固定子鉄心10の複数のスロット11に組み付けられると、第一コイル引出部32fは、スロット開口部11b側に引き出される。つまり、第一コイル引出部32fの配策は、複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31cや他の単位コイル20(第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20c)を迂回する必要があり、第一コイル引出部32fは、第二方向スロット開口部側(矢印Y2方向)に、一旦、はみ出す。
【0064】
その後、第一コイル引出部32fは、複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31c、並びに、第一単位コイル20a、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。その結果、本変形形態では、第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bを接続する単位コイル間接続部31cと、第一コイル引出部32fとが接触して交差する。そのため、交差部位において電気的な絶縁を確保するための対処が必要であり、本変形形態の各極コイル31は、本実施形態と比べて、第三方向(矢印Z方向)に大型化する。
【0065】
本実施形態の回転電機100によれば、各極コイル31の第一コイル引出部32fは、当該極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最大の単位コイル20(第一単位コイル20a)の第一方向第一コイル引出部側(矢印X1方向)のコイルサイド21(第一コイルサイド21a)から引き出されている。また、各極コイル31の第二コイル引出部32sは、当該極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最小の単位コイル20(第三単位コイル20c)の第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)のコイルサイド21(第二コイルサイド21b)から引き出されている。
【0066】
これらにより、複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31cは、いずれも一対のコイル引出部32f,32sと交差していない。また、単位コイル20のコイルエンド22を迂回するために、一対のコイル引出部32f,32sが第二方向スロット開口部側(矢印Y2方向)に、はみ出すこともない。その結果、各極コイル31における一対のコイル引出部32f,32sの配置が本実施形態と異なる第二変形形態と比べて、本実施形態の各極コイル31は、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側のコイルエンド22が小型化され、その配策が簡素化される。
【0067】
各極コイル31における一対のコイル引出部32f,32sの好適な配置は、毎極毎相スロット数が1.5の場合も同様の傾向が見られる。第三変形形態の回転電機100は、8極36スロット構成の三相回転電機であり、毎極毎相スロット数は1.5である。図12および図13に示すように、本変形形態では、各極コイル31は、一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが異なる複数(2つ)の単位コイル20が同心状に巻装され、電気的に直列接続されている。当該2つの単位コイル20を第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bとする。第一単位コイル20aの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチは、7スロットピッチに設定されている。第二単位コイル20bの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチは、5スロットピッチに設定されている。
【0068】
第一単位コイル20aの巻進行方向W1および第二単位コイル20bの巻進行方向W2は、いずれも第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)である。また、第一単位コイル20aの巻進行方向W1から視た第一単位コイル20aの巻方向は、反時計回りであり、第二単位コイル20bの巻進行方向W2から視た第二単位コイル20bの巻方向は、反時計回りである。なお、第一単位コイル20aは、フルコイル23fであり、第二単位コイル20bは、ハーフコイル23hである。
【0069】
図12および図13に示すように、第三変形形態では、各極コイル31の第一コイル引出部32fは、当該極コイル31を構成する複数(2つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最大の単位コイル20(第一単位コイル20a)の第一方向第一コイル引出部側(矢印X1方向)のコイルサイド21(第一コイルサイド21a)から引き出されている。また、各極コイル31の第二コイル引出部32sは、当該極コイル31を構成する複数(2つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最小の単位コイル20(第二単位コイル20b)の第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)のコイルサイド21(第二コイルサイド21b)から引き出されている。なお、図13では、第一コイル引出部32fは、最もスロット開口部11b側から引き出されており、第二コイル引出部32sは、最もスロット底部11a側から引き出されている。
【0070】
図13に示すように、本変形形態では、単位コイル間接続部31cは、一対のコイル引出部32f,32sと交差していない。なお、第一コイル引出部32fは、第一単位コイル20aのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を渡らせることができる。また、単位コイル間接続部31cは、第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bの各コイルエンド22,22間に収容することができる。
【0071】
図14および図15に示すように、一対のコイル引出部32f,32sの配置は、第四変形形態の配置にすることもできる。第四変形形態では、各極コイル31の第一コイル引出部32fは、当該極コイル31を構成する複数(2つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最小の単位コイル20(第一単位コイル20a)の第一方向第一コイル引出部側(矢印X1方向)のコイルサイド21(第一コイルサイド21a)から引き出されている。また、各極コイル31の第二コイル引出部32sは、当該極コイル31を構成する複数(2つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最大の単位コイル20(第二単位コイル20b)の第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)のコイルサイド21(第二コイルサイド21b)から引き出されている。なお、図15では、第一コイル引出部32fは、スロット中央部11cから引き出されており、第二コイル引出部32sは、最もスロット底部11a側から引き出されている。
【0072】
本変形形態においても、第一単位コイル20aの巻進行方向W1および第二単位コイル20bの巻進行方向W2は、いずれも第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)である。また、第一単位コイル20aの巻進行方向W1から視た第一単位コイル20aの巻方向は、反時計回りであり、第二単位コイル20bの巻進行方向W2から視た第二単位コイル20bの巻方向は、反時計回りである。なお、第一単位コイル20aは、ハーフコイル23hであり、第二単位コイル20bは、フルコイル23fである。
【0073】
図15に示すように、本変形形態では、第一コイル引出部32fの配策は、単位コイル間接続部31cや他の単位コイル20(第二単位コイル20b)を迂回する必要があり、第一コイル引出部32fは、第二方向スロット開口部側(矢印Y2方向)に、一旦、はみ出す。その後、第一コイル引出部32fは、単位コイル間接続部31c、並びに、第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。その結果、本変形形態では、単位コイル間接続部31cと第一コイル引出部32fとが接触して交差する。そのため、交差部位において電気的な絶縁を確保するための対処が必要であり、本変形形態の各極コイル31は、第三変形形態と比べて、第三方向(矢印Z方向)に大型化する。
【0074】
以上のように、第三変形形態の各極コイル31は、第四変形形態と比べて、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側のコイルエンド22が小型化され、その配策が簡素化される。つまり、毎極毎相スロット数が1.5の場合も、各極コイル31における一対のコイル引出部32f,32sの好適な配置は、毎極毎相スロット数が2.5の場合と同様である。
【0075】
また、毎極毎相スロット数が3.5の場合、各極コイル31は、毎極毎相スロット数が2.5の場合と比べて、フルコイル23fの数および単位コイル間接続部31cの数が一つずつ増加する。しかしながら、各極コイル31における一対のコイル引出部32f,32sの配置を本実施形態と同様の配置にすると、複数(3つ)の単位コイル間接続部31cと、一対のコイル引出部32f,32sとは、交差しない。このように、毎極毎相スロット数が3.5以上の場合も、各極コイル31における一対のコイル引出部32f,32sの好適な配置は、毎極毎相スロット数が2.5の場合と同様である。
【0076】
(相コイル33の配置)
複数(本実施形態では、3つ)の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)は、第一装着工程と、第二遅相装着工程と、第三遅相装着工程とを備える回転電機100の製造方法によって、複数(60個)のスロット11に装着されると好適である。これにより、本実施形態では、複数(3つ)の相コイル33は、U相コイル33u、V相コイル33v、W相コイル33wの順に組み付けられる。なお、既述のとおり、複数(3つ)の相コイル33は、U相コイル33u、V相コイル33v、W相コイル33wの順に位相が遅れているものとする。また、複数(3つ)の相コイル33は、第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)に、U相コイル33u、V相コイル33v、W相コイル33wの相順に配設するものとする。
【0077】
図16Aに示すように、第一装着工程は、複数(3つ)の相コイル33のうちの一の相コイル33(本実施形態では、U相コイル33u)を複数(24個)のスロット11に装着する工程である。同図は、U相コイル33uを構成する概ね二磁極対分の極コイル31を示しており、残りの概ね二磁極対分の極コイル31の記載が省略されている。このことは、図16B図16Dについても同様である。また、このことは、後述する第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た相コイル33が複数のスロット11に装着された状態を模式的に示す図についても同様である。
【0078】
図16Aに示すように、U相コイル33uの第一コイル引出部32fは、スロット開口部11b側から引き出されて、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。U相コイル33uの第一コイル引出部32fは、U相コイル33uの第一単位コイル20aのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を引き回すことができる。なお、U相コイル33uの第二コイル引出部32sは、スロット底部11a側から引き出されている。
【0079】
このように、U相コイル33uは、一対のコイル引出部32f,32sと、極コイル31内の各渡り線(複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31c)とが交差していない。また、U相コイル33uは、最初に装着されるので、他の相コイル33(V相コイル33vおよびW相コイル33w)の影響を受けることなく、ハーフコイル23hの一対のコイルサイド21,21は、いずれもスロット底部11a側に配設される。つまり、U相のハーフコイル23hは、片側占有ハーフコイル23h2である。
【0080】
第二遅相装着工程は、複数(3つ)の相コイル33のうちの残りの一の相コイル33を、第一装着工程で装着された相コイル33(U相コイル33u)に対して、相間最小位相差分、第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)にずらして、複数(24個)のスロット11に装着する工程である。ここで、相間最小位相差とは、電気角360°を相数(本実施形態では、3)で除した相間の最小位相差(電気角120°)をいう。また、残りの一の相コイル33は、第一装着工程で装着された相コイル33(U相コイル33u)と比べて、相間最小位相差(電気角120°)分、位相が遅れる相コイル33(本実施形態では、V相コイル33v)をいう。なお、本実施形態の回転電機100は、8極60スロット構成の回転電機であり、相間最小位相差(電気角120°)は、5スロットピッチ分に相当する。
【0081】
図16Bに示すように、V相コイル33vの第一コイル引出部32fは、スロット開口部11b側から引き出されて、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。V相コイル33vの第一コイル引出部32fは、V相コイル33vの第一単位コイル20aのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を引き回すことができる。なお、V相コイル33vの第二コイル引出部32sは、スロット底部11a側から引き出されている。
【0082】
このように、V相コイル33vは、一対のコイル引出部32f,32sと、極コイル31内の各渡り線(複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31c)とが交差していない。なお、V相コイル33vは、U相コイル33uの後に装着されるので、ハーフコイル23hの一対のコイルサイド21,21のうちの一方のコイルサイド21がスロット底部11a側に配設され、当該一対のコイルサイド21,21のうちの他方のコイルサイド21がスロット開口部11b側に配設される。つまり、V相のハーフコイル23hは、両側占有ハーフコイル23h1である。
【0083】
第三遅相装着工程は、複数(3つ)の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)がすべて複数(60個)のスロット11に装着されるまで、直近で装着した相コイル33と比べて相間最小位相差(電気角120°)分、位相が遅れる相コイル33を、直近で装着した相コイル33に対して、相間最小位相差(電気角120°)分、第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)にずらして、複数(24個)のスロット11に装着する工程である。本実施形態では、第二遅相装着工程の終了時に、W相コイル33wが装着されていない。そのため、第三遅相装着工程では、W相コイル33wを直近で装着した相コイル33(V相コイル33v)に対して、相間最小位相差(電気角120°)分、第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)にずらして、複数(24個)のスロット11に装着する。これにより、複数(3つ)の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)がすべて複数(60個)のスロット11に装着されるので、第三遅相装着工程は、終了する。
【0084】
図16Cに示すように、W相コイル33wの第一コイル引出部32fは、スロット開口部11b側から引き出されて、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。W相コイル33wの第一コイル引出部32fは、W相コイル33wの第一単位コイル20aのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を引き回すことができる。
【0085】
W相コイル33wの第二コイル引出部32sは、スロット中央部11cから引き出されている。W相コイル33wは、第二コイル引出部32sと、極コイル31内の渡り線(第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cを接続する単位コイル間接続部31c)とが接触して交差する。そのため、交差部位において、電気的な絶縁を確保するための対処が必要である。なお、第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bを接続する単位コイル間接続部31cは、第二コイル引出部32sと接触して交差しないので、電気的な絶縁を確保するための対処は、不要である。コイル挿入機3I(インサータ治具)を用いた組み付けの結果、W相コイル33wの第二コイル引出部32sは、W相コイル33wの極コイル31内の各渡り線(複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31c)の第三方向(矢印Z方向)の固定子鉄心10側(紙面奥側)を通過する。また、W相コイル33wの第二コイル引出部32sは、U相コイル33uの第三単位コイル20cのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を通過する。なお、W相コイル33wは、最後に装着されるので、ハーフコイル23hの一対のコイルサイド21,21は、いずれもスロット開口部11b側に配設される。つまり、W相のハーフコイル23hは、片側占有ハーフコイル23h2である。
【0086】
このように、他相の単位コイル20のコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を横断する引き出し線(一対のコイル引出部32f,32sのうちの少なくとも一方)は、一相分である。本明細書では、当該引き出し線を他相横断引き出し線という。本実施形態では、W相コイル33wの第二コイル引出部32sが他相横断引き出し線である。
【0087】
図17A図17Dに示すように、複数(3つ)の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)は、U相コイル33u、W相コイル33w、V相コイル33vの順(相順と逆順序)に、複数(60個)のスロット11に装着することもできる(第五変形形態)。第五変形形態では、W相コイル33wは、U相コイル33uに対して、相間最小位相差(電気角120°)分、第一方向第一コイル引出部側(矢印X1方向)にずらして、複数(24個)のスロット11に装着する。V相コイル33vは、W相コイル33wに対して、相間最小位相差(電気角120°)分、第一方向第一コイル引出部側(矢印X1方向)にずらして、複数(24個)のスロット11に装着する。この方法は、第二実施形態で説明する第一装着工程と、第二進相装着工程と、第三進相装着工程とを備える回転電機100の製造方法と同様の方法である。
【0088】
図17Aに示すように、第五変形形態のU相コイル33uを装着した後の状態は、図16Aに示す本実施形態のU相コイル33uを装着した後の状態と同じである。図17Bに示すように、W相コイル33wの第一コイル引出部32fは、スロット開口部11b側から引き出されて、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。W相コイル33wの第一コイル引出部32fは、W相コイル33wの第一単位コイル20aのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を引き回すことができる。
【0089】
W相コイル33wの第二コイル引出部32sは、スロット中央部11cから引き出されている。W相コイル33wは、第二コイル引出部32sと、極コイル31内の渡り線(第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cを接続する単位コイル間接続部31c)とが接触して交差する。そのため、交差部位において、電気的な絶縁を確保するための対処が必要である。なお、第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bを接続する単位コイル間接続部31cは、第二コイル引出部32sと接触して交差しないので、電気的な絶縁を確保するための対処は、不要である。コイル挿入機3I(インサータ治具)を用いた組み付けの結果、W相コイル33wの第二コイル引出部32sは、W相コイル33wの極コイル31内の各渡り線(複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31c)の第三方向(矢印Z方向)の固定子鉄心10側(紙面奥側)を通過する。また、W相コイル33wの第二コイル引出部32sは、U相コイル33uの第三単位コイル20cのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を通過する。なお、W相コイル33wは、U相コイル33uの後に装着されるので、ハーフコイル23hの一対のコイルサイド21,21のうちの一方のコイルサイド21がスロット底部11a側に配設され、当該一対のコイルサイド21,21のうちの他方のコイルサイド21がスロット開口部11b側に配設される。つまり、W相のハーフコイル23hは、両側占有ハーフコイル23h1である。
【0090】
図17Cに示すように、V相コイル33vの第一コイル引出部32fは、スロット開口部11b側から引き出されて、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。V相コイル33vの第一コイル引出部32fは、V相コイル33vの第一単位コイル20aのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を引き回すことができる。
【0091】
V相コイル33vの第二コイル引出部32sは、スロット中央部11cから引き出されている。V相コイル33vは、第二コイル引出部32sと、極コイル31内の渡り線(第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cを接続する単位コイル間接続部31c)とが接触して交差する。そのため、交差部位において、電気的な絶縁を確保するための対処が必要である。なお、第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bを接続する単位コイル間接続部31cは、第二コイル引出部32sと接触して交差しないので、電気的な絶縁を確保するための対処は、不要である。コイル挿入機3I(インサータ治具)を用いた組み付けの結果、V相コイル33vの第二コイル引出部32sは、V相コイル33vの極コイル31内の各渡り線(複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31c)の第三方向(矢印Z方向)の固定子鉄心10側(紙面奥側)を通過する。また、V相コイル33vの第二コイル引出部32sは、W相コイル33wの第三単位コイル20cのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を通過する。なお、V相コイル33vは、最後に装着されるので、ハーフコイル23hの一対のコイルサイド21,21は、いずれもスロット開口部11b側に配設される。つまり、V相のハーフコイル23hは、片側占有ハーフコイル23h2である。
【0092】
第五変形形態では、V相コイル33vの第二コイル引出部32sは、スロット中央部11cから引き出されている。V相コイル33vは、第二コイル引出部32sと、極コイル31内の渡り線(第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cを接続する単位コイル間接続部31c)とが接触して交差する。以上のことは、W相コイル33wについても同様である。このように、第五変形形態では、複数(3つ)の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)のうちの二相(V相およびW相)において、第二コイル引出部32sと、極コイル31内の渡り線(第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cを接続する単位コイル間接続部31c)とが接触して交差する。
【0093】
一方、本実施形態では、複数(3つ)の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)のうちの一相(W相)において、第二コイル引出部32sと、極コイル31内の渡り線(第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cを接続する単位コイル間接続部31c)とが接触して交差する。このように、本実施形態の回転電機100は、第五変形形態の回転電機100と比べて、一対のコイル引出部32f,32sと、極コイル31内の渡り線(単位コイル間接続部31c)とが接触して交差する相数が少ない。よって、本実施形態の極コイル31は、第五変形形態の極コイル31と比べて、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側のコイルエンド22が小型化され、その配策が簡素化される。
【0094】
また、第五変形形態では、他相横断引き出し線は、二相分であり、V相コイル33vの第二コイル引出部32sおよびW相コイル33wの第二コイル引出部32sである。一方、本実施形態では、他相横断引き出し線は、一相分であり、W相コイル33wの第二コイル引出部32sである。このように、本実施形態の回転電機100は、第五変形形態の回転電機100と比べて、他相横断引き出し線の相数が少ない。よって、本実施形態の回転電機100は、第五変形形態の回転電機100と比べて、相コイル33間の電気的な絶縁が必要な絶縁部位を低減することができる。当該絶縁部位に用いる絶縁部材は、当該部位を電気的に絶縁することができれば良く、限定されないが、例えば、絶縁チューブなどを用いることができる。このことは、第二実施形態で説明する絶縁部材についても同様である。
【0095】
なお、第五変形形態では、U相コイル33uの第一コイル引出部32fは、スロット開口部11b側から引き出されて、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。つまり、U相コイル33uの第一コイル引出部32fは、スロット開口部11b側からスロット底部11a側まで、スロット11をスロット11の深さ方向(第二方向(矢印Y方向))に横断する。このときのスロット11の横断長をフル横断長(長さ比を1)とする。これらのことは、V相コイル33vの第一コイル引出部32fおよびW相コイル33wの第一コイル引出部32fについても同様である。
【0096】
また、V相コイル33vの第二コイル引出部32sは、スロット中央部11cから引き出されて、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。つまり、V相コイル33vの第二コイル引出部32sは、スロット中央部11cからスロット底部11a側まで、スロット11をスロット11の深さ方向(第二方向(矢印Y方向))に横断する。このときのスロット11の横断長をハーフ横断長(長さ比を0.5)とする。このことは、W相コイル33wの第二コイル引出部32sについても同様である。なお、U相コイル33uの第二コイル引出部32sは、スロット底部11a側から引き出されており、スロット11を横断しない。以上から、三相分の一対のコイル引出部32f,32sのスロット11の横断長は、フル横断長が三つ分(長さ比は3)と、ハーフ横断長が二つ分(長さ比は1)とを合算して、長さ比が4になる。
【0097】
一方、本実施形態では、U相コイル33uの第一コイル引出部32fは、スロット開口部11b側から引き出されて、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。つまり、U相コイル33uの第一コイル引出部32fは、スロット11の横断長がフル横断長(長さ比は1)である。これらのことは、V相コイル33vの第一コイル引出部32fおよびW相コイル33wの第一コイル引出部32fについても同様である。
【0098】
また、W相コイル33wの第二コイル引出部32sは、スロット中央部11cから引き出されて、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。つまり、W相コイル33wの第二コイル引出部32sは、スロット11の横断長がハーフ横断長(長さ比は0.5)である。なお、U相コイル33uの第二コイル引出部32sは、スロット底部11a側から引き出されており、スロット11を横断しない。このことは、V相コイル33vの第二コイル引出部32sについても同様である。以上から、三相分の一対のコイル引出部32f,32sのスロット11の横断長は、フル横断長が三つ分(長さ比は3)と、ハーフ横断長が一つ分(長さ比は0.5)とを合算して、長さ比が3.5になる。このように、本実施形態の各極コイル31は、第五変形形態の各極コイル31と比べて、スロット11の横断長が短縮化されている。
【0099】
ここで、各極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20間をそれぞれ接続する各渡り線(複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31c)の一端側の端部であってスロット底部11a側に配設される端部を第一渡り線端部34aとする。また、当該渡り線の他端側の端部であってスロット開口部11b側に配設される端部を第二渡り線端部34bとする。さらに、両側占有ハーフコイル23h1の第一ハーフスロット部位11d内の一点を始点とし第二ハーフスロット部位11e内の一点を終点とするベクトルを第一ベクトル35aとする。また、極コイル31の各渡り線(複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31c)の第一渡り線端部34aを始点とし第二渡り線端部34bを終点とするベクトルを第二ベクトル35bとする。
【0100】
図17Eに示すように、第五変形形態では、第一ベクトル35aと、第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bを接続する単位コイル間接続部31cの第二ベクトル35bとのなす角φb1は、機械角90°より大きい鈍角になっている。第一ベクトル35aと、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cを接続する単位コイル間接続部31cの第二ベクトル35bとのなす角φb2についても同様である。つまり、第五変形形態では、第一ベクトル35aと、第二ベクトル35b,35bとのなす角φb1,φb2が、いずれも機械角90°より大きい鈍角になっている。なお、同図では、第三方向(矢印Z方向)に垂直な同一平面(同図の紙面上)において、第一ベクトル35aと、第二ベクトル35b,35bとが配設されている。また、同図は、図17Aに示すU相コイル33uの極コイル31の各渡り線(複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31c)について図示されているが、V相コイル33vおよびW相コイル33wについても同様に言える。
【0101】
一方、図16Eに示すように、本実施形態では、第一ベクトル35aと、第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bを接続する単位コイル間接続部31cの第二ベクトル35bとのなす角φa1は、機械角90°より小さい鋭角になっている。第一ベクトル35aと、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cを接続する単位コイル間接続部31cの第二ベクトル35bとのなす角φa2についても同様である。つまり、本実施形態では、第一ベクトル35aと、第二ベクトル35b,35bとのなす角φa1,φa2が、いずれも機械角90°より小さい鋭角になっている。なお、同図では、第三方向(矢印Z方向)に垂直な同一平面(同図の紙面上)において、第一ベクトル35aと、第二ベクトル35b,35bとが配設されている。また、同図は、図16Aに示すU相コイル33uの極コイル31の各渡り線(複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31c)について図示されているが、V相コイル33vおよびW相コイル33wについても同様に言える。
【0102】
本実施形態の回転電機100によれば、第一ベクトル35aと、第二ベクトル35b,35bとのなす角φa1,φa2が、いずれも機械角90°より小さい鋭角になっている。そのため、本実施形態の回転電機100は、両側占有ハーフコイル23h1のコイルエンド22、極コイル31内の渡り線(単位コイル間接続部31c)および一対のコイル引出部32f,32sの間の干渉交差(接触して交差する状況)を低減することができ、他相横断引き出し線の数を低減することができる。よって、本実施形態の極コイル31は、第五変形形態の極コイル31と比べて、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側のコイルエンド22が小型化され、その配策が簡素化される。
【0103】
相コイル33の好適な配置は、毎極毎相スロット数が1.5の場合も同様の傾向が見られる。図18A図18Dは、既述の第三変形形態の回転電機100(8極36スロット構成の三相回転電機)において、複数(3つ)の相コイル33を、U相コイル33u、V相コイル33v、W相コイル33wの順に組み付けたときの各極コイル31の装着状態を示している。図18A図18Dは、図16A図16Dにそれぞれ対応している。
【0104】
第三変形形態の各極コイル31は、本実施形態の各極コイル31と比べて、フルコイル23fの数が一つ少なくなり、単位コイル間接続部31cの数が一つ少なくなる。しかしながら、一対のコイル引出部32f,32sと、極コイル31内の渡り線(単位コイル間接続部31c)との間の交差の有無は、本実施形態と同様になっている。また、スロット11の横断長は、本実施形態と同様になっている。さらに、両側占有ハーフコイル23h1の第一ハーフスロット部位11d内の一点を始点とし第二ハーフスロット部位11e内の一点を終点とするベクトル(第一ベクトル35aに相当)と、単位コイル間接続部31cの第一渡り線端部34aを始点とし第二渡り線端部34bを終点とするベクトル(第二ベクトル35bに相当)とのなす角の関係は、本実施形態と同様の関係になっている。
【0105】
図19A図19Dは、既述の第三変形形態の回転電機100(8極36スロット構成の三相回転電機)において、複数(3つ)の相コイル33を、U相コイル33u、W相コイル33w、V相コイル33vの順に組み付けたときの各極コイル31の装着状態(第六変形形態)を示している。図19A図19Dは、図17A図17Dにそれぞれ対応している。
【0106】
第六変形形態の各極コイル31は、第五変形形態の各極コイル31と比べて、フルコイル23fの数が一つ少なくなり、単位コイル間接続部31cの数が一つ少なくなる。しかしながら、一対のコイル引出部32f,32sと、極コイル31内の渡り線(単位コイル間接続部31c)との間の交差の有無は、第五変形形態と同様になっている。また、スロット11の横断長は、第五変形形態と同様になっている。さらに、両側占有ハーフコイル23h1の第一ハーフスロット部位11d内の一点を始点とし第二ハーフスロット部位11e内の一点を終点とするベクトル(第一ベクトル35aに相当)と、単位コイル間接続部31cの第一渡り線端部34aを始点とし第二渡り線端部34bを終点とするベクトル(第二ベクトル35bに相当)とのなす角の関係は、第五変形形態と同様の関係になっている。
【0107】
このように、毎極毎相スロット数が1.5の場合も、相コイル33の好適な配置は、毎極毎相スロット数が2.5の場合と同様である。また、毎極毎相スロット数が3.5以上の場合も、相コイル33の好適な配置は、毎極毎相スロット数が2.5の場合と同様である。
【0108】
(同心巻と二層重巻との関係)
次に、同心状に巻装された極コイル31と二層重巻の極対コイル832との関係について説明する。図20は、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側から視た本実施形態の回転電機100の相配置を示している。同図は、図7Aおよび図7Bに示す複数のスロット11のうちの概ね二磁極分(一磁極対分)のスロット11の相配置を示している。
【0109】
図20では、図2および図6Aと同様に、U相の極コイル31内の接続状態が併せて図示されている。また、図20では、U相の各単位コイル20(第一単位コイル20a、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20c)の一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチCP1〜CP3が図示されている。さらに、図20では、U相の領域が実線で囲まれて図示されている。また、「相」は、「相」で示すコイルサイド21の通電方向に対して、コイルサイド21の通電方向が逆方向であることを示している。U相は、「U」で示される通電方向が順方向の領域(連続する2.5スロット分の領域)と、「U」で示される通電方向が逆方向の領域(連続する2.5スロット分の領域)とが交互に繰り返されている。このことは、V相およびW相についても同様である。
【0110】
ここで、参考形態として、二層重巻の固定子コイルについて考える。図21および図22に示すように、参考形態では、本実施形態で既述した部材に対応する部材は、符号番号の先頭に「8」を付して図示されている。これにより、重複する説明を省略する。例えば、本参考形態の一対のコイルサイドは、本実施形態の一対のコイルサイド21,21に対応し、本参考形態では、一対のコイルサイド821,821と表記する。なお、これらの「対応」は、電磁気的な等価対応を意味するものではなく、構成上の対応を意味している。
【0111】
図21に示すように、二層重巻の極対コイル832は、コイルの巻方向およびコイルピッチが同一の複数(本参考形態では、5つ)の単位コイル820によって構成されている。各単位コイル820は、スロット底部811a側の半分のスロット811と、スロット開口部811b側の半分のスロット811との間で巻き回される。また、第一方向(矢印X方向)に隣接する複数(本参考形態では、3つ)の単位コイル820が単位コイル間接続部831cによって直列接続されており、第一極コイル831fが構成されている。
【0112】
さらに、第一方向(矢印X方向)に隣接する複数(本参考形態では、2つ)の単位コイル820が単位コイル間接続部831cによって直列接続されており、第二極コイル831sが構成されている。第二極コイル831sは、第一極コイル831fが一対の可動子磁極のうちの一方の極性の可動子磁極に対向するときに当該一対の可動子磁極のうちの他方の極性の可動子磁極に対向する。第一極コイル831fおよび第二極コイル831sは、極コイル間接続部832cによって直列接続されており、極対コイル832が構成されている。
【0113】
各極対コイル832は、巻始め側の第一極コイル831fから巻終り側の第二極コイル831sへ引き回す極コイル間接続部832cを介して連続して巻進められている。これにより、第一極コイル831fを構成する複数(3つ)の単位コイル820および第二極コイル831sを構成する複数(2つ)の単位コイル820が直列接続されている。なお、極対コイル832の巻始めを巻始め部832aとし、巻終りを巻終り部832bとする。
【0114】
また、各極対コイル832は、一対のコイル引出部832f,832sを備えている。一対のコイル引出部832f,832sは、第一コイル引出部832fと第二コイル引出部832sとからなる。第一コイル引出部832fは、第一極コイル831fを構成する一の単位コイル820であって巻始めの単位コイル820の一のコイルサイド821から引き出されている。第二コイル引出部832sは、第二極コイル831sを構成する一の単位コイル820であって巻終りの単位コイル820の一のコイルサイド821から引き出されている。
【0115】
固定子コイルは、複数(本参考形態では、4つ)の極対コイル832が電気的に並列接続された相コイルを複数(本参考形態では、3つ)備えている。各相コイルは、各一対のコイル引出部832f,832sを介して、当該相コイルを構成する複数(本参考形態では、4つ)の極対コイル832が電気的に接続されている。本参考形態の回転電機は、本実施形態の回転電機100と同様に、8極60スロット構成の三相回転電機である。
【0116】
図22は、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部832f,832s側から視た相配置を示している。図22は、図20と同様に図示されている。図22に示すように、二層重巻の固定子コイルにおいても、U相は、「U」で示される通電方向が順方向の領域(連続する2.5スロット分の領域)と、「U」で示される通電方向が逆方向の領域(連続する2.5スロット分の領域)とが交互に繰り返されている。このことは、V相およびW相についても同様である。
【0117】
このように、本実施形態および参考形態のいずれにおいても、U相は、通電方向が順方向の連続する2.5スロット分の領域と、通電方向が逆方向の連続する2.5スロット分の領域とが交互に繰り返されている。このことは、V相およびW相についても同様である。よって、本実施形態の固定子コイル30の電流分布は、二層重巻の固定子コイルの電流分布と概ね等価になっている。
【0118】
また、参考形態の二層重巻の極対コイル832では、各極対コイル832を構成する単位コイル820の数は、5つである。これらの単位コイル820は、コイルピッチがすべて同じ(図22に示すように、7スロットピッチ(7sp))である。つまり、コイルピッチの種類は、一種類であり、単位コイル820の種類は、一種類である。さらに、各単位コイル820は、スロット底部11a側の半分のスロット811と、スロット開口部11b側の半分のスロット811との間で巻き回される。そのため、本実施形態のフルコイル23fのコイルの巻数を1とすると、参考形態の各単位コイル820のコイルの巻数は、1/2(巻数比1/2)になっている。参考形態のコイルの巻数の種類は、一種類である。
【0119】
一方、本実施形態の同心状に巻装された極コイル31では、各極コイル31を構成する単位コイル20の数は、3つ(第一単位コイル20a、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20c)である。これらの単位コイル20は、コイルピッチCP1〜CP3がすべて異なる。つまり、コイルピッチの種類は、三種類であり、単位コイル20の種類は、三種類である。また、ハーフコイル23hである第三単位コイル20cは、コイルピッチCP3が5スロットピッチ(5sp)であり、三種類の単位コイル20の中でコイルピッチが最小になっている。さらに、フルコイル23fである第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bのコイルの巻数を1とすると、ハーフコイル23hである第三単位コイル20cのコイルの巻数は、1/2(巻数比1/2)になっている。本実施形態のコイルの巻数の種類は、二種類である。
【0120】
このように、同心状に巻装された極コイル31は、二層重巻の極対コイル832と比べて、単位コイル20が統合され、単位コイル20の数が減少している。一方、同心状に巻装された極コイル31は、二層重巻の極対コイル832と比べて、単位コイル20の種類が増加している。なお、同心状に巻装された極コイル31では、極コイル31の各単位コイル20は、スロット配置、コイルピッチ、コイルの巻数が異なる。そのため、極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20は、直列接続によって電気的に接続される。
【0121】
本実施形態の回転電機100によれば、固定子コイル30に含まれる複数(三相の各相12個、合計36個)の単位コイル20が、少なくとも一対の可動子磁極61,62のうちの同一極性の可動子磁極に対向するように、一対の可動子磁極61,62に対向するスロット単位(15スロット単位)で集約されており、極コイル31が構成されている。また、複数(3つ)の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)を構成する各極コイル31は、複数のスロット11の占有状態に関して、フルコイル23fとハーフコイル23hとの二種類の単位コイル20を備えている。さらに、各極コイル31は、一つのハーフコイル23hを備えている。これらにより、本実施形態の回転電機100は、毎極毎相スロット数の小数点以下が0.5となる分数スロット構成の回転電機100において、同心状に巻装された固定子コイル30を備えることができる。そのため、本実施形態の回転電機100では、固定子コイル30を相コイル33単位で組み付けることが可能であり、二層重巻で巻装された固定子コイルを備える回転電機と比べて、固定子コイル30の組み付け作業の作業効率が向上する。
【0122】
(ハーフコイル23hのコイルピッチ)
次に、ハーフコイル23hの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチについて説明する。図2に示すように、ハーフコイル23h(第三単位コイル20c)の一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチCP3は、極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20(第一単位コイル20a、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20c)の中で最小であると好適である。
【0123】
フルコイル23fのコイルの巻数を1とすると、ハーフコイル23hのコイルの巻数は、1/2(巻数比1/2)になる。ここで、フルコイル23fの単位巻数あたりのスロットピッチ単位のコイルエンド長さ(一対のコイルエンド22,22の片側分)で、極コイル31のコイルエンド長さ比を考える。本実施形態では、フルコイル23fの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチは、7スロットピッチ(7sp)および9スロットピッチ(9sp)であり、ハーフコイル23hの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチは、5スロットピッチ(5sp)である。このとき、極コイル31のコイルエンド長さ比(スロットピッチ単位)は、18.5(=5×1/2+7+9)になる。
【0124】
一方、図23に示すように、ハーフコイル23hの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチは、極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20の中で最大にすることもできる(第七変形形態)。図23は、第七変形形態の極コイル31を示している。本変形形態では、フルコイル23fの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチは、6スロットピッチ(6sp)および8スロットピッチ(8sp)であり、ハーフコイル23hの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチは、10スロットピッチ(10sp)である。このとき、極コイル31のコイルエンド長さ比(スロットピッチ単位)は、19(=6+8+10×1/2)になる。このように、ハーフコイル23hの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが、極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20の中で最小であると、極コイル31のコイルエンド長さ比は、上記コイルピッチが極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20の中で最大である場合と比べて、小さくなる。
【0125】
本実施形態の回転電機100によれば、ハーフコイル23h(第三単位コイル20c)の一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチCP3は、極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20(第一単位コイル20a、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20c)の中で最小である。そのため、本実施形態の回転電機100は、上記コイルピッチが極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20の中で最大である場合と比べて、コイルエンド長が短縮され、各単位コイル20の一対のコイルエンド22,22が小型化される。
【0126】
また、ハーフコイル23hの一対のコイルサイド21,21の各断面積は、フルコイル23fの一対のコイルサイド21,21の各断面積の約半分であり、ハーフコイル23hは、フルコイル23fと比べて、所要収容スペースが半分で済む。さらに、ハーフコイル23hの最小屈曲半径(曲げ半径)および曲げ変形操作力は、フルコイル23fと比べて、小さいので、ハーフコイル23hは、フルコイル23fと比べて、収容調整がし易い。そのため、ハーフコイル23hの一対のコイルエンド22,22をフルコイル23fの一対のコイルエンド22,22の内側に収容することにより、フルコイル23fの内側の空きスペース等を活用して、各単位コイル20の一対のコイルエンド22,22を小型化することができる。
【0127】
(各単位コイル20の一対のコイルエンド22,22)
次に、各単位コイル20の一対のコイルエンド22,22の好適な形態について説明する。固定子コイル30に含まれる複数(三相の各相12個、合計36個)の単位コイル20の一対のコイルエンド22,22は、第三方向(矢印Z方向)の両端部において、第二方向(矢印Y方向)または第三方向(矢印Z方向)に、相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)毎にそれぞれ配設されて、多層に形成されていると好適である。
【0128】
図24Aに示すように、固定子コイル30に含まれる複数(三相の各相12個、合計36個)の単位コイル20の一対のコイルエンド22,22は、第三方向(矢印Z方向)の両端部において、第二方向(矢印Y方向)に、相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)毎にそれぞれ配設されている。具体的には、最初に取り付けられるU相コイル33uの各単位コイル20の一対のコイルエンド22,22は、最もスロット底部11a側に配設されている。次に取り付けられるV相コイル33vの各単位コイル20の一対のコイルエンド22,22は、U相コイル33uの各単位コイル20の一対のコイルエンド22,22と比べて、スロット開口部11b側に配設されている。最後に取り付けられるW相コイル33wの各単位コイル20の一対のコイルエンド22,22は、最もスロット開口部11b側に配設されている。
【0129】
また、図24Bに示すように、固定子コイル30に含まれる複数(三相の各相12個、合計36個)の単位コイル20の一対のコイルエンド22,22は、第三方向(矢印Z方向)の両端部において、第三方向(矢印Z方向)に、相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)毎にそれぞれ配設することもできる。具体的には、最初に取り付けられるU相コイル33uの各単位コイル20の一対のコイルエンド22,22は、最も固定子鉄心10側に配設されている。次に取り付けられるV相コイル33vの各単位コイル20の一対のコイルエンド22,22は、U相コイル33uの各単位コイル20の一対のコイルエンド22,22と比べて、第三方向(矢印Z方向)の外側に配設されている。最後に取り付けられるW相コイル33wの各単位コイル20の一対のコイルエンド22,22は、最も第三方向(矢印Z方向)の外側に配設されている。これにより、図24Aおよび図24Bに示すいずれの形態においても、固定子コイル30に含まれる複数(三相の各相12個、合計36個)の単位コイル20の一対のコイルエンド22,22は、多層(本実施形態では、三層)に形成される。また、本実施形態の回転電機100は、円筒状回転電機なので、固定子コイル30の複数(36個)の単位コイル20の一対のコイルエンド22,22は、第三方向(矢印Z方向)視において、略同心状に形成される。
【0130】
本実施形態の回転電機100によれば、固定子コイル30に含まれる複数(三相の各相12個、合計36個)の単位コイル20の一対のコイルエンド22,22は、第三方向(矢印Z方向)の両端部において、第二方向(矢印Y方向)または第三方向(矢印Z方向)に、相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)毎にそれぞれ配設されて、多層に形成されている。そのため、本実施形態の回転電機100は、各単位コイル20の一対のコイルエンド22,22を簡素化および小型化することができる。また、本実施形態の回転電機100は、相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)間の電気的な絶縁を確保する絶縁部材の配設が容易である。絶縁部材は、相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)間を電気的に絶縁することができれば良く、限定されないが、例えば、シート状の相間絶縁紙などを用いることができる。
【0131】
<第二実施形態>
本実施形態は、第一実施形態と比べて、各単位コイル20の巻進行方向が異なる。また、本実施形態は、第一実施形態と比べて、各極コイル31における一対のコイル引出部32f,32sの配置が異なる。以下、第一実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0132】
(各単位コイル20の巻進行方向)
図25および図26に示すように、各極コイル31は、複数(本実施形態では、3つ)の単位コイル20を備えており、当該3つの単位コイル20を第一単位コイル20a、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cとする。第一単位コイル20aの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチは、5スロットピッチに設定されている。第二単位コイル20bの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチは、7スロットピッチに設定されている。第三単位コイル20cの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチは、9スロットピッチに設定されている。第一単位コイル20a、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cは、同心状に巻装されて、複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31cによって直列接続されており、極コイル31が構成されている。本実施形態では、第一単位コイル20aは、ハーフコイル23hであり、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cは、フルコイル23fである。
【0133】
また、本実施形態では、各極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20は、一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最小の単位コイル20(第一単位コイル20a)から一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最大の単位コイル20(第三単位コイル20c)へ連続して巻進められて、最も近接する単位コイル20,20同士(第一単位コイル20aと第二単位コイル20bおよび第二単位コイル20bと第三単位コイル20c)が電気的に接続されていると好適である。
【0134】
図26に示すように、第一単位コイル20aは、第一コイル引出部32fが引き出されるスロット番号SN1のスロット底部11a側から巻始められる。そして、第一単位コイル20aは、一対のスロット11,11(スロット番号SN1およびスロット番号SN2)間で巻き回され、単位コイル間接続部31cの一端側のスロット番号SN2のスロット中央部11cで巻終わる。このときの第一単位コイル20aの巻進行方向W1は、第二方向スロット開口部側(矢印Y2方向)であり、第一単位コイル20aの巻進行方向W1から視た第一単位コイル20aの巻方向は、時計回りになる。上記単位コイル間接続部31cは、スロット番号SN2のスロット中央部11cからスロット番号SN3のスロット底部11a側に引き回されている。
【0135】
第二単位コイル20bは、上記単位コイル間接続部31cの他端側のスロット番号SN3のスロット底部11a側から巻始められる。そして、第二単位コイル20bは、一対のスロット11,11(スロット番号SN3およびスロット番号SN4)間で巻き回され、上記単位コイル間接続部31cとは異なる単位コイル間接続部31cの一端側のスロット番号SN4のスロット開口部11b側で巻終わる。このときの第二単位コイル20bの巻進行方向W2は、第二方向スロット開口部側(矢印Y2方向)であり、第二単位コイル20bの巻進行方向W2から視た第二単位コイル20bの巻方向は、時計回りになる。上述の単位コイル間接続部31cは、スロット番号SN4のスロット開口部11b側からスロット番号SN5のスロット底部11a側に引き回されている。
【0136】
第三単位コイル20cは、上述の単位コイル間接続部31cの他端側のスロット番号SN5のスロット底部11a側から巻始められる。そして、第三単位コイル20cは、一対のスロット11,11(スロット番号SN5およびスロット番号SN6)間で巻き回され、第二コイル引出部32sが引き出されるスロット番号SN6のスロット開口部11b側で巻終わる。このときの第三単位コイル20cの巻進行方向W3は、第二方向スロット開口部側(矢印Y2方向)であり、第三単位コイル20cの巻進行方向W3から視た第三単位コイル20cの巻方向は、時計回りになる。
【0137】
このように、第一単位コイル20aの巻進行方向W1、第二単位コイル20bの巻進行方向W2および第三単位コイル20cの巻進行方向W3は、いずれも第二方向スロット開口部側(矢印Y2方向)である。また、第一単位コイル20aの巻進行方向W1から視た第一単位コイル20aの巻方向は、時計回りである。さらに、第二単位コイル20bの巻進行方向W2から視た第二単位コイル20bの巻方向は、時計回りである。また、第三単位コイル20cの巻進行方向W3から視た第三単位コイル20cの巻方向は、時計回りである。
【0138】
本実施形態の回転電機100によれば、各極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20(第一単位コイル20a、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20c)の各巻進行方向(矢印W1方向、矢印W2方向および矢印W3方向)は、いずれも第二方向スロット開口部側(矢印Y2方向)である。よって、本実施形態の回転電機100は、相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)単位で、複数(4つ)の極コイル31を複数(24個)のスロット11に順次装着することができる。本実施形態の回転電機100は、コイル挿入機(インサータ治具)を用いないで固定子コイル30の組み付け(例えば、直巻きなど)が可能であり、コイル挿入機(インサータ治具)を用いる場合と比べて、製造コストを低減することができる。本実施形態の回転電機100は、後述する可動子70が固定子40の外方に設けられる回転電機に適用すると好適である。
【0139】
また、本実施形態の回転電機100によれば、各極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20は、一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最小の単位コイル20(第一単位コイル20a)から一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最大の単位コイル20(第三単位コイル20c)へ連続して巻進められており、最も近接する単位コイル20,20同士(第一単位コイル20aと第二単位コイル20bおよび第二単位コイル20bと第三単位コイル20c)が電気的に接続されている。そのため、各極コイル31を構成する単位コイル20の各々を同心状に巻装した後に、別途、単位コイル20間を接続する場合と比べて、単位コイル20間の接続が簡素になり、固定子コイル30の巻装作業の作業性が向上する。なお、各相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)を構成する複数(4つ)の極コイル31を直列接続する場合は、複数(4つ)の極コイル31を連続して巻進めて、各相コイル33を形成することもできる。
【0140】
(一対のコイル引出部32f,32sの配置)
次に、各極コイル31における一対のコイル引出部32f,32sの好適な配置について説明する。図25および図26に示すように、本実施形態では、各極コイル31の第一コイル引出部32fは、当該極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最小の単位コイル20(第一単位コイル20a)の第一方向第一コイル引出部側(矢印X1方向)のコイルサイド21(第一コイルサイド21a)から引き出されていると好適である。また、各極コイル31の第二コイル引出部32sは、当該極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最大の単位コイル20(第三単位コイル20c)の第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)のコイルサイド21(第二コイルサイド21b)から引き出されていると好適である。なお、図26では、第一コイル引出部32fは、最もスロット底部11a側から引き出されており、第二コイル引出部32sは、最もスロット開口部11b側から引き出されている。
【0141】
図26に示すように、本実施形態では、複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31cは、いずれも一対のコイル引出部32f,32sと交差していない。従って、第一実施形態と同様に、近接部位の干渉回避が容易である。なお、第二コイル引出部32sは、第三単位コイル20cのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を渡らせることができる。また、第一単位コイル20aと第二単位コイル20bとを接続する単位コイル間接続部31cは、第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bの各コイルエンド22,22間に収容することができる。第二単位コイル20bと第三単位コイル20cとを接続する単位コイル間接続部31cは、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cの各コイルエンド22,22間に収容することができる。
【0142】
図27および図28に示すように、一対のコイル引出部32f,32sの配置は、第八変形形態の配置にすることもできる。第八変形形態では、各極コイル31の第一コイル引出部32fは、当該極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最大の単位コイル20(第一単位コイル20a)の第一方向第一コイル引出部側(矢印X1方向)のコイルサイド21(第一コイルサイド21a)から引き出されている。また、各極コイル31の第二コイル引出部32sは、当該極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最小の単位コイル20(第三単位コイル20c)の第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)のコイルサイド21(第二コイルサイド21b)から引き出されている。なお、図28では、第一コイル引出部32fは、最もスロット底部11a側から引き出されており、第二コイル引出部32sは、スロット中央部11cから引き出されている。
【0143】
本変形形態においても、第一単位コイル20aの巻進行方向W1、第二単位コイル20bの巻進行方向W2および第三単位コイル20cの巻進行方向W3は、いずれも第二方向スロット開口部側(矢印Y2方向)である。また、第一単位コイル20aの巻進行方向W1から視た第一単位コイル20aの巻方向は、時計回りである。さらに、第二単位コイル20bの巻進行方向W2から視た第二単位コイル20bの巻方向は、時計回りである。また、第三単位コイル20cの巻進行方向W3から視た第三単位コイル20cの巻方向は、時計回りである。なお、第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bは、フルコイル23fであり、第三単位コイル20cは、ハーフコイル23hである。
【0144】
図28に示すように、本変形形態では、第二コイル引出部32sの配策は、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cを接続する単位コイル間接続部31cや他の単位コイル20(第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20b)を迂回する必要があり、第二コイル引出部32sは、第二方向スロット開口部側(矢印Y2方向)に、一旦、はみ出す。その後、第二コイル引出部32sは、複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31c、並びに、第一単位コイル20a、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を引き回されている。その結果、本変形形態では、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cを接続する単位コイル間接続部31cと、第二コイル引出部32sとが接触して交差する。そのため、本変形形態の各極コイル31は、本実施形態と比べて、第三方向(矢印Z方向)に大型化する。
【0145】
本実施形態の回転電機100によれば、各極コイル31の第一コイル引出部32fは、当該極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最小の単位コイル20(第一単位コイル20a)の第一方向第一コイル引出部側(矢印X1方向)のコイルサイド21(第一コイルサイド21a)から引き出されている。また、各極コイル31の第二コイル引出部32sは、当該極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最大の単位コイル20(第三単位コイル20c)の第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)のコイルサイド21(第二コイルサイド21b)から引き出されている。
【0146】
これらにより、複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31cは、いずれも一対のコイル引出部32f,32sと交差していない。その結果、各極コイル31における一対のコイル引出部32f,32sの配置が本実施形態と異なる第八変形形態と比べて、本実施形態の各極コイル31は、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側のコイルエンド22が小型化され、その配策が簡素化される。
【0147】
各極コイル31における一対のコイル引出部32f,32sの好適な配置は、毎極毎相スロット数が1.5の場合も同様の傾向が見られる。第九変形形態の回転電機100は、8極36スロット構成の三相回転電機であり、毎極毎相スロット数は1.5である。図29および図30に示すように、本変形形態では、各極コイル31は、一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが異なる複数(2つ)の単位コイル20が同心状に巻装され、電気的に直列接続されている。当該2つの単位コイル20を第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bとする。第一単位コイル20aの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチは、5スロットピッチに設定されている。第二単位コイル20bの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチは、7スロットピッチに設定されている。
【0148】
第一単位コイル20aの巻進行方向W1および第二単位コイル20bの巻進行方向W2は、いずれも第二方向スロット開口部側(矢印Y2方向)である。また、第一単位コイル20aの巻進行方向W1から視た第一単位コイル20aの巻方向は、時計回りであり、第二単位コイル20bの巻進行方向W2から視た第二単位コイル20bの巻方向は、時計回りである。なお、第一単位コイル20aは、ハーフコイル23hであり、第二単位コイル20bは、フルコイル23fである。
【0149】
図29および図30に示すように、第九変形形態では、各極コイル31の第一コイル引出部32fは、当該極コイル31を構成する複数(2つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最小の単位コイル20(第一単位コイル20a)の第一方向第一コイル引出部側(矢印X1方向)のコイルサイド21(第一コイルサイド21a)から引き出されている。また、各極コイル31の第二コイル引出部32sは、当該極コイル31を構成する複数(2つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最大の単位コイル20(第二単位コイル20b)の第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)のコイルサイド21(第二コイルサイド21b)から引き出されている。なお、図30では、第一コイル引出部32fは、最もスロット底部11a側から引き出されており、第二コイル引出部32sは、最もスロット開口部11b側から引き出されている。
【0150】
図30に示すように、本変形形態では、単位コイル間接続部31cは、一対のコイル引出部32f,32sと交差していない。なお、第二コイル引出部32sは、第二単位コイル20bのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を渡らせることができる。また、単位コイル間接続部31cは、第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bの各コイルエンド22,22間に収容することができる。
【0151】
図31および図32に示すように、一対のコイル引出部32f,32sの配置は、第十変形形態の配置にすることもできる。第十変形形態では、各極コイル31の第一コイル引出部32fは、当該極コイル31を構成する複数(2つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最大の単位コイル20(第一単位コイル20a)の第一方向第一コイル引出部側(矢印X1方向)のコイルサイド21(第一コイルサイド21a)から引き出されている。また、各極コイル31の第二コイル引出部32sは、当該極コイル31を構成する複数(2つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最小の単位コイル20(第二単位コイル20b)の第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)のコイルサイド21(第二コイルサイド21b)から引き出されている。なお、図32では、第一コイル引出部32fは、最もスロット底部11a側から引き出されており、第二コイル引出部32sは、スロット中央部11cから引き出されている。
【0152】
本変形形態においても、第一単位コイル20aの巻進行方向W1および第二単位コイル20bの巻進行方向W2は、いずれも第二方向スロット開口部側(矢印Y2方向)である。また、第一単位コイル20aの巻進行方向W1から視た第一単位コイル20aの巻方向は、時計回りであり、第二単位コイル20bの巻進行方向W2から視た第二単位コイル20bの巻方向は、時計回りである。なお、第一単位コイル20aは、フルコイル23fであり、第二単位コイル20bは、ハーフコイル23hである。
【0153】
図32に示すように、本変形形態では、第二コイル引出部32sの配策は、単位コイル間接続部31cや他の単位コイル20(第一単位コイル20a)を迂回する必要があり、第二コイル引出部32sは、第二方向スロット開口部側(矢印Y2方向)に、はみ出している。第二コイル引出部32sは、単位コイル間接続部31c、並びに、第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を引き回されている。その結果、本変形形態では、単位コイル間接続部31cと第二コイル引出部32sとが接触して交差する。そのため、本変形形態の各極コイル31は、第九変形形態と比べて、第三方向(矢印Z方向)に大型化する。
【0154】
以上のように、第九変形形態の各極コイル31は、第十変形形態と比べて、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側のコイルエンド22が小型化され、その配策が簡素化される。つまり、毎極毎相スロット数が1.5の場合も、各極コイル31における一対のコイル引出部32f,32sの好適な配置は、毎極毎相スロット数が2.5の場合と同様である。
【0155】
また、毎極毎相スロット数が3.5の場合、各極コイル31は、毎極毎相スロット数が2.5の場合と比べて、フルコイル23fの数および単位コイル間接続部31cの数が一つずつ増加する。しかしながら、各極コイル31における一対のコイル引出部32f,32sの配置を本実施形態と同様の配置にすると、複数(3つ)の単位コイル間接続部31cと、一対のコイル引出部32f,32sとは、交差しない。このように、毎極毎相スロット数が3.5以上の場合も、各極コイル31における一対のコイル引出部32f,32sの好適な配置は、毎極毎相スロット数が2.5の場合と同様である。
【0156】
(相コイル33の配置)
複数(本実施形態では、3つ)の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)は、第一装着工程と、第二進相装着工程と、第三進相装着工程とを備える回転電機100の製造方法によって、複数(60個)のスロット11に装着されると好適である。これにより、本実施形態では、複数(3つ)の相コイル33は、U相コイル33u、W相コイル33w、V相コイル33vの順に組み付けられる。なお、第一実施形態と同様に、複数(3つ)の相コイル33は、U相コイル33u、V相コイル33v、W相コイル33wの順に位相が遅れているものとする。また、複数(3つ)の相コイル33は、第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)に、U相コイル33u、V相コイル33v、W相コイル33wの相順に配設するものとする。
【0157】
第一装着工程は、複数(3つ)の相コイル33のうちの一の相コイル33(本実施形態では、U相コイル33u)を複数(24個)のスロット11に装着する工程である。図33Aに示すように、U相コイル33uの第一コイル引出部32fは、スロット底部11a側から引き出されている。U相コイル33uの第二コイル引出部32sは、スロット開口部11b側から引き出されて、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。U相コイル33uの第二コイル引出部32sは、U相コイル33uの第三単位コイル20cのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を引き回すことができる。
【0158】
このように、U相コイル33uは、一対のコイル引出部32f,32sと、極コイル31内の各渡り線(複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31c)とが交差していない。また、U相コイル33uは、最初に装着されるので、他の相コイル33(V相コイル33vおよびW相コイル33w)の影響を受けることなく、ハーフコイル23hの一対のコイルサイド21,21は、いずれもスロット底部11a側に配設される。つまり、U相のハーフコイル23hは、片側占有ハーフコイル23h2である。
【0159】
第二進相装着工程は、複数(3つ)の相コイル33のうちの残りの一の相コイル33を、第一装着工程で装着された相コイル33(U相コイル33u)に対して、相間最小位相差分、第一方向第一コイル引出部側(矢印X1方向)にずらして、複数(24個)のスロット11に装着する工程である。残りの一の相コイル33は、第一装着工程で装着された相コイル33(U相コイル33u)と比べて、相間最小位相差分、位相が進む相コイル33(本実施形態では、W相コイル33w)をいう。相間最小位相差は、第一実施形態と同様であり、電気角で120°である。また、本実施形態の回転電機100は、第一実施形態と同様に、8極60スロット構成の回転電機であり、相間最小位相差(電気角120°)は、5スロットピッチ分に相当する。
【0160】
図33Bに示すように、W相コイル33wの第一コイル引出部32fは、スロット底部11a側から引き出されている。W相コイル33wの第二コイル引出部32sは、スロット開口部11b側から引き出されて、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。W相コイル33wの第二コイル引出部32sは、W相コイル33wの第三単位コイル20cのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を引き回すことができる。
【0161】
このように、W相コイル33wは、一対のコイル引出部32f,32sと、極コイル31内の各渡り線(複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31c)とが交差していない。なお、W相コイル33wは、U相コイル33uの後に装着されるので、ハーフコイル23hの一対のコイルサイド21,21のうちの一方のコイルサイド21がスロット底部11a側に配設され、当該一対のコイルサイド21,21のうちの他方のコイルサイド21がスロット開口部11b側に配設される。つまり、W相のハーフコイル23hは、両側占有ハーフコイル23h1である。
【0162】
第三進相装着工程は、複数(3つ)の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)がすべて複数(60個)のスロット11に装着されるまで、直近で装着した相コイル33と比べて相間最小位相差(電気角120°)分、位相が進む相コイル33を、直近で装着した相コイル33に対して、相間最小位相差(電気角120°)分、第一方向第一コイル引出部側(矢印X1方向)にずらして、複数(24個)のスロット11に装着する工程である。本実施形態では、第二進相装着工程の終了時に、V相コイル33vが装着されていない。そのため、第三進相装着工程では、V相コイル33vを直近で装着した相コイル33(W相コイル33w)に対して、相間最小位相差(電気角120°)分、第一方向第一コイル引出部側(矢印X1方向)にずらして、複数(24個)のスロット11に装着する。これにより、複数(3つ)の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)がすべて複数(60個)のスロット11に装着されるので、第三進相装着工程は、終了する。
【0163】
図33Cに示すように、V相コイル33vの第一コイル引出部32fは、スロット中央部11cから引き出されて、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。V相コイル33vの第二コイル引出部32sは、スロット開口部11b側から引き出されて、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。V相コイル33vの第二コイル引出部32sは、V相コイル33vの第三単位コイル20cのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を引き回すことができる。
【0164】
V相コイル33vは、第一コイル引出部32fと、極コイル31内の渡り線(第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bを接続する単位コイル間接続部31c)とが接触して交差する。そのため、交差部位において、電気的な絶縁を確保するための対処が必要である。なお、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cを接続する単位コイル間接続部31cは、第一コイル引出部32fと接触して交差しないので、電気的な絶縁を確保するための対処は、不要である。V相コイル33vの組み付けの結果、V相コイル33vの第一コイル引出部32fは、V相コイル33vの極コイル31内の各渡り線(複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31c)の第三方向(矢印Z方向)の固定子鉄心10側(紙面奥側)を通過する。また、V相コイル33vの第一コイル引出部32fは、U相コイル33uの第一単位コイル20aのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を通過する。つまり、V相コイル33vの第一コイル引出部32fは、他相横断引き出し線である。なお、V相コイル33vは、最後に装着されるので、ハーフコイル23hの一対のコイルサイド21,21は、いずれもスロット開口部11b側に配設される。つまり、V相のハーフコイル23hは、片側占有ハーフコイル23h2である。
【0165】
図34A図34Dに示すように、複数(3つ)の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)は、U相コイル33u、V相コイル33v、W相コイル33wの順(相順と同じ順序)に、複数(60個)のスロット11に装着することもできる(第十一変形形態)。この方法は、第一実施形態で既述の第一装着工程と、第二遅相装着工程と、第三遅相装着工程とを備える回転電機100の製造方法と同様の方法である。
【0166】
図34Aに示すように、第十一変形形態のU相コイル33uを装着した後の状態は、図33Aに示す本実施形態のU相コイル33uを装着した後の状態と同じである。図34Bに示すように、V相コイル33vの第一コイル引出部32fは、スロット中央部11cから引き出されて、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。V相コイル33vの第二コイル引出部32sは、スロット開口部11b側から引き出されて、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。V相コイル33vの第二コイル引出部32sは、V相コイル33vの第三単位コイル20cのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を引き回すことができる。
【0167】
V相コイル33vは、第一コイル引出部32fと、極コイル31内の渡り線(第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bを接続する単位コイル間接続部31c)とが接触して交差する。そのため、交差部位において、電気的な絶縁を確保するための対処が必要である。なお、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cを接続する単位コイル間接続部31cは、第一コイル引出部32fと接触して交差しないので、電気的な絶縁を確保するための対処は、不要である。V相コイル33vの組み付けの結果、V相コイル33vの第一コイル引出部32fは、V相コイル33vの極コイル31内の各渡り線(複数(2つ)の単位コイル間接続部31c,31c)の第三方向(矢印Z方向)の固定子鉄心10側(紙面奥側)を通過する。また、V相コイル33vの第一コイル引出部32fは、U相コイル33uの第一単位コイル20aのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を通過する。なお、V相コイル33vは、U相コイル33uの後に装着されるので、ハーフコイル23hの一対のコイルサイド21,21のうちの一方のコイルサイド21がスロット底部11a側に配設され、当該一対のコイルサイド21,21のうちの他方のコイルサイド21がスロット開口部11b側に配設される。つまり、V相のハーフコイル23hは、両側占有ハーフコイル23h1である。
【0168】
図34Cに示すように、W相コイル33wの第一コイル引出部32fは、スロット中央部11cから引き出されて、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。W相コイル33wの第二コイル引出部32sは、スロット開口部11b側から引き出されて、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。W相コイル33wの第二コイル引出部32sは、W相コイル33wの第三単位コイル20cのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を引き回すことができる。
【0169】
W相コイル33wは、第一コイル引出部32fと、極コイル31内の渡り線(第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bを接続する単位コイル間接続部31c)とが接触して交差する。そのため、交差部位において、電気的な絶縁を確保するための対処が必要である。なお、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cを接続する単位コイル間接続部31cは、第一コイル引出部32fと接触して交差しないので、電気的な絶縁を確保するための対処は、不要である。W相コイル33wの組み付けの結果、W相コイル33wの第一コイル引出部32fは、W相コイル33wの極コイル31内の各渡り線(複数(2つ)の単位コイル間接続部31c、31c)の第三方向(矢印Z方向)の固定子鉄心10側(紙面奥側)を通過する。また、W相コイル33wの第一コイル引出部32fは、V相コイル33vの第一単位コイル20aのコイルエンド22の第三方向(矢印Z方向)のさらに外側(紙面手前側)を通過する。なお、W相コイル33wは、最後に装着されるので、ハーフコイル23hの一対のコイルサイド21,21は、いずれもスロット開口部11b側に配設される。つまり、W相のハーフコイル23hは、片側占有ハーフコイル23h2である。
【0170】
第十一変形形態では、V相コイル33vの第一コイル引出部32fは、スロット中央部11cから引き出されている。V相コイル33vは、第一コイル引出部32fと、極コイル31内の渡り線(第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bを接続する単位コイル間接続部31c)とが接触して交差する。以上のことは、W相コイル33wについても同様である。このように、第十一変形形態では、複数(3つ)の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)のうちの二相(V相およびW相)において、第一コイル引出部32fと、極コイル31内の渡り線(第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bを接続する単位コイル間接続部31c)とが接触して交差する。
【0171】
一方、本実施形態では、複数(3つ)の相コイル33(U相コイル33u、V相コイル33vおよびW相コイル33w)のうちの一相(V相)において、第一コイル引出部32fと、極コイル31内の渡り線(第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bを接続する単位コイル間接続部31c)とが接触して交差する。このように、本実施形態の回転電機100は、第十一変形形態の回転電機100と比べて、一対のコイル引出部32f,32sと、極コイル31内の渡り線(第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bを接続する単位コイル間接続部31c)とが接触して交差する相数が少ない。よって、本実施形態の極コイル31は、第十一変形形態の極コイル31と比べて、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側のコイルエンド22が小型化され、その配策が簡素化される。
【0172】
また、第十一変形形態では、他相横断引き出し線は、二相分であり、V相コイル33vの第一コイル引出部32fおよびW相コイル33wの第一コイル引出部32fである。一方、本実施形態では、他相横断引き出し線は、一相分であり、V相コイル33vの第一コイル引出部32fである。このように、本実施形態の回転電機100は、第十一変形形態の回転電機100と比べて、他相横断引き出し線の相数が少ない。よって、本実施形態の回転電機100は、第十一変形形態の回転電機100と比べて、相コイル33間の電気的な絶縁が必要な絶縁部位を低減することができる。
【0173】
なお、第十一変形形態では、U相コイル33uの第二コイル引出部32sは、スロット開口部11b側から引き出されて、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。つまり、U相コイル33uの第二コイル引出部32sは、スロット11の横断長がフル横断長(長さ比は1)である。これらのことは、V相コイル33vの第二コイル引出部32sおよびW相コイル33wの第二コイル引出部32sについても同様である。
【0174】
また、V相コイル33vの第一コイル引出部32fは、スロット中央部11cから引き出されて、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。つまり、V相コイル33vの第一コイル引出部32fは、スロット11の横断長がハーフ横断長(長さ比は0.5)である。このことは、W相コイル33wの第一コイル引出部32fについても同様である。なお、U相コイル33uの第一コイル引出部32fは、スロット底部11a側から引き出されており、スロット11を横断しない。以上から、三相分の一対のコイル引出部32f,32sのスロット11の横断長は、フル横断長が三つ分(長さ比は3)と、ハーフ横断長が二つ分(長さ比は1)とを合算して、長さ比が4になる。
【0175】
一方、本実施形態では、U相コイル33uの第二コイル引出部32sは、スロット開口部11b側から引き出されて、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。つまり、U相コイル33uの第二コイル引出部32sは、スロット11の横断長がフル横断長(長さ比は1)である。これらのことは、V相コイル33vの第二コイル引出部32sおよびW相コイル33wの第二コイル引出部32sについても同様である。
【0176】
また、V相コイル33vの第一コイル引出部32fは、スロット中央部11cから引き出されて、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)に引き回されている。つまり、V相コイル33vの第一コイル引出部32fは、スロット11の横断長がハーフ横断長(長さ比は0.5)である。なお、U相コイル33uの第一コイル引出部32fは、スロット底部11a側から引き出されており、スロット11を横断しない。このことは、W相コイル33wの第一コイル引出部32fについても同様である。以上から、三相分の一対のコイル引出部32f,32sのスロット11の横断長は、フル横断長が三つ分(長さ比は3)と、ハーフ横断長が一つ分(長さ比は0.5)とを合算して、長さ比が3.5になる。このように、本実施形態の各極コイル31は、第十一変形形態の各極コイル31と比べて、スロット11の横断長が短縮化されている。
【0177】
図34A図34Dに示すように、第十一変形形態では、両側占有ハーフコイル23h1の第一ハーフスロット部位11d内の一点を始点とし第二ハーフスロット部位11e内の一点を終点とするベクトル(第一ベクトル35aに相当)と、第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bを接続する単位コイル間接続部31cの第一渡り線端部34aを始点とし第二渡り線端部34bを終点とするベクトル(第二ベクトル35bに相当)とのなす角は、機械角90°より大きい鈍角になっている。このことは、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cを接続する単位コイル間接続部31cについても同様である。
【0178】
一方、図33A図33Dに示すように、本実施形態では、両側占有ハーフコイル23h1の第一ハーフスロット部位11d内の一点を始点とし第二ハーフスロット部位11e内の一点を終点とするベクトル(第一ベクトル35aに相当)と、第一単位コイル20aおよび第二単位コイル20bを接続する単位コイル間接続部31cの第一渡り線端部34aを始点とし第二渡り線端部34bを終点とするベクトル(第二ベクトル35bに相当)とのなす角は、機械角90°より小さい鋭角になっている。このことは、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20cを接続する単位コイル間接続部31cについても同様である。
【0179】
本実施形態の回転電機100によれば、上記構成により、両側占有ハーフコイル23h1のコイルエンド22、極コイル31内の渡り線(単位コイル間接続部31c)および一対のコイル引出部32f,32sの間の干渉交差(接触して交差する状況)を低減することができ、他相横断引き出し線の数を低減することができる。よって、本実施形態の極コイル31は、第十一変形形態の極コイル31と比べて、第三方向(矢印Z方向)のうちの一対のコイル引出部32f,32s側のコイルエンド22が小型化され、その配策が簡素化される。
【0180】
相コイル33の好適な配置は、毎極毎相スロット数が1.5の場合も同様の傾向が見られる。図35A図35Dは、既述の第九変形形態の回転電機100(8極36スロット構成の三相回転電機)において、複数(3つ)の相コイル33を、U相コイル33u、W相コイル33w、V相コイル33vの順に組み付けたときの各極コイル31の装着状態を示している。図35A図35Dは、図33A図33Dにそれぞれ対応している。
【0181】
第九変形形態の各極コイル31は、本実施形態の各極コイル31と比べて、フルコイル23fの数が一つ少なくなり、単位コイル間接続部31cの数が一つ少なくなる。しかしながら、一対のコイル引出部32f,32sと、極コイル31内の渡り線(単位コイル間接続部31c)との間の交差の有無は、本実施形態と同様になっている。また、スロット11の横断長は、本実施形態と同様になっている。さらに、両側占有ハーフコイル23h1の第一ハーフスロット部位11d内の一点を始点とし第二ハーフスロット部位11e内の一点を終点とするベクトル(第一ベクトル35aに相当)と、単位コイル間接続部31cの第一渡り線端部34aを始点とし第二渡り線端部34bを終点とするベクトル(第二ベクトル35bに相当)とのなす角の関係は、本実施形態と同様の関係になっている。
【0182】
図36A図36Dは、既述の第九変形形態の回転電機100(8極36スロット構成の三相回転電機)において、複数(3つ)の相コイル33を、U相コイル33u、V相コイル33v、W相コイル33wの順に組み付けたときの各極コイル31の装着状態(第十二変形形態)を示している。図36A図36Dは、図34A図34Dにそれぞれ対応している。
【0183】
第十二変形形態の各極コイル31は、第十一変形形態の各極コイル31と比べて、フルコイル23fの数が一つ少なくなり、単位コイル間接続部31cの数が一つ少なくなる。しかしながら、一対のコイル引出部32f,32sと、極コイル31内の渡り線(単位コイル間接続部31c)との間の交差の有無は、第十一変形形態と同様になっている。また、スロット11の横断長は、第十一変形形態と同様になっている。さらに、両側占有ハーフコイル23h1の第一ハーフスロット部位11d内の一点を始点とし第二ハーフスロット部位11e内の一点を終点とするベクトル(第一ベクトル35aに相当)と、単位コイル間接続部31cの第一渡り線端部34aを始点とし第二渡り線端部34bを終点とするベクトル(第二ベクトル35bに相当)とのなす角の関係は、第十一変形形態と同様の関係になっている。
【0184】
このように、毎極毎相スロット数が1.5の場合も、相コイル33の好適な配置は、毎極毎相スロット数が2.5の場合と同様である。また、毎極毎相スロット数が3.5以上の場合も、相コイル33の好適な配置は、毎極毎相スロット数が2.5の場合と同様である。
【0185】
<空隙面50gを境界面にした鏡面対称関係にある固定子コイル30>
上述の実施形態や変形形態では、可動子70が固定子40の内方に設けられる回転電機100を例に説明した。しかしながら、本発明に係る回転電機は、可動子70が固定子40の外方に設けられる回転電機についても同様に適用することができる。第十三変形形態は、第一実施形態と比べて、可動子70が固定子40の外方に設けられている点で異なる。以下、図37および図38に基づいて、第一実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0186】
ここで、図1に示す固定子40と可動子70との間の空隙に形成される仮想の面であって、第一方向(矢印X方向)に沿って形成される面を空隙面50gとする。図38に示す極コイル31は、空隙面50gを境界面にして、図9に示す極コイル31を折り返した状態(鏡像)を示している。図38では、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)は、紙面下方になり、第二方向スロット開口部側(矢印Y2方向)は、紙面上方になる。
【0187】
図37は、第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット底部11a側から視た極コイル31の構成例を模式的に示す図である。第十三変形形態の極コイル31と第一実施形態の極コイル31とは、上述した鏡像関係にあるので、図37に示す第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット底部11a側から視た極コイル31は、図2に示す第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット開口部11b側から視た極コイル31に対応する。
【0188】
図37および図38に示すように、各極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20(第一単位コイル20a、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20c)の各巻進行方向(矢印W1方向、矢印W2方向および矢印W3方向)は、いずれも第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)である。また、第一単位コイル20aの巻進行方向W1から視た第一単位コイル20aの巻方向は、時計回りである。さらに、第二単位コイル20bの巻進行方向W2から視た第二単位コイル20bの巻方向は、時計回りである。また、第三単位コイル20cの巻進行方向W3から視た第三単位コイル20cの巻方向は、時計回りである。
【0189】
各極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20は、一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最大の単位コイル20(第一単位コイル20a)から一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最小の単位コイル20(第三単位コイル20c)へ連続して巻進められており、最も近接する単位コイル20,20同士(第一単位コイル20aと第二単位コイル20bおよび第二単位コイル20bと第三単位コイル20c)が電気的に接続されている。
【0190】
各極コイル31の第一コイル引出部32fは、当該極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最大の単位コイル20(第一単位コイル20a)の第一方向第一コイル引出部側(矢印X1方向)のコイルサイド21(第一コイルサイド21a)から引き出されている。また、各極コイル31の第二コイル引出部32sは、当該極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最小の単位コイル20(第三単位コイル20c)の第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)のコイルサイド21(第二コイルサイド21b)から引き出されている。なお、図38では、第一コイル引出部32fは、最もスロット開口部11b側から引き出されており、第二コイル引出部32sは、最もスロット底部11a側から引き出されている。
【0191】
このように、本変形形態では、各極コイル31における各単位コイル20の巻進行方向が第一実施形態と同様の方向になっている。また、各極コイル31における巻始めの単位コイル20および巻終りの単位コイル20についても同様であり、各極コイル31における一対のコイル引出部32f,32sの配置についても同様である。さらに、相コイル33(U相コイル33u,V相コイル33v,W相コイル33w)の配置についても同様である。しかしながら、各単位コイル20の巻進行方向から視た各単位コイル20の巻方向は、第一実施形態と異なっている。そのため、各単位コイル20に流れる電流の位相が第一実施形態と同じ場合、空隙面50gに発生する磁極配置(磁極の極性)が反転し、空隙面50gに発生する磁極配置の鏡面関係が維持できなくなる。そこで、本変形形態では、各単位コイル20の電流方向は、第一実施形態の電流方向に対して反転させる必要がある。上述したことは、第一実施形態で既述した変形形態についても同様に言える。
【0192】
また、上述したことは、第二実施形態についても同様に言える。以下、図39および図40に基づいて、第十四変形形態について、第二実施形態と異なる点を中心に説明する。図40に示す極コイル31は、空隙面50gを境界面にして、図26に示す極コイル31を折り返した状態(鏡像)を示している。図40では、第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)は、紙面下方になり、第二方向スロット開口部側(矢印Y2方向)は、紙面上方になる。
【0193】
図39は、第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット底部11a側から視た極コイル31の構成例を模式的に示す図である。第十四変形形態の極コイル31と第二実施形態の極コイル31とは、上述した鏡像関係にあるので、図39に示す第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット底部11a側から視た極コイル31は、図25に示す第二方向(矢印Y方向)のうちのスロット開口部11b側から視た極コイル31に対応する。
【0194】
図39および図40に示すように、各極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20(第一単位コイル20a、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20c)の各巻進行方向(矢印W1方向、矢印W2方向および矢印W3方向)は、いずれも第二方向スロット開口部側(矢印Y2方向)である。また、第一単位コイル20aの巻進行方向W1から視た第一単位コイル20aの巻方向は、反時計回りである。さらに、第二単位コイル20bの巻進行方向W2から視た第二単位コイル20bの巻方向は、反時計回りである。また、第三単位コイル20cの巻進行方向W3から視た第三単位コイル20cの巻方向は、反時計回りである。
【0195】
各極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20は、一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最小の単位コイル20(第一単位コイル20a)から一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最大の単位コイル20(第三単位コイル20c)へ連続して巻進められており、最も近接する単位コイル20,20同士(第一単位コイル20aと第二単位コイル20bおよび第二単位コイル20bと第三単位コイル20c)が電気的に接続されている。
【0196】
各極コイル31の第一コイル引出部32fは、当該極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最小の単位コイル20(第一単位コイル20a)の第一方向第一コイル引出部側(矢印X1方向)のコイルサイド21(第一コイルサイド21a)から引き出されている。また、各極コイル31の第二コイル引出部32sは、当該極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最大の単位コイル20(第三単位コイル20c)の第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)のコイルサイド21(第二コイルサイド21b)から引き出されている。なお、図40では、第一コイル引出部32fは、最もスロット底部11a側から引き出されており、第二コイル引出部32sは、最もスロット開口部11b側から引き出されている。
【0197】
このように、本変形形態では、各極コイル31における各単位コイル20の巻進行方向が第二実施形態と同様の方向になっている。また、各極コイル31における巻始めの単位コイル20および巻終りの単位コイル20についても同様であり、各極コイル31における一対のコイル引出部32f,32sの配置についても同様である。さらに、相コイル33(U相コイル33u,V相コイル33v,W相コイル33w)の配置についても同様である。しかしながら、各単位コイル20の巻進行方向から視た各単位コイル20の巻方向は、第二実施形態と異なっている。よって、本変形形態では、各単位コイル20の電流方向は、第二実施形態の電流方向に対して反転させる必要がある。上述したことは、第二実施形態で既述した変形形態についても同様に言える。
【0198】
このように、各単位コイル20の電流方向を、既述した実施形態や変形形態の電流方向に対して反転させることにより、空隙面50gを境界面にした鏡面対称関係にある固定子コイル30に本発明を適用することができる。
【0199】
<スロット中央面40cを境界面にした鏡面対称関係にある固定子コイル30>
本発明は、スロット中央面40cを境界面にした鏡面対称関係にある固定子コイル30についても同様に適用することができる。第十五変形形態は、第一実施形態と比べて、固定子コイル30がスロット中央面40cを境界面にした鏡面対称関係になっている点で異なる。以下、図41および図42に基づいて、第一実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0200】
ここで、図1に示すように、第二方向(矢印Y方向)および第三方向(矢印Z方向)によって形成される仮想の平面であって、スロット11を二等分する平面をスロット中央面40cとする。図42に示す極コイル31は、スロット中央面40cを境界面にして、図9に示す極コイル31を折り返した状態(鏡像)を示している。図42では、第一方向第一コイル引出部側(矢印X1方向)は、紙面右方になり、第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)は、紙面左方になる。このことは、図41に示す極コイル31と、図2に示す極コイル31との間の関係についても同様に言える。
【0201】
図41および図42に示すように、各極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20(第一単位コイル20a、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20c)の各巻進行方向(矢印W1方向、矢印W2方向および矢印W3方向)は、いずれも第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)である。また、第一単位コイル20aの巻進行方向W1から視た第一単位コイル20aの巻方向は、時計回りである。さらに、第二単位コイル20bの巻進行方向W2から視た第二単位コイル20bの巻方向は、時計回りである。また、第三単位コイル20cの巻進行方向W3から視た第三単位コイル20cの巻方向は、時計回りである。
【0202】
各極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20は、一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最大の単位コイル20(第一単位コイル20a)から一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最小の単位コイル20(第三単位コイル20c)へ連続して巻進められており、最も近接する単位コイル20,20同士(第一単位コイル20aと第二単位コイル20bおよび第二単位コイル20bと第三単位コイル20c)が電気的に接続されている。
【0203】
各極コイル31の第一コイル引出部32fは、当該極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最大の単位コイル20(第一単位コイル20a)の第一方向第一コイル引出部側(矢印X1方向)のコイルサイド21(第一コイルサイド21a)から引き出されている。また、各極コイル31の第二コイル引出部32sは、当該極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最小の単位コイル20(第三単位コイル20c)の第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)のコイルサイド21(第二コイルサイド21b)から引き出されている。なお、図42では、第一コイル引出部32fは、最もスロット開口部11b側から引き出されており、第二コイル引出部32sは、最もスロット底部11a側から引き出されている。
【0204】
このように、本変形形態では、各極コイル31における各単位コイル20の巻進行方向が第一実施形態と同様の方向になっている。また、各極コイル31における巻始めの単位コイル20および巻終りの単位コイル20についても同様であり、各極コイル31における一対のコイル引出部32f,32sの配置についても同様である。さらに、相コイル33(U相コイル33u,V相コイル33v,W相コイル33w)の配置についても同様である。しかしながら、各単位コイル20の巻進行方向から視た各単位コイル20の巻方向は、第一実施形態と異なっている。よって、本変形形態では、各単位コイル20の電流方向は、第一実施形態の電流方向に対して反転させる必要がある。上述したことは、第一実施形態で既述した変形形態についても同様に言える。
【0205】
また、上述したことは、第二実施形態についても同様に言える。以下、図43および図44に基づいて、第十六変形形態について、第二実施形態と異なる点を中心に説明する。図44に示す極コイル31は、スロット中央面40cを境界面にして、図26に示す極コイル31を折り返した状態(鏡像)を示している。図44では、第一方向第一コイル引出部側(矢印X1方向)は、紙面右方になり、第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)は、紙面左方になる。このことは、図43に示す極コイル31と、図25に示す極コイル31との間の関係についても同様に言える。
【0206】
図43および図44に示すように、各極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20(第一単位コイル20a、第二単位コイル20bおよび第三単位コイル20c)の各巻進行方向(矢印W1方向、矢印W2方向および矢印W3方向)は、いずれも第二方向スロット開口部側(矢印Y2方向)である。また、第一単位コイル20aの巻進行方向W1から視た第一単位コイル20aの巻方向は、反時計回りである。さらに、第二単位コイル20bの巻進行方向W2から視た第二単位コイル20bの巻方向は、反時計回りである。また、第三単位コイル20cの巻進行方向W3から視た第三単位コイル20cの巻方向は、反時計回りである。
【0207】
各極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20は、一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最小の単位コイル20(第一単位コイル20a)から一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最大の単位コイル20(第三単位コイル20c)へ連続して巻進められており、最も近接する単位コイル20,20同士(第一単位コイル20aと第二単位コイル20bおよび第二単位コイル20bと第三単位コイル20c)が電気的に接続されている。
【0208】
各極コイル31の第一コイル引出部32fは、当該極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最小の単位コイル20(第一単位コイル20a)の第一方向第一コイル引出部側(矢印X1方向)のコイルサイド21(第一コイルサイド21a)から引き出されている。また、各極コイル31の第二コイル引出部32sは、当該極コイル31を構成する複数(3つ)の単位コイル20のうちの一対のコイルサイド21,21間のコイルピッチが最大の単位コイル20(第三単位コイル20c)の第一方向第二コイル引出部側(矢印X2方向)のコイルサイド21(第二コイルサイド21b)から引き出されている。なお、図44では、第一コイル引出部32fは、最もスロット底部11a側から引き出されており、第二コイル引出部32sは、最もスロット開口部11b側から引き出されている。
【0209】
このように、本変形形態では、各極コイル31における各単位コイル20の巻進行方向が第二実施形態と同様の方向になっている。また、各極コイル31における巻始めの単位コイル20および巻終りの単位コイル20についても同様であり、各極コイル31における一対のコイル引出部32f,32sの配置についても同様である。さらに、相コイル33(U相コイル33u,V相コイル33v,W相コイル33w)の配置についても同様である。しかしながら、各単位コイル20の巻進行方向から視た各単位コイル20の巻方向は、第二実施形態と異なっている。よって、本変形形態では、各単位コイル20の電流方向は、第二実施形態の電流方向に対して反転させる必要がある。上述したことは、第二実施形態で既述した変形形態についても同様に言える。
【0210】
このように、各単位コイル20の電流方向を、既述した実施形態や変形形態の電流方向に対して反転させることにより、スロット中央面40cを境界面にした鏡面対称関係にある固定子コイル30に本発明を適用することができる。
【0211】
<円筒状回転電機>
円筒状回転電機では、以下に示す関係がある。なお、相コイル33(U相コイル33u,V相コイル33v,W相コイル33w)の組み付けにおいて、直近で装着した相コイル33に対して、相間最小位相差(電気角120°)分、ずらすときのずらし方向を相コイル組み付け方向とする。
【0212】
第一実施形態では、第一単位コイル20aの巻進行方向W1、第二単位コイル20bの巻進行方向W2および第三単位コイル20cの巻進行方向W3は、いずれも第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)である。また、第一単位コイル20aの巻進行方向W1から視た第一単位コイル20aの巻方向は、反時計回りである。さらに、第二単位コイル20bの巻進行方向W2から視た第二単位コイル20bの巻方向は、反時計回りである。また、第三単位コイル20cの巻進行方向W3から視た第三単位コイル20cの巻方向は、反時計回りである。ハーフコイル23hは、第三単位コイル20cである。相コイル組み付け方向は、時計回りになるので、相コイル組み付け方向は、ハーフコイル23hの巻方向に対して逆方向である。
【0213】
第二実施形態では、第一単位コイル20aの巻進行方向W1、第二単位コイル20bの巻進行方向W2および第三単位コイル20cの巻進行方向W3は、いずれも第二方向スロット開口部側(矢印Y2方向)である。また、第一単位コイル20aの巻進行方向W1から視た第一単位コイル20aの巻方向は、時計回りである。さらに、第二単位コイル20bの巻進行方向W2から視た第二単位コイル20bの巻方向は、時計回りである。また、第三単位コイル20cの巻進行方向W3から視た第三単位コイル20cの巻方向は、時計回りである。ハーフコイル23hは、第一単位コイル20aである。相コイル組み付け方向は、反時計回りになるので、相コイル組み付け方向は、ハーフコイル23hの巻方向に対して逆方向である。
【0214】
第十三変形形態では、第一単位コイル20aの巻進行方向W1、第二単位コイル20bの巻進行方向W2および第三単位コイル20cの巻進行方向W3は、いずれも第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)である。また、第一単位コイル20aの巻進行方向W1から視た第一単位コイル20aの巻方向は、時計回りである。さらに、第二単位コイル20bの巻進行方向W2から視た第二単位コイル20bの巻方向は、時計回りである。また、第三単位コイル20cの巻進行方向W3から視た第三単位コイル20cの巻方向は、時計回りである。ハーフコイル23hは、第三単位コイル20cである。相コイル組み付け方向は、時計回りになるので、相コイル組み付け方向は、ハーフコイル23hの巻方向に対して同じ方向である。
【0215】
第十四変形形態では、第一単位コイル20aの巻進行方向W1、第二単位コイル20bの巻進行方向W2および第三単位コイル20cの巻進行方向W3は、いずれも第二方向スロット開口部側(矢印Y2方向)である。また、第一単位コイル20aの巻進行方向W1から視た第一単位コイル20aの巻方向は、反時計回りである。さらに、第二単位コイル20bの巻進行方向W2から視た第二単位コイル20bの巻方向は、反時計回りである。また、第三単位コイル20cの巻進行方向W3から視た第三単位コイル20cの巻方向は、反時計回りである。ハーフコイル23hは、第一単位コイル20aである。相コイル組み付け方向は、反時計回りになるので、相コイル組み付け方向は、ハーフコイル23hの巻方向に対して同じ方向である。
【0216】
第十五変形形態では、第一単位コイル20aの巻進行方向W1、第二単位コイル20bの巻進行方向W2および第三単位コイル20cの巻進行方向W3は、いずれも第二方向スロット底部側(矢印Y1方向)である。また、第一単位コイル20aの巻進行方向W1から視た第一単位コイル20aの巻方向は、時計回りである。さらに、第二単位コイル20bの巻進行方向W2から視た第二単位コイル20bの巻方向は、時計回りである。また、第三単位コイル20cの巻進行方向W3から視た第三単位コイル20cの巻方向は、時計回りである。ハーフコイル23hは、第三単位コイル20cである。相コイル組み付け方向は、反時計回りになるので、相コイル組み付け方向は、ハーフコイル23hの巻方向に対して逆方向である。
【0217】
第十六変形形態では、第一単位コイル20aの巻進行方向W1、第二単位コイル20bの巻進行方向W2および第三単位コイル20cの巻進行方向W3は、いずれも第二方向スロット開口部側(矢印Y2方向)である。また、第一単位コイル20aの巻進行方向W1から視た第一単位コイル20aの巻方向は、反時計回りである。さらに、第二単位コイル20bの巻進行方向W2から視た第二単位コイル20bの巻方向は、反時計回りである。また、第三単位コイル20cの巻進行方向W3から視た第三単位コイル20cの巻方向は、反時計回りである。ハーフコイル23hは、第一単位コイル20aである。相コイル組み付け方向は、時計回りになるので、相コイル組み付け方向は、ハーフコイル23hの巻方向に対して逆方向である。
【0218】
なお、第十五変形形態では、極コイル31および相順方向(三相の相コイル33の配設方向)の両方が、第一実施形態に対して、スロット中央面40cを境界面にした鏡面対称関係にある。しかしながら、上述したことは、極コイル31および相順方向(三相の相コイル33の配設方向)の一方のみが、第一実施形態に対して、スロット中央面40cを境界面にした鏡面対称関係にある形態についても同様に言える。また、以上のことは、第十六変形形態についても同様に言える。つまり、いずれの場合も、相コイル組み付け方向は、ハーフコイル23hの巻方向に対して逆方向になる。
【0219】
<その他>
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。例えば、上記実施形態では、8極の回転電機を例に説明したが、極数およびスロット数は、実施形態で示す極数およびスロット数に限定されるものではない。また、本発明は、三相回転電機に限定されるものではなく、複数の相コイル33を備える多相回転電機に適用することができる。さらに、本発明は、固定子40および可動子70が同軸に配されるラジアル空隙型やアキシャル空隙型の円筒状回転電機に限定されるものではなく、固定子40および可動子70が直線上に配され、可動子70が固定子40に対して直線上に移動するリニア型電動機やリニア型発電機に適用することもできる。また、本発明の回転電機は、種々の回転電機に用いることができ、例えば、車両の駆動用電動機、発電機、産業用の電動機、発電機などに用いることができる。
【符号の説明】
【0220】
10:固定子鉄心、
11:スロット、
11a:スロット底部、11b:スロット開口部、
11d:第一ハーフスロット部位、11e:第二ハーフスロット部位、
20:単位コイル、
21,21:一対のコイルサイド、22,22:一対のコイルエンド、
23f:フルコイル、23h:ハーフコイル、23h1:両側占有ハーフコイル、
30:固定子コイル、
31:極コイル、31c:単位コイル間接続部、
32f:第一コイル引出部、32s:第二コイル引出部、
32f,32s:一対のコイル引出部、
33:相コイル、
34a:第一渡り線端部、34b:第二渡り線端部、
35a:第一ベクトル、35b:第二ベクトル、
40:固定子、
50:可動子鉄心、
61,62:一対の可動子磁極、
70:可動子、
100:回転電機。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
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図17B
図17C
図17D
図17E
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図18B
図18C
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図34C
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