(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記粒子の最長部分の長さと、該最長部分に直交する方向における上記粒子の最短部分の長さとの比率(「上記最長部分の長さ」/{上記最短部分の長さ})が、3倍以上である請求項1から6のいずれか一に記載のセパレータ。
上記粒子の最長部分の長さと、該最長部分に直交する方向における上記粒子の最短部分の長さとの比率(「上記最長部分の長さ」/{上記最短部分の長さ})が、3倍以上である請求項14から20のいずれか一に記載の電池。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本技術を実施するための最良の形態(以下、実施の形態とする)について説明する。なお、説明は以下のように行う。
1.第1の実施の形態(本技術のセパレータの例)
2.第2の実施の形態(本技術のセパレータを用いた円筒型電池の例)
3.第3の実施の形態(本技術のセパレータを用いた角型電池の例)
4.第4の実施の形態(本技術のセパレータを用いたラミネートフィルム型電池の例)
5.第5の実施の形態(本技術のセパレータを用いたラミネートフィルム型電池の電池パックの例)
6.第6の実施の形態(電池を用いた電池パックの例)
7.第7の実施の形態(電池を用いた蓄電システム等の例)
【0021】
1.第1の実施の形態
第1の実施の形態に係るセパレータは、基材の少なくとも一方の面に熱吸収層を形成したものである。以下、本技術のセパレータについて詳細に説明する。
【0022】
(1−1)セパレータの構造
第1の実施の形態に係るセパレータ1は、
図1に示すように、多孔質膜からなる基材2と、基材2の少なくとも一方の面に形成される熱吸収層3とを備える。セパレータ1は、電池内において正極と負極とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止するとともに、非水電解質が含浸される。セパレータ1の熱吸収層3は、一方の電極で発生した熱を吸収する吸熱効果を有し、かつこの熱が他方の電極に伝わることを防止する断熱効果を有する。
【0023】
本技術のセパレータ1は、負極活物質として金属系材料もしくは金属合金系材料が用いられた電池に適用することで、特に顕著な効果を発揮する。負極活物質として金属系材料もしくは金属合金系材料が用いられた負極では、短絡放電時に激しい発熱が生じやすい。したがって、本技術のセパレータ1は、激しい発熱が生じやすい金属系材料もしくは金属合金系材料を負極活物質として用いた電池に、特に、正極が熱分解反応を起こすことを抑制する顕著な効果を発揮する。なお、
図1は、基材2の両面に熱吸収層3が形成されたセパレータ1の例である。セパレータ1は基材2のうち、正極対向側面もしくは負極対向側面のいずれかに熱吸収層3が形成されたものであってもよい。
【0024】
[基材]
基材2は、イオン透過度が大きく、所定の機械的強度を有する絶縁性の膜から構成される多孔質膜である。非水電解質電池にセパレータ1が適用された場合には、基材2の空孔に非水電解液が保持される。基材2は、セパレータ1の主要部として所定の機械的強度を有する一方で、非水電解液に対する耐性が高く、反応性が低く、膨張しにくいという特性を要する。また、巻回構造を有する電極体に用いられる場合には、柔軟性も必要とされる。
【0025】
このような基材2を構成する樹脂材料は、例えばポリプロピレンもしくはポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂またはナイロン樹脂等を用いることが好ましい。特に、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン等のポリエチレン、もしくはそれらの低分子量ワックス分、またはポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂は溶融温度が適当であり、入手が容易なので好適に用いられる。また、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造、もしくは、2種以上の樹脂材料を溶融混練して形成した多孔質膜としてもよい。ポリオレフィン樹脂からなる多孔質膜を含むものは、正極と負極との分離性に優れ、内部短絡の低下をいっそう低減することができる。
【0026】
基材2の厚さは、必要な強度を保つことができる厚さ以上であれば任意に設定可能である。基材2は、正極と負極との間の絶縁を図り、短絡等を防止するとともに、セパレータ1を介した電池反応を好適に行うためのイオン透過性を有し、かつ電池内において電池反応に寄与する活物質層の体積効率をできるだけ高くできる厚さに設定されることが好ましい。具体的に、基材2の厚さは7μm以上20μm以下であることが好ましい。
【0027】
基材2における空孔率は、上述のイオン透過性を得るために、25%以上80%以下であることが好ましく、25%以上40%以下であることがより好ましい。電池の実使用時の電流値、基材2の空孔構造等の特性や厚さにもよるが、上記範囲外に空孔率が小さくなると、充放電に関わる非水電解液中のイオンの移動の妨げとなる。このため、負荷特性が低下するとともに、大電流放電時には十分な容量を取り出すことが難しくなる。また、上記範囲外に空孔率が大きくなると、セパレータ強度が低下してしまう。特に、本技術のように表面に熱吸収層3を設けたセパレータ1では、熱吸収層3の厚み分基材2の厚みを薄く設計し、セパレータ1全体としては単層のセパレータと同等の厚みとすることが一般的である。このため、セパレータ1の強度は基材2の強度に高く依存し、基材2は一定以上の強度を必要とする。
【0028】
本技術に用いることができる基材2は、以下のように、例えば、微多孔膜、不織布、紙等に大別できる。
【0029】
[微多孔膜]
微多孔膜は、樹脂等の材料が薄く延伸されたものであり、且つ、多孔構造を有するものである。例えば、微多孔膜は、樹脂等の材料を延伸開孔法、相分離法などで成形することにより得たものである。例えば、延伸開口法では、まず、溶融ポリマーをTダイやサーキュラーダイから押し出し、さらに熱処理を施し規則性の高い結晶構造を形成する。その後、低温延伸、更には高温延伸して結晶界面を剥離させてラメラ間に間隔部分を作り、多孔構造を形成する。相分離法では、ポリマーと溶剤とを高温で混合して調製した均一溶液を、Tダイ法、インフレーション法などでフィルム化した後、溶剤を別の揮発性溶剤で抽出することにより、微多孔膜を得ることができる。なお、微孔膜の製造方法は、これらに限定されるものではなく、従来提案されている方法を広く用いることができる。
【0030】
[不織布]
不織布は、繊維を織ったり編んだりしないで、機械的、化学的、若しくは、溶剤、またはこれらを組み合わせて、繊維間を接合若しくは絡合、または接合および絡合によって作られた構造物であり、後述の紙を除いたものをいう。不織布の原料には繊維に加工できるほとんどの物質を使用することができ、繊維長や太さなどの形状を調整することで、目的、用途に応じた機能を持たせることができる。不織布の製造方法は、典型的には、フリースと呼ばれる繊維の集積層を形成する工程と、フリースの繊維間を結合する結合工程との2段階がある。それぞれの段階において、様々な製造方法があり、不織布の原料、目的、用途に応じて選択される。例えば、フリースを形成する工程としては、乾式法、湿式法、スパンボンド法、メルトブロー法等を用いることができる。フリースの繊維間を結合する結合工程としては、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法(水流絡合法)、ステッチボンド法、スチームジェット法等を用いることができる。
【0031】
不織布としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維を用いたポリエチレンテレフタレート透気性膜(ポリエチレンテレフタレート不織布)などが挙げられる。なお、透気性膜とは、透気性を有する膜のことをいう。その他、不織布としては、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ポリオレフィン繊維、または、ナイロン繊維等を用いたもの等が挙げられる。不織布は、2種以上の繊維を用いたものであってもよい。
【0032】
[紙]
紙は、狭義の紙のことをいい、例えば、パルプを用いて抄造されたものをいう。パルプとは、木材その他の植物等から、機械的、または化学的処理によって抽出した植物繊維の集合体のことをいう。パルプ以外の材料(例えば、タルク等の鉱物等)を混合して抄造された混抄紙も、紙に含まれる。紙としては、セルロースパルプを用いて抄造されたセルロース透気性膜などを用いることができる。なお、湿式法を用いた湿式不織布と紙とを区別する場合には、ISO 9092の定義に準じて区別する。すなわち、長さ対直径の比(アスペクト比)が300以上の繊維が質量比で50%以上であるもの、あるいは、密度が0.4g/cc以下の場合、長さ対直径の比が300以上の繊維が質量比で30%以上であるものを湿式不織布とし、それ以外は紙と区別する。
【0033】
基材2として、不織布、紙を用いる場合には、典型的には、基材2の空孔率は40%超であってもよい。この場合、基材2内の空隙に熱吸収層3の少なくとも一部を形成することで、基材2の表面上のみに熱吸収層3を形成する場合よりも、熱吸収層3の効果をより効果的に発揮することができるので、好ましい。
【0034】
[熱吸収層]
熱吸収層3は、基材2の少なくとも一方の面に形成された層であり、主として負極で発生した熱を吸収し、かつ負極で発生した熱が正極に伝わらないようにする機能を有する多孔質層である。非水電解質電池にセパレータ1が適用された場合には、熱吸収層3の空孔に非水電解液が保持される。熱吸収層3は、耐熱性を有する樹脂材料と、耐熱性および耐酸化性に優れる吸熱粒子として機能する無機粒子および有機粒子の少なくとも何れか等の固体粒子等の粒子とを含有する。熱吸収層3は、熱を伝わりにくくすることを目的として、粒子が分散して存在するようにすることが好ましい。なお、本技術において、分散とは、粒子もしくは二次粒子化した粒子群が連結されずに点在する状態を示すが、粒子もしくは二次粒子化した粒子群の一部は連結された状態であってもよい。すなわち、熱吸収層3全体として、粒子が分散した状態が好ましい。
【0035】
熱吸収層3は、基材2の少なくとも一方の面のみではなく、基材2の少なくとも一方の面に加え、基材2内の空隙にも形成されていてもよい。また、熱吸収層3は、基材2内の空隙のみに形成されていてもよい。すなわち、少なくとも一部が基材2内の空隙に含まれた熱吸収層3が、基材2の一方の面側または他方の面側に形成されていてもよく、基材2の一方の面側および他方の面側に形成されていてもよい。
【0036】
少なくとも一部が基材2内の空隙に含まれた熱吸収層3が、基材2の一方の面側に形成される場合としては、熱吸収層3が、基材2の一方の面の内側の領域から基材2の一方の面の外側の領域にわたり形成されている場合や、熱吸収層3が、基材2の一方の面から基材の一方の面の内側の領域にわたり形成されている場合が挙げられる。なお、基材2の一方の面の内側の領域では、熱吸収層3は基材2内の空隙に形成されている。
【0037】
さらに、熱吸収層3が、基材2の一方の面の内側の領域から基材2の一方の面の外側の領域にわたり形成されている場合としては、基材2の一方の面の内側の領域に形成されている熱吸収層3と、基材2の一方の面の外側に形成されている熱吸収層3とが連続的につながって形成されている場合、基材2の一方の面の内側の領域に形成されている熱吸収層3と、基材2の一方の面の外側に形成されている熱吸収層3とがつながらないで形成されている場合が挙げられる。
【0038】
少なくとも一部が基材2内の空隙に含まれた熱吸収層3が、基材2の他方の面側に形成される場合としては、熱吸収層3が、基材2の他方の面の内側の領域から基材2の他方の面の外側の領域にわたり形成されている場合や、熱吸収層3が、基材2の他方の面から基材の他方面の内側の領域にわたり形成されている場合が挙げられる。なお、基材2の他方の面の内側の領域では、熱吸収層3は基材2内の空隙に形成されている。
【0039】
さらに、熱吸収層3が、基材2の他方の面の内側の領域から基材2の他方の面の外側の領域にわたり形成されている場合としては、基材2の他方の面の内側の領域に形成されている熱吸収層3と、基材2の他方の面の外側に形成されている熱吸収層3とが連続的につながって形成されている場合、基材2の他方の面の内側の領域に形成されている熱吸収層3と、基材2の他方の面の外側に形成されている熱吸収層3とがつながらないで形成されている場合が挙げられる。
【0040】
熱吸収層3は、セパレータ1としてのイオン透過機能、非水電解液保持機能等を有するため、全体に微小な空隙が多数形成されており、
図2に示すような三次元網目構造を有していてもよい。なお、
図2は、熱吸収層3の構造を示す、走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)による二次電子像である。熱吸収層3は、熱吸収層3を構成する樹脂材料がフィブリル化し、フィブリルが相互連続的に繋がった三次元的なネットワーク構造を有していることが好ましい。粒子は、この三次元的なネットワーク構造を有する樹脂材料に担持されることにより、互いに連結することなく分散状態を保つことができる。
【0041】
具体的に、熱吸収層3は、負極で発生した熱を十分に吸収するために、面積あたりの熱容量が0.0001J/Kcm
2以上とされ、0.0003J/Kcm
2以上とされることがより好ましい。なお、面積あたりの熱容量は、単位面積における粒子の質量と、粒子の比熱との積で表される。また、面積あたりの熱容量は、熱吸収層3が基材2の両面に設けられる場合には、単位面積における基材2の両面に存在する粒子の質量と比熱とを基に算出される。
【0042】
なお、熱吸収層3に保持される非水電解液も熱容量を有するが、異常発熱によるガス発生等により熱吸収層3から散逸してしまう可能性がある。このため、本技術においては、吸熱粒子単体での熱容量を熱吸収層3の面積あたりの熱容量とする。
【0043】
また、熱吸収層3は、負極で発生した熱を正極に伝えにくくするために、体積あたりの熱容量が3.0J/Kcm
3以下とされ、2.5J/Kcm
3以下とされることがより好ましい。なお、体積あたりの熱容量は、単位体積における粒子の充填率と、真密度と、比熱との積で表され、基材2上の粒子の充填密度に比例する。面積あたりの熱容量と、体積あたりの熱容量との双方が上述の範囲とされることにより、負極で発生した熱を熱吸収層3にて吸収し、かつ熱吸収層3で吸収した熱を正極に伝わらないようにすることができる。
【0044】
ここで、熱吸収層3の体積あたりの熱容量3.0J/Kcm
3以下は、セパレータ1形成時の物性である。すなわち、非水電解質電池に適用後、充電放電を行った場合には、電極の膨張等に応じて熱吸収層3に潰れが生じ、体積あたりの熱容量が大きくなる。目安として、体積あたりの熱容量3.0J/Kcm
3、かつ厚さ15μmの熱吸収層3を有するセパレータ1を用いた場合、熱吸収層3の構成によるものの、概ね非水電解質電池の初回充電後の熱吸収層3の体積あたりの熱容量が3.2J/Kcm
3程度となる。また、非水電解質電池の充放電が進むにしたがって熱吸収層3の潰れが大きくなり、500サイクル充放電後は、熱吸収層3の体積あたりの熱容量が3.8J/Kcm
3程度となる。一般的に、非水電解質電池は、初回充電を行ってから出荷する。出荷時にセパレータ1の熱吸収層3の体積あたりの熱容量を3.2J/Kcm
3以下とすることにより、電極間の熱の伝搬を抑制することができる。
【0045】
本技術では、非水電解質電池の使用期間中、本技術のセパレータの効果を得るために、セパレータ1形成時において体積あたりの熱容量が3.0J/Kcm
3以下の熱吸収層3を形成する。初回充電前の状態で体積あたりの熱容量を3.0J/Kcm
3以下とすることにより、初回充電時(出荷時)の体積あたりの熱容量を3.2J/Kcm
3以下とすることができる。また、サイクルの進行とともにセパレータ1が圧縮されても、熱吸収層3の体積あたりの熱容量が3.8J/Kcm
3以下の範囲にあれば、サイクル進行に伴う「面積あたりの熱伝導量の増加」と、「短絡時の面積あたりの発熱量の減少」とが相殺される。これは、サイクルの進行に伴い、熱吸収層が圧縮を受け体積あたりの熱容量が上昇するとともに、面積あたりの熱伝導量も上昇してしまうものの、それと相殺するようにサイクル進行に伴う内部抵抗の上昇によって出力(電流)が低下し、面積あたりの発熱量が低下するためである。このため、電池全体としては安全性が維持される。
【0046】
吸熱粒子は、量が多いほど高い吸熱効果を得ることができる。しかしながら、熱容量の大きな物質は、熱伝導率も高い場合が多く、密に充填すると負極からの熱を効率よく正極に伝えてしまうおそれがある。このため、吸熱粒子は、熱吸収層3において疎に分散させて体積あたり熱容量を小さくするとともに、各吸熱粒子が互いに連結することなく分散させる必要がある。
【0047】
なお、従来、セパレータの耐熱性、耐酸化性の向上を目的として、表面に本技術と同様の無機粒子含有層を形成することが提案されている。しかしながら、従来のセパレータにおける無機粒子含有層の形成方法では、本技術のように、体積あたりの熱容量が低い(3.0J/Kcm
3以下)無機粒子含有層を実現することが困難であった。本技術では、熱吸収層3の形成方法を検討することにより、体積あたりの熱容量が低く、熱を伝えにくい熱吸収層3としている。熱吸収層3の形成方法については後述する。
【0048】
熱吸収層3が基材2の負極対向側面に設けられる場合には、セパレータ1付近の温度上昇が緩やかになり、基材2がシャットダウン後溶融に至るまでの時間を長くすることができる。このため、放電反応を抑制することができ、発熱を抑制することができる。なお、熱吸収層3を負極対向側面のみに設ける場合、正極対向側面には、表面が平坦な形状とされた耐熱性・耐酸化性に優れた層を設けてもよい。電池の満充電電圧を従来よりも高い4.25V以上等に設定した場合、満充電時には正極近傍が酸化雰囲気となる場合がある。このため、正極対向側面が酸化されて劣化するおそれがある。これを抑制するために、耐熱性・耐酸化性に対して特に優れた性質を有する樹脂材料を含む層を形成してもよい。
【0049】
一方、熱吸収層3が基材2の正極対向側面に設けられる場合には、基材2が溶融してしまった場合であっても、粒子が正極と負極との間の絶縁を保ち、かつ負極で発生した熱を吸収して正極へ熱が伝わることを抑制し続けることができる。このため、負極とセパレータ1との界面の非水電解液が蒸発して放電反応が停止するまでの時間的余裕を作り出すことができる。
【0050】
そして、熱吸収層3が基材2の両面に設けられたセパレータ1は、熱吸収層3が基材2の負極対向側面および正極対向側面に設けられた場合の双方の機能を得ることができるため、特に好ましい。
【0051】
熱吸収層3は、その表面が平滑であっても良く、また、凹凸形状を有していてもよい。上述の様に、熱吸収層3は、厚みを調整することにより、熱吸収層3全体として粒子を疎に分散させた構成とすることができる。一方で、熱吸収層3の表面を凹凸形状とすることによっても、熱吸収層3を疎な構成とすることができる。熱吸収層3の表面が凹凸形状を有する場合、熱吸収層3の凸状の部分が正極および負極のそれぞれと接触し、正極・負極間の距離を維持することができる。熱吸収層3の凸状の部分は、それぞれ連結することなく、吸熱機能や正極・負極間の断熱機能を有している。熱吸収層3表面の凹凸形状としては、例えば、
図3Aに示す斑紋状、
図3Bに示す格子状、
図3Cに示すドット状、
図3Dに示すピンホール状等の形状が挙げられる。
【0052】
熱吸収層3を構成する樹脂材料としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素樹脂、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体およびその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体およびその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体およびその水素化物、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のゴム類、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド(特にアラミド)、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリエーテル、アクリル酸樹脂またはポリエステル等の融点およびガラス転移温度の少なくとも一方が180℃以上の樹脂等が挙げられる。
【0053】
熱吸収層3を構成する無機粒子および有機粒子の少なくとも何れか等の固体粒子等の粒子としては、比熱が0.5J/gK以上の材料を用いることが好ましい。吸熱効果が高くなるためである。また、所定の面積あたり熱容量とするために必要となる粒子量(質量)を減らすことができるため、粒子を担持する樹脂材料量(質量)も減らすことができる。また、熱伝導率が低い材料を用いることが好ましい。負極から正極へ熱を伝えにくくする効果が高くなるためである。さらに、融点が1000℃以上の材料を用いることが好ましい。耐熱性を高めることができるためである。
【0054】
具体的には、電気絶縁性の無機粒子である金属酸化物、金属酸化物水和物、金属水酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等を挙げることができる。金属酸化物または金属酸化物水和物としては、酸化アルミニウム(アルミナ、Al
2O
3)、ベーマイト(Al
2O
3H
2OまたはAlOOH)、酸化マグネシウム(マグネシア、MgO)、酸化チタン(チタニア、TiO
2)、酸化ジルコニウム(ジルコニア、ZrO
2)、酸化ケイ素(シリカ、SiO
2)または酸化イットリウム(イットリア、Y
2O
3)、酸化亜鉛(ZnO)等を好適に用いることができる。金属窒化物としては、窒化ケイ素(Si
3N
4)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)または窒化チタン(TiN)等を好適に用いることができる。金属炭化物としては、炭化ケイ素(SiC)または炭化ホウ素(B
4C)等を好適に用いることができる。金属硫化物としては、硫酸バリウム(BaSO
4)等を好適に用いることができる。金属水酸化物としては水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)等を用いることができる。また、ゼオライト(M
2/nO・Al
2O
3・xSiO
2・yH
2O、Mは金属元素、x≧2、y≧0)等の多孔質アルミノケイ酸塩、タルク(Mg
3Si
4O
10(OH)
2)等の層状ケイ酸塩、チタン酸バリウム(BaTiO
3)またはチタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)等の鉱物を用いてもよい。また、Li
2O
4、Li
3PO
4、LiF等のリチウム化合物を用いてもよい。黒鉛、カーボンナノチューブ、ダイヤモンド等の炭素材料を用いてもよい。中でも、アルミナ、ベーマイト、タルク、チタニア(特にルチル型構造を有するもの)、シリカまたはマグネシアを用いることが好ましく、アルミナまたはベーマイトを用いることがより好ましい。
【0055】
これら無機粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。無機粒子は耐酸化性も備えており、熱吸収層3を正極側面に設ける場合には、充電時の正極近傍における酸化環境に対しても強い耐性を有する。無機粒子の形状は特に限定されるものではなく、球状、繊維状、針状、鱗片状、板状およびランダム形状等のいずれも用いることができる。
【0056】
有機粒子を構成する材料としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素樹脂、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体またはその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体またはその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体またはその水素化物、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のゴム類、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリエーテル、アクリル酸樹脂またはポリエステル等の融点およびガラス転移温度の少なくとも一方が180℃以上の高い耐熱性を有する樹脂等が挙げられる。これら材料は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。有機粒子の形状は特に限定されるものではなく、球状、繊維状、針状、鱗片状、板状およびランダム形状等のいずれも用いることができる。
【0057】
これらの中でも、針状、板状、鱗片状等の異方性を有する形状の粒子を用いることがより好ましい。熱吸収層3は、セパレータや電極の表面に塗布することで形成されるため、異方性を有する形状の粒子は、塗布方向であるセパレータの面や電極の面に平行な方向(平面方向と称する)に、粒子の最長部分(長軸と称する)が配向される傾向にある。例えば、針状形状の長軸や板状形状の平面が、平面方向に配向される。このため、平面方向では、粒子同士が接続されやすいが、垂直方向(平面方向に垂直な方向)では、粒子同士が接続されにくくなる。したがって、異方性を有する形状の粒子を用いた場合、負極から発生した熱は、平面方向の面内では均一に分散されやすくなるが、平面方向に垂直な方向では分散されにくくなり、正極へ伝わる熱の断熱性をより向上できる。
【0058】
異方性を有する形状の粒子としては、より断熱性を向上できる点から、例えば、粒子の最長部分(長軸と称する)の長さと、長軸に直交する方向における粒子の最短部分(短軸と称する)の長さとの比率(「長軸の長さ(上記粒子の最長部分の長さ)」/「短軸の長さ(上記粒子の最短部分の長さ)」)が、3倍以上である形状の粒子が好ましい。
【0059】
粒子は、セパレータの強度に与える影響、塗工面の平滑性の観点から、一次粒子の平均粒径が数μm以下とすることが好ましい。具体的には、一次粒子の平均粒径が1.0μm以下であることが好ましく、0.3μm以上0.8μm以下であることがより好ましい。また、平均粒径が0.3μm以上0.8μmの一次粒子に対して、平均粒径が1.0μm以上10μm以下の一次粒子または一次粒子が分散されていない粒子群、もしくは平均粒径が0.01μm以上0.10μm以下の一次粒子などを組み合わせてもよい。平均粒径が大きく異なる粒子を混合することにより、熱吸収層3の表面の凹凸形状の落差を大きくすることが容易となる。このような一次粒子の平均粒径は、電子顕微鏡により得た写真を、粒子径計測器で解析する方法により測定することができる。
【0060】
粒子の一次粒子の平均粒径が1.0μmを超えると、セパレータが脆くなり、塗工面も粗くなる場合がある。また、粒子を含む熱吸収層3を塗布にて基材2上に形成する場合、粒子の一次粒子が大きすぎる場合には、粒子を含む塗工液が塗布されない部分が生じる等、塗工面が粗くなるおそれがある。これに対して、平均粒径が0.3μm以上0.8μmの一次粒子に対して、平均粒径の大きい粒子を混合して用いる場合には、凹凸形状の落差を大きくすることができ、塗工面が粗くなるという問題点を逆手に取ることができる。
【0061】
粒子は、樹脂材料との混合比が質量比で粒子:樹脂材料=70:30〜98:2の範囲であることが好ましい。すなわち、熱吸収層3において、粒子の含有量が、熱吸収層3中の粒子および樹脂材料の総質量に対して70質量%以上98質量%以下であることが好ましい。上記範囲外に粒子の含有量が少ない場合には、所定の熱容量を得るために必要な熱吸収層3の厚みが大きくなり、体積効率の観点から好ましくない。また、上記範囲外に粒子の含有量が多い場合には、粒子を担持する樹脂材料量が少なくなり、熱吸収層3の形成が困難となる。
【0062】
また、非水電解質としてゲル状の電解質(ゲル電解質)を用いる場合には、ゲル電解質もある程度の強度を有するため、熱吸収層3を補強する役割を備える。このため、ゲル電解質を備える場合には、粒子の含有量が上記範囲に限ったものではなく、熱吸収層3の樹脂材料とゲル電解質の樹脂材料とが同種のものである場合には、ゲル電解質の樹脂材料を含めて、粒子が50質量%以上であればよく、60質量%以下95質量%以下であることが好ましい。
【0063】
熱吸収層3は、厚みが1.0μm以上であることが好ましい。厚みが1.0μm未満となった場合には、充分な引裂強度が得られず、熱吸収層3の形成効果が小さくなる。また、熱吸収層3は、厚みが厚いほど高い引裂強度を有するが、電池の体積効率が小さくなる。このため、必要に応じた厚みを適宜選択することが好ましい。
【0064】
また、熱吸収層3は、基材2のイオン透過機能、非水電解質保持機能等を阻害しない様に、その空孔率が基材2の空孔率以上であることが好ましい。また、本技術の熱吸収層3としては、その空孔率が95%以下であることが好ましい。具体的には、熱吸収層3の空孔率が45%以上95%以下であることが好ましく、59%以上93%以下であることがより好ましく、65%以上90%以下であることがさらに好ましい。熱吸収層3の空孔率が上記範囲外に小さい場合には、熱吸収層3のイオン透過性が低下するとともに、本技術の電極間における断熱効果が小さくなる。また、熱吸収層3の空孔率が上記範囲外に大きい場合には、熱吸収層3の強度が低下してしまう。
【0065】
(1−2)セパレータの製造方法
以下、熱吸収層3を設けたセパレータ1の製造方法について説明する。
【0066】
(1−2−1)セパレータの第1の製造方法(相分離による製造方法)
熱吸収層3を構成する樹脂材料と粒子とを所定の質量比で混合し、N−メチル−2−ピロリドン等の分散溶媒に添加し、樹脂材料を溶解させて樹脂溶液を得る。続いて、この樹脂溶液を、基材2の少なくとも一方の面に塗布もしくは転写する。なお、単位面積あたりの熱容量の総和が0.0001J/Kcm
2以上という本技術の条件を満たすように単位面積あたりの粒子量を調整して樹脂溶液を塗布もしくは転写する。樹脂溶液の塗布方法としては、バーコータ等により塗布する方法が挙げられる。また、樹脂溶液の転写方法としては、表面に凹凸形状を有するローラ等の表面に樹脂溶液を塗布して基材2の表面に樹脂溶液を転写する方法等が挙げられる。ここで、表面に凹凸形状を有する樹脂溶液転写用のローラ等の表面形状は、
図3に一例を示す種々の形状とすることができる。
【0067】
続いて、樹脂溶液が塗布された基材2を水浴に浸漬して樹脂溶液を相分離させ、熱吸収層3を形成する。基材2表面に塗布した樹脂溶液を、樹脂溶液に溶解した樹脂材料に対して貧溶媒であり、かつ樹脂材料を溶解させる分散溶媒に対しては良溶媒である水等に接触させ、最後に熱風にて乾燥させる。これにより、基材2表面に粒子を担持した三次元網目構造の樹脂材料からなる熱吸収層3が形成されたセパレータ1を得ることができる。
【0068】
このような方法を用いることにより、急激な貧溶媒誘起相分離現象により熱吸収層3が形成され、熱吸収層3は、樹脂材料による骨格が微細な三次元網目状に連結した構造を有する。すなわち、樹脂材料を溶解し、粒子を含む樹脂溶液を、樹脂材料に対して貧溶媒であり、かつ樹脂材料を溶解させる分散溶媒に対しては良溶媒である水等の溶媒に接触させることで、溶媒交換が起こる。これにより、スピノーダル分解を伴う急激な(速度の速い)相分離が生じ、樹脂材料が独特の三次元網目構造を有するようになる。
【0069】
このようにして作製した熱吸収層3は、貧溶媒による、スピノーダル分解を伴う急激な貧溶媒誘起相分離現象を利用することによって独特の多孔質構造を形成している。さらに、この構造によって、優れた非水電解液含浸性およびイオン導電性を実現可能としている。
【0070】
なお、本技術の熱吸収層3を形成するにあたり、熱吸収層3を疎な状態とし、体積あたりの熱容量を3.0J/Kcm
3以下とするために、第1の製造方法においては下記の種々の調整を行うことができる。
【0071】
(i)樹脂溶液中における固形分濃度の調整
樹脂溶液は、樹脂溶液中における固形分(粒子と樹脂材料と合計量)の濃度を、所望の濃度に調整する。樹脂溶液中における固形分の比率が少ないほど、完成後の熱吸収層3をより疎な状態とすることができる。
【0072】
(ii)熱吸収層の表面形状の調整(塗布の場合)
樹脂溶液の塗布方法として、バーコータ等により塗布する方法を用いる場合には、基材2上に略均一な樹脂溶液の層が形成される。ここで、必要に応じて、樹脂溶液の層の表面に凹凸形状を設けてもよい。樹脂溶液の層の表面に凹凸形状を設ける場合には、例えば、霧状の水(貧溶媒)を塗布された樹脂溶液の表面に接触させる。これにより、塗布された樹脂溶液のうち、霧状の水と接触した部分が凹状となり、その周辺部が凸状となることにより、樹脂溶液表面が斑紋状に変形するとともに、水と接触した一部分で水と分散溶媒の置換が生じて斑紋状の表面形状に固定される。この後、樹脂溶液を塗布した基材2を水浴に浸漬して塗布した樹脂溶液全体を相分離させることにより、表面に凹凸形状を有する熱吸収層3を形成することができる。
【0073】
(iii)熱吸収層の表面形状の調整(転写の場合)
表面に凹凸形状を有するローラ等の表面に樹脂溶液を塗布して基材2の表面に樹脂溶液を転写する方法を用いる場合には、凸部の面積割合が少ないほどより疎な状態とすることができる。凸部の面積割合は、ローラ等の表面の凹凸形状を変えることで調整することができる。また、凸部の高さ(凸部と凹部との高低差)が大きいほどより疎な状態とすることができる。凸部の高さは、ローラ等の表面の凹凸形状と、樹脂溶液の粘度によって調整することができる。樹脂溶液の粘度は、樹脂溶液中における固形分比率によって調整することができる。
【0074】
(iv)樹脂溶液の相分離時の条件の調整
樹脂溶液が塗布された基材2を水浴に浸漬して樹脂溶液を相分離させる際に、浴槽に超音波を加えることが好ましい。この際の超音波のエネルギーが大きいほど、完成後の熱吸収層3をより疎な状態とすることができる。なお、樹脂溶液を相分離させる際に、浴槽に超音波を加えることにより、粒子もしくは二次粒子化した粒子群が互いに独立して分散状態にすることができるためより好ましい。また、相分離の速度を調整することによっても、熱吸収層3の状態を制御することができる。相分離の速度は、例えば、相分離時に用いる、分散溶媒に対して良溶媒である水等の溶媒中に、N−メチル−2−ピロリドン等の分散溶媒を少量添加することで調整可能である。例えば、水に混合するN−メチル−2−ピロリドンの混合量が多いほど、相分離の速度が遅くなり、水のみを用いて相分離を行った場合にはもっとも急激に相分離が生じる。相分離の速度が遅いほど完成後の熱吸収層3をより疎な状態とすることができる。
【0075】
樹脂溶液に用いる分散溶媒としては、本技術の樹脂材料を溶解することができる溶媒であればいずれも使用可能である。分散溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドンの他、ジメチルアセトアミド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、トルエンまたはアセトニトリル等が用いられるが、溶解性および高分散性の観点からN−メチル−2−ピロリドンを用いることが好ましい。
【0076】
(1−2−2)セパレータの第2の製造方法(高温での乾燥による製造方法)
熱吸収層3を構成する樹脂材料と粒子とを所定の質量比で混合し、2−ブタノン(メチルエチルケトン;MEK)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の分散溶媒に添加し、溶解させて、樹脂溶液を得る。続いて、この樹脂溶液を、基材2の少なくとも一方の面に塗布する。なお、単位面積あたりの熱容量の総和が0.0001J/Kcm
2以上という本技術の条件を満たすように単位面積あたりの粒子量を調整して樹脂溶液を塗布する。
【0077】
続いて、樹脂溶液が塗布された基材2を、例えば乾燥炉を通過させる等の方法により乾燥させて分散溶媒を揮発させ、熱吸収層3を形成する。このとき、乾燥時の温度を分散溶媒に対して十分に高く設定し、分散溶媒が気化して樹脂溶液中に気泡が発生するようにすることが好ましい。第3の製造方法では、乾燥工程において樹脂溶液中に気泡を発生させることにより、樹脂溶液中に急激に気泡が発生し、形成された熱吸収層3が多孔質構造となって、粒子が樹脂材料に担持されて分散した構成となる。また、発生した気泡により、熱吸収層3の表面を紋斑状の凹凸形状を有する構成とすることができる。
【0078】
このような方法を用いて熱吸収層3を形成する場合には、粒子としてゼオライト等の多孔質アルミノケイ酸塩を使用することが好ましい。乾燥工程において、粒子の細孔から気体が発生し、より効果的に多孔質構造を形成することができるからである。
【0079】
分散溶媒の一例である2−ブタノンの沸点は80℃である。このため、分散溶媒として2−ブタノンを用いる場合には、乾燥温度を100℃程度とすることにより、2−ブタノンが気化して樹脂溶液中に気泡が発生する。乾燥温度が100℃程度であれば、基材2の表面に熱吸収層3を形成する際に基材2が損傷を受けないため好ましい。分散溶媒として2−ブタノンを用いた樹脂溶液を乾燥する際には、発生した気泡が集まって大きな泡を形成し、凸凹ができ、樹脂溶液が再び基材2の表面を薄く覆って熱吸収層3が形成される。また、樹脂溶液内に発生した小さな気泡は、樹脂材料の3次元網目構造を実現する。
【0080】
本技術の熱吸収層3を形成するにあたり、熱吸収層3を疎な状態とし、体積あたりの熱容量を3.0J/Kcm
3以下とするために、第2の製造方法においては下記の種々の調整を行うことができる。熱吸収層3の単位体積あたりの熱容量は、乾燥工程における乾燥温度と乾燥時間等の乾燥条件を変えることにより調整することができる。すなわち、乾燥工程において乾燥温度を高くすることにより、気泡をより多く発生させ、完成後の熱吸収層3をより疎な状態とすることができる。また、同様に、乾燥工程において乾燥時間を長くすることにより、気泡をより多く発生させ、完成後の熱吸収層3をより疎な状態とすることができる。しかしながら、乾燥温度が高過ぎる場合もしくは乾燥時間が長すぎる場合には、低空孔率層3aの空孔率が高くなりすぎて熱吸収層3の強度が不足するおそれがある。また、乾燥温度が低過ぎる場合もしくは乾燥時間が短すぎる場合には、気泡の発生が少なく、熱吸収層3の空孔率を基材2の空孔率以上とすることができない。
【0081】
分散溶媒の一例であるN−メチル−2−ピロリドンの沸点は200℃程度である。このため、分散溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを用いる場合には、乾燥温度を200℃超という高温にする必要がある。このため、分散溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを用いて熱吸収層3を形成する場合には、基材2が、分散溶媒の沸点よりも高い融点もしくは熱分解温度を有する樹脂材料から構成されることが必須となる。また、後述するように、本技術の熱吸収層3を正極および負極の少なくとも一方の表面に形成する場合には、正極および負極の耐熱性が高いため、分散溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを用いてもよい。
【0082】
(1−2−3)変形例
本技術の熱吸収層3は、基材2と正極および負極の少なくとも一方との境界に存在する層であればよく、必ずしもセパレータ1の一部の層(表面層)である必要はない。すなわち、本技術の他の例として、従来の構成(基材2のみからなる構成)を有するセパレータを用い、正極表面もしくは負極表面の少なくとも一方に熱吸収層を形成することも考えられる。正極表面もしくは負極表面の少なくとも一方に熱吸収層を形成する場合には、1枚のセパレータを介して対向する正極および負極の少なくとも一方に必ず熱吸収層3が形成されるようにする。このような構成の場合には、電極表面への熱吸収層の形成方法として、第2の製造方法を適用することができる。
【0083】
正極集電体および正極活物質層、ならびに負極集電体および負極集電体を構成する各材料は、上述の分散溶媒の沸点程度の温度に対して耐熱性を有する材料からなるため、第2の製造方法が好適である。
【0084】
また、ゲル状の非水電解質であるゲル電解質層を用いた電池においては、ゲル電解質層に所定量の粒子を含有させて熱吸収層を兼ねるようにしてもよい。ゲル電解質層は、非水電解液と、非水電解質を保持する高分子化合物とを含む。このため、非水電解液および高分子化合物とともに粒子を含む前駆体溶液を正極および負極、もしくはセパレータ表面に塗布してゲル電解質層を形成することにより、併せて正極と負極との間に熱吸収層を形成することができる。
【0085】
2.第2の実施の形態
第2の実施の形態では、第1の実施の形態にかかるセパレータを用いた円筒型非水電解質電池について説明する。
【0086】
(2−1)非水電解質電池の構成
[非水電解質電池の構造]
図4は、第2の実施の形態にかかる非水電解質電池10の一例を示す断面図である。非水電解質電池10は、例えば充電および放電が可能な非水電解質二次電池である。この非水電解質電池10は、いわゆる円筒型と呼ばれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、図示しない液体状の非水電解質(以下、非水電解液と適宜称する)とともに帯状の正極21と負極22とがセパレータ23を介して巻回された巻回電極体20を有している。巻回電極体20は、活物質層の膨張・収縮によって、セパレータの巻回方向に引張応力がかかりやすい。このため、本技術のセパレータは、巻回電極体20を有する非水電解質電池10に適用することが好ましい。
【0087】
電池缶11は、例えばニッケルめっきが施された鉄により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12a、12bがそれぞれ配置されている。
【0088】
電池缶11の材料としては、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ステンレス(SUS)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)等が挙げられる。この電池缶11には、非水電解質電池10の充放電に伴う電気化学的な非水電解液による腐食を防止するために、例えばニッケル等のメッキが施されていてもよい。電池缶11の開放端部には、正極リード板である電池蓋13と、この電池蓋13の内側に設けられた安全弁機構および熱感抵抗素子(PTC素子:Positive Temperature Coefficient)17が、絶縁封口のためのガスケット18を介してかしめられることにより取り付けられている。
【0089】
電池蓋13は、例えば電池缶11と同様の材料により構成されており、電池内部で発生したガスを排出するための開口部が設けられている。安全弁機構は、安全弁14とディスクホルダ15と遮断ディスク16とが順に重ねられている。安全弁14の突出部14aは遮断ディスク16の中心部に設けられた孔部16aを覆うように配置されたサブディスク19を介して巻回電極体20から導出された正極リード25と接続されている。サブディスク19を介して安全弁14と正極リード25とが接続されることにより、安全弁14の反転時に正極リード25が孔部16aから引き込まれることを防止する。また、安全弁機構は、熱感抵抗素子17を介して電池蓋13と電気的に接続されている。
【0090】
安全弁機構は、電池内部短絡あるいは電池外部からの加熱等により非水電解質電池10の内圧が一定以上となった場合に、安全弁14が反転し、突出部14aと電池蓋13と巻回電極体20との電気的接続を切断するものである。すなわち、安全弁14が反転した際には遮断ディスク16により正極リード25が押さえられて安全弁14と正極リード25との接続が解除される。ディスクホルダ15は絶縁性材料からなり、安全弁14が反転した場合には安全弁14と遮断ディスク16とが絶縁される。
【0091】
また、電池内部でさらにガスが発生し、電池内圧がさらに上昇した場合には、安全弁14の一部が裂壊してガスを電池蓋13側に排出可能としている。
【0092】
また、遮断ディスク16の孔部16aの周囲には例えば複数のガス抜き孔(図示せず)が設けられており、巻回電極体20からガスが発生した場合にはガスを効果的に電池蓋13側に排出可能な構成としている。
【0093】
熱感抵抗素子17は、温度が上昇した際に抵抗値が増大し、電池蓋13と巻回電極体20との電気的接続を切断することによって電流を遮断し、過大電流による異常な発熱を防止する。ガスケット18は、例えば絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0094】
非水電解質電池10内に収容される巻回電極体20は、センターピン24を中心に巻回されている。巻回電極体20は、正極21および負極22がセパレータ23を介して順に積層され、長手方向に巻回されてなる。正極21には正極リード25が接続されており、負極22には負極リード26が接続されている。正極リード25は、上述のように、安全弁14に溶接されて電池蓋13と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接されて電気的に接続されている。
【0095】
図5は、
図4に示した巻回電極体20の一部を拡大して表すものである。以下、正極21、負極22、セパレータ23について、詳細に説明する。
【0096】
[正極]
正極21は、正極活物質を含有する正極活物質層21Bが、正極集電体21Aの両面上に形成されたものである。正極集電体21Aとしては、例えばアルミニウム(Al)箔、ニッケル(Ni)箔あるいは、ステンレス(SUS)箔等の金属箔を用いることができる。
【0097】
正極活物質層21Bは、例えば正極活物質と、導電剤と、結着剤とを含有して構成されている。正極活物質としては、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を用いることができ、必要に応じて、結着剤や導電剤等の他の材料を含んでいてもよい。
【0098】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム含有化合物が好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。このリチウム含有化合物としては、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物や、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物等が挙げられる。中でも、遷移金属元素としてコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが好ましい。より高い電圧が得られるからである。
【0099】
正極材料は、例えば、Li
xM1O
2あるいはLi
yM2PO
4で表されるリチウム含有化合物を用いることができる。式中、M1およびM2は1種類以上の遷移金属元素を表す。xおよびyの値は電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10である。リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物としては、例えば、リチウムコバルト複合酸化物(Li
xCoO
2)、リチウムニッケル複合酸化物(Li
xNiO
2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(Li
xNi
1-zCo
zO
2(0<z<1))、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(Li
xNi
(1-v-w)Co
vMn
wO
2(0<v+w<1、v>0、w>0))、またはスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(LiMn
2O
4)あるいはリチウムマンガンニッケル複合酸化物(LiMn
2-tNi
tO
4(0<t<2))等が挙げられる。中でも、コバルトを含む複合酸化物が好ましい。高い容量が得られると共に、優れたサイクル特性も得られるからである。また、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物としては、例えば、リチウム鉄リン酸化合物(LiFePO
4)あるいはリチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe
1-uMn
uPO
4(0<u<1))等が挙げられる。
【0100】
このようなリチウム複合酸化物として、具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)等が挙げられる。また、遷移金属元素の一部を他の元素に置換した固溶体も使用可能である。例えば、ニッケルコバルト複合リチウム酸化物(LiNi
0.5Co
0.5O
2、LiNi
0.8Co
0.2O
2等)がその例として挙げられる。これらのリチウム複合酸化物は、高電圧を発生でき、エネルギー密度が優れたものである。
【0101】
更にまた、より高い電極充填性とサイクル特性が得られるという観点から、上記リチウム含有化合物のいずれかよりなる粒子の表面を、他のリチウム含有化合物のいずれかよりなる微粒子で被覆した複合粒子としてもよい。
【0102】
この他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、酸化バナジウム(V
2O
5)、二酸化チタン(TiO
2)、二酸化マンガン(MnO
2)等の酸化物、二硫化鉄(FeS
2)、二硫化チタン(TiS
2)、二硫化モリブデン(MoS
2)等の二硫化物、二セレン化ニオブ(NbSe
2)等のリチウムを含有しないカルコゲン化物(特に層状化合物やスピネル型化合物)、リチウムを含有するリチウム含有化合物、ならびに、硫黄、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレンあるいはポリピロール等の導電性高分子も挙げられる。もちろん、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記した一連の正極材料は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。
【0103】
導電剤としては、例えばカーボンブラックあるいはグラファイト等の炭素材料等が用いられる。結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)等の樹脂材料、ならびにこれら樹脂材料を主体とする共重合体等から選択される少なくとも1種が用いられる。
【0104】
正極21は正極集電体21Aの一端部にスポット溶接または超音波溶接で接続された正極リード25を有している。この正極リード25は金属箔、網目状のものが望ましいが、電気化学的および化学的に安定であり、導通がとれるものであれば金属でなくとも問題はない。正極リード25の材料としては、例えばアルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)等が挙げられる。
【0105】
[負極]
負極22は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、負極集電体22Aの片面のみに負極活物質層22Bを設けるようにしてもよい。負極集電体22Aは、例えば、銅箔等の金属箔により構成されている。
【0106】
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて正極活物質層21Bと同様の結着剤や導電剤等の他の材料を含んで構成されていてもよい。
【0107】
なお、この非水電解質電池10では、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の電気化学当量が、正極21の電気化学当量よりも大きくなっており、理論上、充電の途中において負極22にリチウム金属が析出しないようになっている。
【0108】
また、この非水電解質電池10は、完全充電状態における開回路電圧(すなわち電池電圧)が、例えば2.80V以上6.00V以下の範囲内になるように設計されている。特に、負極活物質としてLi/Li
+に対して0V近くでリチウム合金となる材料を用いた場合には、完全充電状態における開回路電圧が、例えば4.20V以上6.00V以下の範囲内になるように設計されている。この場合、満充電状態における開回路電圧が4.25V以上6.00V以下とされることが好ましい。満充電状態における開回路電圧が4.25V以上とされる場合は、4.20Vの電池と比較して、同じ正極活物質であっても単位質量当たりのリチウムの放出量が多くなるため、それに応じて正極活物質と負極活物質との量が調整される。これにより、高いエネルギー密度が得られるようになっている。
【0109】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維あるいは活性炭等の炭素材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークス等がある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂等の高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れたサイクル特性が得られるので好ましい。更にまた、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
【0110】
リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、かつ高容量化が可能な他の負極材料としては、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。この負極材料は金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本技術において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0111】
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、リチウムと合金を形成することが可能な金属元素または半金属元素が挙げられる。具体的には、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0112】
負極材料としては、例えば、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)等が挙げられる。また、負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、より好ましいのはケイ素(Si)およびスズ(Sn)の少なくとも一方を構成元素として含むものであり、特に好ましくは少なくともケイ素を含むものである。ケイ素(Si)およびスズ(Sn)は、リチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を有する負極材料としては、例えば、ケイ素の単体、合金または化合物や、スズの単体、合金または化合物や、それらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。
【0113】
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。スズの合金としては、例えば、スズ(Sn)以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0114】
スズ(Sn)の化合物あるいはケイ素(Si)の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズ(Sn)またはケイ素(Si)に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0115】
中でも、この負極材料としては、コバルト(Co)と、スズ(Sn)と、炭素(C)とを構成元素として含み、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズ(Sn)とコバルト(Co)との合計に対するコバルト(Co)の割合が30質量%以上70質量%以下であるSnCoC含有材料が好ましい。このような組成範囲において高いエネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるからである。
【0116】
このSnCoC含有材料は、必要に応じて更に他の構成元素を含んでいてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素(Si)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、リン(P)、ガリウム(Ga)またはビスマス(Bi)が好ましく、2種以上を含んでいてもよい。容量またはサイクル特性を更に向上させることができるからである。
【0117】
なお、このSnCoC含有材料は、スズ(Sn)と、コバルト(Co)と、炭素(C)とを含む相を有しており、この相は結晶性の低いまたは非晶質な構造を有していることが好ましい。また、このSnCoC含有材料では、構成元素である炭素(C)の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。サイクル特性の低下はスズ(Sn)等が凝集あるいは結晶化することによるものであると考えられるが、炭素(C)が他の元素と結合することにより、そのような凝集あるいは結晶化を抑制することができるからである。
【0118】
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(XPS)が挙げられる。XPSでは、炭素の1s軌道(C1s)のピークは、グラファイトであれば、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば炭素が金属元素または半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは、284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、SnCoC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、SnCoC含有材料に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合している。
【0119】
なお、XPS測定では、スペクトルのエネルギー軸の補正に、例えばC1sのピークを用いる。通常、表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。XPS測定では、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、SnCoC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
【0120】
[セパレータ]
セパレータ23は、第1の実施の形態にかかるセパレータ1と同様である。
【0121】
[非水電解液]
非水電解液は、電解質塩と、この電解質塩を溶解する非水溶媒とを含む。
【0122】
電解質塩は、例えば、リチウム塩等の軽金属化合物の1種あるいは2種以上を含有している。このリチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF
4)、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF
6)、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C
6H
5)
4)、メタンスルホン酸リチウム(LiCH
3SO
3)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF
3SO
3)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl
4)、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li
2SiF
6)、塩化リチウム(LiCl)あるいは臭化リチウム(LiBr)等が挙げられる。中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムからなる群のうちの少なくとも1種が好ましく、六フッ化リン酸リチウムがより好ましい。
【0123】
非水溶媒としては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトンあるいはε−カプロラクトン等のラクトン系溶媒、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸ジエチル等の炭酸エステル系溶媒、1,2−ジメトキシエタン、1−エトキシ−2−メトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフランあるいは2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、スルフォラン系溶媒、リン酸類、リン酸エステル溶媒、またはピロリドン類等の非水溶媒が挙げられる。溶媒は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0124】
また、非水溶媒として、環状炭酸エステルおよび鎖状炭酸エステルを混合して用いることが好ましく、環状炭酸エステルまたは鎖状炭酸エステルの水素の一部または全部がフッ素化された化合物を含むことがより好ましい。このフッ素化された化合物としては、フルオロエチレンカーボネート(4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:FEC)およびジフルオロエチレンカーボネート(4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:DFEC)を用いることが好ましい。負極活物質としてケイ素(Si)、スズ(Sn)、ゲルマニウム(Ge)等の化合物を含む負極22を用いた場合であっても、充放電サイクル特性を向上させることができるためである。なかでも、非水溶媒としてジフルオロエチレンカーボネートを用いることが好ましい。サイクル特性改善効果に優れるためである。
【0125】
また、非水電解液は、高分子化合物に保持されてゲル電解質とされていてもよい。非水電解液を保持する高分子化合物は、非水溶媒を吸収してゲル化するものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)あるいはビニリデンフルオライド(VdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とを繰り返し単位に含む共重合体等のフッ素系高分子化合物、ポリエチレンオキサイド(PEO)あるいはポリエチレンオキサイド(PEO)を含む架橋体等のエーテル系高分子化合物、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)あるいはポリメチルメタクリレート(PMMA)を繰返し単位として含むもの等が挙げられる。高分子化合物には、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0126】
特に、酸化還元安定性の点からは、フッ素系高分子化合物が望ましく、中でも、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとを成分として含む共重合体が好ましい。さらに、この共重合体は、マレイン酸モノメチルエステル(MMM)等の不飽和二塩基酸のモノエステル、三フッ化塩化エチレン(PCTFE)等のハロゲン化エチレン、炭酸ビニレン(VC)等の不飽和化合物の環状炭酸エステル、またはエポキシ基含有アクリルビニルモノマー等を成分として含んでいてもよい。より高い特性を得ることができるからである。
【0127】
(2−2)非水電解質電池の製造方法
[正極の製造方法]
正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーを作製する。次に、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機等により圧縮成型することにより正極活物質層21Bを形成し、正極21を作製する。
【0128】
[負極の製造方法]
負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーを作製する。次に、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機等により圧縮成型することにより負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製する。
【0129】
[非水電解液の調製]
非水電解液は、非水溶媒に対して電解質塩を溶解させて調製する。
【0130】
[非水電解質電池の組み立て]
正極集電体21Aに正極リード25を溶接等により取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接等により取り付ける。その後、正極21と負極22とを本技術のセパレータ23を介して巻回し巻回電極体20とする。正極リード25の先端部を安全弁機構に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接する。この後、巻回電極体20の巻回面を一対の絶縁板12,13で挟み、電池缶11の内部に収納する。巻回電極体20を電池缶11の内部に収納したのち、非水電解液を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋13、安全弁14等からなる安全弁機構および熱感抵抗素子17をガスケット18を介してかしめることにより固定する。これにより、
図4に示した本技術の非水電解質電池10が形成される。
【0131】
この非水電解質電池10では、充電を行うと、例えば、正極活物質層21Bからリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された非水電解液を介して負極活物質層22Bに吸蔵される。また、放電を行うと、例えば、負極活物質層22Bからリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された非水電解液を介して正極活物質層21Bに吸蔵される。
【0132】
<効果>
本技術のセパレータを用いた円筒型非水電解質電池では、負極での発熱、特に、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む負極活物質を用いた負極での発熱を、熱吸収層で吸収するとともに、熱吸収層で断熱することができる。このため、負極での発熱が正極に伝わりにくくなり、正極の熱分解反応を抑制することができる。また、高温での発熱によるセパレータの溶融時においても、熱吸収層により絶縁性を維持することができる。
【0133】
3.第3の実施の形態
第3の実施の形態では、第1の実施の形態にかかるセパレータを用いた角型非水電解質電池について説明する。
【0134】
(3−1)非水電解質電池の構成
図6は、第3の実施の形態にかかる非水電解質電池30の構成を表すものである。この非水電解質電池は、いわゆる角型電池といわれるものであり、巻回電極体40を角型の外装缶31内に収容したものである。
【0135】
非水電解質電池30は、角筒状の外装缶31と、この外装缶31内に収納される発電要素である巻回電極体40と、外装缶31の開口部を閉じる電池蓋32と、電池蓋32の略中央部に設けられた電極ピン33等によって構成されている。
【0136】
外装缶31は、例えば、鉄(Fe)等の導電性を有する金属によって、中空で有底の角筒体として形成されている。この外装缶31の内面は、例えば、ニッケルめっきを施したり導電性塗料を塗布する等して、外装缶31の導電性を高める構成とすることが好ましい。また、外装缶31の外周面は、例えば、プラスチックシートや紙等によって形成される外装ラベルで覆われたり、絶縁性塗料が塗布されて保護されてもよい。電池蓋32は、外装缶31と同じく、例えば、鉄(Fe)等の導電性を有する金属により形成されている。
【0137】
巻回電極体40は、正極および負極をセパレータを介して積層し、小判型に細長く巻回することによって得られる。正極、負極、セパレータおよび非水電解液は、第1の実施の形態または第2の実施の形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。また、正極および負極と、セパレータとの間には、非水電解液を高分子化合物に保持させたゲル状の非水電解質層(ゲル電解質層)が形成されていてもよい。
【0138】
このような構成を有する巻回電極体40には、正極集電体に接続された多数の正極端子41と、負極集電体に接続された多数の負極端子とが設けられている。すべての正極端子41および負極端子は、巻回電極体40の軸方向の一端に導出されている。そして、正極端子41は、電極ピン33の下端に溶接等の固着手段によって接続されている。また、負極端子は外装缶31の内面に溶接等の固着手段によって接続されている。
【0139】
電極ピン33は導電性の軸部材からなり、その頭部を上端に突出させた状態で絶縁体34によって保持されている。この絶縁体34を介して電極ピン33が電池蓋32の略中央部に固定されている。絶縁体34は絶縁性の高い材料で形成されていて、電池蓋32の表面側に設けた貫通孔35に嵌合されている。また、貫通孔35には電極ピン33が貫通され、その下端面に正極端子41の先端部が固定されている。
【0140】
このような電極ピン33等が設けられた電池蓋32が、外装缶31の開口部に嵌合されており、外装缶31と電池蓋32との接触面が溶接等の固着手段で接合されている。これにより、外装缶31の開口部が電池蓋32により密封されて、気密および液密に構成されている。この電池蓋32には、外装缶31内の圧力が所定値以上に上昇したときに当該電池蓋32の一部を破断させて内部圧力を外部に逃がす(放出させる)内圧開放機構36が設けられている。
【0141】
内圧開放機構36は、電池蓋32の内面において長手方向に直線的に延在された2本の第1の開口溝36a(1本の第1の開口溝36aは図示せず)と、同じく電池蓋32の内面において長手方向と直交する幅方向に延在されて両端が2本の第1の開口溝36aに連通される第2の開口溝36bとから構成されている。2本の第1の開口溝36aは、電池蓋32の幅方向に対向するように位置する長辺側2辺の内側近傍において電池蓋32の長辺側外縁に沿うように互いに平行に設けられている。また、第2の開口溝36bは、電極ピン33の長手方向の一側において一方の短辺側外縁と電極ピン33との略中央部に位置するように設けられている。
【0142】
第1の開口溝36aおよび第2の開口溝36bは、例えばともに断面形状が下面側に開口したV字形状とされている。なお、第1の開口溝36aおよび第2の開口溝36bの形状は、この実施の形態に示すV字形に限定されるものではない。例えば、第1の開口溝36aおよび第2の開口溝36bの形状をU字形や半円形としてもよい。
【0143】
電解液注入口37は、電池蓋32を貫通するように設けられている。電解液注入口37は、電池蓋32と外装缶31とをかしめた後、非水電解液を注液するために用いるものであり、非水電解液注液後は封止部材38によって密封される。このため、予め正極および負極と、セパレータとの間にゲル電解質を形成して巻回電極体を作製する場合には、電解液注入口37および封止部材38は設けなくてもよい。
【0144】
[セパレータ]
セパレータは、第1の実施の形態におけるセパレータ1と同様の構成とすることができる。
【0145】
[非水電解液]
非水電解液は、第2の実施の形態に記載されたものを用いることができる。また、第2の実施の形態で記載したような、非水電解液を高分子化合物に保持させたゲル電解質を用いてもよい。
【0146】
(3−2)非水電解質電池の製造方法
この非水電解質電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0147】
[正極および負極の製造方法]
正極および負極は、第2の実施の形態と同様の方法により作製することができる。
【0148】
[非水電解質電池の組み立て]
正極と負極と、本技術のセパレータとを順に積層および巻回し、小判型に細長く巻回された巻回電極体40を作製する。続いて、巻回電極体40を外装缶31内に収容する。
【0149】
そして、電池蓋32に設けられた電極ピン33と、巻回電極体40から導出された正極端子41とを接続する。また、図示しないが、巻回電極体40から導出された負極端子と電池缶とを接続する。この後、外装缶31と電池蓋32とを嵌合し、例えば減圧下において電解液注入口37から非水電解液を注入して封止部材38にて封止する。以上により、非水電解質電池30を得ることができる。
【0150】
<効果>
第3の実施の形態は、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0151】
4.第4の実施の形態
第4の実施の形態では、第1の実施の形態にかかるセパレータを用いたラミネートフィルム型非水電解質電池について説明する。
【0152】
(4−1)非水電解質電池の構成
図7は、第4の実施の形態にかかる非水電解質電池62の構成を表すものである。この非水電解質電池62は、いわゆるラミネートフィルム型といわれるものであり、正極リード51および負極リード52が取り付けられた巻回電極体50をフィルム状の外装部材60の内部に収容したものである。
【0153】
正極リード51および負極リード52は、それぞれ、外装部材60の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード51および負極リード52は、例えば、アルミニウム、銅、ニッケルあるいはステンレス等の金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
【0154】
外装部材60は、例えば、金属層の両面に樹脂層が形成されたラミネートフィルムからなる。ラミネートフィルムは、金属層のうち電池外側に露出する面に外側樹脂層が形成され、巻回電極体50等の発電要素に対向する電池内側面に内側樹脂層が形成される。
【0155】
金属層は、水分、酸素、光の進入を防ぎ内容物を守る最も重要な役割を担っており、軽さ、伸び性、価格、加工のしやすさからアルミニウム(Al)が最もよく使われる。外側樹脂層は、外観の美しさや強靱さ、柔軟性等を有し、ナイロンまたはポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料が用いられる。内側樹脂層は、熱や超音波で溶け、互いに融着する部分であるため、ポリオレフィン樹脂が適切であり、無延伸ポリプロピレン(CPP)が多用される。金属層と外側樹脂層および内側樹脂層との間には、必要に応じて接着剤層を設けてもよい。
【0156】
外装部材60は、例えば深絞りにより内側樹脂層側から外側樹脂層の方向に向けて形成された、巻回電極体50を収容する凹部が設けられており、内側樹脂層が巻回電極体50と対向するように配設されている。外装部材60の対向する内側樹脂層同士は、凹部の外縁部において融着等により互いに密着されている。外装部材60と正極リード51および負極リード52との間には、外装部材60の内側樹脂層と、金属材料からなる正極リード51および負極リード52との接着性を向上させるための密着フィルム61が配置されている。密着フィルム61は、金属材料との接着性の高い樹脂材料からなり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンや、これら材料が変性された変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂により構成されている。
【0157】
なお、外装部材60は、金属層がアルミニウム(Al)からなるアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム、ポリプロピレン等の高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
【0158】
図8は、
図7に示した巻回電極体50のI−I線に沿った断面構造を表すものである。巻回電極体50は、正極53と負極54とをセパレータ55およびゲル電解質56を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は必要に応じて保護テープ57により保護されている。
【0159】
[正極]
正極53は、正極集電体53Aの片面あるいは両面に正極活物質層53Bが設けられた構造を有している。正極集電体53A、正極活物質層53Bの構成は、上述した第2の実施の形態の正極集電体21Aおよび正極活物質層21Bと同様である。
【0160】
[負極]
負極54は、負極集電体54Aの片面あるいは両面に負極活物質層54Bが設けられた構造を有しており、負極活物質層54Bと正極活物質層53Bとが対向するように配置されている。負極集電体54A、負極活物質層54Bの構成は、上述した第2の実施の形態の負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bと同様である。
【0161】
[セパレータ]
セパレータ55は、第1の実施の形態にかかるセパレータ1と同様である。
【0162】
[非水電解質]
ゲル電解質56は非水電解質であり、非水電解液と非水電解液を保持する保持体となる高分子化合物とを含み、いわゆるゲル状となっている。ゲル状の電解質は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。なお、第4の実施の形態における非水電解質電池62においては、ゲル電解質56の代わりに第2の実施の形態と同様の非水電解液を用いてもよい。
【0163】
(4−2)非水電解質電池の製造方法
この非水電解質電池62は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0164】
[正極および負極の製造方法]
正極53および負極54は、第2の実施の形態と同様の方法により作製することができる。
【0165】
[非水電解質電池の組み立て]
正極53および負極54のそれぞれの両面に、非水電解液と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶剤を揮発させてゲル電解質56を形成する。そののち、正極集電体53Aの端部に正極リード51を溶接により取り付けると共に、負極集電体54Aの端部に負極リード52を溶接により取り付ける。
【0166】
次に、ゲル電解質56が形成された正極53と負極54とをセパレータ55を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ57を接着して巻回電極体50を形成する。最後に、例えば、外装部材60の間に巻回電極体50を挟み込み、外装部材60の外縁部同士を熱融着等により密着させて封入する。その際、正極リード51および負極リード52と外装部材60との間には密着フィルム61を挿入する。これにより、
図7および
図8に示した非水電解質電池62が完成する。
【0167】
また、この非水電解質電池62は、次のようにして作製してもよい。まず、上述したようにして正極53および負極54を作製し、正極53および負極54に正極リード51および負極リード52を取り付けたのち、正極53と負極54とをセパレータ55を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ57を接着して、巻回電極体50を形成する。次に、この巻回電極体50を外装部材60に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材60の内部に収納する。続いて、非水電解液とともに、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤等の他の材料とを含む電解質用組成物を用意し、外装部材60の内部に注入する。
【0168】
電解質用組成物を注入したのち、外装部材60の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封する。次に、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状のゲル電解質56を形成し、
図7および
図8に示した非水電解質電池62を組み立てる。
【0169】
さらに、非水電解質電池62においてゲル電解質56の代わりに非水電解液を用いる場合には、正極53と負極54とをセパレータ55を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ57を接着して、巻回電極体50を形成する。次に、この巻回電極体50を外装部材60に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材60の内部に収納する。続いて、非水電解液を外装部材60の内部に注入し、外装部材60の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封することにより、非水電解質電池62を組み立てる。
【0170】
(4−3)ラミネートフィルム型非水電解質電池の他の例
第4の実施の形態では、巻回電極体50が外装部材60で外装された非水電解質電池62について説明したが、
図9A〜
図9Cに示すように、巻回電極体50の代わりに積層電極体70を用いてもよい。
図9Aは、積層電極体70を収容した非水電解質電池62の外観図である。
図9Bは、外装部材60に積層電極体70が収容される様子を示す分解斜視図である。
図9Cは、
図9Aに示す非水電解質電池62の底面側からの外観を示す外観図である。
【0171】
積層電極体70は、矩形状の正極73および負極74をセパレータ75を介して積層し、固定部材76で固定した積層電極体70を用いる。積層電極体70からは、正極73と接続された正極リード71および負極74と接続された負極リード72とが導出されており、正極リード71および負極リード72と外装部材60との間には密着フィルム61が設けられる。
【0172】
なお、ゲル電解質56の形成方法または非水電解液の注液方法、および外装部材60の熱融着方法は、(4−2)で記載した巻回電極体50を用いる場合と同様である。
【0173】
<効果>
第4の実施の形態では、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0174】
5.第5の実施の形態
第5の実施の形態では、第1の実施の形態にかかるセパレータを用いたラミネートフィルム型非水電解質電池の電池パックの例について説明する。
【0175】
以下、第5の実施の形態のラミネートフィルム型非水電解質電池の電池パックについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、巻回電極体を硬質ラミネートフィルムおよび軟質ラミネートフィルムで外装したものを電池セルと称し、電池セルに回路基板を接続し、トップカバーおよびリアカバーを嵌合したものを電池パックと称する。電池パックおよび電池セルにおいて、正極端子および負極端子の導出側をトップ部、トップ部と対向する側をボトム部、トップ部とボトム部とを除く二辺をサイド部と称する。また、サイド部−サイド部方向の長さを幅方向、トップ部−ボトム部方向の長さを高さと称する。
【0176】
(5−1)電池パックの構成
図10は、第5の実施の形態にかかる電池パック90の一構成例を示す斜視図である。
図11は、電池セル80の構造を示す分解斜視図である。
図12は、第5の実施の形態にかかる電池セル80の製造途中の状態を示す上面図および側面図である。
図13は、電池セル80における断面構造を示す断面図である。
【0177】
電池パック90は、例えば、角形または扁平型を有する非水電解質電池の電池パックであって、
図10に示すように、両端が開放されて開口が形成されており、外装材内に巻回電極体50が収納されてなる電池セル80と、電池セル80の両端の開口にそれぞれ嵌合されたトップカバー82aおよびボトムカバー82bとを備える。なお、電池パック90に収容される巻回電極体50は、第4の実施の形態と同様の巻回電極体50を用いることができる。電池セル80からは、巻回電極体50と接続された正極リード51と負極リード52とが、密着フィルム61を介して外装材の融着部から外部に導出され、正極リード51と負極リード52とが回路基板81と接続されている。
【0178】
図11および
図12に示すように、外装材は、全体としては板状を有し、面方向から見ると矩形状を有する硬質ラミネートフィルム83と、硬質ラミネートフィルム83よりもサイド部方向の長さが短い矩形状を有する軟質ラミネートフィルム85からなる。電池セル80の両端の開口は、全体としては矩形状を有し、その両短辺が外側に向かって楕円の円弧をなすように膨らんでいる。
【0179】
電池セル80は、凹部86が設けられた軟質ラミネートフィルム85と、凹部86に収納された巻回電極体50と、巻回電極体50を収納した凹部86の開口を覆うように設けられた硬質ラミネートフィルム83とからなる。硬質ラミネートフィルム83は、巻回電極体50が収納された凹部86を包み込んだ状態において、両サイドの短辺同士が当接するか、わずかな隙間を隔てて対向するように設定されている。また、硬質ラミネートフィルム83のトップ側長辺には、
図11および
図12に示すように、切り欠き部84が設けられていてもよい。切り欠き部84は、電池セル80の正面から見て両短辺に位置するように設けられる。切り欠き部84を設けることにより、トップカバー82aの嵌合を容易にすることができる。
【0180】
また、硬質ラミネートフィルム83と軟質ラミネートフィルム85とが封止された封止部からは、巻回電極体50の正極53および負極54とそれぞれ電気的に接続された正極リード51および負極リード52が導出されている。
【0181】
トップカバー82aおよびボトムカバー82bは、電池セル80の両端の開口に嵌合可能な形状を有し、具体的には、正面から見ると、全体としては矩形状を有し、その両短辺が外側に向かって楕円の円弧をなすように膨らんでいる。なお、正面とは、トップ側から電池セル80を見る方向を示している。
【0182】
[外装材]
図11および
図12に示すように、この外装材は、巻回電極体50を収納するための凹部86が設けられた軟質ラミネートフィルム85と、この軟質ラミネートフィルム85上に凹部86を覆うようにして重ねられる硬質ラミネートフィルム83とからなる。
【0183】
[軟質ラミネートフィルム]
軟質ラミネートフィルム85は、第4の実施の形態における外装部材60と同様の構成を有している。特に、軟質ラミネートフィルム85は、金属層として軟質の金属材料、例えば焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS A8021P−O)または(JIS A8079P−O)等が用いられる点に特徴を有している。
【0184】
[硬質ラミネートフィルム]
軟質ラミネートフィルム85は、曲げた後の形状を維持し、外部からの変形に耐える機能を有する。このため、金属層として硬質の金属材料、例えばアルミニウム(Al)、ステンレス(SUS)、鉄(Fe)、銅(Cu)あるいはニッケル(Ni)等の金属材料が用いられ、特に焼きなまし処理なしの硬質アルミニウム(JIS A3003P−H18)または(JIS A3004P−H18)、もしくはオーステナイト系ステンレス(SUS304)等が用いられる点に特徴を有している。
【0185】
[巻回電極体]
巻回電極体50は、第4の実施の形態と同様の構成とすることができる。また、第4の実施の形態の他の例で説明した積層電極体70を用いてもよい。
【0186】
[非水電解液、ゲル電解質]
電池セル80に注液される非水電解液もしくは正極53および負極54の表面に形成されるゲル電解質は、第2の実施の形態と同様の構成とすることができる。
【0187】
[セパレータ]
セパレータ55は、本技術のセパレータ1を用いることができる。また、第1の実施の形態における基材2をセパレータとし、熱吸収層3を正極53および負極54の表面に設ける構成としてもよい。
【0188】
[回路基板]
回路基板81は、巻回電極体50の正極リード51および負極リード52が電気的に接続されるものである。回路基板81には、ヒューズ、熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)、サーミスタ等の温度保護素子を含む保護回路の他、電池パックを識別するためのID抵抗等がマウントされ、更に複数個(例えば3個)の接点部が形成されている。保護回路には、充放電制御FET(Field Effect Transistor;電界効果トランジスタ)、電池セル80の監視と充放電制御FETの制御を行うIC(Integrated Circuit)等が設けられている。
【0189】
熱感抵抗素子は巻回電極体と直列に接続され、電池の温度が設定温度に比して高くなると、電気抵抗が急激に高くなって電池に流れる電流を実質的に遮断する。ヒューズも巻回電極体と直列に接続され、電池に過電流が流れると、自身の電流により溶断して電流を遮断する。また、ヒューズはその近傍にヒータ抵抗が設けられており、過電圧時にはヒータ抵抗の温度が上昇することにより溶断して電流を遮断する。
【0190】
また、電池セル80の端子電圧が満充電電圧よりも高い充電禁止電圧以上となると、電池セル80が発熱・発火等危険な状態になる可能性がある。このため、保護回路は電池セル80の電圧を監視し、電池セル80が充電禁止電圧に達した場合には、充電制御FETをオフして充電を禁止する。さらに電池セル80の端子電圧が放電禁止電圧以下まで過放電し、電池セル80電圧が0Vになると電池セル80が内部ショート状態となり再充電不可能となる可能性がある。このため、電池セル80電圧を監視して放電禁止電圧に達した場合には、放電制御FETをオフして放電を禁止する。
【0191】
[トップカバー]
トップカバー82aは、電池セル80のトップ側開口に嵌合されるものであり、トップカバー82aの外周の一部または全部に沿って、トップ側開口に嵌合するための側壁が設けられている。電池セル80とトップカバー82aとは、トップカバー82aの側壁と、硬質ラミネートフィルム83の端部内面とが熱融着されて接着される。
【0192】
トップカバー82aには、回路基板81が収納される。トップカバー82aには、回路基板81の複数の接点部が外部に露出するように、接点部に対応する位置に複数の開口が設けられている。回路基板81の接点部は、トップカバー82aの開口を通じて電子機器と接触する。これにより、電池パック90と電子機器とが電気的に接続される。このようなトップカバー82aは、射出成型により予め作製される。
【0193】
[ボトムカバー]
ボトムカバー82bは、電池セル80のボトム側開口に嵌合されるものであり、ボトムカバー82bの外周の一部または全部に沿って、ボトム側開口に嵌合するための側壁が設けられている。電池セル80とボトムカバー82bとは、ボトムカバー82bの側壁と、硬質ラミネートフィルム83の端部内面とが熱融着されて接着される。
【0194】
このようなボトムカバー82bは、射出成型により予め作製される。また、電池セル80を金型に設置し、ボトム部にホットメルト樹脂を流し込むことにより、電池セル80と一体に成型する方法を用いることも可能である。
【0196】
[電池セルの作製]
軟質ラミネートフィルム85の凹部86に巻回電極体50を収容し、凹部86を覆うように硬質ラミネートフィルム83が配置される。このとき、硬質ラミネートフィルム83の内側樹脂層と、軟質ラミネートフィルム85の内側樹脂層とが対向するように硬質ラミネートフィルム83と軟質ラミネートフィルム85とを配設する。この後、硬質ラミネートフィルム83および軟質ラミネートフィルム85を、凹部86の周縁に沿って封止する。封止は、図示しない金属製のヒータヘッドを用い、硬質ラミネートフィルム83の内側樹脂層と、軟質ラミネートフィルム85の内側樹脂層とを減圧しながら熱融着することにより行う。
【0197】
硬質ラミネートフィルム83の内側樹脂層と、軟質ラミネートフィルム85の内側樹脂層とを減圧しながら熱融着する際、熱融着していない一辺から非水電解液を注液する。もしくは、正極および負極の両面に予めゲル電解質を形成し、巻回電極体50を形成してもよい。
【0198】
次に、
図13に示すように、硬質ラミネートフィルム83の短辺同士が当接するように硬質ラミネートフィルム83を変形する。このとき、硬質ラミネートフィルム83と軟質ラミネートフィルム85との間に、硬質ラミネートフィルム83の内側樹脂層および軟質ラミネートフィルム85の外側樹脂層の双方との接着性が高い樹脂材料からなる接着フィルム87を挿入する。続いて、硬質ラミネートフィルム83の短辺の合わせ目が位置する一面に対してヒータヘッドで加熱することにより、硬質ラミネートフィルム83の内側樹脂層と軟質ラミネートフィルム85の外側樹脂層とが熱融着されて電池セル80が得られる。なお、接着フィルム87を用いる代わりに、硬質ラミネートフィルム83の内側樹脂層の表面に、軟質ラミネートフィルム85の外側樹脂層との接着性が高い樹脂からなる接着層を設けて熱融着してもよい。
【0199】
[電池パックの作製]
続いて、電池セル80から導出された正極リード51と負極リード52とを回路基板81に接続した後、回路基板81を、トップカバー82aに収納し、トップカバー82aを電池セル80のトップ側開口に嵌合する。また、ボトムカバー82bを、電池セル80のボトム側開口に嵌合する。
【0200】
最後に、トップカバー82aおよびボトムカバー82bの嵌合部をそれぞれヒータヘッドにより加熱し、トップカバー82aおよびボトムカバー82bと、硬質ラミネートフィルム83の内側樹脂層とを熱融着する。これにより、電池パック90が作製される。
【0201】
<効果>
第5の実施の形態では、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0202】
6.第6の実施の形態
第6の実施の形態では、第1の実施の形態にかかるセパレータを用いた非水電解質電池が備えられた電池パックについて説明する。
【0203】
図14は、本技術の非水電解質電池を電池パックに適用した場合の回路構成例を示すブロック図である。電池パックは、組電池301、外装、充電制御スイッチ302aと、放電制御スイッチ303aとを備えるスイッチ部304、電流検出抵抗307、温度検出素子308、制御部310を備えている。
【0204】
また、電池パックは、正極端子321および負極端子322を備え、充電時には正極端子321および負極端子322がそれぞれ充電器の正極端子、負極端子に接続され、充電が行われる。また、電子機器使用時には、正極端子321および負極端子322がそれぞれ電子機器の正極端子、負極端子に接続され、放電が行われる。
【0205】
組電池301は、複数の非水電解質電池301aを直列および/または並列に接続してなる。この非水電解質電池301aは本技術の非水電解質電池である。なお、
図14では、6つの非水電解質電池301aが、2並列3直列(2P3S)に接続された場合が例として示されているが、その他、n並列m直列(n,mは整数)のように、どのような接続方法でもよい。
【0206】
スイッチ部304は、充電制御スイッチ302aおよびダイオード302b、ならびに放電制御スイッチ303aおよびダイオード303bを備え、制御部310によって制御される。ダイオード302bは、正極端子321から組電池301の方向に流れる充電電流に対して逆方向で、負極端子322から組電池301の方向に流れる放電電流に対して順方向の極性を有する。ダイオード303bは、充電電流に対して順方向で、放電電流に対して逆方向の極性を有する。なお、例では+側にスイッチ部を設けているが、−側に設けてもよい。
【0207】
充電制御スイッチ302aは、電池電圧が過充電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池301の電流経路に充電電流が流れないように充放電制御部によって制御される。充電制御スイッチのOFF後は、ダイオード302bを介することによって放電のみが可能となる。また、充電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池301の電流経路に流れる充電電流を遮断するように、制御部310によって制御される。
【0208】
放電制御スイッチ303aは、電池電圧が過放電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池301の電流経路に放電電流が流れないように制御部310によって制御される。放電制御スイッチ303aのOFF後は、ダイオード303bを介することによって充電のみが可能となる。また、放電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池301の電流経路に流れる放電電流を遮断するように、制御部310によって制御される。
【0209】
温度検出素子308は例えばサーミスタであり、組電池301の近傍に設けられ、組電池301の温度を測定して測定温度を制御部310に供給する。電圧検出部311は、組電池301およびそれを構成する各非水電解質電池301aの電圧を測定し、この測定電圧をA/D変換して、制御部310に供給する。電流測定部313は、電流検出抵抗307を用いて電流を測定し、この測定電流を制御部310に供給する。
【0210】
スイッチ制御部314は、電圧検出部311および電流測定部313から入力された電圧および電流を基に、スイッチ部304の充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aを制御する。スイッチ制御部314は、非水電解質電池301aのいずれかの電圧が過充電検出電圧もしくは過放電検出電圧以下になったとき、また、大電流が急激に流れたときに、スイッチ部304に制御信号を送ることにより、過充電および過放電、過電流充放電を防止する。
【0211】
ここで、例えば、非水電解質電池がリチウムイオン二次電池であり、負極活物質としてLi/Li
+に対して0V近くでリチウム合金となる材料を用いた場合には、過充電検出電圧が例えば4.20V±0.05Vと定められ、過放電検出電圧が例えば2.4V±0.1Vと定められる。
【0212】
充放電スイッチは、例えばMOSFET等の半導体スイッチを使用できる。この場合MOSFETの寄生ダイオードがダイオード302bおよび303bとして機能する。充放電スイッチとして、Pチャンネル型FETを使用した場合は、スイッチ制御部314は、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aのそれぞれのゲートに対して、制御信号DOおよびCOをそれぞれ供給する。充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aはPチャンネル型である場合、ソース電位より所定値以上低いゲート電位によってONする。すなわち、通常の充電および放電動作では、制御信号COおよびDOをローレベルとし、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aをON状態とする。
【0213】
そして、例えば過充電もしくは過放電の際には、制御信号COおよびDOをハイレベルとし、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aをOFF状態とする。
【0214】
メモリ317は、RAMやROMからなり例えば不揮発性メモリであるEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)等からなる。メモリ317では、制御部310で演算された数値や、製造工程の段階で測定された各非水電解質電池301aの初期状態における電池の内部抵抗値等が予め記憶され、また適宜、書き換えも可能である。(また、非水電解質電池301aの満充電容量を記憶させておくことで、制御部310とともに例えば残容量を算出することができる。
【0215】
温度検出部318では、温度検出素子308を用いて温度を測定し、異常発熱時に充放電制御を行ったり、残容量の算出における補正を行う。
【0216】
7.第7の実施の形態
第7の実施の形態では、第2〜第4の実施の形態にかかる非水電解質電池および第5および第6の実施の形態にかかる電池パックを搭載した電子機器、電動車両および蓄電装置等の機器について説明する。第2〜第5の実施の形態で説明した非水電解質電池および電池パックは、電子機器や電動車両、蓄電装置等の機器に電力を供給するために使用することができる。
【0217】
電子機器として、例えばノート型パソコン、PDA(携帯情報端末)、携帯電話、コードレスフォン子機、ビデオムービー、デジタルスチルカメラ、電子書籍、電子辞書、音楽プレイヤー、ラジオ、ヘッドホン、ゲーム機、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、電動工具、電気シェーバー、冷蔵庫、 エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、電子レンジ、食器洗い器、洗濯機、乾燥器、照明機器、玩具、医療機器、ロボット、ロードコンディショナー、信号機等が挙げられる。
【0218】
また、電動車両としては鉄道車両、ゴルフカート、電動カート、電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)等が挙げられ、これらの駆動用電源または補助用電源として用いられる。
【0219】
蓄電装置としては、住宅をはじめとする建築物用または発電設備用の電力貯蔵用電源等が挙げられる。
【0220】
以下では、上述した適用例のうち、本技術の非水電解質電池を適用した蓄電装置を用いた蓄電システムの具体例を説明する。
【0221】
この蓄電システムは、例えば下記の様な構成が挙げられる。第1の蓄電システムは、再生可能エネルギーから発電を行う発電装置によって蓄電装置が充電される蓄電システムである。第2の蓄電システムは、蓄電装置を有し、蓄電装置に接続される電子機器に電力を供給する蓄電システムである。第3の蓄電システムは、蓄電装置から、電力の供給を受ける電子機器である。これらの蓄電システムは、外部の電力供給網と協働して電力の効率的な供給を図るシステムとして実施される。
【0222】
さらに、第4の蓄電システムは、蓄電装置から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、蓄電装置に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう制御装置とを有する電動車両である。第5の蓄電システムは、他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部とを備え、送受信部が受信した情報に基づき、上述した蓄電装置の充放電制御を行う電力システムである。第6の蓄電システムは、上述した蓄電装置から、電力の供給を受け、または発電装置または電力網から蓄電装置に電力を供給する電力システムである。以下、蓄電システムについて説明する。
【0223】
(7−1)応用例としての住宅における蓄電システム
本技術の非水電解質電池を用いた蓄電装置を住宅用の蓄電システムに適用した例について、
図15を参照して説明する。例えば住宅101用の蓄電システム100においては、火力発電102a、原子力発電102b、水力発電102c等の集中型電力系統102から電力網109、情報網112、スマートメータ107、パワーハブ108等を介し、電力が蓄電装置103に供給される。これと共に、家庭内発電装置104等の独立電源から電力が蓄電装置103に供給される。蓄電装置103に供給された電力が蓄電される。蓄電装置103を使用して、住宅101で使用する電力が給電される。住宅101に限らずビルに関しても同様の蓄電システムを使用できる。
【0224】
住宅101には、家庭内発電装置104、電力消費装置105、蓄電装置103、各装置を制御する制御装置110、スマートメータ107、各種情報を取得するセンサ111が設けられている。各装置は、電力網109および情報網112によって接続されている。家庭内発電装置104として、太陽電池、燃料電池等が利用され、発電した電力が電力消費装置105および/または蓄電装置103に供給される。電力消費装置105は、冷蔵庫105a、空調装置105b、テレビジョン受信機105c、風呂105d等である。さらに、電力消費装置105には、電動車両106が含まれる。電動車両106は、電気自動車106a、ハイブリッドカー106b、電気バイク106cである。
【0225】
蓄電装置103に対して、本技術の非水電解質電池が適用される。本技術の非水電解質電池は、例えば上述したリチウムイオン二次電池によって構成されていてもよい。スマートメータ107は、商用電力の使用量を測定し、測定された使用量を、電力会社に送信する機能を備えている。電力網109は、直流給電、交流給電、非接触給電の何れか一つまたは複数を組み合わせてもよい。
【0226】
各種のセンサ111は、例えば人感センサ、照度センサ、物体検知センサ、消費電力センサ、振動センサ、接触センサ、温度センサ、赤外線センサ等である。各種のセンサ111により取得された情報は、制御装置110に送信される。センサ111からの情報によって、気象の状態、人の状態等が把握されて電力消費装置105を自動的に制御してエネルギー消費を最小とすることができる。さらに、制御装置110は、住宅101に関する情報をインターネットを介して外部の電力会社等に送信することができる。
【0227】
パワーハブ108によって、電力線の分岐、直流交流変換等の処理がなされる。制御装置110と接続される情報網112の通信方式としては、UART(Universal Asynchronous Receiver-Transceiver:非同期シリアル通信用送受信回路)等の通信インターフェースを使う方法、Bluetooth、ZigBee、Wi−Fi等の無線通信規格によるセンサーネットワークを利用する方法がある。Bluetooth方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBeeは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network)またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。
【0228】
制御装置110は、外部のサーバ113と接続されている。このサーバ113は、住宅101、電力会社、サービスプロバイダーの何れかによって管理されていてもよい。サーバ113が送受信する情報は、たとえば、消費電力情報、生活パターン情報、電力料金、天気情報、天災情報、電力取引に関する情報である。これらの情報は、家庭内の電力消費装置(たとえばテレビジョン受信機)から送受信してもよいが、家庭外の装置(たとえば、携帯電話機等)から送受信してもよい。これらの情報は、表示機能を持つ機器、たとえば、テレビジョン受信機、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)等に、表示されてもよい。
【0229】
各部を制御する制御装置110は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等で構成され、この例では、蓄電装置103に格納されている。制御装置110は、蓄電装置103、家庭内発電装置104、電力消費装置105、各種のセンサ111、サーバ113と情報網112により接続され、例えば、商用電力の使用量と、発電量とを調整する機能を有している。なお、その他にも、電力市場で電力取引を行う機能等を備えていてもよい。
【0230】
以上のように、電力が火力発電102a、原子力発電102b、水力発電102c等の集中型電力系統102のみならず、家庭内発電装置104(太陽光発電、風力発電)の発電電力を蓄電装置103に蓄えることができる。したがって、家庭内発電装置104の発電電力が変動しても、外部に送出する電力量を一定にしたり、または、必要なだけ放電するといった制御を行うことができる。例えば、太陽光発電で得られた電力を蓄電装置103に蓄えると共に、夜間は料金が安い深夜電力を蓄電装置103に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電装置103によって蓄電した電力を放電して利用するといった使い方もできる。
【0231】
なお、この例では、制御装置110が蓄電装置103内に格納される例を説明したが、スマートメータ107内に格納されてもよいし、単独で構成されていてもよい。さらに、蓄電システム100は、集合住宅における複数の家庭を対象として用いられてもよいし、複数の戸建て住宅を対象として用いられてもよい。
【0232】
(7−2)応用例としての車両における蓄電システム
本技術を車両用の蓄電システムに適用した例について、
図16を参照して説明する。
図16に、本技術が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0233】
このハイブリッド車両200には、エンジン201、発電機202、電力駆動力変換装置203、駆動輪204a、駆動輪204b、車輪205a、車輪205b、バッテリー208、車両制御装置209、各種センサ210、充電口211が搭載されている。バッテリー208に対して、上述した本技術の非水電解質電池が適用される。
【0234】
ハイブリッド車両200は、電力駆動力変換装置203を動力源として走行する。電力駆動力変換装置203の一例は、モータである。バッテリー208の電力によって電力駆動力変換装置203が作動し、この電力駆動力変換装置203の回転力が駆動輪204a、204bに伝達される。なお、必要な個所に直流−交流(DC−AC)あるいは逆変換(AC−DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置203が交流モータでも直流モータでも適用可能である。各種センサ210は、車両制御装置209を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサ210には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサ等が含まれる。
【0235】
エンジン201の回転力は発電機202に伝えられ、その回転力によって発電機202により生成された電力をバッテリー208に蓄積することが可能である。
【0236】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両200が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置203に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置203により生成された回生電力がバッテリー208に蓄積される。
【0237】
バッテリー208は、ハイブリッド車両200の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口211を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
【0238】
図示しないが、非水電解質電池に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行う情報処理装置を備えていてもよい。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う情報処理装置等がある。
【0239】
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、モータで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモータの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モータのみで走行、エンジンとモータ走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本技術は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モータのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本技術は有効に適用可能である。
【実施例】
【0240】
以下、実施例により本技術を詳細に説明する。なお、本技術は、下記の実施例の構成に限定されるものではない。
【0241】
<実施例1−1>〜<実施例1−50>及び<比較例1−1>〜<比較例1−16>
下記の実施例1−1〜実施例1−50及び比較例1−1〜比較例1−16では、熱吸収層の単位面積あたり熱容量と、単位体積あたり熱容量とを調整したセパレータを用いて、本技術の効果を確認した。
【0242】
<実施例1−1>
[正極の作製]
正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO
2)91質量%と、導電材であるカーボンブラック6質量%と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)3質量%とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤を分散媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて正極合剤スラリーとした。この正極合剤スラリーを厚さ12μmの帯状アルミニウム箔からなる正極集電体の両面に、正極集電体の一部が露出するようにして塗布した。この後、塗布した正極合剤スラリーの分散媒を蒸発・乾燥させ、ロールプレスにて圧縮成型することにより、正極活物質層を形成した。最後に、正極端子を正極集電体露出部に取り付け、正極を形成した。
【0243】
[負極の作製]
負極活物質である平均粒径20μmの粒状黒鉛粉末96質量%と、結着剤としてスチレン−ブタジエン共重合体のアクリル酸変性体1.5質量%と、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース1.5質量%とを混合して負極合剤とし、さらに適量の水を加えて攪拌することにより、負極合剤スラリーを調製した。この負極合剤スラリーを厚さ15μmの帯状銅箔からなる負極集電体の両面に、負極集電体の一部が露出するようにして塗布した。この後、塗布した負極合剤スラリーの分散媒を蒸発・乾燥させ、ロールプレスにて圧縮成型することにより、負極活物質層を形成した。最後に、負極端子を負極集電体露出部に取り付け、負極を形成した。
【0244】
[セパレータの作製]
基材として厚さ9μm、空孔率35%のポリエチレン(PE)製微多孔性フィルムを用いた。この基材の両面に、下記の様にして熱吸収層を形成した。まず、吸熱粒子である平均粒径0.8μmのベーマイト(比熱:1.2J/gK)と、樹脂材料であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを質量比で9:1となるように混合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて樹脂溶液を作製した。続いて、この樹脂溶液を、基材の両面に同じ厚みかつ均一に塗布した後、樹脂溶液が塗布された基材を超音波により水を振動させた水浴に浸漬して相分離させ、樹脂溶液中のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を除去した。
【0245】
その後、樹脂溶液が塗布された基材を乾燥機中にくぐらせることにより、水と残留NMPを除去し、基材と、樹脂材料およびベーマイトからなる熱吸収層とが積層されたセパレータを作製した。
【0246】
この際、単位面積あたりのベーマイト量を、樹脂溶液の塗布厚みによって調節した。具体的には、単位面積あたりのベーマイト量が基材の表裏合わせて0.0005g/cm
2となるように厚み調整をおこない、熱吸収層の単位面積あたりの熱容量の総和が0.0006J/Kcm
2(0.0005[g/cm
2]×1.2[J/gK])となるようにした。
【0247】
また、単位体積あたりのベーマイトの充填量は、熱吸収層の相分離時に加える超音波のエネルギーと、樹脂溶液の固形分比率によって調整した。具体的には、単位体積あたりのベーマイトが基材の表裏合わせて0.33g/cm
3となるように、基材両面の熱吸収層の総厚を15μm(0.0005[g/cm
2]÷0.33[g/cm
3])に調整し、熱吸収層の単位体積あたりの熱容量の総和が0.4J/Kcm
3(0.33[g/cm
3]×1.2[J/gK])となるようにした。これにより、単位面積あたりの熱容量が0.0006J/Kcm
2、単位体積あたりの熱容量が0.4J/Kcm
3の熱吸収層を備えるセパレータを得た。
【0248】
超音波での振動を加えた後の熱吸収層は、樹脂溶液塗布時の厚みよりも厚みが大きくなる。超音波のエネルギーを調整することにより、完成後の熱吸収層の厚みを調整し、単位面積あたりの熱容量を一定としたまま、単位体積あたりの熱容量を調整することができる。
【0249】
[非水電解液の調整]
炭酸エチレン(EC)と炭酸ビニレン(VC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、質量比30:10:60で混合した非水溶媒に対して、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を1mol/dm
3の濃度で溶解させることにより、非水電解液を調製した。
【0250】
[円筒型電池の組み立て]
正極および負極と、熱吸着層が両面に形成されたセパレータとを、正極、セパレータ、負極、セパレータの順に積層し、長手方向に多数回巻回させた後、巻き終わり部分を粘着テープで固定することにより巻回電極体を形成した。次に、正極端子を電池蓋と接合された安全弁に接合すると共に、負極リードを負極缶に接続した。巻回電極体を一対の絶縁板で挟んで電池缶の内部に収納した後、巻回電極体の中心にセンターピンを挿入した。
【0251】
続いて、円筒型の電池缶の内部に絶縁板の上から非水電解液を注液した。最後に、電池缶の開放部に、安全弁、ディスクホルダ、遮断ディスクからなる安全弁機構、PTC素子ならびに電池蓋を、絶縁封口ガスケットを介してかしめることにより密閉した。これにより、電池形状が直径18mm、高さ65mm(ICR18650サイズ)、電池容量が3500mAhである、
図4に示す円筒型電池を作製した。
【0252】
<実施例1−2>〜<実施例1−7>
セパレータの熱吸収層形成時において、超音波の強さを調整することにより、熱吸収層の厚みを調整して、熱吸収層の単位体積あたりの熱容量が表1に示す値となるようにした。これにより、単位面積あたりの熱容量が0.0006J/Kcm
2であり、単位体積あたりの熱容量がそれぞれ0.2J/Kcm
3、0.3J/Kcm
3、1.0J/Kcm
3、1.5J/Kcm
3、2.5J/Kcm
3および3.0J/Kcm
3である熱吸収層を備える実施例1−2〜実施例1−7のセパレータをそれぞれ作製した。このセパレータをそれぞれ用いて、実施例1−2〜実施例1−7の円筒型電池を作製した。
【0253】
<実施例1−8>〜<実施例1−12>
基材に対する樹脂溶液塗布時において、樹脂溶液の塗布厚みによって熱吸収層の単位面積あたりの熱容量を調節した。具体的には、熱吸収層の単位面積あたりの熱容量がそれぞれ0.0001J/Kcm
2、0.0002J/Kcm
2、0.0010J/Kcm
2、0.0013J/Kcm
2、0.0015J/Kcm
2となるようにした。続いて、セパレータの熱吸収層形成時において、超音波のエネルギーを調整することにより、熱吸収層の厚みをそれぞれ調整して、熱吸収層の単位体積あたりの熱容量が0.4J/Kcm
3となるようにし、実施例1−8〜実施例1−12のセパレータをそれぞれ作製した。このセパレータをそれぞれ用いて、実施例1−8〜実施例1−12の円筒型電池を作製した。
【0254】
<実施例1−13>〜<実施例1−24>
負極活物質層形成時に、負極活物質として黒鉛の代わりにシリコン粉末を用いた。負極活物質であるシリコン(Si)粒子85質量%と、導電材であるカーボンブラック10質量%と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤を分散媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて負極合剤スラリーとした。この負極合剤スラリーを用いた以外は実施例1−1〜実施例1−12と同様にして実施例1−13〜実施例1−24の円筒型電池をそれぞれ作製した。
【0255】
<実施例1−25>〜<実施例1−36>
負極活物質層形成時に、負極活物質として黒鉛の代わりに炭素スズ複合材料を用いた。炭素スズ複合材料としては、スズ(Sn)とコバルト(Co)と炭素(C)とを構成元素として含み、組成がスズの含有量が22質量%、コバルトの含有量が55質量%、炭素の含有量が23質量%、スズおよびコバルトの合計に対するスズの割合(Co/(Sn+Co))が71.4質量%であるSnCoC含有材料を用いた。
【0256】
負極活物質としてSnCoC含有材料粉末80質量%と、導電剤として黒鉛12質量%と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)8質量%とを混合して負極合剤とした。続いて、N−メチル−2−ピロリドンに負極合剤を分散させて、ペースト状の負極合剤スラリーを調製した。この負極合剤スラリーを用いた以外は実施例1−1〜実施例1−12と同様にして実施例1−25〜実施例1−36の円筒型電池をそれぞれ作製した。
【0257】
<実施例1−37>〜<実施例1−48>
負極活物質層形成時に、負極活物質として黒鉛の代わりにチタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)を用いた。負極活物質としてチタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)85質量%と、導電剤として黒鉛10質量%と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%とを混合して負極合剤とした。続いて、N−メチル−2−ピロリドンに負極合剤を分散させて、ペースト状の負極合剤スラリーを調製した。この負極合剤スラリーを用いた以外は実施例1−1〜実施例1−12と同様にして実施例1−37〜実施例1−48の円筒型電池をそれぞれ作製した。
【0258】
<実施例1−49>
基材として、厚さ9μm、紙である空孔率60%のセルロース透気性膜を用いた。実施例1−1と同様の樹脂溶液を、基材の両面に同じ厚みかつ均一に塗布した。この際、基材であるセルロース透気性膜の空隙にも、塗料を含浸させた。その後、樹脂溶液が塗布された基材を超音波により水を振動させた水浴に浸漬して相分離させ、その後、樹脂溶液中のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を除去した。その後、樹脂溶液が塗布された基材を乾燥機中にくぐらせることにより、水と残留NMPを除去し、樹脂材料およびベーマイトからなる熱吸収層を形成した。セパレータの熱吸収層形成時には、基材であるセルロース透気性膜内の空孔率が35%となるように超音波の強さを調整した。また、熱吸収層の厚みが実施例1−1と同じになるよう塗料の塗布量を調整した。
【0259】
これにより、単位面積あたりの熱容量が0.00142J/Kcm
2、単位体積あたりの熱容量が1.0J/Kcm
3である熱吸収層を備える実施例1−49のセパレータを作製した。このセパレータは、基材の一方の面側および他方の面側に、一部が基材内の空隙に含まれた熱吸収層を備えたものである。このセパレータを用いて、実施例1−49の円筒型電池を作製した。
【0260】
<実施例1−50>
基材として、厚さ9μm、不織布である空孔率80%のポリエチレンテレフタレート(PET)透気性膜を用いた。実施例1−1と同様の樹脂溶液を、基材の両面に同じ厚みかつ均一に塗布した。この際、基材であるポリエチレンテレフタレート透気性膜の空隙にも、塗料を含浸させた。その後、樹脂溶液が塗布された基材を超音波により水を振動させた水浴に浸漬して相分離させ、その後、樹脂溶液中のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を除去した。その後、樹脂溶液が塗布された基材を乾燥機中にくぐらせることにより、水と残留NMPを除去し、樹脂材料およびベーマイトからなる熱吸収層を形成した。セパレータの熱吸収層形成時には、基材であるポリエチレンテレフタレート透気性膜内の空孔率が35%となるように超音波の強さを調整した。また、熱吸収層の厚みが実施例1−1と同じになるよう塗料の塗布量を調整した。
【0261】
これにより、単位面積あたりの熱容量が0.00208J/Kcm
2、単位体積あたりの熱容量が1.6J/Kcm
3である熱吸収層を備える実施例1−50のセパレータを作製した。このセパレータは、基材の一方の面側および他方の面側に、一部が基材内の空隙に含まれた熱吸収層を備えたものである。このセパレータを用いて、実施例1−50の円筒型電池を作製した。
【0262】
<比較例1−1>
厚さ23μmのポリエチレン製微多孔性フィルムをセパレータとして用いた以外は実施例1−1と同様にして比較例1−1の円筒型電池を作製した。
【0263】
<比較例1−2>
セパレータの熱吸収層の単位面積あたりの熱容量が0.00005J/Kcm
2となるように樹脂溶液の塗布量を調整したセパレータを用いた以外は実施例1−1と同様にして比較例1−2の円筒型電池を作製した。
【0264】
<比較例1−3>
相分離時に浴槽に超音波を加えずに熱吸収層を形成したセパレータを用いた以外は実施例1−1と同様にして比較例1−3の円筒型電池を作製した。比較例1−3では、熱吸収層形成時に超音波を加えなかったため、単位体積あたりの熱容量が小さくならず、単位体積あたりの熱容量が3.5J/Kcm
3となった。
【0265】
<比較例1−4>
セパレータの熱吸収層の単位面積あたりの熱容量が0.00005J/Kcm
2となるように樹脂溶液の塗布量を調整するとともに、相分離時に浴槽に超音波を加えずに熱吸収層を形成したセパレータを用いた以外は実施例1−1と同様にして比較例1−4の円筒型電池を作製した。比較例1−4では、熱吸収層形成時に超音波を加えなかったため、単位体積あたりの熱容量が小さくならず、単位体積あたりの熱容量が3.5J/Kcm
3となった。
【0266】
<比較例1−5>
負極活物質としてシリコンを用い、負極合剤スラリーを実施例1−13と同様の構成とした以外は、比較例1−1と同様にして比較例1−1の円筒型電池を作製した。
【0267】
<比較例1−6>〜<比較例1−8>
負極活物質としてシリコンを用い、負極合剤スラリーを実施例1−13と同様の構成とした以外は、比較例1−2〜比較例1−4と同様にして比較例1−6〜比較例1−8の円筒型電池をそれぞれ作製した。
【0268】
<比較例1−9>
負極活物質として炭素スズ複合材料を用い、負極合剤スラリーを実施例1−25と同様の構成とした以外は、比較例1−1と同様にして比較例1−1の円筒型電池を作製した。
【0269】
<比較例1−10>〜<比較例1−12>
負極活物質として炭素スズ複合材料を用い、負極合剤スラリーを実施例1−25と同様の構成とした以外は、比較例1−2〜比較例1−4と同様にして比較例1−10〜比較例1−12の円筒型電池をそれぞれ作製した。
【0270】
<比較例1−13>
負極活物質としてチタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)を用い、負極合剤スラリーを実施例1−37と同様の構成とした以外は、比較例1−1と同様にして比較例1−1の円筒型電池を作製した。
【0271】
<比較例1−14>〜<比較例1−16>
負極活物質としてチタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)を用い、負極合剤スラリーを実施例1−37と同様の構成とした以外は、比較例1−2〜比較例1−4と同様にして比較例1−14〜比較例1−16の円筒型電池をそれぞれ作製した。
【0272】
[電池の評価:短絡試験]
作製した各実施例および各比較例の円筒型電池について、電池外部にて正極および負極を電気的に短絡させ、円筒型電池の発熱温度の測定およびガス噴出の有無の確認を行った。短絡時において、円筒型電池の発熱温度が100℃以下である場合は安全状態であると判断した。この場合、セパレータのシャットダウンや、円筒型電池がもつ安全弁機構の作用、電池内部での断線等により、電池は100℃以下の発熱を伴うものの、その後は電池が使用できない状態となって電池の温度が低下し、それ以上の危険性は生じない。なお、電池の最高温度が80℃以下であれば、安全弁機構が作用するものの、セパレータのシャットダウンや電池内部での断線が生じないため、電池温度が低下した際には安全弁機構が通常時の状態に回復し、電池が引き続き使用可能であるためより好ましい。
【0273】
また、電池からガスが噴出した場合には、危険状態であると判断した。セパレータのシャットダウン、安全弁機構の作用および電池内部での断線等が生じても、正極が著しい過熱状態になった場合には正極が熱分解反応をおこし、電池内部からガスが噴出してしまう。
【0274】
以下の表1に、評価結果を示す。
【0275】
【表1】
【0276】
表1から分かるように、セパレータの熱吸収層の単位面積あたりの熱容量が0.0001J/Kcm
2以上であり、かつ単位体積あたりの熱容量が3.0J/Kcm
3以下である実施例1−1〜実施例1−50では、短絡試験において電池が安全状態であることが確認された。
【0277】
一方、セパレータの熱吸収層の単位面積あたりの熱容量が0.0001J/Kcm
2未満の比較例1−2、単位体積あたりの熱容量が3.0J/Kcm
3を超える比較例1−3および単位面積あたりの熱容量および単位体積あたりの熱容量が上記範囲を外れる比較例1−4では、短絡試験において電池が危険状態となることが分かった。
【0278】
<実施例2−1>〜<実施例2−175>および<比較例2−1>
実施例2−1〜実施例2−175および比較例2−1では、セパレータの熱吸収層を構成する吸熱粒子と樹脂材料とを代えて本技術の効果を確認した。
【0279】
<実施例2−1>
実施例1−1と同様にして、厚さ9μmのポリエチレン製微多孔性フィルム上に、吸熱粒子としてベーマイト(比熱1.2J/gK)を、樹脂材料としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用い、単位面積あたりの熱容量の総和が0.0006J/Kcm
2、単位体積あたりの熱容量の総和が0.4J/Kcm
3となるように作製した片面厚さ7.5μm(両面厚さ15μm)の熱吸収層を有するセパレータを用い、負極活物質として黒鉛を用いた円筒型電池を作製した。
【0280】
<実施例2−2>
セパレータの熱吸収層に用いる樹脂材料として、ポリフッ化ビニリデンの代わりにポリイミドを用いた以外は実施例2−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0281】
<実施例2−3>
セパレータの熱吸収層に用いる樹脂材料として、ポリフッ化ビニリデンの代わりに全芳香族ポリアミド(アラミド)を用いた以外は実施例2−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0282】
<実施例2−4>
セパレータの熱吸収層に用いる樹脂材料として、ポリフッ化ビニリデンの代わりにポリアクリロニトリルを用いた以外は実施例2−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0283】
<実施例2−5>
セパレータの熱吸収層に用いる樹脂材料として、ポリフッ化ビニリデンの代わりにポリビニルアルコールを用いた以外は実施例2−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0284】
<実施例2−6>
セパレータの熱吸収層に用いる樹脂材料として、ポリフッ化ビニリデンの代わりにポリエーテルを用いた以外は実施例2−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0285】
<実施例2−7>
セパレータの熱吸収層に用いる樹脂材料として、ポリフッ化ビニリデンの代わりにアクリル酸樹脂を用いた以外は実施例2−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0286】
<実施例2−8>〜<実施例2−14>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、アルミナの代わりに窒化アルミニウム(比熱0.7J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。なお、窒化アルミニウムとベーマイトとは比熱が異なり、窒化アルミニウムの比熱はベーマイトの比熱よりも小さい。このため、単位面積あたりの熱容量の総和を0.0006J/Kcm
2とするために、単位面積あたりの窒化アルミニウム量を実施例2−1〜実施例2−7の単位面積あたりのベーマイト量よりも多くすることにより調整した。
【0287】
具体的には、単位面積あたりの窒化アルミニウム量を0.00086g/cm
2とすることにより、熱吸収層の単位面積あたりの熱容量の総和が0.0006J/Kcm
2(0.00086[g/cm
2]×0.7[J/gK])となるようにした。以下、同様にして吸熱粒子の塗布量を調整して熱吸収層の単位面積あたりの熱容量を一定とした。
【0288】
<実施例2−15>〜<実施例2−21>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりに窒化ホウ素(比熱:0.8J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0289】
<実施例2−22>〜<実施例2−28>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりに炭化ケイ素(比熱:0.7J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0290】
<実施例2−29>〜<実施例2−35>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりにタルク(比熱:1.1J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0291】
<実施例2−36>〜<実施例2−42>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりにLi
2O
4(比熱:0.8J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0292】
<実施例2−43>〜<実施例2−49>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりにLi
3PO
4(比熱:0.8J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0293】
<実施例2−50>〜<実施例2−56>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりにLiF(比熱:0.9J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0294】
<実施例2−57>〜<実施例2−63>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりにダイヤモンド(比熱:0.5J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0295】
<実施例2−64>〜<実施例2−70>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりに酸化ジルコニウム(比熱:0.7J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0296】
<実施例2−71>〜<実施例2−77>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりに酸化イットリウム(比熱:0.5J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0297】
<実施例2−78>〜<実施例2−84>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりにチタン酸バリウム(比熱:0.8J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0298】
<実施例2−85>〜<実施例2−91>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりにチタン酸ストロンチウム(比熱:0.8J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0299】
<実施例2−92>〜<実施例2−98>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりに酸化ケイ素(比熱:0.8J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0300】
<実施例2−99>〜<実施例2−105>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりにゼオライト(比熱:1.0J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0301】
<実施例2−106>〜<実施例2−112>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりに硫酸バリウム(比熱:0.9J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0302】
<実施例2−113>〜<実施例2−119>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりに酸化チタン(比熱:0.8J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0303】
<実施例2−120>〜<実施例2−126>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりに酸化マグネシウム(比熱:1.0J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0304】
<実施例2−127>〜<実施例2−133>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりに黒鉛(比熱:0.8J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0305】
<実施例2−134>〜<実施例2−140>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりにカーボンナノチューブ(比熱:0.8J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0306】
<実施例2−141>〜<実施例2−147>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりに水酸化アルミニウム(比熱:1.5J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0307】
<実施例2−148>〜<実施例2−154>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりに炭化ホウ素(比熱:1.0J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0308】
<実施例2−155>〜<実施例2−161>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりに窒化ケイ素(比熱:0.7J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0309】
<実施例2−162>〜<実施例2−168>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりに窒化チタン(比熱:0.6J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0310】
<実施例2−169>〜<実施例2−175>
セパレータの熱吸収層に用いる吸熱粒子として、ベーマイトの代わりに酸化亜鉛(比熱:0.5J/gK)を用いた以外は、実施例2−1〜実施例2−7とそれぞれ同様にして円筒型電池を作製した。
【0311】
<比較例2−1>
厚さ23μmのポリエチレン製微多孔性フィルムをセパレータとして用いた以外は実施例2−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0312】
[電池の評価:短絡試験]
作製した各実施例および各比較例の円筒型電池について、実施例1−1と同様にして短絡試験を行った。
【0313】
以下の表2に、評価結果を示す。
【0314】
【表2】
【0315】
表2から分かるように、単位面積あたりの熱容量の総和が0.0006J/Kcm
2、単位体積あたりの熱容量の総和が0.4J/Kcm
3となるように作製した熱吸収層を有するセパレータを用いた各実施例の円筒型電池では、短絡試験における発熱温度が80℃以下と低く、安全性が高かった。一方、上述の様な熱吸収層を有しないセパレータでは、短絡試験において円筒型電池が危険状態となった。
【0316】
<実施例3−1>〜<実施例3−175>および<比較例3−1>
負極活物質として黒鉛の代わりに実施例1−13と同様のシリコンを用いた以外は実施例2−1〜実施例2−175および比較例2−1と同様にして、実施例3−1〜実施例3−175および比較例3−1の円筒型電池をそれぞれ作製した。なお、負極活物質層を形成する負極合剤スラリーは、実施例1−13と同様の組成とした。
【0317】
[電池の評価:短絡試験]
作製した各実施例および各比較例の円筒型電池について、実施例1−1と同様にして短絡試験を行った。
【0318】
以下の表3に、評価結果を示す。
【0319】
【表3】
【0320】
表3から分かるように、単位面積あたりの熱容量の総和が0.0006J/Kcm
2、単位体積あたりの熱容量の総和が0.4J/Kcm
3となるように作製した熱吸収層を有するセパレータを用いた各実施例の円筒型電池では、負極活物質としてシリコンを用いた場合であっても、短絡試験における発熱温度が80℃未満と低く、安全性が高かった。一方、上述の様な熱吸収層を有しないセパレータでは、短絡試験において円筒型電池が危険状態となった。
【0321】
<実施例4−1>〜<実施例4−175>および<比較例4−1>
負極活物質として黒鉛の代わりに実施例1−25と同様の炭素スズ複合材料を用いた以外は実施例2−1〜実施例2−175および比較例2−1と同様にして、実施例4−1〜実施例4−175および比較例4−1の円筒型電池をそれぞれ作製した。なお、負極活物質層を形成する負極合剤スラリーは、実施例1−25と同様の組成とした。
【0322】
[電池の評価:短絡試験]
作製した各実施例および各比較例の円筒型電池について、実施例1−1と同様にして短絡試験を行った。
【0323】
以下の表4に、評価結果を示す。
【0324】
【表4】
【0325】
表4から分かるように、単位面積あたりの熱容量の総和が0.0006J/Kcm
2、単位体積あたりの熱容量の総和が0.4J/Kcm
3となるように作製した熱吸収層を有するセパレータを用いた各実施例の円筒型電池では、負極活物質として炭素スズ複合材料を用いた場合であっても、短絡試験における発熱温度が80℃未満と低く、安全性が高かった。一方、上述の様な熱吸収層を有しないセパレータでは、短絡試験において円筒型電池が危険状態となった。
【0326】
<実施例5−1>〜<実施例5−175>および<比較例5−1>
負極活物質として黒鉛の代わりに実施例1−37と同様のチタン酸リチウムを用いた以外は実施例2−1〜実施例2−175および比較例2−1と同様にして、実施例5−1〜実施例5−175および比較例5−1の円筒型電池をそれぞれ作製した。なお、負極活物質層を形成する負極合剤スラリーは、実施例1−37と同様の組成とした。
【0327】
[電池の評価:短絡試験]
作製した各実施例および各比較例の円筒型電池について、実施例1−1と同様にして短絡試験を行った。
【0328】
以下の表5に、評価結果を示す。
【0329】
【表5】
【0330】
表5から分かるように、単位面積あたりの熱容量の総和が0.0006J/Kcm
2、単位体積あたりの熱容量の総和が0.4J/Kcm
3となるように作製した熱吸収層を有するセパレータを用いた各実施例の円筒型電池では、負極活物質としてチタン酸リチウムを用いた場合であっても、短絡試験における発熱温度が80℃未満と低く、安全性が高かった。一方、上述の様な熱吸収層を有しないセパレータでは、短絡試験において円筒型電池が危険状態となった。
【0331】
<実施例6−1>〜<実施例6−60>
実施例6−1〜実施例6−60では、電池構成、負極活物質、セパレータの熱吸収層の位置を変えて電池を作製し、本技術の効果を確認した。
【0332】
<実施例6−1>
実施例1−1と同様の円筒型電池を作製し、実施例6−1の円筒型電池とした。すなわち、電池構成は電池外装が円筒型外装缶、負極活物質は黒鉛とした。また、セパレータは、厚さ9μmのポリエチレン製微多孔性フィルムの両面に、吸熱粒子であるベーマイトと、樹脂材料であるポリフッ化ビニリデンとからなる片面厚さ7.5μm(両面厚さ15μm)の熱吸収層を設けた構成とした。
【0333】
<実施例6−2>
厚さ9μmのポリエチレン製微多孔性フィルムの正極側面(電池作製時において正極と対向する面)のみに、片面厚さ15μmの熱吸収層を設けたセパレータを用いた以外は実施例6−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0334】
<実施例6−3>
厚さ9μmのポリエチレン製微多孔性フィルムの負極側面(電池作製時において負極と対向する面)のみに、片面厚さ15μmの熱吸収層を設けたセパレータを用いた以外は実施例6−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0335】
<実施例6−4>〜<実施例6−6>
負極活物質としてシリコンを用い、負極合剤スラリーを実施例1−13と同様の構成とした以外は、実施例6−1〜実施例6−3と同様にして実施例6−4〜実施例6−6の円筒型電池をそれぞれ作製した。
【0336】
<実施例6−7>〜<実施例6−9>
負極活物質として炭素スズ複合材料を用い、負極合剤スラリーを実施例1−25と同様の構成とした以外は、実施例6−1〜実施例6−3と同様にして実施例6−7〜実施例6−9の円筒型電池をそれぞれ作製した。
【0337】
<実施例6−10>〜<実施例6−12>
負極活物質としてチタン酸リチウムを用い、負極合剤スラリーを実施例1−37と同様の構成とした以外は、実施例6−1〜実施例6−3と同様にして実施例6−10〜実施例6−12の円筒型電池をそれぞれ作製した。
【0338】
<実施例6−13>
正極、負極、セパレータおよび非水電解液のそれぞれの構成が実施例6−1と同様である角型電池を作製した。すなわち、電池構成は電池外装が角型外装缶、負極活物質は黒鉛とした。また、セパレータは、厚さ9μmのポリエチレン製微多孔性フィルムの両面に、吸熱粒子であるベーマイトと、樹脂材料であるポリフッ化ビニリデンとからなる片面厚さ7.5μm(両面厚さ15μm)の熱吸収層を設けた構成とした。以下、角型電池の組み立て方法を説明する。
【0339】
[角型電池の組み立て]
正極および負極と、熱吸着層が両面に形成されたセパレータとを、正極、セパレータ、負極、セパレータの順に積層し、長手方向に多数回、扁平形状に巻回させた後、巻き終わり部分を粘着テープで固定することにより巻回電極体を形成した。次に、
図6に示すように、巻回電極体を角型の電池缶に収容した。続いて、電池蓋に設けられた電極ピンと、巻回電極体から導出された正極端子とを接続した後、電池缶を電池蓋にて封口し、電解液注入口から非水電解液を注入して封止部材にて封止し、密閉した。これにより、電池形状が厚さ5.2mm、幅34mm、高さ36mm(523436サイズ)、電池容量が1000mAhである、
図6に示す角型電池を作製した。
【0340】
<実施例6−14>〜<実施例6−24>
電池構成を実施例6−13と同様の角型電池とした以外は、実施例6−2〜実施例6−12と同様にして実施例6−14〜実施例6−24の角型電池をそれぞれ作製した。
【0341】
<実施例6−25>
正極、負極、セパレータおよび非水電解液のそれぞれの構成が実施例6−1と同様であり、積層電極体とを軟質ラミネートフィルムで外装したラミネートフィルム型電池を作製した。すなわち、電池構成は電池外装がラミネートフィルム、電極体は積層型、負極活物質は黒鉛とした。また、セパレータは、厚さ9μmのポリエチレン製微多孔性フィルムの両面に、吸熱粒子であるベーマイトと、樹脂材料であるポリフッ化ビニリデンとからなる片面厚さ7.5μm(両面厚さ15μm)の熱吸収層を設けた構成とした。以下、ラミネートフィルム型電池の組み立て方法を説明する。
【0342】
[ラミネートフィルム型電池の組み立て]
矩形状の正極および負極と、熱吸着層が両面に形成されたセパレータとを、正極、セパレータ、負極、セパレータの順に積層して積層電極体を形成した。次に、積層電極体を軟質アルミニウム層を有するラミネートフィルムで外装し、積層電極体周辺の正極端子および負極端子の導出辺と、他の二辺とを熱融着してラミネートフィルムを袋状とした。続いて、熱融着されていない開口部から非水電解液を注入した後、減圧下で熱融着されていない一辺を熱融着して封止し、密閉した。これにより、電池形状が厚さ5.2mm、幅34mm、高さ36mm(523436サイズ)、電池容量が1000mAhである、
図9に示すラミネートフィルム型電池を作製した。
【0343】
<実施例6−26>〜<実施例6−36>
電池構成を実施例6−25と同様のラミネートフィルム型電池とした以外は、実施例6−2〜実施例6−12と同様にして実施例6−26〜実施例6−36のラミネートフィルム型電池をそれぞれ作製した。
【0344】
<実施例6−37>
正極、負極、セパレータおよび非水電解液のそれぞれの構成が実施例6−1と同様であり、ゲル状の非水電解質と巻回電極体とを軟質ラミネートフィルムで外装したラミネートフィルム型電池を作製した。すなわち、電池構成は電池外装がラミネートフィルム、電極体は積層型、負極活物質は黒鉛とした。また、セパレータは、厚さ9μmのポリエチレン製微多孔性フィルムの両面に、吸熱粒子であるベーマイトと、樹脂材料であるポリフッ化ビニリデンとからなる片面厚さ7.5μm(両面厚さ15μm)の熱吸収層を設けた構成とした。以下、ラミネートフィルム型電池の組み立て方法を説明する。
【0345】
[ゲル電解質層の形成]
炭酸エチレン(EC)と炭酸プロピレン(PC)と炭酸ビニレン(VC)とを、質量比49:49:2で混合した非水溶媒に対して、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を1mol/dm
3の濃度で溶解させることにより、非水電解液を調製した。続いて、非水電解液を保持する高分子化合物として、セパレータの熱吸収層を構成する樹脂材料と同様にポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用い、非水電解液と、ポリフッ化ビニリデンと、可塑剤である炭酸ジメチル(DMC)とを混合してゾル状の前駆体溶液を調製した。続いて、正極および負極の両面に、前駆体溶液を塗布し、乾燥させて可塑剤を除去した。これにより、正極および負極の表面にゲル電解質層を形成した。
【0346】
[ラミネートフィルム型電池の組み立て]
ゲル電解質層が両面に形成された正極および負極と、熱吸着層が両面に形成されたセパレータとを、正極、セパレータ、負極、セパレータの順に積層し、長手方向に多数回、扁平形状に巻回させた後、巻き終わり部分を粘着テープで固定することにより巻回電極体を形成した。
【0347】
次に、巻回電極体を軟質アルミニウム層を有するラミネートフィルムで外装し、巻回電極体周辺の正極端子および負極端子の導出辺と、他の二辺とを減圧下で熱融着して封止し、密閉した。これにより、電池形状が厚さ5.2mm、幅34mm、高さ36mm(523436サイズ)、電池容量が1000mAhである、
図7に示すラミネートフィルム型電池を作製した。
【0348】
<実施例6−38>〜<実施例6−48>
電池構成を実施例6−25と同様のラミネートフィルム型電池とした以外は、実施例6−2〜実施例6−12と同様にして実施例6−38〜実施例6−48のラミネートフィルム型電池をそれぞれ作製した。
【0349】
<実施例6−49>
正極、負極、セパレータおよび非水電解液のそれぞれの構成が実施例6−1と同様であり、ゲル状の非水電解質と巻回電極体とを軟質ラミネートフィルムで外装したラミネートフィルム型電池を作製した。すなわち、電池構成は電池外装がラミネートフィルム、電極体は扁平巻回型、負極活物質は黒鉛とした。また、セパレータは、厚さ9μmのポリエチレン製微多孔性フィルムの両面に、吸熱粒子であるベーマイトと、樹脂材料であるポリフッ化ビニリデンとからなる片面厚さ7.5μm(両面厚さ15μm)の熱吸収層を設けた構成とした。以下、ラミネートフィルム型電池の組み立て方法を説明する。
【0350】
[ラミネートフィルム型電池の組み立て]
正極および負極と、熱吸着層が両面に形成されたセパレータとを、正極、セパレータ、負極、セパレータの順に積層し、長手方向に多数回、扁平形状に巻回させた後、巻き終わり部分を粘着テープで固定することにより巻回電極体を形成した。このとき、正極および負極の両面には、高分子材料に非水電解液を保持させることによってゲル状とされた非水電解質を塗布したものを用いた。
【0351】
次に、
図11に示すように、巻回電極体を軟質アルミニウム層を有する軟質ラミネートフィルムと、硬質アルミニウム層を有する硬質ラミネートフィルムとで外装し、巻回電極体周辺の正極端子および負極端子の導出辺と、他の三辺とを減圧下で熱融着して封止し、密閉した。この後、硬質ラミネートフィルムの両端を、硬質ラミネートフィルムの短辺同士が当接するようにして断面楕円形状に成型し、硬質ラミネートフィルムと、軟質ラミネートフィルムとの対向部分を貼着して電池セルとした。続いて、正極と接続された正極リードと、負極と接続された負極リードとを回路基板に接続し、回路基板をトップカバーに収容した。最後に、トップカバーとボトムカバーとをそれぞれ電池セルに挿入・接着し、電池形状が厚さ5.2mm、幅34mm、高さ36mm(523436サイズ)、電池容量が1000mAhである、
図10に示すラミネートフィルム型電池を作製した。
【0352】
<実施例6−50>〜<実施例6−60>
電池構成を実施例6−25と同様のラミネートフィルム型電池とした以外は、実施例6−2〜実施例6−12と同様にして実施例6−50〜実施例6−60のラミネートフィルム型電池をそれぞれ作製した。
【0353】
[電池の評価:短絡試験]
作製した各実施例および各比較例の電池について、実施例1−1と同様にして短絡試験を行った。
【0354】
以下の表6に、評価結果を示す。
【0355】
【表6】
【0356】
表6から分かるように、単位面積あたりの熱容量の総和が0.0006J/Kcm
2、単位体積あたりの熱容量の総和が0.4J/Kcm
3となるように作製した熱吸収層を有するセパレータを用いた場合、電池構成にかかわらず、短絡試験における発熱温度が80℃未満と低く、安全性が高かった。
【0357】
特に、実施例6−1〜実施例6−3から、基材の両面に熱吸収層を設けたセパレータを用いた電池が最も安全性が高く、基材の一方の面に熱吸収層を設ける場合には、基材の正極側面に熱吸収層を設けるよりも、基材の負極側面に熱吸収層を設けた方がより効果的であることが分かった。
【0358】
<実施例7−1>〜<実施例7−76>
<実施例7−1>
実施例1−1と同様にして、吸熱体粒子として、粒子形状が球状のべーマイト(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)を用いた円筒型電池を作製した。なお、粒子形状の比率(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」)は、以下のように求めたものである。50個の粒子をランダムに選択して、選択した各無機粒子を走査型電子顕微鏡で、3次元的に観察した。これにより、各無機粒子の最長部分の長さ(長軸の長さ)と、長軸に直交する各無機粒子の最短部分の長さ(短軸の長さ(厚みまたは太さ))とから、各無機粒子の比率(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」)を得た。そして、これらの平均値を実施例7−1の粒子形状の比率(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」)とした。(以下の各実施例においても同様)
【0359】
<実施例7−2>
吸熱体粒子として、粒子形状が板状のベーマイト(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0360】
<実施例7−3>
吸熱体粒子として、粒子形状が針状のベーマイト(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0361】
<実施例7−4>〜<実施例7−6>
実施例7−4では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状の窒化アルミニウム(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−5では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状の窒化アルミニウム(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−6では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状の窒化アルミニウム(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0362】
<実施例7−7>〜<実施例7−9>
実施例7−7では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状の窒化ホウ素(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−8では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状の窒化ホウ素(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−9では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状の窒化ホウ素(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0363】
<実施例7−10>〜<実施例7−12>
実施例7−10では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状の炭化ケイ素(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−11では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状の炭化ケイ素(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−12では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状の炭化ケイ素(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0364】
<実施例7−13>〜<実施例7−15>
実施例7−13では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状のタルク(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−14では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状のタルク(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−15では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状のタルク(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0365】
<実施例7−16>〜<実施例7−18>
実施例7−16では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状のLi
2O
4(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−17では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状のLi
2O
4(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−18では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状のLi
2O
4(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0366】
<実施例7−19>〜<実施例7−21>
実施例7−19では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状のLi
3PO
4(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−20では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状のLi
3PO
4(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−21では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状のLi
3PO
4(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0367】
<実施例7−22>〜<実施例7−24>
実施例7−22では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状のLiF(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−23では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状のLiF(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−24では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状のLiF(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0368】
<実施例7−25>〜<実施例7−27>
実施例7−25では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状のダイヤモンド(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−26では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状のダイヤモンド(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−27では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状のダイヤモンド(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0369】
<実施例7−28>〜<実施例7−30>
実施例7−28では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状のジルコニア(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−29では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状のジルコニア(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−30では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状のジルコニア(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0370】
<実施例7−31>〜<実施例7−33>
実施例7−31では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状の酸化イットリウム(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−32では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状の酸化イットリウム(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−33では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状の酸化イットリウム(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0371】
<実施例7−34>〜<実施例7−36>
実施例7−34では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状のチタン酸バリウム(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−35では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状のチタン酸バリウム(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−36では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状のチタン酸バリウム(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0372】
<実施例7−37>〜<実施例7−39>
実施例7−37では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状のチタン酸ストロンチウム(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−38では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状のチタン酸ストロンチウム(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−39では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状のチタン酸ストロンチウム(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0373】
<実施例7−40>〜<実施例7−42>
実施例7−40では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状の酸化ケイ素(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−41では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状の酸化ケイ素(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−42では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状の酸化ケイ素(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0374】
<実施例7−43>〜<実施例7−45>
実施例7−43では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状のゼオライト(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−44では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状のゼオライト(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−45では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状のゼオライト(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0375】
<実施例7−46>〜<実施例7−48>
実施例7−46では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状の硫酸バリウム(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−47では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状の硫酸バリウム(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−48では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状の硫酸バリウム(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0376】
<実施例7−49>〜<実施例7−51>
実施例7−49では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状の酸化チタン(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−50では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状の酸化チタン(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−51では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状の酸化チタン(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0377】
<実施例7−52>〜<実施例7−54>
実施例7−52では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状の酸化マグネシウム(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−53では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状の酸化マグネシウム(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−54では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状の酸化マグネシウム(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0378】
<実施例7−55>〜<実施例7−57>
実施例7−55では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状の黒鉛(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−56では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状の黒鉛(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−57では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状の黒鉛(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0379】
<実施例7−58>
吸熱体粒子として、粒子形状が針状のカーボンナノチューブ(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=10倍)を用いた以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0380】
<実施例7−59>〜<実施例7−61>
実施例7−59では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状の水酸化アルミニウム(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−60では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状の水酸化アルミニウム(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−61では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状の水酸化アルミニウム(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0381】
<実施例7−62>〜<実施例7−64>
実施例7−62では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状の炭化ホウ素(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−63では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状の炭化ホウ素(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−64では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状の炭化ホウ素(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0382】
<実施例7−65>〜<実施例7−67>
実施例7−65では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状の窒化ケイ素(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−66では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状の窒化ケイ素(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−67では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状の窒化ケイ素(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0383】
<実施例7−68>〜<実施例7−70>
実施例7−68では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状の窒化チタン(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−69では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状の窒化チタン(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−70では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状の窒化チタン(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0384】
<実施例7−71>〜<実施例7−73>
実施例7−71では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状の酸化亜鉛(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−72では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状の酸化亜鉛(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−73では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状の酸化亜鉛(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0385】
<実施例7−74>〜<実施例7−76>
実施例7−74では、吸熱体粒子として、粒子形状が球状のアルミナ(「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=1倍)用いた。実施例7−75では、吸熱体粒子として、粒子形状が板状のアルミナ(長さ:厚み=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。実施例7−76では、吸熱体粒子として、粒子形状が針状のアルミナ(長さ:太さ=3:1、すなわち、「長軸の長さ」/「短軸の長さ」=3倍)を用いた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0386】
[電池の評価:短絡試験]
作製した各実施例および各比較例の電池について、実施例1−1と同様にして短絡試験を行った。
【0387】
以下の表7に、評価結果を示す。
【0388】
【表7】
【0389】
表7から分かるように、粒子形状が球状の吸熱体粒子を用いた場合より、粒子形状が針状または板状の異方性を有する形状の吸熱体粒子を用いた場合の方が、安全性がより高かった。
【0390】
以上、本技術を各実施の形態および実施例によって説明したが、本技術はこれらに限定されるものではなく、本技術の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、基材の厚みおよび各材料の組成は、正極および負極の構成に合わせて設定すればよい。また、非水電解質電池は一次電池であってもよい。
【0391】
また、各実施の形態では、基材表面に熱吸収層を設けたセパレータを用いることを特徴としているが、熱吸収層は基材と正極および負極の少なくとも一方との境界に存在すればよい。このため、セパレータは従来の構成とし、正極表面もしくは負極表面の少なくとも一方に熱吸収層を形成してもよい。この場合、正極表面および負極表面に、無機粒子と樹脂材料とを溶解した樹脂溶液を面積あたりの熱容量が本技術の範囲となるように調整して所定量塗布するとともに、体積あたりの熱容量が本技術の範囲となるように超音波のエネルギーを調整する等して、熱吸収層を形成すればよい。
【0392】
なお、本技術は、以下の構成をとることもできる。
【0393】
[1]
基材と、
上記基材の少なくとも一方の面に形成され、単位面積あたりの熱容量が0.0001J/Kcm
2以上であり、かつ単位体積あたりの熱容量が3.0J/Kcm
3以下である層と
を備え、
上記層は、粒子と、樹脂材料とを含有し、
上記粒子は、ベーマイト、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫酸バリウム、多孔質アルミノケイ酸塩、層状ケイ酸塩、Li
2O
4、Li
3PO
4、LiF、水酸化アルミニウム、黒鉛、カーボンナノチューブおよびダイヤモンドの中から選ばれた少なくとも1つを含有するセパレータ。
[2]
上記粒子が、上記層中に分散して存在する
[1]に記載のセパレータ。
[3]
上記粒子が、三次元網目構造に形成された上記樹脂材料に分散して担持される
[1]〜[2]の何れかに記載のセパレータ。
[4]
上記粒子の比熱が、0.5J/gK以上である
[1]〜[3]の何れかに記載のセパレータ。
[5]
上記粒子の形状が、異方性を有する形状である
[1]〜[4]の何れかに記載のセパレータ。
[6]
上記粒子の最長部分の長さと、該最長部分に直交する方向における上記粒子の最短部分の長さとの比率(「上記最長部分の長さ」/{上記最短部分の長さ})が、3倍以上である[5]に記載のセパレータ。
[7]
上記樹脂材料の融点およびガラス転移温度の少なくとも一方が、180℃以上である
[1]〜[6]の何れかに記載のセパレータ。
[8]
上記樹脂材料がポリフッ化ビニリデンである
[7]に記載のセパレータ。
[9]
上記層の空孔率が、上記基材の空孔率よりも大きく、かつ95%以下である
[1]〜[8]の何れかに記載のセパレータ。
[10]
上記基材を構成する上記樹脂材料が、ポレオレフィン系樹脂を含む
[1]〜[9]の何れかに記載のセパレータ。
[11]
上記基材の空孔率が、25%以上40%以下である
[1]〜[10]の何れかに記載のセパレータ。
[12]
基材と、
上記基材の少なくとも一方の面側に形成され、少なくとも一部が上記基材内の空隙に含まれ、単位面積あたりの熱容量が0.0001J/Kcm
2以上であり、かつ単位体積あたりの熱容量が3.0J/Kcm
3以下である層と
を備え、
上記層は、粒子と、樹脂材料とを含有し、
上記粒子は、ベーマイト、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫酸バリウム、多孔質アルミノケイ酸塩、層状ケイ酸塩、Li
2O
4、Li
3PO
4、LiF、水酸化アルミニウム、黒鉛、カーボンナノチューブおよびダイヤモンドの中から選ばれた少なくとも1つを含有するセパレータ。
[13]
上記基材は、不織布またはセルロース透気性膜である[12]に記載のセパレータ。
[14]
正極および負極がセパレータを介して対向する電極体と、
電解質と
を備え、
上記セパレータが、
基材と、
上記基材の少なくとも一方の面に形成され、単位面積あたりの熱容量が0.0001J/Kcm
2以上であり、かつ単位体積あたりの熱容量が3.0J/Kcm
3以下である層と
を備え、
上記層は、粒子と、樹脂材料とを含有し、
上記粒子は、ベーマイト、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫酸バリウム、多孔質アルミノケイ酸塩、層状ケイ酸塩、Li
2O
4、Li
3PO
4、LiF、水酸化アルミニウム、黒鉛、カーボンナノチューブおよびダイヤモンドの中から選ばれた少なくとも1つを含有する電池。
[15]
上記負極に含まれる負極活物質が、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料からなる
[14]に記載の電池。
[16]
正極および負極がセパレータを介して対向する電極体と、
電解質と
を備え、
上記セパレータが、
基材と、
上記基材の少なくとも一方の面側に形成され、少なくとも一部が上記基材内の空隙に含まれ、単位面積あたりの熱容量が0.0001J/Kcm
2以上であり、かつ単位体積あたりの熱容量が3.0J/Kcm
3以下である層と
を備え、
上記層は、粒子と、樹脂材料とを含有し、
上記粒子は、ベーマイト、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫酸バリウム、多孔質アルミノケイ酸塩、層状ケイ酸塩、Li
2O
4、Li
3PO
4、LiF、水酸化アルミニウム、黒鉛、カーボンナノチューブおよびダイヤモンドの中から選ばれた少なくとも1つを含有する電池。
[17]
正極および負極がセパレータを介して対向する電極体と、
電解質と、
上記セパレータと、該セパレータを介して対向する上記正極および上記負極の少なくとも一方との間に、単位面積あたりの熱容量が0.0001J/Kcm
2以上であり、かつ単位体積あたりの熱容量が3.0J/Kcm
3以下である層と
を備え、
上記層は、粒子と、樹脂材料とを含有し、
上記粒子は、ベーマイト、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫酸バリウム、多孔質アルミノケイ酸塩、層状ケイ酸塩、Li
2O
4、Li
3PO
4、LiF、水酸化アルミニウム、黒鉛、カーボンナノチューブおよびダイヤモンドの中から選ばれた少なくとも1つを含有する電池。
[18]
[14]〜[17]の何れかに記載の電池と、
上記電池を制御する制御部と、
上記電池を内包する外装を有する
電池パック。
[19]
[14]〜[17]の何れかに記載の電池を有し、
上記電池から電力の供給を受ける
電子機器。
[20]
[14]〜[17]の何れかに記載の電池と、
上記電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
上記電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置とを有する
電動車両。
[21]
[14]〜[17]の何れかに記載の電池を有し、
上記電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
[22]
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え
上記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、上記電池の充放電制御を行う
[21]に記載の蓄電装置。
[23]
[14]〜[17]の何れかに記載の電池から電力の供給を受け、または、発電装置もしくは電力網から上記電池に電力が供給される
電力システム。