(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、成分が2種以上の化合物を含む場合、上記成分の含有量とは、2種以上の化合物の合計の含有量を指す。
【0011】
本発明のハードコート層形成用組成物(本発明の組成物)は、
1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有する多官能(メタ)アクリル化合物(A)と、
フィラー(B)として、平均1次粒子径が100nm以下である、チタン酸バリウム及び/又は酸化ジルコニウムと、
光重合開始剤(C)と、
有機溶剤(D)と、
界面活性剤(E)と、
重量平均分子量が10,000〜100,000であり、1分子当たりメチル(メタ)アクリレート単位を70質量%以上有する(メタ)アクリルポリマー(F)とを含有する、ハードコート層形成用組成物である。
【0012】
本発明の組成物は、フィラー(B)と(メタ)アクリルポリマー(F)とを併用し、(メタ)アクリルポリマー(F)が1分子当たりメチル(メタ)アクリレート単位を70質量%以上有することによって、得られるハードコート層のアンチブロック性に優れる。
本発明の組成物を用いて得られるハードコート層は、その表層部にフィラー(B)が配列することによって、フィラー(B)単独でハードコート層にアンチブロック性を付与することが可能となる。また、本発明の組成物が(メタ)アクリルポリマー(F)を含有することによって、アンチブロック性を向上させ、良好な光学特性(全光線透過率、ヘイズ)や高屈折率を維持することができる。
【0013】
本発明の組成物を用いて得られるハードコート層について添付の図面を用いて以下に説明する。なお本発明は添付の図面に限定されない。
図2は、本願実施例3のハードコート層形成用組成物を用いて形成されたハードコート層の断面を電界放射型走査電子顕微鏡(Field Emission−Scanning Electron Microscope(FE−SEM))によって観察した結果を表す写真である(倍率160,000倍)。
図2において、20はハードコート層を示し、22はハードコート層20の断面であり、23はハードコート層20の表面である。表面23においてフィラー(B)24が連なって配列している様子(枠内)が観察できる。ハードコート層の表面におけるフィラー(B)の配列によってアンチブロック性が発現すると考えられる。なお本発明において、FE−SEMとして、カールツァイス社製のGEMINI Column with EsB & AsB Surface Imaging Microscope ULTRA 55が使用された。
【0014】
<多官能(メタ)アクリル化合物(A)>
多官能(メタ)アクリル化合物(A)について以下に説明する。
本発明の組成物に含有される多官能(メタ)アクリル化合物(A)は、1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。
なお、「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは、アクリロイルオキシ基(CH
2=CHCOO−)および/またはメタクリロイルオキシ基(CH
2=C(CH
3)COO−)を意味するものとする。
多官能(メタ)アクリル化合物(A)が1分子中に有する(メタ)アクリロイルオキシ基の数は、本発明の組成物の塗工性および硬化性が優れるという観点から、3個以上が好ましく、4〜15個がより好ましい。
【0015】
≪多官能(メタ)アクリル化合物(A)の好適態様≫
多官能(メタ)アクリル化合物(A)の好適態様としては、例えば、1分子中に、更に、芳香環および/またはウレタン結合を有する化合物が挙げられる。
多官能(メタ)アクリル化合物(A)は、1分子中に、芳香環および/またはウレタン結合を1個以上(1個又は複数個)有することができる。この場合、多官能(メタ)アクリル化合物(A)は、1分子中に、3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
なお、本明細書において、芳香環及び(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物を芳香環含有(メタ)アクリレートといい、ウレタン結合及び(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物をウレタン(メタ)アクリレートということがある。
【0016】
芳香環としては、例えば、ベンゼン環;ナフタレン環、下記式で表されるフルオレン環(フルオレン)のような縮合環が挙げられ、なかでも、フルオレン環がより好ましい。
【0018】
(メタ)アクリロイルオキシ基は、芳香環又はウレタン結合に、直接または連結基を介して、結合できる。ここで、連結基としては、例えば、ヘテロ原子;少なくとも2価の脂肪族炭化水素基;少なくとも2価の芳香族炭化水素基;等が挙げられる。
ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などが挙げられる。
少なくとも2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基のような2価の脂肪族炭化水素基;3価以上である場合上記2価の脂肪族炭化水素基の残基(以下同様。)などが挙げられる。アルキレン基としては、炭素原子数1〜6のアルキレン基が挙げられ、その具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基が挙げられる。シクロアルキレン基の具体例としては、シクロヘキシレン基などが挙げられる。アルケニレン基の具体例としては、ビニレン基、プロペニレン基などが挙げられる。
2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、アリーレン基、アラルキレン基のような2価の芳香族炭化水素基;3価以上である場合上記2価の芳香族炭化水素基の残基(以下同様。)などが挙げられる。アリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ビフェニル−4,4’−ジイル基、ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基が挙げられる。アラルキレン基の具体例としては、ベンジレン基などが挙げられる。
【0019】
(芳香環を有する態様)
芳香環含有(メタ)アクリレートとしては、市販品を用いることができ、その具体例としては、フルオレン含有アクリレート(商品名:オグゾールEA−HC936、大阪ガスケミカル社製、重量平均分子量:689、1分子中のアクリロイルオキシ基の数:4個)が好適に挙げられる。
芳香環含有(メタ)アクリレートはウレタン結合を有さないものとすることができる。
【0020】
(ウレタン結合を有する態様)
多官能(メタ)アクリル化合物(A)が、ウレタン(メタ)アクリレートである場合、このような化合物は、例えば、イソシアネート化合物とヒドロキシ化合物との反応により得られる。このとき、反応生成物が有する(メタ)アクリロイル基の数が2個以上又は3個以上であれば、使用するイソシアネート化合物およびヒドロキシ化合物について、どちらが(メタ)アクリロイルオキシ基を有していてもよく、その反応比率なども特に限定されない。
【0021】
イソシアネート化合物は、イソシアネート基を1個以上有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリイソシアネートが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、1分子内にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートであれば特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のような脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水添XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)などの脂環式ポリイソシアネート;トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート体等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートが好ましく、HDI、IPDI、水添XDI、水添MDIがより好ましい。
【0022】
ヒドロキシ化合物が2個以上又は3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する場合、このようなヒドロキシ化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどのポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート;等が挙げられ、なかでも、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)が好ましい。
【0023】
多官能(メタ)アクリル化合物(A)の分子量(多官能(メタ)アクリル化合物(A)が、ポリマー(オリゴマーを含む。)である場合又は複数の多官能(メタ)アクリル化合物の混合物である場合は、分子量を重量平均分子量とすることができる。)は、10,000未満とすることができ、100〜5,000が好ましく、400〜2,000がより好ましい。
本発明において、上記重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒として使用し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
【0024】
多官能(メタ)アクリル化合物(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
多官能(メタ)アクリル化合物(A)を2種以上で併用する場合の組み合わせとしては例えば、芳香環含有(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートとの組み合わせが好ましく、フルオレン含有アクリレートと、ヘキサメチレンジイソシアネートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとを反応させて得られるウレタンアクリレートとの組み合わせがより好ましい。
芳香環含有(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートとの質量比(芳香環含有(メタ)アクリレート:ウレタン(メタ)アクリレート)は、ヘイズ、全光線透過率、高屈折率、鉛筆硬度に優れるという観点から、5:95〜80:20が好ましく、5:95〜50:50がより好ましい。
【0025】
<フィラー(B)>
フィラー(B)について以下に説明する。本発明の組成物は、フィラー(B)として、平均1次粒子径が100nm以下である、チタン酸バリウム(BaTiO
3)及び/又は酸化ジルコニウム(ZrO
2)を含有する。
本発明において、フィラー(B)は得られるハードコート層の屈折率を高くするための高屈折率調整剤として機能することができる。
フィラー(B)は、アンチブロック性により優れ、屈折率、ヘイズに優れるという観点から、チタン酸バリウムが好ましい。
フィラー(B)の平均1次粒子径は、アンチブロック性により優れ、屈折率、ヘイズ、透過率、塗膜外観に優れるという観点から、5〜100nmであるのが好ましく、10〜30nmであるのがより好ましい。
本発明において、平均1次粒子径は、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)でフィラー(B)の1次粒子を観察し、任意に選択した100個の1次粒子の粒子径を測定し、その測定結果の平均を算出して得た値である。
フィラー(B)はアンチブロック性により優れ、フィラーの分散性の制御に優れるという観点から、コロイダル(湿式)であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0026】
フィラー(B)は、アンチブロック性により優れ、良好な光学特性(全光線透過率、ヘイズ)や高屈折率を維持しながら、塗膜外観に優れるという観点から、その表面に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するのが好ましい。本明細書において、チタン酸バリウム又は酸化ジルコニウムが、その表面に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する場合、そのようなフィラーをフィラー(b)ということがある。
【0027】
フィラー(B)としては例えば、無処理のチタン酸バリウム、無処理の酸化ジルコニウム、上記フィラー(b)が挙げられる。フィラー(b)としては、その表面に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するチタン酸バリウム、その表面に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する酸化ジルコニウムが挙げられる。
【0028】
フィラー(b)においてチタン酸バリウム又は酸化ジルコニウムと(メタ)アクリロイルオキシ基とは直接又は連結基を介して結合することができる。連結基は上記と同義である。
【0029】
フィラー(b)はその製造について特に制限されない。例えば、原料であるチタン酸バリウム及び/又は酸化ジルコニウムとシランカップリング剤とを反応させることによって、フィラーの表面をシランカップリング剤で変性し製造することができる。
【0030】
フィラー(b)を製造する際に使用されるシランカップリング剤は特に制限されない。上記シランカップリング剤としては、例えば、下記式(I)で表される化合物が挙げられる。
[R
1−(R
3)
n]
a−Si−(OR
2)
4-a (I)
式(I)中、R
1はそれぞれ独立に(メタ)アクリロイルオキシ基であり、R
2はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基であり、1≦a<4であり、R
3はそれぞれ独立に2価の炭化水素基であり、nは0または1である。
R
2である炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基などが挙げられ、なかでも、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましい。
なお、R
2である炭素数1〜20のアルキル基が有していてもよい置換基としては、特に限定されず、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボニル基が挙げられる。
【0031】
R
3である2価の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜6のアルキレン基が挙げられ、その具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−ジイル基、ヘキサン−ジイル基が挙げられる。
式(I)で表される化合物としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
フィラー(B)の含有量は、アンチブロック性により優れ、良好な光学特性(全光線透過率、ヘイズ)や高屈折率を維持しながら、塗膜外観に優れるという観点から、多官能(メタ)アクリル化合物(A)100質量部に対して、5〜200質量部であるのが好ましく、20〜150質量部であるのがより好ましい。
【0033】
<光重合開始剤(C)>
光重合開始剤(C)について以下に説明する。
本発明の組成物に含有される光重合開始剤(C)は、ビニル系官能基を光によって重合させ得るものであれば特に限定されず、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、ベンゾイン類、ベンゾインメチルエーテル、チオキサントン類、プロピオフェノン類、ベンジル類、アシルホスフィンオキシド類などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、光安定性、光開裂の高効率性、相溶性、低揮発、低臭気という観点から、アルキルフェノン系光重合開始剤であるのが好ましい。
アルキルフェノン系光重合開始剤としては、具体的には、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等が挙げられる。
【0034】
光重合開始剤(C)の含有量は、本発明の組成物の硬化性が優れるという観点から、多官能(メタ)アクリル化合物(A)100質量部に対して、1〜15質量部が好ましく、3〜10質量部がより好ましい。
【0035】
<有機溶剤(D)>
有機溶剤(D)について以下に説明する。本発明の組成物に含有される有機溶剤(D)ては、特に限定されず、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンなどの脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチレンクロライド、クロロホルムなどのハロゲン化物;テトラヒドロフラン、ジアルキルエーテルなどのエーテル類;酢酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルなどのエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;グリコールエーテル類が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
有機溶剤(D)の含有量は、多官能(メタ)アクリル化合物(A)とフィラー(B)との相溶性に優れるという観点から、多官能(メタ)アクリル化合物(A)100質量部に対して、100〜500質量部が好ましく、200〜400質量部がより好ましい。
【0037】
<界面活性剤(E)>
界面活性剤(E)について以下に説明する。本発明の組成物に含有される界面活性剤(E)は、特に限定されず、従来公知のものを使用できる。
界面活性剤(E)としては、アンチブロック性の効果がより優れるという理由から、塩基性界面活性剤、フッ素系界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤がより好ましい。 フッ素系界面活性剤は、含有するフッ素が疎水性であることから、塗膜の表面(大気との界面)に移動して配置し、この移動を駆動力として、フィラー(B)も、最表面に配置されると同時に、表面にフィラーの凹凸を形成しやすくなるものと考えられる。
【0038】
≪塩基性界面活性剤≫
塩基性界面活性剤は、分子内に塩基性基を有する界面活性剤であり、塩基性基としては、例えば、アミン基、アミノ基、アミド基、ピロリドン基、イミン基、イミノ基、ウレタン基、四級アンモニウム基、アンモニウム基、ピリジノ基、ピリジウム基、イミダゾリノ基、イミダゾリウム基などが挙げられる。
塩基性界面活性剤としては、市販品を用いることができ、具体的には、例えば、SOLSPERSEシリーズの13240、13940、24000SC、24000GR、26000、31845、32000、32500、32550、34750、35100、35200、37500(以上、日本ルーブリゾール社製)、アジスパーPB821、同PB822、同PB881(以上、味の素社製)等が挙げられる。
【0039】
≪フッ素系界面活性剤≫
フッ素系界面活性剤は、フッ素を含有する界面活性剤であり、例えば、末端、主鎖および側鎖の少なくともいずれかの部位にフルオロアルキル基および/またはフルオロアルキレン基を有する化合物が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、具体的には、例えば、BM−1000、BM−1100(以上、BM CHEMIE社製)、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183、同F178、同F191、同F471、同F476(以上、大日本インキ化学工業社製)、フタージェントFT−100、同FT−110、同FT−140A、同FT−150、同FT−250、同FT−251、同FT−300、同FT−310、同FT−400S、同FTX−218、同FT−251(以上、ネオス社製)等が挙げられる。
【0040】
界面活性剤(E)の含有量は、得られる塗膜のアンチブロック性の効果がより優れ、かつ、外観が良好となるという理由から、多官能(メタ)アクリル化合物(A)100質量部に対して、0.0001〜5質量部が好ましく、0.01〜5質量部がより好ましく、0.03〜1質量部がさらに好ましい。
【0041】
<(メタ)アクリルポリマー(F)>
(メタ)アクリルポリマー(F)について以下に説明する。
本発明の組成物に含有される(メタ)アクリルポリマー(F)は、重量平均分子量が10,000〜100,000であり、1分子当たりメチル(メタ)アクリレート単位を70質量%以上有する、(メタ)アクリレートのポリマーである。
(メタ)アクリルポリマー(F)は、少なくともメチル(メタ)アクリレート単位(メチル(メタ)アクリレートにより構成される繰り返し単位)を含む。
(メタ)アクリルポリマー(F)は、ホモポリマー、コポリマーのいずれであってもよい。(メタ)アクリルポリマー(F)は、ホモポリマーであるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0042】
(メタ)アクリルポリマー(F)がコポリマーである場合、(メタ)アクリルポリマー(F)がメチル(メタ)アクリレート単位以外に更に含むことができる構成単位は特に制限されない。例えば、芳香族ビニル単位;メチル(メタ)アクリレート単位以外のアルキル(メタ)アクリレート単位(例えば、ブチル(メタ)アクリレート単位)が挙げられる。なかでも、(メタ)アクリルポリマー(F)は、光学特性、塗膜外観に優れるという観点から、さらに芳香族ビニル単位を含むのが好ましい。
芳香族ビニル単位としては、例えば、スチレン、アルキルスチレン、ビニル安息香酸等のカルボキシル基を有する化合物、ジビニルベンゼンのような芳香族ビニル化合物に由来するものが挙げられる。なかでも、スチレン単位を更に含むのが好ましい。
【0043】
(メタ)アクリルポリマー(F)を構成することができる構成単位(繰り返し単位)としては、上記メチル(メタ)アクリレート単位、メチル(メタ)アクリレート単位以外のアルキル(メタ)アクリレート単位、上記芳香族ビニル化合物に由来する単位以外に、例えば、上記以外の(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸;アクリロニトリルに由来するものが挙げられる。
【0044】
(メタ)アクリルポリマー(F)の重量平均分子量は、光学特性、塗膜外観に優れるという観点から、15,000〜80,000であるのが好ましく、20,000〜75,000であるのがより好ましい。
本発明において、上記重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒として使用し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である。
【0045】
本発明において、(メタ)アクリルポリマー(F)が1分子当たりに有するメチル(メタ)アクリレート単位の含有量は70質量%以上であり、光学特性、塗膜外観に優れるという観点から、70〜100質量%であるのが好ましく、80〜100質量%であるのがより好ましい。
本発明において、(メタ)アクリルポリマー(F)がコポリマーである場合、(メタ)アクリルポリマー(F)を構成する各構成単位(繰り返し単位)の含有量は、
1H−NMR分析、
13C−NMR分析、IR分析の結果から算出された。
【0046】
(メタ)アクリルポリマー(F)は、フィラー(B)との非相溶性、塗膜外観、ヘイズ(全光線透過率のような光学特性)に優れるという観点から、不飽和結合を有さないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。ここで、(メタ)アクリルポリマー(F)がフィラー(B)との非相溶性に優れること、つまり(メタ)アクリルポリマー(F)がフィラー(B)と相溶性しにくいことによって、フィラー(B)が系内から分離しやすくなり、フィラー(B)が本発明の組成物によって形成される硬化膜(ハードコート層)の上部に配向(又は配列)しやすくなると考えられる。
(メタ)アクリルポリマー(F)はその製造について特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
【0047】
(メタ)アクリルポリマー(F)の含有量は、光学特性、塗膜外観に優れるという観点から、多官能(メタ)アクリル化合物(A)100質量部に対して、1〜20質量部であるのが好ましく、1〜15質量部であるのがより好ましく、2.5〜12.5質量部であるのが更に好ましく、5〜10質量部であるのが特に好ましい。
【0048】
本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記必須成分以外に、例えば、老化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、艶消し剤、光安定剤、染料、顔料などの添加剤をさらに含有できる。
【0049】
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、反応容器に上述した必須成分および任意成分を入れ、減圧下で混合ミキサー等のかくはん機を用いて十分に混合する方法が挙げられる。
【0050】
本発明の組成物(ハードコート層形成用組成物)を、基材の少なくとも片面上に塗布した後に硬化させることにより、塗膜であるハードコート層が形成され、基材の少なくとも片面上にハードコート層が設けられた積層体を得ることができる。
基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等からなるフィルムが挙げられるが、これに限定されない。基材の厚さは、10〜300μm程度とすることができる。
本発明の組成物を塗布する方法は、特に限定されず、例えば、はけ塗り、流し塗り、浸漬塗り、スプレー塗り、スピンコート等の公知の塗布方法を採用できる。
本発明の組成物の塗布量としては、特に限定されないが、例えば、硬化後のハードコート層の厚さが1〜10μm程度となる量が挙げられる。
また、本発明の組成物の硬化は、例えば紫外線により行なうことができる。本発明の組成物を硬化させる際に使用する紫外線の照射量としては、特に限定されないが、速硬化性、作業性の観点から、例えば、50〜3000mJ/cm
2が挙げられ、100〜3000mJ/cm
2が好ましい。本発明の組成物を紫外線照射により硬化させる際の温度は、例えば、20〜110℃とすることができ、20〜80℃が好ましい。紫外線を照射する装置としては、特に限定されず、従来公知のものを使用できる。
【0051】
次に、本発明の組成物(ハードコート層形成用組成物)を用いた積層体について添付の図面を用いて以下に詳細に説明する。本発明は添付の図面に制限されない。
図1は、本発明のハードコート層形成用組成物を用いて形成したハードコート層を有する積層体の一例を模式的に示す断面図である。
【0052】
図1に示すように、積層体1は、PETフィルム等の基材11を有する。基材11の片面(上側の面)上には、本発明の組成物を硬化させて得られる塗膜であるハードコート層13が形成されている。ハードコート層13の厚さは例えば1〜10μm程度である。なお、基材11の他方の片面(下側の面)に図示しないハードコート層が形成されていてもよい。
そして、
図1に示すように、ハードコート層13の上側には、厚さが例えば10〜500nm程度であるインデックスマッチング層15を介して、電極となるITO層17が形成されている。インデックスマッチング層15は、エッチング処理後のITO層17の導電パターンを見えにくくするための層であり、ITO層17よりも屈折率の高い高屈インデックスマッチング層15aと、ITO層17よりも屈折率の低い低屈インデックスマッチング層15bとで構成されている。
【0053】
本発明において、積層体は、例えば、タッチパネル装置などの薄型の電子デバイスに用いられ、電子デバイスの部品を構成することができる。
積層体は、その製造工程において、巻き取られたり重ねられたりする場合があるが、このとき、ハードコート層は、本発明の組成物を硬化させて得られる塗膜であることから、アンチブロック性に優れるため、貼り付きが防止され、工程内不良を抑制できる。また、ハードコート層は本発明の組成物を硬化させて得られる塗膜であることから屈折率が調整され、基材と同程度の屈折率を有することができる。
【実施例】
【0054】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0055】
[ハードコート層形成用組成物の製造]
下記第1表に示す成分を同表に示す量(質量部)で用いて、これらを混合してハードコート層形成用組成物(以下、単に「組成物」ともいう)を製造した。
なお、(B)成分について湿式のフィラーについては、フィラーの正味の量を第1表に記載した。そのほかの成分についても同様に各成分の正味の量を記載した。
【0056】
[塗膜の形成(積層体の製造)]
上記のとおり製造された組成物を、基材であるPETフィルム(商品名:ルミラーU−403、東レ社製、厚さ:125μm)上に、バーコーターNo.5で塗装(膜厚:2〜3μmになるように調整)し、その後、80℃で1分間乾燥して、400mW/cm
2、400mJ/cm
2の条件下で、組成物に紫外線(UV)を照射して硬化させて、PETフィルム上に塗膜(ハードコート層)が形成された積層体を製造した。
【0057】
[評価]
上記のとおり製造した積層体を用いて、以下の評価を行なった。結果を下記第1表に示す。
【0058】
〔塗膜物性〕
〈全光線透過率〉
ヘイズメーター(HM−150、村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS K7361に準じて、上記のとおり製造した積層体の全光線透過率を測定した。
【0059】
〈ヘイズ〉
ヘイズメーター(HM−150、村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS K7105に準じて、上記のとおり製造した積層体のヘイズを測定した。ヘイズは2.0%以下が好ましい。
【0060】
〈アンチブロック性〉
まず、上記のとおり製造した積層体から、複数枚の個片サンプル(50mm×50mm)を切り出した。次に、2枚の個片サンプルを、一方の個片サンプルのハードコート層と、他方の個片サンプルのPETフィルムとが接する向きで重ねて、これらを人の手の親指と人差し指で挟んで擦り合わせて、アンチブロック性を評価した。
アンチブロック性の評価基準は、2枚の個片サンプルが貼り付かず互いによく滑る場合をアンチブロック性に非常に優れるとして「A」と評価した。
2枚の個片サンプルの一部が貼り付いたが、2枚の個片サンプルを数回(5回以下)強くこすり合わせると2枚の個片サンプルが剥がれて滑り始めた場合をアンチブロック性に優れるとして「B」と評価した。
2枚の個片サンプルが貼り付いて、これらを数回(6回以上)強くこすり合わせても2枚の個片サンプルが貼り付いたままの場合をアンチブロック性に劣るとして「C」と評価した。
「A」または「B」であれば、アンチブロック性に優れるものとして評価できる。
【0061】
〈屈折率〉
上記のとおり製造した積層体について、JIS K 7105:1981に準拠する測定法でATAGO社製アッベリフレクトメータを用いて、ナトリウムのスペクトルのD線589.6nmにおける屈折率を測定した(測定範囲:1.3〜1.71)。
屈折率は、積層体の塗膜表面での屈折率(上)が1.63〜1.67が好ましい。また、PET基材側での屈折率(下)は1.49〜1.55が好ましい。
【0062】
〔塗膜外観〕
<色調>
上記のとおり製造した積層体の外観を目視にて確認した。
積層体の色調が無色透明である場合、色調に優れるとして、これを「A」と評価した。
積層体の色調が白色である場合及び/又は積層体に濁りがある場合、色調に劣るとして、これを「B」と評価した。
【0063】
<スジ>
積層体にスジがない場合、塗膜の外観に優れるとして、これを「A」と評価した。
スジがある場合、塗膜の外観に劣るとして、これを「B」と評価した。
【0064】
<ブツ/ハジキ>
積層体にブツ(凝集粒子)及びハジキがない場合、塗膜の外観に優れるとして、これを「A」と評価した。
積層体にブツ及び/又はハジキがある場合、塗膜の外観に劣るとして、これを「B」と評価した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
第1表に示す各成分の詳細は以下のとおりである。
・ウレタンアクリレート:ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)とを反応させて得られるウレタンアクリレート(DPPA中の全活性水素基濃度に対するHDI中のイソシアネート基濃度の当量比(NCO/活性水素基)=0.6、重量平均分子量:944、1分子中のアクリロイルオキシ基の数:8〜10個)
・芳香環含有アクリレート:オグゾールEA−HC936(フルオレン含有アクリレート、大阪ガスケミカル社製、重量平均分子量:689、1分子中のアクリロイルオキシ基の数:4個)
【0070】
・酸化ジルコニウム1:湿式酸化ジルコニウム、MEK分散、平均1次粒子径:20nm、(メタ)アクリロイルオキシ基による変性あり
・チタン酸バリウム1:湿式チタン酸バリウム、MIBK分散、平均1次粒子径:30nm、(メタ)アクリロイルオキシ基による変性あり
・比較チタン酸バリウム1:乾式チタン酸バリウム、平均1次粒子径:150nm、(メタ)アクリロイルオキシ基による変性あり
・チタン酸バリウム2:乾式チタン酸バリウム、平均1次粒子径:50nm、(メタ)アクリロイルオキシ基による変性なし
・チタン酸バリウム3:湿式チタン酸バリウム、n−ブタノール分散、平均1次粒子径:30nm、(メタ)アクリロイルオキシ基による変性なし
【0071】
・光重合開始剤:イルガキュア184(BASFジャパン社製)
・有機溶剤:シクロヘキサノン
・界面活性剤1:フッ素系界面活性剤、フタージェントFTX−218(ネオス社製)
・界面活性剤2:塩基性界面活性剤、SOLSPERSE 32500(日本ルーブリゾール社製)
【0072】
・(メタ)アクリルポリマー1:重量平均分子量が65,000のポリメチルメタクリレート(PMMA)、デルペット 720V(旭化成ケミカルズ社製)
・(メタ)アクリルポリマー2:重量平均分子量が19,000のメタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MMA/St=80/20、質量比)
・(メタ)アクリルポリマー3:重量平均分子量が2万(20,000)のメタクリル酸メチル−ブチルアクリレート共重合体(MMA/BA=80/20、質量比)
・比較(メタ)アクリルポリマー1:重量平均分子量が8,000のポリメチルメタクリレート
・比較(メタ)アクリルポリマー2:重量平均分子量が22,000のメチルメタクリレート−スチレン−ブチルアクリレート共重合体(MMA/St/BA=56/10/34、重量比)
【0073】
第1表に示す結果から明らかなように、フィラーの平均1次粒子径が100nmを超える比較例1〜3はアンチブロック性が劣った。また塗膜外観にブツ及び/又はハジキが生じた。(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子量が10,000未満である比較例4はアンチブロック性が劣った。(メタ)アクリルポリマー1分子当たりのメチル(メタ)アクリレート単位が70質量%未満である比較例5、(メタ)アクリルポリマー(F)を含有しない比較例6は、アンチブロック性が劣った。
【0074】
これに対して、実施例1〜13はアンチブロック性が優れていた。また透過率が高くヘイズに優れるので塗膜物性に優れ、塗膜外観に優れた。
また、多官能(メタ)アクリル化合物(A)について実施例1、3、4を比較すると芳香環含有アクリレートの含有量が多くなるほどヘイズに優れた。
フィラー(B)の表面に(メタ)アクリロイルオキシ基の有無について実施例1〜8(有)と実施例9〜10(無)とを対比すると、実施例1〜8は実施例9〜10よりも透過性が高くヘイズに優れた。また、実施例5と実施例9、10とを比較すると、実施例5は実施例9、10よりも透過性が高くヘイズに優れ、アンチブロック性、塗膜外観の少なくともいずれかがより優れた。
フィラー(B)の種類について実施例3(酸化ジルコニウム)と実施例5(チタン酸バリウム)を比較すると、実施例5は実施例3より、ヘイズに優れた。
界面活性剤(E)の種類について実施例3(フッ素系界面活性剤)と実施例8(塩基性界面活性剤)を比較すると、実施例3は実施例8よりアンチブロック性により優れた。
(メタ)アクリルポリマー(F)が共重合体である場合について実施例7(スチレンとの共重合体、Mw19,000)と実施例11(ブチルアクリレートとの共重合体、Mw20,000)とを比較すると、実施例7が実施例11よりも、透過率が高く、ヘイズ、アンチブロック性、塗膜外観に優れた。
芳香環含有(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートとの質量比(芳香環含有(メタ)アクリレート:ウレタン(メタ)アクリレート)について、実施例12、13を比較すると、芳香環含有(メタ)アクリレートの質量比が高い実施例13の方が実施例12よりも屈折率が高くなることが分かった。