(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電動モータの給電端子は、前記電動モータの冗長系を構成する複数の巻線の端子である請求項1又は2に記載の電動モータとその制御装置に収納される基板との接続構造。
前記モータ角度検出器端子は、前記電動モータのモータ角度検出器の冗長系を構成する配線の端子である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電動モータとその制御装置に収納される基板との接続構造。
前記ブラシレスモータはU、V、W相からなる3相ブラシレスモータであり、前記電動モータの冗長系を構成する複数の巻線は、前記3相の各相をそれぞれ構成する2系統の巻線である請求項6に記載の電動モータとその制御装置に収納される基板との接続構造。
【背景技術】
【0002】
近年、自動ブレーキシステムなどの先進運転支援システム(ADAS:Advance
d Driver Assistance Systems)が普及期に入り、また将来の自動車の姿として自動運転が国家レベルで議論されるようになってきている。そして、上記のような先進運転システムでは、例えば、自動緊急ブレーキ(AEB:Autonomous Emergency Braking)、車間距離制御(ACC:Adaptive Cruise Control)、車線逸脱警報(LDW:Lane Depa
rture War
ning
)、車線維持補助(LKAS:Lane Keeping Assist
ance System)などが現在実用化されている。
【0003】
また、上記のような先進運転支援システムにおいて、電動モータとその制御装置を用いる電動パワーステアリング装置は、自動操舵を行うには、必須かつ益々重要な要素技術となってきている。そして、このような自動操舵や操舵アシストを継続して行うにおいて、上記電動パワーステアリング装置では、各種センサ(トルク検出、舵角検出)の多重化は勿論のこと、駆動系においても電動モータの冗長化が検討されており、具体的にはモータ巻線の2重化やモータ回転検出器(レゾルバや磁気センサ)の2重化が行われ、1系統の故障が発生しても、ある制限内で運転者の負担を軽減できるように操舵アシストの継続が可能なシステムが要求されている。そのため、こうした冗長化に伴い、上記電動モータと制御装置との配線接続本数も従来のものよりも増加し、配線接続の高密度化も進んでいることから、確実な配線接続と組付けの簡便化が求められている。
【0004】
一方、こうした電動パワーステアリング装置に用いられる電動モータと制御装置の接続構造については、従来、特開2008−22653号公報(特許文献1)や特開2008−220061号公報(特許文献2)に記載されたような技術が開示されている。
【0005】
このうち、上記特許文献1に記載された技術は、「電動モータへの組み付け及び電動モータからの取り外しが容易な電動モータの制御装置を提供する」ことを課題とするものである。そして、上記課題を解決するために、「電動モータへの駆動電流の供給を制御する駆動回路が形成された制御用基板と、前記制御用基板を保持すると共に前記電動モータに対して所定位置に取り外し可能に固定される基板保持体と、互いに電気的に接続されて前記制御用基板から前記電動モータへの電流供給経路を形成する基板側導電部材及びモータ側導電部材と、前記基板側導電部材及びモータ側導電部材が一体的に設けられた電気絶縁性樹脂製の基板側支持体及びモータ側支持体とを有し、前記基板側及びモータ側支持体は、互いの嵌合により、前記基板側導電部材及びモータ側導電部材を互いに電気的に接続させると共に前記基板保持体を前記電動モータに対して所定位置に位置決めする基板側嵌合部及びモータ側嵌合部を有する、ことを特徴とする電動モータの制御装置」を開示している。
【0006】
また、上記特許文献2に記載された技術は、「制御装置の取り付け及び交換が容易であり、コネクタ端子に制御装置の荷重又は取付荷重が加わらないモータ装置を提供すること」を課題としている。そして、上記課題を解決するために、「制御回路と該制御回路を収容するケースと該ケースから外部に露出する回路端子を備えた制御装置を、ステータ又は回転センサを固定するハウジングと該ハウジングから外部に露出するモータ端子を備えたモータに、一体に固定したモータ装置であって、前記ケース及び前記ハウジングには、両者が互いに所定の方向に挿入案内されるとともに当該案内方向以外で係合する案内係合部又は被案内係合部がそれぞれ形成されており、前記ケース及び前記ハウジングが、前記案内係合部及び被案内係合部により案内されて前記回路端子とモータ端子を接合位置に至らしめ、前記回路端子と前記モータ端子を電気接合して前記制御回路と前記モータを一体固定したことを特徴とするモータ装置」を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に開示された技術は、電動モータへの組み付け及び上記電動モータからの取り外しを容易とする事を目的とした電動モータの制御装置(ECU)等であり、上記電動モータの端子とECUの接続方法に関して、上記電動モータ側の巻線からのバスバーをECU側のコネクタへ嵌合して挿入する方式を採用している。
【0009】
しかし、上記特許文献1に記載された発明では、上記嵌合に当たり、上記電動モータ側の導電板と基板側導電板とを正確に嵌合させるための機構が設けられておらず、上記導電板が相互に衝突して上記嵌合ができなくなる恐れがある。また、上記電動モータからの巻線の配線は1系統であり、冗長系を考慮して、多系統の配線の接続を考慮したものとはなっていない他、上記電動モータのモータ角度検出器の接続を考慮して構成されておらず、当然ながら、上記モータ角度検出器を多系統設けることも考慮されていない。
【0010】
したがって上記特許文献1に開示された技術では、上記嵌合による接続に障害が生ずる可能性があり、冗長系を構成する多系統の配線の接続を簡易かつ確実に行うことが困難であるという課題があった。
【0011】
また、上記特許文献2に開示された技術は、上記特許文献1と同様に、電動モータへの組み付け及び上記電動モータからの取り外しが容易な電動モータの制御装置を提供すること等を目的とするものであり、上記電動モータ端子とECUの接続方法に関して、上記電動モータ側の巻線からのバスバーをECU側へ接続する方式を採用している。
【0012】
しかし、上記特許文献2に記載された発明では、上記特許文献1に記載されたものと同様に、冗長系を考慮して、他系統の配線の接続を考慮したものとはなっていない。また、上記特許文献2に記載された発明では、上記電動モータからの巻線の接続に上記電動モータの軸方向から配線を行った上で、ネジを螺入することにより各モータ側モータ巻線用端子と各回路側モータ巻線用端子とを接続する構成を採用するため、モータの側面に上記制御装置を組付けることができず、端子ごとにネジによる接続作業も必要となることから、上記電動モータの巻線系統の増加に対応した組付けの簡便化が図れないという課題があった。
【0013】
そこで本発明は上記課題を解決することを目的としたものであり、電動モータとその制御装置とを組み付け乃至接続するに当たり、上記電動モータと上記制御装置に備えられる基板の接続を直接行うと共に、冗長系の採用による配線の増加に対応して、組み付け乃至接続の信頼性を十分に確保しつつ、上記組み付け乃至接続、又は、取り外し作業の利便性を向上させると共に、上記組み付け等に要するボルトなどの部品点数の削減(端子台レス、ボルトレス等)と環境保護(半田フリー)をも配慮して、上記制御装置の小型化を図ることも可能な、電動モータとその制御装置に収納される基板との接続構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明は、電動モータとその制御装置に収納される基板との接続構造であって、前記電動モータの側面からは前記電動モータに給電するための複数の給電端子が前記側面から突出するように設けられ、前記制御装置に収納される基板には、前記電動モータの複数の給電端子に係合するコネクタが設けられていて、前記電動モータの複数の給電端子の前記電動モータの側面から突出した部分は、平面状に形成された金属の端子体からなり、前記複数の給電端子は、前記端子体を構成する平面が略同一の面を構成するように平行に配列されており、前記端子体の前記電動モータの側面とは反対側の端部寄りには、
前記電動モータの側面から離間して、前記端子体を等間隔に保持する保持体が設けられ、前記端子体の前記保持体から前記端部側は前記基板のコネクタに嵌合する嵌合部となり、前記端子体の前記保持体から前記電動モータの側面側は前記コネクタとの接続に当たり応力を吸収する応力緩和形状を有する延伸部となっており、前記保持体と前記コネクタには相互に係合する位置決め機構が設けられ、前記制御装置を前記電動モータに組み付けることにより、前記電動モータの給電端子とその制御装置に収納される基板のコネクタとが接続されることを特徴とする電動モータとその制御装置に収納される基板との接続構造を提供する。
【0015】
また、上記課題の解決は、前記電動モータには、モータ角度検出器が備えられており、前記モータ角度検出器に接続する複数のモータ角度検出器端子は前記電動モータの前記側面から突出するように設けられると共に、前記制御装置に収納される基板には前記モータ角度検出器端子に係合するモータ角度検出器端子コネクタが設けられ、前記モータ角度検出器端子コネクタは、前記電動モータの給電端子に係合するコネクタ部分からは前記基板上の前記電動モータのモータ軸に沿って離間した位置に設けられ、前記制御装置を前記電動モータに組み付けることにより、前記モータ角度検出器に接続する複数のモータ角度検出器端子と前記モータ角度検出器端子に係合するモータ角度検出器端子コネクタとが接続されることにより、或いは、前記電動モータの給電端子は、前記電動モータの冗長系を構成する複数の巻線の端子であることにより、或いは、前記モータ角度検出器端子は、前記電動モータのモータ角度検出器の冗長系を構成する配線の端子であることにより、或いは、前記位置決め機構は、位置決めピンと位置決め孔とからなり、前記位置決めピンは前記保持体の両端部寄りに前記端子体の嵌合部と平行に立設され、前記位置決め孔は、前記コネクタの前記保持体上の前記位置決めピンと対向する位置に、前記コネクタの内側に向かって設けられた穴であることにより、或いは、前記電動モータは電動パワーステアリング装置に用いられるブラシレスモータであり、前記制御装置は、前記電動パワーステアリング装置の制御装置であって、前記基板は、前記制御装置に収納される制御基板とパワー基板とを一体化した1枚構成の基板であることにより、或いは、前記ブラシレスモータはU、V、W相からなる3相ブラシレスモータであり、前記電動モータの冗長系を構成する複数の巻線は、前記3相の各相をそれぞれ構成する2系統の巻線であることにより、更に効果的に達成される。
【0016】
また、上記課題の達成は、上記電動モータとその制御装置に収納される基板との接続構造を備える電動パワーステアリング装置により、更に効果的に達成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明による開示では、例えば、冗長系として、2系統のブラシレスモータ巻線と2系統のモータ角度検出器配線を、1枚構成としたECU基板上の上記電動モータの軸方向に沿った両端部寄りにそれぞれ配置したコネクタへ、モータ軸の法線方向から位置決めをしながら同時圧入して組み立てが可能である。また、上記電動モータとその制御装置に実装される基板との接続のための位置決め機構には位置決めピンと位置決め孔とを採用し、位置ズレにて発生する端子部の応力は、端子の延伸部を応力緩和形状とすることで、応力を逃がす構成とする事が可能である。
【0018】
そのため、本発明による開示によれば、電動モータとその制御装置とを組み付け乃至接続するに当たり、上記電動モータと上記制御装置に備えられる基板の接続を直接行うと共に、冗長系の採用による配線の増加に対応して、組み付け乃至接続の信頼性を十分に確保しつつ、上記組み付け乃至接続、又は、取り外し作業の利便性を向上させると共に、上記組み付け等に要するボルトなどの部品点数の削減(端子台レス、ボルトレス等)と環境保護(半田フリー)をも配慮して、上記制御装置の小型化を図ることも可能な、電動モータとその制御装置に収納される基板との接続構造を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態を、車両に搭載される電動パワーステアリング装置の電動モータとその制御装置に用いた場合を例として説明する。
【0021】
ここで、上記電動パワーステアリング装置は、車両のステアリング機構に電動モータの回転力で操舵補助力(アシスト力)を付与するものであり、モータの駆動力を減速機構を介してギア又はベルト等の伝達機構により、ステアリングシャフト或いはラック軸に操舵補助力を付与するようになっている。
【0022】
そして、このような電動パワーステアリング装置(EPS)は、操舵補助力のトルクを正確に発生させるため、モータ電流のフィードバック制御を行っている。
【0023】
かかるフィードバック制御は、操舵補助指令値(電流指令値)と電動モータ電流検出値との差が小さくなるように電動モータ印加電圧を調整するものであり、電動モータ印加電圧の調整は、一般的にPWM(パルス幅変調)制御のデューティ(Duty)の調整で行っている。
【0024】
上記の電動パワーステアリング装置の一般的な構成を
図1に示して説明すると、ハンドル1のコラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)2は減速機構3の減速ギア、ユニバーサルジョイント4a及び4b、ピニオンラック機構5、タイロッド6a,6bを経て、更にハブユニット7a,7bを介して操向車輪8L,8Rに連結されている。
【0025】
また、コラム軸2には、ハンドル1の操舵トルクを検出するトルクセンサ10及び操舵角θを検出する舵角センサ14が設けられており、ハンドル1の操舵力を補助するモータ200が減速機構3の減速ギア(ギア比n)を介してコラム軸2に連結されている。
【0026】
そして、上記の電動パワーステアリング装置を制御する制御装置300であるコントロールユニット(ECU)は、マイクロコントロールユニット(MCU)を基幹部品として構成され、バッテリ13から電力が供給されると共に、イグニションキー11を経てイグニションキー信号が入力される。
【0027】
このように構成される制御装置300では、トルクセンサ10で検出された操舵トルクThと車速センサ12で検出された車速Velとに基づいてアシスト(操舵補助)指令の電流指令値の演算を行い、電流指令値に補償等を施した電圧制御指令値Vrefによって電動モータ200に供給する電流を制御する。
【0028】
なお、舵角センサ14は必須のものではなく、配設されていなくても良く、電動モータに連結されたレゾルバ等の回転位置センサから操舵角を取得することも可能である。
【0029】
また、上記制御装置300には、車両の各種情報を授受するCAN(Controller Area Network)50が接続されており、車速VelはCAN50から受信することも可能である。
【0030】
また、制御装置300には、CAN50以外の通信、アナログ/ディジタル信号、電波等を授受する非CAN51も接続されている。
【0031】
そして、上記のような制御装置300の上記MCU内部においてプログラムで実行される一般的な機能を示すと、例えば
図2に示されるような構成となっている。
【0032】
図2を参照して制御装置300のコントロールユニットの機能及び動作を説明すると、トルクセンサ10からの操舵トルクTh及び車速センサ12からの車速Velは電流指令値演算部31に入力され、当該電流指令値演算部31は操舵トルクTh及び車速Velに基づいてアシストマップ等を用いて電流指令値Iref1を演算する。演算された電流指令値Iref1は加算部32Aで、特性を改善するための補償部34からの補償信号CMと加算され、加算された電流指令値Iref2が電流制限部33で最大値を制限され、最大値を制限された電流指令値Irefmが減算部32Bに入力され、モータ電流検出値Imと減算される。
【0033】
減算部32Bでの減算結果I(=Irefm−Im)はPI制御部35でPI(比例積分)制御され、PI制御された電圧制御値Vrefが変調信号(キャリア)CFと共にPWM制御部36に入力されてデューティを演算され、デューティを演算されたPWM信号でインバータ37を介してモータ200をPWM駆動する。モータ200のモータ電流値Imはモータ電流検出手段38で検出され、減算部32Bに入力されてフィードバックされる。
【0034】
補償部34は、検出若しくは推定されたセルフアライニングトルク(SAT)を加算部344で慣性補償値342と加算し、その加算結果に更に加算部345で収れん性制御値341を加算し、その加算結果を補償信号CMとして加算部32Aに入力し、特性改善する。
【0035】
また、上記モータ200が3相ブラシレスモータの場合、PWM制御部36及びインバータ37の詳細は、例えば
図3に示すような構成となっており、上記PWM制御部36は、電圧制御値Vrefを所定式に従って3相分のPWMデューティ値D1〜D6を演算するデューティ演算部36Aと、PWMデューティ値D1〜D6で駆動素子としてのFETのゲートを駆動すると共に、デッドタイムの補償をしてON/OFFするゲート駆動部36Bとで構成されている。デューティ演算部36Aには変調信号(キャリア)CFが入力されており、デューティ演算部36Aは変調信号CFに同期してPWMデューティ値D1〜D6を演算する。
【0036】
また、インバータ37は、U相の上段FET1及び下段FET4で成る上下アームと、V相の上段FET2及び下段FET5で成る上下アームと、W相の上段FET3及び下段FET6で成る上下アームとで成る3相ブリッジで構成されており、上記各FETがPWMデューティ値D1〜D6でON/OFFされることによってモータ200を駆動する。
【0037】
なお、インバータ37とモータ200との間には、アシスト制御停止時等に電流の供給を遮断するためのモータ開放スイッチ23が介挿されている。そして、上記モータ開放スイッチ23は、各相に介挿された寄生ダイオード付きのFET7〜9で構成されている。
【0038】
また、上記
図3に示したインバータ回路とモータ解放スイッチ回路は、例えば、
図4に示すように、冗長回路として形成することも可能である。ここで、上記
図4は、
図3に示したような電動パワーステアリング装置における3相ブラシレスモータに用いる上記インバータ回路37とモータ開放スイッチ23とを冗長化した例の回路図を示したものである。
【0039】
上記
図4に示した回路では、
図3に示した回路でU,V,Wの各相のそれぞれを構成していた上段FET及び下段FETで成る上下アームとこれに接続されるモータ開放スイッチ23との各相に対応するFETの組みが、冗長回路として、それぞれ2系統設けられている。そのため、例えば、
図3のU相を例にとって比較すると、ゲート駆動部36Bからの出力線が
図4ではU−HiとU−Loとして上記2系統の上下アームのそれぞれに接続されており、また、
図3のモータ200への出力線は、
図4では上記2系統の上下アームのそれぞれからU―1とU―2との2系統が設けられていて、同様の構成がV相、W相についても採用されている。なお、
図4中のシャント抵抗Shは、モータ電流検出手段38に接続されている。
【0040】
したがって、本発明の上記実施形態では、このように上記電動パワーステアリング装置の電源とプリドライバとを1系統にまとめた上で、上記のようにインバータのHブリッジ回路とモータ配線とを2系統として部分的な冗長系を構成している。そのため、通常時には上記2系統に電流を分散して上記電動モータの駆動を行うことが可能であり、一方、故障が発生した場合には、故障事象に応じて、上記2系統を構成する回路のうち故障が生じていない部分を適宜活用することによって、部分的に上記電動パワーステアリング装置のモータによるアシストを継続することが可能である。また、上記のように配線系統を2系統設けることによって、1系統におけるパワーデバイス(FET)の最大電流定格を50%程度削減できるため、上記パワーデバイスをより小型化することが可能である。
【0041】
そして、例えば、上記のように構成される電動パワーステアリング装置において、上記電動パワーステアリング装置に用いられる電動モータとその制御装置内に設けられる基板とは、本発明により、
図5に示すような接続構造を採用することが可能である。
【0042】
なお、以下の説明では、同一の構成要素については、他の形態を採り得るものについても同一の記号を用い、重複する説明や構成については、一部省略する場合がある。また、本発明の理解を容易にするために、図面中に記載した各構成要素の大きさ又はその比率や図面の縮尺等は、実際のものとは適宜変更して表現する場合が有る。
【0043】
上記
図5は、本発明による接続構造を含む電動モータとその制御装置に収納される基板等の構成要素について、一部を透視して示した斜視図である。
【0044】
本発明の接続構造は、上記
図5中では、電動モータ200と制御装置300の制御装置本体320に収納される基板340とに形成されるが、上記電動モータ200と制御装置300の全体構成は、上記
図5に示したようになっている。
【0045】
そして、上記
図5中、上記電動モータ200は、フランジ220と給電端子250及びモータ角度検出器端子290を含んでおり、また、上記制御装置300は、制御装置本体320と基板340と蓋体360とからなり、上記基板340に設けられる給電端子コネクタ350とモータ角度検出器端子コネクタ390及び制御コネクタ380を含んでいて、これらは、
図6に記載されたように組み合わせて一体化されるようになっている。なお、上記
図6は、
図5に示した各構成要素のうち制御装置300の蓋体360と制御コネクタ380を除いて組み合わせた例を示す斜視図である。
【0046】
次に、上記
図5に示した電動モータとその制御装置等の各構成要素について、更に説明する。
【0047】
上記構成要素中、電動モータ200は、上述したように3相ブラシレスモータであり、2系統の冗長系を含んでいる。そしてその形態は、概ね円筒形状であり、その中心軸上にある回転軸Cは、上記円筒形状の一方の端面に形成されたフランジ220から突出して、出力軸を形成している。
【0048】
上記フランジ220には、上記電動モータ200の円筒形状の側面から垂直方向に、上記電動モータ200に給電するための複数の給電端子250が前記側面から立設されるように設けられている。そして、上記複数の給電端子250は、上述したように、上記3相ブラシレス電動モータ200の冗長系を構成する2系統の巻線に接続されているため、ここでは6個の給電端子が設けられている。
【0049】
また、上記複数の給電端子250は、
図7に示すように、前記電動モータ200の側面から突出して形成される端子体250Sからなっている。そして、前記端子体250Sは、平面状に形成された長方形状の良導体からなる金属で構成されており、上記フランジ220の側面に形成された基底部250B上に、上記平面が略同一の平面を形成するように、上記平面の方向を揃えたようにして、一列に配列されている。
【0050】
なお、ここで上記
図7(A)は
図5に示す斜視図のうち、電動モータ200の給電端子250部分と制御装置300に収納される基板340の給電端子コネクタ350部分を拡大し、一部を透視して示した斜視図であり、上記給電端子コネクタ350は、
図6や後述する
図8でも示したように、上記制御装置本体320の筐体の内側に配置されるものであるところ、上記
図7(A)では、当該制御装置本体320の筐体の外装部分を省略して表示している、また、
図7(B)は上記給電端子250部分と給電端子コネクタ350部分とを取り出して示した、一部透視図を含む斜視図である。
【0051】
また、上記給電端子250を構成する端子体250Sの、前記電動モータ200の側面とは反対側、すなわち前記フランジ220の側面に形成された基底部250Bとは反対側の端部寄りには、前記端子体250Sを等間隔に保持する保持体270が設けられている。
【0052】
上記保持体270はポリフェノール樹脂等の絶縁性と耐熱性に優れた素材により形成されており、上記端子体250Sを一定間隔に安定して保持する機能を有する他、上記給電端子250を制御装置300に備えられる基板340に接続する際には、後述する基板340に設けられる給電端子コネクタ350と位置決め機構を介して当接される。
【0053】
また、上記端子体250Sは、上記保持体270の上側、すなわち上記保持体270から上記端子体250Sの端部側に向かう方向には、嵌合部250SCを形成している。上記嵌合部250SCは基板340側に構成される給電端子コネクタ350の嵌合孔部350Hに嵌合して圧入され機械的及び電気的に結合する部分である。そのため、上記嵌合が容易に行われるように、上記嵌合部250SCは上記端部側に向けて先細りになるようにテーパが設けられているが、これと併せて上記端部側に向けて上記端子体250Sの厚みを減少させて形成することも可能である。
【0054】
また、上記端子体250Sは、上記保持体270の下側、すなわち上記保持体270から前記電動モータ200の側面側、すなわち前記フランジ220の側面に形成された基底部250Bに向かう方向には延伸部250SEを形成している。
【0055】
上記延伸部250SEは、上記端子体250Sが、上記フランジ220の側面に形成された基底部250Bから上記基板340に設けられる給電端子コネクタ350に接続するために適度な長さを確保するために設けられた部分であり、また、上記接続の際に、上記給電端子コネクタ350との間に生ずる応力を緩和するための形状(応力緩和形状)を設けた部分である。
【0056】
そしてここで、上記応力緩和形状については、特に限定を設けるものではないが、機能的には、上記端子体250Sに多少の応力が掛かっても上記端子体250Sの嵌合部250Cの方向が維持され、位置ずれが生じた場合であっても上記端子体250Sに係る応力を逃がすものであれば良い。また、その形態は、例えば、上記
図7及び後述する
図8(A)に示したように、上記端子体250Sが立設する方向の途中において、上記延伸部250SEを側面視(ここでは上記端子体の平面部分を正面としてその側面側から見た方向)で略コの字状に屈曲させたり、或いは、例えば、
図8(B)に示したように、側面視でS字状に屈曲させたり、Z字状に屈折させたりしたものであっても構わない。なお、ここで、上記
図8(A)は、
図7(A)のX−X線から見た、給電端子250部分と給電端子コネクタ350部分の接合関係を示す一部透視図を含む断面図であり、
図8(B)は端子体250Sの延伸部250SEの応力緩和形状の例を示す側面図である。
【0057】
また、上記保持体270の両端部寄りには、位置決めピン270Pが設けられており、前記位置決めピン270Pは、上記保持体270から、上記端子体250Sの嵌合部250SCが上記保持体270から形成されている方向と平行に立設されている。
【0058】
そして、上記位置決めピン270Pは、後述するように、上記基板340に設けられる給電端子コネクタ350に形成される位置決め孔370Hと共に位置決め機構を構成している。
【0059】
そのため、上記位置決めピン270Pは、上記保持体270に底面を有する円筒形状に形成されており、その先端部は幾分先細りになるようにテーパが設けてあって、上記位置決め孔370H内部に上記位置決めピン270Pを挿入して嵌合させる際に、上記位置決め孔370Hの開口部と多少の位置ずれがあっても正しい位置に導いて、上記給電端子250と給電端子コネクタ350とが正確に嵌合して接続されるように形成されている。
【0060】
また、上記位置決めピン270Pは、上記給電端子250を基板340側の給電端子コネクタ350の正しい位置に導くものであるため、上記保持体270から上記端子体250Sに形成される嵌合部250SCの端部よりも、上記保持体270から上記位置決めピン270Pの先端までの距離が幾分長く形成されており、その長さは、少なくとも前記位置決めピン270Pの先端部分に形成されたテーパ部分の軸方向の長さ分よりも長いことが望ましい。
【0061】
そのため、以上のように構成することにより、上記電動モータ200の給電端子250と制御装置300に収納される基板340の接続を行う際には、上記電動モータ200側の上記位置決めピン270Pが、上記基板340の給電端子コネクタ350の位置決め孔の370Hの所定位置に嵌合して、圧入されることによって、上記端子体250Sに形成される嵌合部250SCが、上記基板340の給電端子コネクタ350の嵌合孔部350Hの奥へ誘導されるようになっている。
【0062】
また、上記
図5に戻って説明を続けると、上記電動モータ200の側面には、更にモータ角度検出器端子290が設けられている。上記モータ角度検出器端子290は、上記電動モータ200に設けられるレゾルバやホール素子などの磁気センサ等を用いたモータ角度検出器の回線が接続された端子であり、ここでは上記モータ角度検出器は冗長系を含むものであるため、これら冗長系を含む
複数の配線が接続されている。また、本実施形態では、上記モータ角度検出器端子290は、上記電動モータ200を構成する略円筒形の端面のうち、上記電動モータ200の出力軸Cが突出するフランジ220とは反対側の端面側に、上記電動モータ200の側面に取付けられる後述する制御装置に対向するように設けられており、後述する基板340に設けられたモータ角度検出器端子コネクタ390と嵌合するように形成されている。
【0063】
次に上記構成要素中、制御装置300は、上述したように、制御装置本体320と基板340と蓋体360からなり、上記基板340に設けられる給電端子コネクタ350とモータ角度検出器端子コネクタ370及び制御コネクタ380を含んでいる。
【0064】
上記のうち、制御装置本体320は、制御装置300に用いられる基板340や制御コネクタ380等を収納・保持して、上記電動モータ200に安定的に保持するものであり、図示しないヒートシンクにより放熱機能も有している。また、上記のうち制御コネクタ380は、上記基板340やこれを介して電動モータ200に電源を供給したり、CANなどの制御系の信号の入出力を行ったりするコネクタである。
【0065】
そして、上記制御装置本体320に基板340をネジなどにより固定して収納し、上記制御コネクタ380や給電端子コネクタ350並びにモータ角度検出器端子コネクタ370を同様にネジなどにより接続固定した後には、蓋体360により、上記基板340を含む上記制御装置本体320の上面側を覆うようにカシメ固定して保護するように構成されている。
【0066】
また、上記制御装置本体320の上記電動モータ200への取付けは、上記制御装置本体320の下面側(電動モータ側)に設けられたボルト穴322を使用して、ボルト・ナットにより行われる。なお、上記電動モータ200のフランジ220に設けられた、ボルト穴222は、上記制御装置本体320との取り付けの他に、上述の減速機構3等とボルト・ナットによる接続・取り付けのためにも用いられる。
【0067】
また、上記制御装置300に収納される基板340は、上述したように、電動パワーステアリング装置の制御及び駆動を行うものであり、ここでは略長方形状の形態を有している。そして、従来、上記電動パワーステアリング装置に用いられる基板は、もっぱら制御系の信号処理を行う制御基板と、上記電動モータを駆動するためのインバータ回路等が形成されたパワー基板とを別々に構成する例が多いが、本実施形態の場合には、上記制御基板とパワー基板とを一体化した一枚化基板を用いている。但し、本発明は、電動モータとその制御装置に収納される基板との接続構造であるため、上記一枚化基板に限らず、従来の2枚構成の基板を制御装置に収納する場合であっても、本発明を用いることは当然に可能である。
【0068】
また、上記基板340では、上記基板340の下面側(電動モータ側)に、給電端子コネクタ350とモータ角度検出器端子コネクタ390が設けられていて、本実施形態では、上記給電端子コネクタ350は、上記基板340上の一辺に沿って設けられ、上記モータ角度検出器端子コネクタ390は、その対辺に沿ってそれぞれ設けられている。
【0069】
上記給電端子コネクタ350は、上記電動モータ200の給電端子250と上記基板340に形成された回路を電気的・機械的に接続するものである。そのため、上述した
図7に示したように、上記給電端子コネクタ350は、上記基板340を制御装置本体310に収納固定して、上記電動モータ200に組み付けた際には、上記電動モータ200に設けられた複数の給電端子250に対向するように設けられている。
【0070】
そして、上記給電端子コネクタ350には、上記給電端子250の端子体250Sの嵌合部250SCに嵌合するように、上記嵌合部250SCをはめ込むための孔である嵌合孔部350Hが設けられており、上記嵌合孔部350Hは、上記給電端子コネクタ350の上記給電端子2
50に対向する面から基板340方向に向かって設けられる孔として形成されている。そして、上記給電端子コネクタ350は全体としては熱伝導性のある不導体により構成されているが、上記嵌合孔部350Hの内面は導体によって形成されており、上記導体へは図示しない導線が接続されて、上記基板340に形成された回路へ接続されている。
【0071】
また、上記給電端子コネクタ350の両端部寄りには、位置決め孔370Hが設けられている。上記位置決め孔370Hは、上記給電端子コネクタ350の、上記電動モータ200側の給電端子2
50に対向する面から、基板340方向に向かって設けられる孔として形成されており、上記位置決め孔370Hは、上述した給電端子250の保持体270に形成された位置決めピン270Pと共に位置決め機構を構成している。
【0072】
そのため、上記位置決め孔370Hは、上記保持体270から立設される円筒形状の位置決めピン270Pをはめ込むことが可能なように、円筒形状の孔部を有している。
【0073】
また、上記円筒形状の孔部の開口部分は上記円筒形状の孔の内径よりも開口部分にかけて拡大して形成することも可能である。そのため、上記のように開口部を拡大した場合には、上記拡大した開口部を用いて、上記位置決め孔370H内部に上記位置決めピン270Pを挿入して嵌合させる際に、上記位置決め孔370Hの開口部と多少の位置ずれがあっても正しい位置に導いて、上記給電端子250と給電端子コネクタ350とが正確に嵌合して接続されるように形成することも可能である。
【0074】
また、上記モータ角度検出器端子コネクタ390は、上記電動モータに設けられる上記モータ角度検出器端子290と基板上に形成された回路とを電気的・機械的に接続するためのものである。そして、ここでは上述した通り、上記モータ角度検出器は冗長系を含むものであるため、これら冗長系を含む複数の端子に対応したものとなっている。また、本実施形態では、上記モータ角度検出器端子コネクタ390は、上記電動モータ200に設けられたモータ角度検出器端子の位置に合わせて、上記基板340上の給電端子コネクタ350が設けられた基板の位置から対辺の位置、すなわち、上記基板340上の給電端子コネクタ350が設けられた位置から、上記電動モータ200の回転軸Cに沿った方向の反対側の位置に、上記モータ角度検出器端子290に対向するように設けられる。
【0075】
また、上記モータ角度検出器端子コネクタ390の形状については特に限定を設けるものではないが、上記電動モータ200に上記制御装置300を取り付けることにより、電気的及び機械的接続が達成されるように、上記モータ角度検出器端子290に合わせて相互に嵌合するように形成されることが望ましい。そこで、上記モータ角度検出器端子290と共に、上述した給電端子250と給電端子コネクタ350と同様若しくは類似の、雄型の端子とこれに嵌合する雌型のコネクタとをそれぞれ形成し、両者の嵌合により接続を行うものであっても良い。
【0076】
以上のように構成される本発明の電動モータとその制御装置に収納される基板との接続構造によれば、上記電動モータ200に制御装置300を組み付けることにより、
図8に示した様に、上記電動モータ200のフランジ220に上記電動モータの側面に立設されるように構成した給電端子250の端子体250Sの嵌合部250SCが、保持体270に設けられた位置決めピン270Pと基板340に設けられた給電端子コネクタ350の位置決め孔370Hに誘導されて、嵌合孔部350Hに嵌合して圧入され、電気的及び機械的に接続される。そして、これに併せて、上述したように、モータ角度検出器端子290と、モータ角度検出器端子コネクタ390との接続も達成される。
【0077】
そのため、本発明によれば、電動モータとその制御装置とを組み付け乃至接続するに当たり、上記電動モータと上記制御装置に備えられる基板の接続を直接行うと共に、冗長系の採用による配線の増加に対応して、組み付け乃至接続の信頼性を十分に確保しつつ、上記組み付け乃至接続、又は、取り外し作業の利便性を向上させると共に、上記組み付け等に要するボルトなどの部品点数の削減(端子台レス、ボルトレス等)と環境保護(半田フリー)をも配慮し、上記制御装置の小型化を図ることも可能な、電動モータとその制御装置に収納される基板との接続構造を提供することが可能である。
【0078】
なお、上述した本発明の実施形態は、本発明の一例を示したものであり、本発明の趣旨の範囲で種々の変形例を採用することが可能である。そのため、例えば、上述の冗長系は電動モータやモータ角度検出器等について、2系統のものに限らず更に多系統のものに適用することも可能である。また、上述した位置決め機構も位置決めピンと位置決め孔を設けることに限られず、例えば、上記位置決めピンを制御装置本体に設けた位置決め溝などに沿って移動させて、上記給電端子を給電端子コネクタに嵌め込むガイドを行う構成を採るものであっても構わない。