特許第6583067号(P6583067)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6583067貼合する用途に用いられる塗工紙、およびそれを含む段ボールシート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6583067
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】貼合する用途に用いられる塗工紙、およびそれを含む段ボールシート
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/12 20060101AFI20190919BHJP
   D21H 27/40 20060101ALI20190919BHJP
   B32B 3/28 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   D21H19/12
   D21H27/40
   B32B3/28 B
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-48377(P2016-48377)
(22)【出願日】2016年3月11日
(65)【公開番号】特開2017-160576(P2017-160576A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 寛
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 昇平
(72)【発明者】
【氏名】蟹 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】山脇 敏史
【審査官】 堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−107308(JP,A)
【文献】 特開昭51−135934(JP,A)
【文献】 特開2014−012908(JP,A)
【文献】 特開2010−043369(JP,A)
【文献】 特開2009−235614(JP,A)
【文献】 特開昭63−101470(JP,A)
【文献】 特開平03−162471(JP,A)
【文献】 特開昭53−041510(JP,A)
【文献】 特開昭58−065097(JP,A)
【文献】 藤本武彦,新・界面活性剤入門,三洋化成工業株式会社,1981年10月,100〜106、159、160頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00−D21J7/00
B32B3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙とその少なくとも一方の面に塗工された紙力剤とを含む、貼合する用途に用いられる塗工紙であって、前記紙力剤は、
(A)デンプン、変性デンプン、カゼイン、セルロース、ポリビニルアルコール、およびポリアクリルアミドからなる群より選択される少なくとも1種の水溶性高分子と、
(B)下記一般式(1)で表される化合物(I)および下記一般式(3)で表される化合物(II)のうちの1種または2種以上を含む浸透剤
一般式 (R1t−X−[(C24O)m/(AO)n]−H (1)
(式中、R1は水素原子、メチル基、エチル基または炭素数3〜12の分岐アルキル基;tは1〜5までの整数;Xはフェノール残基;mは4〜20の平均付加モル数;Aはプロピレン基、ブチレン基またはフェニルエチレン基;nは0〜4の平均付加モル数を示す。[]内の付加形式はランダム状またはブロック状である。)
一般式 (R5t−X−[(C24O)p/(AO)q]−(AO)r−H (3)(式中、R5は水素原子、メチル基、エチル基または炭素数3〜12の直鎖または分岐アルキル基;tは1〜5までの整数;Xはフェノール残基;pは4〜20の平均付加モル数;Aはプロピレン基、ブチレン基またはフェニルエチレン基;qは0〜3.9の平均付加モル数;rは0.1〜4の平均付加モル数;[]内は付加形式がランダム状またはブロック状であることを示す。)と、
を含み、
前記化合物(I)のR1または前記化合物(II)のR5が下記一般式(2)
【化1】
(式中、R2はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基;R3は炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基;R4は炭素数1または2のアルキレン基示す。)
で表される分岐アルキル基である、塗工紙。
【請求項2】
前記水溶性高分子の全固形分を100質量%としたとき、デンプンおよび変性デンプンの全固形分の合計が50質量%を超える請求項1に記載の塗工紙。
【請求項3】
前記水溶性高分子が前記面に片面あたり0.25〜3.0g/m2の量で塗工された請求項1または2に記載の塗工紙。
【請求項4】
前記浸透剤が前記面に片面あたり0.005〜0.2g/m2の量で塗工された請求項1からのいずれか一項に記載の塗工紙。
【請求項5】
抄紙流れ方向に50mm、抄紙流れ方向と直行する方向に75mmに裁断した試験片を、温度23℃の蒸留水に浸漬させ、超音波周波数2MHzにてライナーの表面の信号強度を測定したときに、浸漬開始時から信号強度が最大値を示す時までの時間をピーク出現時間としたとき、ピーク出現時間が50ミリ秒以下である請求項1からのいずれか一項に記載の塗工紙。
【請求項6】
互いに貼合された中芯とライナーと含む段ボールシートであって、前記中芯および前記ライナーのうちの少なくとも一方が請求項1からのいずれか一項に記載の塗工紙であり、前記中芯と前記ライナーとは前記面が貼合面となるように貼合されている、段ボールシート。
【請求項7】
前記中芯が請求項1からのいずれか一項に記載の塗工紙である、請求項に記載の段ボールシート。
【請求項8】
前記ライナーが請求項1からのいずれか一項に記載の塗工紙であり、前記紙力剤は前記ライナーの一方の面のみに塗工されている、請求項またはに記載の段ボールシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼合する用途に用いられる塗工紙に関し、特に、例えばライナーや中芯などの段ボール原紙のような、貼合する用途に用いられる塗工紙、およびかかる塗工紙を含む段ボールシートに関する。
【背景技術】
【0002】
紙の中でも紙厚の厚いものを一般に板紙といい、板紙は、一般に、段ボール原紙、紙器用板紙、および雑板紙の3種類に大別される。また、そのうち段ボール原紙は、一般に、ライナーと中芯とに大別される。ライナーおよび中芯は、最初はそれぞれロール状に巻かれたロール紙の形態をとっており、コルゲータにかけられて、中芯は波状に成形されおよびライナーはその片面または両面に貼合糊で貼り合わされることによって、段ボールシートに加工される。段ボールシートから、段ボール箱が形成される。
【0003】
近年、物流コストの削減等の目的のために、段ボール箱、延いてはそれに用いられるライナーおよび中芯用の紙(段ボール原紙)の軽量化が進んでいる。軽量化にあたって、紙厚の薄い紙あるいは坪量の低い紙が使用されるようになっており、これに伴い、紙の強度は低下する傾向にあり、段ボール箱に形成したときに強度の点で物の輸送に適さなくなってしまう場合がある。強度低下への対策の1つとして、紙力を付与するために、デンプンなどの水溶性高分子を紙力剤として紙の表面に塗工する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−204186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、紙力を増強するために紙力剤の塗工量を増やすと、紙の表面に形成される紙力剤の皮膜が厚くなる。近年、板紙製造の高速化が進み、コルゲータの貼合速度も高速化している。紙の表面に紙力剤の厚い皮膜がある状態において、コルゲータの速度が速いと、得られる段ボールシートにおいて中芯とライナーとは接着性が低くて剥がれやすく、貼合適性に劣るという課題がある。
【0006】
本発明は、充分な紙力を有しつつ高速での貼合適性に優れた、貼合する用途に用いられる塗工紙、およびそれを含む段ボールシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の貼合する用途に用いられる塗工紙、およびそれを含む段ボールシートは、以下の態様を有する。
【0008】
[1] 原紙とその少なくとも一方の面に塗工された紙力剤とを含む、貼合する用途に用いられる塗工紙であって、前記紙力剤は、
(A)デンプン、変性デンプン、カゼイン、セルロース、ポリビニルアルコール、およびポリアクリルアミドからなる群より選択される少なくとも1種の水溶性高分子と、
(B)下記一般式(1)で表される化合物(I)および下記一般式(3)で表される化合物(II)のうちの1種または2種以上を含む浸透剤
一般式 (R1t−X−[(C24O)m/(AO)n]−H (1)
【0009】
(式中、R1は水素原子、メチル基、エチル基または炭素数3〜12の分岐アルキル基;tは1〜5までの整数;Xはフェノール残基;mは4〜20の平均付加モル数;Aはプロピレン基、ブチレン基またはフェニルエチレン基;nは0〜4の平均付加モル数を示す。[]内の付加形式はランダム状またはブロック状である。)
一般式 (R5t−X−[(C24O)p/(AO)q]−(AO)r−H (3)
【0010】
(式中、R5は水素原子、メチル基、エチル基または炭素数3〜12の直鎖または分岐アルキル基;tは1〜5までの整数;Xはフェノール残基;pは4〜20の平均付加モル数;Aはプロピレン基、ブチレン基またはフェニルエチレン基;qは0〜3.9の平均付加モル数;rは0.1〜4の平均付加モル数;[]内は付加形式がランダム状またはブロック状であることを示す。)と、
を含む塗工紙。
【0011】
[2] 前記化合物(I)のR1または前記化合物(II)のR5が下記一般式(2)
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、R2はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基;R3は炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基;R4は炭素数1または2のアルキレン基示す。)
で表される分岐アルキル基である、[1]に記載の塗工紙。
【0014】
[3] 前記水溶性高分子の全固形分を100質量%としたとき、デンプンおよび変性デンプンの全固形分の合計が50質量%を超える、[1]または[2]に記載の塗工紙。
【0015】
[4] 前記水溶性高分子が前記面に片面あたり0.25〜3.0g/m2の量で塗工された、[1]から[3]のいずれか1つに記載の塗工紙。
【0016】
[5] 前記浸透剤が前記面に片面あたり0.005〜0.2g/m2の量で塗工された、[1]から[4]のいずれか1つに記載の塗工紙。
【0017】
[6] 抄紙流れ方向に50mm、抄紙流れ方向と直行する方向に75mmに裁断した試験片を、温度23℃の蒸留水に浸漬させ、超音波周波数2MHzにてライナーの表面の信号強度を測定したときに、浸漬開始時から信号強度が最大値を示す時までの時間をピーク出現時間としたとき、ピーク出現時間が50ミリ秒以下である[1]から[5]のいずれか1つに記載の塗工紙。
【0018】
[7] 互いに貼合された中芯とライナーと含む段ボールシートであって、前記中芯および前記ライナーのうちの少なくとも一方が[1]から[5]のいずれか1つに記載の塗工紙であり、前記中芯と前記ライナーとは前記面が貼合面となるように貼合されている、段ボールシート。
【0019】
[8] 前記中芯が[1]から[6]のいずれか1つに記載の塗工紙である、[7]に記載の段ボールシート。
【0020】
[9] 前記ライナーが[1]から[6]のいずれか1つに記載の塗工紙であり、前記紙力剤は前記ライナーの一方の面のみに塗工されている、[7]または[8]に記載の段ボールシート。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、貼合する用途に用いられる塗工紙において、目標とする紙力を得るために多量の紙力剤が塗工されている場合であっても、貼合のために表面に付与される貼合糊は紙中へ容易に浸透することができる。そのため、充分な紙力を有しつつ貼合適性に優れた、貼合する用途に用いられる塗工紙、およびそれを含む段ボールシートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態は例示目的であり、本発明はこれに限定されない。
【0023】
(塗工紙)
本発明の塗工紙は、基紙とその少なくとも一方の面に塗工された紙力剤とを含む。本発明の塗工紙は、例えば、段ボール原紙、紙器用原紙、紙管原紙などのような、貼合される用途に用いられることができ、特に、段ボールシートを構成するライナーおよび中芯などの段ボール原紙として好ましく使用される。
【0024】
(基紙)
本発明の塗工紙の基紙は、公知の原料を用いて公知の抄紙方法および公知の抄紙機により製造することができる。例えば、抄紙原料(紙料)をワイヤーパートにてウェブ状に堆積させ、次いでプレスパート、プレドライヤーパートを経て水分を乾燥させて、基紙を製造することができる。本発明に用いる基紙は、一層構成の単層抄きであっても多層構成の多層抄き(積層紙)であってもよい。例えば、本発明の塗工紙が段ボールシート用の紙(段ボール原紙)として用いられる場合、塗工紙の基紙は、古紙パルプを含む紙料から製造された多層抄きの紙であることが好ましい。
【0025】
(原料パルプ)
本発明の塗工紙の基紙に用いることのできるパルプ原料としては、例えば、砕木パルプ(GP)、リファイナー砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)、クラフトパルプ(KP)のような機械パルプや化学パルプ、新聞古紙のような印刷された古紙を離解して脱墨した脱墨パルプ(DIP)、および段ボール古紙や製本損紙などを離解した古紙パルプなど、一般に製紙原料として用いられるパルプを、1種でまたは複数種を組み合わせて適宜使用することができる。本発明の塗工紙が、段ボール原紙として用いられる場合は、基紙のパルプ原料としては、古紙パルプを多く配合することができる。
【0026】
(添加剤)
本発明の塗工紙の基紙は、公知の製紙用添加剤が、内添されていてもよい。すなわち、基紙は、製紙用添加剤が添加された紙料から抄造されていてもよい。内添される製紙用添加剤として、例えば、歩留剤、濾水性向上剤、凝結剤、硫酸バンド、ベントナイト、シリカ、サイズ剤、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、嵩高剤、填料、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、紫外線防止剤、退色防止剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤などの製紙用薬品を用いることができる。例えば、ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、カチオン性澱粉、各種変性澱粉、尿素・ホルマリン樹脂、メラミン・ホルマリン樹脂などの乾燥紙力剤;ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂などの湿潤紙力剤;ロジン系サイズ剤、AKD系サイズ剤、ASA系サイズ剤、石油系サイズ剤、中性ロジンサイズ剤などのサイズ剤;などを好適に内添することができる。
填料、消泡剤、pH調整剤などの一般に抄紙に使用される助剤を含んでいてもよい。
【0027】
例えば、基紙に内添されていてもよい紙力剤としては、市場から容易に入手できる市販品を用いてもよく、例えば変性デンプン(商品名:ピラーP4、PIRAAB STARCH Co.,Ltd.)、ポリアクリルアミド系の乾燥紙力剤(商品名:ポリストロン1222、荒川化学工業株式会社製)、乾燥紙力剤(商品名:DS4681、星光PMC株式会社製)、および乾燥紙力剤(商品名:ポリテンション1001、荒川化学工業株式会社製)などのような通常の紙に使用される紙力剤が使用できる。
【0028】
(基紙の米坪)
本発明の基紙の米坪、紙厚、密度は、特に限定されず、用途に応じて適宜選定できる。例えば、本発明の塗工紙が段ボールシートの中芯用の紙として使用される場合は、塗工紙の基紙の米坪としては、例示目的で非限定的に、90〜220g/m2が好ましく用いられ、90〜160g/m2がより好ましく用いられる。また、例えば、本発明の塗工紙が段ボールシートのライナー用の紙として使用される場合は、塗工紙の基紙の米坪は、例示目的で非限定的に、90〜400g/m2が好ましく用いられ、90〜320g/m2がより好ましく用いられる。
【0029】
(紙力剤)
本発明の塗工紙は、基紙の少なくとも一方の面に塗工された紙力剤を含む。紙力剤は、基紙の両方の面に塗工されていてもよい。本発明の紙力剤は、水溶性高分子と浸透剤とを含んで構成される。
【0030】
(水溶性高分子)
本発明に適用可能な水溶性高分子の例としては、例えば、デンプン、変性デンプン、カゼイン、セルロース、ポリビニルアルコール、およびポリアクリルアミドが挙げられる。
【0031】
デンプンとしては、コーンスターチ、小麦デンプン、かんしょデンプン、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプンおよび米でんぷん等が挙げられる。
【0032】
変性デンプンとしては、酸化デンプン、エステル化デンプン、エーテル化デンプン、架橋化デンプンおよびカチオン化デンプン等が挙げられる。
【0033】
カゼインとしてはミルクカゼイン等が挙げられる。
【0034】
セルロースとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース(塩)等が挙げられる。
【0035】
ポリビニルアルコールとしては、完全ケン化ポリビニルアルコール(けん化価98〜99;JIS K0070−1992に準拠して測定される。)、部分ケン化ポリビニルアルコール(けん化価87〜89)、ポリビニルアルコールをカルボン酸やカルボン酸ハライドによりエステル化した変性ポリビニルアルコール、ならびに公知のエーテル化ポリビニルアルコールおよびアセタール化ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0036】
ポリアクリルアミドは、アクリルアミドとカチオン性ビニルモノマーおよびアニオン性ビニルモノマー、必要に応じ架橋性モノマーを適宜比率を変え、共重合したもの等が挙げられる。
【0037】
水溶性高分子には市場から容易に入手できる市販品を用いてもよく、例えば以下のような通常の塗工紙に使用される水溶性高分子が使用できる。デンプン(商品名:コーンスターチ、王子コーンスターチ株式会社製)、変性デンプン(商品名:ピラーP4、PRIRAAB STARCH Co.,Ltd.製)、ポリビニルアルコール(商品名:デンカポバール、電気化学工業株式会社製)、ポリアクリルアミド系の紙力剤(商品名:ポリストロン1222、荒川化学工業社製)。
【0038】
(浸透剤)
本発明に適用可能な浸透剤としては、下記一般式(1)で表される化合物(I)および下記一般式(3)で表される化合物(II)のうちの1種または2種以上の化合物からなる浸透剤が挙げられる。
(R1t−X−[(C24O)m/(AO)n]−H (1)
【0039】
(式中、R1は水素原子、メチル基、エチル基または炭素数3〜12の分岐アルキル基;tは1〜5までの整数;Xはフェノール残基;mは4〜20の平均付加モル数;Aはプロピレン基、ブチレン基またはフェニルエチレン基;nは0〜4の平均付加モル数を示す。[]内の付加形式はランダム状またはブロック状である。)
(R5t−X−[(C24O)p/(AO)q]−(AO)r−H (3)
【0040】
(式中、R5は水素原子、メチル基、エチル基または炭素数3〜12の直鎖または分岐アルキル基;tは1〜5までの整数;Xはフェノール残基;pは4〜20の平均付加モル数;Aはプロピレン基、ブチレン基またはフェニルエチレン基;qは0〜3.9の平均付加モル数;rは0.1〜4の平均付加モル数;[]内は付加形式がランダム状またはブロック状であることを示す。)
【0041】
ここで、化合物(I)のR1および化合物(II)のR5は、下記一般式(2)で示される分岐アルキル基であることが好ましい。
【0042】
【化2】
【0043】
(式中、R2はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基;R3は炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基;R4は炭素数1または2のアルキレン基示す。)
分岐アルキル基の具体例としては、イソプロピル、イソブチル、イソヘキシル、イソヘプチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル;イソブチレンのダイマーから合成される分岐アルキル;イソノニル、イソデシル;プロピレンのトリマーから合成される分岐アルキル;イソデシル、イソウンデシル、イソドデシル、プロピレンのテトラマーから合成される分岐アルキル;オキソ法によって合成される炭素数6〜12の分岐アルキル基等が挙げられる。特に好ましいのは、2−エチルヘキシル;イソブチレンのダイマーから合成される分岐アルキル;プロピレンのトリマーから合成される分岐アルキル;イソデシル基である。
【0044】
化合物(I)は、フェノールまたはアルキル基で置換したフェノールに平均4〜20モルのエチレンオキサイド、平均0〜4モルのプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドおよびスチレンオキサイドのうちの1種または2種以上を付加したものであり、その付加形式はブロック状でもよいしランダム状でもよい。ただし、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドまたはスチレンオキサイドを末端にブロック状に付加したものは除く。フェノールに置換するアルキル基の数は1〜5のいずれでもよいが、より好ましくは1または2であり、特に好ましくは1である。炭素数が12より大きいアルキル基が置換したフェノールにアルキレンオキサイドを付加したもの、エチレンオキサイドの平均付加モル数が4未満または20より大きいもの、並びにプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドまたはスチレンオキサイドの平均付加モル数の合計が4より大きいものは十分な効果を得ることができない。化合物(I)の内、その2%水溶液の曇点が40〜110℃であることが好ましく、さらに60〜100℃であることがより好ましい。本発明の化合物(I)の具体例としては次のものが挙げられる。
【0045】
(I−1)トリプロピレン−X−(EO)10−H
(I−2)2−エチルヘキシル−X−(EO)12−H
(I−3)2,4−ジメチルヘプチル−X−[(EO)9//(PO)2]−H
(I−4)ジ(イソブチル)−X−[(EO)10//(PO)1//(BO)0.5]−H
(I−5)イソデシル−X−(EO)4−(BO)1−(SO)1−(EO)5−H
(I−6)ジイソブチレン−X−(PO)1−(EO)8−H
【0046】
上式においてXはフェノール残基、EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、BOはブチレンオキサイド、SOはスチレンオキサイドを示し、()右横の添字は平均付加モル数を示し、//はランダム状に付加していることを示し、−はブロック状に付加していることを示す。
【0047】
化合物(II)においてアルキル基R5は直鎖でもよいし分岐でもよい。炭素数3〜12の直鎖のものとしてはn−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル基等が挙げられ、分岐のものとしては化合物(I)で分岐アルキル基R1 として挙げたものと同様のものである。
【0048】
化合物(II)は、フェノールまたはアルキル基で置換したフェノールに、平均4〜20モルのエチレンオキサイド、並びに平均0〜3.9モルのプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドおよびスチレンオキサイドのうちの1種または2種以上を(ブロック状またはランダム状に)付加したものの末端に、さらに平均0.1〜4モルのプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドまたはスチレンオキサイドを付加したものである。フェノールに置換するアルキル基の数は1〜5のいずれでもよいが、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。炭素数が12より大きいアルキル基が置換したフェノールにアルキレンオキサイドを付加したもの、エチレンオキサイドの平均付加モル数が4未満または20より大きいもの、並びにプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドまたはスチレンオキサイドの平均付加モル数の合計が4より大きいものは十分な向上効果を得ることができない。さらに、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドまたはスチレンオキサイドの末端部分の平均付加モル数の合計が0.1未満のものは、末端部分の平均付加モル数の合計が0.1〜4のものに比べて抑泡効果が劣る。化合物(II)の内、その2%水溶液の曇点が40〜110℃であることが好ましく、さらに60〜100℃であることがより好ましい。本発明の化合物(II)の具体例としては次のものが挙げられる。
【0049】
(II−1)イソオクチル−X−(EO)8−(PO)0.5−H
(II−2)トリプロピレン−X−(EO)11−(SO)1.5−H
(II−3)n−オクチル−X−(EO)10−(PO)1−H
(II−4)ジイソブチレン−X−(EO)12−(PO)0.5−(BO)1.5−H
(II−5)イソノニル−X−[(EO)5//(PO)0.3//(SO)1]−(PO)0.2(BO)0.2−H
(II−6)2,4−ジメチルヘプチル−X−[(EO)6//(BO)0.5]−(PO)1−H
(II−7)2−エチルヘキシル−X−(EO)4−(PO)1.5−(EO)5.5−(BO)0.5−H
(II−8)ジ(イソブチル)−X−(BO)1−(EO)12−(BO)1−H
(II−9)n−デシル−X−(PO)0.5−(EO)10−(PO)0.5−(SO)0.5−H
【0050】
上式において、化合物(I)の場合と同様にXはアルキル置換フェノール残基、EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、BOはブチレンオキサイド、SOはスチレンオキサイドを示し、()右横の添字は平均付加モル数を示し、//はランダム状に付加していることを示し、−はブロック状に付加していることを示す。
【0051】
上述の化合物に該当する浸透剤には、市場から容易に入手できる市販品を用いてもよく、例えば、商品名:SN−8X4681およびSNウエット984(いずれもサンノプコ株式会社製)のような浸透剤が使用できる。
【0052】
(塗工紙の製造方法)
本発明の塗工紙は、基紙の一方の面または両方の面に本発明の紙力剤を塗工すること、すなわち基紙に対して紙力剤を外添法にて付与することにより得ることができる。紙力剤は、水溶液の形態の塗液として基紙に塗工され、次いで乾燥される。
【0053】
塗工には、公知の塗工方法および公知の塗工機を使用することができる。塗工方法は、抄紙および塗工を一連の工程とするオンマシン式であってもよく、抄紙と塗工とを別工程とするオフマシン式であってもよい。塗工方法としては、例えば、基紙を紙力剤の塗液に浸漬する方法、基紙に紙力剤の塗液をロールやブレードで塗布する方法、基紙に紙力剤の塗液を噴霧する方法などを使用することができる。また、抄紙機としては、例えば、2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、ブレードコーター、バーコーター、スプレーコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーターなどを使用することができる。
【0054】
塗工後の乾燥には、公知の乾燥方法および公知の乾燥機を使用することができる。例えば蒸気過熱シリンダ、加熱熱風エアドライヤ、ガスヒータードライヤ、電気ヒータードライヤ、赤外線ヒータードライヤ等各種の乾燥方法および乾燥機を単独でまたは併用して使用することができる。
【0055】
(紙力剤の塗工量)
本発明における紙力剤の塗工量は、基紙の物性、目標とする紙力、および目標とする貼合適性等に応じて適宜選定されることができる。
【0056】
例えば、紙力剤の塗工量は、目標とする紙力を得る効果の観点から水溶性高分子の塗工量に注目して、水溶性高分子の塗工量が例えば片面あたり固形分換算で0.1〜5g/m2、好ましくは0.2〜3g/m2となるように選定される。また、紙力剤の塗工量は、目標とする貼合適性を得る効果の観点から浸透剤の塗工量に注目して、浸透剤の塗工量が例えば片面あたり不揮発分換算で0.001〜0.5g/m2、好ましくは0.005〜0.1g/m2となるように選定される。一般には、水溶性高分子の塗工量が多くなるにつれ浸透剤の塗工量も多くなることが好ましい。
【0057】
(紙力剤における水性高分子および浸透剤の配合比率)
基紙に対する水溶性高分子の塗工量を多めにすると、得られる塗工紙の紙力は向上するが、貼合適性は低下する傾向がある。これは、基紙表面に形成される水溶性高分子の皮膜の厚さが厚くなって、後にコルゲータで表面に付与される貼合糊の基紙中への浸透が阻害されるためではないかと推測される。水溶性高分子の塗工量を多めにした場合においても目標とする貼合適性を得るためには、浸透剤の塗工量も多めにすることが好ましい。これによると、水溶性高分子の基紙中への浸透性が向上し、基紙表面に形成される水溶性高分子の皮膜の厚さが低減して、コルゲータによって表面に付与される貼合糊の基紙中への浸透が阻害されないために、貼合適性が維持されると推測される。本発明の紙力剤は、水溶性高分子および浸透剤の両方を含んだ水溶液の形態で塗工される。そのため、塗工紙において水溶性高分子および浸透剤のそれぞれについての好ましい塗工量を得るには、塗工に用いる塗液の段階で、水溶性高分子および浸透剤の配合比率をそれぞれについての好ましい塗工量を実現できるように決定する。
【0058】
(塗液中の紙力剤の濃度)
本発明の紙力剤は、水溶液の形態の塗液として塗工される。塗液中の水溶性高分子の濃度が高すぎると、塗液の粘度が高くなって塗工が困難になる場合がある。塗液中の紙力剤の濃度は、操業性の観点から塗工が可能な限り、任意の濃度を用いることができる。
(塗工紙の浸透性 ピーク出現時間(単位:ミリ秒)
本発明の塗工紙は、従来の塗工紙と比較して液体浸透性が良好である。
【0059】
本発明の塗工紙の液体浸透性は、動的液体浸透性測定装置としてEmtec社製の「SURFACE AND SIZING TESTER(EST−12)」を使用し、信号強度が最大値を示すまでの時間(ピーク出現時間)を測定することにより評価する。具体的には、本発明の塗工紙(ライナー)を抄紙流れ方向に50mm、抄紙流れ方向と直交する幅方向に75mmに裁断したものを測定用試験片として用いる。この測定用試験片の裏層側を両面粘着テープでサンプルホルダーに固定し、このサンプルホルダーを試験液である温度23℃の蒸留水に浸漬させて、超音波周波数2MHzにてライナーの表面の信号強度を測定する。浸漬開始時から信号強度が最大値を示す時までの時間をピーク出現時間とする。ピーク出現時間が短い程、液体浸透性が高いことを意味する。
【0060】
本発明の塗工紙は、ピーク出現時間が60ミリ秒以下であることが好ましく、55ミリ秒以下であることがより好ましく、50ミリ秒以下であることがさらに好ましい。
【0061】
(段ボールシート)
本発明の段ボールシートは、その構成要素として本発明の塗工紙を含む。本発明の段ボールシートは、例えば、波状に形成された中芯と、その一方の面または両方の面に貼合されたライナーと、を含んで構成されていることができ、ここで、本発明の塗工紙を、中芯および/または一方の面側または両方の面側のライナーとして含んでいることができる。本発明の段ボールシートにおいて、塗工紙の紙力剤が塗工された面が、貼合面として用いられる。
【0062】
(段ボールシートの製造)
本発明の段ボールシートは、本発明の塗工紙を含む材料を用いて公知の貼合方法および公知の貼合機により製造することができる。例えば、公知のコルゲータにより、本発明の塗工紙を波状に成形してこれを中芯とし、他の紙をライナーとして、溶融させた貼合糊により中芯の一方の面または両方の面にライナーを貼り合わせて、本発明の段ボールシートを製造することができる。他の紙には、特に制限はなく種々の板紙を用いることができ、例えば、古紙パルプやクラフトパルプを原料とする一層抄きまたは多層抄きの板紙であってもよい。あるいはまた、本発明の塗工紙をライナーとし、他の紙を中芯として、本発明のダンボールシートを製造することができる。あるいはまた、本発明の塗工紙を中芯およびライナーの両方に用いて、本発明の段ボールシートを製造することができる。さらに、本発明の塗工紙を、波状に成形することなく、貼り合わせてもよい。
【実施例】
【0063】
[実施例1]
(基紙の製造)
原料として段ボール古紙90質量%(絶乾)および雑誌古紙10質量%(絶乾)を配合してカナダ標準フリーネス(CSF)を360mlに調整したパルプスラリーを用い、紙層として裏面層、裏下層、中層、表下層および表面層の5層をこの順に抄き合わせて、目標米坪198g/m2の多層抄きの基紙を得た。なお、表面層、表下層、中層、裏下層および裏面層には、内添紙力剤として、パルプスラリーの全質量(固形分換算)を基準にして0.3質量%の商品名DS4681(星光PMC株式会社製)、0.05質量%の商品名ポリテンション1001(荒川化学工業株式会社製)、および1.3質量%の硫酸バンドを添加した。
【0064】
(塗工紙の製造)
水溶性高分子として変性デンプン(商品名:ピラーP4、PIRAAB STARCH Co.,Ltd.製)を2.0質量%(固形分換算)となるよう調整した水溶液に、上述した浸透剤である浸透剤(商品名:SN−8X4681、サンノプコ株式会社製)を0.04質量%(不揮発分換算)となるように混合して、紙力剤を得た。なお、SN−8X4681は、上記一般式(1)を主成分とするものである。
【0065】
得られた紙力剤を塗工用塗液として、上記の基紙の両面、すなわち表面層および裏面層上に、サイズプレスにて、水溶性高分子の塗工量が乾燥重量で片面あたり0.25g/m2(固形分換算)となるように塗工および乾燥して、表面に紙力剤の塗工層を有する塗工紙を得た。
【0066】
[実施例2]
実施例1において、浸透剤(商品名:SN−8X4681、サンノプコ株式会社製)を0.04質量%(不揮発分換算)の代わりに0.16質量%(不揮発分換算)となるように混合した以外は、実施例1と同様な方法で塗工紙を得た。
【0067】
[実施例3]
実施例1において、変性デンプン(商品名:ピラーP4、PIRAAB STARCH Co.,Ltd.製)を2.0質量%(固形分換算)の代わりに5.0質量%(固形分換算)となるよう調整した水溶液に、浸透剤(商品名:SN−8X4681、サンノプコ株式会社製)を0.04質量%(不揮発分換算)の代わりに0.1質量%(不揮発分換算)となるように混合して得た紙力剤を塗工用塗液として、水溶性高分子の塗工量が乾燥重量で片面あたり0.25g/m2(固形分換算)の代わりに1.0g/m2(固形分換算)となるように塗工した以外は、実施例1と同様な方法で塗工紙を得た。
【0068】
[実施例4]
実施例3において、浸透剤(商品名:SN−8X4681、サンノプコ株式会社製)を0.1質量%(不揮発分換算)の代わりに0.25質量%(不揮発分換算)となるように混合した以外は、実施例3と同様な方法で塗工紙を得た。
【0069】
[実施例5]
実施例1において、変性デンプン(商品名:ピラーP4、PIRAAB STARCH Co.,Ltd.)を2.0質量%の代わりに10質量%(固形分換算)となるよう調整した水溶液に、浸透剤(商品名:SN−8X4681、サンノプコ株式会社製)を0.04質量%の代わりに0.1質量%(不揮発分換算)となるように混合して得た紙力剤を塗工用塗液として、水溶性高分子の塗工量が乾燥重量で片面あたり0.25g/m2(固形分換算)の代わりに2.0g/m2(固形分換算)となるように塗工した以外は、実施例1と同様な方法で塗工紙を得た。
【0070】
[実施例6]
実施例5において、浸透剤(商品名:SN−8X4681、サンノプコ株式会社製)を0.1質量%(不揮発分換算)の代わりに0.25質量%(不揮発分換算)となるように混合した以外は、実施例5と同様な方法で塗工紙を得た。
【0071】
[実施例7]
実施例5において、浸透剤(商品名:SN−8X4681、サンノプコ株式会社製)を0.1質量%(不揮発分換算)の代わりに0.5質量%(不揮発分換算)となるように混合した以外は、実施例5と同様な方法で塗工紙を得た。
【0072】
[実施例8]
実施例1において、変性デンプン(商品名:ピラーP4、PIRAAB STARCH)を2.0質量%の代わりに15量%(固形分換算)となるよう調整した水溶液に、浸透剤(商品名:SN−8X4681、サンノプコ株式会社製)を0.04質量%の代わりに0.1質量%(不揮発分換算)となるように混合して得た紙力剤を塗工用塗液として、水溶性高分子の塗工量が乾燥重量で片面あたり0.25g/m2(固形分換算)の代わりに3.0g/m2(固形分換算)となるように塗工した以外は、実施例1と同様な方法で塗工紙を得た。
【0073】
[実施例9]
実施例8において、浸透剤(商品名:SN−8X4681、サンノプコ株式会社製)を0.1質量%(不揮発分換算)の代わりに0.25質量%(不揮発分換算)となるように混合した以外は、実施例8と同様な方法で塗工紙を得た。
【0074】
[実施例10]
実施例8において、浸透剤(商品名:SN−8X4681、サンノプコ株式会社製)を0.1質量%(不揮発分換算)の代わりに0.5質量%(不揮発分換算)となるように混合した以外は、実施例8と同様な方法で塗工紙を得た。
【0075】
[実施例11]
実施例1において、基紙の目標米坪を198g/m2の代わりに118g/m2とし、表面層、表下層、中層、裏下層、裏面層には、内添紙力剤として、パルプスラリーの全質量(固形分換算)を基準にして0.3質量%の代わりに0.5質量%の商品名DS4681(星光PMC株式会社製)、0.05質量%の商品名ポリテンション1001(荒川化学工業株式会社製)、および1.3質量%の代わりに2.0質量%の硫酸バンドを添加した以外は、実施例1と同様にして基紙を作製した。塗工については、実施例6と同様にして塗工紙を得た。
【0076】
[実施例12]
実施例1において、基紙の目標米坪を198g/m2の代わりに218g/m2とし、表面層、表下層、中層、裏下層、裏面層には、内添紙力剤として、パルプスラリーの全質量(固形分換算)を基準にして0.3質量%の代わりに0.8質量%の商品名DS4681(星光PMC株式会社製)、0.05質量%の商品名ポリテンション1001(荒川化学工業株式会社製)、および1.3質量%の代わりに2.0質量%の硫酸バンドを添加した以外は、実施例1と同様にして基紙を作製した。塗工については、実施例6と同様にして塗工紙を得た。
【0077】
[実施例13]
実施例1において、変性デンプン(商品名:ピラーP4、PIRAAB STARCH Co.,Ltd.製)2.0質量%(固形分換算)の代わりにポリアクリルアミド系の紙力剤(ポリマセットHP710、荒川化学工業社製)4.0質量%(固形分換算)を用い、浸透剤(商品名:SN−8X4681、サンノプコ株式会社製)を0.04質量%(不揮発分換算)の代わりに0.4質量%(不揮発分換算)となるように混合した紙力剤を塗工用塗液として、水溶性高分子の塗工量が乾燥重量で片面あたり0.25g/m2(固形分換算)の代わりに0.5g/m2(固形分換算)となるようにした以外は、実施例1と同様な方法で塗工紙を得た。
【0078】
[実施例14]
実施例1において、変性デンプン(商品名:ピラーP4、PIRAAB STARCH Co.,Ltd.製)2.0質量%(固形分換算)の代わりにデンプン(商品名:コーンスターチ、王子コーンスターチ株式会社製)10質量%(固形分換算)を用い、浸透剤(商品名:SN−8X4681、サンノプコ株式会社製)を0.04質量%(不揮発分換算)の代わりに0.25質量%(不揮発分換算)となるように混合した紙力剤を塗工用塗液として、水溶性高分子の塗工量が乾燥重量で片面あたり0.25g/m2(固形分換算)の代わりに2.0g/m2(固形分換算)となるようにした以外は、実施例1と同様な方法で塗工紙を得た。
【0079】
[実施例15]
実施例1において、変性デンプン(商品名:ピラーP4、PIRAAB STARCH Co.,Ltd.製)2.0質量%(固形分換算)の代わりにPVA(商品名:デンカポバール、電気化学工業株式会社製)10質量%(固形分)を用い、浸透剤(商品名:SN−8X4681、サンノプコ株式会社製)を0.04質量%(不揮発分換算)の代わりに0.25質量%(不揮発分換算)となるように混合した紙力剤を塗工用塗液として、水溶性高分子の塗工量が乾燥重量で片面あたり0.25g/m2(固形分換算)の代わりに2.0g/m2(固形分換算)となるようにした以外は、実施例1と同様な方法で塗工紙を得た。
【0080】
[比較例1]
実施例1において、浸透剤(商品名:SN−8X4681、サンノプコ株式会社製)を塗工液に混合しなかった以外は、実施例1と同様な方法で塗工紙を得た。
【0081】
[比較例2]
実施例3において、浸透剤(商品名:SN−8X4681、サンノプコ株式会社製)を塗工液に混合しなかった以外は、実施例3と同様な方法で塗工紙を得た。
【0082】
[比較例3]
実施例5において、浸透剤(商品名:SN−8X4681、サンノプコ株式会社製)を塗工液に混合しなかった以外は、実施例5と同様な方法で塗工紙を得た。
【0083】
[比較例4]
実施例8において、浸透剤(商品名:SN−8X4681、サンノプコ株式会社製)を塗工液に混合しなかった以外は、実施例8と同様な方法で塗工紙を得た。
【0084】
[比較例5]
実施例11において、浸透剤(商品名:SN−8X4681、サンノプコ株式会社製)を塗工液に混合しなかった以外は、実施例11と同様な方法で塗工紙を得た。
【0085】
[比較例6]
実施例12において、浸透剤(商品名:SN−8X4681、サンノプコ株式会社製)を塗工液に混合しなかった以外は、実施例12と同様な方法で塗工紙を得た。
【0086】
[比較例7]
実施例13において、浸透剤(商品名:SN−8X4681、サンノプコ株式会社製)を塗工液に混合しなかった以外は、実施例13と同様な方法で塗工紙を得た。
【0087】
[比較例8]
実施例14において、浸透剤(商品名:SN−8X4681、サンノプコ株式会社製)を塗工液に混合しなかった以外は、実施例14と同様な方法で塗工紙を得た。
【0088】
[比較例9]
実施例15において、浸透剤(商品名:SN−8X4681、サンノプコ株式会社製)を塗工液に混合しなかった以外は、実施例15と同様な方法で塗工紙を得た。
【0089】
(測定および評価試験)
かくして得られた塗工紙について、以下の測定および評価を行った。
【0090】
I.米坪(単位:g/m2
得られた塗工紙の米坪(坪量)を、日本工業規格JIS P8124「紙および板紙-坪量の測定方法」に準拠して測定した。
【0091】
II.比圧縮強さ
得られた塗工紙の比圧縮強さをJIS P 8126(2005)に準じて測定した。この測定は、JIS−P8111(2007)に準拠し、温度23±2℃、湿度50±2%の環境条件で行った。比圧縮強さが大きいほど、強度が良好であることを示す。
【0092】
III.ピーク出現時間(単位:ミリ秒)
動的液体浸透性測定装置としてEmtec社製の「SURFACE AND SIZING TESTER(EST−12)」を使用し、信号強度が最大値を示すピーク出現時間を測定した。具体的には、ライナーを抄紙流れ方向に50mm、幅方向75mmに裁断した測定用試験片の裏層側を両面粘着テープでサンプルホルダーに固定し、このサンプルホルダーを試験液である温度23℃の蒸留水に浸漬させて、超音波周波数2MHzにてライナーの表面の信号強度を測定した。ピーク出現時間が早い程、液体浸透性が高いことを意味する。
【0093】
IV.0.5秒後の信号強度(単位:%)
動的液体浸透性測定装置としてEmtec社製の「SURFACE AND SIZING TESTER(EST−12)」を使用して得られる浸透特性曲線における浸積開始から0.5秒後の信号強度を、信号強度が最大値を示すピーク時の信号強度を100%として、相対的に表した。測定条件は上記ピーク出現時間の測定条件と同様である。0.5秒後の信号強度が小さい程、液体浸透性が高いことを意味する。
【0094】
V.コンコラ強度(単位:N/)
得られた塗工紙について、JAPAN TAPPI(パルプ製紙業界技術協会)No.29「段ボール用中芯−平面圧縮強さ試験方法―コンコラ法」の規定に準じてコンコラ強度を測定した。コンコラ強度が大きいほど、紙の平面圧縮耐性が高く、強度が良好であることを示す。
【0095】
VI.貼合適性
実施例および比較例の塗工紙を中芯とし、市販のライナー(米坪210g/m2、王子マテリア株式会社製)を表層および裏層のライナーとして、コルゲータにより中芯とライナーとを貼合して段ボールシートを作製した。コルゲータでの貼合適性を以下のとおり3段階で評価した。評価結果は、評価が良好な方から順に記号○、△、×を用いて示した。
【0096】
○:段ボールシートの全面に亘って貼合状態が良好であり、コルゲータ貼合速度の増速が可能であった。
△:貼合速度を増速すると、段ボールシートの一部分に貼合不良が認められることがあった。
×:低速の貼合速度においても、段ボールシートの一部分に貼合不良が認められることがあった。
【0097】
(測定および評価結果)
測定および評価の結果は、表1に示す通りであった。
【0098】
【表1】
【0099】
(考察)
浸透剤を含む紙力剤が塗工された実施例の塗工紙は、浸透剤を含まない紙力剤が塗工された比較例の塗工紙と比べて、同等程度の強度を示しつつも、ピーク出現時間が短くおよび0.5秒後の信号強度が小さく、高い動的液体浸透性を示した。また、実施例の塗工紙は、比較例の塗工紙と比べて、良好な貼合適性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の塗工紙は、良好な強度を有しつつ、動的液体浸透性に優れる。そのため、本発明の塗工紙は、段ボールシート用の紙などの貼合する用途に用いられる際に、高速のコルゲータを用いた場合であっても貼合糊が紙中に浸透しやすく、貼合される紙同士の密着性は高くて剥がれにくく、優れた貼合適性を示す。