【文献】
三菱電機株式会社,“Factory Automation”,[online],2016年 2月19日,[2019年3月26日検索],インターネット,URL,http://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/drv/servo/smerit/mr/setup_popup.html
【文献】
Marek Stulrajter,外1名,“Motor Control Application Tuning (MCAT) Tool for 3-Phase PMSM”,Freescale Semiconductor Application Note,2013年,[2017年5月24日検索],URL,https://www.nxp.com/docs/en/application-note/AN4642.pdf
【文献】
Bishwajit Dash,外1名,“GUI/Simulink Based Interactive Interface for a DC Motor with PI Controller”,International Journal of Scientific & Engineering Research,2011年,Volume 2, Issue 12,URL,http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download?doi=10.1.1.301.599&rep=rep1&type=pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記モータ制御装置が、当該モータ制御装置の仮想モデルに基づいて、モータの位置、速度、およびトルクの目標値であるモデル位置、モデル速度、およびモデルトルクの少なくともいずれか1つを出力するフィードフォワード制御部を備え、
前記制御パラメータが、前記フィードフォワード制御部を構成する制御器の制御パラメータも含むことを特徴とする請求項3に記載の設定支援装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
制御対象の制御性を向上させるために設定すべき制御パラメータは、例えば、位置制御を行うための一般的なフィードバック制御器の場合でも、位置比例ゲイン、速度比例ゲイン、速度積分ゲイン、というように3つ以上ある。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された構成では、2つの制御パラメータを変更する場合のシミュレーションしか実行できない。制御パラメータは、ある制御パラメータを変化させると、他の制御パラメータの最適値が変動する場合もあり、2つの制御パラメータしかシミュレーションできない場合、複数ある制御パラメータを適切な値に設定することが困難となる可能性が高い。
【0008】
また、非特許文献1に開示された構成でも、2つの制御パラメータを変化させているのみであり、特許文献1と同様の課題を生じる。さらに、非特許文献1では、実機を駆動し、その計測結果を用いるので、処理に時間を要してしまう。
【0009】
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の制御パラメータを容易かつ適切に設定することを支援する設定支援装置等を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明に係る設定支援装置は、モータ制御装置における制御処理で用いられる複数の制御パラメータの設定を支援する設定支援装置であって、前記複数の制御パラメータの少なくともいずれか1つの値を変化させて、前記モータ制御装置を実際に複数回試験動作させる制御を行う、または、前記モータ制御装置の仮想モデルを利用したシミュレーションによって複数回試験動作させる制御を行う試験動作指示部と、前記複数の制御パラメータのうち、前記試験動作で値を変化させる第1制御パラメータ以外の第2制御パラメータを、前記第1制御パラメータに連動させて変化させるか否かを設定するパラメータ調整部と、前記試験動作の結果に応じて、前記モータ制御装置による制御の性能指標を算出する性能指標算出部とを備えることを特徴としている。
【0011】
上記の構成では、制御パラメータの値を変化させて前記試験動作を複数回行い、該試験動作の結果に応じて、モータ制御装置による制御の性能指標を算出する。ここで、制御パラメータを第1制御パラメータと第2制御パラメータとに分類するとともに、第2制御パラメータを、第1制御パラメータに連動させて変化させるか否かを設定することが可能となっている。すなわち、第2制御パラメータを第1制御パラメータに連動させて変化させた場合と連動させない場合との試験動作を実行することが可能となるので、試験動作の条件のバリエーションを増やすことができる。したがって、複数の制御パラメータのそれぞれに対してより最適な値が設定されるように支援することが可能となる。
【0012】
本発明に係る設定支援装置では、前記性能指標算出部が算出した性能指標と、前記第1制御パラメータの値とを関連づけて表示する制御を行う表示制御部をさらに備えていてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、性能指標と第1制御パラメータの値とが関連づけられて表示されるので、ユーザはその表示内容を確認することにより、好ましい第1制御パラメータの値を選択することが可能となる。
【0014】
本発明に係る設定支援装置では、前記パラメータ調整部が、前記第2制御パラメータを、前記第1制御パラメータに連動させて変化させるか、任意の固定値とするかを設定するものであってもよい。
【0015】
上記の構成によれば、第2制御パラメータを任意の固定値とすることを選択することが可能となるので、例えば状況に応じてユーザが第2制御パラメータの好ましい値を認識している場合に、これを採用した試験動作を実行させることが可能となる。
【0016】
本発明に係る設定支援装置では、前記制御パラメータが、前記モータ制御装置におけるフィードバック制御系を構成する制御器の制御パラメータであってもよい。
【0017】
上記の構成では、制御パラメータがフィードバック制御系を構成する制御器の制御パラメータであるので、制御パラメータ同士が互いに影響を与える場合と、そうでない場合とが混在していることが考えられる。これに対して、上記の構成によれば、第2制御パラメータが第1制御パラメータに影響される場合には、第2制御パラメータを、第1制御パラメータに連動させて変化させるように設定する一方、第2制御パラメータが第1制御パラメータに影響されない場合には、第2制御パラメータを、第1制御パラメータに連動させないように設定することが可能となる。
【0018】
本発明に係る設定支援装置では、前記第1制御パラメータが、前記フィードバック制御系を構成する速度制御器の速度比例ゲインを含むものであってもよい。
【0019】
モータ制御装置におけるフィードバック制御系において、速度制御器は基本的に必須の構成である。また、一般的なモータ制御のフィードバック制御系では、速度制御器は位置制御器とトルクフィルタとの間に設けられる。さらに、速度制御器におけるパラメータの中でも、速度比例ゲインは他の制御パラメータへの影響が大きくなる場合が多い。
【0020】
すなわち、速度比例ゲインは、モータ制御のフィードバック制御系において、重要な制御パラメータであるとともに、他の制御パラメータへ影響を与える可能性が高いものである。よって、第1制御パラメータとして速度比例ゲインを設定することによって、試験動作の条件をより的確に調整して実行させることが可能となる。
【0021】
一例として、第1制御パラメータとして、速度比例ゲインと速度積分ゲインとを設定する場合、および、速度比例ゲインと位置比例ゲインとを設定する場合などが挙げられる。これらの例によれば、性能指標に対する影響力の大きい2つの制御パラメータを第1制御パラメータとして設定されるので、好ましい性能指標となるような各制御パラメータの調整がより容易に実現することができる。
【0022】
本発明に係る設定支援装置では、前記第2制御パラメータが、前記フィードバック制御系を構成するトルクフィルタのカットオフ周波数を含むものであってもよい。
【0023】
一般的に、モータ制御のフィードバック制御系において、トルクフィルタは速度制御器の後段に設けられる。この場合、速度比例ゲインを増大させると、より高い周波数帯域も制御対象となるため、制御対象とする周波数帯域をカットオフ周波数によって絞り込むトルクフィルタについても、パラメータを変動させる必要がある。すなわち、上記の構成のように、速度比例ゲインに応じてトルクフィルタのカットオフ周波数を連動させて変化させることによって、制御の対象となる周波数帯域に見合ったパラメータの値の設定が可能になる。
【0024】
本発明に係る設定支援装置では、前記モータ制御装置が、当該モータ制御装置の仮想モデルに基づいて、モータの位置、速度、およびトルクの目標値であるモデル位置、モデル速度、およびモデルトルクの少なくともいずれか1つを出力するフィードフォワード制御部を備え、前記制御パラメータが、前記フィードフォワード制御部を構成する制御器の制御パラメータも含むものであってもよい。
【0025】
上記の構成では、制御パラメータがフィードフォワード制御系を構成する制御器の制御パラメータもさらに含んでいる。したがって、フィードバック制御系とフィードフォワード制御系とを両方備えた構成において、制御パラメータの設定支援を実現することが可能となる。
【0026】
本発明に係る設定支援装置では、前記表示制御部が、前記性能指標の値と前記第1制御パラメータとの関係を示す関係図を表示する制御を行うとともに、複数種類の前記性能指標毎に、前記関係図の表示を同時または選択的に行う制御を行うものであってもよい。
【0027】
上記の構成によれば、複数種類の性能指標の値について、それぞれ第1制御パラメータとの関係図が同時または選択的に表示されるので、ユーザは様々な性能指標を考慮して制御パラメータの値の設定を行うことが可能となる。
【0028】
本発明に係る設定支援装置では、前記表示制御部が、前記性能指標の値と、m(mは2以上の整数)種類の前記第1制御パラメータとの関係を示す関係図を表示する制御を行うとともに、前記性能指標にn(nはn≧mを満たす整数)種類の前記第1制御パラメータが関連付けられている場合に、n個からm個を選択する組合せの数毎に、前記関係図を同時または選択的に表示する制御を行うものであってもよい。
【0029】
上記の構成によれば、複数種類の第1制御パラメータと性能指標との関係が同時または選択的に表示されるので、ユーザは様々な種類の第1制御パラメータを考慮して制御パラメータの値の設定を行うことが可能となる。
【0030】
本発明に係る設定支援装置では、前記表示制御部が、前記性能指標の値と前記第1制御パラメータとの関係を示す関係図を表示する制御を行うとともに、前記関係図においてユーザによって選択された任意の点の情報を受け付けるとともに、前記選択された点に対応する前記第1制御パラメータを、前記モータ制御装置における制御処理で用いられる制御パラメータとして設定するパラメータ設定部をさらに備えるものであってもよい。
【0031】
上記の構成によれば、ユーザは、性能指標の値と第1制御パラメータとの関係を示す関係図において任意の点を選択することによって、モータ制御装置における制御処理で用いられる制御パラメータを設定することが可能となる。よって、制御パラメータの設定処理を容易かつ迅速に行うことが可能となる。
【0032】
本発明に係る設定支援装置では、前記表示制御部が、前記性能指標の値と、m(mは2以上の整数)種類の前記第1制御パラメータとの関係をm個の軸によって示す関係図を表示する制御を行うとともに、前記軸における表示範囲および分解能の少なくともいずれか一方を変更する制御を行うものであってもよい。
【0033】
上記の構成によれば、性能指標の値と、m種類の第1制御パラメータとの関係がm個の軸によって関係図として表示されるとともに、軸における表示範囲および分解能の少なくともいずれか一方を変更する制御が行われる。よって、状況に応じて、制御パラメータの選択支援に適した関係図の表示を実現することができる。
【0034】
前記課題を解決するために、本発明に係る設定支援方法は、モータ制御装置における制御処理で用いられる複数の制御パラメータの設定を支援する設定支援方法であって、前記複数の制御パラメータの少なくともいずれか1つの値を変化させて、前記モータ制御装置を実際に複数回試験動作させる制御を行う、または、前記モータ制御装置の仮想モデルを利用したシミュレーションによって複数回試験動作させる制御を行う試験動作指示ステップと、前記複数の制御パラメータのうち、前記試験動作で値を変化させる第1制御パラメータ以外の第2制御パラメータを、前記第1制御パラメータに連動させて変化させるか否かを設定するパラメータ調整ステップと、前記試験動作の結果に応じて、前記モータ制御装置による制御の性能指標を算出する性能指標算出ステップとを有することを特徴としている。
【0035】
本発明の各態様に係る設定支援装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記設定支援装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより上記設定支援装置をコンピュータにて実現させる設定支援装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、制御パラメータの値を変化させて前記試験動作を複数回行い、該試験動作の結果に応じて、モータ制御装置による制御の性能指標を算出する。ここで、制御パラメータを第1制御パラメータと第2制御パラメータとに分類するとともに、第2制御パラメータを、第1制御パラメータに連動させて変化させるか否かを設定することが可能となっている。すなわち、第2制御パラメータを第1制御パラメータに連動させて変化させた場合と連動させない場合との試験動作を実行することが可能となるので、試験動作の条件のバリエーションを増やすことができる。したがって、複数の制御パラメータのそれぞれに対してより最適な値が設定されるように支援することが可能となるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の本実施形態について、詳細に説明する。本実施形態に係る設定装置1は、サーボドライバ2を調整、および制御するものである。より詳細には、設定装置1は、サーボドライバ2の応答状態を計測し、またサーボドライバ2のシミュレーションを実行し、サーボドライバ2の応答状態、またはシミュレーション結果をユーザに提示し、ユーザから、サーボドライバ2の制御パラメータ(位置ゲイン、速度ゲイン、フィルタのカットオフ周波数等)の設定を受け付ける。そして、サーボドライバ2は設定された制御パラメータに基づきモータ3の制御を行う。
【0039】
また、本実施形態に係る設定装置1では、複数の制御パラメータの値を変更させつつ、シミュレーションまたはサーボドライバ2の駆動を実行し、周波数応答、時間応答等の性能指標をユーザに提示することができる。
【0040】
〔制御システム〕
まず、
図3を参照して本実施形態に係る制御システムについて説明する。
図3は、制御システムの概要を示す図である。制御システムは、サーボ機構を用いて負荷装置4の動作を制御するものであり、
図3に示すように、設定装置(設定支援装置)1、サーボドライバ(モータ制御装置)2、モータ3、および負荷装置4を含む。
【0041】
設定装置1は、サーボドライバ2の制御パラメータを設定および調整するための装置であり、調整用ソフトウェアが含まれている。具体的には、設定装置1は、調整用ソフトウェアを用いて、サーボドライバ2の応答状態が最適となるように、サーボドライバ2の制御パラメータ(例えば、位置ゲイン、速度ゲイン、フィルタのカットオフ周波数等)を調整する。なお、調整用ソフトウェアは、サーボドライバ2の応答状態を計測する機能とサーボドライバ2の応答をシミュレーションする機能と有する。設定装置1は、例えば、パーソナルコンピュータによって実現され、パーソナルコンピュータに格納されたプログラム(調整用ソフトウェア)が実行されることで、当該コンピュータが設定装置1として機能する。
【0042】
ユーザ(制御システムの使用者、設定者等)5は、設定装置1を用いて、サーボドライバ2の制御パラメータの設定および調整を行う。すなわち、ユーザ5は、設定装置1上で動作する調整用ソフトウェアを用いてサーボドライバ2の制御パラメータを設定し、サーボドライバ2の応答状態が最適となるように調整する。換言すれば、実際の計測結果、およびシミュレーション結果を用いて応答状態を確認し、制御パラメータの調整を行う。
【0043】
サーボドライバ2は、設定装置1により設定され、調整された制御パラメータを記憶するとともに、その制御パラメータに従ってモータ3を駆動し、負荷装置4を動作させる。また、サーボドライバ2は、設定装置1、およびモータ3と、有線または無線により通信可能に接続されている。例えば、サーボドライバ2は、設定装置1とUSB(Universal Serial Bus)ケーブルによって接続されている。また、サーボドライバ2とモータ3とは、例えば、専用ケーブルによって接続されている。
【0044】
〔設定装置の詳細〕
次に、
図1、2を参照して設定装置1の詳細について説明する。
図1、2は、設定装置1の要部構成を示すブロック図である。
図1は、シミュレーションを実行する場合のブロック図であり、
図2は、実際にサーボドライバ2を駆動させて応答を計測する場合の要部構成を示すブロック図である。
【0045】
図1に示すように、サーボドライバ2のシミュレーションを実行する場合、設定装置1は、操作制御部10、パラメータ設定部20、パラメータ調整部30、試験動作指示部40、シミュレーション部50、性能指標算出部60、および表示制御部70を含む。
【0046】
操作制御部10は、入力部11を介して入力された設定装置1に対する指示に基づき、その内容を対応するブロックに通知するものである。例えば、制御パラメータの設定指示を受け付けた場合は、その内容をパラメータ設定部20に通知する。また、制御パラメータの調整指示を受け付けた場合は、その旨をパラメータ調整部30に通知する。また、性能指標の算出指示を受け付けた場合は、その旨を性能指標算出部60に通知する。また、表示に関する指示を受け付けた場合は、その旨を表示制御部70に通知する。
【0047】
パラメータ設定部20は、操作制御部10から通知された制御パラメータをサーボドライバ2に設定する。制御パラメータの例としては、上述したように、位置ゲイン、速度ゲイン、フィルタのカットオフ周波数等が挙げられる。また、後述のように、サーボドライバ2がフィードフォワードを用いる構成である場合には、制御パラメータとして、モデル追従制御部のゲインを設定することができる。
【0048】
パラメータ調整部30は、シミュレーションを実行するパラメータを調整するものであり、第1パラメータ調整部31、および第2パラメータ調整部32を含む。
【0049】
第1パラメータ調整部31は、複数ある制御パラメータのうち、第1制御パラメータとして設定される制御パラメータを調整する。第1制御パラメータとして設定される制御パラメータの例としては、速度比例ゲイン、速度積分ゲイン、位置比例ゲイン、モデル追従制御部のゲインが挙げられる。
【0050】
第1制御パラメータとして、速度比例ゲインと速度積分ゲインとを設定する場合、および、速度比例ゲインと位置比例ゲインとを設定する場合、性能指標に対する影響力の大きい2つの制御パラメータを第1制御パラメータとして設定することができるので、好ましい性能指標となるような各制御パラメータの調整をより容易に実現することができる。
【0051】
第2パラメータ調整部32は、複数ある制御パラメータのうち、第2制御パラメータとして設定される制御パラメータを調整する。第2制御パラメータは、第1制御パラメータの値により、設定される制御パラメータ、または固定値の制御パラメータである。第2制御パラメータとして設定される制御パラメータの例としては、速度積分ゲイン、位置比例ゲイン、モデル追従制御部のゲインが挙げられる。
【0052】
試験動作指示部40は、パラメータ調整部30が調整した第1パラメータおよび第2パラメータを用いて、サーボドライバ2のシミュレーションを実行する指示をシミュレーション部50に通知する。すなわち、試験動作指示部40は、第1制御パラメータおよび第2制御パラメータを用いて、シミュレーションによって複数回の試験動作を行うように指示する。
【0053】
シミュレーション部50は、試験動作指示部40から通知された第1パラメータおよび第2パラメータを用いてサーボドライバ2のシミュレーションを実行する。
【0054】
性能指標算出部60は、シミュレーション部50が実行したシミュレーション結果を用いて、性能指標(制御の安定性、制定時間等の応答性)を算出する。
【0055】
表示制御部70は、表示部12での表示を制御する。
【0056】
また、
図1に示すように、サーボドライバ2は、位置制御器21、速度制御器22、およびトルクフィルタ23を含む。これらの処理の内容を、
図4を参照して説明する。
【0057】
図4に示すように、位置制御器21は、例えば比例制御(P制御)を行う。具体的には、動作指示
部から通知された位置指令と検出位置との偏差である位置偏差に、位置制御器の周波数伝達関数Cpを乗ずることにより指令速度を出力する。ここで、位置制御器21は、パラメータ設定部20により設定されることにより、予め、位置比例ゲインKppが周波数伝達関数Cpとして設定されている。すなわち、周波数伝達関数Cpは、定数となる関数である。
【0058】
速度制御器22は、例えば比例制御(P制御)を行う。具体的には、位置制御器21から出力された指令速度と検出速度(速度計測値)との偏差である速度偏差に、速度制御器の周波数伝達関数Cvを乗ずることにより指令トルクを出力する、ここで、速度制御器22は、パラメータ設定部20により設定されることにより、予め、速度比例ゲインKvpが周波数伝達関数Cvとして設定されている。なお、速度制御器22は、比例制御(P制御)ではなく、PI制御を行ってもよい。この場合、速度制御器22は、パラメータ設定部20によって速度比例ゲインKvpと速度積分ゲインKviとが設定されることにより、周波数伝達関数として、Kvp×(1+Kvi/2)(ラプラス演算子sの関数)が設定されている。
【0059】
トルクフィルタ23は、速度制御器22より出力された指令トルクに基づいて、モータ3を制御し、負荷装置4を動作させる。トルクフィルタ23は、トルク指令フィルタ(1次のローパスフィルタ)、および複数のノッチフィルタを含み、制御パラメータとして、トルク指令フィルタのカットオフ周波数、ノッチフィルタの中心周波数、深さ、幅を有している。
【0060】
次に、
図2を参照して、シミュレーションではなく、サーボドライバ2にパラメータ調整部30で調整した制御パラメータを設定し、計測した応答結果から性能指標を算出する構成(以降、実機計測とも呼ぶ)について説明する。実機計測において、上述した
図1の場合と異なるのは、シミュレーション部50を備えておらず、性能指標算出部60がサーボドライバ2の計測結果を用いて性能指標を算出する点である。実機計測では、シミュレーションではなく、実際にサーボドライバ2を駆動させて、その結果を計測するので、シミュレーション部50は不要となる。
【0061】
また、試験動作指示部40は、第1制御パラメータおよび第2制御パラメータを用いて、実際にサーボドライバ2を駆動させることにより複数回の試験動作を行うように指示する。
【0062】
〔変形例〕
なお、サーボドライバ2がフィードフォワードを用いる構成であってもよい。
図5を参照して、サーボドライバ2にフィードフォワードを含む構成を説明する。
図5は、フィードフォワードの要部構成を示すブロック図である。
図5に示すように、モデルフィードフォワード部51は、速度指令生成52、位置制御器(制御パラメータCp’)53、速度制御器(制御パラメータCv’)54、および制御対象モデル(制御パラメータP’)55を含む。
【0063】
モデルフィードフォワード部51は、モデル追従制御によるフィードフォワードを実行するものであり、モータ3の位置、速度、トルクの目標値であるモデル出力位置、モデル出力速度、モデル出力トルクを制御し、モデル追従制御部(位置制御器53と速度制御器54)のゲインを制御パラメータとしてもっている。
【0064】
速度指令生成52は、外部からの位置指令を受け付け、速度指令を生成する。そして、生成した速度指令を速度制御器54へと出力する。
【0065】
位置制御器53は、前記位置指令から生成されたモデル出力位置を受け付け、当該モデル出力位置が当該位置指令に追従するよう制御するモデル速度制御指令を生成する。そして、生成したモデル速度制御指令を、速度制御器54へと出力する。
【0066】
速度制御器54は、位置制御器53により生成されたモデル速度制御指令、速度指令生成52により生成された速度指令、および、制御対象モデル55により生成されたモデル出力速度を受け付け、当該モデル出力速度が、モデル速度制御指令および速度指令に追従するよう制御するようモデルトルク制御指令を生成する。そして、生成したモデルトルク制御指令を、制御対象モデル55へ出力する。
【0067】
制御対象モデル55は、速度制御器54から出力されたモデルトルク制御指令を受け付けて、モデル出力位置およびモデル出力速度を生成し、出力する。
【0068】
〔処理の流れ〕
次に、
図6、7を参照して、制御パラメータを設定する処理の流れを説明する。
図6は、シミュレーションを実行して制御パラメータを設定する処理の流れを示すフローチャートであり、
図7は、実機計測して制御パラメータを設定する処理の流れを示すフローチャートである。
【0069】
〔シミュレーションを用いる場合〕
まず、
図6を参照して、シミュレーションを実行して制御パラメータを設定する処理の流れについて説明する。
【0070】
設定装置1では、制御パラメータの調整開始の指示を受け付けると、まず、シミュレーション部50は、シミュレーションモデルの作成を行う(S101)。シミュレーションモデルの作成は、例えば、次の方法により行う。(1)実際の装置を駆動させて得た計測データから作成する。(2)負荷装置の物理モデルから作成する。物理モデル中のパラメータ(イナーシャ、摩擦、剛性など)の値は、実際の装置を駆動させて得た計測データを使った同定演算またはユーザによる入力によって定める。
【0071】
次に、調整に用いる性能指標を決定する(S102)。なお、性能指標とは応答を評価するためのものである。性能指標の決定は、ユーザによる指定を受け付けることにより行ってもよいし、シミュレーション部50において自動的に決定してもよい。なお、性能指標の例としては、整定時間、ピークゲイン等が挙げられる。
【0072】
次に、制御パラメータの設定方法を決定する(S103)。詳細には、調整するそれぞれの制御パラメータについて、以下のいずれの方法で値を設定するかを決定する。(1)シミュレーションする際に値を変化させる。(2)他の制御パラメータの値を元に値を定める。(3)固定の値とする。なお、(1)の方法で決定する制御パラメータは、結果の表示が「3次元グラフ」または「マップ表示」の場合には2つ、「2次元グラフ」の場合には1つである必要がある。
【0073】
また、(2)他の制御パラメータの値を元に値を定める設定方法の例としては、以下のものが挙げられる。速度比例ゲインK
vpの値を元に、位置比例ゲインK
pp、速度積分ゲインK
vi、トルクフィルタLPF(Low Pass Filter)のカットオフ周波数f
tfの値を定める場合、以下のように定義した関係式を用いて制御パラメータの値を定めることができる。
K
pp=f
1(K
vp)=K
vp/4
K
vi=f
2(K
vp)=K
vp/4
f
tf=f
3(K
vp)=5K
vp
また、評価対象の応答を位置制御の応答とする場合、位置比例ゲインK
pp、および速度比例ゲインK
vpを(1)の設定方法で定め、速度積分ゲインK
vi、およびトルクフィルタLPFのカットオフ周波数f
tfを(2)、または(3)の設定方法で定めることができる。
【0074】
また、評価対象の応答を速度制御の応答とする場合、速度比例ゲインK
vp、および速度積分ゲインK
viを(1)の設定方法で定め、トルクフィルタLPFのカットオフ周波数f
tfを(2)、または(3)の設定方法で定めることができる。
【0075】
なお、(2)他の制御パラメータの値を元に値を定める設定方法は、応答性を重視するか、または安定性を重視するかで選択できるようにしてもよい(モード選択)。
【0076】
また、シミュレーション結果を表示するマトリクス(詳細は、後述する。
図15のシミュレーション結果1511に対応)の分解能の指定を受け付けたり、縦軸、横軸の範囲(最大値、最小値)の設定を受け付けたりしてもよい。マトリクスの分解能や縦軸、横軸の範囲をユーザが設定可能となることにより、よりユーザ所望のシミュレーション結果を提示することができる。
【0077】
次に、ステップS103で(1)の設定方法により定めると決定された制御パラメータである、パラメータA(第1パラメータ)およびパラメータB(第2パラメータ)の値を変更させつつシミュレーションを実行する(S104〜S110)。
【0078】
例えば、(1)の設定方法で定められる制御パラメータが位置比例ゲインK
pp、および速度比例ゲインK
vpで、(2)の方法で定められる制御パラメータが速度積分ゲインK
viおよびトルクフィルタLPFのカットオフ周波数f
tfの場合、以下のように制御パラメータの値を順次変更しながら、シミュレーションを実行する。
(a)(1)の設定方法で定められる制御パラメータである位置比例ゲインK
ppを、K
pp=K
pp[0], K
pp[1], …, K
pp[M−1]と変化させる。
(b)(1)の設定方法で定められる制御パラメータである速度比例ゲインK
vpを、K
vp=K
vp[0], K
vp[1], …, K
vp[N−1]と変化させる。
(c)(2)の設定方法で定められる制御パラメータである速度積分ゲインK
viおよびトルクフィルタLPFのカットオフ周波数f
tfは、K
vpから求める。
ここで、シミュレーションされた性能指標を記録する2次元配列をresult[M][N]とする。
FOR m=0からM−1まで DO
K
pp = k
pp[m]
FOR n=0からN−1まで DO
K
vp =K
vp[n]
K
vi = f
2(K
vp)
f
tf = f
3(K
vp)
制御パラメータK
pp, K
vp, K
vi, f
tfを使ってシミュレーションを実行
シミュレーションで求められた性能指標をresult[m][n]に記録
ENDFOR
ENDFOR
次に、ステップS111で、性能指標算出結果(配列result)を表示する。なお、表示の詳細については後述する。
【0079】
次に、ステップS112で、制御パラメータの値を決定する。これは、表示された性能指標算出結果をもとに、望ましい性能が得られる制御パラメータの組み合わせをユーザに指定させることにより決定する。
【0080】
最後に、ステップS113で、決定された制御パラメータをサーボドライバ2に設定する。
【0081】
以上が、シミュレーションを実行して制御パラメータを設定する処理の流れである。
【0082】
〔実機計測を用いる場合〕
次に、
図7を参照して、実機計測を行って制御パラメータを設定する処理の流れについて説明する。
【0083】
実機計測の場合、シミュレーションモデルの作成は必要なく、まず、調整に用いる性能指標を決定する(S201)。性能指標とは応答を評価するためのものである。シミュレーションを用いる場合と同様に、性能指標の決定は、ユーザによる指定を受け付けることにより行ってもよいし、シミュレーション部50において自動的に決定してもよい。なお、性能指標の例としては、整定時間、ピークゲイン等が挙げられる。
【0084】
次に、制御パラメータの設定方法を決定する(S202)。制御パラメータの設定方法の決定の詳細は、上述したシミュレーションを用いる場合と同様である。
【0085】
次に、ステップS202で(1)の設定方法により定めると決定された制御パラメータである、パラメータA(第1パラメータ)およびパラメータB(第2パラメータ)の値を変更させつつ
実機計測を実行する(S203〜S209)。
【0086】
例えば、(1)の設定方法で定められる制御パラメータが位置比例ゲインK
pp、および速度比例ゲインK
vpで、(2)の方法で定められる制御パラメータが速度積分ゲインK
viおよびトルクフィルタLPFのカットオフ周波数f
tfの場合、以下のように制御パラメータの値を順次変更させて、サーボドライバ2に設定しながら、モータ3を駆動させて計測、および性能指標の算出を行う。
(a)(1)の設定方法で定められる制御パラメータである位置比例ゲインK
ppを、K
pp=K
pp[0], K
pp[1], …, K
pp[M−1]と変化させる。
(b)(1)の設定方法で定められる制御パラメータである速度比例ゲインK
vpを、K
vp=K
vp[0], K
vp[1], …, K
vp[N−1]と変化させる。
(c)(2)の設定方法で定められる制御パラメータである速度積分ゲインK
viおよびトルクフィルタLPFのカットオフ周波数f
tfは、K
vpから求める。
ここで、シミュレーションされた性能指標を記録する2次元配列をresult[M][N]とする。
FOR m=0からM−1まで DO
K
pp = k
pp[m]
FOR n=0からN−1まで DO
K
vp =K
vp[n]
K
vi = f
2(K
vp)
f
tf = f
3(K
vp)
制御パラメータK
pp, K
vp, K
vi, f
tfをサーボドライバ2に設定
モータ3を動作させて、応答を計測
計測データから求められた性能指標をresult[m][n]に記録
ENDFOR
ENDFOR
次に、ステップS210で、性能指標算出結果(配列result)を表示する。なお、表示の詳細については後述する。
【0087】
次に、ステップS211で、制御パラメータの値を決定する。これは、表示された性能指標算出結果をもとに、望ましい性能が得られる制御パラメータの組み合わせをユーザに指定させることにより決定する。
【0088】
最後に、ステップS212で、決定された制御パラメータをサーボドライバ2に設定する。
【0089】
以上が、シミュレーションを実行して制御パラメータを設定する処理の流れである。
【0090】
〔表示の方法〕
次に、
図8〜
図12を参照して、シミュレーションの結果、または実機計測の結果の表示方法について説明する。シミュレーションの結果、または実機の計測の結果の表示は、制御パラメータの変化と、そのときの性能指標との関係を表示することで行う。
なお、以下では、シミュレーションの結果の表示、および実機計測の結果の表示を区別する必要がないときは、単に「結果表示」と呼ぶ。
【0091】
〔変化させる制御パラメータが1つの場合〕
まず、
図8を参照して、変化させる制御パラメータが1つの場合の結果表示の方法を説明する。
図8は、変化させる制御パラメータが1つの場合の結果表示の例を示す図であり、(a)は横軸に制御パラメータ、縦軸に性能指標を示す2次元グラフで表示する例を示す図であり、(b)は横軸に制御パラメータ、縦軸の左右それぞれに異なる性能指標を示す2次元グラフで表示する例を示す図である。
【0092】
図8(a)に示すような2次元グラフで結果表示を行う場合、すなわち、横軸に制御パラメータA、縦軸に性能指標をとる2次元グラフで結果表示を行う場合、両者の関係を曲線または折線で表現する。
図8(a)中の黒丸は、現在設定中の制御パラメータの値を示している。そして、2次元グラフ中の座標を指定されることにより、制御パラメータAの値を設定することができる。座標の指定は、表示面を直接タッチ等されることにより行われてもよいし、マウス等によりポインタを移動させて、クリックされることにより行われてもよい。
【0093】
すなわち、表示制御部70によって表示部12に表示されている2次元グラフに対し、入力部11を介して受け付けた座標位置からパラメータ調整部30は、第1制御パラメータ(制御パラメータA)を設定し、設定した第1制御パラメータから第2制御パラメータを設定し、シミュレーション部50は、新たに設定された第1制御パラメータおよび第2制御パラメータを用いてシミュレーションを実行する。
【0094】
また、
図8(b)に示すような2次元グラフで結果表示を行う場合、すなわち、横軸に制御パラメータA、縦軸は左右それぞれに分け、左の軸に性能指標α、右の軸に性能指標βをとる2次元グラフで結果表示を行う場合も同様に、制御パラメータAと性能指標α、βとの関係を曲線または折線で表現する。性能指標がαとβとの2つあるので、曲線(折線)は2つ表示される。このように、縦軸を2軸とすれば、性能指標を2種類、表示することができる。
【0095】
また、
図8(a)、(b)において、性能指標に合格ラインを設け、これを表示してもよい。
【0096】
次に、
図9を参照して、制御パラメータA、性能指標α、βの組み合わせ例を説明する。
図9は、制御パラメータA、性能指標α、βの組み合わせ例を説明するための図である。
【0097】
図9に示すように、制御パラメータAとして「速度比例ゲイン」、性能指標αとして「整定時間」、性能指標βとして「オーバーシュート」とすることができる。この場合、位置決め応答性(整定時間)およびオーバーシュートというトレードオフの関係にある両者を調整することができる。
【0098】
また、制御パラメータAとして「速度比例ゲイン」、性能指標αとして「帯域幅」、性能指標βとして「位相余裕」とすることができる。この場合、応答性(帯域幅)および安定性(位相余裕)というトレードオフの関係にある両者を調整することができる。
【0099】
なお、
図8(a)に示すように、表示できる性能指標が1つの場合は、前述した性能指標α、βの何れを表示する性能指標としてもよい。
【0100】
〔変化させる制御パラメータが2つの場合〕
次に、
図10を参照して、変化させる制御パラメータが2つの場合の結果表示の方法を説明する。
図10は、変化させる制御パラメータが2つの場合の結果表示の例を示す図であり、(a)は横軸に制御パラメータA、縦軸に制御パラメータB、グラフ平面上の色で性能指標を表現したマップ表示の例を示す図であり、(b)はX軸に制御パラメータA、Y軸に制御パラメータB、Z軸に性能指標とった3次元グラフで表示する例を示す図である。
【0101】
図10(a)に示すようなマップ表示で結果表示を行う場合、すなわち、横軸に制御パラメータA、縦軸に制御パラメータBをとり、グラフ平面上において色を変化させて性能指標を表示する場合、制御パラメータA、Bに対する性能指標は対応する座標における色で表現されることになる。また、
図10(a)中の黒丸は、現在設定中の制御パラメータを示している。そして、マップ表示中の座標を指定されることにより、制御パラメータA、Bの値を設定することができる。
【0102】
また、
図10(b)に示すような3次元グラフで結果表示を行う場合、すなわち、X軸に制御パラメータA、Y軸に制御パラメータB、Z軸に性能指標とった3次元グラフで結果表示を行う場合、3者の関係を曲面で表現する。
図10(b)に示す3次元グラフの場合も、(a)の場合と同様、図中の黒丸は現在の制御パラメータA、Bの値を示し、グラフ中の座標を指定されることにより、制御パラメータA、Bの値を設定することができる。
【0103】
次に、
図11を参照して、制御パラメータA、B、および性能指標の組み合わせ例を説明する。
図11は、制御パラメータA、B,および性能指標の組み合わせ例を説明するための図である。
【0104】
図11に示すように、制御パラメータAとして「速度比例ゲイン」、制御パラメータBとして「速度積分ゲイン」、性能指標として「速度ループピークゲイン」とすることができる。この場合、速度ループが発振しないゲインの範囲(設定可能なゲインの限界)をユーザに認識させることができる。
【0105】
また、制御パラメータAとして「速度比例ゲイン」、制御パラメータBとして「位置比例ゲイン」、性能指標として「整定時間」とすることができる。この場合、整定時間を最小化するゲインの組み合わせをユーザに認識させることができる。
【0106】
また、制御パラメータAとして「速度比例ゲイン」、制御パラメータBとして「位置比例ゲイン」、性能指標として「オーバーシュート」とすることができる。この場合、オーバーシュートの小さいゲインの組み合わせをユーザに認識させることができる。
【0107】
また、制御パラメータAとして「速度比例ゲイン」、制御パラメータBとして「位置比例ゲイン」、性能指標として「位相余裕」とすることができる。この場合、位置ループの安定性を損ねないゲインの範囲(設定可能なゲインの限界)をユーザに認識させることができる。
【0108】
また、制御パラメータAとして「速度比例ゲイン」、制御パラメータBとして「モデル追従制御部のゲイン」、性能指標として「整定時間」とすることができる。この場合、整定時間を最小化するゲインの組み合わせをユーザに認識させることができる。
【0109】
また、制御パラメータAとして「速度比例ゲイン」、制御パラメータBとして「モデル追従制御部のゲイン」、性能指標として「オーバーシュート」とすることができる。この場合、オーバーシュートの小さいゲインの組み合わせをユーザに認識させることができる。
【0110】
〔変化させる制御パラメータが3つの場合〕
次に、
図12を参照して、変化させる制御パラメータが3つの場合の結果表示の方法を説明する。
図12(a)、(b)は、変化させる制御パラメータが3つの場合の結果表示の例を示す図である。
【0111】
変化させる制御パラメータが3つの場合、
図10(a)に示したマップ表示を2つ用いて結果表示を行う。1つ目のマップ表示(
図12(a)、マップA)において、横軸が制御パラメータA、縦軸が制御パラメータB、色で表現するのが性能指標αとし、2つ目のマップ表示(
図12(b)、マップB)において横軸が制御パラメータA、縦軸が制御パラメータC、色で表現するのが性能指標βとする。
【0112】
性能指標αを確認したい場合は、マップAを用い、制御パラメータCは、現在の値を用いる。なお、制御パラメータCが変更された場合、マップAにおける性能指標αの色表示は再描画される。
【0113】
また、性能指標βを確認したい場合は、マップBを用い、制御パラメータBは、現在の値を用いる。なお、制御パラメータBが変更された場合、マップBにおける性能指標βの色表示は再描画される。
【0114】
マップAおよびマップBの横軸が一致するようにマップAとマップBと縦に配置すれば、2つのマップの対応関係の認識が容易となる。
【0115】
図12(a)、(b)における黒丸は、現在の制御パラメータA、B、Cの値を示す。制御パラメータAの値は共通である。
【0116】
また、前述した表示例と同様に、表示上の座標を指定されることにより、制御パラメータA、B、Cを設定することができる。
【0117】
なお、制御パラメータA、B、および性能指標α、βの組み合わせ例は、前述した例と同様である。
【0118】
なお、前述した実施形態では、変化させる制御パラメータが3つ、性能指標が2つの場合の例を説明したが、変化させる制御パラメータの数、および求める性能指標の数はこれに限られない。変化させる制御パラメータの数が4以上で、求める性能指標の数が3以上であってもよい。この場合、性能指標の数が増える毎にマップ表示を増やすとともに、変化させる制御パラメータの組合せ数が増える毎にマップ表示を増やせばよい。
【0119】
〔性能指標の例〕
次に、
図13、14を参照して、性能指標の例を説明する。
図13は、周波数応答における性能指標の例を示す図であり、(a)は閉ループ特性を示す図であり、(b)は開ループ特性を示す図である。
【0120】
図13(a)は、閉ループ特性(位置閉ループ、および速度閉ループ)を示している。
図13(a)に示すように、閉ループ特性では、ピークゲインおよび帯域幅が性能指標となり得る。
【0121】
図13(b)は、開ループ特性(位置開ループ、速度開ループ)を示している。
図13(b)に示すように、開ループ特性では、ゲイン余裕および位相余裕が性能指標となり得る。
【0122】
図14は、時間応答における性能指標の例を示す図である。
図14に示すように、時間応答では、「遅れ時間」、「立ち上り時間」、「整定時間」、「オーバーシュート(行き過ぎ量)」が性能指標となり得る。
【0123】
〔画面例〕
次に、
図15〜18を参照して、設定装置1における画面例を説明する。
図15は、表示部12における表示画面例を示す図である。
【0124】
図15に示す画面例1501では、右上部分にマトリクス状でシミュレーション結果1511が表示されている。ここでは、横軸に「速度比例ゲイン」、縦軸に「速度積分ゲイン」がとられ、性能指標(ピークゲイン)がグラフ上に色で表現されている。前述したマップ表示に対応する。マトリクスにおける右上になるほどピークゲインが高い(不安定、発振)ことが分かる。また、マトリクス上の中央付近の白丸は、現在の制御パラメータの値を示している。
【0125】
また、前述したように、このマトリクス上で、座標を指定されることにより、指定された座標に対応する制御パラメータA、Bが設定される。ここでは、例えば、色の薄いところで、かつ右上側(ピークゲインが高い)の座標を指定することにより、高応答でかつ発振しない制御パラメータを設定することができる。
【0126】
また、領域1512には、現在の制御パラメータの値が示されている。さらに、領域1513および領域1514には、周波数応答の特性(ボード線図)が示されている。
【0127】
図16は、シミュレーション結果1511の表示の一例を示す図であり、(a)はノッチフィルタを設定していない状態を示す図であり、(b)はノッチフィルタを設定していない状態を示す図である。
【0128】
図16(a)においては、領域1611の部分においてピークゲインが高く、領域1613の部分においてピークゲインが低く、領域1612の部分は、その間であることを示している。
【0129】
そして、
図16(a)に示すように、ノッチフィルタを設定していない場合、ピークゲインの高い領域が大きく、速度比例ゲイン(横軸)を一定以上に上げることが困難であることが分かる。これは、負荷機械の機械共振が起こるためである。
【0130】
図16(b)においては、領域1621の部分においてピークゲインが高く、領域1623の部分においてピークゲインが低く、領域1622の部分は、その間であることを示している。
【0131】
図16(b)に示すように、ノッチフィルタを設定する場合、
図16(a)と比較して、ピークゲインの高い領域が小さくなっていることが分かる。これは、ノッチフィルタによって機械共振の影響が抑制されているためである。これにより、設定可能な速度比例ゲインの範囲が拡大している。
【0132】
図17は、手動でゲイン、フィルタパラメータの設定を行うための画面例を示す図である。
図17に示す画面例1701では、ゲインを設定するゲイン設定領域1711、トルクフィルタの制御パラメータを設定するトルクフィルタ領域1712、およびノッチフィルタの制御パラメータを設定するノッチフィルタ領域1713が示されている。これらの設定領域において、ゲインやフィルタパラメータを設定することができる。なお、トルクフィルタ領域1712、およびノッチフィルタ領域1713にある「enable」は、当該領域にチェックが入っているか否かで、当該フィルタを適用するか否かを設定できるものである。
【0133】
図18は、トルクフィルタLPFのカットオフ周波数を前述した制御パラメータの設定方法で、他の制御パラメータの値を元に値を定めた場合と、固定の値とした場合とにおけるシミュレーション結果1511を示す図であり、(a)は固定値にした場合を示す図であり、(b)は速度比例ゲインの値を元に値を定めた場合を示す図である。
【0134】
図18(a)では、領域1811の部分においてピークゲインが高く、領域1813の部分においてピークゲインが低く、領域1812の部分は、その間であることを示している。
【0135】
また、
図18(b)では、領域1821の部分においてピークゲインが高く、領域1823の部分においてピークゲインが低く、領域1822の部分は、その間であることを示している。
【0136】
図18(a)、(b)に示すように、トルクフィルタLPFのカットオフ周波数を速度比例ゲインの値を元に値を定めてシミュレーションを行った方が、トルクフィルタLPFのカットオフ周波数を固定値としてシミュレーションを行った場合と比較して、速度比例ゲインの取り得る範囲が拡がっていることが分かる。
【0137】
〔ソフトウェアによる実現例〕
設定装置1の制御ブロック(特に、操作制御部10、パラメータ設定部20、パラメータ調整部(第1パラメータ調整部31、第2パラメータ調整部32)30、試験動作指示部40、シミュレーション部50、性能指標算出部60、および表示制御部70)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0138】
後者の場合、設定装置1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0139】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。